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第百二十号(昭二二・一〇・二一)

◎国家公務員法

国家公務員法目次

第一章 総則

第二章 人事委員会

第三章 官職の基準

第一節 通則

第二節 職階制

第三節 試験及び任免

第一款 通則

第二款 試験

第三款 任用候補者名簿

第四款 任用

第五款 休職、復職、退職及び免職

第四節 給与

第一款 給与準則

第二款 給与の支払

第五節 能率

第六節 分限、懲戒及び保障

第一款 分限

第二款 懲戒

第三款 保障

第一目 勤務条件に関する行政措置の要求

第二目 職員の意に反する不利益な処分に関する審査

第三目 公務傷病に対する補償

第七節 服務

第八節 退職者に対する恩給

第四章 罰則

附則

国家公務員法

第一章 総則

 (この法律の目的)

第一条 この法律は、国家公務員(この法律で国家公務員には、国会議員を含まない。)たる職員について適用すべき各般の根本基準を確立し、職員がその職務の遂行に当り、最大の能率を発揮し得るように、民主的な方法で、選択され、且つ、指導さるべきことを定め、以て国民に対し、公務の民主的且つ能率的な運営を保障することを目的とする。

 (一般職及び特別職)

第二条 国家公務員の職は、これを一般職と特別職とに分つ。

一般職は、特別職に属する職以外の国家公務員の一切の職を包含する。

特別職は、左に掲げる職員の職とする。

一 内閣総理大臣

二 国務大臣

三 内閣官房長官

四 内閣官房次長

五 法制局長官

六 各省政務次官

七 各省次官

八 各省参与官

九 建設院の長及び終戦連絡中央事務局の長

十 内閣総理大臣秘書官(三人以内)及びその他の秘書官(国務大臣又は特別職たる機関の長の各々につき一人)

十一 任命について国会又はその両院若しくは一院の選挙、議決又は同意によることを必要とする職員

十二 現業庁、公団その他これらに準ずるものの職員で、法律又は人事委員会規則で指定するもの

十三 顧問、参与、委員その他これらに準ずる職員で、法律又は人事委員会規則で指定するもの

十四 単純な労務に雇用される者

十五 宮内府長官、侍従長及び侍従並びに法律又は人事委員会規則で指定する宮内府のその他の職員

十六 大使及び公使

十七 裁判官並びに最高裁判所長官秘書官(一人)及び裁判所調査官

十八 国会職員

この法律の規定は、一般職に属するすべての職(以下その職を官職といい、その職を占める者を職員という。)に、これを適用する。

この法律の規定は、この法律の改正法律により、別段の定がなされない限り、特別職に属する職には、これを適用しない。

第二章 人事委員会

 (設置)

第三条 この法律の完全な実施を確保し、その目的を達成するため、内閣総理大臣の所轄の下に、人事委員会を置く。

人事委員会は、左に掲げる事務を掌る。

一 職員の職階、任免、給与、恩給その他職員に関する人事行政の総合調整に関する事項

二 職員の試験に関する事項

三 その他法律に基きその権限に属せしめられた事項

 (職員)

第四条 人事委員会に左の職員を置く。

人事委員長

人事委員 三人

事務局長 一人

その他政令を以て定める職員

 (人事委員)

第五条 人事委員は、人格が高潔で、民主的な統治組織と成績本位の原則による能率的な事務の処理に理解があり、且つ、人事行政に関し識見を有する年齢三十五年以上の者の中から両議院の同意を経て、内閣が、これを任命する。

人事委員の任命について、衆議院が同意して参議院が同意しない場合においては、日本国憲法第六十七条第二項の場合の例により、衆議院の同意を以て両議院の同意とする。

人事委員の任免は、天皇が、これを認証する。

左の各号の一に該当する者は、人事委員となることができない。

一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ない者

二 禁錮以上の刑に処せられた者又は第四章に規定する罪を犯し刑に処せられた者

三 第三十八条第三号又は第五号に該当する者

任命の日以前一年間において、政党の役員であつた者又は任命の日以前一年間において、公選による国若しくは都道府県の公職の候補者となつた者は、人事委員会規則の定めるところにより、人事委員となることができない。

人事委員の任命については、その中の二人が、同一政党に属し、又は同一の大学学部若しくは高等学校における同一学科(学科の区分のない大学については同一学部)を卒業した者となることとなつてはならない。

 (宣誓及び服務)

