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   医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案要綱


第一 総則
 一 目的
   この法律は、医療を受ける者に対し医療に関する情報がその者及びその家族にとって十分に納得することができる程度に提供されているとはいえない状況にあること、医療に係る相談に応じる体制が不十分であること、医療に係る事故等とこれに対する医療機関等の対応の在り方が問われる事態の相次ぐ発生等により医療に対する国民の信頼が低下しつつあること等にかんがみ、医療を受ける者に対する医療に関する情報の提供についての基本的な事項、医療を受ける者に対する相談支援に関し必要な事項、医療事故等の原因究明等安全な医療を確保するために必要な事項等について定めることにより、医療を受ける者の尊厳が保持され、医療を受ける者の理解と自己決定に基づいた良質かつ適切な医療の提供を促進し、もって我が国の医療の信頼性の確保及び向上と医療を受ける者の権利利益の擁護に資することを目的とすること。(第一条関係)
 二 定義
  1 この法律において「医療機関」とは、病院、診療所、介護老人保健施設その他の医療を提供する機関であって厚生労働省令で定めるものをいうこと。(第二条第一項関係)
  2 この法律において「医療機関の開設者等」とは、医療機関を開設した者(国の開設する医療機関その他の厚生労働省令で定める医療機関にあっては、厚生労働省令で定める者)をいうこと。(第二条第二項関係)
  3 この法律において「医療機関の管理者」とは、医療機関を管理する者をいうこと。(第二条第三項関係)
  4 この法律において「医療従事者」とは、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療業務に従事する者をいうこと。(第二条第四項関係)
  5 この法律において「診療記録」とは、診療録、処方せん、検査記録、看護記録、エックス線写真その他の診療の過程において医療従事者が作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって厚生労働省令で定めるものをいうこと。(第二条第五項関係)
 三 基本的理念
  1 医療は、医療を受ける者の人格と権利利益が尊重され、医療を受ける者と医療従事者との信頼関係の下に医療を受ける者の理解と自己決定に基づいて行われることを基本とするとともに、それが提供されるに当たっては、安全で、かつ、その時点における医療の水準及び医学に関する専門的科学的知見に照らして適切なものとなるよう最大限の配慮がなされなければならないこと。(第三条関係)
  2 医療に関する情報は、医療を受ける者の理解と自己決定に資するよう、適切に提供されるものとすること。(第四条第一項関係)
  3 医療を受ける者の診療に係る情報については、当該医療を受ける者の心身に関するものであることを踏まえ、個人の尊厳が重んぜられるべきとの理念の下に、その安全の確保に特に留意しつつ、適正な管理及び利用がなされるとともに、医療を受ける者と医療従事者との間で当該情報が共有化されるよう、当該情報に対する医療を受ける者の適切な関与につき配慮されなければならないこと。(第四条第二項関係)
 四 医療機関及び医療従事者の責務
    医療機関及び医療従事者は、この法律の趣旨にのっとり、医療を受ける者の信頼を確保することに特に留意しつつ、自ら、医療に関する情報の適切な提供について積極的に取り組むとともに、全力を挙げて安全な医療を行うよう努めなければならないこと。(第五条関係)
 五 医療を受ける者の責務
   医療を受ける者は、医療がその理解と自己決定に基づいて行われるべきものであることを自覚して、医療従事者に協力しつつ、それにできる限り主体的に取り組むよう努めるものとすること。(第六条関係)
 六 国及び地方公共団体の責務
   国及び地方公共団体は、医療に関する情報の適正かつ円滑な提供の促進及び安全かつ適正な医療の確保を図るために必要な各般の措置を講ずるとともに、医療を受ける者によりこの法律に定める権利等が適切に行使されるよう、それに関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとすること。(第七条関係)
第二 医療機関等に関する情報の提供
 一 医療機関による情報の提供
   医療機関は、医療を受ける者の自己決定に資するため、適切な方法により、できる限り広く、その提供する医療の内容に関する情報、その有する人員、施設及び設備に関する情報その他の当該医療機関に関する情報を提供するよう努めなければならないこと。(第八条関係)
 二 都道府県知事への報告等
  1 医療機関の管理者による報告等
