衆議院

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第一八三回

衆第四六号

   道州制への移行のための改革基本法案

目次

 第一章 総則(第一条−第四条)

 第二章 道州制への移行のための改革の基本方針(第五条−第九条)

 第三章 道州制への移行のための改革推進本部及び道州制国民会議

  第一節 道州制への移行のための改革推進本部(第十条−第十九条)

  第二節 道州制国民会議(第二十条−第三十四条)

 第四章 道州制への移行のために必要な法制の整備(第三十五条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、我が国の国のかたち(日本国憲法の理念の下における国と地方公共団体の全体を通じた統治の構造をいう。)を新たなものに転換することが喫緊の課題となっていることに鑑み、道州制への移行のための改革(この法律の規定に基づいて、地方自治の仕組みを広域の地方公共団体である道州と基礎的な地方公共団体である市町村(特別区を含む。以下同じ。)との二層制に移行するとともに、これに伴い国及び地方公共団体の組織及び事務、国と地方公共団体の税源配分等を抜本的に見直す改革をいう。以下同じ。)について、その基本理念及び基本方針、その実施の目標時期その他の基本となる事項を定めるとともに、道州制への移行のための改革推進本部及び道州制国民会議を設置することにより、これを総合的に推進することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 道州制への移行のための改革は、道州において、個性豊かで活力に満ち、かつ、安心して暮らすことのできる地域社会が形成され、及び地域経済が自律的に発展するとともに、行政、経済、文化等に関する機能が我が国の特定の地域に集中することなく配置されるようにし、あわせて、国が本来果たすべき役割を重点的に担うことができるよう、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。

 一 広域の地方公共団体である道州を設置して、道州においてその地域の特性に応じた独自性のある施策を展開することができる地方自治制度を確立すること。

 二 国の事務は国が本来果たすべき役割に係るものに特化し、国の府省、地方支分部局その他の国の行政組織の改廃を行うとともに、国の行政機能の強化を図ること。

 三 国が本来果たすべき役割に係る事務を除き、国が所掌する事務を道州に移譲するとともに、道州が施策の企画及び立案と実施とを一貫して行う体制を確立することにより、道州が行政需要に的確に対応して効率的に事務を実施することができるようにすること。

 四 道州の財政運営における自主性を確保し、道州が自主的かつ自立的にその役割を果たすことができる地方財政及び地方税に係る制度を確立すること。

 五 住民に身近な行政はできる限り基礎的な地方公共団体が担い、道州がこれを補完するものとし、市町村について、基礎的な地方公共団体としてあるべき姿となる地方自治制度並びに地方財政及び地方税に係る制度を確立するとともに、行政需要に的確に対応して効率的に事務を実施することができるようにすること。

 (国及び地方公共団体の責務等)

第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、道州制への移行のための改革を推進する責務を有する。

2 国は、道州制への移行のための改革を推進するに当たっては、地方公共団体の意見に配慮するものとする。

3 地方公共団体は、前条の基本理念にのっとり、国による道州制への移行のための改革の推進に協力する責務を有する。

 (実施の目標時期)

第四条 道州制への移行のための改革については、この法律の施行後十年以内を目標として道州が設置され、新たな体制への移行が開始されるよう必要な措置が講ぜられるものとする。

   第二章 道州制への移行のための改革の基本方針

 (道州の設置等)

第五条 市町村を包括する広域の地方公共団体として、全国の区域を分けて道又は州を設置するものとする。

2 道州の区域は、廃止される国の地方支分部局から移譲される事務及び事業を道州が適切に遂行するにふさわしい区域を基礎として定めるものとする。

3 道州の境界は、従来の都道府県の境界と異なるものとすることを妨げないものとする。

4 道州の行政組織は、道州がその果たすべき役割を適切に遂行するにふさわしいものとなるように自主的に定めることができるようにするものとする。

 (国の事務の道州への移譲等)

第六条 国は、次に掲げる事務については引き続き担うものとし、当該事務以外の事務(これに係る企画及び立案を含む。)については道州に移譲するものとする。

 一 外交、安全保障、出入国管理、通貨その他の国際社会における国家としての存立に関わる事務

 二 私法に関する法秩序の維持、公正取引の確保その他の全国的に統一して定めることが不可欠である国民の諸活動に関する事務

 三 全国的な規模で又は全国的な視点に立って行わなければならない施策の実施その他国が本来果たすべき役割に係る事務

 (国及び地方公共団体の税財政制度の見直し)

