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第一八三回

衆第三三号

   国及び地方公共団体の責任ある財政運営の確保を図るための財政の健全化の推進に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条−第五条)

 第二章 中期フレーム等(第六条−第十条)

 第三章 国の財務に関する情報の開示(第十一条)

 第四章 行政監視院(第十二条)

 第五章 地方財政の健全化(第十三条・第十四条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、国及び地方公共団体の財政収支が著しく不均衡な状況にある中で、財政の健全化を図ることが喫緊の課題であることに鑑み、財政の健全化の推進に関し、基本原則、財政健全化目標及び財政健全化基本方針を定め、並びに国の責務を明らかにするとともに、中期フレームの策定等、国の財務に関する情報の開示、行政監視院の設置、地方財政の健全化その他の財政の健全化の推進のため必要な事項を定めることにより、国及び地方公共団体の責任ある財政運営の確保を図り、もって我が国の経済の持続的な成長、持続可能な社会保障制度を基盤とする国民生活の安定向上及び将来の世代における負担の抑制に資することを目的とする。

 (基本原則)

第二条 財政の健全化の推進は、次に掲げる事項を基本原則として行われなければならない。

 一 名目経済成長率(各年度の国際連合の定めた基準に準拠して内閣府が作成する国民経済計算の体系(以下「国民経済計算の体系」という。)における名目国内総生産(以下この号及び第四条第一項において「名目国内総生産」という。)の額から当該年度の前年度の名目国内総生産の額を差し引いた額を当該前年度の名目国内総生産の額で除して得られる数値をいう。)について、平成二十六年度から平成三十二年度までの間においては平成二十三年度から平成三十二年度までの平均において百分の三を、平成三十三年度以降においては安定的な上昇を目指し、我が国の経済の持続的な成長に資する諸施策(第五条第一号及び第二号において「経済成長施策」という。)を着実に実施することにより、我が国の経済の成長に伴う歳入の増加を図ること。

 二 必要性、経済性、効率性、有効性等の低い事務又は事業に要する経費を削減し、行政に要する経費を一層抑制し、社会保障給付に要する費用を適正化する等特別会計を含む全ての歳出分野を対象とした改革を行うことにより、歳出の重点化及び効率化を図ること。

 三 所得課税、資産課税、租税特別措置その他の税制の抜本的な改革を行い、公平で、透明性が高く、かつ、国民が納得できる税制を確立しつつ、必要な財源の確保を図ること。

 (国の責務)

第三条 国は、前条に定める基本原則にのっとり、財政の健全化を推進する責務を有する。

 (財政健全化目標)

第四条 財政の健全化の推進は、一会計年度の国及び地方公共団体の財政赤字額が生じないようにすることを目指しつつ、次に掲げる当面の目標(以下「財政健全化目標」という。)を達成するよう行われるものとする。

 一 平成三十三年度以降において一会計年度末の国の長期債務残高及び地方公共団体の長期債務残高の合計額の当該会計年度の名目国内総生産の額に占める割合が安定的に低下する財政構造を実現すること。

 二 前号に掲げる財政健全化目標を達成するため、平成三十二年度までを目途に、一会計年度の国の基礎的財政収支額及び地方公共団体の基礎的財政収支額の合計額の黒字化を確実に達成するものとし、遅くとも平成二十七年度までに、当該合計額の対国内総生産比(当該合計額を零から差し引いた額の当該会計年度の名目国内総生産に占める割合をいう。以下この号において同じ。)を平成二十二年度の当該合計額の対国内総生産比の二分の一以下とすること。

2 前項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 一 国及び地方公共団体の財政赤字額 国民経済計算の体系における中央政府の純貸出あるいは純借入に関する項目に記録される額及び地方政府の純貸出あるいは純借入に関する項目に記録される額の合計額であって、零未満のものをいう。

 二 国の長期債務残高 次に掲げる国の債務の額の合計額をいう。

  イ 国債(特別会計に関する法律(平成十九年法律第二十三号)第六十二条第一項の規定により発行される公債及び政府短期証券を除く。第六条第二項第四号において同じ。)

  ロ 借入金(特別会計に関する法律附則第四条第一項の規定による借入金及び一時借入金を除く。)

 三 地方公共団体の長期債務残高 次に掲げる債務の額の合計額をいう。

  イ 地方公共団体の一般会計及び特定の事業を行う場合に設置する特別会計以外の特別会計(ロにおいて「一般会計等」という。)に係る地方債

  ロ 公営企業債であって、その償還について一般会計等において負担するもの

  ハ 特別会計に関する法律附則第四条第一項の規定による借入金

 四 国の基礎的財政収支額 国民経済計算の体系における中央政府の純貸出あるいは純借入に関する項目に記録される額に利子額の加除(支払利子の額を加え、受取利子の額を除くことをいう。次号において同じ。)をした額から、一時的要因による金額の控除(一時的な要因により生じた額であって、各年度における財政の健全化の進捗状況を把握する観点から除外すべきものとして政令で定める金額を控除することをいう。同号において同じ。)をした額をいう。

