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第一九六回

衆第三八号

   介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 介護・障害福祉従事者処遇改善助成金等の支給(第三条−第七条)

 第三章 介護報酬の基準及び障害福祉サービス等報酬の基準を定めるに当たっての配慮(第八条)

 第四章 雑則(第九条−第十一条)

 第五章 罰則(第十二条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、要介護者等(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第七条第五項の要介護者等をいう。以下同じ。)並びに障害者及び障害児が可能な限り自立した生活を営むことができるようにし、その生活の質を維持向上させること並びにこれらの者の家族が介護のために離職を余儀なくされる等の事態が生じないようこれらの者の家族の負担を軽減することについて介護・障害福祉従事者が重要な役割を担っているにもかかわらず、その賃金が他の業種に属する事業に従事する者と比較して低い水準にあり、その職業生活の安定及び離職の防止を図ることが課題となっていること等に鑑み、介護・障害福祉従事者の賃金の改善のための特別の措置等を定めることにより、優れた人材を確保し、もって要介護者等並びに障害者及び障害児に対するサービスの水準の向上に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「介護・障害福祉事業者等」とは、次に掲げる者をいう。

 一 介護保険法第四十一条第一項に規定する指定居宅サービス事業者、同法第四十二条の二第一項に規定する指定地域密着型サービス事業者、同法第八条第二十五項に規定する介護保険施設の開設者、同法第五十三条第一項に規定する指定介護予防サービス事業者及び同法第五十四条の二第一項に規定する指定地域密着型介護予防サービス事業者並びに同法第四十二条第一項第二号に規定する基準該当居宅サービスを行う事業所の設置者及び同法第五十四条第一項第二号に規定する基準該当介護予防サービスを行う事業所の設置者

 二 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第二十九条第一項に規定する指定障害福祉サービス事業者及び同項に規定する指定障害者支援施設の設置者並びに同法第三十条第一項第二号イに規定する基準該当事業所の設置者及び同号ロに規定する基準該当施設の設置者

 三 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第二十一条の五の三第一項に規定する指定障害児通所支援事業者及び同法第二十四条の二第一項に規定する指定障害児入所施設の設置者並びに同法第二十一条の五の四第一項第二号に規定する基準該当通所支援を行う事業所の設置者

 四 前三号に掲げる者のほか、これらの者に類する者として政令で定めるもの

2 この法律において「介護・障害福祉従事者」とは、介護・障害福祉事業者等の従業者であって専ら当該介護・障害福祉事業者等が行う介護保険法の保険給付に係る保健医療サービス又は福祉サービス、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第五条第一項に規定する障害福祉サービス、児童福祉法第六条の二の二第一項に規定する障害児通所支援又は同法第七条第二項に規定する障害児入所支援その他の保健医療サービス又は福祉サービスのうち政令で定めるものに従事するものとして政令で定めるものをいう。

   第二章 介護・障害福祉従事者処遇改善助成金等の支給

 (介護・障害福祉従事者処遇改善助成金の支給)

第三条 都道府県知事は、介護・障害福祉従事者の賃金を改善するための措置を講ずる介護・障害福祉事業者等に対し、その申請に基づき、当該措置に要する費用に充てるための助成金(以下「介護・障害福祉従事者処遇改善助成金」という。)を支給する。

2 介護・障害福祉従事者処遇改善助成金の支給の要件、額、申請の方法その他介護・障害福祉従事者処遇改善助成金の支給に関し必要な事項は、政令で定める。

3 前項の政令を定めるに当たっては、要介護者等並びに障害者及び障害児が可能な限り自立した生活を営むことができるようにし、その生活の質を維持向上させること並びにこれらの者の家族が介護のために離職を余儀なくされる等の事態が生じないようこれらの者の家族の負担を軽減することについて介護・障害福祉従事者が重要な役割を担っていること並びに介護・障害福祉従事者が従事する業務が身体的及び精神的負担の大きいものであることを踏まえるとともに、介護・障害福祉従事者が従事する業務の種類、介護・障害福祉事業者等における介護・障害福祉従事者の職責等に応じた処遇の体系、他の業種に属する事業に従事する者の平均的な賃金水準等を勘案し、かつ、第一項の申請に係る介護・障害福祉事業者等の負担に配慮するものとする。

4 前項に定めるもののほか、第二項の政令において介護・障害福祉従事者処遇改善助成金の額を定めるに当たっては、必要な財源を確保しつつ、段階的に引き上げるものとする。

 (介護・障害福祉従事者等処遇改善特別助成金の支給)

第四条 都道府県知事は、介護・障害福祉従事者及びその他の介護・障害福祉事業者等の従業者の賃金を改善するための措置を講ずる介護・障害福祉事業者等(介護・障害福祉従事者処遇改善助成金の支給を受けている者を除く。第三項において同じ。)に対し、その申請に基づき、当該措置に要する費用に充てるための助成金(以下「介護・障害福祉従事者等処遇改善特別助成金」という。)を支給する。

2 介護・障害福祉従事者等処遇改善特別助成金の支給の要件、額、申請の方法その他介護・障害福祉従事者等処遇改善特別助成金の支給に関し必要な事項は、政令で定める。

3 前項の政令を定めるに当たっては、要介護者等並びに障害者及び障害児が可能な限り自立した生活を営むことができるようにし、その生活の質を維持向上させること並びにこれらの者の家族が介護のために離職を余儀なくされる等の事態が生じないようこれらの者の家族の負担を軽減することについて介護・障害福祉従事者が重要な役割を担っていること並びに介護・障害福祉従事者が従事する業務が身体的及び精神的負担の大きいものであることを踏まえるとともに、介護・障害福祉事業者等の実情を勘案し、かつ、第一項の申請に係る介護・障害福祉事業者等の負担に配慮するものとする。

