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口蹄疫対策特別措置法案要綱


第一 趣旨
この法律は、平成22年4月以降において発生が確認された口蹄疫に起因して生じた事態に対処するため、口蹄疫のまん延を防止するための措置、口蹄疫に対処するために要する費用の国による負担等、生産者等の経営及び生活の再建等のための措置等の特別の措置について定めるものとすること。
(第1条関係)
第二 車両等の消毒の義務
1 農林水産大臣が口蹄疫のまん延を防止するために車両等の消毒の義務を課す必要がある地域として指定する地域内において、都道府県知事が農林水産省令で定める消毒のための設備を設置している場所を通行しようとする者は、当該設備を利用して、当該者の使用する車両その他の農林水産省令で定める物品を消毒しなければならないこと。
2 都道府県知事は、口蹄疫のまん延を防止するため特に必要があるときは、1の設備を設置している場所を通行しようとする者の使用する1の物品について、当該者による消毒に代えて、当該都道府県の職員にこれを消毒させることができること。
3 1の地域内において、都道府県知事が農林水産省令で定める消毒のための設備を設置している場所を通行しようとする者は、当該設備を利用して、農林水産省令で定める基準に基づいて、自らその身体を消毒しなければならないこと。
(第4条関係)
第三 患畜又は疑似患畜の死体の焼却又は埋却の支援
1 農林水産大臣が口蹄疫のまん延を防止するために患畜又は疑似患畜の死体の焼却又は埋却の支援を行う必要がある地域として指定する地域内に存する患畜又は疑似患畜の死体の所有者は、家畜伝染病予防法(以下「法」という。)第21条第1項の規定にかかわらず、当該死体を焼却し、又は埋却することが困難な場合には、家畜防疫員に対し、これらの死体の焼却又は埋却を求めることができること。
2 家畜防疫員は、1による求めがあったときは、当該求めのあった死体を焼却し、又は埋却するものとすること。
3 国は、2又は法第21条第4項により家畜防疫員が行う患畜又は疑似患畜の死体の焼却又は埋却の円滑な実施に資するため、埋却の用に供する土地の確保、埋却のために必要な作業に従事する者の派遣その他の必要な措置を講ずるものとすること。1の指定に係る地域をその区域に含む地方公共団体は、3の措置を講ずるよう努めるものとすること。
(第5条関係)
第四 患畜等以外の家畜の殺処分等
1 都道府県知事は、法第3章の措置だけでは口蹄疫のまん延の防止が困難であり、かつ、急速かつ広範囲にわたる口蹄疫のまん延を防止するためやむを得ない必要があるときは、農林水産大臣が口蹄疫のまん延を防止するために患畜等以外の家畜の殺処分を行う必要がある地域として指定する地域内において都道府県知事が指定する家畜(患畜及び疑似患畜を除く。)を所有する者に、期限を定めて当該家畜を殺すべきことを勧告することができること。
2 1の勧告を受けた者が当該勧告に従わないとき又は家畜の所有者若しくはその所在が知れないため1の勧告をすることができない場合において緊急の必要があるときは、都道府県知事は、家畜防疫員に当該家畜を殺させることができること。
3 1又は2により自ら殺し、又は殺された家畜の死体の所有者は、家畜防疫員が農林水産省令で定める基準に基づいてする指示に従い、遅滞なく、当該死体を焼却し、又は埋却しなければならないこと。
4 家畜防疫員は、口蹄疫のまん延を防止するため緊急の必要があるときは、3による指示に代えて、自らこれを焼却し、又は埋却することができること。
5 都道府県知事は、1又は2によりその所有する家畜を自ら殺し、又は殺されたため損失を受けた当該家畜の所有者に対し、その生産に要する費用その他の通常生ずべき損失として政令で定める損失を補てんし、又は補償しなければならないものとすること。
6 5による補てん金又は補償金については、家畜の所有者が迅速にその交付を受けることができるよう、家畜の所有者からの請求を待たずに仮払をする方法その他の政令で定める方法により交付するものとすること。
7 都道府県知事は、3により家畜の死体を焼却し、又は埋却した者に対し、焼却又は埋却に要した費用を交付すること。
(第6条関係)
第五 農林水産大臣の都道府県知事に対する指示等
1 農林水産大臣は、口蹄疫のまん延により畜産に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、都道府県知事に、第二の消毒、第三の焼却若しくは埋却又は第四の1若しくは2の殺処分に係る措置を実施すべき旨を指示することができること。
