衆議院

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第一八三回

衆第二七号

   介護従事者等の人材確保に関する特別措置法案

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 優れた人材による質の高い介護サービスを確保するための保険給付(第三条−第十四条)

 第三章 介護従事者等の労働条件の改善(第十五条)

 第四章 雑則(第十六条−第二十一条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、加齢により心身の機能が低下した場合等に高齢者等が安心して暮らすことのできる社会を実現するために介護従事者等が重要な役割を担っていることに鑑み、現在他の業種に従事する労働者と比較して低い水準にある介護従事者等の賃金の向上に資するよう特別の措置を定めることにより、介護を担う優れた人材を確保し、もって介護サービスの水準の向上を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「介護事業者」とは、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第四十一条第一項本文の指定居宅サービス事業者、同法第四十二条の二第一項本文の指定地域密着型サービス事業者、同法第四十六条第一項の指定居宅介護支援事業者、同法第八条第二十四項の介護保険施設、同法第五十三条第一項本文の指定介護予防サービス事業者、同法第五十四条の二第一項本文の指定地域密着型介護予防サービス事業者及び同法第五十八条第一項の指定介護予防支援事業者をいう。

2 この法律において「介護従事者等」とは、介護事業者の業務に従事する労働者をいう。

   第二章 優れた人材による質の高い介護サービスを確保するための保険給付

 (保険給付)

第三条 介護保険は、介護保険法第十八条各号に掲げる保険給付のほか、この法律の定めるところにより、優れた人材による質の高い介護サービスを確保するための保険給付を行うものとする。

2 前項に規定する優れた人材による質の高い介護サービスを確保するための保険給付は、介護保険法第四十条の介護給付(同条第六号の居宅介護住宅改修費の支給を除く。)及び同法第五十二条の予防給付(同条第六号の介護予防住宅改修費の支給を除く。)と併せて行う第五条第二項の認定を受けた介護事業者(以下「認定介護事業者」という。)に対する第九条第一項の規定による加算介護報酬の支給とする。

 (認定基準額)

第四条 厚生労働大臣は、事業の種類及び地域ごとに、介護従事者等の賃金の当該地域における平均額を勘案し、次条の認定を受けるための基準となる介護従事者等の賃金の事業所における平均額(以下「認定基準額」という。)を定めるものとする。

 (認定)

第五条 介護事業者は、事業所ごとに、都道府県知事(介護保険法第四十二条の二第一項本文の指定地域密着型サービス事業者、同法第五十四条の二第一項本文の指定地域密着型介護予防サービス事業者及び同法第五十八条第一項の指定介護予防支援事業者にあっては、市町村長(特別区にあっては、区長)。以下同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより算出した介護従事者等の賃金の見込額の当該事業所における平均額が認定基準額を下回らない旨の認定を申請することができる。

2 都道府県知事は、前項の規定による認定の申請があった場合において、同項に規定する介護従事者等の賃金の見込額の当該事業所における平均額が認定基準額を下回らないと認めるときは、その認定をするものとする。

3 認定介護事業者は、前項の認定に係る事業所(以下「認定事業所」という。)内の公衆の見やすい場所に、同項の認定を受けた旨の表示をしなければならない。

4 認定介護事業者は、認定事業所につき、介護従事者等の賃金の平均額が認定基準額を下回り、又は下回る見込みとなったときは、都道府県知事に、第二項の認定を取り消すべき旨の申出をすることができる。

5 前各項に定めるもののほか、第二項の認定に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。

 (変更の届出)

第六条 認定介護事業者は、認定事業所の名称及び所在地その他厚生労働省令で定める事項に変更があったとき、又は当該認定介護事業者が介護事業者でなくなったときは、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

 (認定の取消し)

第七条 都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当する場合においては、第五条第二項の認定を取り消すことができる。

