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第二一三回

閣第二六号

   食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案

 食料・農業・農村基本法(平成十一年法律第百六号)の一部を次のように改正する。

 目次中「第十四条」を「第十六条」に、「第十五条」を「第十七条」に、「食料の安定供給」を「食料安全保障」に、「第十六条−第二十条」を「第十八条−第二十五条」に、「第二十一条−第三十三条」を「第二十六条−第四十二条」に、「第三十四条−第三十六条」を「第四十三条−第四十九条」に、「第三十七条・第三十八条」を「第五十条・第五十一条」に、「第三十九条−第四十三条」を「第五十二条−第五十六条」に改める。

 第一条中「ついて、」の下に「食料安全保障の確保等の」を加える。

 第二条の見出し中「食料の安定供給」を「食料安全保障」に改め、同条第一項中「食料は」を「食料については」に、「かんがみ」を「鑑み」に改め、「わたって、」の下に「食料安全保障(」を加え、「供給されなければ」を「供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態をいう。以下同じ。)の確保が図られなければ」に改め、同条第二項中「かんがみ」を「鑑み」に、「輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて」を「併せて安定的な輸入及び備蓄の確保を図ることにより」に改め、同条中第四項を第六項とし、第三項の次に次の二項を加える。

4 国民に対する食料の安定的な供給に当たっては、農業生産の基盤、食品産業の事業基盤等の食料の供給能力が確保されていることが重要であることに鑑み、国内の人口の減少に伴う国内の食料の需要の減少が見込まれる中においては、国内への食料の供給に加え、海外への輸出を図ることで、農業及び食品産業の発展を通じた食料の供給能力の維持が図られなければならない。

5 食料の合理的な価格の形成については、需給事情及び品質評価が適切に反映されつつ、食料の持続的な供給が行われるよう、農業者、食品産業の事業者、消費者その他の食料システム(食料の生産から消費に至る各段階の関係者が有機的に連携することにより、全体として機能を発揮する一連の活動の総体をいう。以下同じ。)の関係者によりその持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにしなければならない。

 第四十三条を第五十六条とし、第三十九条から第四十二条までを十三条ずつ繰り下げる。

 第三十八条の見出し中「団体の」の下に「相互連携及び」を加え、同条中「団体の」を「団体について、相互の連携を促進するとともに、」に改め、第三章中同条を第五十一条とし、第三十七条を第五十条とする。

 第三十六条第一項中「ため、」の下に「余暇を利用した農村への滞在の機会を提供する事業活動の促進その他の」を、「促進」の下に「、都市と農村との双方に居所を有する生活をすることのできる環境整備」を加え、第二章第四節中同条を第四十九条とする。

 第三十五条第一項中「促進」の下に「、地域社会の維持に資する生活の利便性の確保」を加え、同条を第四十七条とし、同条の次に次の一条を加える。

 (鳥獣害の対策)

第四十八条 国は、鳥獣による農業及び農村の生活環境に係る被害の防止のため、鳥獣の農地への侵入の防止、捕獲した鳥獣の食品等としての利用の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

 第三十四条第二項中「整備と」を「整備及び保全並びに農村との関わりを持つ者の増加に資する産業の振興と防災、」に改め、同条を第四十三条とし、同条の次に次の三条を加える。

 (農地の保全に資する共同活動の促進)

第四十四条 国は、農業者その他の農村との関わりを持つ者による農地の保全に資する共同活動が、地域の農業生産活動の継続及びこれによる多面的機能の発揮に重要な役割を果たしていることに鑑み、これらの共同活動の促進に必要な施策を講ずるものとする。

 (地域の資源を活用した事業活動の促進)

第四十五条 国は、農業と農業以外の産業の連携による地域の資源を活用した事業活動を通じて農村との関わりを持つ者の増加を図るため、これらの事業活動の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

 (障害者等の農業に関する活動の環境整備)

第四十六条 国は、障害者その他の社会生活上支援を必要とする者の就業機会の増大を通じ、地域の農業の振興を図るため、これらの者がその有する能力に応じて農業に関する活動を行うことができる環境整備に必要な施策を講ずるものとする。

 第三十三条の見出し中「合理化」を「確保と経営の安定」に改め、同条を同条第二項とし、同条に第一項として次の一項を加える。

  国は、農業資材の安定的な供給を確保するため、輸入に依存する農業資材及びその原料について、国内で生産できる良質な代替物への転換の推進、備蓄への支援その他必要な施策を講ずるものとする。