2 農林水産大臣は、都道府県知事が1の指示に従わないときその他特に必要があると認めるときは、第二の消毒、第三の焼却若しくは埋却又は第四の1の勧告若しくは2の殺処分に係る措置を自ら実施することができること。
3 農林水産大臣は、法第31条の規定による動物用生物学的製剤等の注射について法第47条の規定による指示をした場合において都道府県知事が当該指示に従わないときであって、動物用生物学的製剤等の注射を用いない措置では口蹄疫のまん延を防止することができないと認めるときは、家畜防疫官に当該注射を行わせることができること。
(第8条関係)
第六 焼却又は埋却に関する留意事項
法第21条第1項による患畜又は疑似患畜の焼却又は埋却については、できる限り当該患畜又は疑似患畜がと殺された場所に近い場所で行われなければならないこと。
(第9条関係)
第七 家畜防疫員の確保
都道府県知事は、当該地域内における家畜伝染病に関する知識経験を有する人材の活用を図ることにより、口蹄疫のまん延を防止するための施策を実施するために必要な家畜防疫員を確保するよう努めるものとすること。
(第10条関係)
第八 簡易畜舎の建設等を促進するための農地法に係る措置
国は、口蹄疫のまん延を防止するための法第32条による禁止又は制限に係る区域内に畜舎を有する者が、当該畜舎に隣接する農地を当該禁止又は制限に起因して建設することが必要となる一時的に使用する畜舎の敷地の用等に供することが可能となるよう、農地に関する制度等について、必要な措置を講ずるものとすること。
(第11条関係)
第九 催物の開催の停止の要請等
都道府県知事は、口蹄疫のまん延を防止するため必要があるときは、催物の開催者に対して、当該催物の開催の停止又は制限を要請することができること。
(第12条関係)
第十 患畜の判定の迅速化のための措置
国は、患畜の判定の迅速化に資するよう、家畜が所在する地域における専門家による患畜の判定の迅速な実施、口蹄疫の病原体の有無に係る検査の円滑かつ迅速な実施その他の必要な措置を講ずるものとすること。
(第13条関係)
第十一 口蹄疫のまん延を防止するための措置についての適切な配慮
 国及び地方公共団体は、平成22年4月以降において発生が確認された口蹄疫のまん延を防止するための措置を講ずるに当たっては、できる限り関係者の意向を十分尊重するなど、当該措置が円滑に行われるよう適切な配慮をするものとすること。
(第14条関係)
第十二 口蹄疫のまん延の防止に関する調査研究等
国及び都道府県は、平成22年4月以降において発生が確認された口蹄疫の感染経路及びそのまん延の原因の究明、口蹄疫の予防及びまん延の防止のための研究開発の推進及びその成果の普及並びに調査研究の体制の整備、口蹄疫に係る検査体制の整備その他必要な措置を講ずるよう努めなければならないこと。
(第15条関係)
第十三 偶蹄類に属する野生動物の監視等
都道府県知事は、偶蹄類に属する野生動物に係る口蹄疫の発生の状況の監視その他の当該野生動物に係る口蹄疫の発生の予防及びまん延の防止のために必要な措置を講ずるものとすること。
(第16条関係)
第十四 ねずみ等の駆除等の実施
家畜の所有者は、口蹄疫のまん延を防止するために、畜舎及びその周辺において、適切な消毒を実施するほか、その病原体を媒介するおそれがあるねずみ、昆虫等の駆除を実施するよう努めるものとすること。
  (第17条関係)
第十五 法に基づく口蹄疫に対処するための費用の国による負担
1 国は、法第16条による患畜又は疑似患畜であって平成22年4月以降において発生が確認された口蹄疫に係るもののと殺の適切かつ確実な実施に資するとともに、当該患畜又は疑似患畜の所有者の経済的な支援に資するため、法第58条による手当金の交付のほか、必要な財政上の措置を講ずるものとすること。
2 1の手当金の交付については、家畜共済による共済金の交付との整合性が図られるよう、必要な措置が講ぜられるものとすること。
3 国は、平成22年4月以降において発生が確認された口蹄疫に関し、法第21条第1項又は第23条第1項の規定により焼却し、又は埋却した家畜の死体又は物品の所有者が当該焼却又は埋却に要する費用について、当該者が実質的に負担する部分を生じさせることのないよう、必要な措置を講ずるものとすること。
4 国は、平成22年4月以降において発生が確認された口蹄疫に関し、都道府県が支弁する法第60条第1項の費用について、当該都道府県が実質的に負担する部分を生じさせることのないよう、必要な措置を講ずるものとすること。
