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   特別安全保障秘密の適正な管理に関する法律案要綱


第一 総則
 一 目的(第一条関係)
   この法律は、国際情勢の複雑化に伴い我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される中で、外国の政府又は国際機関と情報を共有する観点から外交又は国際的なテロリズムの防止に関する情報のうち秘匿することが必要かつ不可欠であるものについて、これを適確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが重要であることに鑑み、国の保有する情報は本来国民のものであるとの国民主権の理念にのっとり国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由を十分に尊重しつつ、恣意的な情報の秘匿が行われないよう、当該情報の適正な管理に関し、特別安全保障秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的とすること。
 二 定義(第二条関係)
   この法律において「行政機関」とは、法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に置かれる機関、内閣府、宮内庁及び内閣府の外局、国の行政機関として置かれる機関、これらの施設等機関及び特別の機関で警察庁その他政令で定めるもの並びに会計検査院をいうものとすること。
第二 特別安全保障秘密の指定等
 一 特別安全保障秘密の指定(第三条関係)
  1 行政機関の長は、当該行政機関の所掌事務に係る別表に掲げる事項に関する情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障及び外国の政府又は国際機関との情報の共有に著しい支障を与えるおそれがあるために秘匿することが必要かつ不可欠であるもの(自衛隊法第九十六条の二第一項に規定する防衛秘密及び日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法第一条第三項に規定する特別防衛秘密に該当するものを除く。)に限り、これを特別安全保障秘密として指定するものとすること。この場合においては、その漏えいが我が国の安全保障及び外国の政府又は国際機関との情報の共有に著しい支障を与えるおそれについて説明する責務が全うされるようにするものとすること。
  2 1の規定にかかわらず、行政機関の長は、違法行為、行政機関の不作為若しくは過失若しくは既に公になっている情報を隠蔽し、若しくは公正な競争を阻害する目的で、又は我が国及び国民の安全の確保に必要と認められない情報について、1による指定(以下単に「指定」という。)をしてはならないものとすること。
  3 指定に係る特別安全保障秘密の範囲を明らかにするため表示等の措置を講ずるものとすること。
 二 指定の有効期間及び解除(第四条関係)
  1 行政機関の長は、指定をするときは、当該指定の日から起算して五年を超えない範囲内においてその有効期間を定めるものとすること。
  2 行政機関の長は、指定の有効期間が満了する時において、一の1に規定する要件を満たすときは、五年を超えない範囲内においてその有効期間を延長するものとすること。
  3 指定の有効期間は、2の規定により延長した有効期間を通じて三十年を超えることができないものとすること。
  4 3の規定にかかわらず、行政機関の長は、政府の有するその諸活動を国民に説明する責務を全うする観点に立っても、なお指定に係る情報を公にすることにより、我が国の安全保障及び外国の政府又は国際機関との情報の共有に著しい支障を与えるおそれがあることが明らかであることについて、その理由を示して、情報適正管理委員会の承認を得た場合(行政機関が会計検査院であるときを除く。)は、通じて三十年を超えて指定の有効期間を延長することができるものとすること。この場合において、当該行政機関の長は、当該指定に係る特別安全保障秘密の保護に関し必要なものとして政令で定める措置を講じた上で、情報適正管理委員会に当該特別安全保障秘密を提供することができるものとすること。
  5 行政機関の長は、指定をした情報が一の1に規定する要件(公になっていないものであることを除く。三の1において同じ。)を欠くに至ったとき又は一の2の規定により指定をしてはならないものであることが明らかとなったときは、有効期間内であっても、政令で定めるところにより、速やかにその指定を解除するものとすること。
 三 指定の解除に係る調査(第五条関係)
  1 特別安全保障秘密の取扱いの業務を行う者は、指定に係る情報が一の1に規定する要件を欠くに至ったと思料するとき又は一の2の規定により指定をしてはならないものであると思料するときは、情報適正管理委員会に対して、その旨を通知しなければならないものとすること。
  2 情報適正管理委員会は、1の通知を受けた場合において、必要があると認めるときは、当該通知に係る指定の適否について調査を行うものとすること。
  3 情報適正管理委員会は、2の調査のために必要があると認めるときは、1の通知に係る指定をした行政機関の長に対し、当該指定に係る特別安全保障秘密の提示を求めることができるものとすること。この場合においては、何人も、情報適正管理委員会に対し、その提示された特別安全保障秘密の開示を求めることができないものとすること。
  4 行政機関の長は、情報適正管理委員会から3前段の規定による求めがあったときは、これを拒んではならないものとすること。
  5 3に定めるもののほか、情報適正管理委員会は、2の調査に関し、行政機関の長に報告又は資料の提出を求めることができるものとすること。
  6 情報適正管理委員会は、2の調査の結果指定を解除する必要があると認めるときは、行政機関の長に対し、その旨を勧告するものとすること。
