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   原子力規制委員会設置法案要綱


第一 目的
  この法律は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故を契機に明らかとなった原子力の研究、開発及び利用(以下「原子力利用」という。)に関する政策に係る縦割り行政の弊害を除去し、並びに一の行政組織が原子力利用の推進及び規制の両方の機能を担うことにより生ずる問題を解消するため、原子力利用における事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立って、確立された国際的な基準を踏まえて原子力利用における安全の確保を図るため必要な施策を策定し、又は実施する事務(原子力に係る製錬、加工、貯蔵、再処理及び廃棄の事業並びに原子力施設に関する規制に関することを含む。)を一元的につかさどるとともに、その委員長及び委員が専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使する原子力規制委員会を設置し、もって国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的とすること。                                
第二 設置
  国家行政組織法第三条第二項の規定に基づいて、環境省の外局として、原子力規制委員会を設置すること。
第三 任務
  原子力規制委員会は、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図ること(原子力に係る製錬、加工、貯蔵、再処理及び廃棄の事業並びに原子力施設に関する規制に関することを含む。)を任務とすること。      
第四 所掌事務
 一 原子力規制委員会は、第三の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどること。
  1 原子力利用における安全の確保に関すること。
  2 原子力に係る製錬、加工、貯蔵、再処理及び廃棄の事業並びに原子力施設に関する規制その他これらの事業及び施設に関する安全の確保に関すること。
  3 核原料物質及び核燃料物質の使用に関する規制その他これらに関する安全の確保に関すること。
  4 放射線障害の防止に関する技術的基準の斉一を図ることに関すること。
  5 放射性物質又は放射線の水準の監視及び測定に関する基本的な方針の策定及び推進並びに関係行政機関の経費の配分計画に関すること。
  6 原子力利用における安全の確保に関する研究者及び技術者の養成及び訓練(大学における教育及び研究に係るものを除く。)に関すること。
  7 核燃料物質その他の放射性物質の防護に関する関係行政機関の事務の調整に関すること。
  8 原子炉の運転等に起因する事故(以下「原子力事故」という。)の原因及び原子力事故により発生した被害の原因を究明するための調査に関すること。
  9 所掌事務に係る国際協力に関すること。
  10 1から9までに掲げる事務を行うため必要な調査及び研究を行うこと。
  11 1から10までに掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき、原子力規制委員会に属させられた事務
 二 原子力規制委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、原子力利用における安全の確保に関する事項について勧告し、及びその勧告に基づいてとった措置について報告を求めることができること。
第五 職権の行使
  原子力規制委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行うこと。
第六 組織
 一 原子力規制委員会は、委員長及び委員四人をもって組織すること。
 二 委員長は、会務を総理し、原子力規制委員会を代表すること。
 三 委員長に事故があるとき又は委員長が欠けたときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理すること。
第七 委員長及び委員の任命
 一 委員長及び委員は、人格が高潔であって、原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命すること。
 二 委員長の任免は、天皇が、これを認証すること。
 三 国会の会期中に、原子力災害対策特別措置法第十五条第二項の規定による原子力緊急事態宣言がされている場合その他の特に緊急を要する事情がある場合であり、かつ、委員長及び第六の三により委員長の職務を代理する委員のいずれもが欠員である場合(以下三において「緊急任命が必要な場合」という。)において、両議院又はいずれかの議院が緊急任命が必要な場合である旨の文書を添えた一による委員長に係る同意の求めがあった日(一による委員長に係る同意の求めがあった後に緊急任命が必要な場合に該当することとなったときにあっては、その旨の通知を受けた日)から国会又は各議院の休会中の期間を除いて十日以内に当該同意に係る議決をしないとき(他の議院が当該同意をしない旨の議決をしたときを除く。)は、内閣総理大臣は、一にかかわらず、一に定める資格を有する者のうちから、委員長を任命することができること。