第六条 人事委員は、任命後、人事委員会規則の定めるところにより、最高裁判所長官の面前において、宣誓書に署名してからでなければ、その職務を行つてはならない。

第三章第七節の規定は、人事委員にこれを準用する。

 (任期)

第七条 人事委員の任期は、四年とする。但し、補欠の人事委員は、前任者の残任期間在任する。

人事委員は、これを再任することができる。但し、引き続き十二年を超えて在任することはできない。

人事委員であつた者は、退職後一年間は、人事委員会の官職以外の官職に、これを任命することができない。但し、人事委員会規則の定める場合においては、この限りでない。

 (退職及び罷免)

第八条 人事委員は、左の各号の一に該当する場合においては、当然退職するものとする。

一 第五条第四項各号の一に該当するに至つた場合

二 内閣総理大臣の訴追に基き、公開の弾劾手続により罷免を可とすると決定された場合

三 人事委員として引き続き十二年在任するに至つた場合

前項第二号の規定による弾劾の事由は、左に掲げるものとする。

一 心身の故障のため、職務の遂行に堪えないこと

二 職務上の義務に違反し、その他人事委員たるに適しない非行があること

人事委員の中、二人以上が同一の政党に属することとなつた場合においては、これらの者の中一人以外の者は、内閣が両議院の同意を経て、これを罷免するものとする。但し、人事委員会規則の定める場合においては、内閣は、ただちに、これを罷免することができる。

前項の規定は、政党所属関係について異動のなかつた人事委員の地位に、影響を及ぼすものではない。

第五条第二項の規定は、第三項の場合に、これを準用する。

第三項の場合を除く外、人事委員は、その意に反して罷免されることがない。

 (人事委員の弾劾)

第九条 人事委員の弾劾の裁判は、最高裁判所においてこれを行う。

内閣総理大臣は、人事委員の弾劾の訴追をしようとするときは、訴追の事由を記載した書面を最高裁判所に提出しなければならない。

内閣総理大臣は、前項の場合においては、同項に規定する書面の写を訴追に係る人事委員に送付しなければならない。

最高裁判所は、第二項の書面を受理した日から三十日以上九十日以内の間において裁判開始の日を定め、その日の三十日以前までに、内閣総理大臣及び訴追に係る人事委員に、これを通知しなければならない。

最高裁判所は、裁判開始の日から百日以内に判決を行わなければならない。

人事委員の弾劾の裁判の手続は、裁判所規則でこれを定める。

裁判に要する費用は、国庫の負担とする。

 (俸給)

第十条 人事委員は、国務大臣の俸給に準ずる俸給を受ける。

 (総裁)

第十一条 人事委員長は、人事委員の中から、内閣総理大臣が、これを命ずる。

人事委員長は、会務を総理し、人事委員会を代表する。

人事委員長に事故のあるとき、又は人事委員長が欠けたときは、先任の人事委員が、その職務を代行する。

 (人事委員会議)

第十二条 人事委員会に人事委員を以て組織する人事委員会議を置く。事務局長は、幹事として人事委員会議に出席する。

人事委員会は、左に掲げる権限を行う場合においては、人事委員会議の議決を経なければならない。

一 人事委員会規則の制定及び改廃

二 第二十二条の規定による関係庁の長に対する勧告

三 第二十三条の規定による内閣総理大臣に対する意見の申出

四 第二十四条の規定による内閣総理大臣に対する報告

五 第二十九条の規定による職階制の立案

六 第三十六条(第三十七条において準用する場合を含む)の規定による選考基準の決定及び選考機関の指定

七 第四十八条の規定による試験機関の指定

八 第六十条の規定による臨時的任用及びその更新に対する承認、臨時的任用に係る職員の員数の制限及びその資格要件の決定並びに臨時的任用の取消

九 第六十三条の規定による給与準則の立案

十 第六十七条の規定による給与準則の改訂案の作成

十一 第七十二条の規定による関係庁の長に対する勧告及び表彰又は矯正方法に関する立案

十二 第八十七条の規定による事案の判定

十三 第九十二条の規定による処分の判定及び内閣総理大臣に対する意見の申出

十四 第九十五条の規定による補償に関する重要事項の立案

十五 第百三条の規定による異議の申立についての判定

十六 第百八条の規定による恩給に関する重要事項の立案

十七 その他人事委員会議の議決によりその議決を必要とされた事項

人事委員の定例会議は、人事委員会規則の定めるところにより、一定の場所において、少くとも一週間に一回開催することを常例としなければならない。

人事委員会議の議事は、すべて議事録として記録しておかなければならない。

前項の議事録は、幹事がこれを作成する。

人事委員会議の議事に関し必要な事項は、人事委員会規則でこれを定める。

 (事務局その他の機関)

