衆議院

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第一九八回

衆第四号

   労働安全衛生法の一部を改正する法律案

 労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)の一部を次のように改正する。

 目次中「第七章の二 快適な職場環境の形成のための措置(第七十一条の二−第七十一条の四)」を

第七章の二 快適な職場環境の形成のための措置(第七十一条の二−第七十一条の四)

 

 

第七章の三 労働者に苦痛を与えるおそれのある言動に関する措置(第七十一条の五−第七十一条の九)

に改める。

 第七章の二の次に次の一章を加える。

   第七章の三 労働者に苦痛を与えるおそれのある言動に関する措置

 (業務上の優位性を利用して行われる労働者に苦痛を与えるおそれのある言動に関し事業者の講ずべき措置)

第七十一条の五 事業者は、次の各号に掲げる者が、当該各号に掲げる労働者に対し、当該労働者との間における業務上の優位性を利用して行う当該労働者に精神的又は身体的な苦痛を与えるおそれのある言動であつて業務上適正な範囲を超えるものを行い、及び当該言動により当該労働者の職場環境が害されることのないよう、当該事業者の従業者に対する周知及び啓発、当該言動に係る実態の把握、当該事業者の労働者からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備、当該言動を受けた労働者及び当該言動を行つた者に係る迅速かつ適切な対応その他の必要な措置を講じなければならない。

 一 当該事業者又はその従業者 当該事業者の労働者又は当該事業者以外の事業を行う者の労働者

 二 当該事業者以外の事業を行う者又はその従業者 当該事業者の労働者

2 厚生労働大臣は、前項の規定により事業者が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針(以下この条において「指針」という。)を定めるものとする。

3 厚生労働大臣は、指針を定めるに当たつては、第一項の言動を受けた労働者の利益の保護に特に配慮するものとする。

4 厚生労働大臣は、指針を定めようとするときは、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴くものとする。

5 厚生労働大臣は、指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

6 前三項の規定は、指針の変更について準用する。

 (消費者対応業務の遂行に関連して行われる労働者に苦痛を与えるおそれのある言動に関し事業者の講ずべき措置)

第七十一条の六 事業者は、その労働者を消費者対応業務(個人に対する物又は役務の提供その他これに準ずる事業活動に係る業務のうち、その相手方に接し、又は応対して行うもの(事業を行う者又はその従業者に専ら接し、又は応対して行うものを除く。)であつて、厚生労働省令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)に従事させる場合には、当該労働者に対しその消費者対応業務の遂行に関連して行われる当該労働者に業務上受忍すべき範囲を超えて精神的又は身体的な苦痛を与えるおそれのある言動(当該労働者と業務上の関係を有する者により行われるものを除く。)により、当該労働者の職場環境が害されることのないよう、当該消費者対応業務の態様に応じ、当該労働者の職場において当該言動に適切に対処するために必要な体制の整備、当該労働者からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。

2 厚生労働大臣は、前項の規定により事業者が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を定めるものとする。

3 前条第四項及び第五項の規定は、前項の指針の策定及び変更について準用する。

4 その消費者対応業務の全部又は一部を委託する者は、当該委託を受けた事業者が当該委託に係る消費者対応業務について第一項の規定により講ずべき措置を適切かつ有効に実施することができるよう、必要な配慮を行うものとする。

 (助言、指導及び勧告並びに公表)

第七十一条の七 厚生労働大臣は、第七十一条の五第一項及び前条第一項の規定の施行に関し必要があると認めるときは、事業者に対し、助言、指導又は勧告をすることができる。

2 厚生労働大臣は、第七十一条の五第一項又は前条第一項の規定に違反している事業者に対し、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる。

 (調査研究等)

第七十一条の八 政府は、第七十一条の五第一項及び第七十一条の六第一項の言動に関し、その実態の調査、当該言動により労働者の職場環境が害されることの効果的な防止に関する研究その他の調査研究並びに情報の収集、整理及び分析を行うものとする。

 (国の援助)

第七十一条の九 国は、第七十一条の五第一項及び第七十一条の六第一項の規定により事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るため、相談、情報の提供その他の必要な援助に努めるものとする。

 第百六条第一項中「及び第七十一条の四」を「、第七十一条の四及び第七十一条の九」に改める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第五条の規定は、公布の日から施行する。

 (検討)

第二条 政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律による改正後の労働安全衛生法の施行の状況等を勘案し、同法第七十一条の五第一項の言動がその労働者に対し他の事業者又はその従業者によって行われた場合に事業者が当該他の事業者に同項の措置を求めることにより不当な不利益を受けることの防止に関する施策その他の事業者が当該他の事業者に同項の措置を求めやすくするための施策及び同法第七十一条の六第一項の言動が行われることを防止するための施策を含め、他の者の言動により労働者の職場環境が害されることを防止するための施策の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (労働安全衛生法の適用を受けない国家公務員、船員等に関する措置)

第三条 労働安全衛生法の適用を受けない国家公務員、船員等については、この法律による改正後の同法第七章の三の規定を踏まえ、必要な措置が講ぜられるものとする。

 (労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律の一部改正)

第四条 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。

  第四十五条第一項中「及び第七十条」を「、第七十条、第七十一条の五第一項及び第七十一条の六第一項」に改め、同条第十五項中「第七十一条の四」の下に「、第七十一条の七、第七十一条の九」を、「規定に基づく命令の規定」と」の下に「、同法第七十一条の七中「前条第一項の規定」とあるのは「前条第一項の規定(労働者派遣法第四十五条の規定により適用される場合を含む。)」と、同条第二項中「前項の規定」とあるのは「前項の規定(労働者派遣法第四十五条の規定により適用される場合を含む。)」と、同法第七十一条の九中「第七十一条の六第一項の規定」とあるのは「第七十一条の六第一項の規定(労働者派遣法第四十五条の規定により適用される場合を含む。)」と」を加える。

 (政令への委任)

第五条 この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。


     理 由

 業務上の優位性を利用し、又は消費者対応業務の遂行に関連して行われる労働者に精神的又は身体的な苦痛を与えるおそれのある言動により当該労働者の職場環境が害されることを防止するため、当該言動に関し事業者の講ずべき措置等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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