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自然再生推進法案に対する修正案(藤木洋子君提出)


   自然再生推進法案に対する修正案
 自然再生推進法案の全部を次のように修正する。
   公共事業等により損なわれた自然環境の復元の推進に関する法律
 (目的)
第一条 この法律は、過去に公共事業その他の人の活動により貴重な生態系その他の自然環境が損なわれてきたことにかんがみ、自然環境の復元についての基本理念を定めるとともに、自然環境復元事業の指針の策定その他の自然環境の復元を推進するために必要な事項を定めることにより、自然環境の復元に関する施策を総合的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保を図り、あわせて地球環境の保全に寄与することを目的とする。
 (定義)
第二条 この法律において「公共事業」とは、次に掲げる事業で、国、特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人、地方公共団体その他政令で定める者が実施するものをいう。
 一 土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第二条第二項に規定する土地改良事業
 二 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第二条第一項に規定する森林における造林、間伐及び保育並びに林道の整備に関する事業
 三 森林法第四十一条に規定する保安施設事業その他の治山事業
 四 漁場の開発及び保全に関する事業
 五 漁港漁場整備法(昭和二十五年法律第百三十七号)第三条に規定する漁港施設の整備に関する事業及び漁港の環境の整備に関する事業
 六 都市公園法(昭和三十一年法律第七十九号)第二条第一項に規定する都市公園その他の公園又は緑地の整備に関する事業
 七 下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第二条第三号に規定する公共下水道(以下「公共下水道」という。)、同条第四号に規定する流域下水道(以下「流域下水道」という。)及び同条第五号に規定する都市下水路の整備に関する事業
 八 河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第三条第一項に規定する河川(同法第百条の規定により同法の二級河川に関する規定が準用される河川を含む。)に関する事業その他の治水事業
 九 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和四十四年法律第五十七号)第二条第三項に規定する急傾斜地崩壊防止工事に関する事業
 十 海岸法(昭和三十一年法律第百一号)第二条第一項に規定する海岸保全施設の整備に関する事業及び海岸の環境の整備に関する事業
 十一 道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路をいう。)の整備に関する事業
 十二 住宅の建設に関する事業
 十三 全国新幹線鉄道整備法(昭和四十五年法律第七十一号)第二条に規定する新幹線鉄道に係る鉄道施設の建設に関する事業
 十四 港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第二条第五項に規定する港湾施設(同条第六項の規定により港湾施設とみなされる施設を含む。)の整備に関する事業、港湾の環境の整備に関する事業並びに同条第八項に規定する開発保全航路の開発及び保全に関する事業
 十五 空港整備法(昭和三十一年法律第八十号)第二条第一項に規定する空港その他の飛行場で公共の用に供されるもの(これらと併せて設置すべき航空保安施設その他の施設を含む。以下「空港」という。)の整備に関する事業及び空港の周辺における航空機の騒音により生ずる障害の防止等に関する事業
 十六 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第二条第一項に規定する廃棄物を処理するための施設(公共下水道及び流域下水道を除く。)の整備に関する事業
2 この法律において「自然環境の復元」とは、過去に公共事業その他の人の活動によって損なわれた生態系その他の自然環境を原状に回復することをいう。
3 この法律において「自然環境復元事業」とは、自然環境の復元を目的として実施される事業をいう。
4 この法律において「土地の所有者等」とは、土地若しくは木竹の所有者又は土地若しくは木竹の使用及び収益を目的とする権利、漁業権若しくは入漁権(臨時設備その他一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。)を有する者をいう。
