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第一八九回

衆第一四号

   農地・水等共同活動の促進に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、農地・水等共同活動の促進を図るため、その基本理念、農林水産大臣が策定する基本指針等について定めるとともに、農地・水等共同活動促進事業について、その事業計画の認定の制度を設けるとともに、これを推進するための措置等について定め、もって農業生産活動の維持を図り、あわせて多面的機能(食料・農業・農村基本法(平成十一年法律第百六号)第三条に規定する多面的機能をいう。以下同じ。)の維持に資することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 農地・水等共同活動の促進は、農地・水等共同活動が、農業生産活動を維持し、あわせて多面的機能を維持する上で不可欠であるとともに、良好な地域社会の維持及び形成に重要な役割を果たしているにもかかわらず、農村における過疎化、高齢化、農業に携わらない住民の増加等により農地・水等共同活動の充実した実施が困難となっている状況に鑑み、多くの農業者その他の地域住民の参加を得て、地域の実情を踏まえ、効果の高い農地・水等共同活動が広く行われるように実施されなければならない。

 (定義)

第三条 この法律において「農地・水等共同活動」とは、地域において行われる共同活動であって、農用地の保全又は利用上必要な農業用用排水施設、農業用道路等の施設の維持又は改良その他の農業生産活動の基盤の維持及び整備をし、あわせて多面的機能の維持に資するために行われるものをいう。

2 この法律において「農地・水等共同活動促進事業」とは、農業者の組織する団体その他の農林水産省令で定める者(以下「農業者団体等」という。)が実施する農地・水等共同活動であって、次に掲げるものをいう。

 一 農用地の保全又は利用上必要な農業用用排水施設、農業用道路等の施設(これらの施設と一体的に管理することが適当なものとして農林水産省令で定める土地を含む。以下同じ。)の管理に関する事業であって、次に掲げる活動のいずれかを行うもの

  イ 当該施設の維持その他の主として当該施設の機能の保持を図る活動であって、農林水産省令で定めるもの

  ロ 当該施設の改良その他の主として当該施設の機能の増進を図る活動であって、農林水産省令で定めるもの

 二 その他農林水産省令で定める事業

3 この法律において「農用地」とは、耕作の目的又は主として耕作若しくは養畜の事業のための採草若しくは家畜の放牧の目的に供される土地をいう。

 (基本指針)

第四条 農林水産大臣は、農地・水等共同活動の促進に関する基本指針(以下「基本指針」という。)を定めるものとする。

2 基本指針においては、次に掲げる事項につき、次条第一項に規定する基本方針の指針となるべきものを定めるものとする。

 一 農地・水等共同活動の促進の意義及び目標に関する事項

 二 農地・水等共同活動促進事業の実施を推進すべき区域の設定に関する基本的な事項

 三 農地・水等共同活動促進事業に関する基本的な事項

 四 前三号に掲げるもののほか、農地・水等共同活動の促進に関する重要事項

3 基本指針は、次に掲げる事項に配慮されたものでなければならない。

 一 農地・水等共同活動の促進は、農業振興地域の整備に関する法律(昭和四十四年法律第五十八号)第八条第二項第一号に規定する農用地区域内の農用地に係るものだけでなく、これを必要とするあらゆる農用地に係るものについて行われなければならないこと。

 二 農地・水等共同活動の促進は、地域の実情を踏まえつつ、地域間の不公平感が払拭されるよう行われなければならないこと。

 三 農地・水等共同活動の促進は、その成果が適切に評価され、その結果が農地・水等共同活動の促進に関する措置に適切に反映されるよう行われなければならないこと。

 四 農地・水等共同活動の促進に当たっては、多額の経費を要する農地・水等共同活動について必要に応じ複数年にわたり資金を積み立てた上で実施する等その効率的かつ効果的な実施が確保されなければならないこと。

4 農林水産大臣は、基本指針を定めようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。

5 農林水産大臣は、基本指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するとともに、関係行政機関の長及び都道府県知事に通知しなければならない。

6 前三項の規定は、基本指針の変更について準用する。

 (基本方針)

第五条 都道府県知事は、基本指針に即して、当該都道府県の区域内について、農地・水等共同活動の促進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めることができる。

