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   義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案要綱


第一 総則
 一 目的
   この法律は、教育基本法及び児童の権利に関する条約等の教育に関する条約の趣旨にのっとり、教育機会の確保等に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、基本指針の策定その他の必要な事項を定めることにより、教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進することを目的とすること。                    (第一条関係)
 二 定義
   この法律において、次に掲げる用語の意義は、それぞれに定めるところによること。
  1 学校 学校教育法第一条に規定する小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部若しくは中学部をいうこと。
  2 児童生徒 学校教育法第十八条に規定する学齢児童又は学齢生徒をいうこと。
  3 不登校児童生徒 相当の期間学校を欠席する児童生徒であって、学校における集団の生活に関する心理的な負担その他の事由のために就学が困難である状況として文部科学大臣が定める状況にあると認められるものをいうこと。
  4 教育機会の確保等 不登校児童生徒に対する教育の機会の確保、夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供その他の義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保及び当該教育を十分に受けていない者に対する支援をいうこと。    (第二条関係)
 三 基本理念
   教育機会の確保等に関する施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならないこと。
  1 全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、学校における環境の確保が図られるようにすること。
  2 不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援が行われるようにすること。
  3 不登校児童生徒が安心して教育を十分に受けられるよう、学校における環境の整備が図られるようにすること。
  4 義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の意思を十分に尊重しつつ、その年齢又は国籍その他の置かれている事情にかかわりなく、その能力に応じた教育を受ける機会が確保されるようにするとともに、その者が、その教育を通じて、社会において自立的に生きる基礎を培い、豊かな人生を送ることができるよう、その教育水準の維持向上が図られるようにすること。
  5 国、地方公共団体、教育機会の確保等に関する活動を行う民間の団体その他の関係者の相互の密接な連携の下に行われるようにすること。                    (第三条関係)
 四 国の責務
   国は、三の基本理念にのっとり、教育機会の確保等に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有すること。                               (第四条関係)
 五 地方公共団体の責務
   地方公共団体は、三の基本理念にのっとり、教育機会の確保等に関する施策について、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有すること。    (第五条関係)
 六 財政上の措置等
   国及び地方公共団体は、教育機会の確保等に関する施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとすること。                    (第六条関係)
第二 基本指針
 一 文部科学大臣は、教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めるものとすること。               (第七条第一項関係)
 二 基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとすること。
  1 教育機会の確保等に関する基本的事項
  2 不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等に関する事項
  3 夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供等に関する事項
  4 その他教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するために必要な事項
                                      (第七条第二項関係)
 三 文部科学大臣は、基本指針を作成し、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、地方公共団体及び教育機会の確保等に関する活動を行う民間の団体その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとすること。                     (第七条第三項関係)
 四 文部科学大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならないこと。                              (第七条第四項関係)
第三 不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等
 一 学校における取組への支援
   国及び地方公共団体は、全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、児童生徒と学校の教職員との信頼関係及び児童生徒相互の良好な関係の構築を図るための取組、児童生徒の置かれている環境その他の事情及びその意思を把握するための取組、学校生活上の困難を有する個々の児童生徒の状況に応じた支援その他の学校における取組を支援するために必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。                           (第八条関係)
 二 支援の状況等に係る情報の共有の促進等
   国及び地方公共団体は、不登校児童生徒に対する適切な支援が組織的かつ継続的に行われることとなるよう、不登校児童生徒の状況及び不登校児童生徒に対する支援の状況に係る情報を学校の教職員、心理、福祉等に関する専門的知識を有する者その他の関係者間で共有することを促進するために必要な措置その他の措置を講ずるものとすること。                    (第九条関係)
 三 特別の教育課程に基づく教育を行う学校の整備等
   国及び地方公共団体は、不登校児童生徒に対しその実態に配慮して特別に編成された教育課程に基づく教育を行う学校の整備及び当該教育を行う学校における教育の充実のために必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。                            (第十条関係)
