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刑事訴訟法の一部を改正する法律案要綱

第一 捜査機関による取調べの状況の録画
一 捜査機関の一般的な録画の努力義務
 1 被疑者の取調べ(第198条の2第1項関係)
捜査機関は、被疑者の取調べに際しては、取調べの適正を確保するとともに自白が行われた状況の後の刑事手続における立証等に資するため、後の刑事手続において自白の任意性等が争われる可能性等を勘案しつつ、できる限り、取調べの状況について録画するよう努めるものとすること。
  2 参考人の取調べ(第223条第2項関係)
    参考人の取調べについて、一と同様、努力義務を課すものとすること。

二 被疑者の取調べ及び弁解の機会の録画の義務化等
1 検察官認知・直受事件及び裁判員裁判対象事件における取調べ及び弁解の機会の全過程の録画の義務(第198条の2第2項並びに第203条第6項、第204条第5項及び第205条第5項関係)
  捜査機関は、次に掲げる事件について逮捕・勾留されている被疑者の取調べ及び弁解の機会の付与に際しては、災害によりやむを得ない場合及び被疑者が弁護人の同意を得て拒否した場合を除き、その状況の全てについて、録画しなければならないものとすること。
(1) 検察官が端緒を得て自ら捜査する事件、検察官が告訴又は告発を受けた事件及び検察官に自首した事件
(2) 公判において裁判員裁判対象事件となる可能性があると認められる事件
2 被疑者の申出がある場合の取調べ及び弁解の機会の録画の義務(第198条の2第3項並びに第203条第4項、第204条第3項及び第205条第5項関係)
捜査機関は、逮捕・勾留されている被疑者の取調べ及び弁解の機会の付与に際しては、1により録画を行う場合等を除き、被疑者に対し、あらかじめ、録画するよう申し出ることができる旨を告げなければならず、被疑者から申出があったときは、災害によりやむを得ない場合を除き、当該申出に係る部分の状況について、録画しなければならないものとすること。
3 知的障害者の取調べの録画の努力義務及び被後見人の後見人からの申出がある場合の録画の義務(第198条の2第4項関係)
捜査機関は、1及び2に定める場合のほか、知的障害により意思疎通を図ることに支障があり、又は取調べを行う者に迎合し、若しくは誘導されやすいと認める被疑者の取調べに際しては、災害によりやむを得ない場合を除き、取調べの状況の全てについて、録画するよう努めなければならないものとし、逮捕・勾留されている被疑者が被後見人であり、その後見人から申出があった場合には、災害によりやむを得ない場合及び被疑者が弁護人の同意を得て拒否した場合を除き、当該申出に係る部分の状況について、録画しなければならないものすること。

三 取調べ及び弁解の機会の状況を録画した記録媒体の取扱い等
1 被疑者の取調べ及び弁解の機会の状況を録画する場合においては、同時に、同一の方法により二以上の記録媒体に記録し、当該記録媒体の一については、取調べを終了した後、速やかに、被疑者の面前において封印をしなければならないものとすること。
2 被疑者又はその弁護人は、被疑者の取調べの状況を録画した記録媒体(1により封印をした記録媒体以外のものに限る。)を閲覧し、若しくは聴取し、又はその複製を作成することができるものとすること。
3 被疑者等は、2の複製等を自己の防御のために用いることができるものとし、当該複製等の取扱いについて、罰則を含め必要な規定を置くものとすること。
(第198条の2第5項から第13項まで、第203条第6項、第204条第5項、第205条
第5項関係)

四 取調べ及び弁解の機会の状況について必要な録音・録画が行われていない場合の証拠能力の否定
1 検察官認知・直受事件、被疑者の申出がある場合等に録画を行っていなかった場合の供述調書の証拠能力の否定(第322条第2項及び第4項関係)
被告人が逮捕・勾留されている場合に行われた取調べ及び弁解の機会における供述を録取した書面で、被告人に不利益な事実の承認を内容とするものは、第一の二1(1)、2又は3による録画義務の違反があったとき又は録画した場合に第一の三1の違反があったときは、これを証拠とすることができないものとすること。
2 裁判員裁判対象事件について録画を行っていなかった場合の供述調書の証拠能力の否定(第322条第3項関係)
裁判員裁判対象事件については、被告人が公訴事実と同一性が認められる被疑事実について逮捕・勾留されている間に行われた取調べ及び弁解の録取の機会(後の刑事手続において裁判員裁判対象事件となることの予見ができなかったことが特にやむを得ないと認められる時期に行われたものを除く。)における供述を録取した書面で被告人に不利益な事実の承認を内容とするものは、その間の取調べ及び弁解の機会のうちに録画していないものがあるとき又は録画した場合に第一の三1の違反があったときは、これを証拠とすることができないものとすること。

第二 取調べを受ける者自身による取調べの状況の録音
一 身柄拘束をされていない被疑者(第198条の3関係)
1 在宅の被疑者の取調べであって、捜査機関が取調べの状況を録画しないものに際しては、被疑者は、取調べの状況について、自己の手段により録音することができるものとし、捜査機関は、被疑者に対し、あらかじめ、その旨を告げなければならないものとすること。
2 取調べを受ける在宅の被疑者は、自己の手段により録音する場合には、その旨を明らかにするものとすること。
3 録音を行った被疑者又はその弁護人等は、被疑者本人又はその取調べに係る事件若しくはこれと密接に関連する事件の関係人の防御、これらの事件に関連する手続、国家賠償訴訟等に関連して被疑者、関係人の権利を擁護し、又は実現するための正当な使用をする目的で用いることができるものとし、当該録音の取扱いについて、必要な規定を置くものとすること。
二 参考人(第223条の2関係)
参考人についても、一と同様とすること。

第三 施行期日等
一 施行期日
この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。(附則第1条関係)
二 特別司法警察職員の行う取調べへの不適用
この法律は、当分の間、特別司法警察職員(海上保安官、麻薬取締官等)が行う取調べについては適用しないものとすること。(附則第3条関係)
三 その他
経過措置その他所要の規定を整備すること。

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