    医療機関の管理者は、厚生労働省令で定めるところにより、医療従事者の員数及び医療従事者のうち医師、歯科医師その他厚生労働省令で定める医療従事者の氏名等の事項を当該医療機関の所在地の都道府県知事に報告し、当該事項を記載した書面を当該医療機関において閲覧に供しなければならないものとするとともに、都道府県知事は、報告された事項の内容を公表しなければならないこと。(第九条関係)
  2 薬局開設者による報告等
    薬局開設者は、厚生労働省令で定めるところにより、その開設した薬局の薬剤師の氏名等の事項を当該薬局の所在地の都道府県知事に報告し、当該事項を記載した書面を当該薬局において閲覧に供しなければならないものとするとともに、都道府県知事は、報告された事項の内容を公表しなければならないこと。(第十条関係)
 三 掲示義務
   医療機関の管理者は、厚生労働省令で定めるところにより、この法律に定める権利等について、当該医療機関内において医療を受ける者の見やすいように掲示しなければならないこととし、違反に対する罰則を設けること。(第十一条、第四十二条及び第四十三条関係)
 四 医療機関に係る広告の規制の緩和
   医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告できる事項を定めることの廃止その他の一の趣旨を踏まえた医療機関に係る広告についての事項、内容及び方法に関する規制を緩和するために必要な措置は、別に法律で定めること。(第十二条関係) 
第三 診療に係る情報の提供等
 一 診療に関する説明等
  1 患者の理解と自己決定に基づいた医療の実施
    医療従事者は、診療その他の医療の提供につき、患者に対して懇切丁寧に説明等を行い、患者からの求めに誠意をもって対応し、その他患者の立場に立ってその役務の提供を行うことにより、患者の理解と自己決定に基づいた医療を行うよう努めなければならないこと。(第十三条関係)
  2 診療に関する説明
  (1)医師又は歯科医師は、診療に際し、患者(患者がその説明を理解することが困難な状態にあるときは、患者の家族その他患者を看護する者(以下「家族等」という。)。(3)及び5の(1)において同じ。)に対し、当該患者の心身の状況に応じつつ、適切な方法により、当該診療に関する次に掲げる事項について、十分に納得が得られるような説明を行うものとすること。(第十四条第一項関係)
    イ 傷病名(その疑いがあると診断されたものを含む。)及び主要症状
    ロ 行おうとする治療又は検査の目的、方法及び予測される効果等(当該治療又は検査が患者の心身に対して負担又は危険を伴うおそれがあるものである場合にはその内容及び程度を、当該治療又は検査に代わり得る他の治療又は検査の方法がある場合にはその方法及びそれによることとしたときの予測される効果等の相違を、当該治療又は検査の内容に薬剤の投与が含まれる場合にはその薬剤の名称、効能、効果、特に注意すべき副作用等を、それぞれ含むものとする。)
    ハ 行おうとする治療又は検査を拒否できること(当該治療を行わないこととしたときに予測される当該患者の心身の状況を含む。)。
    ニ 自己において必要な診療を行うことが困難である場合その他必要な診療を他の医師又は歯科医師に行わせることが適当である場合には、その旨、その理由及び他の医師又は歯科医師に関する情報、他の医療機関に関する情報その他の当該患者が当該必要な診療を受けるために必要な事項
    ホ その他診療に関する重要な事項
  (2)医師又は歯科医師は、(1)にかかわらず、イからニまでのいずれかに該当する場合においては、(1)イからホまでに掲げる事項の全部又は一部について、(1)の説明を行わないことができること。(第十四条第二項関係)
    イ 緊急に診療を行う必要があるために(1)の説明を行ういとまがない場合
    ロ (1)の説明を行うことが当該患者に対する治療の効果等に明らかに悪影響を及ぼすおそれがある場合
    ハ (1)の説明を受けることを希望しない旨の患者の意思の表明があった場合
    ニ 当該診療に関し説明すべき事項について既に説明が行われている場合
  (3)医師又は歯科医師は、(1)の説明について、患者から書面の交付を求められたときは、これを拒むことにつき正当な理由がある場合を除き、当該説明の概要を記載した書面を交付するものとすること。(第十四条第三項関係)
  3 説明等と異なる診療又は適切でない診療が行われた場合の患者等に対する報告
    医師又は歯科医師は、2の(1)によりあらかじめ行われた説明の内容若しくはそれに基づいて選択された内容と異なる診療が行われた場合又は診療が適切に行われなかった場合には、できる限り速やかに、当該診療を受けた患者(患者が当該診療に関する報告を理解することが困難な状態にあるときは家族等、患者が当該診療に起因して死亡したときはその遺族)に対し、適当な方法により、その事実及び当該診療の概要(当該患者に生命若しくは身体の被害が生じた場合又はそれらの被害が生ずるおそれがある場合には、その概要及びそれに関して講じた措置又は講ずることが必要となると認められる措置を含む。)並びにそのような事態に至った経緯その他当該診療等に関しそれらの者に知らせるべき事項について、報告しなければならないこと。(第十五条関係)
