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     サリン等による人身被害の防止に関する法律の一部を改正する法律案要綱


第一 目的(第一条関係)
本法の目的について、団体の活動として役職員又は構成員がサリン等を発散させることにより無差別大量殺人行為を行った団体につき、その活動状況を明らかにし又は当該行為の再発を防止するために必要な規制措置を定めることを加えるものとすること。
第二 定義
一 この法律において「無差別大量殺人行為」とは、不特定かつ多数の者を殺害すること又はその実行に着手してこれを遂げないことをいうものとすること。(第二条第二項関係)
二 この法律において「団体」とは、特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体又はその連合体をいうものとすること。ただし、ある団体の支部、分会その他の下部組織も、この要件に該当する場合には、これに対して、この法律による規制を行うことができるものとすること。(第二条第三項関係)
三 この法律において「指定団体」とは、第三により指定された団体をいうものとすること。(第二条第四項関係)
第三 指定(第五条関係)
団体の役職員又は構成員が当該団体の活動としてサリン等を発散させることにより無差別大量殺人行為を行った団体が、次に掲げる事項のいずれかに該当すると認められる場合には、当該団体の主たる事務所等の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「管轄公安委員会」という。)は、国家公安委員会の承認を得て、当該団体を、活動状況を明らかにする必要がある団体として指定することができるものとすること。
一 当該無差別大量殺人行為の首謀者が当該団体の活動に影響力を有していること。
二 当該無差別大量殺人行為に関与した者の全部又は一部が当該団体の役職員又は構成員であること。
三 当該無差別大量殺人行為が行われた時に当該団体の役員であった者の全部又は一部が当該団体の役員であること。
四 一から三に掲げるもののほか、当該団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があること。
第四 意見聴取(第六条関係)
一 管轄公安委員会は、第三による指定をしようとするときは、公開による意見聴取を行わなければならないものとすること。ただし、個人の秘密の保護のためやむを得ないと認めるときは、これを公開しないことができるものとすること。
二 一の意見聴取に係る通知、意見陳述及び終結の手続に関し、所要の規定を設けるものとすること。
第五 指定の公示及び通知
一 第三による指定は、管轄公安委員会が当該指定団体の名称その他の国家公安委員会規則で定める事項を官報で公示することにより行うものとすること。(第七条第一項関係)
二 第三による指定は、一の公示の時からその効力を生ずるものとすること。(第七条第二項関係)
三 管轄公安委員会は、第三による指定をしたときは、当該指定団体に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該指定をした旨その他の国家公安委員会規則で定める事項を通知しなければならないものとすること。(第七条第三項関係)
第六 指定の有効期間及び取消し
一 第三による指定は、三年間その効力を有するものとすること。(第八条第一項関係)
二 第三による指定をした都道府県公安委員会は、一にかかわらず、指定団体が解散その他の事由により消滅したと認められるとき又は第三の一から四までのいずれにも該当しなくなったと明らかに認められるときは、国家公安委員会の承認を得て、当該指定団体に係る指定を取り消さなければならないものとすること。(第八条第二項関係)
第七 報告等(第九条関係)
都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、当該都道府県における指定団体の活動状況を明らかにするため必要があると認めるときは、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該指定団体に対し、報告又は資料の提出を求めることができるものとすること。
第八 立入検査
一 公安委員会は、次のいずれかに該当するときは、国家公安委員会の承認を得て、当該都道府県警察の職員に、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該指定団体が当該都道府県において所有し又は管理する土地又は建物に立ち入らせ、設備、帳簿書類その他必要な物件を検査させることができるものとすること。(第十条第一項関係)
1 指定団体が第七による報告をせず、又は資料を提出しなかったとき。
2 指定団体が第七の報告又は資料の提出について虚偽の報告をし、又は虚偽の資料の提出をしたとき。
3 第七により得た情報によっては当該指定団体の活動の状況を明らかにすることができなかった場合であって、当該指定団体の活動の状況を明らかにするため特に必要があると認めるとき。
二 一により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならないものとすること。(第十条第二項関係)
三 一による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならないものとすること。(第十条第三項関係)
第九 活動の規制(第十一条関係)
 公安委員会は、第八の一による立入検査が拒まれ、妨げられ、若しくは忌避されたとき又は指定団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性が明らかに認められるときは、当該指定団体に対し、国家公安委員会の承認を得て、六月を超えない期間を定めて、当該公安委員会が管轄する都道府県の区域について、次に掲げる処分の全部又は一部を行うことができるものとすること。
一 いかなる名義をもってするかを問わず、土地又は建物を新たに取得し又は借り受けることを、地域を特定して、又は特定しないで禁止すること。
二 当該指定団体が所有し又は管理する特定の土地又は建物(専ら居住の用に供しているものを除く。)の全部又は一部の使用を禁止すること。
