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     子どもの貧困対策法案要綱


第一 総則
 一 目的                                     (第一条関係)
 この法律は、現在、我が国においては子どもの貧困率が高いこと、世帯の所得によって義務教育終了後の子ども等の修学の状況に差異があること等に鑑み、貧困の状況にある子ども等の健やかな成長及び教育の機会均等を図るため、子ども等の貧困対策に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、並びに子どもの貧困率、進学率等の調査等、子どもの貧困対策の当面の目標及び子ども等の貧困対策に関する計画の策定について定めるとともに、子ども等の貧困対策の基本となる事項を定めることにより、子ども等の貧困対策を総合的かつ計画的に推進し、もって子ども等の貧困を解消し、子ども等が夢と希望を持って生活することができる社会を実現することを目的とすること。
二 定義                                     (第二条関係)
1 この法律において「子ども」とは、二十歳未満の者をいうこと。
2 この法律において「子どもの貧困率」とは、世帯員の等価可処分所得額(当該世帯員の属する世帯の各世帯員の可処分所得額(給与その他の収入の額から所得税その他の税の額、国民年金の保険料その他の社会保険料の額等を差し引いた額として政令で定めるところにより計算した額をいう。)の合計額を世帯員の人数の平方根で除した額をいう。2及び3において同じ。)が全世帯の世帯員の等価可処分所得額の中央値の二分の一(3において「貧困基準額」という。)に満たない世帯に属する十八歳未満の者の総数の十八歳未満の全人口に対する割合をいうこと。
3 この法律において「ひとり親世帯等の貧困率」とは、十八歳以上六十五歳未満の者が世帯主であり、世帯主以外の者の全員が十八歳未満の者である世帯(3において「ひとり親世帯等」という。)であって、世帯員の等価可処分所得額が貧困基準額に満たないものに属する者の総数の全てのひとり親世帯等に属する者の総数に対する割合をいうこと。
4 この法律において「高等学校等進学率」とは、中学校を卒業した者のうち高等学校等(高等学校(専攻科を除く。)、中等教育学校の後期課程(専攻科を除く。)、特別支援学校の高等部(専攻科を除く。)又は高等専門学校(専攻科を除く。)をいう。5において同じ。)に進学したものの総数の中学校を卒業した者の総数に対する割合をいうこと。
5 この法律において「生活保護世帯に属する子ども等の高等学校等進学率」とは、中学校を卒業した者のうち高等学校等に進学した者のうち生活保護世帯に属するものの総数の中学校を卒業した者のうち生活保護世帯に属するものの総数に対する割合をいうこと。
6 この法律において「大学進学率」とは、大学(専攻科及び大学院を除く。以下同じ。)又は高等学校の専攻科若しくは特別支援学校の高等部の専攻科に進学した者の総数の十八歳の全人口に対する割合をいうこと。
7 この法律において「生活保護世帯に属する子ども等の大学進学率」とは、大学又は高等学校の専攻科若しくは特別支援学校の高等部の専攻科に進学した者のうち生活保護世帯に属するものの総数の十八歳の者のうち生活保護世帯に属するものの総数に対する割合をいうこと。
8 この法律において「高等学校中途退学率」とは、高等学校における退学者(校長の許可を受け、又は懲戒処分を受けて退学した者等をいう。9において同じ。)の総数の高等学校に在学する生徒の総数に対する割合をいうこと。
9 この法律において「生活保護世帯に属する子ども等の高等学校中途退学率」とは、高等学校における退学者のうち生活保護世帯に属するものの総数の高等学校に在学する生徒のうち生活保護世帯に属するものの総数に対する割合をいうこと。
10 この法律において「大学中途退学率」とは、大学における退学者(学長の許可を受け、又は懲戒処分を受けて退学した者等をいう。11において同じ。)の総数の大学に在学する学生の総数に対する割合をいうこと。
11 この法律において「生活保護世帯に属する子ども等の大学中途退学率」とは、大学における退学者のうち生活保護世帯に属するものの総数の大学に在学する学生のうち生活保護世帯に属するものの総数に対する割合をいうこと。
12 この法律において「高校生の修学旅行参加率」とは、高等学校(専攻科及び別科を除く。12及び13において同じ。)に在学する生徒であって修学旅行に参加したものの総数の各高等学校における修学旅行が実施された学年に在学する生徒の数を合計した数に対する割合をいうこと。
