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南海トラフ巨大地震対策特別措置法案要綱

第一 総則
 一 目的
   この法律は、南海トラフ巨大地震による災害から国民の生命、身体及び財産を保護するため、南海トラフ巨大地震緊急対策区域の指定、南海トラフ巨大地震に関する地震観測体制の整備、緊急対策推進基本計画及び緊急対策実施計画の作成、緊急対策実施計画に係る特別の措置、特定緊急対策事業推進計画の認定及び特別の措置、緊急集団移転促進事業の実施に係る特別の措置等について定めることにより、災害対策基本法、大規模地震対策特別措置法及び東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法その他の地震防災対策に関する法律と相まって、南海トラフ巨大地震に係る地震防災対策の推進を図ることを目的とすること。
 二 定義
  1 この法律において「南海トラフ巨大地震」とは、駿河湾から遠州灘、熊野灘、紀伊半島の南側の海域及び土佐湾を経て日向灘沖までの地域並びにその周辺の地域における地殻の境界における極めて広い領域を震源とする大規模な地震であって、科学的に想定し得る最大規模の被害をもたらすおそれのあるものをいうこと。
  2 その他所要の定義を置くこと。
 三 南海トラフ巨大地震緊急対策区域の指定等
  1 内閣総理大臣は、大規模地震対策特別措置法の規定により指定された地震防災対策強化地域及び東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の規定により指定された東南海・南海地震防災対策推進地域並びにこれらの周辺の地域のうち、南海トラフ巨大地震が発生した場合に特に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、緊急に地震防災対策を推進する必要がある区域を、南海トラフ巨大地震緊急対策区域(以下「緊急対策区域」という。)として指定するものとすること。
  2 内閣総理大臣による中央防災会議への諮問、関係する都府県の意見聴取等緊急対策区域の指定の手続に関する規定を設けること。
 四 南海トラフ巨大地震に関する観測及び測量の実施の強化
   国は、南海トラフ巨大地震の発生を予知し、もって地震災害の発生を防止し、又は軽減するため、南海トラフ巨大地震に関する観測及び測量のための施設等の整備に努めるとともに、計画的に、地象、水象等の常時観測を実施し、南海トラフ巨大地震に関する土地及び水域の測量の密度を高める等観測及び測量の実施の強化を図らなければならないこと。

第二 緊急対策推進基本計画
 一 政府は、第一の三の1による緊急対策区域の指定があったときは、南海トラフ巨大地震に係る地震防災上緊急に講ずべき対策(以下「緊急対策」という。)の推進に関する基本的な計画(以下「緊急対策推進基本計画」という。)を定めなければならないこと。
 二 緊急対策推進基本計画には、次の事項を定めるものとすること。
  (1) 緊急対策区域における緊急対策の円滑かつ迅速な推進の意義に関する事項
  (2) 緊急対策区域における緊急対策の円滑かつ迅速な推進のために政府が着実に実施すべき地方公共団体に対する支援その他の施策に関する基本的な方針
  (3) 第三の一の1の緊急対策実施計画の基本となるべき事項
  (4) 第五の一の1の特定緊急対策事業推進計画の認定に関する基本的な事項
  (5) 緊急対策区域における緊急対策の円滑かつ迅速な推進に関し政府が講ずべき措置についての計画
  (6) (1)から(5)までのほか、緊急対策区域における緊急対策の円滑かつ迅速な推進に関し必要な事項
 三 内閣総理大臣は、緊急対策推進基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないこと。
 四 内閣総理大臣は、三による閣議の決定があったときは、遅滞なく、緊急対策推進基本計画を公表しなければならないこと。