 (基本理念)
第三条 自然環境の復元は、健全で恵み豊かな自然が将来の世代にわたって維持されるとともに、現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保を図り、あわせて地球環境の保全に寄与することを旨として適切に行われなければならない。
2 自然環境の復元は、関係行政機関、関係地方公共団体、地域住民、自然環境を保護することを主たる目的とする団体(以下「環境保護団体」という。)、自然環境に関し専門的知識を有する者等の地域の多様な主体が連携するとともに、透明性を確保しつつ、自主的かつ積極的に取り組んで実施されなければならない。
3 自然環境の復元は、地域における自然環境の特性、自然の復元力及び生態系の微妙な均衡を踏まえて、かつ、科学的知見に基づいて実施されなければならない。
4 自然環境復元事業は、自然環境の復元の障害となっている施設等を除去することにより自然環境の復元を推進することを基本とし、新たな工作物の設置等は、自然環境の復元、国民の生命、身体及び財産の保護並びに公共の安全の確保に不可欠な必要最小限のものにとどめなければならない。
5 自然環境復元事業は、自然環境復元事業の着手後においても自然環境の復元の状況を監視し、その監視の結果に科学的な評価を加え、これを当該自然環境復元事業に反映させる方法により実施されなければならない。
 (国及び地方公共団体の責務)
第四条 国及び地方公共団体は、公共事業により生態系その他の自然環境が損なわれることがないように努めなければならない。
2 国及び地方公共団体は、地域住民、環境保護団体その他の民間の団体等が実施する自然環境復元事業について、必要な協力をするよう努めなければならない。
 (公共事業が自然環境に及ぼした影響に関する判定等)
第五条 中央自然環境調査委員会は、その規模(形状が変更される部分の土地の面積、新設される工作物の大きさその他の数値で表される事業の規模をいう。)が大きいものとして政令で定める公共事業(昭和五十五年一月一日以降に完了したものに限る。)について、当該公共事業が生態系その他の自然環境に及ぼした影響を調査し、自然環境の復元の必要があるかどうかについての判定を行うものとする。
2 中央自然環境調査委員会は、前項に規定する判定を行うに当たっては、関係地方公共団体の長の意見を聴くものとする。
3 中央自然環境調査委員会は、第一項の規定により自然環境の復元の必要があると判定したときは、環境省令で定めるところにより、直ちに、その旨を環境大臣に通知するものとする。
4 中央自然環境調査委員会は、一定の地域において行われた第一項に規定する公共事業以外の人の活動について、特に必要があると認めるときは、当該人の活動が生態系その他の自然環境に及ぼした影響を調査し、自然環境の復元の必要があるかどうかについての判定を行うことができる。この場合においては、前二項の規定を準用する。
5 何人も、公共事業その他の人の活動により生態系その他の自然環境が損なわれたと思料するときは、その旨を中央自然環境調査委員会に通報することができる。
 (自然環境復元事業の指針)
第六条 環境大臣は、中央自然環境調査委員会から前条第三項(同条第四項後段において準用する場合を含む。)の通知を受けたときは、遅滞なく、当該通知に係る地域における自然環境復元事業の指針(以下「自然環境復元事業指針」という。)を定めるものとする。
2 自然環境復元事業指針には、次の事項を定めるものとする。
 一 自然環境の復元の対象となる地域
 二 自然環境の復元の目標
 三 次条第一項に規定する自然環境復元協議会に関する基本的事項
 四 その他自然環境の復元の推進に関する重要事項
 (自然環境復元協議会)
第七条 環境大臣は、自然環境復元事業指針を定めたときは、第三項に規定する事務を行うため、地域住民、環境保護団体、自然環境に関し専門的知識を有する者、土地の所有者等その他の当該自然環境復元事業又はこれに関連する自然環境の復元に関する活動に参加しようとする者並びに関係地方公共団体及び関係行政機関からなる自然環境復元協議会(以下「協議会」という。)を組織するものとする。
2 前項の場合において、環境大臣は、地域住民、環境保護団体、自然環境に関し専門的知識を有する者、土地の所有者等その他の当該自然環境復元事業又はこれに関連する自然環境の復元に関する活動に参加しようとする者について、公募するものとする。
3 協議会は、次の事務を行うものとする。
 一 自然環境復元事業を実施する者(以下「実施者」という。)を決定すること。
 二 次条第一項に規定する自然環境復元事業実施計画の案について協議すること。
 三 自然環境復元事業の実施状況を監視すること。
 四 自然環境復元事業の実施に係る連絡調整を行うこと。
4 協議会の組織及び運営に関して必要な事項は、協議会が定める。