5 国は、平成22年4月以降において発生が確認された口蹄疫に関し、法第23条第1項、第25条第1項、第26条第1項、第27条、第28条又は第30条の規定に基づき消毒を行った者が当該消毒に要する費用について、当該者が実質的に負担する部分を生じさせることのないよう、必要な措置を講ずるものとすること。
(第18条関係)
第十六 口蹄疫に対処するために要する費用の国による負担等
  国は、都道府県知事又は家畜防疫員が第二による消毒を実施するために要する費用、第三の2又は第四の4による焼却又は埋却を実施するために要する費用並びに第四の5による損失の補てん及び損失の補償を実施するために要する費用並びに第四の7による焼却又は埋却を行った者に交付する費用の全部又は一部を負担するものとすること。
(第19条関係)
第十七 家畜等の移動等の禁止等により生じた損失の補てん
国は、平成22年4月以降において発生が確認された口蹄疫のまん延を防止するために行われた法第32条から第34条までの規定による家畜等の移動等の禁止、停止若しくは制限又は家畜市場の自主的な開催の停止等であって農林水産省令で定める基準を満たすものにより、家畜の所有者に、家畜に係る売上げの減少、飼料費その他の保管、輸送又は処分に要する費用の増加等の損失が生じたときは、当該家畜の所有者の当該損失を補てんすることができるよう、法60条第2項の規定による措置の拡充その他の必要な措置を講ずること。
(第20条関係)
第十八 農業者年金の保険料の免除等の特例
平成22年4月以降において発生が確認された口蹄疫のまん延により重大な被害を受けた農業者年金の被保険者等については、農業者年金に係る保険料の免除、当該免除を受けた保険料の追納等に関し、政令で定めるところにより、独立行政法人農業者年金基金法の特例を設けることができることとすること。
  (第21条関係)
第十九 牛、豚等の家畜の生産者等の経営の再建等のための措置
国は、平成22年4月以降において発生が確認された口蹄疫のまん延により経営及び生活が不安定になっている牛、豚等の家畜の生産者、食肉、牛乳又は乳製品、畜産用資材等に係る製造、加工、流通、販売、運送等の事業を行う者等の事業の再建その他の経営の安定及びその生活の安定を図るため、当該者に対し事業の再建等に必要な資金の無利子の貸付け、当該事業に係る施設又は設備の整備等に要する費用の助成その他の必要な措置を講ずるものとすること。
(第22条関係)
第二十 地域再生のための支援
国及び地方公共団体は、平成22年4月以降において発生が確認された口蹄疫のまん延が地域経済に重大な影響を及ぼしている状況にかんがみ、地域経済の再建及びその活性化を図るため、地域の実情に応じたきめ細かな措置を積極的に実施することができるよう、これらの措置に必要な費用に充てるための基金の設置その他の必要な措置を講ずるものとすること。
   (第23条関係)
第二十一 税制上の措置
国及び地方公共団体は、平成22年4月以降において発生が確認された口蹄疫のまん延が牛、豚等の家畜の所有者に与える影響に配慮し、必要な税制上の措置を講ずるものとすること。
(第27条関係)
第二十二 附則
1 この法律の失効
この法律は、平成24年3月31日限り、その効力を失うものとすること。
(附則第2条関係)
2 経過措置
(1)この法律の失効前にされた第四の1による勧告又は2による措置については、第四、第五の1、2並びに第十六は、1にかかわらず、1の日後も、なおその効力を有するものとすること。
(附則第3条関係)
(2)イ この法律の施行前に、国又は都道府県の要請に従い、平成22年4月以降に発生が確認された口蹄疫のまん延を防止するためにその所有する家畜(患畜及び疑似患畜を除く。)を自ら殺した者に対しては、都道府県知事は、これにより通常生ずべき損失として政令で定める損失を補てんするものとすること。
ロ 第十六はイにより支払われる費用について準用するものとすること。
(附則第4条関係)
3 検討
 政府は、最近における畜産及び酪農の経営の実態、この法律及び法の施行の状況等を踏まえ、平成24年3月31日までの間に、効果的な家畜伝染病の発生の予防及びまん延の防止の在り方、家畜伝染病にかかっている家畜等が大量に発生した場合における適切な埋却場所の確保に必要な法制度の整備等について検討を行い、その結果に基づき、法の抜本的な見直しを含め、所要の措置を講ずるものとすること。
(附則第6条関係)

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