第三 緊急対策実施計画の作成等
 一 緊急対策実施計画
  1 第一の三の1による緊急対策区域の指定があったときは、その全部又は一部の区域が緊急対策区域である都府県(以下「関係都府県」という。)の知事(第六を除き、以下「関係都府県知事」という。)は、緊急対策推進基本計画を基本として、当該緊急対策区域において実施すべき緊急対策に関する計画(以下「緊急対策実施計画」という。)を作成することができること。
  2 緊急対策実施計画には、次の事項を定めるものとすること。
   (1) 緊急対策実施計画の区域
   (2) 緊急対策実施計画の目標
   (3) 緊急対策実施計画の期間
  3 緊急対策実施計画には、2の事項のほか、次の事項のうち必要なものを定めるものとすること。
   (1) 次の施設等(当該施設等に関する主務大臣の定める基準に適合するものに限る。)の整備等であって、当該緊急対策区域において南海トラフ巨大地震に係る地震防災上緊急に実施する必要があるものに関する事項
    [1] 避難路
    [2] 避難施設その他の避難場所
    [3] 消防用施設
    [4] 緊急輸送を確保するため必要な道路、港湾施設又は漁港施設
    [5] 公的医療機関その他地震災害時における医療活動の拠点となる病院、社会福祉施設、学校その他の不特定かつ多数の者が利用する公的建造物のうち、地震防災上改築若しくは補強又は移転を要するもの
    [6] [5]のほか、住宅その他の建築物のうち、地震防災上改築又は補強を要するもの
    [7] 海岸保全施設又は河川管理施設で、地震防災上必要なもの
    [8] 砂防設備、森林法に規定する保安施設事業に係る保安施設、地すべり防止施設、急傾斜地崩壊防止施設又は土地改良法に規定する農業用用排水施設であるため池で、家屋の密集している地域の地震防災上必要なもの
    [9] 地震災害時において災害応急対策の拠点として機能する地域防災拠点施設
    [10] 地震災害時において迅速かつ的確な被害状況の把握及び住民に対する災害情報の伝達を行うために必要な防災行政無線設備その他の施設又は設備
    [11] 地震災害時における飲料水、電源等の確保等により被災者の安全を確保するために必要な井戸、貯水槽、水泳プール、自家発電設備その他の施設又は設備
    [12] 地震災害時において必要となる非常用食糧、救助用資機材等の物資の備蓄倉庫
    [13] 負傷者を一時的に収容及び保護するための救護設備等地震災害時における応急的な措置に必要な設備又は資機材
    [14] [1]から[13]までのほか、南海トラフ巨大地震に係る地震防災上緊急に整備すべき施設等であって政令で定めるもの
   (2) 土地改良事業に関する事項
   (3) 集団移転促進事業(防災のための集団移転促進事業に係る国の財政上の特別措置等に関する法律(以下「集団移転促進法」という。)に規定する集団移転促進事業をいう。以下同じ。)その他の南海トラフ巨大地震に係る被害の発生を防止し、又は軽減するための住居、工場その他の事業所等の集団的移転に関する事項
   (4) 宅地等の地震防災対策に関する事項
   (5) 次の事項のうち、当該緊急対策区域において南海トラフ巨大地震に係る災害応急対策及び災害復旧の円滑かつ的確な実施に必要なもの
    [1] 被災者の救難及び救助の実施に関する事項
    [2] 地震災害時における医療の提供に関する事項
    [3] 災害応急対策及び災害復旧に必要な物資の流通に関する事項
    [4] ボランティアによる防災活動の環境の整備に関する事項
    [5] 海外からの防災に関する支援の円滑な受入れに関する事項
    [6] 応急仮設住宅の建設に係る用地の確保に関する事項
    [7] 災害廃棄物の一時的な保管場所の確保に関する事項
   (6) 住民等の協働による防災対策の推進に関する事項
   (7) 南海トラフ巨大地震の発生を予知するための観測体制の強化に関する事項
   (8) 南海トラフ巨大地震に係る防災訓練に関する事項
   (9) 地震防災に関する技術の研究開発に関する事項