13 この法律において「生活保護世帯に属する高校生の修学旅行参加率」とは、高等学校に在学する生徒であって修学旅行に参加したもののうち生活保護世帯に属するものの総数の各高等学校における修学旅行が実施された学年に在学する生徒のうち生活保護世帯に属するものの数を合計した数に対する割合をいうこと。
14 この法律において「小学生の不登校率」とは、一の年度において三十日以上欠席した小学校の児童であって政令で定める理由によるものの総数の小学校に在学する児童の総数に対する割合をいうこと。
15 この法律において「生活保護世帯に属する小学生の不登校率」とは、一の年度において三十日以上欠席した小学校の児童であって政令で定める理由によるもののうち生活保護世帯に属するものの総数の小学校に在学する児童のうち生活保護世帯に属するものの総数に対する割合をいうこと。
16 この法律において「中学生の不登校率」とは、一の年度において三十日以上欠席した中学校(中等教育学校の前期課程を含む。16、17及び20において同じ。)の生徒であって政令で定める理由によるものの総数の中学校に在学する生徒の総数に対する割合をいうこと。
17 この法律において「生活保護世帯に属する中学生の不登校率」とは、一の年度において三十日以上欠席した中学校の生徒であって政令で定める理由によるもののうち生活保護世帯に属するものの総数の中学校に在学する生徒のうち生活保護世帯に属するものの総数に対する割合をいうこと。
18 この法律において「高校生の不登校率」とは、一の年度において三十日以上欠席した高等学校の生徒のうち政令で定める理由によるものの総数の高等学校に在学する生徒の総数に対する割合をいうこと。
19 この法律において「生活保護世帯に属する高校生の不登校率」とは、一の年度において三十日以上欠席した高等学校の生徒のうち政令で定める理由によるもののうち生活保護世帯に属するものの総数の高等学校に在学する生徒のうち生活保護世帯に属するものの総数に対する割合をいうこと。
20 この法律において「就学援助率」とは、生活保護法第六条第二項に規定する要保護者である小学校の児童及び中学校の生徒の総数の小学校の児童及び中学校の生徒の総数に対する割合並びに同項に規定する要保護者に準ずる状況にある小学校の児童又は中学校の生徒として政令で定める者の総数の小学校の児童及び中学校の生徒の総数に対する割合をいうこと。
三 基本理念                                   (第三条関係)
1 子ども等の貧困対策は、全ての子ども等に、その置かれている環境にかかわらず、健康で文化的な生活及び教育を受ける機会を保障することを旨として行われなければならないこと。
2 子ども等の貧困対策は、貧困の状況にある子どもが成人になった後に再び貧困に陥ることを防止することを旨として行われなければならないこと。
3 子ども等の貧困対策は、子ども等の置かれた経済状況に関する問題にとどまらず、貧困が子ども等に与える精神的影響に関する問題についても行われるものとすること。
4 子ども等の貧困対策を行うに当たっては、子ども等の貧困に関する専門的、学際的又は総合的な調査及び研究の成果が活用されるべきものとすること。
四 責務
1 国は、基本理念にのっとり、子ども等の貧困対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有すること。                                     (第四条関係)
2 地方公共団体は、基本理念にのっとり、子ども等の貧困対策に関し、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有すること。           (第五条関係)
3 社会福祉、医療及び保健並びに教育に関する職務に従事する者は、子ども等の貧困対策に果たすべき重要な役割に鑑み、基本理念にのっとり、貧困の状況にある子ども等の状態を把握するよう努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する子ども等の貧困対策に協力するよう努めなければならないこと。                                     (第六条関係)
4 国民は、国又は地方公共団体が実施する子ども等の貧困対策に協力するよう努めなければならないこと。                                     (第七条関係)
五 法制上の措置等                                (第八条関係)
 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上の措置その他の措置を講じなければならないこと。
六 年次報告                                   (第九条関係)
