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   特定肝炎対策緊急措置法案要綱


第一 趣旨
 この法律は、ウイルス性肝炎のうちB型肝炎及びC型肝炎(以下「特定肝炎」という。)に係るウイルスへの感染について国の責めに帰すべき事由によりもたらされ、又はその原因が解明されていなかったことによりもたらされたものがあること並びに特定肝炎について重度の疾病への進展を防ぐことのできる有効な治療の方法が存在するにもかかわらず患者の経済的負担が過重であるために当該治療が十分に行われていないことにかんがみ、特定肝炎の対策に関し緊急に講ずべき措置として、特定肝炎の患者に対する医療費の支給の措置等を定めるものとすること。
第二 医療費の支給
一 医療費の支給
1 厚生労働大臣は、特定肝炎(特定肝炎が進行した状態にあるものを含む。以下同じ。)にかかり、かつ、当該特定肝炎についてインターフェロンその他の特定肝炎に係るウイルスの増殖を抑制する効果を有する薬剤を用いた治療(以下「特定治療」という。)を受けることが適当である旨の認定を受けた者(以下「被認定者」という。)が、その認定に係る特定肝炎につき、四1により指定された機関(以下「指定医療機関」という。)であって二2により定められたもの(二5により変更されたものを含む。以下同じ。)から特定治療及びこれに伴うその他の医療(以下「特定治療等」という。)を受けたときは、当該被認定者に対し、その請求に基づき、医療費を支給するものとすること。
2 1の医療費は、次に掲げる場合の区分に応じ、同一の月に一つの二2により定められた指定医療機関から受けた特定治療等に要する費用の額から、当該特定治療等につき、健康保険法等の規定により受け、又は受けることができた医療に関する給付の額を控除して得た額が、次の額を超えるときに、その超える額に相当する額を支給するものとすること。
 (1) (2)及び(3)に掲げる場合以外の場合 一万円
 (2) 被認定者に関する所得の額が政令で定める額以上である場合 二万円
 (3) 被認定者に関して地方税法の規定による市町村民税が課されない場合 零
3 1の医療費の支給を受けようとする被認定者は、二2により定められた指定医療機関に特定肝炎患者健康手帳を提示して特定治療等を受けなければならないものとすること。ただし、緊急の場合その他やむを得ない事由のある場合については、この限りでないものとすること。
二 認定等
1 一1の認定(以下「認定」という。)は、医療費の支給を受けようとする者の申請に基づき、厚生労働大臣が行うものとすること。
2 厚生労働大臣は、認定を行ったときは、指定医療機関の中から、当該被認定者が特定治療等を受けるものを定めるものとすること。
3 厚生労働大臣は、認定を行ったときは、被認定者に対し、特定肝炎患者健康手帳を交付するものとすること。
4 認定は、特定肝炎の種類等に応じて政令で定める期間(6において「有効期間」という。)内に限り、その効力を有するものとすること。
5 厚生労働大臣は、申請又は職権により、2により定められた指定医療機関を変更することができるものとすること。
6 厚生労働大臣は、申請があった場合において、被認定者が当該認定に係る特定肝炎について有効期間の満了後においても引き続き特定治療を受けることが適当であると認めるときは、当該特定肝炎に係る認定を更新するものとすること。
7 厚生労働大臣は、被認定者が当該認定に係る特定肝炎について特定治療を受けることが必要でなくなったと認めるときは、当該認定を取り消すものとすること。
8 厚生労働大臣は、認定、6による認定の更新及び7による認定の取消しを行おうとするときは、特定肝炎の治療に関する学識経験者の意見を聴くものとすること。
三 指定医療機関に対する医療費の支払
 被認定者が、当該認定に係る特定肝炎について、二2により定められた指定医療機関から特定治療等を受けた場合において、当該特定治療等について一1の医療費の支給を受けることができるときは、厚生労働大臣は、一1の医療費として当該被認定者に支給すべき額の限度において、その者が当該特定治療等に関し当該指定医療機関に支払うべき費用を、当該被認定者に代わり、当該指定医療機関に支払うことができるものとすること。
四 指定医療機関
1 厚生労働大臣は、保険医療機関又は保険薬局その他病院、診療所(これらに準ずるものを含む。)又は薬局について、その開設者の同意を得て、特定治療等を担当させる機関を指定するものとすること。
2 指定医療機関に対する厚生労働大臣の指導、指定の辞退及び指定の取消しについて所要の規定を整備すること。
五 緊急時等における医療費の支給の特例
 厚生労働大臣は、被認定者が緊急その他やむを得ない理由により二2により定められた指定医療機関以外の病院、診療所又は薬局その他の者から特定治療等を受けた場合において、その必要があると認めるときは、一1にかかわらず、当該被認定者に対し、その請求に基づき、医療費を支給することができるものとすること。
六 医療費の免責
 一1又は五の医療費の支給を受けることができる者に対し、同一の事由について、損害のてん補がされた場合においては、厚生労働大臣は、その価額の限度でその医療費を支給する義務を免れるものとすること。
七 他の法令による給付との調整等
他の法令による給付との調整、不正利得の徴収、受給権の保護、指定医療機関等に対する報告の徴収等について所要の規定を整備すること。
八 無症状ウイルス保有者に対する適用
第二は、特定肝炎に係るウイルスを保有している者であって当該特定肝炎の症状を呈していないもの(第三の一1において「無症状ウイルス保有者」という。)についても適用するものとすること。
九 都道府県が処理する事務
この法律に規定する厚生労働大臣の権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができるものとすること。
第三 検討等
一 検討及び法制上の措置等
1 政府は、この法律の施行後速やかに、特定肝炎の患者(無症状ウイルス保有者を含む。以下同じ。)が特定治療以外の特定肝炎の治療を受けた場合における当該特定肝炎の患者に対する医療費の支給について検討を行い、その結果に基づいて必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならないものとすること。
2 政府は、この法律の施行後三年以内に、この法律の施行の状況を勘案し、特定肝炎の対策に係る費用の負担の在り方その他総合的な特定肝炎の対策の在り方について検討を行い、その結果に基づいて必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならないものとすること。
二 調査及び研究
 政府は、一2の検討に資するため、特定肝炎の対策に関する調査研究を推進するものとすること。
三 特定肝炎対策推進協議会からの意見聴取
1 政府は、一1及び2の検討を行うに当たっては、特定肝炎対策推進協議会の意見を聴くものとすること。
2 厚生労働省に、特定肝炎対策推進協議会を置くものとすること。
3 特定肝炎対策推進協議会の委員は、特定肝炎の患者及びその家族を代表する者、特定肝炎に係る医療に従事する者、学識経験者その他の者のうちから、厚生労働大臣が任命するものとすること。
第四 施行期日等
一 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。
二 その他所要の規定を整備すること。

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