エネルギー政策基本法案要綱
第一 目的
この法律は、エネルギーが国民生活の安定向上並びに国民経済の維持及び発展に欠くことのできないものであるとともに、その利用が地域及び地球の環境に大きな影響を及ぼすことにかんがみ、エネルギーの需給に関する施策に関し、基本方針を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、エネルギーの需給に関する施策の基本となる事項を定めることにより、エネルギーの需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に推進し、もって地域及び地球の環境の保全に寄与するとともに我が国及び世界の経済社会の持続的な発展に貢献することを目的とすること。 (第一条関係)
第二 安定供給の確保
一 エネルギーの安定的な供給については、世界のエネルギーの需給に関する国際情勢が不安定な要素を有していること等にかんがみ、石油等の一次エネルギーの輸入における特定の地域への過度な依存を低減するとともに、我が国にとって重要なエネルギー資源の開発、エネルギー輸送体制の整備、エネルギーの備蓄及びエネルギーの利用の効率化を推進すること並びにエネルギーに関し適切な危機管理を行うこと等により、エネルギーの供給源の多様化、エネルギー自給率の向上及びエネルギーの分野における安全保障を図ることを基本として施策が講じられなければならないこと。
二 他のエネルギーによる代替又は貯蔵が著しく困難であるエネルギーの供給については、特にその信頼 性及び安定性が確保されるよう施策が講じられなければならないこと。 (第二条関係)
第三 環境への適合
エネルギーの需給については、エネルギーの消費の効率化を図ること、化石燃料以外のエネルギーの利用への転換及び化石燃料の効率的な利用を推進すること等により、地球温暖化の防止及び地域環境の保全が図られたエネルギーの需給を実現し、併せて循環型社会の形成に資するための施策が推進されなければならないこと。 (第三条関係)
第四 市場原理の活用
一 エネルギー市場の自由化等のエネルギーの需給に関する経済構造改革については、事業者の自主性及び創造性が十分に発揮され、エネルギー需要者の利益が十分に確保されることを旨として、規制緩和等の施策が推進されなければならないこと。
二 一の施策の推進に当たっては、国民生活の安定向上並びに国民経済の維持及び発展並びに地域及び地球の環境の保全のため、第二及び第三の政策目的が損なわれないよう十分配慮されなければならないこと。 (第四条関係)
第五 国の責務
一 国は、第二から第四までに定めるエネルギーの需給に関する施策についての基本方針(以下「基本方 針」という。)にのっとり、エネルギーの需給に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有すること。
二 国は、エネルギーの使用に当たっては、エネルギーの使用による環境への負荷の低減に資する物品を使用すること等により、環境への負荷の低減に努めなければならないこと。 (第五条関係)
第六 地方公共団体の責務
一 地方公共団体は、基本方針にのっとり、エネルギーの需給に関し、国の施策に準じて施策を講ずると ともに、その区域の実情に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有すること。
二 地方公共団体は、エネルギーの使用に当たっては、エネルギーの使用による環境への負荷の低減に資 する物品を使用すること等により、環境への負荷の低減に努めなければならないこと。
(第六条関係)
第七 事業者の責務
事業者は、その事業活動に際しては、自主性及び創造性を発揮し、エネルギーの効率的な利用、エネル ギーの安定的な供給並びに地域及び地球の環境の保全に配慮したエネルギーの利用に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施するエネルギーの需給に関する施策に協力する責務を有すること。
(第七条関係)
第八 国民の努力
国民は、エネルギーの使用に当たっては、その使用の合理化に努めるとともに新エネルギーの活用に努めるものとすること。 (第八条関係)
第九 相互協力
国及び地方公共団体並びに事業者、国民及びこれらの者の組織する民間の団体は、エネルギーの需給に関し、相互に、その果たす役割を理解し、協力するものとすること。 (第九条関係)
第十 法制上の措置等
政府は、エネルギーの需給に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上又は金融上の措置その他の措置を講じなければならないこと。 (第十条関係)
第十一 国会に対する報告
政府は、毎年、国会に、エネルギーの需給に関して講じた施策の概況に関する報告を提出しなければならないこと。 (第十一条関係)
第十二 エネルギー基本計画
一 政府は、エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図るため、エネルギー の需給に関する基本的な計画(以下「エネルギー基本計画」という。)を定めなければならないこと。
二 エネルギー基本計画は、次の1から4までの事項について定めるものとすること。
1 エネルギーの需給に関する施策についての基本的な方針
2 エネルギーの需給に関し、長期的、総合的かつ計画的に講ずべき施策
3 エネルギーの需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に推進するために重点的に研究開発 のための施策を講ずべきエネルギーに関する技術及びその施策
4 1から3までのほか、エネルギーの需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に推進するため に必要な事項
三 経済産業大臣は、関係行政機関の長の意見を聴くとともに、総合資源エネルギー調査会の意見を聴いて、エネルギー基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないこと。
四 経済産業大臣は、三による閣議の決定があったときは、遅滞なく、エネルギー基本計画を公表しなけ ればならないこと。
五 政府は、エネルギーの需給をめぐる情勢の変化を勘案し、及びエネルギーの需給に関する施策の効果 に関する評価を踏まえ、少なくとも五年ごとに、エネルギー基本計画に検討を加え、必要があると認め るときには、これを変更しなければならないこと。
六 三及び四は、エネルギー基本計画を変更する場合も同様とすること。
七 政府は、エネルギー基本計画について、その実施に要する経費に関し必要な資金の確保を図るため、毎 年度、国の財政の許す範囲内で、これを予算に計上する等その円滑な実施に必要な措置を講ずるよう努めなければならないこと。 (第十二条関係)
第十三 国際協力の推進
国は、世界のエネルギーの需給の安定及びエネルギーの利用に伴う地球温暖化の防止等の地球環境の保全に資するため、国際的なエネルギー機関及び環境保全機関への協力、研究者等の国際的交流、国際的な研究開発活動への参加、国際的共同行動の提案、二国間及び多国間におけるエネルギー開発協力その他の国際協力を推進するために必要な措置を講ずるように努めるものとすること。 (第十三条関係)
第十四 エネルギーに関する知識の普及等
国は、広く国民があらゆる機会を通じてエネルギーに対する理解と関心を深めることができるよう、エネルギーの適切な利用に関する啓発及びエネルギーに関する知識の普及に必要な措置を講ずるように努めるものとすること。この場合においては、営利を目的としない団体の活用に配慮するものとすること。 (第十四条関係)
第十五 施行期日等
一 この法律は、公布の日から施行すること。 (附則第一条関係)
二 関係法律について所要の規定の整備を行うこと。 (附則第二条関係)