  7 情報適正管理委員会は、6の規定による勧告をしたときは、当該勧告を受けた行政機関の長に対し、当該勧告に基づき講じた措置について報告を求めることができるものとすること。
  8 行政機関の長は、1の通知をしたことを理由として、当該通知をした者に対して、免職その他不利益な取扱いをしてはならないものとすること。
 四 特別安全保障秘密の保護措置(第六条関係)
   行政機関の長、警視総監若しくは道府県警察本部長(以下「警察本部長」という。)又は物件の製造若しくは役務の提供を業とする者で、特別安全保障秘密の保護のために必要な施設設備を設置していること等の基準に適合するもの(以下「適合事業者」という。)は、特別安全保障秘密の取扱いの業務を行わせる職員等の範囲を定めることその他の特別安全保障秘密の保護に関し必要な措置を講ずるものとすること。
第三 特別安全保障秘密の提供
 一 我が国の安全保障上の必要による特別安全保障秘密の提供(第七条から第十条まで関係)
  1 特別安全保障秘密を保有する行政機関の長は、他の行政機関が我が国の安全保障に関する事務を遂行するために当該特別安全保障秘密を利用する必要があると認めたときは、当該他の行政機関に当該特別安全保障秘密を提供することができるものとすること。
  2 警察庁長官は、警察庁が保有する特別安全保障秘密について、その所掌事務のうち安全保障に関するものを遂行するために都道府県警察にこれを利用させる必要があると認めたときは、当該都道府県警察に当該特別安全保障秘密を提供することができるものとすること。
  3 特別安全保障秘密を保有する行政機関の長は、その所掌事務のうち安全保障に関するものを遂行するために、適合事業者に当該特別安全保障秘密を利用させる特段の必要があると認めたときは、当該適合事業者との契約に基づき、当該適合事業者に当該特別安全保障秘密を提供することができるものとすること。
  4 特別安全保障秘密を保有する行政機関の長は、その所掌事務のうち安全保障に関するものを遂行するために必要があると認めたときは、外国の政府又は国際機関であって、この法律の規定により行政機関が当該特別安全保障秘密を保護するために講ずることとされる措置に相当する措置を講じているものに当該特別安全保障秘密を提供することができるものとすること。
 二 その他公益上の必要による特別安全保障秘密の提供(第十一条関係)
  1 第二の二の4後段、第二の三の3前段及び第三の一に規定するもののほか、行政機関の長は、次に掲げる場合に限り、特別安全保障秘密を提供することができるものとすること。
   (1) 特別安全保障秘密の提供を受ける者が次に掲げる業務において当該特別安全保障秘密を利用する場合であって、当該特別安全保障秘密を保護するために必要な措置を講じ、かつ、我が国の安全保障及び外国の政府又は国際機関との情報の共有に著しい支障を与えるおそれがないと認めたとき。
    イ 刑事事件の捜査又は公訴の維持であって、刑事訴訟法第三百十六条の二十七第一項の規定により裁判所に提示する場合のほか、当該捜査又は公訴の維持に必要な業務に従事する者以外の者に当該特別安全保障秘密を提供することがないと認められるもの
    ロ 公益上特に必要があると認められるイに準ずる業務
   (2) 民事訴訟法第二百二十三条第六項の規定により裁判所に提示する場合
   (3) 行政機関の保有する情報の公開に関する法律第二十四条第一項の規定により裁判所に提示する場合
   (4) 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律第二十三条第一項の規定により裁判所に提示する場合
   (5) 情報公開・個人情報保護審査会設置法第九条第一項の規定により情報公開・個人情報保護審査会に提示する場合
   (6) 会計検査院法第十九条の四において読み替えて準用する情報公開・個人情報保護審査会設置法第九条第一項の規定により会計検査院情報公開・個人情報保護審査会に提示する場合
  2 警察本部長又は適合事業者は、一定の場合に限り、特別安全保障秘密を提供することができるものとすること。
第四 特別安全保障秘密の取扱者の制限(第十二条関係)
   特別安全保障秘密の取扱いの業務は、行政機関の長又は警察本部長が直近に実施した第五の一の1の適格性確認(適格性確認の結果の通知があった日から五年を経過していないものに限る。)において特別安全保障秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた者でなければ、行ってはならないものとすること。ただし、次に掲げる者については、適格性確認を受けることを要しないものとすること。
 一 行政機関の長
 二 国務大臣(一に掲げる者を除く。)
 三 内閣官房副長官
 四 内閣総理大臣補佐官
 五 副大臣
 六 大臣政務官
 七 一から六までに掲げるもののほか、職務の特性その他の事情を勘案し、適格性確認を受けることなく特別安全保障秘密の取扱いの業務を行うことができるものとして政令で定める者
第五 適格性確認
 一 行政機関の長による適格性確認の実施(第十三条関係)
  1 行政機関の長は、当該行政機関の職員又は当該行政機関との契約に基づき特別安全保障秘密を保有し、若しくは特別安全保障秘密の提供を受ける適合事業者の従業者について、その者が特別安全保障秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないことについての確認(以下「適格性確認」という。)を実施するものとすること。
  2 適格性確認は、適格性確認の対象となる者(以下「確認対象者」という。)について、次に掲げる事項についての調査を行い、その結果に基づき実施するものとすること。
   (1) 特定有害活動及びテロリズムとの関係に関する事項(確認対象者の家族及び同居人の氏名、生年月日、国籍及び住所を含む。)
   (2) 犯罪及び懲戒の経歴に関する事項
   (3) 情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項
