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資本市場危機への対応のための臨時特例措置法案要綱

第一 総則
一 目的
   この法律は、世界的規模で生じている経済金融情勢の急激な変化にかんがみ、我が国の資本市場の価格形成に関する機能の発揮に極めて重大な支障が継続する非常の事態(以下「資本市場危機」という。)に備え、株式等の買付けに係る特例措置を臨時に整備することにより、我が国の資本市場の機能の保全を図り、もって国民経済に深刻な影響が及ぶことを防止することを目的とする。
(第1条関係)

第二 資本市場危機への対応のための特例措置
 一 株式等の買付けの実施に係る認定
  1 内閣総理大臣は、平成24年3月31日までの間、次に掲げる要件のすべてに該当する場合であって、資本市場の価格形成に関する機能の発揮に極めて重大な支障が継続する事態が生じ、資本市場危機対応機構(以下「機構」という。)による株式等の買付けが行われなければ国民経済に深刻な影響を及ぼすおそれがあると認めるときは、金融危機対応会議(以下「会議」という。)の議を経て、当該株式等の買付けを行うことができる旨及び当該株式等の買付けを行うことができる期間(以下「買付期間」という。)の認定(以下「認定」という。)を行うことができるものとする。 
   (1)資本市場における全般的な株価が上場会社の全般的な財務の状況に照らして著しく下方に乖離している状況として内閣府令で定める状況にあること。
   (2)専ら資金繰りのための資金を確保することを目的とした株式の大量の売付けが行われること等により、資本市場における株式の需給が著しく均衡を失している状況にあること。
   (3)(1)及び(2)の状況が相当程度継続する場合その他の内閣府令で定める場合に該当すること。
  2 内閣総理大臣は、1(1)及び(3)の規定中の内閣府令の制定又は改廃に関しては、財務大臣の意見を聴くものとする。
  3 「株式等の買付け」とは、次に掲げる行為をいうものとする。
   (1)取引所金融商品市場における特定上場投資信託(証券投資信託であって、次に掲げる要件のすべてを満たすもの)の受益権の買付け
@ その投資信託財産の一口当たりの純資産額の変動率を特定株価指数(上場会社の全般的な株価の水準を表す指標)の変動率に一致させることを目的とするものであること。
A その受益権が金融商品取引所に上場されているものであること。
   (2)特定株価指数に採用されている銘柄の株式の一括買付け
   (3)特定株価指数又は特定上場投資信託の受益権に係る市場デリバティブ取引
4 内閣総理大臣は、認定を行ったときは、その旨及び買付期間を機構に通知しなければならないものとする。
(第2条関係)
 二 認定の取消し
1 内閣総理大臣は、買付期間の末日までの間に、機構による株式等の買付けを行う必要がなくなったと認めるときは、会議の議を経て、認定を取り消すことができるものとする。
2 内閣総理大臣は、認定の取消しを行ったときは、その旨を機構に通知しなければならないものとする。
(第3条関係)
三 株式等の買付けの実施
1 機構は、株式等の買付けの業務については、買付期間に限り、かつ、内閣総理大臣の指示を受けて行うものとする。
2 内閣総理大臣は、機構に対して株式等の買付けの指示を行おうとするときは、あらかじめ、財務大臣の意見を聴かなければならないものとする。
(第4条関係)