  4 説明及び報告に当たっての医療従事者間の連携
    医師又は歯科医師による2の(1)による説明及び3による報告は、他の医療従事者との連携の下に、行われなければならないこと。(第十六条関係)
  5 調剤に関する説明等
  (1)薬剤師は、薬局で調剤する場合であって、処方せんに薬剤師が複数の商品から選択して調剤することが可能となる内容の記載がされているときは、患者に対し、当該患者が調剤される商品を決定することができるよう、調剤することができるそれぞれの商品について、適切な方法により、十分に納得が得られるような説明を行うものとすること。(第十七条第一項関係)
  (2)薬局開設者は、薬剤師が(1)の処方せんにより調剤したときは、当該処方せんを交付した医師又は歯科医師に対し、厚生労働省令で定めるところにより、調剤した商品の名称を通知するものとすること。(第十七条第二項関係)
 二 診療記録の開示及び訂正等
  1 診療記録の開示
  (1)患者(患者であった者を含む。以下二において同じ。)又はその遺族は、当該患者の診療に係る診療記録について、当該診療に係る医療機関の管理者(法令の規定により医療機関の管理者以外の者が保存することとされている診療記録については、当該法令の規定によりそれを保存することとされている者。以下二において同じ。)に対し、その開示を請求することができること。(第十八条第一項関係)
  (2)患者が未成年者又は成年被後見人であるときは、その法定代理人は、当該患者に代わって(1)による開示の請求(以下「開示請求」という。)をすることができること。ただし、当該開示請求をすることが当該患者の意思に反することが明らかである場合は、この限りでないこと。(第十八条第二項関係)
  (3)(1)及び(2)の者のほか、患者の家族は、患者が診療記録に記録されている情報の内容について理解することが困難な状態にあるとき又は患者の同意があるときは、当該患者に代わって開示請求をすることができること。(第十八条第三項関係)
  (4)医療機関の管理者は、開示請求があったときは、当該開示請求をした者に対し、当該開示請求に係る診療記録(当該診療記録に当該開示請求に係る患者に関する情報以外の情報が記録されている場合には、当該患者に関する情報に係る部分に限る。2の(2)及び四を除き、以下同じ。)を開示しなければならないこと。ただし、開示することにより次の各号のいずれかに該当する場合は、その全部又は一部を開示しないことができること。(第十九条関係)
    イ 当該患者に対する治療の効果等に明らかに悪影響を及ぼすおそれがある場合その他当該患者の生命、身体その他の権利利益を著しく害するおそれがある場合
    ロ 第三者(当該患者及び当該医療機関の医療従事者以外の者をいう。)の権利利益を害するおそれがある場合
  (5)医療機関の管理者は、(4)ただし書の規定に基づき開示請求に係る診療記録の全部若しくは一部を開示しないとき又は開示請求に係る診療記録を保存していないときは、当該開示請求をした者に対し、その旨を通知しなければならないこと。(第二十条関係)
  (6)(4)による開示又は(5)による通知((6)において「開示又は通知」という。)は、開示請求があった日から七日以内に行うものとし、事務処理上の困難その他正当な理由によりその期間内に開示又は通知をすることができないときは、その期間内に、開示請求をした者に対し、その期間内に開示又は通知をすることができない理由及び開示又は通知の期限を通知するものとすること。(第二十一条関係)
  (7)診療記録の開示は、文書又は図画については閲覧又は写しの交付により、電磁的記録については当該電磁的記録を出力することにより作成した書面の交付により行うものとすること。(第二十二条第一項関係)
  (8)医療機関の管理者は、診療記録の開示を受ける者から、当該開示の実施に関し、実費の範囲内において、手数料を徴収することができること。(第二十二条第二項関係)
  2 診療記録に記録されている情報の内容の訂正等
   (1)患者は、1の(4)により開示を受けた診療記録に記録されている当該患者に関する情報の内容に事実に関する誤りがあると認めるときは、当該診療記録を保存する医療機関の管理者に対し、当該情報の内容の訂正、追加又は削除(以下「訂正等」という。)を請求することができることとし、1の(2)及び(3)は、当該訂正等の請求(以下「訂正等の請求」という。)について準用すること。(第二十三条関係)
  (2)医療機関の管理者は、訂正等の請求があった場合において、当該訂正等の請求に係る情報の内容についての事実に関する誤りがあると認めるときは、診療記録の作成及び保存の目的の達成に必要な範囲内において訂正等を行い、当該訂正等の請求をした者に対し、その旨及び訂正等の内容を通知しなければならないこと。(第二十四条第一項関係)
