衆議院

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   安倍内閣不信任決議案(第一九八回国会、決議第六号)


 本院は、安倍内閣を信任せず。
  右決議する。

     理 由
 安倍内閣が不信任に値する理由は枚挙にいとまがないが、特に、国民生活に直結する年金、消費税に対する安倍政権の対応は無責任であり不誠実極まりない。
 年金問題では「百年安心」と政府が国民に説明してきたが、今般「公的年金だけでは老後資金が二千万円不足する」と金融審議会市場ワーキング・グループが報告書を公表した。これだけでも大問題であるが、麻生金融担当大臣が自らの意に沿わないので受け取りを拒否するという前代未聞の事態まで発生した。
 更に、将来の年金支給額の指針となる「年金の財政検証」の隠蔽が続いている。本検証は、十年前は二月、五年前は六月に発表されている。ところが今年は、厚生労働省担当者は、「データは揃っている。これまでと同じペースで検討は進んでいる」と答えながら、発表時期は「検討中」の一点張りで、概ねの目途さえ示さない。年金の支給額が減額するとの試算もあり、都合の悪いことは国会が閉じた後に先送りすると疑わざるを得ない。
 更に、消費税の引き上げ問題では、景気の指標となる毎月勤労統計における統計不正問題が発覚した。単なる不正ではなく、政権に有利になるよう統計を操作した疑惑も浮上。今国会において、消費税増税の審議に資するために「共通事業所に係る実質賃金」を公表するよう本年二月から求めてきた。しかし、未だに安倍政権は理由も無く公表を拒み続けており、消費税増税の可否について、実質的な審議ができない事態が続いている。
 これらの「年金の財政検証」、「共通事業所に係る実質賃金」を隠蔽する安倍政権は、国会審議を阻害し続けているだけでなく、次期参議院選挙が終了するまで公表しないとの報道が事実であるならば、国民生活を犠牲にして自らの政権の延命を図るという、許し難い暴挙が行われていると厳しく非難せざるを得ない。
 安倍内閣の経済政策「アベノミクス」は、大規模金融緩和により物価上昇を誘導することで、景気を回復しようとしてきた。しかし、富めるものをより富ませることで、国民全体の利益につなげるという、「アベノミクス」の考え方はもはや通用せず、失敗は明らかである。それどころか、実質賃金は上がらず、貧富や地域間の格差の拡大が顕著になるなど、寧ろ悪影響を及ぼしているといえる。異次元の金融緩和政策にしても、出口戦略さえ見いだせず袋小路に陥っている。
 十月に予定されている消費税率引き上げは、昨今の経済状況によれば到底実施できる状況にはない。安倍内閣が続くもとで、経済についても危機的状況が生まれる可能性は紛れもなく高まっている。
 我が国の財政は悪化の一途をたどっている。プライマリーバランスの黒字化目標は、二〇二五年度に五年も先送りされている。しかも今年度は、過去最大の一〇〇兆円の大台を超える予算を編成するなど、財政再建への取り組みも全く不十分である。
 外交・安全保障の分野でも大きな問題が発生している。何らかの密約が交わされた疑念が拭えない日米貿易交渉問題。沖縄県民の民意を無視して県との対話を拒否し続けている辺野古新基地建設問題。杜撰かつ致命的な誤りが発覚したイージス・アショア配備問題。疑問が残るF三十五の事故調査後も方針を変えない防衛装備品「爆買い」問題。一向に進展のない日朝関係と拉致問題。北方領土問題で後退し続ける日ロ関係。総理のイラン訪問とホルムズ海峡付近でのタンカー攻撃問題など、どれも安倍内閣の下で問題解決とはほど遠い状況である。
 これら数々の内外の重要な諸課題があるにもかかわらず、この通常国会において百五十日間の会期のうち、実に百十五日以上にわたり、安倍総理は予算委員会の審議を拒否している。総理が、国民に対する説明責任から逃げ回る姿勢は、見苦しい限りと言わざるを得ない。自民党総裁たる安倍総理が、予算委員会で内外の諸課題について全ての大臣とともに丁寧に説明するとの意向を示せば、予算委員会はすぐにでも開くことができる。いつぞや、「常に民意の存するところを考察すべし」などと原敬の言葉をうそぶいていたのは一体何だったのか、その虚言に呆れ返る他はない。安倍総理をはじめとする内閣の不十分かつ不誠実な対応には行政府としての矜持は微塵も感じられず、国民を小馬鹿にした傲慢さがあるのみである。
 更には、安倍内閣を構成する大臣の資質にも、ただただ呆れ返るばかりである。国民を小馬鹿にした暴言、放言を性懲りもなく繰り返す麻生太郎副総理兼財務・金融担当大臣は言うに及ばず、適材適所とは言い難い何人もの大臣が、全くもって見当違いの暴言で国民を呆れさせ、海外にまでその恥をさらす始末である。それもこれも、森友、加計問題に限らず、説明責任とは口ばかりで、国会審議からただただ逃げ回る安倍総理をはじめとする内閣全体の不誠実かつ不見識極まる政治姿勢が、全ての問題の根源にあることは改めて指摘するまでもなく、その責任は免れようがない。
 昨年七月二十日に、野党は共同で「安倍政権の傲慢かつ無責任な政権運営が続く限り、国民の生命や安全を守れない」と断じて、安倍内閣不信任決議案を提出した。しかしその後も、安倍内閣はこれまでの所業を反省するどころか、隠蔽体質は更生されず、立法府軽視と傲慢な政治姿勢も改善されずに悪化の一途をたどっている。我が国の議会制民主主義が根底から破壊されるばかりか、国民生活の格差は拡大し、将来への不安も増大させてきた。
 昨夏、大島理森衆議院議長は、安倍政権下で発生した、森友問題をめぐる決裁文書の改ざん問題、裁量労働制に関する不適切なデータの提示、自衛隊の海外派遣部隊の日報に関する杜撰な文書管理などの一連の事件を挙げて、民主主義の根幹を揺るがす問題と断じた。更に「国民の負託に応えるためには、行政から正しい情報が適時適切に提供されることが大前提」と安倍内閣の公文書等の隠蔽を指弾し、立法府による行政監視機能の強化を喚起する異例の所感を発表した。然るに安倍内閣は、立法府からの情報の開示及び予算委員会の開会要請に対して、政権に都合が悪い情報を隠蔽し続けるとともに、予算委員会の審議拒否を続け、国民への説明責任を放棄した。国権の最高機関であり、行政執行全般を監視する責務と権限を有する国会を蔑ろにする安倍内閣の政治姿勢は、もはや異常である。国民の生活をかえりみず、自らの政権の維持と延命のために、国民への説明、国会での審議、情報公開を拒否し続ける安倍内閣は、国家国民にとって不誠実極まりないだけでなく危険な存在と成り下がった。
 このように、内政でも外交でも国民を欺き続ける安倍内閣が続くことは、わが国の国民生活や安全保障を破綻への道に導きかねない。そして、安倍内閣が議会制民主主義を根底から破壊している現状を、これ以上看過することは到底できない。
 よって、安倍内閣の即刻の退陣を強く求め、ここに安倍内閣不信任決議案を提出する。

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