2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 農地・水等共同活動の促進の目標

 二 農地・水等共同活動促進事業の実施を推進すべき区域の基準

 三 次条第一項に規定する促進計画の作成に関する事項

 四 前三号に掲げるもののほか、農地・水等共同活動の促進に関する事項

3 都道府県知事は、基本方針を定めようとするときは、農林水産大臣に協議しなければならない。

4 都道府県知事は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するとともに、関係市町村に通知し、かつ、農林水産大臣に報告しなければならない。

5 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。

 (促進計画)

第六条 市町村は、基本方針に即して、当該市町村の区域内について、農地・水等共同活動の促進に関する計画(以下「促進計画」という。)を作成することができる。

2 促進計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 促進計画の区域

 二 促進計画の目標

 三 第一号の区域内においてその実施を推進する農地・水等共同活動促進事業に関する事項

 四 第一号の区域内において特に重点的に農地・水等共同活動促進事業の実施を推進する区域を定める場合にあっては、その区域

 五 前各号に掲げるもののほか、促進計画の実施に関し当該市町村が必要と認める事項

3 促進計画は、農業振興地域整備計画その他法律の規定による地域の農業の振興に関する計画との調和が保たれたものでなければならない。

4 市町村は、促進計画を作成しようとするときは、あらかじめ、都道府県知事に協議しなければならない。

5 市町村は、促進計画を作成したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、都道府県知事に当該促進計画の写しを送付しなければならない。

6 前三項の規定は、促進計画の変更について準用する。

 (事業計画の認定)

第七条 促進計画に基づいて当該促進計画に定められた前条第二項第一号の区域内において農地・水等共同活動促進事業を実施しようとする農業者団体等は、その実施しようとする農地・水等共同活動促進事業に関する計画(以下「事業計画」という。)を作成し、当該促進計画を作成した市町村(以下「特定市町村」という。)の認定を申請することができる。

2 事業計画においては、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 一 農地・水等共同活動促進事業の目標

 二 農地・水等共同活動促進事業の内容に関する次に掲げる事項

  イ 農地・水等共同活動促進事業の種類及び実施区域

  ロ 第三条第二項第一号に掲げる事業を実施しようとする場合にあっては、当該事業に係る施設の所在及び種類、当該施設の管理に関し行う同号イに掲げる活動又は同号ロに掲げる活動の別及び当該活動の内容その他農林水産省令で定める事項

 三 農地・水等共同活動促進事業の実施期間

 四 その他農林水産省令で定める事項

3 農業者団体等であって農林水産省令で定めるものは、土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第八十五条第一項に規定する都道府県営土地改良事業によって生じた同法第二条第二項第一号に規定する土地改良施設(次項において「土地改良施設」という。)について第三条第二項第一号に掲げる事業(同号ロに掲げる活動を行うものに限る。)を実施しようとするときは、前項第二号ロに掲げる事項に、第十条第一項の規定による委託を受けて行う当該土地改良施設についての管理に関する事項を記載することができる。

4 前項に規定する農業者団体等は、同項の規定により事業計画に土地改良施設についての管理に関する事項を記載しようとするときは、当該事項について、あらかじめ、都道府県(土地改良法第九十四条の十第一項の規定により当該都道府県が当該土地改良施設を同法第九十四条の三第一項に規定する土地改良区等に管理させている場合にあっては、当該土地改良区等を含む。)の同意を得なければならない。

5 特定市町村は、第一項の認定の申請があった場合において、その事業計画が次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、その認定をするものとする。

 一 当該事業計画が促進計画に照らし適切なものであること。

 二 当該事業計画に定める事項が当該事業計画に係る農地・水等共同活動促進事業を確実に実施するために適切なものであること。

 三 当該事業計画に記載された農地・水等共同活動促進事業の実施区域(当該事業計画に二以上の農地・水等共同活動促進事業が記載されている場合にあっては、その全ての実施区域)内に、現に耕作又は養畜の目的に供されておらず、かつ、引き続き耕作又は養畜の目的に供されないと見込まれる農用地として農林水産省令で定めるものがないこと。

6 特定市町村は、第一項の認定をしたときは、遅滞なく、当該認定に係る事業計画の概要(当該認定に係る事業計画に、前条第二項第四号の規定により定められた区域内において実施される農地・水等共同活動促進事業が記載されている場合にあっては、その旨を含む。)を公表しなければならない。

7 第一項の認定の手続については、申請する者の負担ができるだけ軽減されるよう配慮されるものとする。

 (事業計画の変更等)