 第三十三条に次の一項を加える。

3 国は、農業資材の価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講ずるものとする。

 第二章第三節中第三十三条を第四十二条とする。

 第三十二条を削る。

 第三十一条(見出しを含む。)中「補てん」を「補填」に改め、同条を第四十条とし、同条の次に次の一条を加える。

 (伝染性疾病等の発生予防等)

第四十一条 国は、家畜の伝染性疾病及び植物に有害な動植物が国内で発生及びまん延をした場合には、農業に著しい損害を生ずるおそれがあることに鑑み、その発生の予防及びまん延の防止のために必要な施策を講ずるものとする。

 第三十条第一項中「国は」の下に「、農産物の価格の形成について、第二十三条に規定する施策を講ずるほか」を加え、「農産物の価格が」を削り、「を適切に反映して形成される」を「が適切に反映される」に改め、同条を第三十九条とする。

 第二十九条中「及び都道府県」を「、独立行政法人、都道府県及び地方独立行政法人」に改め、「の推進」の下に「、民間が行う情報通信技術その他の先端的な技術の研究開発及び普及の迅速化」を加え、同条に次の一項を加える。

2 国は、食料システムにおいて情報通信技術を用いて情報が効果的に活用されるよう、食料システムの関係者による情報の円滑な共有のための環境整備を推進するために必要な施策を講ずるものとする。

 第二十九条を第三十八条とし、第二十八条を第三十六条とし、同条の次に次の一条を加える。

 (農業経営の支援を行う事業者の事業活動の促進)

第三十七条 国は、農業者の経営の発展及び農業の生産性の向上に資するため、農作業の受託、農業機械の貸渡し、農作業を行う人材の派遣、農業経営に係る情報の分析及び助言その他の農業経営の支援を行う事業者の事業活動の促進に必要な施策を講ずるものとする。

 第二十七条を第三十五条とする。

 第二十六条中「かんがみ」を「鑑み」に改め、同条を第三十四条とし、第二十五条を第三十三条とする。

 第二十四条の見出し中「整備」の下に「及び保全」を加え、同条中「より、」を「より」に改め、「促進する」の下に「とともに、気候の変動その他の要因による災害の防止又は軽減を図ることにより農業生産活動が継続的に行われるようにする」を、「調和」の下に「及び先端的な技術を活用した生産方式との適合」を、「配慮しつつ、」の下に「農業生産の基盤の整備及び保全に係る最新の技術的な知見を踏まえた」を、「汎用化」の下に「及び畑地化」を、「整備」の下に「及び保全」を加え、同条を第二十九条とし、同条の次に次の三条を加える。

 (先端的な技術等を活用した生産性の向上)

第三十条 国は、農業の生産性の向上に資するため、情報通信技術その他の先端的な技術を活用した生産、加工又は流通の方式の導入の促進、省力化等に資する新品種の育成その他必要な施策を講ずるものとする。

 (農産物の付加価値の向上等)

第三十一条 国は、農産物の付加価値の向上及び創出を図るため、高い品質を有する品種の導入の促進及び農産物を活用した新たな事業の創出の促進、植物の新品種、家畜の遺伝資源、地理的表示(特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(平成二十六年法律第八十四号)第二条第三項に規定する地理的表示をいう。)、農業生産に関する有用な技術及び営業上の情報その他の知的財産の保護及び活用の推進その他必要な施策を講ずるものとする。

 (環境への負荷の低減の促進)

第三十二条 国は、農業生産活動における環境への負荷の低減を図るため、農業の自然循環機能の維持増進に配慮しつつ、農薬及び肥料の適正な使用の確保、家畜排せつ物等の有効利用による地力の増進、環境への負荷の低減に資する技術を活用した生産方式の導入の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

2 国は、環境への負荷の低減に資する農産物の流通及び消費が広く行われるよう、これらの農産物の円滑な流通の確保、消費者への適切な情報の提供の推進、環境への負荷の低減の状況の把握及び評価の手法の開発その他必要な施策を講ずるものとする。

 第二十三条中「集積」の下に「及びこれらの農地の集団化」を、「、農地の」の下に「適正かつ」を加え、同条を第二十八条とする。

 第二十二条中「かんがみ」を「鑑み」に改め、同条に次の一項を加える。

2 国は、農業を営む法人の経営基盤の強化を図るため、その経営に従事する者の経営管理能力の向上、雇用の確保に資する労働環境の整備、自己資本の充実の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