  (3)医療機関の管理者は、訂正等の請求に係る情報の内容について、訂正等を行わないときは、当該訂正等の請求をした者に対し、理由を示してその旨を通知するとともに、当該訂正等の請求に係る診療記録に、訂正等の請求があった旨及びその概要を記載し、又は記録しなければならないこと。(第二十四条第二項関係)
  (4)(2)による訂正等及び通知又は(3)による通知及び記載若しくは記録(以下(4)において「訂正等又は通知」という。)は、訂正等の請求があった日から三十日以内に行うものとし、事務処理上の困難その他正当な理由によりその期間内に訂正等又は通知をすることができないときは、その期間内に、訂正等の請求をした者に対し、その期間内に訂正等又は通知をすることができない理由及び訂正等又は通知の期限を通知するものとすること。(第二十四条第三項及び第四項関係)
  3 開示等の請求を受け付ける方法
  (1)医療機関は、開示請求及び訂正等の請求(以下3において「開示等の請求」という。)に関し、厚生労働省令で定めるところにより、請求は書面によることとする等開示等の請求を受け付ける方法について定めることができること。この場合において、開示等の請求をする者は、当該方法に従って、請求をするものとすること。(第二十五条第一項関係)
  (2)医療機関は、(1)に基づき開示等の請求を受け付ける方法を定めるに当たっては、必要最小限のものに限り、かつ、開示等の請求をする者に過重な負担を課するものとならないよう配慮しなければならないこと。(第二十五条第二項関係)
 三 領収書の交付等
  1 領収書の交付
    医療機関は、患者に係る医療に要した費用につき支払が行われるに際し、厚生労働省令で定めるところにより、当該患者その他の当該費用の支払をする者に対し、その費用の内容の内訳が分かる領収書を交付するものとすること。(第二十六条第一項関係)
  2 費用の詳細な内訳が記載された書面の交付
    医療機関(厚生労働省令で定めるものを除く。以下2において同じ。)は、患者、その遺族その他1の支払をする者から、当該患者に係る医療に要した費用の内容の詳細な内訳を記載した書面の交付の申出があったときは、厚生労働省令で定めるところにより、その書面を交付するものとすること。この場合において、患者以外の者に対する書面の交付に際しては、医療機関は、当該患者の権利利益を害することとならないよう配意するものとすること。(第二十六条第二項関係)
 四 診療に係る情報の提供等に関する体制等の整備
  1 医療機関における診療に係る情報の管理、提供等に関する体制の整備
    医療機関は、診療記録の作成及び保存、診療に係る情報の提供等に関する具体的な指針の策定、それらに関する当該医療機関に勤務する医療従事者に対する教育、診療記録を管理する専任の者の配置その他の当該医療機関における診療に係る情報の適切な管理、提供等を行うために必要な体制の整備に努めなければならないこと。(第二十七条関係)
  2 診療記録等に関する制度の整備
    看護記録の作成等の義務付け、診療録等の保存期間の延長その他の診療記録に関する制度及び調剤録の保存期間の延長その他の調剤に係る記録に関する制度の整備に関し必要な事項は、別に法律で定めること。(第二十八条関係)
第四 相談支援
 一 相談への対応
   医療機関及び医療従事者は、その提供する医療又はその医療に関する情報の提供に対する患者その他の者からの相談について、適切かつ迅速な対応に努めなければならないものとするとともに、医療機関は、患者その他の者からの相談に適切かつ迅速に対応することができるようにするため、相談に応じるための窓口を設置する等の必要な措置を講ずるよう努めなければならないこと。(第二十九条関係)
 二 医療相談支援センター
   都道府県は、二次医療圏ごとに、患者その他の者からの相談に応じること等の事務を実施する医療相談支援センターを設置しなければならないこと。(第三十条第一項関係)
第五 安全な医療を確保するための体制の整備
 一 医療機関における体制の整備
  1 医療機関における安全な医療の確保
    医療機関は、医療に係る事故の防止に関する具体的な指針の策定、当該医療機関に勤務する医療従事者の資質の向上等を図るための医療技術及び安全管理に関する研修の実施その他の当該医療機関において安全な医療を確保するために必要な措置を講じなければならないこと。(第三十一条関係)
  2 医療安全管理委員会
  (1)病院、患者を入院させるための施設を有する診療所その他厚生労働省令で定める数以上の者を入所させるための施設を有する医療機関の開設者等は、当該医療機関に医療安全管理委員会を設置しなければならないこと。(第三十二条第一項関係)
