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   消費者保護基本法の一部を改正する法律案要綱


第一 題名の改正
題名を「消費者保護基本法」から「消費者基本法」に改めるものとすること。      (題名関係)
第二 目的規定の改正
  目的規定を次のように改めるものとすること。
 この法律は、消費者の利益の擁護及び増進に関し、消費者の権利及び基本理念について定め、国、地方公共団体及び事業者の責務並びに消費者の役割等を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項を定めることにより、消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策(以下「消費者政策」という。)の推進を図り、もって国民の消費生活の安定及び向上を確保することを目的とする。
                                       (第一条関係)
第三 消費者の権利に係る規定の新設
  消費者の権利について、基本理念とは独立した形で規定を置き、次のように、国際消費者機構の八つの消費者の権利を位置付けるものとすること。
 消費者は、その安全が確保され、商品及び役務について自主的かつ合理的な選択の機会が確保され、必要な情報及び教育の機会が提供され、その意見が消費者政策に反映され、並びに被害が生じた場合には適切かつ迅速に救済されるとともに、その消費生活における基本的な需要が満たされ、及び健全な環境の中でその消費生活を営む権利を有するものとする。                (第二条関係)
第四 基本理念に係る規定の新設
  消費者政策の推進に関し、次のような理念規定を設けるものとすること。
一 消費者の自立を支援することによる消費者の権利の確保
  消費者政策の推進は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差にかんがみ、消費者が自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができるよう消費者の自立を支援することにより、第三の消費者の権利(以下「消費者の権利」という。)が確保されることを基本として行われなければならないものとすること。               (第三条第一項関係)
二 事業者の適正な事業活動の確保と消費者の特性への配慮
消費者政策の推進に当たっては、消費者の安全の確保等に関して事業者による適正な事業活動の確保が図られるとともに、消費者の年齢その他の特性に配慮されなければならないものとすること。
                                    (第三条第二項関係)
三 高度情報通信社会の進展への的確な対応
消費者政策の推進は、高度情報通信社会の進展に的確に対応することに配慮して行われなければならないものとすること。                           (第三条第三項関係)
四 国際的な連携の確保
消費者政策の推進は、消費生活における国際化の進展にかんがみ、国際的な連携を確保しつつ行われなければならないものとすること。                     (第三条第四項関係)
 五 環境の保全への配慮
 消費者政策の推進は、環境の保全に配慮して行われなければならないものとすること。
                                     (第三条第五項関係)
第五 国の責務に係る規定の改正
国の責務について、消費者の権利の確保を位置付け、次のように規定するものとすること。
国は、経済社会の発展に即応して、消費者の権利を確保することを旨とし、かつ、第四の消費者政策の基本理念にのっとり、消費者政策を推進する責務を有する。            (第四条関係)
第六 地方公共団体の責務に係る規定の改正
地方公共団体の責務について、消費者の権利の確保を位置付け、次のように規定するものとすること。
地方公共団体は、消費者の権利を確保することを旨とし、かつ、基本理念にのっとり、国の施策に準じて施策を講ずるとともに、当該地域の社会的、経済的状況に応じた消費者政策を推進する責務を有する。                                      (第五条関係)
第七 事業者の責務に係る規定の改正
   事業者の責務について、消費者の権利の確保を位置付ける等、現行の規定を次のように改めるものとすること。
  一 事業者は、消費者の権利の確保に資することとなるよう、その供給する商品及び役務について、次に掲げる責務を有するものとすること。                    (第六条第一項関係)
@ 消費者の安全及び消費者との取引における公正を確保すること。
A 消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること。
B 消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮すること。
C 消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努め、当該苦情を適切に処理すること。
D 国又は地方公共団体が実施する消費者政策に協力すること。       
二 事業者は、消費者の権利の確保に資することとなるよう、その供給する商品及び役務に関し環境の保全に配慮するとともに、当該商品及び役務について品質等を向上させ、その事業活動に関し自らが遵守すべき基準を作成すること等により消費者の信頼を確保するよう努めなければならないものとすること。                                   (第六条第二項関係)
第八 事業者団体の役割に係る規定の新設
  事業者団体は、事業者の自主的な取組を尊重しつつ、事業者と消費者との間に生じた苦情の処理の体制の整備、事業者自らがその事業活動に関し遵守すべき基準の作成の支援その他の消費者の信頼を確保するための自主的な活動に努めるものとすること。                    (第七条関係)
第九 消費者の役割に係る規定の改正
一 消費者は、自ら進んで、その消費生活に関して、必要な知識を修得し、及び必要な情報を収集する等自主的かつ合理的に行動するよう努めるものとすること。
二 消費者は、消費生活に関し、環境の保全に配慮するよう努めるものとすること。   (第八条関係)
第十 消費者団体の役割に係る規定の新設
