地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案要綱
第一 総則
一 目的
この法律は、地方公共団体による教育、学術及び文化(以下単に「教育」という。)に関する機関(以下「教育機関」という。)の設置並びに学校理事会、教育監査委員会等に関し必要な事項を定め、もって地方公共団体における教育行政の適正な運営の確保を図ることを目的とするものとすること。
(第一条関係)
二 定義
1 この法律において「学校」とは、学校教育法第一条に規定する学校をいうものとすること。
2 この法律において「教員」とは、教育公務員特例法第二条第二項に規定する教員をいうものとすること。 (第二条関係)
第二 教育機関
一 教育機関の設置等
1 教育機関の設置
地方公共団体は、法律で定めるところにより、学校、図書館、博物館、公民館その他の教育機関を設置するほか、条例で、教育に関する専門的、技術的事項の研究又は教育関係職員の研修、保健若しくは福利厚生に関する施設その他の必要な教育機関を設置することができるものとすること。
(第三条関係)
2 教育機関の職員
@ 1の学校その他の教育機関に置く職員について規定すること。
A 地方公共団体は、その設置する学校の職員の任用に当たっては、相互に連携協力するよう努めるものとすること。 (第四条関係)
3 教諭等が行う児童等に対する指導が不適切である場合の措置
@ 地方公共団体の長は、その設置する学校の教諭、養護教諭、栄養教諭、助教諭、養護助教諭又は講師(以下「教諭等」という。)が行う児童、生徒又は幼児に対する指導が不適切であると認められる場合には、当該教諭等について、研修の実施、教諭等以外の職への異動その他その者が引き続き当該児童、生徒又は幼児に対する不適切な指導を行うことがないようにするために必要な措置を講ずるものとすること。
A 地方公共団体の長は、@の措置のうち当該教諭等の教諭等以外の職への異動を行うに当たっては、公務の能率的な運営を確保する見地から、当該教諭等の適性、知識等について十分に考慮するものとすること。 (第五条関係)
4 所属職員の人事又は研修に関する意見の申出
1の学校その他の教育機関の長は、教育公務員特例法に特別の定めがある場合を除き、その所属の職員の任免その他の人事又は研修に関する意見を任命権者に対して申し出ることができるものとすること。 (第六条関係)
5 学校等の管理
地方公共団体の長は、法令又は条例に違反しない限度において、その設置する1の学校その他の教育機関(大学を除く。以下同じ。)の施設、設備、組織編制、教育課程、教材の取扱いその他1の学校その他の教育機関の管理運営の基本的事項について、必要な規則を定めるものとすること。
(第七条関係)
二 学校理事会
1 地方公共団体が設置する学校(大学及び高等専門学校を除く。以下二において同じ。)には、当該学校の運営に関する重要事項を協議する機関として、学校理事会を置かなければならないものとすること。
2 学校理事会の構成員は、次に掲げる者(政令で定める規模以下の学校で地方公共団体の長が指定するものに置かれる学校理事会にあっては、Dに掲げる者を除く。)について、地方公共団体の長が任命するものとすること。ただし、その過半数は、@及びAに掲げる者について任命しなければならないものとすること。
@ 当該学校に在籍する児童、生徒又は幼児の保護者
A 当該学校の所在する地域の住民
B 当該学校の校長
C 当該学校の教員
D 教育に関し専門的な知識又は経験を有する者
E その他地方公共団体の長が必要と認める者
3 地方公共団体の長は、2@、A及びCに掲げる者について、学校理事会の構成員を任命するに当たっては、これらに掲げる者に係る団体その他の関係者の意向を考慮するものとすること。
4 校長は、当該学校の運営に関し当該地方公共団体の規則で定める事項について基本的な方針を作成し、学校理事会の承認を得なければならないものとすること。
5 4のほか、校長は、次の事項について、学校理事会の承認を得なければならないものとすること。
@ 当該学校の教育課程
A 当該学校の職員に関し一4により校長が申し出る意見
B その他当該地方公共団体の規則で定める事項
6 学校理事会は、当該学校の運営に関する事項について、校長に対して、報告を求めることができるものとすること。
7 学校理事会は、当該学校の運営に関する事項について、地方公共団体の長又は校長に対して、意見を述べることができるものとすること。
8 地方公共団体の長又は校長は、7により述べられた意見を尊重するものとすること。
