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消費者権利院法案要綱


第一 総則
一 目的及び設置
 消費者基本法に定める消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念にのっとり、消費者の権利利益の擁護及び増進を図るため、内閣の所轄の下に、消費者権利院を置く。

二 所掌事務
 消費者権利院は、次に掲げる事務をつかさどる。
@ 消費生活に関する相談、助言、調査及び苦情の処理のあっせんに関すること。
A 消費生活に関する情報収集、商品試験、調査研究及び情報提供に関すること。
B 消費者に対する啓発及び教育に関すること。
C 消費者問題に係る資料の提出要求その他の調査に関すること。
D 消費者問題に係る処分等の勧告及びその公表に関すること。
E 消費者問題に係る裁判所の緊急命令の申立てに関すること。
F 消費者問題に係る訴訟援助に関すること。
G 適格消費者団体の登録及び支援に関すること。
H 国会の要請による特定事項の調査及び報告に関すること。
I 国会及び内閣に対する意見の申出に関すること。
J @からIまでのほか、法律に基づき消費者権利院に属させられた事務

第二 組織
一 消費者権利官
1 消費者権利院の長は、消費者権利官とする。
2 消費者権利官は、消費者権利院の事務を統括し、その職員を指揮監督する。
3 消費者権利官は、人格が高潔で、消費者の被害の防止及び救済のための業務に従事し、かつ、消費者の権利利益の擁護及び増進に関し優れた識見を有する者のうちから、国会の議決を経て、内閣が任命する。
4 消費者権利官の任免は、天皇がこれを認証する。
5 消費者権利官の任期は、6年とし、再任されることができない。
6 消費者権利官の任期が満了したときは、当該消費者権利官は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。
7 消費者権利官は、次のいずれかに該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。
@ 禁錮以上の刑に処せられたとき。
A 国会の議決により、心身の故障のため職務の執行ができないと認められたとき又は職務上の義務違反その他消費者権利官たるに適しない非行があると認められたとき。

二 消費者権利官補
1 消費者権利院に、消費者権利官補1人を置く。
2 消費者権利官補は、消費者権利官を助け、消費者権利官に事故があるとき又は消費者権利官が欠けたときは、その職務を行う。
3 一の3及び5から7までは、消費者権利官補について準用する。

三 消費者権利委員会
1 消費者権利院に、消費者権利委員会(以下三において「委員会」という。)を置く。
2 次に掲げる事項は、委員会の議決を経なければならない。
@ 消費者権利院規則の制定及び改廃
A 第三の三の4の立入検査
B 第三の四の1の(1)の勧告
C 第三の四の2の公表
D 第三の六の2の訴訟参加
E 第三の八の2の(1)の意見の申出
F その他委員会の議決によりその議決を必要とされた事項
3 委員会は、委員5人で組織し、消費者権利官及び消費者権利官補並びに審議委員3人をもって充てる。
4 審議委員は、消費者の権利利益の擁護及び増進に関し優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣が任命する。
5 審議委員の任期は、3年とする。ただし、補欠の審議委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 審議委員は、再任されることができる。
7 審議委員の任期が満了したときは、当該審議委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。
8 審議委員は、次のいずれかに該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。
@ 禁錮以上の刑に処せられたとき。
A 委員会により、心身の故障のため職務の執行ができないと認められたとき又は職務上の義務違反その他審議委員たるに適しない非行があると認められたとき。

四 事務総局
1 消費者権利院に、事務総局を置く。
2 事務総局に、事務総長1人、事務総局次長1人その他所要の職員を置く。
3 2の職員の任免は、消費者権利官が行う。
4 1から3までのほか、事務総局の組織に関し必要な事項は、消費者権利院規則で定める。

五 地方消費者権利官及び地方消費者権利局
1 消費者権利院の地方機関として、都道府県の区域ごとに地方消費者権利局を置く。
2 地方消費者権利局の長は、地方消費者権利官とする。
3 地方消費者権利官は、地域社会における消費生活の実情に通じ、消費者の権利利益の擁護及び増進について理解のある者のうちから、都道府県知事の意見を聴いて、消費者権利官が任命する。
4 地方消費者権利局の所掌事務の一部を分掌させるため、所要の地に、支局を置く。
5 地方消費者権利局及びその支局の名称、位置及び管轄区域は、消費者権利院規則で定める。

六 消費生活相談員
1 事務総局及び地方消費者権利局に、消費生活相談員(以下「相談員」という。)を置く。
2 相談員は、その専門的な知識経験に基づいて、消費者の権利利益の擁護及び増進のための活動に従事し、消費者基本法に定める消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念の実現に貢献することをその職責とする。
3 事務総局に置かれる相談員は、消費生活に関する消費者と事業者との間に生じた苦情に係る相談その他の消費生活に関する事項について専門的な知識経験を有する者として消費者権利院規則で定める条件に適合する者のうちから、消費者権利官が委嘱する。
4 地方消費者権利局に置かれる相談員は、3の条件に適合する者のうちから、当該都道府県の区域内の弁護士会及び適格消費者団体の意見を聴いて、地方消費者権利官が委嘱する。
5 各都道府県ごとの相談員の定数は、その地域の人口、経済その他の事情を考慮して、消費者権利院規則で定める。
6 相談員の定数は、全国を通じて1万人を超えないものとする。
7 相談員の任期は、10年とする。ただし、再任されることができる。
8 相談員は、非常勤とする。
9 相談員の職務は、次のとおりとする。
@ 消費生活に関する相談に応じ、及び苦情の処理のあっせんを行うこと。
A 消費者に対する啓発及び教育に努めること。
B その他消費者の権利利益の擁護及び増進に努めること。