 五 地方公共団体の基礎的財政収支額 国民経済計算の体系における地方政府の純貸出あるいは純借入に関する項目に記録される額に利子額の加除をした額から、一時的要因による金額の控除をした額をいう。

 (財政健全化基本方針)

第五条 国は、財政健全化目標の達成に資するよう、次に掲げる事項を、国の財政の健全化の推進に当たっての当面の方針(附則第三条において「財政健全化基本方針」という。)とする。

 一 財政資金の重点的かつ効率的な配分、民間資金の活用、民間活動に係る規制の改革、国際的な経済連携の推進等の経済成長施策を着実に実施すること。

 二 経済成長施策に対する財政資金の重点的かつ効率的な配分が可能となるよう、財政の現況及び見通し等を踏まえ、国の制度全般について見直しを行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。

 三 毎年度、当初予算(財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第二十九条で定める補正予算(第五号において「補正予算」という。)及び同法第三十条で定める暫定予算以外の予算をいう。)を作成するに当たっては、公債の発行額を縮減し、公債依存度(一般会計の歳入の額における同法第四条第一項ただし書の規定により発行する公債に係る収入の額及び特例公債(同項ただし書の規定により発行される公債以外の公債であって、一会計年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、特別の法律に基づき発行されるものをいう。第五号において同じ。)に係る収入の額を合算した額の占める割合をいう。)を引き下げ、国の基礎的財政収支額(前条第二項第四号に規定する国の基礎的財政収支額をいう。第十条第一項第二号において同じ。)を改善する等着実に財政の健全化の推進が図られるよう配慮すること。

 四 中長期にわたり支出を要し、又は租税収入の減少となる施策を実施しようとするときは、できる限り、当該施策の実施に要すると見込まれる経費の額を上回る財源を確保し、公債に係る収入又は借入金をその財源に充てることのないようにすること。

 五 補正予算により追加される歳出の財源については、著しく異常かつ激甚な非常災害の発生又は経済活動の著しい停滞が国民生活等に及ぼす重大な影響に対処するための施策の実施に重大な支障が生ずるときを除き、特例公債に係る収入以外の歳入をもって充てること。

 六 行政改革の総合的かつ集中的な実行に関する法律(平成二十五年法律第▼▼▼号)第十三条第一項に規定する行政事業レビュー(以下この号において「行政事業レビュー」という。)を推進し、適切に行政事業レビューの結果を予算の作成に反映させること。

 七 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第五項に規定する個人番号の利用、情報通信技術の活用等を一層推進すること。

   第二章 中期フレーム等

 (中期フレームの策定等)

第六条 政府は、財政健全化目標の達成に資するよう、毎年度、財政法第十七条各項の送付に先立って、当該年度の翌年度以降三箇年度を一期とする国の財政の健全化の推進に関する計画(以下「中期フレーム」という。)を定めなければならない。

2 中期フレームには、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 前項の期間(以下この項及び第十条第一項において「対象期間」という。)における予算の大枠

 二 政府が対象期間の各年度において講じようとする財政の健全化の推進のための措置に関する基本的事項

 三 対象期間の初年度における予算の基本方針

 四 対象期間の初年度における国債の発行の限度額

 五 前各号に掲げるもののほか、対象期間における国の財政の健全化の推進のため必要な事項

3 内閣総理大臣は、中期フレームの案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

4 政府は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、中期フレームを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

5 政府は、経済社会情勢の変化を勘案し、及び財政健全化目標の達成状況を踏まえ、必要があると認めるときは、中期フレームを変更するものとする。

6 第三項及び第四項の規定は、中期フレームの変更について準用する。

 (中期フレームに従った国の予算の作成)

第七条 内閣は、中期フレームに従い、国の予算を作成するものとする。

 (予算調整指針の作成等)

第八条 財務大臣は、毎会計年度、財政法第十八条第一項の調整(以下この項及び次条において「予算調整」という。)を行おうとするときは、あらかじめ、予算調整に関する指針(以下この条において「予算調整指針」という。)を作成しなければならない。

2 財務大臣は、予算調整指針を作成しようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣の意見を聴かなければならない。

3 財務大臣は、予算調整指針を作成したときは、速やかに、これを財政法第十七条各項の規定による送付を行う者に通知するとともに、公表しなければならない。

 (予算調整の公開等)

第九条 予算調整に係る財務大臣と財政法第十七条各項の規定による送付を行った者との協議は、政令で定めるところにより、公開して行う。

2 前項の政令は、予算作成の手続の透明性が一層確保されるよう十分配慮して定めるものとする。

3 財政法第十七条各項の規定による送付を行った者は、予算調整に係る財務大臣との協議において用いた書類等(書類、調書その他文字、図形等人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物をいい、当該有体物に記載すべき事項を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)を含む。)をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