第十三条 人事委員会に、事務局を置き、人事委員会の権限に属する事項に関する庶務を掌らしめる。

人事委員会に、国会の承認を得て、地方の事務所を置くことができる。

 (事務局長)

第十四条 事務局長は、人事委員長の指揮監督を受け、事務局の局務を掌理する。

事務局長は、人事委員会議の幹事となり、及び人事主任官会議の議長となる。

 (人事委員会の職員の兼職禁止)

第十五条 人事委員及び事務局長は、人事委員会の官職以外の官職を兼ねてはならない。

 (人事委員会規則)

第十六条 人事委員会は、この法律の執行に関し必要な事項について、内閣総理大臣の承認を経て、人事委員会規則を制定する。

人事委員会規則は、内閣総理大臣が、官報を以て、これを公布する。

 (調査)

第十七条 人事委員会又はその指名する者は、官職についての就職状況、人事管理の状況その他人事行政に関する事項について調査することができる。

人事委員会又は前項の規定により指名された者は、同項の調査に関し必要があるときは、証人を喚問し、又調査すべき事項に関係があると認められる書類若しくはその写の提出を求めることができる。

 (給与の支払の監理)

第十八条 人事委員会は、職員に対する給与の支払を監理する。

 (人事記録)

第十九条 人事委員会は、職員の人事記録に関することを管理する。

人事委員会は、総理庁、各省その他の機関をして、当該機関の職員の人事に関する一切の事項について、人事記録を作成し、これを保管せしめるものとする。

人事記録の記載事項及び様式その他人事記録に関し必要な事項は、人事委員会規則でこれを定める。

人事委員会は、第二項の規定による人事記録で、前項の規定による人事委員会規則に違反すると認めるものについて、その改訂を命じ、その他所要の措置をなすことができる。

 (統計報告)

第二十条 人事委員会は、人事委員会規則の定めるところにより、職員の在職関係に関する統計報告の制度を定め、これを実施するものとする。

人事委員会は、前項の続計報告に関し必要があるときは、関係庁に対し随時又は定期に一定の形式に基いて、所要の報告を求めることができる。

 (権限の委任)

第二十一条 人事委員会は、この法律に基く権限で重要でないものについて、これを他の機関をして行わしめることができる。この場合においても、人事委員会は、その権限の行使について責任を免かれることができない。

 (人事行政改善の勧告)

第二十二条 人事委員会は、人事行政の改善に関し、関係大臣その他の機関の長に勧告することができる。

人事委員会は、政府全体の行政運営の能率増進に資するため、政府部内各機関相互の間における職員の配置転換及び人事の交流について、関係大臣その他の機関の長に勧告することができる。

前二項の場合においては、人事委員会は、その旨を内閣総理大臣に報告しなければならない。

 (法令の制定改廃に関する意見の申出)

第二十三条 人事委員会は、この法律の目的達成上、法令の制定又は改廃に関し意見があるときは、その意見を内閣総理大臣に申し出なければならない。

 (業務の報告)

第二十四条 人事委員会は、毎年、内閣総理大臣に対し、内閣総理大臣の定めるところにより、その業務の状況を報告しなければならない。

内閣総理大臣は、前項の報告を公表しなければならない。

 (人事主任官)

第二十五条 総理庁及び各省並びに人事委員会規則で指定するその他の機関には、その庁の職員として人事主任官を置かなければならない。

人事主任官は、人事に関する部局の長となり、前項の機関の長を助け、人事に関する事務を掌る。

 (人事主任官会議)

第二十六条 この法律の実施に関し、人事委員会と総理庁、各省及びその他の機関の間における緊密な連絡及び相互の協力に遺憾なきを期するため、人事委員会に人事主任官会議を置く。

人事主任官会議は、議長及び委員を以て、これを組織する。

議長は、事務局長を以て、委員は前条の人事主任官を以て、これに充てる。

人事主任官会議は、人事行政に関する重要事項につき、人事委員長に建議することができる。

前四項に定めるものの外、人事主任官会議に関し必要な事項は、人事委員会規則でこれを定める。

第三章 官職の基準

第一節 通則

 (平等取扱の原則)

第二十七条 すべて国民は、この法律の適用について、平等に取り扱われ、人種、信条、性別、社会的身分又は門地によつて、差別されてはならない。

 (情勢適応の原則)

