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商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案要綱


第一 監査役の機能の強化
一 監査役の取締役会への出席義務及び意見陳述義務(商法第260条ノ3第1項関係)
 監査役は、取締役会に出席しなければならないものとする。この場合において、必要があると認めるときは、意見を述べなければならないものとする。
二 社外監査役の員数等
1 商法特例法上の大会社にあっては、監査役は、3人以上で、そのうち半数以上は、その就任の前に会社又はその子会社の取締役又は支配人その他の使用人となったことがない者でなければならないものとする。(商法特例法第18条第1項関係)
2 1に違反して、1に規定する者に該当する者を監査役の半数以上に選任しなかったときは、100万円以下の過料に処するものとする。(商法特例法第30条第1項第11号関係)
三 監査役の任期(商法第273条第1項関係)
 監査役の任期は、就任後4年以内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時までとするものとする。
四 監査役の辞任に関する意見陳述権(商法第275条ノ3ノ2関係)
1 監査役を辞任した者は、その後最初に招集される株主総会に出席し、その旨及び理由を述べることができるものとする。(第1項関係)
2 会社は、1の者に対し、1の総会が招集される旨を通知しなければならないものとする。(第2項関係)
3 他の監査役は、株主総会において1の監査役の辞任について意見を述べることができるものとする。(第3項関係)
五 監査役の選任に関する監査役会の同意権及び提案権(商法特例法第18条第3項関係)
 商法特例法第3条第2項(監査役会の同意)及び第3項(監査役会の議題提案権等)の規定は、同法上の大会社の監査役を選任する場合について、準用するものとする。
第二 取締役等の会社に対する責任の軽減
一 株主総会決議をもって行う免除(商法第266条第7項から第10項まで関係)
1 免除の要件(第7項関係)
 商法第266条第1項第5号の行為に関する取締役の責任は、その取締役が、職務を行うにつき、善意にして、かつ、重大な過失がなかったときは、同条第5項の規定にかかわらず、賠償の責任を負うべき額から以下の金額を控除した額を限度として、株主総会の決議をもって、免除することができるものとする。
(一) 決議を行う株主総会の終結の日の属する営業年度又はその前の各営業年度において、その取締役が、報酬その他の職務遂行の対価(その取締役が使用人を兼務する場合の使用人としての報酬その他の職務遂行の対価を含む。)として、会社から受け又は受けるべき財産上の利益((二)及び(三)に定めるものを除く。)の額の営業年度ごとの合計額のうち、最も高い額の2年分に相当する額
(二) その取締役が会社から受けた退職慰労金の額及び使用人を兼務する場合の使用人としての退職手当のうち取締役を兼務する期間の職務遂行の対価である部分の額並びにこれらの性質を有する財産上の利益の額の合計額と、その合計額をその職にあった年数で除した額に2を乗じた額とのいずれか低い額
(三) その取締役が、就任後に第280条ノ19第1項の権利を行使したときは、行使の時におけるその会社の株式の時価から発行価額を控除した額に発行を受けた株式の数を乗じた額
2 株主総会における開示(第8項関係)
 1の場合においては、取締役は、1の決議を行う株主総会において、以下の事項を開示しなければならないものとする。
(一) 責任の原因となる事実及び賠償の責任を負うべき額
(二) 1により算定した免除の限度額及びその算定の根拠
(三) 責任を免除すべき理由及び免除額
3 監査役の同意(第9項関係)
 取締役は、1による責任の免除に関する議案を株主総会に提出するには、監査役の同意を得なければならないものとする。この場合において、監査役が数人あるときは、各監査役の同意を得なければならないものとする。
4 免除後の退職慰労金の支給等(第10項関係)
 1による責任の免除の決議があった場合において、会社が決議後にその取締役に対し1の(二)の退職慰労金、退職手当又は財産上の利益を与えるときは、株主総会の承認を得なければならないものとする。その取締役が決議後に1の(三)の権利を行使するときについても同様とする。