  (2)医療安全管理委員会は、当該医療機関における次に掲げる事項について調査審議し、その結果に基づいて、当該医療機関の開設者等又は医療機関の管理者に対し、意見を述べるものとすること。(第三十二条第二項関係)
    イ 医療の提供の過程において発生した人の生命又は身体の被害が生じた事故及びそれらの被害が生ずるおそれがあったと認められる事態に関する事項
    ロ 医療に係る事故を防止するための対策に関する事項
    ハ その他医療の安全管理に関する重要な事項
  (3)厚生労働省令で定める数以上の者を入院させ、又は入所させるための施設を有する医療機関の医療安全管理委員会の組織については、その中立性が確保されるよう、その委員のうち少なくとも一人以上は、当該医療機関に勤務する者以外の者でなければならないものとすること。(第三十二条第三項関係)
 二 医療事故等の報告
  1 医療機関の開設者等は、医療の提供の過程において患者の生命又は身体の被害が生じた事故及びそれらの被害が生ずるおそれがあったと認められる事態(以下「医療事故等」という。)が当該医療機関において発生したときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該医療事故等の発生した日時、当該医療事故等の概要その他の厚生労働省令で定める事項を当該医療機関の所在地を管轄する都道府県知事(診療所その他の厚生労働省令で定める医療機関にあっては、その所在地が保健所を設置する市又は特別区にある場合においては、当該保健所を設置する市の市長又は特別区の区長。(2)において同じ。)に報告しなければならないこと。(第三十三条第一項関係)
  2 都道府県知事は、(1)により医療の提供の過程において患者の生命又は身体の被害が生じた事故の報告を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に報告しなければならないこと。(第三十三条第二項関係)
第六 医療に関する評価
 一 医療技術評価の促進等
  1 国は、医療技術の普及及び医療の質の向上等に資するため、医療技術に関する情報の収集、評価、整理及び提供等が行われるための基盤の整備、医療技術に関する評価の方法の研究開発の推進、医療技術に関する評価に係る成果を普及させるための環境の整備その他医療技術に関する評価及びそれに係る成果の活用の促進に関し必要な施策を講ずるものとすること。(第三十四条第一項関係)
  2 医療機関その他の関係機関及び医療従事者その他の関係者は、国が講ずる1の施策に協力するとともに、自主的かつ主体的に医療技術に関する評価及びそれに係る成果の活用に取り組むよう努めるものとすること。(第三十四条第二項関係)
 二 医療機関及び医療機関が提供する医療に関する評価の促進
  1 国は、良質かつ適切な医療の確保及び医療を受ける者の自己決定に資するため、この法律の公布の日後三年以内に医療機関及び医療機関が提供する医療に関する客観的な評価が行われる仕組みを整備するものとすること。(第三十五条第一項関係)
  2 国は、1の仕組みが医療機関によって活用され、及び1の評価に関する情報が医療を受ける者に対して提供されるようにするため、必要な施策を講ずるものとすること。(第三十五条第二項関係)
  3 地域医療支援病院、特定機能病院その他これらの病院に準ずる病院であって厚生労働省令で定めるものは、1の仕組みにより、当該病院及び当該病院が提供する医療について、客観的な評価を受けなければならないこと。(第三十五条第三項関係)
第七 その他
 一 施行期日
   この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。ただし、第三の三の1は、平成十八年十月一日から施行すること。(附則第一条関係)
 二 医療事故等の調査の制度に関する検討
   政府は、医療の提供の過程において患者の生命又は身体の被害が生じた事故その他の医療事故等の調査に関する制度に関し、専門的な調査機関の創設その他の医療事故等の調査を行う体制の整備のための方策、その調査方法、医療の提供の過程において患者の生命又は身体の被害が生じた事故の所轄警察署への届出の制度の在り方その他の必要な事項について速やかに検討を加え、その結果に基づいて、法制の整備その他の必要な措置を講ずるものとすること。(附則第二条関係)
 三 診療記録の開示に関する特例
   この法律の施行の日前に行われた診療につき作成され、又は取得された診療記録の開示については、第三の二の1の(4)本文及び(7)にかかわらず、当該診療記録の閲覧若しくは写しの交付又は電磁的記録を出力することにより作成した書面の交付に代えて、当該診療記録に記録されている当該診療に係る情報の概要を記載した書面の閲覧又は交付により行うことができること。(附則第三条関係)
 四 その他所要の規定の整備を行うこと。

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