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   幹部国家公務員法案要綱


第一 総則
一 目的
この法律は、行政の運営を担う国家公務員のうち幹部職員について適用すべき任用、分限等の各般の基準を定めることを目的とするものとすること。
二 定義
1 この法律において、次に掲げる用語の意義は、それぞれ次に定めるところによるものとすること。
イ 幹部職員 内閣府設置法第五十条及び国家行政組織法第六条に規定する長官、同法第十八条第一項に規定する事務次官若しくは同法第二十一条第一項に規定する局長若しくは部長の官職(自衛官以外の隊員が占める職を除く。以下同じ。)又はこれらの官職に準ずる官職であって政令で定めるもの(以下「幹部職」という。)を占める職員をいうものとすること。
ロ 採用 幹部職員以外の者を幹部職に任命することをいうものとすること。
ハ 昇任 幹部職員をその幹部職員が現に任命されている幹部職より上位の職制上の段階に属する幹部職又は一般職(国家公務員法第二条に規定する一般職をいう。以下同じ。)に属する官職であってこれに相当するものとして幹部職の官職ごとに政令で定めるものに任命することをいうものとすること。
ニ 降任 幹部職員をその幹部職員が現に任命されている幹部職より下位の職制上の段階に属する幹部職又は一般職に属する官職であってその幹部職員が現に任命されている幹部職より下位の職制上の段階に属するものとして幹部職の官職ごとに政令で定めるものに任命することをいうものとすること。
ホ 転任 幹部職員をその幹部職員が現に任命されている幹部職以外の幹部職又は一般職に属する官職に任命することであってハ及びニに定めるものに該当しないものをいうものとすること。
ヘ 標準職務遂行能力 職制上の段階の標準的な官職の職務を遂行する上で発揮することが求められる能力として内閣総理大臣が定めるものをいうものとすること。
2 1のヘの標準的な官職は、部長、局長その他の幹部職に属する官職とし、職制上の段階及び職務の種類に応じ、政令で定めるものとすること。
三 人事管理の原則
1 幹部職員の任用、給与その他の人事管理は、内閣による行政の遂行を最大限に効果的に行うことを目的として、人事評価(任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、幹部職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価をいう。以下同じ。)その他の評価を基礎としつつ、幹部職員と内閣との一体性の確保にも配慮して、弾力的に行われなければならないものとすること。
2 幹部職員の任用、給与その他の人事管理は、幹部職員の採用年次(国家公務員法第二十七条の二の職員の採用年次をいう。)及び合格した採用試験の種類(同条の採用試験の種類をいう。)にとらわれてはならないものとすること。
第二 任用等
一 任命権者
1 幹部職の任命権は、法律に別段の定めのある場合を除いては、内閣、各大臣(内閣総理大臣及び各省大臣をいう。1において同じ。)、会計検査院長及び人事院総裁並びに宮内庁長官及び各外局の長に属するものとすること。これらの機関の長の有する任命権は、その部内の機関に属する官職に限られ、内閣の有する任命権は、その直属する機関(内閣府を除く。)に属する官職に限られるものとすること。ただし、外局の長(国家行政組織法第七条第五項に規定する実施庁以外の庁にあっては、外局の幹部職)に対する任命権は、各大臣に属するものとすること。
2 内閣は、内閣が任命権を有する幹部職の任命権を、内閣総理大臣又は国務大臣に限り委任することができるものとすること。この委任は、その効力が発生する日の前に、書面をもって、これを内閣総理大臣に提示しなければならないものとすること。
3 この法律及び政令に規定する要件を備えない者は、これを幹部職に採用し、昇任させ若しくは転任させてはならず、又はいかなる幹部職にも配置してはならないものとすること。
二 適格性審査及び幹部候補者名簿
1 内閣総理大臣は、次に掲げる者について、政令で定めるところにより、幹部職に属する官職に係る標準職務遂行能力を有するか否かを判定するための審査(以下「適格性審査」という。)を行うものとすること。
イ 幹部職員
ロ 幹部職員以外の者であって、幹部職の職責を担うにふさわしい能力を有すると見込まれる者として任命権者が内閣総理大臣に推薦した者
ハ 五による幹部職員の公募(幹部職の職務の具体的な内容並びに当該幹部職に求められる能力及び経験を公示して、当該幹部職の候補者を募集することをいう。以下同じ。)に応募した者
ニ 適格性審査を受けることを内閣総理大臣に申し出た者であって、幹部職の職務の遂行に欠くことのできない最小限度の要件として政令で定めるものを満たす者
2 内閣総理大臣は、適格性審査に合格した者について、政令で定めるところにより、氏名その他政令で定める事項を記載した名簿(以下「幹部候補者名簿」という。)を作成するものとすること。
3 内閣総理大臣は、任命権者の求めがある場合には、政令で定めるところにより、当該任命権者に対し、幹部候補者名簿を提示するものとすること。
4 内閣総理大臣は、政令で定めるところにより、定期的に、及び任命権者の求めがある場合その他必要があると認める場合には随時、適格性審査を行い、幹部候補者名簿を更新するものとすること。