 政府は、毎年、国会に、政府が講じた子ども等の貧困対策に係る施策についての報告を提出しなければならないこと。
第二 子どもの貧困対策の当面の目標等
一 子どもの貧困率、進学率等の調査等                        (第十条関係)
1 政府は、子どもの貧困の実態を把握するため、三年ごとに、子どもの貧困率及びひとり親世帯等の貧困率を調査し、その結果を公表しなければならないこと。
2 政府は、子ども等の貧困の実態を把握するため、毎年、次に掲げる事項を調査し、その結果を都道府県ごとに公表しなければならないこと。
イ 高等学校等進学率及び生活保護世帯に属する子ども等の高等学校等進学率
ロ 大学進学率及び生活保護世帯に属する子ども等の大学進学率
ハ 高等学校中途退学率及び生活保護世帯に属する子ども等の高等学校中途退学率
ニ 大学中途退学率及び生活保護世帯に属する子ども等の大学中途退学率
ホ 高校生の修学旅行参加率及び生活保護世帯に属する高校生の修学旅行参加率
ヘ 小学生の不登校率、中学生の不登校率及び高校生の不登校率並びに生活保護世帯に属する小学生の不登校率、生活保護世帯に属する中学生の不登校率及び生活保護世帯に属する高校生の不登校率
ト 就学援助率
二 子どもの貧困対策の当面の目標                        (第十一条関係)
 子どもの貧困対策の当面の目標は、次のとおりとすること。
イ 平成二十七年における子どもの貧困率は、平成二十四年における子どもの貧困率の数値の十分の九未満とすること。
ロ 平成二十七年におけるひとり親世帯等の貧困率は、平成二十四年におけるひとり親世帯等の貧困率の数値の十分の九未満とすること。
ハ 平成三十年における子どもの貧困率は、平成二十七年における子どもの貧困率の数値の十分の九未満とすること。
ニ 平成三十年におけるひとり親世帯等の貧困率は、平成二十七年におけるひとり親世帯等の貧困率の数値の十分の九未満とすること。
ホ 平成三十三年における子どもの貧困率は、十パーセント未満とすること。
ヘ 平成三十三年におけるひとり親世帯等の貧困率は、三十五パーセント未満とすること。
第三 子どもの貧困対策計画等
一 子どもの貧困対策計画の策定等                        (第十二条関係)
1 政府は、子ども等の貧困対策を総合的かつ計画的に推進し、もって第二の二の子どもの貧困対策の当面の目標を達成するとともに、高等学校等進学率、大学進学率及び高校生の修学旅行参加率の向上、高等学校中途退学率、大学中途退学率、小学生の不登校率、中学生の不登校率及び高校生の不登校率の低下等を図るため、子どもの貧困対策計画を定めなければならないこと。
2 子どもの貧困対策計画は、次に掲げる事項について定めるものとすること。
イ 子ども等の貧困対策についての基本的な方針
ロ 子ども等の貧困対策に関し政府が総合的かつ計画的に実施すべき施策
ハ イ及びロに掲げるもののほか、子ども等の貧困対策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 内閣総理大臣は、子どもの貧困対策計画の案につき閣議の決定を求めなければならないこと。
4 内閣総理大臣は、3による閣議の決定があったときは、遅滞なく、子どもの貧困対策計画を公表しなければならないこと。
5 3及び4は、子どもの貧困対策計画の変更について準用すること。
二 都道府県子どもの貧困対策計画の策定等                    (第十三条関係)
1 都道府県は、子どもの貧困対策計画を勘案して、都道府県子どもの貧困対策計画を定めなければならないこと。
2 都道府県は、都道府県子どもの貧困対策計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならないこと。
第四 基本的施策
一 教育及び教育費に関する支援                         (第十四条関係)
 国及び地方公共団体は、無料で行われる学習に対する支援、奨学金の充実その他の貧困の状況にある子ども等の教育の機会均等を図るために必要な施策を講ずるものとすること。
二 社会保障の拡充                               (第十五条関係)
 国及び地方公共団体は、貧困の状況にある子ども等に対し、健康で文化的な生活を保障するため、遺族基礎年金の拡充その他の貧困の状況にある子ども等に係る社会保障の拡充に必要な施策を講ずるものとすること。
三 乳幼児期からの早期対応の充実                        (第十六条関係)
 国及び地方公共団体は、乳幼児期からの子どもの健やかな育ちを支援するため、保健指導等に係る体制の整備その他の必要な施策を講ずるものとすること。