 (財政影響評価調書の作成等)

第十条 財務大臣は、財政法第二十一条(同法第二十九条の規定によりこれに準ずることとされる場合を含む。)の規定により予算を作成するときは、当該予算が執行されたならば当該予算に係る中期フレームに係る対象期間の各年度における次に掲げる国の財政状況に与えることとなる影響について国民経済計算の体系に基づき試算した調書(次項において「財政影響評価調書」という。)を作成しなければならない。

 一 国の長期債務残高(第四条第二項第二号に規定する国の長期債務残高をいう。)及び地方公共団体の長期債務残高(同項第三号に規定する地方公共団体の長期債務残高をいう。)並びにこれらの合計額

 二 国の基礎的財政収支額及び地方公共団体の基礎的財政収支額(第四条第二項第五号に規定する地方公共団体の基礎的財政収支額をいう。)並びにこれらの合計額

 三 その他政令で定める事項

2 国会に提出する予算には、財政法第二十八条各号に掲げる書類のほか、参考のために財政影響評価調書を添付しなければならない。

   第三章 国の財務に関する情報の開示

第十一条 政府は、国の財務書類等の作成及び財務情報の開示等に関する法律(平成二十五年法律第▼▼▼号)の定めるところにより、国の財務に関する情報を開示するものとする。

   第四章 行政監視院

第十二条 別に法律で定めるところにより、国会に、内外の経済及び財政の動向を分析し、並びにその分析の結果と中期フレームとの整合性の検証及び中期フレームの実施状況の監視を行い、その結果に基づいて、財政の健全化の推進のため必要な措置に関して意見を述べるとともに、国の行政機関の業務に関する監視、調査及び評価を行い、その結果に基づいて必要な法律の制定及び改廃等に関して意見を述べる行政監視院を置くものとする。

   第五章 地方財政の健全化

 (地方公共団体の責務)

第十三条 地方公共団体は、財政健全化目標の達成に資するよう、国の財政の健全化の推進に関する施策に並行して、その財政の自主的かつ自立的な健全化を図るものとする。

 (政府の措置)

第十四条 政府は、地方公共団体に対し、その財政の自主的かつ自立的な健全化を推進するよう要請し、並びにその円滑な推進が図られるよう適切に行政上及び財政上の措置を講ずるとともに、国と地方公共団体との適切な役割分担を踏まえ、国から地方公共団体に対し財源及び権限を移譲する等の地域主権改革を総合的かつ計画的に推進するものとする。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第十一条の規定は、国の財務書類等の作成及び財務情報の開示等に関する法律の施行の日から施行する。

 (適用区分)

第二条 第二章の規定は、平成二十六年度の国の予算から適用する。

 (著しく異常かつ激甚な非常災害の発生又は経済活動の著しい停滞の場合における財政健全化目標及び財政健全化基本方針の見直し)

第三条 著しく異常かつ激甚な非常災害の発生又は経済活動の著しい停滞が国民生活等に及ぼす重大な影響に対処するための施策の実施に重大な支障が生ずるときは、速やかに、財政健全化目標及び財政健全化基本方針について検討が加えられ、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置が講ぜられるものとする。

 (国の財政の健全化及び透明化の推進に有効な情報システムの導入)

第四条 政府は、予算の項目又は事務若しくは事業ごとに予算の執行状況等(支出の日時、相手方、額その他の支出の状況を含む。)を随時確認することができる情報処理システム、国の収入及び支出について企業会計の慣行を参考とした会計処理を自動的に行う機能を有する情報システムその他国の財政の健全化及び透明化の推進に有効な情報システムを導入することができるようにするため必要な措置を講ずるものとする。

 (財務に関する事務の迅速な処理を可能とする情報システムの導入等についての検討)

第五条 政府は、前年度の決算が翌年度の予算の作成に適切に反映されるようにするため、財政法第十七条各項の送付に先立って同法第三十七条第一項の送付ができるようにする等財務に関する事務の迅速な処理を可能とする情報システムの導入その他国の財政制度の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (財政構造改革の推進に関する特別措置法等の廃止)

第六条 次に掲げる法律は、廃止する。

 一 財政構造改革の推進に関する特別措置法(平成九年法律第百九号)

 二 財政構造改革の推進に関する特別措置法の停止に関する法律(平成十年法律第百五十号)


     理 由

 国及び地方公共団体の財政収支が著しく不均衡な状況にある中で、財政の健全化を図ることが喫緊の課題であることに鑑み、国及び地方公共団体の責任ある財政運営の確保を図るため、財政の健全化の推進に関し、基本原則、財政健全化目標及び財政健全化基本方針を定め、並びに国の責務を明らかにするとともに、中期フレームの策定等、国の財務に関する情報の開示、行政監視院の設置、地方財政の健全化その他の財政の健全化の推進のため必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 

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