 四 学習支援を行う教育施設の整備等
   国及び地方公共団体は、不登校児童生徒の学習活動に対する支援を行う公立の教育施設の整備及び当該支援を行う公立の教育施設における教育の充実のために必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。                                    (第十一条関係)
 五 学校以外の場における学習活動の状況等の継続的な把握
   国及び地方公共団体は、不登校児童生徒が学校以外の場において行う学習活動の状況、不登校児童生徒の心身の状況その他の不登校児童生徒の状況を継続的に把握するために必要な措置を講ずるものとすること。                                  (第十二条関係)
 六 学校以外の場における学習活動等を行う不登校児童生徒に対する支援
   国及び地方公共団体は、不登校児童生徒が学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ、当該不登校児童生徒の状況に応じた学習活動が行われることとなるよう、当該不登校児童生徒及びその保護者に対する必要な情報の提供、助言その他の支援を行うために必要な措置を講ずるものとすること。           (第十三条関係)
第四 夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供等
 一 就学の機会の提供等
   地方公共団体は、学齢期を経過した者(その者の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから満十五歳に達した日の属する学年の終わりまでの期間を経過した者をいう。以下同じ。)であって学校における就学の機会が提供されなかったもののうちにその機会の提供を希望する者が多く存在することを踏まえ、夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供その他の必要な措置を講ずるものとすること。                     (第十四条関係)
 二 協議会
  1 都道府県及び当該都道府県の区域内の市町村は、一に規定する就学の機会の提供その他の必要な措置に係る事務についての当該都道府県及び当該市町村の役割分担に関する事項の協議並びに当該事務の実施に係る連絡調整を行うための協議会(以下「協議会」という。)を組織することができること。
                                     (第十五条第一項関係)
  2 協議会は、次に掲げる者をもって構成すること。
    都道府県の知事及び教育委員会
    当該都道府県の区域内の市町村の長及び教育委員会
    学齢期を経過した者であって学校における就学の機会が提供されなかったもののうちその機会の提供を希望する者に対する支援活動を行う民間の団体その他の当該都道府県及び当該市町村が必要と認める者                            (第十五条第二項関係)
  3 協議会において協議が調った事項については、協議会の構成員は、その協議の結果を尊重しなければならないこと。                          (第十五条第三項関係)
  4 1から3までに定めるもののほか、協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定めること。
                                     (第十五条第四項関係)
第五 教育機会の確保等に関するその他の施策 
 一 調査研究等
   国は、義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の実態の把握に努めるとともに、その者の学習活動に対する支援の方法に関する調査研究並びにこれに関する情報の収集、整理、分析及び提供を行うものとすること。                  (第十六条関係)
 二 国民の理解の増進
   国及び地方公共団体は、広報活動等を通じて、教育機会の確保等に関する国民の理解を深めるよう必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。                 (第十七条関係)
 三 人材の確保等
   国及び地方公共団体は、教育機会の確保等が専門的知識に基づき適切に行われるよう、学校の教職員その他の教育機会の確保等に携わる者の養成及び研修の充実を通じたこれらの者の資質の向上、教育機会の確保等に係る体制等の充実のための学校の教職員の配置、心理、福祉等に関する専門的知識を有する者であって教育相談に応じるものの確保その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。
                                        (第十八条関係)
 四 教材の提供その他の学習の支援
   国及び地方公共団体は、義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者のうち中学校を卒業した者と同等以上の学力を修得することを希望する者に対して、教材の提供(通信の方法によるものを含む。)その他の学習の支援のために必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。
                                        (第十九条関係)
 五 相談体制の整備
   国及び地方公共団体は、義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者及びこれらの者以外の者であって学校生活上の困難を有する児童生徒であるもの並びにこれらの者の家族からの教育及び福祉に関する相談をはじめとする各種の相談に総合的に応ずることができるようにするため、関係省庁相互間その他関係機関、学校及び民間の団体の間の連携の強化その他必要な体制の整備に努めるものとすること。                          (第二十条関係)
第六 施行期日等
 一 施行期日
   この法律は、公布の日から起算して二月を経過した日から施行すること。ただし、第四は、公布の日から施行すること。                            (附則第一項関係)
 二 検討
  1 政府は、速やかに、教育機会の確保等のために必要な経済的支援の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。           (附則第二項関係)
  2 政府は、義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、この法律の施行後三年以内にこの法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づき、教育機会の確保等の在り方の見直しを含め、必要な措置を講ずるものとすること。
                                       (附則第三項関係)

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