第七条 道州及び市町村がその事務を自主的かつ自立的に執行することができるように、国、道州及び市町村の税源がそれぞれの事務に要する経費に応じて配分されるようにすること、道州及び市町村がその地域の実情に応じて自主的に課税を行うことができるようにすることその他の税制の抜本的見直しを行うものとする。この場合において、併せて、効率的かつ適正に徴税することができる仕組みを構築するようにするものとする。

2 道州間における財政の調整については、道州間の協議を基本として自律的に行う制度を設けるものとする。

3 道州の区域内の市町村間における財政の調整については、道州がこれを行う制度を設けるものとする。

 (都道府県の廃止等)

第八条 道州の設置に伴い、都道府県は、廃止するものとする。

2 都道府県が行っている事務のうち、広域にわたるもの及び市町村に関する連絡調整に関するものは、道州に移譲するものとし、その他の事務は、市町村に移譲するものとする。この場合において、その規模又は性質において市町村が処理することが困難なものについては、複数の市町村において共同して処理することができるようにするものとする。

 (市町村の事務等)

第九条 市町村は、従来の市町村の事務に加え、都道府県の廃止に伴い都道府県から移譲された事務を行うものとする。

2 市町村の規模の適正化及び市町村の事務処理の共同化については、道州において必要な措置を講ずることができるようにするものとする。

   第三章 道州制への移行のための改革推進本部及び道州制国民会議

    第一節 道州制への移行のための改革推進本部

 (道州制への移行のための改革推進本部の設置)

第十条 道州制への移行のための改革を総合的に推進するため、内閣に、道州制への移行のための改革推進本部(以下「本部」という。)を置く。

 (所掌事務)

第十一条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 道州制への移行のための改革の推進に関する総合調整に関すること。

 二 道州制への移行のための改革の推進に関する法律案及び政令案の立案に関すること。

 三 道州制への移行のための改革の推進に関する施策の実施の推進に関すること。

 四 前三号に掲げるもののほか、他の法令の規定により本部に属させられた事務

 (組織)

第十二条 本部は、道州制への移行のための改革推進本部長、道州制への移行のための改革推進副本部長及び道州制への移行のための改革推進本部員をもって組織する。

 (道州制への移行のための改革推進本部長)

第十三条 本部の長は、道州制への移行のための改革推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。

2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

 (道州制への移行のための改革推進副本部長)

第十四条 本部に、道州制への移行のための改革推進副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官及び道州制への移行のための改革担当大臣(内閣総理大臣の命を受けて、道州制への移行のための改革に関し内閣総理大臣を助けることをその職務とする国務大臣をいう。)をもって充てる。

2 副本部長は、本部長の職務を助ける。

 (道州制への移行のための改革推進本部員)

第十五条 本部に、道州制への移行のための改革推進本部員(以下「本部員」という。)を置く。

2 本部員は、本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣をもって充てる。

 (資料の提出その他の協力)

第十六条 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、国の行政機関及び地方公共団体の長に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。

2 本部は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

 (事務局)

第十七条 本部に、その事務を処理させるため、事務局を置く。

2 事務局に、事務局長その他の職員を置く。

3 事務局長は、道州制への移行のための改革に関する事務に関し必要な識見及び能力を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。

4 事務局長は、本部長の命を受け、局務を掌理する。

 (主任の大臣)

第十八条 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

 (政令への委任)

第十九条 この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。

    第二節 道州制国民会議

 (設置)

第二十条 内閣府に、道州制国民会議を置く。

 (所掌事務)

第二十一条 道州制国民会議は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 内閣総理大臣の諮問に応じて第二十九条第一項に掲げる事項その他の道州制に関する重要事項を調査審議すること。

 二 前号に規定する重要事項に関し、内閣総理大臣に意見を述べること。

 三 前二号に掲げるもののほか、法令の規定により道州制国民会議に属させられた事務

 (組織)

第二十二条 道州制国民会議は、委員三十人以内で組織する。

 (委員)

第二十三条 委員は、国会議員、地方公共団体の議会の議員及び長並びに優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。

2 委員は、非常勤とする。

 (会長及び副会長)

第二十四条 道州制国民会議に、会長及び副会長一人を置き、委員の互選によってこれを定める。

2 会長は、会務を総理する。

3 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるとき、又は会長が欠けたときは、その職務を代理する。

 (専門委員)

第二十五条 道州制国民会議に、専門の事項を調査審議するため必要があるときは、専門委員を置くことができる。

 (部会)

第二十六条 会長は、必要に応じ、道州制国民会議に部会を置き、その所掌事務を分掌させることができる。

 (資料の提出その他の協力)