 第二十二条を第二十七条とする。

 第二十一条に次の一項を加える。

2 国は、望ましい農業構造の確立に当たっては、地域における協議に基づき、効率的かつ安定的な農業経営を営む者及びそれ以外の多様な農業者により農業生産活動が行われることで農業生産の基盤である農地の確保が図られるように配慮するものとする。

 第二十一条を第二十六条とする。

 第二十条中「安定」の下に「並びにこれによる我が国への農産物及び農業資材の安定的な輸入の確保」を加え、第二章第二節中同条を第二十五条とする。

 第十九条の見出し中「食料安全保障」を「措置」に改め、同条中「第二条第四項」を「第二条第六項」に改め、同条を同条第二項とし、同条に第一項として次の一項を加える。

  国は、凶作、輸入の減少等の不測の要因により国内の食料の供給が不足し国民生活の安定及び国民経済の円滑な運営に支障が生ずる事態の発生をできる限り回避し、又はこれらの事態が国民生活及び国民経済に及ぼす支障が最小となるようにするため、これらの事態が発生するおそれがあると認めたときから、関係行政機関相互間の連携の強化を図るとともに、備蓄する食料の供給、食料の輸入の拡大その他必要な施策を講ずるものとする。

 第十九条を第二十四条とする。

 第十八条を削る。

 第十七条中「かんがみ」を「鑑み」に改め、「事業活動に伴う」を削り、「に配慮しつつ」を「その他の食料の持続的な供給に資する事業活動の促進」に改め、「強化」の下に「、円滑な事業承継の促進」を、「合理化」の下に「、先端的な技術を活用した食品産業及びその関連産業に関する新たな事業の創出の促進、海外における事業の展開の促進」を加え、同条を第二十条とし、同条の次に次の三条を加える。

 (農産物等の輸入に関する措置)

第二十一条 国は、国内生産では需要を満たすことができない農産物の安定的な輸入を確保するため、国と民間との連携による輸入の相手国の多様化、輸入の相手国への投資の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

2 国は、農産物の輸入によってこれと競争関係にある農産物の生産に重大な支障を与え、又は与えるおそれがある場合において、緊急に必要があるときは、関税率の調整、輸入の制限その他必要な施策を講ずるものとする。

3 国は、肥料その他の農業資材の安定的な輸入を確保するため、国と民間との連携による輸入の相手国の多様化、輸入の相手国への投資の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

 (農産物の輸出の促進)

第二十二条 国は、農業者及び食品産業の事業者の収益性の向上に資するよう海外の需要に応じた農産物の輸出を促進するため、輸出を行う産地の育成、農産物の生産から販売に至る各段階の関係者が組織する団体による輸出のための取組の促進等により農産物の競争力を強化するとともに、市場調査の充実、情報の提供、普及宣伝の強化等の輸出の相手国における需要の開拓を包括的に支援する体制の整備、輸出する農産物に係る知的財産権の保護、輸出の相手国とのその相手国が定める輸入についての動植物の検疫その他の事項についての条件に関する協議その他必要な施策を講ずるものとする。

 (食料の持続的な供給に要する費用の考慮)

第二十三条 国は、食料の価格の形成に当たり食料システムの関係者により食料の持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるよう、食料システムの関係者による食料の持続的な供給の必要性に対する理解の増進及びこれらの合理的な費用の明確化の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

 第十六条第一項中「ため、」の下に「食品の製造過程の管理の高度化その他の」を加え、同条を第十八条とし、同条の次に次の一条を加える。

 (食料の円滑な入手の確保)

第十九条 国は、地方公共団体、食品産業の事業者その他の関係者と連携し、地理的な制約、経済的な状況その他の要因にかかわらず食料の円滑な入手が可能となるよう、食料の輸送手段の確保の促進、食料の寄附が円滑に行われるための環境整備その他必要な施策を講ずるものとする。

 第二章第二節の節名中「食料の安定供給」を「食料安全保障」に改める。

 第十五条第二項第四号中「前三号」を「前各号」に改め、同号を同項第五号とし、同項第三号を同項第四号とし、同項第二号中「食料自給率」の下に「その他の食料安全保障の確保に関する事項」を加え、同号を同項第三号とし、同項第一号の次に次の一号を加える。