 四 三の場合において、原子力災害対策特別措置法第十五条第四項の規定による原子力緊急事態解除宣言がされたときその他の特に緊急を要する事情がなくなったときは、その後速やかに両議院の事後の承認を得なければならないこと。この場合において、両議院の事後の承認の求めがあった国会においてその承認を得られないときは、内閣総理大臣は、直ちにその委員長を罷免しなければならないこと。
 五 委員長又は委員につき任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、一にかかわらず、一に定める資格を有する者のうちから、委員長又は委員を任命することができること。
 六 五の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならないものとすること。この場合において、両議院の事後の承認を得られないときは、内閣総理大臣は、直ちにその委員長又は委員を罷免しなければならないこと。
 七 次のいずれかに該当する者は、委員長又は委員となることができないこと。
  1 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  2 禁錮以上の刑に処せられた者
  3 原子力に係る製錬、加工、貯蔵、再処理若しくは廃棄の事業を行う者、原子炉を設置する者、外国原子力船を本邦の水域に立ち入らせる者若しくは核原料物質若しくは核燃料物質の使用を行う者又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)若しくはこれらの者の使用人その他の従業者
  4 3に掲げる者の団体の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)又は使用人その他の従業者
第八 委員長及び委員の任期
 一 委員長及び委員の任期は、五年とすること。ただし、補欠の委員長又は委員の任期は、前任者の残任期間とすること。
 二 委員長及び委員は、再任されることができること。
 三 委員長及び委員の任期が満了したときは、当該委員長及び委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うこと。
第九 委員長及び委員の罷免
 一 内閣総理大臣は、委員長又は委員が第七の七のいずれかに該当するに至ったときは、これらを罷免しなければならないこと。
 二 内閣総理大臣は、委員長若しくは委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は委員長若しくは委員に職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない行為があると認めるときは、あらかじめ原子力規制委員会の意見を聴いた上、両議院の同意を得て、これらを罷免することができること。
第十 会議
 一 原子力規制委員会は、委員長が招集すること。
 二 原子力規制委員会は、委員長及び二人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができないこと。
 三 原子力規制委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによること。
 四 二及び三にかかわらず、次に掲げる場合において、委員長において特に緊急を要するため委員会を招集するいとまがないと認めるとき又は委員会の会議若しくは議事の定足数を欠いているときは、委員長は、次に掲げる事項に関し、委員会を臨時に代理することができること。
  1 原子力災害対策特別措置法第十五条第一項各号に該当する場合 同項の規定による原子力緊急事態の発生の認定、内閣総理大臣への報告並びに同条第二項の規定による公示及び同条第三項の規定による指示の案の提出
  2 原子力災害対策特別措置法第十五条第二項の規定による原子力緊急事態宣言があった時から同条第四項の規定による原子力緊急事態解除宣言があるまでの間にある場合 同法第二条第五号に規定する緊急事態応急対策に関すること。
  3 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(以下四において「国民保護法」という。)第百五条第一項前段の規定による通報を受けた場合 同条第二項の規定による対策本部長への報告及び関係指定公共機関への通知
  4 国民保護法第百五条第一項に規定する事実がある場合 同条第四項の規定による当該事実の発生の認定
  5 国民保護法第百五条第三項の規定による通報を受けた場合 同条第四項の規定により準用する同条第二項の規定による対策本部長への報告及び関係指定公共機関への通知並びに同条第四項後段の規定による所在都道府県知事等への通知
  6 武力攻撃事態等(国民保護法第二条第一項に規定する武力攻撃事態等をいう。)に至った場合 国民保護法百六条の規定により必要な措置を講ずべきことを命ずること。
 五 委員長は、四により、臨時に代理したときは、原子力規制委員会規則で定めるところにより、その旨及び代理した事項を次の会議において報告しなければならないこと。