第三 資本市場危機対応機構
一 総則
1 機構は、資本市場危機が生じた場合に、これに対応して株式等の買付けを行うことにより、我が国の資本市場の機能の保全を図り、もって国民経済に深刻な影響が及ぶことを防止することを目的とする。
 (第6条関係)
2 機構は、法人とする。
(第7条関係)
3 機構の資本金は政府が出資する金額とするほか、所要の規定を設けるものとする。
(第8条から第11条まで関係)
二 設立
1 内閣総理大臣及び財務大臣は、機構の理事長となるべき者、理事となるべき者及び監事となるべき者を指名するものとする。これらの指名された者は、機構の成立の時において、それぞれ理事長、理事及び監事に任命されたものとする。
(第12条関係)
2 内閣総理大臣及び財務大臣は、設立委員を命じて、機構の設立に関する事務を処理させるものとする。設立委員は、定款、業務規程等を作成した上で、内閣総理大臣及び財務大臣に設立の認可を申請しなければならないものとし、当該認可があったときは、設立委員は、遅滞なく、その事務を理事長となるべき者に引き継がなければならないものとする。
(第13条関係)
3 理事長となるべき者は、設立委員から事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、設立の登記をしなければならないものとする。
(第14条関係)
4 機構は、設立の登記をすることによって成立するものとする。
(第15条関係)
三 管理
1 機構の定款には、目的、名称、事務所の所在地等を記載しなければならないものとし、その変更については、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を受けなければ、効力を生じないものとする。
(第16条関係)
2 機構に、役員として、理事長、理事及び監事それぞれ一人を置くものとし、役員の職務及び権限、任免及び任期等に係る所要の規定を設けるものとする。
(第17条から第24条まで関係)
3 機構の役員及び職員等は、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならないものとし、また、その職務に関して知り得た情報を機構の業務の用に供する目的以外に利用してはならないものとする。
(第25条関係)
4 機構の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなすものとする。
(第26条関係)
四 業務
1 機構は、次に掲げる業務を行うものとする。
(1)特定上場投資信託の受益権の買付け並びに当該買い付けた受益権の管理及び処分のために行う行為
(2)株式の一括買付け並びに当該買い付けた株式の管理及び処分のために行う行為
(3)市場デリバティブ取引並びに当該市場デリバティブ取引により取得した特定上場投資信託の受益権及び株式の管理及び処分のために行う行為
(第28条関係)
2 機構は、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を受けて、信託会社等に対し、その業務の一部を委託することができるものとする。
(第29条関係)
3 機構の業務規程には、株式等の買付け、買付株式等の管理及び処分等を記載しなければならないものとする。また、業務規程の変更は、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を要することとするほか、内閣総理大臣及び財務大臣は、業務規程が不適当と認めるときは、その変更を命ずることができるものとする。
(第30条関係)
4 機構は、@株式等の買付けを行ったとき、及びA買付株式等の処分等を行ったときは、速やかに、内閣総理大臣及び財務大臣に報告しなければならないものとする。
(第31条関係)
五 財務及び会計
1 機構の事業年度は、4月1日から翌年3月31日までとする。
(第32条関係)
2 機構は、毎事業年度、予算及び資金計画を作成し、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を受けなければならないものとする。
(第33条関係)
3 機構は、毎事業年度、財務諸表を作成し、内閣総理大臣及び財務大臣の承認を受けなければならないこととするほか、当該承認を受けたときは、遅滞なく、財務諸表又はその要旨を官報に公告し、かつ、財務諸表等を事務所に備え置き、一般の閲覧に供しなければならないものとする。 
(第34条関係)
4 機構は、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を受けて、日本銀行、金融機関等から資金の借入れをし、又は債券の発行をすることができるものとし、債券に係る所要の規定を設けるものとする。また、借入金の現在額及び債券の元本に係る債務の現在額の合計額は、政令で定める金額を超えることとなってはならないものとする。
(第35条関係)
5 政府は、国会の議決を経た金額の範囲内において、機構の借入れ又は債券に係る債務の保証をすることができるものとし、また、予算の範囲内において、機構に対し、その費用の全部又は一部に相当する金額を補助することができるものとする。
(第36条関係)
6 機構の業務上の余裕金は、国債の保有等の方法により運用しなければならないものとする。
(第37条関係)
六 監督
1 内閣総理大臣及び財務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、機構に対し、監督上必要な命令をすることができるものとする。
(第39条関係)
2 内閣総理大臣及び財務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、機構に対しその業務若しくは財産に関し参考となるべき報告若しくは資料の提出を命じ、又は当該職員に機構の事務所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件の検査をさせることができるものとする。
(第40条関係)
七 解散
1 機構は、平成24年4月1日以後、その業務を行うことがなくなったときに解散するものとする。
2 機構の解散は、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じないものとする。
3 機構は、解散した場合において、その債務を弁済してなお残余財産があるときは、当該残余財産の額を国庫に納付しなければならないものとし、また、機構の財産をもって債務を完済することができないときは、政府は、予算で定める金額の範囲内において、機構に対し、当該債務を完済するために要する費用に相当する金額を補助するものとする。
(第41条関係)
八 雑則
この法律により行われる機構の業務(機構以外の者が委託を受けて行う場合を含む。)に関しては、金融商品取引法上の相場操縦規制、インサイダー取引規制及び公開買付け規制を適用しないものとする。
(第42条関係)
 九 その他所要の規定の整備を図るものとする。

第五 罰則
 所要の罰則規定を設けるものとする。
(第46条から第51条まで関係)

第六 その他
 一 施行期日
この法律は、公布の日から起算して2月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとする。
 (附則第1条関係)
 二 経過措置
   内閣総理大臣及び財務大臣は、当分の間、資本市場の状況にかんがみて、設立委員等を命じないことができるものとするほか、所要の経過措置に関する規定を設けるものとする。
(附則第2条及び第3条関係)
 三 関係法律の整備
  1 金融庁設置法の一部改正
    金融庁の所掌事務として、政令で定める日までの間、資本市場危機対応機構の業務及び組織の適正な運営の確保に関する事務をつかさどることを規定するものとする。 
  2 財務省設置法の一部改正
    財務省の所掌事務として、政令で定める日までの間、資本市場危機対応機構の業務及び組織の適正な運営の確保に関する事務をつかさどることを規定するものとする。
 四 その他所要の規定の整備を図るものとする。

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