二 (商法第266条第11項から第15項まで関係)
1 免除の要件(第11項関係)
 会社は、第266条第5項の規定にかかわらず、定款をもって、同条第1項第5号の行為に関する取締役の責任につき、その取締役が職務を行うにつき、善意にして、かつ、重大な過失がなかった場合において、責任の原因となる事実の内容、その取締役の職務遂行の状況その他の事情を勘案して特に必要があると認めるときは、賠償の責任を負うべき額から以下の金額を控除した額を限度として、取締役会の決議をもって、これを免除することができる旨を定めることができるものとする。
(一) 取締役会の決議の日の属する営業年度又はその前の各営業年度において、その取締役が、報酬その他の職務遂行の対価(その取締役が使用人を兼務する場合の使用人としての報酬その他の職務遂行の対価を含む。)として、会社から受け又は受けるべき財産上の利益(一の1の(二)及び(三)に定めるものを除く。)の額の営業年度ごとの合計額のうち、最も高い額の2年分に相当する額
(二) 一の1の(二)及び(三)に掲げる額
2 監査役の同意(第12項関係)
 一の3は、定款を変更して1の定めを設ける議案を株主総会に提出する場合及び1による責任の免除に関する議案を取締役会に提出する場合に準用するものとする。
3 株主の異議手続
(一) 1の定款の定めに基づき取締役会が責任の免除の決議を行ったときは、取締役は、遅滞なく一の2の(一)及び(三)に掲げる事項並びに賠償の責任を負うべき額から1の(一)及び(二)に掲げる額を控除した額及びその算定の根拠並びに免除に異議があれば一定の期間内に述べるべき旨を公告し、又は株主に通知しなければならないものとする。この場合においては、その期間は1月を下ることができないものとする。(第13項関係)
(二) 総株主の議決権の20分の1以上を有する株主が(一)の期間内に異議を述べたときは、会社は1の定款の定めに基づく免除をすることができないものとする。(第14項関係)
4 免除後の退職慰労金の支給等(第15項関係)
 一の4は、1の責任の免除の決議があった場合に準用するものとする。ただし、3の(二)により免除をすることができないときは、この限りでないものとする。
三 社外取締役の会社に対する損害賠償責任の限定(商法第266条第16項から第20項まで関係)
 1 定款の定めをもって行う損害賠償責任の限定(第16項関係)
 会社は、商法第266条第5項の規定にかかわらず、定款をもって、その会社の業務を執行しない取締役であって過去にその会社又は子会社の業務を執行する取締役又は支配人その他の使用人となったことがなく、かつ、現に子会社の業務を執行する取締役又はその会社若しくは子会社の支配人その他の使用人でないもの(以下「社外取締役」という。)との間において、その者が取締役として同条第1項第5号の行為により会社に損害を加えた場合において、その職務を行うにつき、善意にして、かつ、重大な過失がないときは、定款に定めた範囲内においてあらかじめ定める額と以下の金額の合計額とのいずれか高い額を限度として、賠償の責任を負う旨の契約をすることができる旨を定めることができるものとする。
(一) 責任の原因となる事実が生じた日の属する営業年度又はその前の各営業年度において、その社外取締役が、報酬その他の職務遂行の対価として、会社から受け又は受けるべき財産上の利益((二)及び一の1の(三)に定めるものを除く。)の額の営業年度ごとの合計額のうち、最も高い額の2年分に相当する額
(二) その社外取締役が会社から受けた退職慰労金の額及びその性質を有する財産上の利益の額の合計額と、その合計額をその職にあった年数で除した額に2を乗じた額とのいずれか低い額
(三) 一の1の(三)に掲げる額
 2 責任限定契約の失効(第17項関係)
 1の社外取締役がその会社又は子会社の業務を執行する取締役又は支配人その他の使用人となったときは、1の契約は、将来に向かってその効力を失うものとする。
 3 監査役の同意(第18項関係)
 一の3は、定款を変更して1の定めを設ける議案を株主総会に提出する場合に準用するものとする。
 4 株主総会における事後報告(第19項関係)
