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   牛海綿状脳症対策特別措置法案要綱


第一 目的                              (第一条関係)
  この法律は、牛海綿状脳症の発生を予防し、及びまん延を防止するための特別の措置を定めること等により、安全な牛肉を安定的に供給する体制を確立し、もって国民の健康の保護並びに肉用牛生産及び酪農、牛肉に係る製造、加工、流通及び販売の事業、飲食店営業等の健全な発展を図ることを目的とするものとすること。
第二 定義         (第二条関係)
  この法律において「牛海綿状脳症」とは、家畜伝染病予防法第二条第一項の表十五の項に掲げる伝達性海綿状脳症のうち牛に係るものをいうものとすること。
第三 国及び都道府県の責務                     (第三条関係)
  国及び都道府県(保健所を設置する市を含む。以下同じ。)は、牛海綿状脳症の発生が確認された場合又はその疑いがあると認められた場合には、第四の基本計画に基づき、速やかに、牛海綿状脳症のまん延を防止する等のために必要な措置を講ずる責務を有するものとすること。
第四 基本計画                            (第四条関係)
 一 農林水産大臣及び厚生労働大臣は、牛海綿状脳症の発生が確認された場合又はその疑いがあると認められた場合において国及び都道府県が講ずべき措置(第四において「対応措置」という。)に関する基本計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならないものとすること。
 二 基本計画においては、次に掲げる事項を定めるものとすること。
 1 対応措置に関する基本方針
 2 計画の期間
 3 牛海綿状脳症のまん延の防止のための措置に関する事項
 4 正確な情報の伝達に関する事項
 5 関係行政機関及び地方公共団体の協力に関する事項
 6 その他対応措置に関する重要事項
 三 農林水産大臣及び厚生労働大臣は、基本計画を定め、又は変更しようとするときは、関係行政機関の長に協議するものとすること。
 四 農林水産大臣及び厚生労働大臣は、基本計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、都道府県に通知するものとすること。
第五 牛の肉骨粉を原料等とする飼料の使用の禁止            (第五条関係)
一 牛の肉骨粉を原料又は材料とする飼料は、別に法律又はこれに基づく命令で定めるところにより、牛に使用してはならないものとすること。
二 牛の肉骨粉を原料又は材料とする牛を対象とする飼料及び牛に使用されるおそれがある飼料は、別に法律又はこれに基づく命令で定めるところにより、販売し、又は販売の用に供するために製造し、若しくは輸入してはならないものとすること。
三 一及び二による規制の在り方については、牛海綿状脳症に関する科学的知見に基づき検討が加えられ、その結果に基づき、必要な見直し等の措置が講ぜられるものとすること。
第六 死亡した牛の届出及び検査                    (第六条関係)
 一 農林水産省令で定める月齢以上の牛が死亡したときは、当該牛の死体を検案した獣医師(獣医師による検案を受けていない牛の死体については、その所有者)は、家畜伝染病予防法第十三条第一項の規定による届出をする場合その他農林水産省令で定める場合を除き、農林水産省令で定める手続に従い、遅滞なく、当該牛の死体の所在地を管轄する都道府県知事にその旨を届け出なければならないものとすること。
 二 一による届出を受けた都道府県知事は、当該届出に係る牛の死体の所有者に対し、当該牛の死体について、家畜伝染病予防法第五条第一項の規定により、家畜防疫員の検査を受けるべき旨を命ずるものとすること。ただし、地理的条件等により当該検査を行うことが困難である場合として農林水産省令で定める場合は、この限りでないものとすること。
第七 と畜場における牛海綿状脳症に係る検査等           (第七条関係)
 一 と畜場内で解体された厚生労働省令で定める月齢以上の牛の肉、内臓、血液、骨及び皮は、別に法律又はこれに基づく命令で定めるところにより、都道府県知事又は保健所を設置する市の長の行う牛海綿状脳症に係る検査を経た後でなければ、と畜場外に持ち出してはならないものとすること。
 二 と畜場の設置者又は管理者は、別に法律又はこれに基づく命令で定めるところにより、牛の脳及びせき髄その他の厚生労働省令で定める牛の部位(三において「牛の特定部位」という。)については、焼却することにより衛生上支障のないように処理しなければならないものとすること。ただし、学術研究の用に供するため都道府県知事又は保健所を設置する市の長の許可を受けた場合その他厚生労働省令で定める場合は、この限りでないものとすること。
 三 と畜業者その他獣畜のと殺又は解体を行う者は、別に法律又はこれに基づく命令で定めるところにより、と畜場内において牛のと殺又は解体を行う場合には、牛の特定部位による牛の枝肉及び食用に供する内臓の汚染を防ぐように処理しなければならないものとすること。
第八 牛に関する情報の記録等                    (第八条関係)
 一 国は、牛一頭ごとに、生年月日、移動履歴その他の情報を記録し、及び管理するための体制の整備に関し必要な措置を講ずるものとすること。
 二 牛の所有者(所有者以外の者が管理する牛については、その者)は、牛一頭ごとに、個体を識別するための耳標を着けるとともに、一の情報の記録及び管理に必要な情報を提供しなければならないものとすること。
第九 牛の生産者等の経営の安定のための措置              (第九条関係)
  国は、基本計画に定められた計画の期間において、牛海綿状脳症の発生により経営が不安定になっている牛の生産者、牛肉に係る製造、加工、流通又は販売の事業を行う者、飲食店営業者等に対し、その経営の安定を図るために必要な措置を講ずるものとすること。
第十 協力依頼                           (第十条関係)