5 協議会の構成員は、相協力して、自然環境の復元の推進に努めなければならない。
 (自然環境復元事業実施計画)
第八条 実施者は、自然環境復元事業指針に基づき、自然環境復元事業の実施に関する計画(以下「自然環境復元事業実施計画」という。)を作成しなければならない。
2 自然環境復元事業実施計画には、次の事項を定めるものとする。
 一 実施者の名称又は氏名及び実施者の属する協議会の名称
 二 自然環境復元事業の対象となる区域及びその内容
 三 自然環境復元事業の対象となる区域の周辺地域の自然環境との関係並びに自然環境の保全上の意義及び効果
 四 その他自然環境復元事業の実施に関し必要な事項
3 実施者は、自然環境復元事業実施計画を作成しようとするときは、あらかじめ、その案について協議会において十分に協議するとともに、その協議の結果に基づいて作成しなければならない。自然環境復元事業実施計画を変更しようとするときも、同様とする。
 (環境大臣の確認)
第九条 実施者は、自然環境復元事業実施計画を作成したときは、環境省令で定めるところにより、遅滞なく、当該自然環境復元事業実施計画がこれに係る自然環境復元事業指針に適合するものであることについて、環境大臣の確認を受けなければならない。
2 環境大臣は、前項の確認をするに当たっては、あらかじめ、中央自然環境調査委員会の意見を聴くものとする。
3 実施者は、第一項の確認を受けるまでは、自然環境復元事業を実施してはならない。
4 前三項の規定は、自然環境復元事業実施計画を変更した場合について準用する。この場合において、前項中「自然環境復元事業」とあるのは、「自然環境復元事業(当該自然環境復元事業実施計画の変更に係る部分に限る。)」と読み替えるものとする。
 (維持管理に関する協定)
第十条 自然環境復元事業の対象区域の全部又は一部について自然環境の復元に係る維持管理を実施しようとする実施者は、当該区域の土地の所有者等と協定を締結して、その維持管理を行うことができる。
 (実施者の相談に応じる体制の整備)
第十一条 環境大臣は、実施者の相談に的確に応じることができるよう必要な体制の整備を図るものとする。
 (自然環境復元事業の実施についての配慮)
第十二条 国の行政機関及び関係地方公共団体の長は、自然環境復元事業実施計画に基づく自然環境復元事業の実施のため法令の規定による許可その他の処分を求められたときは、当該自然環境復元事業が円滑かつ迅速に実施されるよう、適切な配慮をするものとする。
 (自然環境復元事業の進捗状況等の公表)
第十三条 環境大臣は、毎年、自然環境復元事業の進捗状況を公表しなければならない。
2 環境大臣は、第九条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)の規定により自然環境復元事業実施計画の確認をしたときは、これを公表しなければならない。
 (自然環境復元事業実施計画の進捗状況の報告)
第十四条 環境大臣は、環境省令で定めるところにより、実施者に対し、自然環境復元事業実施計画の進捗状況について報告を求めることができる。
 (自然環境復元事業実施計画の変更等に係る措置)
第十五条 環境大臣は、自然環境の復元を適切に推進するため必要があると認めるときは、中央自然環境調査委員会の意見を聴いて、実施者に対し、自然環境復元事業実施計画の変更、自然環境復元事業の実施方法の変更その他の必要な措置を講ずるよう求めることができる。
 (財政上の措置等)
第十六条 国及び地方公共団体は、自然環境の復元を推進するために必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとする。
 (自然環境の復元に関するその他の措置)
第十七条 国及び地方公共団体は、自然環境の復元に関する広報活動の充実のために必要な措置を講ずるものとする。
2 国及び地方公共団体は、地域住民、環境保護団体、自然環境に関し専門的知識を有する者等が行う自然環境の復元に関する活動の促進に資するため、自然環境の復元に関する情報を適切に提供するよう努めるものとする。
 (都道府県の措置)
第十八条 都道府県は、当該都道府県の区域における自然環境の復元に関し、この法律の規定に基づく国の施策に準じて、必要な措置を講ずるものとする。
   附 則
1 この法律は、平成十五年四月一日から施行する。
2 中央自然環境調査委員会は、別に法律で定めるところにより、この法律の施行後に実施される公共事業に関し、当該公共事業が生態系その他の自然環境に及ぼす影響について、自然環境の保全の観点から調査を行うことができる。
3 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

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