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   国土強靱化基本法案要綱


第一 総則
 一 目的                                    (第一条関係)
   この法律は、国土の強靱化に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにし、並びに国土強靱化基本計画の策定その他国土の強靱化に関する施策の基本となる事項を定めるとともに、国土強靱化戦略本部及び国土強靱化国民運動本部を設置すること等により、国土の強靱化に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって我が国経済社会の発展及び国民生活の安定向上を図るとともに、今後長期間にわたって持続可能な国家機能及び日本社会の構築を図ることを目的とすること。
 二 基本理念                                  (第二条関係)
  1 国土の強靱化に関する施策は、東日本大震災を契機に、経済等における過度の効率性の追求が人口及び行政、経済、文化等に関する機能の過度の集中を生み、国土の脆弱性をもたらしていることが明らかになったことに鑑み、戦後の我が国における国土の利用、開発及び保全に関する計画、経済の運営に関する計画等の国土政策及び経済政策についての総合的な検証が行われ、その結果に基づき、国家及び社会の諸機能の集中と分散、経済活動及び社会活動における自由な競争の促進と平等の確保等多様な価値体系の間の調和に配慮しつつ、人口及び行政、経済、文化等に関する機能がその全域にわたり適正に配置され、それぞれの地域が有機的に連携しつつその特性を生かして発展している多極分散型の国土の形成が図られるよう、適切に策定され、及び実施されなければならないこと。
  2 国土の強靱化に関する施策は、地域間の交流及び連携を促進し、固有の文化及び自然条件等の特性を生かした地域の振興を図り、地域社会の活性化及び地域における定住を促進することにより、経済の停滞、少子高齢化の進展、人口の減少等の我が国が直面する課題の解決に資するとともに、国土の保全及び複数の国土軸の形成を通じた国土の均衡ある発展が図られることを旨として講ぜられなければならないこと。
  3 国土の強靱化に関する施策は、大規模災害を未然に防止し、及び大規模災害が発生した場合の被害の拡大を防ぐとともに、国家及び社会の諸機能の代替性の確保等を図ることにより、大規模災害が発生した場合における我が国の政治、経済及び社会の活動を持続可能なものとすることを旨として講ぜられなければならないこと。
 三 国の責務等                          (第三条から第五条まで関係)
   国、地方公共団体、事業者及び国民の責務に関する規定を設けること。
 四 法制上の措置等                               (第六条関係)
   政府による法制上、財政上及び税制上の措置等に関する規定を設けること。
第二 国土強靱化基本計画等
 一 国土強靱化基本計画                             (第七条関係)
  1 政府は、国土の強靱化に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、国土強靱化基本計画を定めなければならないこと。
  2 国土強靱化基本計画は、国土の強靱化に関する施策についての基本的な方針、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策等について定めるものとすること。
  3 国土強靱化基本計画に定める施策については、当該施策の具体的な目標及びその達成の期間を定めるものとすること。
 二 広域地方国土強靱化計画                           (第八条関係)
  1 政府は、首都圏、近畿圏、中部圏及びその他の広域地方国土強靱化計画区域について、それぞれ広域地方国土強靱化計画を定めなければならないこと。
  2 広域地方国土強靱化計画は、国土強靱化基本計画を基本として、当該広域地方国土強靱化計画区域における国土の強靱化に関する施策についての方針、当該広域地方国土強靱化計画区域において政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策等について定めるものとすること。
 三 都道府県国土強靱化計画及び市町村国土強靱化計画          (第九条及び第十条関係)
   都道府県及び市町村は、国土強靱化基本計画及び広域地方国土強靱化計画等を基本として、それぞれ都道府県国土強靱化計画及び市町村国土強靱化計画を定めなければならないこと。
第三 基本的施策
 一 東日本大震災からの復興の推進                       (第十一条関係)
   国は、東日本大震災復興基本法第二条に定める基本理念にのっとり、東日本大震災からの復興の円滑かつ迅速な推進を図るために必要な施策を講ずるものとすること。
 二 大規模災害の発生時における円滑かつ迅速な避難及び救援の確保        (第十二条関係)
   国は、大規模災害の発生時における円滑かつ迅速な避難及び救援を可能とし、被害の拡大を防止するため、大規模災害による被害の予測及びその結果の防災対策への活用の推進、避難訓練の充実強化、避難路、避難施設等の整備、救援に必要な物資等の輸送を確保するために必要な道路等の整備その他の必要な施策を講ずるものとすること。
 三 大規模災害に対し強靱な社会基盤の整備等                  (第十三条関係)
   国は、大規模災害が発生した場合における被害の最小化を図り、政治、経済及び社会の活動の停滞を防止するため、建築物等の地震に対する安全性の向上、密集市街地の整備による防災機能の確保、国家の中枢的な機能の代替性の確保その他の必要な施策を講ずるものとすること。
 四 大規模災害の発生時における保健医療及び福祉等の確保            (第十四条関係)
   国は、大規模災害が発生した場合においても保健医療サービス及び福祉サービス等の提供が確保されるよう、救急医療の体制の整備その他の必要な施策を講ずるものとすること。
 五 大規模災害の発生時におけるエネルギーの安定的な供給の確保         (第十五条関係)
   国は、大規模災害が発生した場合においてもエネルギーの安定的な供給が確保されるよう、自然エネルギーの利用の促進、原子力発電施設の地震等に対する安全性の確保その他の必要な施策を講ずるものとすること。
 六 大規模災害の発生時における情報通信の確保                 (第十六条関係)