 一 第五条第四項の申出があったとき。

 二 加算介護報酬の請求に関し不正があったとき。

 三 認定介護事業者が、第五条第三項の規定による表示をしていないと認めるとき。

 四 認定介護事業者が、第十条第二項の相当の期間内に、同条第一項の報告をしなかったとき。

 五 認定介護事業者が、第十一条第一項の規定により報告又は帳簿書類の提出若しくは提示を命ぜられてこれに従わず、又は虚偽の報告をしたとき。

 六 認定介護事業者又は認定事業所の従業者が、第十一条第一項の規定により出頭を求められてこれに応ぜず、同項の規定による質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。ただし、当該認定事業所の従業者がその行為をした場合において、その行為を防止するため、当該認定介護事業者が相当の注意及び監督を尽くしたときを除く。

 七 認定介護事業者が、第十二条の規定により理由を説明するよう求められてこれに応ぜず、若しくは虚偽の説明をし、又は同条の勧告に従わなかったとき。

 八 認定介護事業者が、不正の手段により第五条第二項の認定を受けたとき。

 九 認定介護事業者が、介護事業者でなくなったとき。

 (加算介護報酬に関する基準)

第八条 厚生労働大臣は、介護を担う優れた人材が確保されるようにするため、高齢者等が安心して暮らすことのできる社会の実現に介護従事者等が重要な役割を担っていること並びに介護従事者等が従事する業務が身体的及び精神的負担の大きいものであることを踏まえるとともに、他の業種に従事する労働者の地域における平均的な賃金水準を勘案し、事業の種類及び地域ごとに、加算介護報酬に関する基準を定めるものとする。

 (加算介護報酬の支給)

第九条 市町村又は特別区(以下単に「市町村」という。)は、認定介護事業者に対し、加算介護報酬を支給する。

2 加算介護報酬の額は、前条の基準により算定した額とする。

3 市町村は、認定介護事業者から加算介護報酬の請求があったときは、前条の基準に照らして審査した上、支払うものとする。

4 市町村は、前項の規定による審査及び支払に関する事務を国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会(以下「連合会」という。)に委託することができる。

5 前項の規定による委託を受けた連合会は、当該委託をした市町村の同意を得て、厚生労働省令で定めるところにより、当該委託を受けた事務の一部を、営利を目的としない法人であって厚生労働省令で定める要件に該当するものに委託することができる。

6 前各項に規定するもののほか、加算介護報酬の支給及び請求に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める。

 (報告等)

第十条 認定介護事業者は、毎事業年度終了後、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業年度に介護従事者等に対して支払った賃金の認定事業所における平均額を算出し、都道府県知事に報告しなければならない。

2 都道府県知事は、認定介護事業者が前項の報告をしないときは、当該認定介護事業者に対し、相当の期間を定めて、同項の報告をすべきことを催告するものとする。

第十一条 都道府県知事は、加算介護報酬の支給に関して必要があると認めるときは、認定介護事業者若しくは認定介護事業者であった者若しくは当該認定介護事業者の従業者であった者(以下この項において「認定介護事業者であった者等」という。)に対し、報告若しくは帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、認定介護事業者若しくは当該認定介護事業者の従業者若しくは認定介護事業者であった者等に対し出頭を求め、又は当該職員に関係者に対して質問させ、若しくは認定介護事業者若しくは認定介護事業者であった者の事業所、事務所その他その業務に関係のある場所に立ち入り、その帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定による質問又は検査を行う場合においては、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係人の請求があるときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (勧告)

第十二条 都道府県知事は、厚生労働省令で定めるところにより算出した介護従事者等に対して支払われた賃金の認定事業所における平均額が認定基準額を下回っていると認める場合には、当該認定介護事業者に対してその理由を説明するよう求め、正当な理由がないと認めるときは、必要な措置をとるべき旨を勧告することができる。

 (費用の負担)

第十三条 国は、市町村に対し、加算介護報酬の支給に要する費用を負担する。

 (介護保険法の準用)