 一 農林水産大臣及び厚生労働大臣は、独立行政法人、地方公共団体、獣医師の組織する団体、牛の生産者等の組織する団体又は牛海綿状脳症に係る試験研究若しくは検査を行う法人等に対し、牛海綿状脳症に関する専門家の派遣その他必要な協力を求めることができるものとすること。
 二 都道府県知事及び保健所を設置する市の長は、国、独立行政法人、他の地方公共団体、獣医師の組織する団体、牛の生産者等の組織する団体又は牛海綿状脳症に係る試験研究若しくは検査を行う法人等に対し、牛海綿状脳症の検査に係る協力その他必要な協力を求めることができるものとすること。
第十一 正しい知識の普及等                     (第十一条関係)
  国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じた牛海綿状脳症の特性に関する知識その他牛海綿状脳症に関する正しい知識の普及により、牛海綿状脳症に関する国民の理解を深めるよう努めるとともに、この法律に基づく措置を実施するに当たっては、広く国民の意見が反映されるよう十分配慮しなければならないものとすること。
第十二 調査研究体制の整備等                    (第十二条関係)
  国及び都道府県は、牛海綿状脳症の検査体制の整備、牛海綿状脳症及びこれに関連する人の疾病の予防に関する調査研究体制の整備、研究開発の推進及びその成果の普及並びに研究者の養成その他必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとすること。
第十三 附則
 一 施行期日                     (附則第一条関係)
   この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行するものとすること。ただし、第六の二は、平成十五年四月一日から施行するものとすること。
 二 飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律の一部改正  (附則第二条関係)
  1 販売前における廃棄等の命令
    農林水産大臣又は都道府県知事がそれぞれ製造業者若しくは輸入業者又は販売業者に対して飼料又は飼料添加物の廃棄又は回収を図ることその他必要な措置をとるべきことを命ずる場合に、販売の用に供するために保管している場合を追加するものとすること。
  2 製造業者等の事前届出
    農林水産大臣によって基準又は規格が定められた飼料又は飼料添加物の製造業者若しくは輸入業者又は販売業者が行わなければならない農林水産大臣への届出について、その事業を開始する二週間前までに行わなければならないものとすること。
  3 製造業者等が備え付ける帳簿の記載事項及び保存期間の見直し
   (一) 農林水産大臣によって基準又は規格が定められた飼料又は飼料添加物の製造業者、輸入業者又は販売業者が備え付ける帳簿について、その記載事項に農林水産省令で定める事項を追加するとともに、当該飼料又は飼料添加物を譲り受けたときについても当該事項を記載しなければならないものとすること。
   (二) (一)の帳簿は、二年以上で農林水産省令で定める期間保存しなければならないものとすること。
  4 使用者に対する報告徴取等
   (一) 都道府県知事は、飼料の使用者から、飼料の使用に関し必要な報告を徴することができるものとすること。
   (二) 都道府県知事は、その職員に、飼料の使用者の畜舎その他飼料の使用に関係がある場所に立ち入り、飼料、その原料若しくは材料若しくは飼料の使用の状況を検査させ、関係者に質問させ、又は飼料若しくはその原料を試験のため必要な最小量に限り、無償で収去させることができるものとすること。
  5 厚生労働大臣との関係
   (一) 農林水産大臣は、飼料又は飼料添加物の基準又は規格の設定等をしようとする場合において、必要があると認めるときは、厚生労働大臣に意見を求めることができるものとすること。
   (二) 農林水産大臣及び厚生労働大臣は、(一)等の円滑な実施を図るため、相互に情報又は資料を提供するものとすること。
  6 罰金及び過料の額の改定
    罰金の額について、十万円を三十万円に、二十万円を五十万円に、三十万円を百万円に改め、過料の額について、三万円を十万円に改めるものとすること。         
 三 家畜伝染病予防法の一部改正                 (附則第四条関係)
  1 伝染性海綿状脳症の名称変更
「伝染性海綿状脳症」を「伝達性海綿状脳症」に改めるものとすること。
  2 家畜の死体に対する家畜防疫員の検査
    都道府県知事が家畜防疫員の検査を受けるべき旨を命ずる対象に家畜の死体の所有者を追加するものとすること。
  3 厚生労働大臣との関係
   (一) 農林水産大臣は、家畜から人に伝染するおそれが高いと認められる家畜の伝染性疾病についてこの法律の規定による措置を講じようとする場合において、必要があると認めるときは、厚生労働大臣に意見を求めることができるものとすること。
   (二) 厚生労働大臣は、家畜から人に伝染するおそれが高いと認められる家畜の伝染性疾病の発生又はまん延により国民の健康に影響を与えるおそれがあると認めるときは、この法律の規定による措置の実施に関し、農林水産大臣に意見を述べることができるものとすること。
   (三) 農林水産大臣及び厚生労働大臣は、(一)及び(二)の円滑な実施を図るため、相互に情報又は資料を提供するものとすること。
 四 獣医師法の一部改正                     (附則第五条関係)
   獣医師は、診療簿及び検案簿を三年以上で農林水産省令で定める期間保存しなければならないものとすること。
 五 食品の安全に関する行政の見直し               (附則第八条関係)
   政府は、牛海綿状脳症の発生を予防できなかったことにかんがみ、関係府省の連携を強化する観点から、生産から消費に至る食品の安全に関する行政の抜本的な見直しにつき検討するものとすること。
 六 その他
   その他所要の規定の整備を行うものとすること。

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