第三 権限
一 定義
この法律において「消費者問題」とは、事業者による次に掲げる行為に起因する消費生活における問題であって、多数の消費者の生命、身体又は財産を不当に侵害する一切のものをいう。
@ 消費者契約の締結又はその勧誘における、詐欺、強迫、重要事実について事実と異なることを告げることその他の違法又は不当な行為
A 欠陥のある商品又は安全性が確保されていない役務を提供する行為
B 自己の供給する商品又は役務の取引について、事実と異なる表示をすることにより、当該商品又は役務が実際のものよりも著しく優良であり、又は著しく有利であると消費者に誤認させる行為
C @からBまでのほか、消費者の権利利益の擁護に関する法令の規定に違反する行為その他の消費者の権利利益に重大な影響を及ぼす行為として消費者権利院規則で定めるもの

二 消費生活に関する相談及び苦情の処理のあっせん、情報収集及び商品試験、啓発及び教育等
1 消費生活に関する相談、助言、調査及び苦情の処理のあっせん等
(1) 消費者権利官は、消費生活に関する各般の問題について、相談に応じ、必要な助言を行うものとする。
(2) 消費者権利官は、消費生活に関し消費者と事業者との間に生じた苦情が適切かつ迅速に処理されるよう、必要な調査を行うとともに、苦情の処理のあっせんその他必要な措置を講ずるものとする。
2 消費生活に関する情報収集及び商品試験等
(1) 消費者権利官は、広く消費生活に関する情報を収集し、その整理及び分析を行うとともに、必要に応じて国民に対する情報の提供を行うものとする。
(2) 消費者権利官は、消費者からの苦情等に関する商品についての試験、検査等及び役務についての調査研究等を行い、必要に応じて試験、検査、調査研究等の結果を公表するものとする。
3 消費者に対する啓発及び教育
消費者権利官は、消費者が自主的かつ合理的に行動することができるよう、消費生活に関する知識の普及、消費者契約に関する情報の提供その他消費者に対する啓発及び教育に努めなければならない。

三 消費者問題に係る資料の提出要求その他の調査
1 資料の提出要求
消費者権利官は、消費者問題による被害の発生若しくは拡大の防止又は救済のため必要があると認めるときは、国の行政機関の長、地方公共団体の長その他の者に対し、期限を定めて、報告又は資料の提出を求めることができる。
2 報告義務
国の行政機関の長又は地方公共団体の長は、消費者問題が発生し、又は発生するおそれのある事実があると認めるときは、当該事実について、消費者権利院規則で定めるところにより、消費者権利官に報告しなければならない。
3 調査の要求
(1) 消費者権利官は、消費者問題による被害の発生若しくは拡大の防止又は救済のため必要があると認めるときは、国の行政機関の長又は地方公共団体の長に対し、期限を定めて、調査を求めることができる。
(2) 消費者権利官は、国の行政機関の長又は地方公共団体の長に対し、(1)の調査の経過について、報告を求め、又は意見を述べることができる。
(3) 国の行政機関の長又は地方公共団体の長は、(1)の調査を終了したときは、遅滞なく、消費者権利官に対し、当該調査の結果を報告しなければならない。ただし、期限内に報告することができないことについて正当な理由がある場合において、その理由及び報告することができる合理的な期限を明示したときは、この限りでない。
4 報告及び検査
消費者権利官は、消費者問題による被害の発生若しくは拡大の防止又は救済のため必要があると認めるときは、当該消費者問題に係る事業者に対し、必要な報告を求め、又はその職員に当該事業者の事務所その他の場所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

四 消費者問題に係る処分等の勧告及びその公表
1 処分等の勧告
(1) 消費者権利官は、消費者問題が発生し、又は発生するおそれがある場合において、その被害の発生若しくは拡大の防止又は救済のため必要があると認めるときは、国の行政機関の長又は地方公共団体の長に対し、期限を定めて、事業者に対する処分等(処分及び行政指導をいう。)を行うべき旨の勧告を行うことができる。
(2) (1)の勧告を受けた国の行政機関の長又は地方公共団体の長は、当該勧告を受けた日から20日以内に、消費者権利官に対し、当該勧告に係る措置を講ずるか否かを回答しなければならない。この場合において、当該国の行政機関の長又は地方公共団体の長が勧告に係る措置を講じない旨の回答をするときは、その理由を明示してしなければならない。
(3) 消費者権利官は、(2)の理由を受諾することができないときは、(1)の勧告をした旨、(2)の回答及びその理由並びに当該理由を受諾できない旨を国会及び内閣総理大臣に報告するものとする。
2 勧告の公表
消費者権利官は、1の(1)の勧告をした場合において、当該消費者問題による被害の発生又は拡大の防止のため緊急の必要があると認めるときは、当該勧告をした旨及び当該勧告に係る事業者の名称その他勧告の内容を公表することができる。