   (10) (1)から(9)までの事項に係る事業又は事務(以下「事業等」という。)と一体となってその効果を増大させるために必要な事業等その他の南海トラフ巨大地震に係る地震防災対策の推進のため前各号の事項に係る事業等に関連して地域の特性に即して自主的かつ主体的に実施する事業等に関する事項
   (11) 緊急対策実施計画に基づいて実施される事業等(以下「緊急対策事業等」という。)のうち三の1の交付金を充てて行う事業等に関する事項
   (12) その他内閣府令で定める事項
  4 3の事項には、関係都府県が実施する事業等に係るものを記載するほか、必要に応じ、当該関係都府県以外の者が実施する事業等に係るものを記載することができること。
  5 関係都府県知事による関係する市町村の長の意見聴取、内閣総理大臣との協議等緊急対策実施計画の作成の手続に関する規定を設けること。
 二 緊急対策事業等に係る国の負担又は補助の特例等
   緊急対策事業等のうち、別表第一に掲げるもの(当該事業に関する主務大臣の定める基準に適合するものに限る。)に要する経費に対する国の負担又は補助の割合(以下「国の負担割合」という。)は、当該事業に関する法令の規定にかかわらず、同表のとおりとすること。この場合において、これらの事業のうち、別表第二に掲げるもの(都府県が実施するものを除き、当該事業に関する主務大臣の定める基準に適合するものに限る。)に要する経費に係る都府県の負担又は補助の割合(以下「都府県の負担割合」という。)は、同表に掲げる割合とすること。
 三 緊急対策交付金の交付等
  1 国は、関係都府県又はその全部若しくは一部の区域が緊急対策区域である市町村(以下「関係市町村」という。)(以下第三から第五までにおいて「特定地方公共団体」という。)に対し、緊急対策事業等のうち一の3(11)の事項に係る事業等の実施に要する経費に充てるため、予算の範囲内で、交付金(以下「緊急対策交付金」という。)を交付することができること。
  2 国は、1の経費に二の経費が含まれる場合においては、当該経費について二を適用したとするならば国が負担し、又は補助することとなる割合を参酌して、緊急対策交付金の額を算定するものとすること。
 四 基金
  1 特定地方公共団体は、緊急対策事業等に充てる経費の全部又は一部を支弁するため、地方自治法第241条の基金を設けることができること。
  2 特定地方公共団体が1により基金を設ける場合において、国は、当該基金の造成の目的である緊急対策事業等が、あらかじめ複数年度にわたり財源を確保しておくことが施策の安定的かつ効率的な実施に必要不可欠であって、複数年度にわたり事業等の進捗状況等に応じた助成が必要であるが、各年度の所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要不可欠である等の特段の事情がある事業等であると認めるときは、予算の範囲内で、当該基金の財源に充てるために必要な資金として緊急対策交付金を交付することができること。
 五 地方債の特例等
  1 緊急対策事業等の実施につき特定地方公共団体が必要とする経費については、地方財政法第5条に規定する経費に該当しないものについても、地方債をもってその財源とすることができること。
  2 緊急対策事業等の実施につき特定地方公共団体が必要とする経費の財源に充てるために起こした地方債で、総務大臣が指定したものに係る元利償還に要する経費は、地方交付税法の定めるところにより、当該特定地方公共団体に交付すべき地方交付税の額の算定に用いる基準財政需要額に算入するものとすること。
 六 資金の確保のための措置
   国は、財政投融資に係る資金及び民間の資金の積極的な活用その他の措置を講ずることにより、緊急対策の実施に必要な資金の確保に努めるものとすること。
 七 緊急対策債の発行等
  1 国は、緊急対策の実施に必要な資金を確保するため、別に法律で定めるところにより、公債(2において「緊急対策債」という。)を発行するものとすること。
  2 国は、緊急対策債については、その他の公債と区分して管理するとともに、別に法律で定める措置その他の措置を講ずることにより、あらかじめ、その償還の道筋を明らかにするものとすること。