  消費者団体は、消費生活に関する情報の収集及び提供並びに意見の表明、消費者に対する啓発及び教育、消費者の被害の防止及び救済のための活動その他の消費者の消費生活の安定及び向上を図るための健全かつ自主的な活動に努めるものとすること。                    (第九条関係)
第十一 消費者基本計画に係る規定の新設
一 政府は、消費者政策の計画的な推進を図るため、消費者政策の推進に関する基本的な計画(以下「消費者基本計画」という。)を定めなければならないものとすること。      (第十条第一項関係)
二 消費者基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとすること。     (第十条第二項関係)
@ 長期的に講ずべき消費者政策の大綱
A @のほか、消費者政策の計画的な推進を図るために必要な事項
三 内閣総理大臣は、消費者基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならないものとすること。
                                      (第十条第三項関係)
四 内閣総理大臣は、三による閣議の決定があったときは、遅滞なく、消費者基本計画を公表しなければならないものとすること。                         (第十条第四項関係)
第十二 基本的施策に関する規定の改正及び新設
  現行の「消費者の保護に関する施策等」について、その内容を次のように拡充するとともに、消費者政策に係る「基本的施策」とするものとすること。
一 安全の確保に係る改正
 「危害の防止」について定める規定について、「安全を害するおそれがある商品の事業者による回収の促進」及び「安全を害するおそれがある商品及び役務に関する情報の収集及び提供」に関する施策を明示するとともに、規定全体を「安全の確保」に関する規定とするものとすること。 (第十二条関係)
二 消費者契約の適正化等に係る規定の新設
 国は、消費者と事業者との間の適正な取引を確保するため、消費者との間の契約の締結に際しての事業者による情報提供及び勧誘の適正化、公正な契約条項の確保等必要な施策を講ずるものとすること。
                                       (第十三条関係)
三 広告その他の表示の適正化等に係る改正
 「表示の適正化」等について定める規定について、「広告」が含まれることを明示するため、これを「広告その他の表示の適正化」等について定める規定とするものとすること。    (第十六条関係)
四 公正自由な競争の促進等に係る改正
 公正かつ自由な競争を不当に制限する行為について定める規定について、「消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の拡大を図るための競争の促進」に関する規定へと一般化するものとすること。
                                        (第十七条関係)
五 啓発活動及び教育の推進に係る改正
 啓発活動及び教育の推進について定める規定について、国と並び地方公共団体も主体的に取り組むべきことを明示するとともに、消費者が生涯にわたって消費生活について学習する機会があまねく求められている状況にかんがみ、様々な場を通じての教育の推進の必要性を明示するため、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて教育を充実する旨を規定するものとすること。     (第十八条関係)
六 意見の反映及び透明性の確保に係る改正
消費者の意見の反映について定める規定について、「施策の策定の過程の透明性の確保」を明示するものとすること。                               (第十九条関係)
七 苦情処理及び紛争解決の促進に係る改正
1 苦情処理の促進
苦情処理のあっせん等について定める規定について、都道府県の第一次的な相談窓口としての役割を重視する観点から、次のように改めるものとすること。         (第二十条第一項関係)
@ 地方公共団体は、商品及び役務に関し事業者と消費者との間に生じた苦情が専門的知見に基づいて適切かつ迅速に処理されるようにするため、苦情の処理のあっせん等に努めなければならないものとすること。
A @の場合において、都道府県は、市町村(特別区を含む。)との連携を図りつつ、商品及び役務に関し事業者と消費者との間に生じた多様な苦情に柔軟かつ弾力的に対応するよう努めなければならないものとすること。  
2 人材の確保及び資質の向上その他の施策
国及び都道府県は、商品及び役務に関し事業者と消費者との間に生じた苦情が専門的知見に基づいて適切かつ迅速に処理されるようにするため、人材の確保及び資質の向上その他の必要な施策(都道府県にあっては、1に規定するものを除く。)を講ずるよう努めなければならないものとすること。
                                  (第二十条第二項関係)
3 紛争解決の促進
  紛争解決の促進について新たに規定を置くこととし、「国及び都道府県は、商品及び役務に関し事業者と消費者との間に生じた紛争が専門的知見に基づいて適切かつ迅速に解決されるようにするために必要な施策を講ずるよう努める」旨を規定するものとすること。     (第二十条第三項関係)
八 高度情報通信社会の進展への的確な対応に係る規定の新設
 国は、消費者の年齢その他の特性に配慮しつつ、消費者と事業者との間の適正な取引の確保、消費者に対する啓発活動及び教育の推進、苦情処理及び紛争解決の促進等に当たって高度情報通信社会の進展に的確に対応するために必要な施策を講ずるものとすること。          (第二十一条関係)
九 国際的な連携の確保に係る規定の新設
 国は、消費生活における国際化の進展に的確に対応するため、国民の消費生活における安全及び消費者と事業者との間の適正な取引の確保、苦情処理及び紛争解決の促進等に当たって国際的な連携を確保する等必要な施策を講ずるものとすること。                  (第二十二条関係)
十 環境の保全への配慮に係る規定の新設
 国は、商品又は役務の品質等に関する広告その他の表示の適正化等、消費者に対する啓発活動及び教育の推進等に当たって環境の保全に配慮するために必要な施策を講ずるものとすること。
                                      (第二十三条関係)