 六 委員長に事故があり、又は委員長が欠けた場合の二、四及び五の適用については、第六の三により委員長の職務を代理する委員は、委員長とみなすこと。
第十一 委員長及び委員の服務等
 一 委員長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならないものとすること。その職務を退いた後も、同様とすること。
 二 委員長及び委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならないこと。
 三 委員長及び委員は、在任中、内閣総理大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行ってはならないこと。
 四 原子力規制委員会は、委員長及び委員の職務の中立公正に関し国民の疑惑又は不信を招くような行為を防止するため、委員長又は委員の研究に係る原子力事業者等からの寄附に関する情報の公開、委員長又は委員の地位にある間における原子力事業者等からの寄附の制限その他の委員長及び委員が遵守すべき内部規範を定め、これを公表しなければならないこと。これを変更したときも、同様とすること。
 五 原子力規制委員会は、原子力事故が生じた場合において、これに迅速かつ適切に対処することができるよう、様々な事態を想定した上で、会議の開催及び議決の方法その他委員長及び委員が遵守すべき行動指針を内容とする内部規範を定め、これを適正に運用しなければならないこと。
第十二 委員長及び委員の給与
  委員長及び委員の給与は、別に法律で定めること。
第十三 審議会等
 一 原子力規制委員会に、原子炉安全専門審査会及び核燃料安全専門審査会を置くこと。
 二 一に定めるもののほか、別に法律で定めるところにより原子力規制委員会に置かれる審議会等は、放射線審議会及び独立行政法人評価委員会とすること。
第十四 緊急事態応急対策委員
  原子力規制委員会に、原子力規制委員会の指示があった場合において、原子力災害対策特別措置法第二条第二号に規定する原子力緊急事態における応急対策に関する事項を調査審議させるため、政令で定める員数以内の緊急事態応急対策委員を置くこと。
第十五 原子力事故調査
 一 原子力規制委員会は、第四の一の8に掲げる事務を遂行するため必要があると認めるときは、次に掲げる処分をすることができること。
  1 原子力事業者、原子力事故により発生した被害の拡大の防止のための措置を講じた者その他の原子力事故の関係者(以下単に「関係者」という。)から報告を徴すること。
  2 原子力事業所その他の原子力事故の現場、原子力事業者の事務所その他の必要と認める場所に立ち入って、帳簿、書類その他の原子力事故に関係のある物件(以下「関係物件」という。)を検査し、関係者に質問し、又は試験のため必要な最小限度の量に限り、核原料物質、核燃料物質その他の必要な試料を収去すること。
  3 関係者に出頭を求めて質問すること。
  4 関係物件の所有者、所持者若しくは保管者に対し当該物件の提出を求め、又は提出物件を留め置くこと。
  5 関係物件の所有者、所持者若しくは保管者に対し当該物件の保全を命じ、又はその移動を禁止すること。
  6 原子力事業所その他の原子力事故の現場に、公務により立ち入る者及び原子力規制委員会が支障がないと認める者以外の者が立ち入ることを禁止すること。
 二 原子力規制委員会は、必要があると認めるときは、委員長、委員又は原子力規制庁の職員に一の1から6までの処分をさせることができること。
第十六 国会に対する報告
  原子力規制委員会は、毎年、内閣総理大臣を経由して国会に対し所掌事務の処理状況を報告するとともに、その概要を公表しなければならないこと。
第十七 情報の公開
  原子力規制委員会は、国民の知る権利の保障に資するため、その保有する情報の公開を徹底することにより、その運営の透明性を確保しなければならないこと。
第十八 規則の制定
  原子力規制委員会は、その所掌事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、原子力規制委員会規則を制定することができること。
第十九 原子力規制庁
 一 原子力規制委員会の事務を処理させるため、原子力規制委員会に事務局を置くこと。
 二 一の事務局は、原子力規制庁と称すること。
 三 原子力規制庁に、事務局長その他の職員を置くこと。
 四 三の事務局長は、原子力規制庁長官と称すること。
 五 原子力規制庁長官は、委員長の命を受けて、庁務を掌理すること。
 六 原子力規制庁の内部組織については、国家行政組織法第七条第七項の規定にかかわらず、同条第三項、第四項及び第六項並びに同法第二十一条第一項及び第五項の規定を準用すること。
第二十 原子力規制委員会の運営
  この法律に定めるもののほか、原子力規制委員会の運営に関し必要な事項は、原子力規制委員会が定めること。
第二十一 罰則
 一 第十一の一に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処すること。
 二 次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処すること。
  1 第十五の一の1又は二による報告の徴取に対し虚偽の報告をした者