第十四条 介護保険法第百七十六条第一項第一号、第百七十七条から第百七十九条まで、第百八十一条及び第百九十八条の規定は、第九条第四項に規定する加算介護報酬の審査及び支払に関する事務の連合会への委託について準用する。この場合において、同法第百七十六条第一項第一号中「第四十一条第十項(第四十二条の二第九項、第四十六条第七項、第四十八条第七項、第五十一条の三第八項、第五十三条第七項、第五十四条の二第九項、第五十八条第七項及び第六十一条の三第八項において準用する場合を含む。)」とあるのは「介護従事者等の人材確保に関する特別措置法(平成二十五年法律第▼▼▼号)第九条第四項」と、同法第百七十九条中「第四十一条第十項(第四十二条の二第九項、第四十六条第七項、第四十八条第七項、第五十一条の三第八項、第五十三条第七項、第五十四条の二第九項、第五十八条第七項及び第六十一条の三第八項において準用する場合を含む。)」とあるのは「介護従事者等の人材確保に関する特別措置法第九条第四項」と読み替えるものとする。

   第三章 介護従事者等の労働条件の改善

第十五条 介護事業者は、介護を担う優れた人材を確保することにより質の高い介護サービスを提供することができるよう、介護従事者等の賃金の引上げ、労働時間の短縮その他の労働条件の改善に努めなければならない。

   第四章 雑則

 (不正利得の徴収等)

第十六条 偽りその他不正の行為によってこの法律に規定する保険給付を受けた者があるときは、市町村は、その者からその給付の価額の全部又は一部を徴収することができる。

2 市町村は、認定介護事業者が、偽りその他不正の行為により加算介護報酬の支払を受けたときは、当該認定介護事業者から、その支払った額につき返還させるべき額を徴収するほか、その返還させるべき額に百分の四十を乗じて得た額を徴収することができる。

3 この法律の規定による徴収金については、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第九条、第十三条の二、第二十条、第二十条の二及び第二十条の四の規定を準用する。

4 この法律の規定による徴収金は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百三十一条の三第三項に規定する法律で定める歳入とする。

 (先取特権の順位)

第十七条 この法律の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

 (時効)

第十八条 この法律の規定による徴収金を徴収し、又は保険給付を受ける権利は、二年を経過したときは、時効によって消滅する。

2 この法律の規定による徴収金の督促は、民法(明治二十九年法律第八十九号)第百五十三条の規定にかかわらず、時効中断の効力を生ずる。

 (審査請求)

第十九条 この法律の規定による保険給付に関する処分及び徴収金に関する処分に不服がある者は、介護保険法第百八十四条の介護保険審査会に審査請求をすることができる。

2 前項の審査請求については、介護保険法第百八十三条第二項及び第百九十一条から第百九十六条までの規定を準用する。この場合において、同条中「第百八十三条第一項」とあるのは、「介護従事者等の人材確保に関する特別措置法第十九条第一項」と読み替えるものとする。

 (権限の委任)

第二十条 この法律に規定する厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、地方厚生局長に委任することができる。

 (実施規定)

第二十一条 この法律に特別の規定があるものを除くほか、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、厚生労働省令で定める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成二十五年十月一日から施行する。ただし、附則第三条の規定は、公布の日から施行する。

 (この法律の廃止)

第二条 この法律は、介護保険制度について見直しが行われ、介護を担う優れた人材の確保に支障がなくなったときは、廃止するものとする。

 (施行前の準備)

第三条 第四条の認定基準額の制定並びに第五条第一項の申請の受理及び同条第二項の認定は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前においても行うことができる。

 (適用区分)

第四条 第九条第一項の規定は、施行日以後に行われた福祉サービス又は保健医療サービスについて適用する。

 (地方財政法の一部改正)

第五条 地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)の一部を次のように改正する。

  第十条第十三号中「経費」の下に「並びに優れた人材による質の高い介護サービスを確保するための保険給付に要する経費」を加える。


     理 由

 加齢により心身の機能が低下した場合等に高齢者等が安心して暮らすことのできる社会を実現するために介護従事者等が重要な役割を担っていることに鑑み、介護を担う優れた人材を確保し、もって介護サービスの水準の向上を図るため、現在他の業種に従事する労働者と比較して低い水準にある介護従事者等の賃金の向上に資するよう特別の措置を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   本案施行に要する経費

 本案施行に要する経費としては、平年度約千八百七十億円の見込みである。

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