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   認知症基本法案要綱


第一 総則
 一 目的
   この法律は、我が国における急速な高齢化の進展に伴い認知症である者(以下「認知症の人」という。)が増加している現状等に鑑み、認知症の予防等を推進しながら、認知症の人が尊厳を保持しつつ社会の一員として尊重される社会の実現を図るため、認知症に関する施策(以下「認知症施策」という。)に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体等の責務を明らかにし、及び認知症施策の推進に関する計画の策定について定めるとともに、認知症施策の基本となる事項を定めること等により、認知症施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とすること。                (第一条関係)
 二 定義
   この法律において「認知症」とは、アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患その他の疾患(三の5において「アルツハイマー病その他の疾患」という。)により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態として政令で定める状態をいうこと。        (第二条関係)
 三 基本理念
   認知症施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならないこと。  (第三条関係)
  1 常に認知症の人の立場に立ち、認知症の人及びその家族の意向の尊重に配慮して行われること。
  2 認知症に関する国民の理解が深められ、認知症の人及びその家族がその居住する地域にかかわらず日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるとともに、認知症の人が地域において尊厳を保持しつつ他の人々と共生することを妨げられないことを旨とすること。
  3 認知症の人の意思決定の支援が適切に行われるとともに、その意向を十分に尊重し、その尊厳を保持しつつ、切れ目なく保健医療サービス、福祉サービスその他のサービスが提供されること。
  4 認知症の人に対する支援のみならず、その家族その他認知症の人と日常生活において密接な関係を有する者(以下「家族等」という。)に対する必要な支援が行われること。
  5 認知症に関する専門的、学際的又は総合的な研究を推進するとともに、認知症及び軽度認知障害(アルツハイマー病その他の疾患により認知機能が低下した状態(認知症を除く。)として政令で定める状態をいう。第三の四及び第三の七の1において同じ。)に係る予防、診断及び治療並びにリハビリテーション及び介護方法その他の事項に関する研究開発等の成果を普及し、活用し、及び発展させること。
  6 教育、地域づくり、雇用、保健、医療、福祉等の関連分野における総合的な取組として行われること。
 四 国の責務
   国は、三の基本理念にのっとり、認知症施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有すること。
                                         (第四条関係)
 五 地方公共団体の責務
   地方公共団体は、三の基本理念にのっとり、認知症施策に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有すること。(第五条関係)
 六 保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者の責務
   保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者は、国及び地方公共団体が講ずる認知症施策に協力するとともに、良質かつ適切な保健医療サービス又は福祉サービスを提供するよう努めなければならないこと。                                   (第六条関係)
 七 日常生活及び社会生活を営む基盤となるサービスを提供する事業者の責務
   公共交通事業者等、金融機関、小売業者その他の日常生活及び社会生活を営む基盤となるサービスを提供する事業者(六の者を除く。)は、国及び地方公共団体が実施する認知症施策に協力するとともに、そのサービスを提供するに当たっては、その事業の遂行に支障のない範囲内において、認知症の人に対し必要かつ合理的な配慮をするよう努めなければならないこと。          (第七条関係)
 八 国民の責務
   国民は、認知症に関する正しい知識を持ち、認知症の予防に必要な注意を払うよう努めるとともに、認知症の人の自立及び社会参加に協力するよう努めなければならないこと。     (第八条関係)
 九 認知症の日及び認知症月間
   国民の間に広く認知症についての関心と理解を深めるため、認知症の日(九月二十一日)及び認知症月間(同月一日から同月三十日まで)を設けること。               (第九条関係)
 十 法制上の措置等
   政府は、認知症施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならないこと。                                  (第十条関係)
第二 認知症施策推進基本計画等
 一 認知症施策推進基本計画
  1 政府は、認知症施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、認知症施策推進基本計画(以下「基本計画」という。)を策定しなければならないこと。           (第十一条第一項関係)
  2 基本計画に定める施策については、原則として、当該施策の具体的な目標及びその達成の時期を定めるものとすること。                        (第十一条第二項関係)
  3 内閣総理大臣は、基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならないこと。
                                     (第十一条第三項関係)
  4 政府は、基本計画を策定したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、インターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならないこと。      (第十一条第四項関係)
  5 政府は、適時に、2に定める目標の達成状況を調査し、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならないこと。             (第十一条第五項関係)