第四 緊急対策実施計画に係る特別の措置
 一 国等による公共施設等の工事の代行
   国等は、緊急対策実施計画に基づいて行う次の工事であって、関係都府県等の要請に基づいて行うもの等を、自ら施行することができること。
  1 土地改良事業
  2 漁港漁場整備事業に関する工事
  3 砂防工事
  4 港湾施設の建設又は改良に係る港湾工事
  5 都府県道又は市町村道の新設又は改築に関する工事
  6 海岸保全施設の新設又は改良に関する工事
  7 地すべり防止工事
  8 河川の改良工事
  9 急傾斜地崩壊防止工事
 二 津波災害特別警戒区域の特例
   緊急対策実施計画の区域内に津波防災地域づくりに関する法律により指定された津波災害特別警戒区域があるときは、当該津波災害特別警戒区域を建築基準法の規定により指定された災害危険区域とみなして、集団移転促進法の規定を適用すること。

第五 特定緊急対策事業推進計画に係る特別の措置
 一 特定緊急対策事業推進計画の認定等
  1 特定地方公共団体は、単独で又は共同して、当該特定地方公共団体に係る緊急対策区域内の区域について、特定緊急対策事業(緊急対策実施計画に記載された事業で、二による特別の措置の適用を受けるものをいう。以下同じ。)の実施又はその実施の促進による南海トラフ巨大地震に係る地震防災対策の円滑かつ迅速な推進を図るための計画(以下「特定緊急対策事業推進計画」という。)を作成し、内閣総理大臣の認定を申請することができること。
  2 特定緊急対策事業推進計画には、次の事項を定めるものとすること。
   (1) 特定緊急対策事業推進計画の区域
   (2) 特定緊急対策事業推進計画の目標
   (3) (2)の目標を達成するために推進しようとする取組の内容
   (4) (2)の目標を達成するために実施し又はその実施を促進しようとする特定緊急対策事業の内容及び実施主体に関する事項
   (5) (4)の特定緊急対策事業ごとの二による特別の措置の内容
   (6) (1)から(5)までのほか、(4)の特定緊急対策事業に関する事項その他特定緊急対策事業の実施等による地震防災対策の円滑かつ迅速な推進に関し必要な事項
  3 内閣総理大臣は、申請があった特定緊急対策事業推進計画が次の基準に適合すると認めるときは、その認定をするものとすること。
   (1) 緊急対策推進基本計画に適合するものであること。
   (2) 当該特定緊急対策事業推進計画の実施が当該特定緊急対策事業推進計画の区域における南海トラフ巨大地震に係る地震防災対策の円滑かつ迅速な推進に寄与するものであると認められること。
   (3) 円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること。
  4 特定地方公共団体による関係地方公共団体等の意見聴取、特定緊急対策事業を実施しようとする者等による特定地方公共団体に対する申請の提案、内閣総理大臣が特定緊急対策事業推進計画の認定をする場合の関係行政機関の長との協議等緊急対策事業推進計画の作成及び認定に関する規定を設けること。
 二 認定推進計画に基づく事業に対する特別の措置
  1 建築基準法の特例
   (1) 特定地方公共団体が、特定緊急対策事業として、緊急防災建築物整備事業(特定緊急対策事業推進計画の区域内において避難施設その他の地震防災対策の円滑かつ迅速な推進のために必要な建築物の整備を促進する事業をいう。)を定めた特定緊急対策事業推進計画について、内閣総理大臣の認定を受けたときは、都市計画として定められている用途地域における用途制限を緩和するものとすること。
   (2) 特定地方公共団体が、特定緊急対策事業として、特別用途地区緊急防災建築物整備事業(建築基準法第49条第2項の規定に基づく条例で用途地域における用途制限を緩和することにより、特定緊急対策事業推進計画の区域内の特別用途地区内において、避難施設その他の地震防災対策の円滑かつ迅速な推進のために必要な建築物の整備を促進する事業をいう。)を定めた特定緊急対策事業推進計画について、内閣総理大臣の認定を受けたときは、当該認定を同項の国土交通大臣の承認とみなして、当該承認を不要とすること。
  2 公営住宅法等の特例
    特定地方公共団体が、特定緊急対策事業として、移転者公営住宅等供給事業(特定緊急対策事業推進計画の区域内において実施される集団移転促進事業等の実施に伴い移転が必要となった者((1)において「移転者」という。)に公営住宅等を賃貸する事業をいう。)を定めた特定緊急対策事業推進計画について、内閣総理大臣の認定を受けたときは、次の特例を受けること。
   (1) 移転者について、公営住宅法第23条第2号の条件を具備する者を同条各号の条件を具備する者とみなすこと。
   (2) 公営住宅等の入居者等への譲渡制限期間を当該公営住宅等の耐用年限の4分の1から6分の1に短縮すること。
   (3) 公営住宅等の譲渡対価の使途を、公営住宅等の整備等のほか、地域住宅計画に基づく事業等に拡充すること。
  3 補助金等により取得した財産の処分の制限に係る承認手続の特例
    特定地方公共団体が、特定緊急対策事業として、南海トラフ巨大地震に係る地震防災対策の円滑かつ迅速な推進に資する事業の活動の基盤を充実するため、補助金等交付財産を当該補助金等交付財産に充てられた補助金等の交付の目的以外の目的に使用等することにより行う事業を定めた特定緊急対策事業推進計画について、内閣総理大臣の認定を受けたときは、当該認定を受けたことをもって、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第22条に規定する各省各庁の長の承認を受けたものとみなすこと。