  2 第十五の一の2若しくは二による検査若しくは試料の提供を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又はこれらの規定による質問に対し虚偽の陳述をした者
  3 第十五の一の3又は二による質問に対し虚偽の陳述をした者
  4 第十五の一の4又は二による処分に違反して物件を提出しない者
  5 第十五の一の5又は二による処分に違反して物件を保全せず、又は移動した者
 三 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、二の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、二の刑を科すること。
第二十二 施行期日
  この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。ただし、次に掲げる事項は、それぞれ次に定める日から施行すること。
  1 第七の一中両議院の同意を得ることに係る部分 公布の日
  2 第二十八 平成二十五年四月一日
  3 第二十九 この法律の施行の日から起算して十月を超えない範囲内において政令で定める日
  4 第三十 この法律の施行の日から起算して一年三月を超えない範囲内において政令で定める日
第二十三 最初の委員長及び委員の任命
 一 この法律の施行後最初に任命される委員の任期は、第八の一にかかわらず、四人のうち、二人は二年、二人は三年とすること。
 二 一に定める各委員の任期は、内閣総理大臣が定めること。
 三 この法律の施行後最初に任命される委員長及び委員の任命について、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、第七の三及び四を準用すること。
第二十四 原子力利用における安全の確保に係る事務を所掌する行政組織に関する検討
  原子力利用における安全の確保に係る事務を所掌する行政組織については、この法律の施行後三年以内に、この法律の施行状況、国会に設けられた東京電力福島原子力発電所事故調査委員会が提出する報告書の内容、原子力利用の安全の確保に関する最新の国際的な基準等を踏まえ、核物質の防護を含む原子力利用における安全の確保に係る事務が我が国の安全保障に関わるものであること等を考慮し、より国際的な基準に合致するものとなるよう、内閣府に独立行政委員会を設置することを含め検討が加えられ、その結果に基づき必要な措置が講ぜられるものとすること。
第二十五 政府の措置等
 一 東日本大震災における原子力発電所の事故を受け、原子力利用における安全の確保のための規制が緊要な課題となっていることに鑑み、これに係る国際的な動向に精通する優秀かつ意欲的な人材を継続的に確保するため、政府は、速やかに、原子力規制庁の職員について、次に掲げる事項その他必要な事項に関し所要の措置を講ずるものとすること。
  1 専門的な知識及び経験を要する職務と責任に応じ、資格等の取得の状況も考慮した給与の体系の整備その他の処遇の充実を図ること。
  2 新たに採用する者に係る定員を十分に確保した上で、国内の大学、研究機関、民間事業者等から専門的な知識又は経験を有する者を積極的に登用するとともに、原子力利用における安全の確保に係る最新の海外の知見を積極的に取り入れることの重要性に鑑み、国外の大学、研究機関、民間事業者等からも専門的な知識又は経験を有する者を、我が国の原子力行政に対して第三者として意見を述べる職に登用することを含め、積極的に登用すること。
  3 留学、国際機関、外国政府機関等への派遣及び在外公館等における勤務の機会を確保し、並びに国の内外の大学及び研究機関との人材交流を行うこと。
  4 職務能力の向上を図るための研修施設の設置その他の研修体制を整備すること。
  5 職員の採用を含めた人材の確保及び育成に係る方策その他の原子力規制委員会の人的又は物的な体制の拡充を図るための財源を確保し、及び勘定区分を導入すること。
 二 原子力規制庁の職員については、原子力利用における安全の確保のための規制の独立性を確保する観点から、原子力規制庁の幹部職員のみならずそれ以外の職員についても、原子力利用の推進に係る事務を所掌する行政組織への配置転換を認めないこととすること。ただし、この法律の施行後五年を経過するまでの間において、当該職員の意欲、適性等を勘案して特にやむを得ない事由があると認められる場合は、この限りでないこと。
 三 原子力規制庁の職員については、原子力利用における安全の確保のための規制の独立性を確保する観点から、その職務の執行の公正さに対する国民の疑惑又は不信を招くような再就職を規制することとするものとすること。
 四 政府は、独立行政法人原子力安全基盤機構が行う業務を原子力規制委員会に行わせるため、可能な限り速やかに独立行政法人原子力安全基盤機構を廃止するものとし、独立行政法人原子力安全基盤機構の職員である者が原子力規制庁の相当の職員となることを含め、このために必要となる法制上の措置を速やかに講じるものとすること。
 五 政府は、四のほか、原子力利用における安全の確保に関するより効率的かつ効果的な規制が行えるよう、独立行政法人その他の関係団体の組織及び業務の在り方について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずるものとすること。