   国は、大規模災害が発生した場合における情報通信の確保を図るため、多様な通信手段の確保、行政機関の業務の継続のために必要な情報システムの整備その他の必要な施策を講ずるものとすること。
 七 大規模災害の発生時における物資等の供給の確保               (第十七条関係)
   国は、大規模災害が発生した場合においても国民生活に不可欠な物資及びサービスの安定的な供給が確保されるよう、大規模災害の危険を分散するための工場その他の事業所の移転の支援その他の必要な施策を講ずるものとすること。
 八 地域間の交流及び連携の促進                        (第十八条関係)
   国は、大規模災害に対処するための強靱な経済社会の構築に資するよう、高速自動車国道、新幹線鉄道等の全国的な高速交通網の構築その他の地域間の交流及び連携を促進し、日本海国土軸、太平洋国土軸その他の複数の国土軸が相互に連携することによる多軸型の国土の形成を図るために必要な施策を講ずるものとすること。
 九 我が国全体の経済力の維持及び向上                     (第十九条関係)
   国は、大規模災害による国民生活及び国民経済への影響を緩和し、大規模災害からの円滑かつ迅速な復興を可能とするため、産業の国際競争力の強化に資する道路、港湾等の社会資本の整備、アジア地域その他の地域との貿易の拡大並びに経済の分野における交流及び連携の促進その他の我が国全体の経済力を維持し、及び向上するために必要な施策を講ずるものとすること。
 十 農山漁村及び農林水産業の振興                       (第二十条関係)
   国は、国土の保全を図るため、国土の大半を占める農山漁村及び当該地域の基幹的な産業である農林水産業を振興するために必要な施策を講ずるものとすること。
 十一 離島の保全等                             (第二十一条関係)
   国は、離島が我が国の領域及び排他的経済水域等の保全等に重要な役割を担っていることに鑑み、離島に関し、海岸等の保全、周辺海域の警備の強化、住民の生活基盤の整備その他の離島の保全及び管理並びに活性化に関し必要な施策を講ずるものとすること。
 十二 地域共同体の維持及び活性化                      (第二十二条関係)
   国は、地域社会の絆の維持及び強化が防災対策の推進その他の国土の強靱化の推進を図る上で重要であることに鑑み、隣保協同の精神に基づく国民の自発的な防災活動に対する支援その他の地域共同体を維持し、及び活性化するために必要な施策を講ずるものとすること。
 十三 地方公共団体の施策                          (第二十三条関係)
   地方公共団体は、一から十二までの国の施策を勘案し、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた国土の強靱化に関する施策を、これらの総合的かつ計画的な推進を図りつつ実施するものとすること。
第四 国土強靱化戦略本部
 一 設置及び所掌事務                     (第二十四条及び第二十五条関係)
  1 国土の強靱化に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、内閣に、国土強靱化戦略本部(以下「戦略本部」という。)を置くこと。
  2 戦略本部は、国土強靱化基本計画及び広域地方国土強靱化計画の案の作成及び実施の推進、関係行政機関がこれらの計画に基づいて実施する施策の総合調整その他国土の強靱化に関する施策で重要なものの企画及び立案並びに総合調整等の事務をつかさどること。
 二 組織                         (第二十六条から第二十九条まで関係)
  1 戦略本部は、国土強靱化戦略本部長、国土強靱化戦略副本部長及び国土強靱化戦略本部員をもって組織すること。
  2 戦略本部の長は、国土強靱化戦略本部長とし、内閣総理大臣をもって充てること。
  3 戦略本部に、国土強靱化戦略副本部長を置き、内閣官房長官及び国土強靱化戦略担当大臣をもって充てること。
  4 戦略本部に、国土強靱化戦略本部員を置き、戦略本部長及び戦略副本部長以外の全ての国務大臣をもって充てること。
第五 国土強靱化国民運動本部等
 一 国土強靱化国民運動本部                  (第三十四条及び第三十五条関係)
  1 内閣府に、特別の機関として、国土強靱化国民運動本部(以下一において「国民運動本部」という。)を置くこと。
  2 国民運動本部は、国土強靱化国民運動の推進その他国土強靱化国民運動に関する重要な事項についての審議等の事務をつかさどること。
  3 国民運動本部の長は、国土強靱化国民運動本部長とし、国務大臣をもって充てること。
  4 国民運動本部に、国土強靱化国民運動副本部長及び国土強靱化国民運動本部員を置き、関係行政機関の職員及び2の国民運動本部の所掌事務に関し十分な知識と経験を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命すること。
 二 都道府県国土強靱化国民運動本部及び市町村国土強靱化国民運動本部
(第三十八条及び第三十九条関係)
   都道府県及び市町村は、それぞれ都道府県国土強靱化国民運動本部及び市町村国土強靱化国民運動本部を置くことができること。
第六 雑則
 一 緊急事態への対処に関する施策等を担う組織の在り方に関する検討       (第四十条関係)
   国は、大規模災害その他の緊急事態への対処に関する施策の企画及び立案並びに総合調整並びに大規模災害その他の緊急事態への対処に関する施策の実施等を担う組織の在り方について検討を加え、その結果に基づき、必要な法制上の措置を講ずるものとすること。
 二 国土の利用等に関する総合的かつ基本的な政策を担う組織の在り方に関する検討(第四十一条関係)
   国は、国土の利用、開発及び保全、経済並びに科学に関する研究の成果の活用に係る技術に関する総合的かつ基本的な政策の企画及び立案並びに推進並びにこれらの政策に関する関係行政機関の事務の調整等を担う組織の在り方について検討を加え、その結果に基づき、必要な法制上の措置を講ずるものとすること。
第七 施行期日等
 一 施行期日                                (附則第一条関係)
   この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。
 二 その他
   その他所要の規定を整備すること。

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