 1の契約をした会社がその相手方である社外取締役の商法第266条第1項第5号の行為により損害を蒙ったことを知ったときは、取締役は、その後最初に招集された株主総会において、以下の事項を開示しなければならないものとする。
(一) 一の2の(一)に掲げる事項並びに1の(一)から(三)までの合計額及びその算定の根拠
(二) 1の契約の内容及びその契約をした理由
(三) 責任を負わないこととなった額
 5 行為後の退職慰労金の支給等(第20項関係)
 一の4は、社外取締役が第266条第1項第5号の行為により会社に損害を加えた場合において、1の契約により1の限度において責任を負うこととされたときに準用するものとする。
四 商法特例法の整備
1 商法特例法上の大会社に関する一の3(二の2、三の3及び第三の五の1において準用する場合を含む。)の適用については、そのうち「監査役」とあるのは、「監査役会」とし、その場合の決議は、監査役の全員一致をもって行うものとする。(商法特例法第18条の3第1項及び第19条第1項関係)
2 商法特例法上の小会社については、一の3、二の2及び三の3は適用しないものとする。(商法特例法第25条関係)
五 監査役の会社に対する責任の免除(商法第280条第1項関係)
 一の1、2及び4並びに二の1、3及び4は、監査役の責任について、準用するものとする。
六 規定の整備
1 二若しくは五により定款をもって取締役又は監査役の責任を免除することができる旨を定めたとき又は三の1の契約をすることができる旨を定めたときは、株式申込証にその規定を記載しなければならないものとする。(商法第175条第2項第13号及び第280条ノ6第5号関係)
2 株式会社の登記にあっては、1の事項及び取締役が社外取締役であるときはその旨を、それぞれ登記しなければならないものとする。(商法第188条第2項第3号及び第7号ノ2関係)
第三 株主の代表訴訟制度の合理化(商法第267条及び第268条関係)
一 提訴権者(第267条第1項関係)
 株主は、会社に対し、書面をもって取締役の責任を追及する訴えの提起を請求することができるものとする。ただし、株式の譲受けによって株主となった者がその譲受けの当時、取締役の責任の原因となる事実があったことを知り、又は容易に知ることができたときは、この限りでないものとする。
二 監査役の考慮期間(第267条第2項関係)
 会社が一の請求があった日から60日以内に訴えを提起しないときは、その請求をした株主は、会社のために訴えを提起することができるものとする。
三 公告又は株主に対する通知(第268条第4項関係)
 会社は、取締役の責任を追及する訴えを提起したときは、遅滞なく、訴えの提起をした旨を公告し、又は株主に通知しなければならないものとする。株主代表訴訟の告知を受けた会社についても同様とする。
四 訴訟上の和解における取締役の責任の免除(第268条第5項から第7項まで関係)
1 取締役の責任を追及する訴訟につき会社が和解をする場合については、第266条第5項の規定は適用しないものとする。(第5項関係)
2 株主代表訴訟について和解をする場合において、会社がその和解の当事者でないときは、裁判所は、会社に対し、和解の内容を通知し、かつ、その和解に異議があれば2週間以内に述べるべき旨を催告しなければならないものとする。(第6項関係)
3 会社が2の期間内に書面をもって異議を述べなかった場合は、2による通知の内容をもって株主が和解をすることを承認したものとみなすものとする。この場合においては、1を準用するものとする。(第7項関係)
五 取締役を補助するために会社が行う参加の申出(第268条第8項関係)
1 第二の一の3は、会社が取締役を補助するために株主代表訴訟に参加する旨の申出をする場合に準用するものとする。
2 商法特例法上の小会社については、1は適用しないものとする。(商法特例法第25条関係)
 六 監査役についての準用(商法第280条第1項関係)
   一から四までは、監査役に準用するものとする。
第四 その他(附則関係)
一 施行期日(附則第一条関係)
 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとする。ただし、第一の二は、この法律の施行の日から起算して3年を経過した日から施行するものとする。
二 所要の経過措置を設けるものとする。

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