 二 食料安全保障の動向に関する事項

 第十五条第三項中「前項第二号に掲げる食料自給率」を「前項第三号」に、「その向上を図ることを旨とし、国内の農業生産及び食料消費に関する指針として、」を「食料自給率の向上その他の食料安全保障の確保に関する事項の改善が図られるよう」に改め、同条第八項を同条第九項とし、同条第七項中「政府は、」の下に「世界の食料需給の状況その他の」を加え、同項を同条第八項とし、同条第六項の次に次の一項を加える。

7 政府は、少なくとも毎年一回、第二項第三号の目標の達成状況を調査し、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

 第二章第一節中第十五条を第十七条とする。

 第十四条の見出しを「(年次報告)」に改め、同条第二項及び第三項を削り、第一章中同条を第十六条とし、第十三条を第十五条とする。

 第十二条中「深め」を「深めるとともに、食料の消費に際し、環境への負荷の低減に資する物その他の食料の持続的な供給に資する物の選択に努めることによって、食料の持続的な供給に寄与しつつ」に改め、同条を第十四条とする。

 第十一条中「農業に関する団体並びに」を削り、「事業者」の下に「並びに食料、農業及び農村に関する団体」を加え、同条を第十三条とする。

 第十条中「にのっとり、国民に対する食料の供給が図られる」を「の実現に主体的に取り組む」に改め、同条を第十一条とし、同条の次に次の一条を加える。

 (団体の努力)

第十二条 食料、農業及び農村に関する団体は、その行う農業者、食品産業の事業者、地域住民又は消費者のための活動が、基本理念の実現に重要な役割を果たすものであることに鑑み、これらの活動に積極的に取り組むよう努めるものとする。

 第九条の見出し中「農業者等」を「農業者」に改め、同条中「及び農業に関する団体」を削り、同条を第十条とし、第八条を第九条とする。

 第七条第一項中「第五条」を「第六条」に改め、同条を第八条とする。

 第六条中「かんがみ」を「鑑み」に改め、同条を第七条とする。

 第五条中「かんがみ」を「鑑み、農村の人口の減少その他の農村をめぐる情勢の変化が生ずる状況においても、地域社会が維持され」に改め、同条を第六条とする。

 第四条中「かんがみ」を「鑑み、人口の減少に伴う農業者の減少、気候の変動その他の農業をめぐる情勢の変化が生ずる状況においても、これらの機能が発揮されるよう」に、「自然循環機能(農業生産活動が自然界における生物を介在する物質の循環に依存し、かつ、これを促進する機能をいう。以下同じ。)が維持増進される」を「生産性の向上及び農産物の付加価値の向上並びに農業生産活動における環境への負荷の低減が図られる」に改め、同条に次の一項を加える。

2 農業生産活動における環境への負荷の低減は、農業の自然循環機能(農業生産活動が自然界における生物を介在する物質の循環に依存し、かつ、これを促進する機能をいう。以下同じ。)の維持増進に配慮して図られなければならない。

 第四条を第五条とする。

 第三条中「かん養」を「涵(かん)養」に、「かんがみ」を「鑑み」に改め、「わたって」の下に「、環境への負荷の低減が図られつつ」を加え、同条を第四条とし、第二条の次に次の一条を加える。

 (環境と調和のとれた食料システムの確立)

第三条 食料システムについては、食料の供給の各段階において環境に負荷を与える側面があることに鑑み、その負荷の低減が図られることにより、環境との調和が図られなければならない。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。

 (経過措置)

第二条 この法律の施行の際令和六年におけるこの法律による改正前の第十四条第二項の文書が国会に提出されていない場合には、同項の文書の国会への提出については、なお従前の例による。

 (水産基本法の一部改正)

第三条 水産基本法(平成十三年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

  第十一条第四項中「第十五条第二項第二号」を「第十七条第二項第三号」に改め、「食料自給率」の下に「その他の食料安全保障の確保に関する事項」を加える。

 (農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律及び農林水産省設置法の一部改正)

第四条 次に掲げる法律の規定中「第三十五条第一項」を「第四十七条第一項」に改める。

 一 農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律(平成二十六年法律第七十八号)第三条第三項第二号

 二 農林水産省設置法(平成十一年法律第九十八号)第四条第一項第三十七号


     理 由

 近年における世界の食料需給の変動、地球温暖化の進行、我が国における人口の減少その他の食料、農業及び農村をめぐる諸情勢の変化に対応し、食料安全保障の確保、環境と調和のとれた食料システムの確立、農業の持続的な発展のための生産性の向上、農村における地域社会の維持等を図るため、基本理念を見直すとともに、関連する基本的施策等を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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