 六 政府は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第六十六条の二第一項の規定による申告に係る制度をより実効的なものとする方策について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずるものとすること。
 七 政府は、東日本大震災により甚大な被害が生じたことを踏まえ、原子力災害を含む大規模災害へのより機動的かつ効果的な対処が可能となるよう、大規模災害への対処に当たる政府の組織の在り方について抜本的な見直しを行い、その結果に基づき必要な措置を講ずるものとすること。
 八 政府は、東日本大震災における原子力発電所の事故を踏まえ、地方公共団体に対する原子力事業所及び原子力事故に伴う災害等に関する情報の開示の在り方について速やかに検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずるとともに、関係者間のより緊密な連携協力体制を整備することの重要性に鑑み、国、地方公共団体、住民、原子力事業者等の間及び関係行政機関間の情報の共有のための措置その他の必要な措置を講ずるものとすること。
 九 原子力事業者は、原子力施設の安全性の確保及び事故の収束につき第一義的責任を有することを深く自覚し、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の規定により講ずることとされる措置のほか、その原子力施設ごとに、当該原子力施設における事故の発生及び当該事故による災害の拡大の防止に関し、万全の危機管理に係る体制を整備するため、一層の自主的な対策を講ずるよう努めるものとすること。
第二十六 原子力基本法の一部改正
 一 内閣に、原子力防災会議(以下第二十六において「会議」という。)を置くこと。
 二 会議は、次に掲げる事務をつかさどること。
  1 原子力災害対策指針に基づく施策の実施の推進その他原子力事故が発生した場合に備えた政府の総合的な取組を確保するための施策の実施の推進
  2 原子力事故が発生した場合において多数の関係者による長期にわたる総合的な取組が必要となる施策の実施の推進
 三 会議の組織
  1 会議は、議長、副議長及び議員をもって組織すること。
  2 議長は、内閣総理大臣をもって充てること。
  3 副議長は、内閣官房長官、環境大臣、内閣官房長官及び環境大臣以外の国務大臣のうちから内閣総理大臣が指名する者並びに原子力規制委員会委員長をもって充てること。
  4 議員は、次に掲げる者をもって充てること。
   イ 議長及び副議長以外の全ての国務大臣並びに内閣危機管理監
   ロ 内閣官房副長官、環境副大臣若しくは関係府省の副大臣、環境大臣政務官若しくは関係府省の大臣政務官又は国務大臣以外の関係行政機関の長のうちから、内閣総理大臣が任命する者
 四 事務局
  1 会議に、その事務を処理させるため、事務局を置くこと。
  2 事務局に、事務局長その他の職員を置くこと。
  3 事務局長は、環境大臣をもって充てること。
  4 事務局長は、議長の命を受け、命を受けた内閣官房副長官補及び内閣府設置法第四条第三項に規定する事務を分担管理する大臣たる内閣総理大臣の協力を得て、局務を掌理すること。
第二十七 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部改正
 一 法律の目的規定から、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の利用が計画的に行われることを確保すること」を削除し、これに伴い原子炉の設置の許可等の基準のうち原子力の利用等の計画的な遂行に関するものを削除すること。
 二 法律の目的規定に「大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為の発生も想定した」必要な規制を行うことを明記するとともに、「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資すること」を加えること。
 三 原子力利用の安全の確保のための規制は、原子力規制委員会が行うものとすること。
 四 災害が発生した原子力施設について、当該施設の状況に応じた適切な方法による管理を行い、原子力利用の安全を確保するための規制を導入すること。
第二十八 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部改正
  国際約束に基づく保障措置の実施のための規制その他の原子力の平和的利用の確保のための規制は、原子力規制委員会が行うものとすること。
第二十九 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部改正
 一 発電用原子炉施設の工事の計画の認可基準に発電用原子炉設置者の品質管理体制等を追加すること。
 二 発電用原子炉設置者が講ずる保安のために必要な措置として、重大な事故が生じた場合における措置を含むことを明確化する等、重大な事故への対策を強化すること。
