衆議院

メインへスキップ



第一九三回

衆第二五号

   教育に係る経済的負担の軽減を図るための学校教育の無償化等の推進に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、教育を受ける権利を保障する日本国憲法及び教育を受ける権利に関する経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の理念並びに教育基本法(平成十八年法律第百二十号)の精神にのっとり、教育が国民の人格の完成に寄与するとともに、その成果を広く社会に提供することを通じて社会の発展に資するものであることに鑑み、公の性質を有する教育に係る経済的負担を軽減し、教育の機会均等を図るため、学校教育の無償化等について、その基本的な理念及び方針、国の責務その他の基本となる事項を定めることにより、これを総合的に推進することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「学校等」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校、同法第百二十四条に規定する専修学校(同法第百二十五条第一項に規定する一般課程に係るものについては、高等学校の課程に類する課程に係るものに限る。)、同法第百三十四条第一項に規定する各種学校(高等学校の課程に類する課程に係るものに限る。)並びに保育所(児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第三十九条第一項に規定する保育所をいう。第六条第一号及び附則第二項において同じ。)及び認定こども園(就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)第二条第六項に規定する認定こども園をいう。同号及び附則第二項において同じ。)のうち満三歳から小学校就学の始期に達するまでの者に対する教育を行う部分をいう。

2 この法律において「学校教育の無償化等」とは、義務教育諸学校(学校教育法に規定する小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程並びに特別支援学校の小学部及び中学部をいう。以下同じ。)以外の学校等の授業料(保育料を含む。)及び入学金(以下「授業料等」という。)を徴収しないこととするための措置(その授業料等の額がその学校等の種類ごとの授業料等の標準的な額を超える場合にあっては、当該額に相当する金額をその授業料等に充てるものとして支給するための措置)その他の教育に係る経済的負担の軽減に関する措置をいう。

 (基本理念)

第三条 学校教育の無償化等は、教育は個人がその人格を磨き、豊かな人生を送ることができるようにするものであるとともに、教育はその成果が社会に提供されることを通じて社会の発展に資するものであるという認識の下に、全ての国民について、その経済的な状況にかかわりなく、その意欲及び能力に応じた教育の機会が学校等において確保されるよう行われるものとするとともに、これに要する費用の負担を社会の構成員が広く分かち合うことを基本として行われるものとする。

 (国の責務)

第四条 国は、前条に定める基本理念にのっとり、学校教育の無償化等に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

 (法制上の措置等)

第五条 政府は、次条に定める基本方針に基づく施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を速やかに講じなければならない。この場合において、同条第一号に掲げる基本方針に基づく施策を実施するため必要な法制上の措置についてはこの法律の施行後一年以内を目途として、同条第三号及び第四号に掲げる基本方針に基づく施策を実施するため必要な法制上の措置についてはこの法律の施行後二年以内を目途として、講ずるものとする。

 (基本方針)

第六条 学校教育の無償化等は、次に掲げる基本方針に基づき、推進されるものとする。

 一 就学前教育施設(幼稚園(特別支援学校の幼稚部を含む。)並びに保育所及び認定こども園のうち満三歳から小学校就学の始期に達するまでの者に対する教育を行う部分をいう。以下この号及び第七号において同じ。)の授業料等を就学前教育施設における教育を受ける者の生計を維持する者の収入の状況にかかわりなく徴収しないこととする措置(その授業料等の額が地方公共団体の設置する就学前教育施設の種類ごとの授業料等の標準的な額を超える場合にあっては、当該額に相当する金額をその授業料等に充てるものとして支給する措置)を講ずること。

 二 高等学校等(高等学校(学校教育法に規定する中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部を含む。第八号において同じ。)及び高等専門学校(第一学年から第三学年までに限る。)並びに専修学校及び各種学校(これらのうち高等学校の課程に類する課程に係るものに限る。)をいう。以下この号及び第七号において同じ。)の授業料等を高等学校等における教育を受ける者及びその生計を維持する者の収入の状況にかかわりなく徴収しないこととする措置(その授業料等の額が地方公共団体の設置する高等学校等の種類ごとの授業料等の標準的な額を超える場合にあっては、当該額に相当する金額をその授業料等に充てるものとして支給する措置)を講ずること。