  6 政府は、認知症に関する状況の変化を勘案し、及び認知症施策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも五年ごとに、基本計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならないこと。                            (第十一条第六項関係)
  7 3及び4は、基本計画の変更について準用すること。         (第十一条第七項関係)
 二 都道府県認知症施策推進計画
  1 都道府県は、基本計画を基本とするとともに、当該都道府県の実情に即した都道府県認知症施策推進計画(二及び三の1において「都道府県計画」という。)を策定するよう努めなければならないこと。                                (第十二条第一項関係)
  2 都道府県計画は、都道府県地域福祉支援計画、医療計画、都道府県老人福祉計画、都道府県介護保険事業支援計画その他の法令の規定による計画であって認知症施策に関連する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならないこと。              (第十二条第二項関係)
  3 都道府県は、都道府県計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、認知症の人及び家族等の意見を聴くよう努めなければならないこと。              (第十二条第三項関係)
  4 都道府県は、都道府県計画を策定したときは、遅滞なく、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表するよう努めなければならないこと。         (第十二条第四項関係)
  5 都道府県は、適時に、都道府県計画に基づいて実施する施策の実施状況の評価を行い、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表するよう努めなければならないこと。
                                     (第十二条第五項関係)
  6 都道府県は、当該都道府県における認知症に関する状況の変化を勘案し、及び当該都道府県における認知症施策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも五年ごとに、都道府県計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更するよう努めなければならないこと。(第十二条第六項関係)
  7 3は5の評価の結果の取りまとめを行おうとする場合について、3及び4は都道府県計画の変更について、それぞれ準用する。                     (第十二条第七項関係)
 三 市町村認知症施策推進計画
  1 市町村(特別区を含む。)は、基本計画(都道府県計画が策定されているときは、基本計画及び都道府県計画)を基本とするとともに、当該市町村の実情に即した市町村認知症施策推進計画(三において「市町村計画」という。)を策定するよう努めなければならないこと。(第十三条第一項関係)
  2 市町村計画は、市町村地域福祉計画、市町村老人福祉計画、市町村介護保険事業計画その他の法令の規定による計画であって認知症施策に関連する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならないこと。                           (第十三条第二項関係)
  3 二の3から7は、市町村計画について準用すること。         (第十三条第三項関係)
第三 基本的施策
 一 認知症に関する教育の推進等
   国及び地方公共団体は、国民が、認知症に関する知識及び認知症の人に関する理解を深めることができるよう、学校教育及び社会教育における認知症に関する教育の推進、認知症の人に関する理解を深めるための運動の展開その他の必要な施策を講ずるものとすること。        (第十四条関係)
 二 認知症の人の生活におけるバリアフリー化の推進等
  1 国及び地方公共団体は、認知症の人が安心して暮らすことのできる安全な地域づくりの推進を図るため、移動のための交通手段の確保、交通の安全の確保、地域において認知症の人を見守るための体制の整備その他の必要な施策を講ずるものとすること。         (第十五条第一項関係)
  2 国及び地方公共団体は、認知症の人の権利利益の保護を図るため、成年後見制度の利用の促進、消費生活における被害を防止するための啓発、認知症の人がその権利を円滑に行使することができるようにするための関係職員に対する研修その他の必要な施策を講ずるものとすること。
                                     (第十五条第二項関係)
  3 国及び地方公共団体は、認知症の人の生活を支援するため、認知症の人にとって利用しやすい製品及びサービスの開発及び普及の促進、民間における自主的な取組の促進その他の必要な施策を講ずるものとすること。                          (第十五条第三項関係)
 三 認知症の人の社会参加の機会の確保
  1 国及び地方公共団体は、認知症の人が生きがいを持って生活を営むことができるよう、認知症の人の社会参加の機会の確保その他の必要な施策を講ずるものとすること。  (第十六条第一項関係)
  2 国及び地方公共団体は、1の施策を講ずるに当たっては、六十五歳未満の認知症の人(2において「若年性認知症の人」という。)その他の認知症の人の意欲及び能力に応じた雇用の継続、円滑な就職等が重要であることに鑑み、事業主に対する若年性認知症の人その他の認知症の人の就労に関する啓発及び知識の普及その他の必要な施策を講ずるものとすること。    (第十六条第二項関係)
四 認知症の予防等
  1 国及び地方公共団体は、認知症及び軽度認知障害の予防の推進のため、予防に関する啓発及び知識の普及、予防に資すると考えられる地域における活動の推進、予防に係る情報の収集その他の必要な施策を講ずるものとすること。                    (第十七条第一項関係)
  2 国及び地方公共団体は、認知症及び軽度認知障害の早期発見及び早期対応を推進するため、地域包括支援センター、医療機関、民間団体等の間における連携協力体制の整備その他の必要な施策を講ずるものとすること。                         (第十七条第二項関係)
 五 保健医療サービス及び福祉サービスの提供体制の整備等
  1 国及び地方公共団体は、認知症の人がその居住する地域にかかわらず等しくその状態に応じた適切な医療を受けることができるよう、認知症に係る専門的な医療の提供等を行う医療機関の整備を図るために必要な施策を講ずるものとすること。              (第十八条第一項関係)
  2 国及び地方公共団体は、認知症の人に対し適時に、かつ、適切な保健医療サービス及び福祉サービスを総合的に提供するため、地域包括ケアシステムを構築することを通じ、保健及び医療並びに福祉の相互の有機的な連携の確保その他の必要な施策を講ずるものとすること。(第十八条第二項関係)