三 指定に係る無差別大量殺人行為に関与した者又は当該無差別大量殺人行為が行われた時に当該指定に係る団体の役員であった者(以下「当該無差別大量殺人行為の関与者等」という。)に、当該指定団体の活動の用に供されている土地又は建物において、当該指定団体の活動の全部又は一部に参加させ又は従事させることを禁止すること。
四 当該指定団体に加入することを強要し、若しくは勧誘し、又は当該指定団体からの脱退を妨害することを禁止すること。
五 金品その他の財産上の利益の贈与を受けることを禁止し、又は制限すること。
第十 処分の公示及び通知
一 第九による処分は、公安委員会が当該処分の対象となる指定団体の名称、処分の内容その他の国家公安委員会規則で定める事項を官報で公示することにより行うものとすること。(第十二条第一項関係)
二 第九による処分は、一の公示の時からその効力を生ずるものとすること。(第十二条第二項関係)
三 公安委員会は、第九による処分をしたときは、当該指定団体に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該処分をした旨その他の国家公安委員会規則で定める事項を通知しなければならないものとすること。(第十二条第三項関係)
第十一 役職員又は構成員等の禁止行為
一 第九の処分を受けている指定団体の役職員又は構成員は、当該指定団体の活動として、当該処分に違反する行為をしてはならないものとすること。(第十三条第一項関係)
二 第九の処分を受けている指定団体の役職員又は構成員は、当該処分が効力を生じた後は、次に掲げる行為をしてはならないものとすること。(第十三条第二項関係)
1 当該指定団体が第九の一に掲げる処分を受けた場合にあっては、いかなる名義をもってするかを問わず、当該処分により取得し又は借り受けることが禁止された土地又は建物を当該指定団体の用に供する目的で取得し又は借り受けること。
2 当該指定団体が第九の二に掲げる処分を受けた場合にあっては、当該指定団体の用に供する目的で当該処分により使用を禁止された土地又は建物を使用すること。
3 当該指定団体が第九の三に掲げる処分を受けた場合にあっては、当該無差別大量殺人行為の関与者等に、当該処分により参加させ又は従事させることを禁止された当該指定団体の活動に参加させ又は従事させること。
4 当該指定団体が第九の四に掲げる処分を受けた場合にあっては、当該処分により禁止された当該指定団体への加入を強要すること若しくは勧誘すること又は当該指定団体から脱退する行為を妨害すること。
5 当該指定団体が第九の五に掲げる処分を受けた場合にあっては、当該指定団体の利益を図る目的で、当該処分により贈与を受けることが禁止された金品その他の財産上の利益を贈与の目的として受け取ること。
三 当該指定団体が第九の三に掲げる処分を受けている場合にあっては、当該無差別大量殺人行為の関与者等は、当該処分が効力を生じた後は、当該処分により参加させ又は従事させることを禁止された当該指定団体の活動に参加し又は従事してはならないものとすること。
第十二 規制処分の取消し(第十四条第一項関係)
 公安委員会は、第九による処分について、当該処分に基づく禁止又は制限をする必要がなくなったと認められるときは、国家公安委員会の承認を得て、これを取り消さなければならないものとすること。
第十三 土地又は建物の使用禁止に関する標章の掲示等
一 公安委員会は、第九の二により当該指定団体が所有し又は管理する特定の土地又は建物の全部又は一部の使用を禁止する処分をしたときは、当該土地の所在する場所又は当該建物の出入口の見やすい場所に、当該指定団体が当該土地又は建物について第九の二の処分を受けている旨を告知する国家公安委員会規則で定める標章を掲示するものとすること。(第十五条第一項関係)
二 公安委員会は、一により標章を掲示した場合において、第九に基づいて定められた期限が経過したとき又は第十二により当該処分を取り消したときは、当該標章を取り除かなければならないものとすること。
三 何人も、一により掲示した標章を損壊し、又は汚損してはならず、また、当該標章を掲示した土地若しくは建物に係る第九に基づいて定められた期限が経過した後又は第十二により当該処分が取り消された後でなければ、これを取り除いてはならないものとすること。
第十四 公安委員会の報告等(第十六条関係)
一 公安委員会は、団体の活動として役職員又は構成員がサリン等を発散させることにより無差別大量殺人行為を行った団体の活動の状況、当該団体の事務所等の所在地その他当該団体の実態を把握して、これに関する事項を国家公安委員会に報告しなければならないものとすること。
二 公安委員会は、指定団体に対する処分の内容等を国家公安委員会に報告しなければならないものとし、国家公安委員会は、当該報告に係る事項を各公安委員会に通報することとする等の措置を講ずるものとすること。
第十五 国会への報告(第十七条関係)
政府は、毎年一回、国会に対し、指定団体等に対してした処分の内容等を報告しなければならないものとすること。
第十六 関係地方公共団体の長への情報提供(第十八条関係)
公安委員会は、関係地方公共団体の長から請求があったときは、当該請求を行った者に対して、個人の秘密又は公共の安全を害するおそれがあると認める事項を除き、当該公安委員会が得た指定団体に関する情報であって、当該地方公共団体に係るものを提供するものとすること。
第十七 不服申立て(第二十条関係)
公安委員会が指定団体等に対してした処分に不服がある者は、国家公安委員会に審査請求をすることができるものとすること。
第十八 罰則
次に掲げる罪を犯した者は、それぞれに定める刑に処するものとすること。
一 第十一に違反した者 二年以下の懲役又は百万円以下の罰金(第二十七条関係)
二 第八の一による立入り又は検査を拒み、妨げ、又は忌避した者 一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金(第二十八条関係)
三 第十三の三に違反した者 五十万円以下の罰金(第二十九条関係)
四 警察職員が本法に係る職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害する罪 五年以下の懲役又は禁(第三十条関係)
第十九 施行期日(附則第一項関係)
この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行するものとすること。
第二十 その他
その他所要の改正を行なうものとすること。

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