 三 大学等(大学、高等専門学校(第四学年及び第五学年に限る。)及び専修学校(学校教育法第百二十五条第一項に規定する専門課程であって職業に必要な高度の技能及びこれに関する知識を習得させるための教育を行うものに係るものに限る。)をいう。以下この号において同じ。)の授業料等を大学等における教育を受ける者及びその生計を維持する者の収入の状況にかかわりなく徴収しないこととする措置(その授業料等の額が国(国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)第二条第一項に規定する国立大学法人及び独立行政法人国立高等専門学校機構を含む。)及び地方公共団体(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第六十八条第一項に規定する公立大学法人を含む。)の設置する大学等の種類ごとの授業料等の標準的な額を超える場合にあっては、当該額に相当する金額をその授業料等に充てるものとして支給する措置)を講ずること。この場合において、当該支給する措置を講じても、なお教育を受ける者及びその生計を維持する者の収入の状況に照らして就学困難と認められる者については、当該支給する措置と併せてその授業料等の額から当該支給する措置により受けることになる額を控除して得た額を限度とする金額をその授業料等に充てるものとして支給する措置を講ずること。

 四 学生等(大学及び高等専門学校の学生並びに専修学校の専門課程の生徒をいう。次号において同じ。)の修学の援助を行うため、前二号に掲げる措置と併せて、無利息で学資としての資金の貸与を行う措置並びに当該資金の返還の期限及び方法を当該貸与を受けた者の収入の状況その他の事情を勘案したものとする措置を講ずるとともに、学資としての資金の支給に関する制度について、その運用の状況及び前号に掲げる措置を踏まえた検討を加え、必要な見直しを行うこと。

 五 前二号に掲げる措置が講ぜられるまでの間における学資(学生等の授業料等に充てる資金を含む。以下この号において同じ。)としての資金の貸与及び支給について、次のイからハまでの措置を講ずること。

  イ 学資として貸与する資金を無利息とする措置

  ロ 学資として貸与された資金の返還の期限及び方法をその貸与を受けた者の収入の状況その他の事情を勘案したものとする措置

  ハ 学資として支給する資金の支給対象の拡大及び支給額の引上げに係る措置

 六 地方公共団体の設置する義務教育諸学校において、学校給食に要する経費の負担を児童及び生徒に求めないこととする措置を講ずること。この場合において、義務教育諸学校における食育の推進を図る観点から適切な学校給食が地方公共団体の設置する全ての義務教育諸学校において実施されるよう、必要な施設又は設備に要する経費の補助その他の必要な措置を併せて講ずること。

 七 前各号に掲げるもののほか、就学前教育施設、義務教育諸学校及び高等学校等における教育に要する経費については、これらにおいて教育を受ける者に係る経済的負担の状況を踏まえ、その軽減を図るために必要な措置を講ずること。

 八 貧困の状況にある義務教育諸学校及び高等学校の児童及び生徒については、授業の終了後においてその施設を利用して行う学習の支援その他のその児童及び生徒の教育に関する支援を図るための措置を講ずること。

 九 私立の学校(私立学校(私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)第二条第三項に規定する私立学校をいう。)並びに私立の専修学校(学校教育法第百二十四条に規定する専修学校をいう。)及び各種学校(同法第百三十四条第一項に規定する各種学校をいう。)をいう。以下この号において同じ。)に対する助成については、学校教育における私立の学校の果たす重要な役割に鑑み、私立の学校の幼児、児童、生徒又は学生に係る修学上の経済的負担の軽減が図られるよう、その拡充を図るための措置を講ずること。

 (財源の確保)

第七条 学校教育の無償化等については、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成二十四年法律第六十八号)第三条の施行により増加する消費税の収入の活用、所得税の見直し、資産課税の最高税率の引上げ、歳出の削減その他の措置により必要な財源を確保しつつ、これを講ずるものとする。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。

 (待機児童問題の解消及び保育の無償化等に関する検討)

2 国は、満三歳未満の者に対して行われる保育に関し、待機児童(保育所又は認定こども園における保育を行うことの申込みを行った保護者の当該申込みに係る児童であって保育所又は認定こども園における保育が行われていないものをいう。)に関する問題を解消するための措置並びに保育所及び認定こども園における保育並びに子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)第七条第五項に規定する地域型保育を無償とする等の措置について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。


     理 由

 学校教育の無償化等を総合的に推進するため、その基本的な理念及び方針、国の責務その他の基本となる事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.