   (4) 薬物の濫用及び影響に関する事項
   (5) 精神疾患に関する事項
   (6) 飲酒についての節度に関する事項
   (7) 信用状態その他の経済的な状況に関する事項
  3 適格性確認は、あらかじめ、2のからまでに掲げる事項について調査を行う旨等を確認対象者に対し告知した上で、その同意を得て実施するものとすること。
  4 行政機関の長は、2の調査を行うため必要な範囲内において、当該行政機関の職員に確認対象者若しくは確認対象者の知人その他の関係者に質問させ、若しくは確認対象者に対し資料の提出を求めさせ、又は公務所若しくは公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができるものとすること。
 二 適格性確認の結果等の通知(第十四条関係)
  1 行政機関の長は、適格性確認を実施したときは、その結果を確認対象者に対し通知するものとすること。
  2 行政機関の長は、確認対象者に対し特別安全保障秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められなかった旨を通知するときは、適格性確認の円滑な実施の確保を妨げない範囲内において、その理由を通知するものとすること。
 三 情報適正管理委員会に対する苦情の申出等(第十五条関係)
  1 確認対象者は、二の1の規定により通知された適格性確認の結果その他当該確認対象者について実施された適格性確認について、書面で、情報適正管理委員会に対し、苦情の申出をすることができるものとすること。
  2 情報適正管理委員会は、1の苦情の申出を受けたときは、当該申出に係る行政機関の長に対して、申出があった旨を通知するものとすること。
  3 行政機関の長は、2の通知を受けたときは、これを誠実に処理し、処理の結果を苦情の申出をした者に通知するとともに、情報適正管理委員会に報告するものとすること。
  4 確認対象者は、1の苦情の申出をしたことを理由として、不利益な取扱いを受けないものとすること。
 四 警察本部長による適格性確認の実施等(第十六条関係)
   警察本部長による適格性確認の実施に関し所要の規定を整備するものとすること。
 五 適格性確認に関する個人情報の利用及び提供の制限(第十七条関係)
   行政機関の長及び警察本部長は、特別安全保障秘密の保護以外の目的のために、確認対象者が同意をしなかったこと、確認対象者についての適格性確認の結果その他適格性確認の実施に当たって取得する個人情報を自ら利用し、又は提供してはならないものとすること。ただし、適格性確認の実施によって、当該個人情報に係る特定の個人が国家公務員法第三十八条各号等に該当する疑いが生じたときは、この限りでないものとすること。
 六 権限又は事務の委任(第十八条関係)
   行政機関の長は、第五に定める権限又は事務を当該行政機関の職員に委任することができるものとすること。
第六 雑則
 一 特別安全保障秘密の指定等の運用基準(第十九条関係)
   情報適正管理委員会は、特別安全保障秘密の指定及びその解除並びに適格性確認の実施に関し、統一的な運用を図るための基準を定めるものとすること。
 二 関係行政機関の協力(第二十条関係)
   関係行政機関の長は、特別安全保障秘密の指定、適格性確認の実施その他この法律の規定により講ずることとされる措置に関し、外国の政府又は国際機関と情報を共有する観点から秘匿することが必要かつ不可欠である情報の漏えいを防止するため、相互に協力するものとすること。
 三 国会への報告(第二十一条関係)
   政府は、毎年、特別安全保障秘密の指定及びその解除並びに適格性確認の実施の状況を国会に報告するとともに、公表しなければならないものとすること。
 四 政令への委任(第二十二条関係)
   この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定めるものとすること。
第七 罰則(第二十三条及び第二十四条関係)
 一 次に掲げる者に対する所要の罰則を設けるものとすること。
  1 特別安全保障秘密の取扱いの業務に従事する者であって、その業務により知得した特別安全保障秘密を漏らしたもの
  2 第二の二の4後段、第二の三の3前段、第三の一の4又は第三の二により提供された特定秘密について、当該提供の目的である業務により当該特別安全保障秘密を知得した者であって、これを漏らしたもの
  3 1に規定する行為の遂行を企て、命じ、故意にこれを容認し、唆し又はその幇助をした者
 二 その他所要の規定を整備するものとすること。
第八 附則(附則第一条から附則第六条まで関係)
 一 施行期日
   この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。ただし、第三(二の1の及びに係る部分に限る。)の規定は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律等の一部を改正する法律の施行の日から施行する。
 二 内閣法の一部改正
   特別安全保障秘密の保護に関し、施策の統一を図るために必要となる企画及び立案並びに総合調整に関する事務を内閣情報官に掌理させるため、内閣法の一部を改正するものとすること。
 三 自衛隊法の一部改正
   防衛秘密の取扱者の制限及び適格性確認について第四及び第五の規定を準用するため、自衛隊法の一部を改正するものとすること。
 四 日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部改正
   特別防衛秘密の取扱者の制限及び適格性確認について第四及び第五の規定を準用するため、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正するものとすること。
 五 経過措置
   所要の経過措置を定めるものとすること。

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