四 貧困の状況にある子ども等及び当該子どもの保護者に対する支援体制の整備    (第十七条関係)
 国及び地方公共団体は、子ども等の貧困に関する相談に応じ、関係機関の紹介等必要な情報の提供及び助言を行う体制の整備その他の貧困の状況にある子ども等及び当該子どもの保護者を支援する体制の整備に関し必要な施策を講ずるものとすること。
五 貧困の状況にある子どもの保護者の就労等に関する支援             (第十八条関係)
 国及び地方公共団体は、貧困の状況にある子どもの保護者であって職業能力が十分でないものに対する職業訓練の実施、保育所の整備その他の貧困の状況にある子どもの保護者の就労等を支援するために必要な施策を講ずるものとすること。
六 子ども等の貧困に係る実態調査等                       (第十九条関係)
 国及び地方公共団体は、子ども等の貧困対策を適正に策定し、及び実施するため、貧困の状況にある子ども等及び当該子どもの保護者の実態に関する調査研究並びに貧困の状況にある子ども等及び当該子どもの保護者の要望に関する調査の推進その他の必要な施策を講ずるものとすること。
第五 子どもの貧困対策会議等
一 子どもの貧困対策会議                     (第二十条及び第二十一条関係)
1 内閣府に、特別の機関として、子どもの貧困対策会議(以下「会議」という。)を置くこと。
2 会議は、次に掲げる事務をつかさどること。
イ 子どもの貧困対策計画の案を作成すること。
ロ 子ども等の貧困対策について必要な関係行政機関相互の調整をすること。
ハ イ及びロに掲げるもののほか、子ども等の貧困対策に関する重要事項について審議し、及び子ども等の貧困対策の実施を推進すること。
3 会議は、子どもの貧困対策計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、子どもの貧困対策審議会の意見を聴かなければならないこと。
4 会議は、議長及び委員をもって組織すること。
5 議長は、内閣総理大臣をもって充てること。
6 委員は、議長以外の国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者をもって充てること。
7 4から6までに定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定めること。
二 子どもの貧困対策審議会                   (第二十二条及び第二十三条関係)
1 内閣府に、子どもの貧困対策審議会(以下「審議会」という。)を置くこと。
2 審議会は、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を調査審議するほか、貧困の状況にある子ども等の現状、第二の二の子どもの貧困対策の当面の目標の達成状況及び子ども等の貧困対策の実施状況を調査審議すること。
3 審議会は、2の場合において必要があると認めるときは、内閣総理大臣又は関係行政機関の長に意見を述べることができること。
4 内閣総理大臣又は関係行政機関の長は、3の意見を受けてとった措置について、審議会に報告しなければならないこと。
5 審議会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができること。
6 審議会は、子ども等の貧困対策に関し優れた識見を有する者、子どものいる世帯であって貧困の状況にあるものに属する者及び当該世帯に関する支援等の活動を行う民間の団体に属する者のうちから、内閣総理大臣が任命する委員二十人以内で組織すること。
7 専門の事項を調査審議させる必要があるときは、審議会に専門委員を置くことができること。
8 審議会に、必要に応じ、部会を置くことができること。
9 6から8までに定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定めること。
第六 施行期日等
一 施行期日                                 (附則第一条関係)
 この法律は、平成二十五年八月一日から施行すること。
二 検討                                   (附則第二条関係)
 政府は、第二の一の1による調査の結果(平成二十四年以前の年に係るものを除く。)が判明するごとに、この法律の規定について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
三 その他
 その他所要の規定を整備すること。

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