 十一 試験、検査等の施設の整備等に係る改正
   国は、役務についての調査研究等を行うとともに、必要に応じてその結果を公表する等必要な施策を講ずるものとすること。                           (第二十四条関係)
第十三 国民生活センターの役割に係る規定の新設
 独立行政法人国民生活センターは、国及び地方公共団体の関係機関、消費者団体等と連携し、国民の消費生活に関する情報の収集及び提供、事業者と消費者との間に生じた苦情の処理のあっせん及び当該苦情に係る相談、消費者からの苦情等に関する商品についての試験、検査等及び役務についての調査研究等、消費者に対する啓発及び教育等における中核的な機関として積極的な役割を果たすものとすること。
                                       (第二十六条関係)
第十四 消費者団体の自主的な活動の促進に係る規定の改正
 国は、国民の消費生活の安定及び向上を図るため、消費者団体の健全かつ自主的な活動が促進されるよう必要な施策を講ずるものとすること。                     (第二十七条関係)
第十五 消費者政策委員会に係る規定の新設
一 設置
内閣府に、消費者政策委員会(以下「委員会」という。)を置くものとすること。(第二十八条関係)
二 所掌事務
委員会は、次に掲げる事務をつかさどるものとすること。           (第二十九条関係)
@ 消費者基本計画の案を作成すること。
A 左の別表に掲げる法律の施行又は改正に関する事項について、消費者政策の統一性及び総合性を確保する観点から調査審議し、必要があると認めるときは、関係各大臣に意見を述べること。
B Aに掲げるもののほか、消費者政策の推進に関する重要事項を調査審議し、必要があると認めるときは、関係行政機関の長に意見を述べること。
  別表(二並びに三の1及び3関係)
(1) 食品衛生法
(2) 消費者契約法
(3) 計量法
(4) 工業標準化法
(5) 不当景品類及び不当表示防止法
(6) 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
(7) 独立行政法人国民生活センター法
(8) 消費生活協同組合法
(9) (1)〜(8)に掲げるもののほか、消費者の利益の擁護及び増進にかかわる法律として政令で定めるもの
三 委員会の意見の聴取
1 関係各大臣は、この法律又は二の別表に掲げる法律の規定に基づく命令を制定し、又は改廃しようとするときは、委員会の意見を聴かなければならないものとすること。ただし、委員会が@に該当すると認めるとき又は関係各大臣がAに該当すると認めるときは、この限りでないものとすること。
                                    (第三十条第一項関係)
@ 当該命令の制定又は改廃に係る内容からみて消費者政策の統一性及び総合性を確保する観点から調査審議を行うことが明らかに必要でないとき。
A 国民の消費生活の安全を確保する等のため緊急を要する場合で、あらかじめ委員会の意見を聴くいとまがないとき。
2 関係各大臣は、1のただし書の場合(関係各大臣が1のAに該当すると認めた場合に限る。)においては、当該命令の制定又は改廃の後相当の期間内に、その旨を委員会に報告し、委員会の意見を聴かなければならないものとすること。                  (第三十条第二項関係)
3 関係各大臣は、二の別表に掲げる法律の施行に関する事項であって国民の消費生活に及ぼす影響が大きいものとして政令で定めるものについては、委員会の意見を聴かなければならないものとすること。この場合においては、1のただし書及び2を準用するものとすること。 (第三十条第三項関係)
4 1及び3に定めるもののほか、関係各大臣は、消費者政策に係る施策を策定するため必要があると認めるときは、委員会の意見を聴くことができるものとすること。     (第三十条第四項関係)
四 資料の提出等の要求
  委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができるものとすること。(第三十一条関係)
五 調査の委託
 委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、独立行政法人、民法第三十四条の規定により設立された法人、事業者その他の民間の団体、都道府県の試験研究機関又は学識経験を有する者に対し、必要な調査を委託することができるものとすること。       (第三十二条関係)
六 組織等
1 委員会は、委員七人をもって組織するものとすること。        (第三十三条第一項関係)
2 委員のうち三人は、非常勤とするものとすること。          (第三十三条第二項関係)
3 委員は、消費者政策に関して優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命するものとすること。                    (第三十四条第一項関係)
4 委員の任期は、三年とするものとすること。             (第三十五条第一項関係)
 七 その他
  委員の罷免、委員の服務、委員の給与、委員長、会議、専門委員、事務局及び政令への委任について、所要の規定を置くものとすること。              (第三十六条から第四十三条まで関係)
第十六 施行期日
この法律は、公布の日から施行するものとすること。              (附則第一項関係)
第十七 検討
 消費者政策の在り方については、この法律の施行後五年を目途として検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとすること。                  (附則第二項関係)
第十八 その他
一 独立行政法人国民生活センター法の一部改正
 独立行政法人国民生活センターの業務として、事業者と消費者との間に生じた苦情の処理のあっせん及び当該苦情に係る相談を規定するものとすること。              (附則第四項関係)
二 内閣府設置法の一部改正
 国民生活審議会の所掌事務のうち、消費者政策に関するものを、消費者政策委員会に統合するものとすること。                                 (附則第五項関係)
三 その他
 その他所要の規定の整備を行うこと。

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