第二十七条 道州制国民会議は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、国の行政機関及び地方公共団体の長に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。

2 道州制国民会議は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

 (事務局)

第二十八条 道州制国民会議に、その事務を処理させるため、事務局を置く。

2 事務局に、事務局長その他の職員を置く。

3 事務局長は、会長の命を受けて、局務を掌理する。

 (道州制国民会議への諮問等)

第二十九条 内閣総理大臣は、次に掲げる事項については、道州制国民会議に諮問しなければならない。

 一 道州の区域、事務所の位置その他道州の設置に関すること。

 二 国、道州及び市町村の事務の分担に関すること。

 三 国の行政組織の改廃に関すること。

 四 国、道州及び市町村の立法権限及びその相互関係に関すること。

 五 道州及び市町村の税制その他の財政制度並びに財政調整制度に関すること。

 六 道州及び市町村の公務員制度並びに道州制への移行に伴う公務員の身分の変更等に関すること。

 七 道州及び市町村の議会の在り方及び長と議会との関係に関すること。

 八 市町村の名称、規模及び編成の在り方並びに市町村における地域コミュニティに関すること。

 九 道州及び市町村の組織に関すること。

 十 首都及び大都市の在り方に関すること。

 十一 道州制への移行のための国の法制の整備に関すること。

 十二 都道府県の事務の道州及び市町村への移譲手続その他道州制への移行に伴い検討が必要な事項に関すること。

2 道州制国民会議は、道州制に関する重要事項について調査審議するため必要があると認めるときは、都道府県及び市町村の意見を聴くものとする。

 (答申)

第三十条 道州制国民会議は、前条第一項の規定により諮問を受けたときは、当該諮問を受けた日から三年以内に内閣総理大臣に答申をしなければならない。

 (中間報告)

第三十一条 内閣総理大臣は、第二十九条第一項に掲げる事項について必要があるときは、道州制国民会議に対し、中間報告を求めることができる。

 (国会への報告)

第三十二条 内閣総理大臣は、第三十条の答申及び前条の中間報告を受けたときは、これを国会に報告するものとする。

 (設置期限)

第三十三条 道州制国民会議は、第三十条の答申をした日から起算して六月を経過する日まで置かれるものとする。

 (政令への委任)

第三十四条 この法律に定めるもののほか、道州制国民会議に関し必要な事項は、政令で定める。

   第四章 道州制への移行のために必要な法制の整備

第三十五条 政府は、第三十条の答申があったときは、二年を目途に道州制への移行のために必要な法制の整備を実施しなければならない。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第三章並びに附則第三条及び第四条の規定は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (準備行為)

第二条 第二十三条第一項の規定による道州制国民会議の委員の任命のために必要な行為は、この法律の施行前においても行うことができる。

 (内閣府設置法の一部改正)

第三条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

  附則第二条第四項中「前三項」を「前各項」に改め、同項を同条第五項とし、同条第三項中「前二項」を「前三項」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。

 3 内閣府は、第三条第二項の任務を達成するため、第四条第三項各号及び前二項に掲げる事務のほか、道州制への移行のための改革基本法(平成二十五年法律第▼▼▼号)第三十三条に規定する日までの間、同法第二十一条に規定する事務及びこれに関連する事務の連絡調整に関する事務をつかさどる。

  附則第二条の二第二項中「前条第四項」を「前条第五項」に改める。

  附則第四条第一項中「沖縄振興特別措置法」の下に「(平成十四年法律第十四号)」を加え、同条に次の一項を加える。

 3 道州制への移行のための改革基本法第三十三条に規定する日までの間、同法の定めるところにより内閣府に置かれる道州制国民会議は、本府に置く。

 (子ども・子育て支援法及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の一部改正)

第四条 子ども・子育て支援法及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成二十四年法律第六十七号)の一部を次のように改正する。

  第六十八条のうち内閣府設置法附則第二条第四項に一号を加える改正規定中「附則第二条第四項」を「附則第二条第五項」に改める。

  第六十九条のうち内閣府設置法附則第二条第四項第四号を削る改正規定中「附則第二条第四項第四号」を「附則第二条第五項第四号」に改める。


     理 由

 我が国の国のかたちを新たなものに転換することが喫緊の課題となっていることに鑑み、道州制への移行のための改革について、その基本理念及び基本方針、その実施の目標時期その他の基本となる事項を定めるとともに、道州制への移行のための改革推進本部及び道州制国民会議を設置することにより、これを総合的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   この法律の施行に伴い必要となる経費

 この法律の施行に伴い必要となる経費は、平年度約二億四千万円の見込みである。

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