9 学校理事会の構成員の任免の手続及び任期、学校理事会の議事の手続その他学校理事会の運営に関し必要な事項については、当該地方公共団体の規則で定めるものとすること。 (第八条関係)
第三 教育監査委員会
一 設置
都道府県、市町村及び教育に関する事務(大学及び私立学校に関する事務並びに宗教法人法第八十七条の二に規定する第一号法定受託事務を除く。以下同じ。)の全部又は一部を処理する地方公共団体の組合に教育監査委員会(以下第三において「委員会」という。)を置くものとすること。
(第九条関係)
二 権限
1 委員会は、次に掲げる事務を処理するものとすること。
@ 当該地方公共団体の長が処理する教育に関する事務の実施状況に関し必要な評価及び監視を行うこと。
A @による評価又は監視(三において「評価又は監視」という。)の結果に基づき、当該地方公共団体の長に対し、教育に関する事務の改善のために必要な勧告をすること。
B 当該地方公共団体の長が処理する教育に関する事務に係る苦情の申出について必要なあっせんを行うこと。
C @からBまでに掲げるもののほか、法令に基づき委員会に属させられた事務
2 委員会は、1Aによる勧告をしたときは、遅滞なく、その勧告の内容を公表しなければならないものとすること。
3 当該地方公共団体の長は、1Aによる勧告に基づいてとった措置について委員会に報告しなければならないものとすること。この場合においては、委員会は、当該報告に係る事項を公表しなければならないものとすること。
4 委員会は、毎年、その事務の処理状況を公表しなければならないものとすること。 (第十条関係)
三 資料の提出の要求等
1 委員会は、評価又は監視を行うため必要な範囲において、当該地方公共団体の長に対し資料の提出及び説明を求め、又はその業務について実地に調査することができるものとすること。
2 委員会は、評価又は監視の実施上の必要により、公私の団体その他の関係者に対し、必要な資料の提出に関し、協力を求めることができるものとすること。 (第十一条関係)
四 組織
委員会は、五人以上(町村又は地方公共団体の組合のうち町村のみが加入するものの委員会にあっては、三人以上)で条例で定める人数の委員をもって組織するものとすること。 (第十二条関係)
五 委員及び補充員の選挙等
1 委員は、当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者で、人格が高潔で、教育に関し識見を有するもののうちから、地方公共団体の議会においてこれを選挙するものとすること。
2 議会は、1による選挙を行う場合においては、同時に、1に規定する者のうちから委員と同数の補充員を選挙しなければならないものとすること。補充員がすべてなくなったときも、同様とするものとすること。
3 委員中に欠員があるときは、委員長は、補充員のうちからこれを補欠するものとすること。その順序は、選挙の時が異なるときは選挙の前後により、選挙の時が同時であるときは得票数により、得票数が同じであるときはくじにより、これを定めるものとすること。
4 次のいずれかに該当する者は、委員又は補充員となることができないものとすること。
@ 破産者で復権を得ない者
A 禁錮以上の刑に処せられた者
5 委員又は補充員は、それぞれ、そのうちの半数以上が同時に同一の政党その他の政治団体に属する者となることとなってはならず、かつ、そのうちに保護者である者が含まれなければならないものとすること。
6 1若しくは2による選挙が行われた場合、委員若しくは補充員の政党その他の政治団体の所属関係に異動があった場合又は委員のいずれか若しくは補充員のいずれかが保護者でなくなった場合において5の要件を満たさないこととなったとき、及び3により委員の補欠を行い、又は九5により臨時に補充員を委員に充てたならば5の要件を満たさないこととなる場合に関し必要な事項は、政令でこれを定めるものとすること。
7 委員又は補充員の選挙を行うべき事由が生じたときは、委員長は、直ちにその旨を当該地方公共団体の議会及び長に通知しなければならないものとすること。 (第十三条関係)
六 任期
1 委員の任期は、四年とするものとすること。ただし、後任者が就任する時まで在任するものとすること。
2 補欠委員の任期は、前任者の残任期間とするものとすること。
3 補充員の任期は、委員の任期によるものとすること。 (第十四条関係)
七 委員の兼職禁止、罷免等
委員の兼職禁止、罷免、解職請求、失職、退職及び服務について規定すること。
(第十五条から第二十条まで関係)
八 委員長等
1 委員会に委員長を置き、委員のうちから互選するものとすること。