  3 国及び地方公共団体は、認知症の人の状態に応じた保健医療サービス及び福祉サービスが提供されるよう、医療従事者及び介護従事者に対する認知症の人への対応を向上させるための研修の実施、医療及び介護に係る人材の確保、養成及び資質の向上その他の必要な施策を講ずるものとすること。
                                     (第十八条第三項関係)
 六 相談体制の整備等
  1 国及び地方公共団体は、関係機関相互の有機的連携の下に、認知症の人及び家族等からの各種の相談に応ずるため必要な体制の整備を図るものとすること。        (第十九条第一項関係)
  2 国及び地方公共団体は、認知症の人同士及び家族等同士が支え合うために交流する活動に対する支援を行うものとすること。                      (第十九条第二項関係)
  3 国及び地方公共団体は、家族等の負担の軽減を図るため、2に規定するもののほか、認知症の人の状態に応じた対処についての学習の機会の提供その他の必要な施策を講ずるものとすること。
                                     (第十九条第三項関係)
 七 研究開発の推進等
  1 国及び地方公共団体は、認知症の本態解明、認知症及び軽度認知障害の予防、診断及び治療に関する方法の開発その他の認知症の予防等に資する事項並びに認知症の人の状態に応じたリハビリテーション及び介護方法の開発その他の認知症の人の生活の質の維持向上等に資する事項についての基礎研究及び臨床研究の促進、その成果の活用その他の必要な施策を講ずるものとすること。
                                     (第二十条第一項関係)
  2 国は、1の施策を講ずるに当たっては、官民の連携を図るとともに、全国的な規模の追跡調査の実施の推進、治験の迅速かつ容易な実施のための環境の整備その他の認知症に関する研究開発の基盤を構築するために必要な施策を講ずるものとすること。          (第二十条第二項関係)
 八 認知症施策の策定に必要な調査の実施
   国は、認知症施策を適正に策定し、及び実施するため、認知症に関する調査の実施及び調査に必要な体制の整備を図るものとすること。                     (第二十一条関係)
 九 多様な主体の連携等
   国は、国、地方公共団体、保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者、第一の七の日常生活及び社会生活を営む基盤となるサービスを提供する事業者等の多様な主体が相互に連携して認知症施策に取り組むことができるよう必要な施策を講ずるものとすること。        (第二十二条関係)
 十 国際協力
   国は、認知症施策を国際的協調の下に推進するため、外国政府、国際機関又は関係団体等との情報の交換その他必要な施策を講ずるものとすること。               (第二十三条関係)
第四 認知症施策推進本部
 一 設置
   認知症施策を総合的かつ計画的に推進するため、内閣に、認知症施策推進本部(以下「本部」という。)を置くこと。                               (第二十四条関係)
 二 所掌事務
  1 本部は、次に掲げる事務をつかさどること。            (第二十五条第一項関係)
   @ 基本計画の案の作成及び実施の推進に関すること。
   A 関係行政機関が基本計画に基づいて実施する施策の総合調整及び実施状況の評価に関すること。
   B @及びAのほか、認知症施策で重要なものの企画及び立案並びに総合調整に関すること。
  2 本部は、次に掲げる場合には、あらかじめ、認知症の人及び家族等の意見を聴かなければならないこと。                              (第二十五条第二項関係)
   @ 基本計画の案を作成しようとするとき。
   A 1のAの評価について、その結果の取りまとめを行おうとするとき。
  3 2(@に係る部分に限る。)は、基本計画の変更の案の作成について準用すること。
                                    (第二十五条第三項関係)
 三 組織等
  1 本部は、認知症施策推進本部長、認知症施策推進副本部長及び認知症施策推進本部員をもって組織すること。                                (第二十六条関係)
  2 本部の長は、認知症施策推進本部長(4において「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てること。                          (第二十七条第一項関係)
  3 認知症施策推進副本部長(4において「副本部長」という。)は、内閣官房長官、健康・医療戦略担当大臣及び厚生労働大臣をもって充てること。           (第二十八条第一項関係)
  4 本部員は、本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣をもって充てること。
                                    (第二十九条第二項関係)
 四 資料の提出その他の協力
  1 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、地方公共団体、独立行政法人及び地方独立行政法人の長並びに特殊法人の代表者に対して、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができること。           (第三十条第一項関係)
  2 本部は、その所掌事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、1の者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができること。             (第三十条第二項関係)
第五 施行期日等
 一 施行期日
   この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。
                                       (附則第一項関係)
 二 検討
  1 本部については、この法律の施行後五年を目途として総合的な検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとすること。                (附則第二項関係)
  2 1のほか、国は、この法律の施行後五年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。
                                       (附則第三項関係)
 三 その他
   その他所要の規定を設けること。

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