4 前項に定めるもののほか、第二項の政令において介護・障害福祉従事者等処遇改善特別助成金の額を定めるに当たっては、必要な財源を確保しつつ、段階的に引き上げるものとする。

 (介護・障害福祉従事者処遇改善助成金等の支払に関する事務の委託等)

第五条 都道府県知事は、介護・障害福祉従事者処遇改善助成金及び介護・障害福祉従事者等処遇改善特別助成金(以下「介護・障害福祉従事者処遇改善助成金等」という。)の支払に関する事務を国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会(以下この条において「連合会」という。)に委託することができる。

2 連合会は、国民健康保険法その他の法律の規定による業務のほか、前項の規定により都道府県知事から委託を受けて行う介護・障害福祉従事者処遇改善助成金等の支払に関する業務を行う。

3 介護保険法第百七十七条、第百七十八条及び第百九十八条の規定は、連合会が前項の規定により行う業務について準用する。この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める。

 (不正利得の徴収)

第六条 偽りその他不正の手段により介護・障害福祉従事者処遇改善助成金等の支給を受けた者があるときは、都道府県知事は、国税徴収の例により、その者から、その支給を受けた介護・障害福祉従事者処遇改善助成金等の額に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。

2 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

 (交付金)

第七条 国は、介護・障害福祉従事者処遇改善助成金等の支給に要する費用の全額に相当する金額を都道府県に交付する。

2 国は、毎年度、予算の範囲内で、介護・障害福祉従事者処遇改善助成金等に関する事務の執行に要する費用に相当する金額を都道府県に交付する。

   第三章 介護報酬の基準及び障害福祉サービス等報酬の基準を定めるに当たっての配慮

第八条 厚生労働大臣は、介護・障害福祉従事者の人材を確保して、要介護者等並びに障害者及び障害児に対する質の高いサービスの提供を確保するためには、介護・障害福祉従事者が、将来にわたり介護・障害福祉従事者としての職業生活を設計できるようにすることが必要であることに鑑み、介護報酬の基準及び障害福祉サービス等報酬の基準を定めるに当たっては、小規模の介護・障害福祉事業者を含む全ての介護・障害福祉事業者等のサービスの提供の安定的な継続並びに介護・障害福祉従事者の賃金の改善による将来にわたる職業生活の安定及び離職の防止に資するよう配慮しなければならない。

   第四章 雑則

 (報告等)

第九条 都道府県知事は、この法律の施行に必要な限度において、介護・障害福祉事業者等若しくは介護・障害福祉事業者等であった者若しくは当該介護・障害福祉事業者等の従業者であった者(以下この項において「介護・障害福祉事業者等であった者等」という。)に対し、報告若しくは帳簿書類その他の物件の提出若しくは提示を命じ、介護・障害福祉事業者等若しくは当該介護・障害福祉事業者等の従業者若しくは介護・障害福祉事業者等であった者等に対し出頭を求め、又は当該職員に関係者に対して質問させ、若しくは当該介護・障害福祉事業者等の事業所若しくは施設、事務所その他その業務に関係のある場所に立ち入り、その帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定による質問又は立入検査を行う場合においては、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (事務の区分)

第十条 第三条第一項、第四条第一項、第六条第一項及び前条第一項の規定により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。

 (厚生労働省令への委任)

第十一条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、厚生労働省令で定める。

   第五章 罰則

第十二条 第九条第一項の規定による報告若しくは物件の提出若しくは提示をせず、若しくは虚偽の報告若しくは虚偽の物件の提出若しくは提示をし、又は同項の規定による当該職員の質問に対して、答弁せず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三十万円以下の罰金に処する。

2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同項の刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成三十一年四月一日から施行する。ただし、第八条の規定は、公布の日から施行する。

 (この法律の廃止)

第二条 この法律は、介護保険制度並びに障害者及び障害児に対する保健医療サービス及び福祉サービスに係る制度について見直しが行われ、介護・障害福祉従事者に関し、優れた人材の確保に支障がなくなったときは、廃止するものとする。

 (地方自治法の一部改正)

第三条 地方自治法の一部を次のように改正する。

  別表第一に次のように加える。

介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法(平成三十年法律第▼▼▼号)

第三条第一項、第四条第一項、第六条第一項及び第九条第一項の規定により都道府県が処理することとされている事務

 (地方財政法の一部改正)

第四条 地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)の一部を次のように改正する。

  第十条第十三号の次に次の一号を加える。

  十三の二 介護・障害福祉従事者処遇改善助成金及び介護・障害福祉従事者等処遇改善特別助成金の支給に要する経費

 (社会保険労務士法の一部改正)

第五条 社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

  別表第一第二十号の十四の次に次の一号を加える。

  二十の十四の二 介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法(平成三十年法律第▼▼▼号)


     理 由

 要介護者等並びに障害者及び障害児が可能な限り自立した生活を営むことができるようにし、その生活の質を維持向上させること並びにこれらの者の家族が介護のために離職を余儀なくされる等の事態が生じないようこれらの者の家族の負担を軽減することについて介護・障害福祉従事者が重要な役割を担っているにもかかわらず、その賃金が他の業種に属する事業に従事する者と比較して低い水準にあり、その職業生活の安定及び離職の防止を図ることが課題となっていること等に鑑み、介護・障害福祉従事者に優れた人材を確保し、もって要介護者等並びに障害者及び障害児に対するサービスの水準の向上に資するため、介護・障害福祉従事者の賃金の改善のための特別の措置等を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   本案施行に要する経費

 本案施行に要する経費としては、初年度約千八百九十億円の見込みである。

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