5 内閣総理大臣は、1から4までの権限を内閣官房長官に委任するものとすること。
三 幹部候補者名簿に記載されている者の中からの任用
1 幹部職員の採用は、任命権者が、幹部候補者名簿に記載されている者であって、任命しようとする幹部職についての適性を有すると認められる者の中から、幹部職員と内閣との一体性の確保にも配慮して、行うものとすること。
2 幹部職員の昇任及び転任であって、幹部職への任命に該当するものは、任命権者が、幹部候補者名簿に記載されている者であって、当該任命しようとする幹部職についての適性を有すると認められる者の中から、幹部職員と内閣との一体性の確保にも配慮して、行うものとすること。
3 任命権者は、幹部職員の降任であって、幹部職への任命に該当するものを行う場合には、幹部職員と内閣との一体性の確保にも配慮して、当該任命しようとする幹部職についての適性を有すると認められる幹部職に任命するものとすること。
四 内閣総理大臣及び内閣官房長官との協議に基づく任用等
1 任命権者は、幹部職員の採用並びに昇任、転任及び降任であって幹部職への任命に該当するもの、幹部職員の一般職に属する官職への昇任、転任及び降任並びに幹部職員の退職(政令で定めるものに限る。2において同じ。)及び免職を行う場合には、政令で定めるところにより、あらかじめ内閣総理大臣及び内閣官房長官に協議した上で、当該協議に基づいて行うものとすること。
2 内閣総理大臣又は内閣官房長官は、幹部職員について適切な人事管理を確保するために必要があると認めるときは、任命権者に対し、幹部職員の昇任、転任、降任、退職又は免職(2において「昇任等」という。)について協議を求めることができるものとすること。この場合において、協議が調ったときは、任命権者は、当該協議に基づいて昇任等を行うものとすること。
五 幹部職員の公募
1 幹部職員の公募は、内閣総理大臣が、2の通知を受けたとき又は3の協議が調ったときに、当該通知又は当該協議に係る幹部職について、政令で定めるところにより行うものとすること。
2 任命権者は、幹部職に欠員を生じた場合又は欠員を生ずると相当程度見込まれる場合において、当該幹部職について幹部職員の公募を行うことが適当であると認めるときは、内閣総理大臣に対し、その旨を通知するものとすること。
3 内閣総理大臣は、2に定めるもののほか、幹部職に欠員を生じた場合又は欠員を生ずると相当程度見込まれる場合において、当該幹部職について幹部職員の公募を行うことが適当であると認めるときは、任命権者と協議することができるものとすること。
六 公募を行った幹部職への任命
1 幹部職員及び一般職に属する職員(六において「幹部職員等」という。)以外の者のみを募集の対象とする幹部職員の公募を行った幹部職への任命は、当該幹部職員の公募に応募した者の中から三の1に基づき行うものとすること。ただし、当該幹部職員の公募に応募した者の中に幹部候補者名簿に記載されるべき者がいないとき又は三の1の適性を有すると認められる者がいないときは、当該幹部職員の公募に応募した者以外の者の中から三に基づき行うものとすること。
2 幹部職員等のみを募集の対象とする幹部職員の公募を行った幹部職への任命は、当該幹部職員の公募に応募した者の中から三に基づき行うものとすること。ただし、当該幹部職員の公募に応募した者の中に幹部候補者名簿に記載されるべき者がいないとき又は三の適性を有すると認められる者がいないときは、当該幹部職員の公募に応募した者以外の者の中から三に基づき行うものとすること。
3 幹部職員等以外の者及び幹部職員等である者の双方を募集の対象とする幹部職員の公募を行った幹部職への任命は、三にかかわらず、任命権者が、幹部候補者名簿に記載されている者であって、当該幹部職員の公募に応募した者であり、かつ、幹部職員等以外の者及び幹部職員等である者に対する共通の選考(競争試験以外の能力の実証に基づく試験をいう。4において同じ。)により、当該任命しようとする幹部職についての適性を有すると認められる者の中から、幹部職員と内閣との一体性の確保にも配慮して、行うものとすること。ただし、当該幹部職員の公募に応募した者の中に幹部候補者名簿に記載されるべき者がいないとき又は当該適性を有すると認められる者がいないときは、当該幹部職員の公募に応募した者以外の者の中から三に基づき行うものとすること。
4 3の共通の選考は、幹部職員の公募に応募した者の専門性並びに多様な経験及び実績を適切に評価することができるようなものでなければならないものとすること。
七 幹部職の職務明細書
1 任命権者は、政令で定めるところにより、幹部職に属する官職について職務明細書(採用、昇任、転任及び降任(第三の三の特別降任を除く。第三の二において同じ。)の基礎並びに人事評価の基礎となるべき資料として、職務の具体的な内容並びに当該官職に求められる能力及び経験が記載された文書をいう。2において同じ。)を作成しなければならないものとすること。
2 1の場合において、任命権者は、あらかじめ、職務明細書の記載の内容につき、内閣総理大臣に協議しなければならないものとすること。
八 人事に関する情報の管理
1 内閣府、各省その他の機関は、政令で定めるところにより、当該機関の幹部職員の人事記録の写しを、内閣総理大臣に送付しなければならないものとすること。