第六 緊急集団移転促進事業の実施に係る特別の措置
 一 緊急集団移転促進事業計画
  1 関係市町村は、単独で又は当該関係市町村の存する関係都府県(以下第六において単に「関係都府県」という。)と共同して、緊急集団移転促進事業(緊急対策実施計画に記載された集団移転促進事業で、三から六までの特別の措置の適用を受けるものをいう。以下同じ。)の実施に関する計画(以下「緊急集団移転促進事業計画」という。)を作成することができること。
  2 緊急集団移転促進事業計画には、次の事項を記載するものとすること。
   (1) 緊急集団移転促進事業計画の区域
   (2) 緊急集団移転促進事業計画の目標
   (3) 緊急集団移転促進事業に係る土地利用に関する基本方針
   (4) 緊急集団移転促進事業に係る実施主体、実施区域その他の内閣府令で定める事項
   (5) 緊急集団移転促進事業計画の期間
   (6) その他緊急集団移転促進事業の実施に関し必要な事項
  3 緊急集団移転促進事業計画には、2の(1)から(6)までの事項のほか、集団移転促進法に規定する集団移転促進事業計画に定めるべき事項を記載することができること。
  4 関係市町村等は、緊急集団移転促進事業計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならないこと。
  5 二の協議会における協議等の手続を行い、集団移転促進事業計画に定めるべき事項が記載された緊急集団移転促進事業計画が4により公表されたときは、当該公表の日に当該事項に係る集団移転促進事業計画が集団移転促進法の規定により国土交通大臣の同意を得て定められたものとみなすこと。
 二 緊急集団移転促進事業推進協議会
   関係市町村等は、緊急集団移転促進事業計画及びその実施に関し必要な事項について協議を行うため、関係市町村の長、関係都府県の知事、国土交通大臣等により構成される緊急集団移転促進事業推進協議会(以下「協議会」という。)を組織することができること。
 三 土地利用基本計画の変更等に関する特例
  1 関係市町村等は、協議会における協議等の手続を行い、緊急集団移転促進事業計画に緊急集団移転促進事業の実施に関連して行う土地利用基本計画の変更等に関する事項を記載することができること。
  2 1の事項が記載された緊急集団移転促進事業計画が公表されたときは、当該公表の日に当該事項に係る土地利用基本計画の変更等がされたものとみなすこと。
 四 緊急集団移転促進事業に係る許認可等の特例
  1 関係市町村等は、協議会における協議等の手続を行い、緊急集団移転促進事業計画に緊急集団移転促進事業の実施に係る都市計画法の規定による開発行為の許可、農地法の規定による農地転用の許可、農業振興地域の整備に関する法律の規定による農用地区域内における開発行為の許可等に関する事項を記載することができること。
  2 1の事項が記載された緊急集団移転促進事業計画が公表されたときは、当該公表の日に当該事項に係る緊急集団移転促進事業についてこれらの許認可等があったものとみなすこと。この場合において、当該緊急集団移転促進事業の実施に係る市街化調整区域内における開発行為の許可、農地転用の許可、農用地区域内における開発行為の許可等について、要件を緩和すること。
 五 集団移転促進事業の特例
  1 関係都府県は、関係市町村から緊急集団移転促進事業に係る集団移転促進事業計画を定めることが困難である旨の申出を受けた場合においては、当該申出に係る集団移転促進事業計画を定めることができること。
  2 緊急集団移転促進事業を実施する場合においては、移転者の住居の移転に関連して必要と認められる医療施設、官公庁施設、購買施設その他の施設で、居住者の共同の福祉又は利便のため必要なものの用に供する土地の取得及び造成に要する経費も国の補助の対象とするとともに、住宅団地等の用地を取得し、又は造成した後に譲渡する場合であっても、当該取得又は造成に要する経費が当該譲渡に係る対価の額を超える場合には、当該超える額を国の補助の対象とすること。
 六 緊急集団移転促進事業の実施に係る特別の措置
関係市町村は、緊急集団移転促進事業の実施区域の全部又は一部の区域を届出対象区域として指定することができるとともに、届出対象区域内において土地の区画形質の変更等の行為をしようとする者は、当該行為に着手する日の30日前までに、関係市町村長に届け出なければならないこと。