第八条 前条第一項の認定を受けた農業者団体等(以下「認定農業者団体等」という。)は、当該認定に係る事業計画の変更をしようとするときは、特定市町村の認定を受けなければならない。ただし、その変更が農林水産省令で定める軽微な変更であるときは、この限りでない。

2 特定市町村は、認定農業者団体等が前条第一項の認定に係る事業計画(前項の変更の認定又は同項ただし書の農林水産省令で定める軽微な変更があったときは、その変更後のもの。以下この条において「認定事業計画」という。)に従って当該認定事業計画に記載された農地・水等共同活動促進事業(以下「認定事業」という。)を実施していないと認めるときは、当該認定を取り消すことができる。

3 特定市町村は、認定事業計画が前条第五項各号のいずれかに適合しないものとなったと認めるときは、認定農業者団体等に対し、当該認定事業計画の変更を指示し、又は同条第一項の認定を取り消すことができる。

4 前条第四項から第七項までの規定は、認定事業計画の変更について準用する。この場合において、同条第五項から第七項までの規定中「第一項」とあるのは、「次条第一項」と読み替えるものとする。

 (費用の補助)

第九条 特定市町村は、認定農業者団体等に対し、認定事業(第三条第二項第二号に掲げる事業を除く。)の実施に要する費用の一部を補助することができる。

2 国は、都道府県が、前項の規定による補助をする特定市町村に対し当該補助に要する費用の一部を補助する場合には、当該都道府県に対し、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、当該補助に要する費用の一部を補助することができる。

 (土地改良法の特例)

第十条 都道府県は、認定事業を行う認定農業者団体等(第七条第四項(第八条第四項において準用する場合を含む。)の同意をした相手方であるものに限る。)に対し、当該同意に係る施設の管理の全部又は一部を委託することができる。

2 土地改良法第九十四条の六第二項の規定は、前項の規定による委託について準用する。この場合において、同条第二項中「国営土地改良事業」とあるのは「都道府県営土地改良事業」と、「土地改良財産たる土地改良施設(農林水産省令で定める」とあるのは「土地改良施設(農地・水等共同活動の促進に関する法律第七条第四項(同法第八条第四項において準用する場合を含む。)の同意に係る」と、「準拠して」とあるのは「準拠するとともに、同法第八条第二項に規定する認定事業計画に記載された同法第七条第三項に規定する当該土地改良施設についての管理に関する事項の内容に即して」と読み替えるものとする。

 (国等の援助等)

第十一条 国及び関係地方公共団体は、認定農業者団体等に対し、認定事業の確実かつ効果的な実施に関し必要な助言、指導その他の援助を行うよう努めるものとする。

2 前項に定めるもののほか、農林水産大臣、関係行政機関の長、関係地方公共団体及び認定農業者団体等は、認定事業の円滑な実施が促進されるよう、相互に連携を図りながら協力しなければならない。

 (報告の徴収)

第十二条 特定市町村の長は、この法律の施行に必要な限度において、認定農業者団体等に対し、認定事業の実施状況について報告を求めることができる。

 (罰則)

第十三条 前条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、三十万円以下の罰金に処する。

2 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同項の刑を科する。

3 法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人がその訴訟行為につき法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成二十八年四月一日から施行する。ただし、次条の規定は、公布の日から施行する。

 (準備行為)

第二条 基本指針の策定、基本方針の策定及び促進計画の作成のために必要な準備行為は、この法律の施行前においても行うことができる。

 (農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律の廃止)

第三条 農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律(平成二十六年法律第七十八号)は、廃止する。

 (農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律の廃止に伴う経過措置)

第四条 前条の規定による廃止前の農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律第八条第一項の認定農業者団体等に関する報告の徴収については、なお従前の例による。

2 この法律の施行前にした行為及び前項の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

3 前二項に定めるもののほか、農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律の廃止に伴い必要な経過措置は、政令で定める。

 (検討)

第五条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。


     理 由

 農地・水等共同活動の促進を図るため、その基本理念、農林水産大臣が策定する基本指針等について定めるとともに、農地・水等共同活動促進事業について、その事業計画の認定の制度を設けるとともに、これを推進するための措置等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   本案施行に要する経費

 本案施行に要する経費としては、平年度約三百二十億円の見込みである。

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