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   解雇等の規制に関する法律案要綱

一 定義
  この法律において、次に掲げる用語の意義は、次に掲げる区分に応じ定めるところによるものとすること。
 1 労働者 労働基準法第九条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。)をいうものとすること。
 2 使用者 労働基準法第十条に規定する使用者をいうものとすること。
 3 出向 使用者との雇用関係の下に、当該使用者の指定する者に雇用され、当該指定に係る者のために労働に従事することをいうものとすること。ただし、引き続き実質的に当該使用者による指揮命令を受けるものを除くものとすること。
 4 転籍 使用者との雇用関係を終了させるとともに、当該使用者の指定する者に雇用されることをいうものとすること。
二 解雇の制限
  使用者は、次のいずれかに該当する場合を除いては、労働者を解雇することができないものとすること。
 1 労働者が、勤務成績が著しく良くない場合、負傷、疾病又は障害のため職務の遂行ができない場合その他職務に必要な適性を著しく欠く場合
 2 労働者が企業の服務上の規律に著しく反した場合
 3 労働者が労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約(特定の事業場に雇用される労働者の過半数を代表する労働組合との間で締結されるものに限る。)に基づいており、かつ、労働組合法第七条第一号本文の規定に違反しない場合
 4 次の要件を満たす場合
  ア 事業の合理的な経営上労働者の数を減少させる必要があること。
  イ 解雇を回避するための最大限の努力が尽くされたこと。
  ウ イの努力が尽くされた上でなお解雇しなければ事業の経営に支障が生ずること。
  エ 解雇しようとする者を選定するための基準が合理的であり、かつ、当該基準に従った人選がなされたこと。
  オ アからエまでに掲げる事項及び解雇の時期その他の労働省令で定める事項について、使用者と労働組合(労働組合が二以上ある場合には、すべての労働組合)及び労働組合に加入していない労働者がある場合には当該労働者を代表する者との協議がなされたこと。
三 解雇の予告
  使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、次に掲げる労動者の区分に応じ、少なくとも当該各号に定める日数前にその予告をしなければならないものとすること。当該日数前に予告をしない使用者は、当該日数分以上の平均賃金(労働基準法第十二条に規定する平均賃金をいう。以下同じ。)を支払わなければならないものとすること。ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りでないものとすること。
 1 十五年以上継続勤務した労働者 百八十日
 2 十年以上十五年未満継続勤務した労働者 百五十日
 3 五年以上十年未満継続勤務した労働者 百二十日
 4 二年以上五年未満継続勤務した労働者 九十日
 5 1から4までに掲げる労働者以外の労働者 三十日
四 解雇等の理由に関する書面の交付
  使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、解雇の予告をする場合にあっては当該予告に際し、解雇の予告をしない場合にあっては当該解雇に際し、当該労働者に対し、二の1から4までに掲げる場合のいずれに該当するかを明らかにした書面を交付しなければならないものとすること。
五 再就職の準備のための有給休暇
 1 使用者は、二4に該当する場合又は労働者が業務上の負傷、疾病若しくは障害のため職務の遂行ができない場合における解雇をしようとする場合において、三による予告をしたときは、当該予告に係る労働者に対し、一日又は一時間を単位とする十労働日の再就職の準備のための有給休暇を与えなければならないものとすること。
 2 使用者は、1による有給休暇を取得した労働者に対し、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないものとすること。
六 使用者の求めに応じた退職の意思表示の取消し
  使用者の求めに応じて退職の意思表示(転籍についての同意を除く。)をした労働者は、当該退職の意思表示をした日から起算して十四日を経過するまでの間は、書面により当該退職の意思表示の取消しをすることができる。この場合において、使用者は、当該退職の意思表示の取消しに伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができないものとすること。
七 出向及び転籍
 1 使用者は、労働者の同意を得なければ、当該労働者に出向又は転籍をさせることができないものとすること。
 2 使用者は、労働者が出向又は転籍について同意しなかったことを理由として、当該労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとすること。
八 退職等の強要を目的とした行為の禁止
 1 使用者は、労働者に対し退職を強要し、又は出向若しくは転籍の同意を強要するために、他の労働者から隔離された場所において就業させる等労働者に精神的苦痛を与えるような行為をしてはならないものとすること。
 2 労働大臣は、1に定める事項に関し、事業主が適切に対処するために必要な指針を定め、これを公表するものとすること。
 3 労働大臣は、2の指針に従い、事業主に対し、必要な指導又は助言をすることができるものとすること。
 4 労働大臣は、3の指導又は助言をするに当たり、必要があると認めるときは、法務大臣に対し、労働者の人権擁護に関し必要な協力を求めることができるものとすること。
九 就業の拒否の制限
  使用者は、次のいずれかに該当する場合を除いては、労働者の就業を拒んではならないものとすること。
 1 他の法令の定めるところにより労働者を就業させてはならない場合
 2 労働者に対する制裁として合理性が認められる場合
 3 事業の経営上労働者の就業を拒むことについて合理的な理由があると認められる場合として労働省令で定める場合
十 法令等の周知義務
  使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の命令で定める方法によって、労働者に周知させなければならないものとすること。
十一 労働基準監督署長及び労働基準監督官
  労働基準監督署長及び労働基準監督官は、労働省令で定めるところにより、この法律の施行に関する事務をつかさどるものとすること。
十二 労働者の申告
 1 労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働基準局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告することができるものとすること。
 2 使用者は、1の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとすること。
十三 罰則
 1 三、七2又は十二2に違反した者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処するものとすること。
 2 次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処するものとすること。
  ア 四に違反して、書面を交付せず、又は虚偽の記載のある書面を交付した者
  イ 五又は十に違反した者
十五 その他
  その他所要の規定を整備すること。

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