2 委員長は、委員会の会務を総理し、委員会を代表するものとすること。
3 委員長に事故があるとき、又は委員長が欠けたときは、あらかじめ委員長の指定する委員がその職務を代理するものとすること。
4 委員会は、委員の互選をもって、一人以上で条例で定める人数の常勤の委員を定めなければならないものとすること。 (第二十一条関係)
九 会議
1 委員会の会議は、委員長が招集するものとすること。委員から委員会の会議の招集の請求があるときは、委員長は、これを招集しなければならないものとすること。
2 委員会は、委員長及び委員の過半数が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができないものとすること。
3 委員会の議事は、6のただし書の発議に係るものを除き、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、委員長の決するところによるものとすること。
4 委員は、自己、配偶者若しくは三親等以内の親族の一身上に関する事件又は自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件については、その議事に参与することができないものとすること。ただし、委員会の同意があるときは、会議に出席し、発言することができるものとすること。
5 4により委員の数が減少してその過半数に達しないときは、委員長は、補充員でその事件に関係のないものをもって五3の順序により、臨時にこれに充てなければならないものとすること。委員の事故により委員の数が過半数に達しないときも、同様とするものとすること。
6 委員会の会議は、公開するものとすること。ただし、委員長又は委員の発議により、出席委員の三分の二以上の多数で議決したときは、これを公開しないことができるものとすること。
(第二十二条関係)
十 教育監査委員会規則の制定
委員会は、法令又は条例に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、教育監査委員会規則を制定することができるものとすること。 (第二十三条関係)
十一 事務局
1 委員会の事務を処理させるため、委員会に事務局を置くこと。
2 事務局に事務局長その他の職員を置くこと。
3 2の職員は、委員会が任免すること。 (第二十五条関係)
十二 その他
その他委員会について所要の規定を置くこと。
第四 雑則
一 指導主事等
1 都道府県に、指導主事を置くものとすること。
2 市町村に、指導主事を置くことができるものとすること。
3 指導主事は、上司の命を受け、学校(大学を除く。4において同じ。)における教育課程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項の指導に関する事務に従事するものとすること。
4 指導主事は、教育に関し識見を有し、かつ、学校における教育課程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項について教養と経験がある者でなければならないものとすること。指導主事は、地方公共団体が設置する学校の教員をもって充てることができるものとすること。
5 地方公共団体の長は、その教育行政に関する相談に関する事務を行う職員を指定し、これを公表するものとすること。 (第二十八条関係)
二 保健所との関係
学校を設置する地方公共団体の長と保健所との関係について規定すること。 (第二十九条関係)
三 組合に関する特例
教育に関する事務の全部又は一部を処理する地方公共団体の組合に関する特例について規定すること。
(第三十条関係)
四 政令への委任
この法律に定めるもののほか、市町村の廃置分合があった場合におけるこの法律の規定の適用の特例その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定めるものとすること。 (第三十一条関係)
第五 附則
一 施行期日
この法律は、平成二十年四月一日から施行するものとすること。 (附則第一項関係)
二 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の廃止
地方教育行政の組織及び運営に関する法律は、廃止するものとすること。 (附則第二項関係)
三 経過措置等
二のほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置及び関係法律の整備については、別に法律で定めるものとすること。 (附則第三項関係)