2 内閣総理大臣は、1により送付された人事記録の写しに関して必要があると認めるときは、内閣府、各省その他の機関に対し、幹部職員の人事に関する情報の提供を求めることができるものとすること。
3 内閣総理大臣は、1により送付された人事記録の写しに記載されている事項及び2により提供された情報に基づき、政令で定めるところにより、幹部職員の人事に関する情報を管理するための台帳を作成し、これを保管するものとすること。
九 特殊性を有する幹部職の特例
人事院、検察庁、会計検査院、警察庁、外局として置かれる委員会その他の行政機関の幹部職について、その職務の特殊性に配慮し、人事の一元管理に関する規定の適用除外その他所要の規定の整備を行うものとすること。
第三 分限等
一 身分保障
1 幹部職員は、法律又は政令に定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、休職され、又は免職されることはないものとすること。
2 幹部職員は、内閣による行政の遂行を最大限に効果的に行う上で必要と判断される場合には、政令で定める基準により、降給されるものとすること。
二 本人の意に反する降任及び免職の場合
任命権者は、幹部職員について、次のいずれかに該当する場合は、政令で定めるところにより、その意に反して、降任又は免職を行うことができるものとすること。
イ 人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績が良くない場合(現に就いている官職に係る適格性審査に合格しなかった場合を含む。)
ロ 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
ハ その他その幹部職に必要な適格性を欠く場合
ニ 官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合
三 内閣による行政の遂行を最大限に効果的に行うための特別降任
任命権者は、幹部職員について、二のイからニまでのいずれにも該当しない場合においても、内閣による行政の遂行を最大限に効果的に行う上で必要と判断するときは、政令で定めるところにより、その意に反して、特別降任(降任のうち、内閣による行政の遂行を最大限に効果的に行うため、幹部職員をその幹部職員が現に任命されている幹部職より下位の職制上の段階に属する幹部職に任命すること又は管理職(国家行政組織法第二十一条第一項に規定する課長若しくは室長の官職又はこれらの官職に準ずる官職であって政令で定めるものをいう。)のうち職制上の段階が最上位の段階のものとして政令で定めるものに任命することをいう。)を行うことができるものとすること。
四 本人の意に反する休職の場合
任命権者は、幹部職員について、次のいずれかに該当する場合又は政令で定めるその他の場合においては、その意に反して、休職を行うことができるものとすること。
イ 心身の故障のため、長期の休養を要する場合
ロ 刑事事件に関し起訴された場合
第四 国家公務員法の準用
幹部職及び幹部職員について、国家公務員法の所要の規定を準用するものとすること。
第五 附則
一 施行期日
この法律は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。ただし、三及び六は、公布の日から施行するものとすること。
二 幹部職員の給与及び退職手当
1 政府は、幹部職員の給与及び退職手当について、この法律の施行後六月以内に、次の原則に従って、必要な法制上の措置を講ずるものとすること。
イ 任命権者が、行政の遂行を最大限に効果的に行う観点から、弾力的に運用することのできる制度とすること。
ロ 検討に際し、民間における給与及び退職手当の制度を参考とすること。
2 幹部職員の給与及び退職手当については、別に法律で定める日までの間、従前の例によるものとすること。
三 長官等の職制上の段階の整理等
1 警察庁長官、金融庁長官、消費者庁長官その他国家行政組織法第六条に規定する長官その他の従来同法第二十一条第一項に規定する局長(1において「局長」という。)より上位の職制上の段階に属するものと扱われてきた官職については、局長と同一の職制上の段階に属するものに改めるものとすること。
2 政府は、この法律の施行後六月以内に、1の措置を含め、事務次官の廃止を含む幹部職の再整理を行った上で、幹部職員の給与体系に係る規定の整備その他の法制上の措置を講ずるものとすること。
四 経過措置
1 この法律の施行の際現に一般職に属する職員であって幹部職(内閣の直属機関、人事院、警察庁、検察庁及び会計検査院の幹部職(当該幹部職が内閣の直属機関に属するものであって、その任命権者が内閣の委任を受けて任命権を行う者であるものを除く。)を除く。)を占めるものは、別に辞令を用いないで、この法律の施行の日に第二の三の1により幹部職員として採用されたものとみなして、この法律の規定を適用するものとすること。
2 その他所要の経過措置を定めるものとすること。
五 国家公務員法の一部改正
幹部職員を特別職とするほか、所要の規定の整備を行うものとすること。
六 関係法律の整備
五のほか、この法律の施行に伴う関係法律の整備については、別に法律で定めるものとすること。

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