第七 雑則
 一 監視区域の指定
   関係都府県知事等は、緊急対策区域のうち、地価が急激に上昇し、又は上昇するおそれがあり、これによって適正かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがあると認められる区域を国土利用計画法の規定により監視区域として指定するよう努めるものとすること。
 二 関係都府県等に対する国の援助
   国は、関係都府県及び関係市町村に対し、南海トラフ巨大地震に係る地震防災対策の実施に関し、当該地域の実情に応じ、情報の提供、技術的な助言その他必要な援助を行うよう努めなければならないこと。
 三 南海トラフ巨大地震に係る総合的な防災訓練の実施
   緊急対策区域に係る災害対策基本法に規定する指定行政機関の長及び関係都府県知事は、必要に応じ、当該区域に係る関係市町村長その他の者と連携して、南海トラフ巨大地震に係る総合的な防災訓練を行わなければならないこと。
 四 広域的な連携協力体制の構築
  1 国及び地方公共団体は、南海トラフ巨大地震が発生した場合において、災害応急対策、災害復旧、災害廃棄物の処理その他の関係都府県及び関係市町村の業務が円滑かつ適切に実施されるよう、関係都府県及び関係市町村と関係都府県及び関係市町村以外の地方公共団体その他の関係機関との広域的な連携協力体制の構築に努めなければならないこと。
  2 国は、前項の広域的な連携協力体制の構築が推進されるよう、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならないこと。

第八 その他
 一 施行期日
   この法律は、公布の日から起算して2月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。
 二 平成24年度から平成26年度までの特例
   別表第一及び別表第二の規定の平成24年度から平成26年度までの各年度における適用については、別表第一中「3分の2」とあるのは「4分の3」と、別表第二中「6分の1」とあるのは「8分の1」とすること。
 三 検討
政府は、この法律の施行後10年を経過した場合において、この法律の施行状況、最新の科学的知見等を勘案し、南海トラフ巨大地震に係る地震防災対策の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
 四 その他
   その他所要の規定を整備すること。

別表第一(第三の二関係)

事業の区分
国の負担割合
避難路の整備で地方公共団体等が実施するもの
3分の2
避難施設その他の避難場所の整備で地方公共団体等が実施するもの
3分の2
耐震性貯水槽等の消防用施設の整備で地方公共団体が実施するもの
3分の2
へき地における公立の診療所の改築
3分の2
児童福祉法に規定する乳児院等、生活保護法に規定する救護施設、老人福祉法に規定する養護老人ホーム等又は障害者自立支援法に規定する障害者支援施設のうち、木造の施設の改築
3分の2
公立の幼稚園、小学校、中学校等の校舎、屋内運動場又は寄宿舎で、地震による倒壊の危険性が高いもののうち、やむを得ない理由により補強が困難なものの改築
3分の2
公立の小学校、中学校等の校舎又は屋内運動場で、木造以外のものの補強(次に掲げるものを除く。)
3分の2
公立の幼稚園、小学校、中学校等の校舎、屋内運動場又は寄宿舎で、地震による倒壊の危険性が高いものの補強
3分の2
地震災害時において迅速かつ的確な被害状況の把握及び住民に対する災害情報の伝達を行うために必要な防災行政無線設備その他の施設又は設備の整備で地方公共団体が実施するもの
3分の2
地震災害時における飲料水、電源等の確保等により被災者の安全を確保するために必要な井戸、貯水槽、水泳プール、自家発電設備その他の施設又は設備の整備で地方公共団体が実施するもの
3分の2
地震災害時において必要となる非常用食糧、救助用資機材等の物資の備蓄倉庫の施設の整備で地方公共団体が実施するもの
3分の2
負傷者を一時的に収容及び保護するための救護設備等地震災害時における応急的な措置に必要な設備又は資機材の整備で地方公共団体が実施するもの
3分の2
集団移転促進区域内に存する公営住宅又は改良住宅の除却及び当該除却とともに行うこれらに代わるべき公営住宅又は改良住宅の建設等
3分の2
集団移転促進事業による移転者に賃貸する公営住宅又は改良住宅の建設等
3分の2
集団移転促進区域内に存する児童福祉施設又は障害者支援施設の除却及び当該除却とともに行うこれらに代わるべき施設の新築
3分の2
集団移転促進区域内に存する公立の幼稚園、小学校、中学校等の除却及び当該除却とともに行うこれらに代わるべき施設の新築
3分の2

別表第二(第三の二関係)
               事業の区分 都府県の負担割合

児童福祉法に規定する乳児院等、生活保護法に規定する救護施設、老人福祉法に規定する養護老人ホーム等又は障害者自立支援法に規定する障害者支援施設のうち、木造の施設の改築
6分の1
集団移転促進区域内に存する児童福祉施設又は障害者支援施設の除却とともに行うこれらに代わるべき施設の新築
6分の1

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