 三 許可済みの発電用原子炉施設の位置、構造又は設備が最新の知見を踏まえた許可基準に適合していないと認めるとき等において、発電用原子炉設置者に対し、発電用原子炉施設の使用の停止、改造又は修理等を命ずることができることとすること。
 四 発電用原子炉を運転することができる期間を、最初に使用前検査に合格した日から起算して四十年とすること。ただし、当該期間の満了に際し、長期間の運転に伴い生ずる原子炉等の劣化の状況を踏まえ、安全性を確保するための基準として原子力規制委員会規則で定める基準に適合していると認めるときに限り、二十年を超えない期間であって政令で定める期間を限度として、一回に限り、延長の認可をすることができることとすること。
 五 発電用原子炉施設等の安全性の増進を図るため、発電用原子炉施設の設備等の変更のうち、災害の防止上支障がないことが明らかな変更についての届出制度及び設備の型式承認制度を導入すること。
 六 発電用原子炉施設に対する原子力安全規制体系の整理を行うこと。
 七 原子力事業者等が、災害の防止に関し、必要な措置を講ずる責務を有することを明確化すること。
 八 原子力規制委員会は、原子力施設の設備の製造を行う者等の事業所への立入検査等を必要に応じて行うことができることとすること。
第三十 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部改正
 一 許可済みの加工施設等の位置、構造又は設備が最新の知見を踏まえた許可基準に適合していないと認めるとき等において、加工事業者等に対し、加工施設等の使用の停止、改造又は修理等を命ずることができることとすること。
 二 加工事業者等が講ずる保安のために必要な措置として、重大な事故が生じた場合における措置を含むことを明確化する等、重大な事故への対策を強化すること。
 三 発電用原子炉設置者等が、発電用原子炉施設等の安全性について自ら評価し、その結果等を原子力規制委員会に届出をし、評価の内容について公表する制度を導入すること。
第三十一 環境基本法の一部改正
放射性物質による大気の汚染等の防止のための措置について、環境基本法の適用の対象とすること。
第三十二 原子力災害対策特別措置法の一部改正
 一 国の責務として、「大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為による原子力災害の発生も想定し、これに伴う被害の最小化を図る観点から、警備体制の強化、原子力事業所における深層防護の徹底、被害の状況に応じた対応策の整備その他原子力災害の防止に関し万全の措置を講ずる責務を有すること」を追加すること。
 二 原子力規制委員会は、災害対策基本法第二条第八号に規定する防災基本計画に適合して、原子力事業者、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体、指定公共機関及び指定地方公共機関その他の者による原子力災害予防対策、緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策の円滑な実施を確保するための指針(原子力災害対策指針)を定めなければならないこと。
 三 原子力事業者防災業務計画の協議等に係る対象都道府県知事の拡大、原子力事業者に対する防災訓練の結果報告の義務付け等により原子力災害予防対策の充実を図ること。
 四 原子力災害対策副本部長に内閣官房長官、環境大臣及び原子力規制委員会委員長を充てるとともに、本部員を拡充することにより原子力災害対策本部の強化を図ること。
 五 原子力災害対策本部長の緊急事態応急対策の実施に係る指示の対象事項から、原子力規制委員会がその所掌に属する事務に関して専ら技術的及び専門的な知見に基づいて原子力施設の安全の確保のために行うべき判断の内容に係る事項を除くこと。
 六 原子力緊急事態解除宣言後においても原子力災害対策本部を存置し、市町村長が避難指示等をできることとし、原子力災害事後対策の円滑化を図ること。
第三十三 特別会計に関する法律の一部改正
エネルギー対策特別会計の区分経理の対象となる対策として「原子力安全規制対策」を新設すること。
第三十四 内閣府設置法の一部改正
内閣府の所掌事務として、次に掲げる事務を追加すること。
一 原子力事故による災害の防止に関すること。
二 原子力基本法第三条の三に規定する原子力防災会議の事務局長に対する協力に関すること。
第三十五 国家行政組織法の一部改正
環境省の副大臣及び大臣政務官の定数を改める等所要の改正を行うこと。
第三十六 関係独立行政法人
  原子力利用に関する研究開発について、原子力利用における安全の確保を図る観点から、原子力規制委員会を、独立行政法人放射線医学総合研究所及び独立行政法人日本原子力研究開発機構の主務官庁に加えること。
第三十七 検討
  第二十九及び第三十による改正後の核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の規定については、その施行の状況を勘案して速やかに検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置が講じられるものとすること。
第三十八 その他
  関係法律について所要の規定の整備を行うこと。

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