五 消費者権利官の申立てによる裁判所の緊急命令
1 行為の禁止又は停止命令
裁判所は、消費者問題が発生し、又は発生するおそれがある場合において、当該消費者問題による被害の程度が著しく、かつ、緊急の必要があると認めるときは、消費者権利官の申立てにより、当該消費者問題に係る行為を行い、又は行おうとする事業者に対し、1月以内の期間を定めてその行為の禁止又は停止を命ずることができる。
2 財産保全命令
裁判所は、消費者問題により多数の消費者に生じた損害賠償請求権その他の金銭債権について、強制執行をすることができなくなるおそれ又は強制執行が著しく困難となるおそれがあり、かつ、緊急の必要があると認めるときは、消費者権利官の申立てにより、財産保全命令を発して、当該消費者問題に係る行為を行った者の財産につき、その処分を禁止することができる。

六 消費者問題に係る訴訟援助
1 資料の閲覧及び謄抄本の交付
消費者権利官は、消費者問題が発生した場合において、当該消費者問題の被害者又は適格消費者団体から、消費者権利官が保有する当該消費者問題に関する資料の閲覧又は謄本若しくは抄本の交付の申出があるときは、当該被害者の権利の行使のため必要があると認める場合その他正当な理由がある場合であって、関係者の権利利益その他の事情を考慮して相当と認めるときは、申出をした者にその閲覧をさせ、又は謄本若しくは抄本を交付することができる。
2 訴訟参加
消費者権利官は、消費者問題が発生した場合において、当該消費者問題に係る行為の内容、性質その他の事情にかんがみ必要があると認めるときは、当該行為に関する請求に係る訴訟に参加することができる。

七 消費者団体訴訟を追行する適格消費者団体の登録及び支援
1 消費者権利官は、消費者団体訴訟法で定めるところにより、事業者に対し差止請求又は損害賠償請求を行う適格消費者団体の登録及び監督に関する事務を行うものとする。
2 消費者権利官は、適格消費者団体による消費者の被害の防止及び救済に関する業務の確実かつ効果的な実施のため、この法律及び消費者団体訴訟法で定めるところにより、適格消費者団体に対する情報の提供その他必要な支援を行うものとする。

八 国会等との関係
1 国会の要請による特定事項の調査及び報告
消費者権利官は、各議院の委員会又は参議院の調査会から国会法第105条の2の規定による要請があったときは、当該要請に係る特定の事項について調査を実施し、その結果を報告することができる。
2 法令の制定又は改廃に関する意見の申出
(1) 消費者権利官は、消費者の権利利益の擁護及び増進を図るため、必要な法令の制定又は改廃に関し、国会及び内閣に意見を申し出ることができる。
(2) 内閣は、(1)の意見を尊重しなければならない。

第四 補則
一 関係行政機関及び消費者団体等との連携
(1) 消費者権利官は、この法律の運用に当たっては、捜査機関その他の関係行政機関、地方公共団体及び消費者団体その他の関係団体と、情報の共有その他の緊密な連携を図るよう努めなければならない。
(2) 地方消費者権利官は、地域社会の実情を踏まえ、消費者の被害の防止及び救済のための事務が適正かつ円滑に実施されるよう、地方公共団体の消費生活に関する業務を担当する部局と緊密な連絡を保ち、相互に協力しなければならない。

二 国際的な連携
消費者権利官は、消費生活における国際化の進展にかんがみ、消費者の権利利益の擁護に関する国際的な連携を図るよう努めなければならない。

三 権限の委任
この法律に規定する消費者権利官の権限は、消費者権利院規則で定めるところにより、地方消費者権利官に委任することができる。

四 規則制定権
消費者権利官は、消費者権利院の内部規律その他所掌事務に関し必要な事項について消費者権利院規則を定めることができる。

第五 罰則
一 裁判所の緊急命令違反に対する罰則
1 第三の五の1による裁判所の命令に違反した者は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、1の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、1の罰金刑を科する。

二 秘密保持義務違反に対する罰則
消費者権利官、消費者権利官補又は審議委員が、職務上知ることのできた秘密を漏らした場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

第六 施行期日等
一 施行期日
この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、二の3については公布の日から施行する。

二 独立行政法人国民生活センター法の廃止その他の措置
1 独立行政法人国民生活センター法は、廃止する。
2 独立行政法人国民生活センターは、施行日において解散するものとし、その資産及び債務は、その時において国が承継し、一般会計に帰属する。
3 2に定めるもののほか、独立行政法人国民生活センターの解散に関し必要な事項は、別に法律で定める。

三 国会法の一部改正
第三の八の1の国会による調査要請に係る所要の規定の整備を行う。

四 その他
その他所要の規定の整備を行う。

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