第二十八条 この法律に基いて定めらるべき給与、勤務時間その他勤務条件に関する基礎事項は、社会一般の情勢の変化に適応するように、国会の定める手続に従い、随時変更せられうるものとする。

第二節 職階制

 (職階制の確立)

第二十九条 職階制は、法律でこれを定める。

人事委員会は、職階制を立案し、官職を職務の種類に応じて定めた職種別に、且つ、職務の複雑と責任の度に応じて定めた等級別に、分類整理しなければならない。

職階制においては、職種及び等級を同じくする官職については、同一の資格要件を必要とするとともに、且つ、当該官職に就いている者に対しては、同一の幅の俸給が支給されるように、官職の分類整理がなされなければならない。

前三項に関する計画は、この法律の実施前に国会に提出して、その承認を得なければならない。

 (職階制の実施)

第三十条 職階制は、職階制を実施することができるものから、逐次これを実施しなければならない。

職階制の実施につき必要な事項は、この法律に定のあるものを除いては、人事委員会規則でこれを定める。

 (官職の格付)

第三十一条 職階制を実施することとなつた場合においては、人事委員会は、人事委員会規則の定めるところにより、職階制の適用されるすべての官職をいずれかの職種及び等級に格付しなければならない。

人事委員会は、人事委員会規則の定めるところにより、随時、前項に規定する格付を 再審査し、必要と認めるときは、これを改訂しなければならない。

 (職階制によらない官職の分類の禁止)

第三十二条 職階制が適用される官職については、任用の資格要件及び俸給支給の基準としては、職階制によらない分類をすることはできない。

第三節 試験及び任免

 (任免の根本基準)

第三十三条 すべて職員の任免は、その者の受験成績、勤務成績又はその他の能力の実証に基いて、これを行う。

前項に規定する根本基準の実施につき必要な事項は、この法律に定のあるものを除いては、人事委員会規則でこれを定める。

第一款 通則

 (任用、採用、昇任及び降任並びに転任の定義)

第三十四条 この法律において任用とは、採用、昇任、降任及び転任をいう。

この法律において採用とは、昇任、降任及び転任以外の方法によつて官職に任命することをいう。

この法律において昇任とは、現に官職に就いていることに基いて、その官職と同一の職種に属する上の等級の官職に任命することをいう。

この法律において降任とは、現に官職に就いていることに基いて、その官職と同一の職種に属する下の等級の官職に任命することをいう。

この法律において転任とは、現に官職に就いている者をその官職と同一の職種及び等級に属する他の庁又は同一庁の他の部署の官職に任命することをいう。

 (欠員補充の方法)

第三十五条 官職に欠員を生じた場合においては、その任命権者は、法律又は人事委員会規則に別段の定のある場合を除いては、採用、昇任、降任又は転任のいずれか一の方法により、職員を任命することができる。但し、人事委員会が特別の必要があると認めて任命の方法を指定した場合は、この限りではない。

 (採用の方法)

第三十六条 職員の採用は、競争試験によるものとする。但し、人事委員会規則の定める職種及び等級について、人事委員会の承認があつた場合は、競争試験以外の能力の実証に基く試験(以下選考という。)の方法によることを妨げない。

前項但書の選考は、人事委員会の定める基準により、人事委員会又はその定める選考機関が、これを行う。

職員の採用は、前二項の規定にかかわらず、人事委員会規則の定めるところにより、採用すベき官職と同一の職種で、且つ、同等以上の等級の官職に、従前在職したことのある者の中から、これを行うことができる。

 (昇任の方法)

第三十七条 職員の昇任は、その官職と同一の職種に属する直近下級の等級の官職の在職者の間における競争試験(以下試験という。)によるものとする。但し、人事委員会は、任命権者の請求に基き、試験を受ける者の範囲を、その所轄部内の職員に限ることができる。

昇任すべき官職の職務及び責任に鑑み、人事委員会が、当該在職者の間における試験によることを適当でないと認める場合においては、昇任は、当該在職者の従前の勤務実績に基く選考により、これを行うことができる。

前条第二項の規定は、前項の選考にこれを準用する。

 (欠格条項)

第三十八条 左の各号の一に該当する者は、人事委員会規則の定める場合を除くの外、官職に就く能力を有しない。

一 禁治産者及び準禁治産者

二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者

三 懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者

四 人事委員会の人事委員又は事務局長の職にあつて、第百九条又は第百十条第三号に規定する罪を犯し刑に処せられた者

五 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者

 (人事に関する不法行為の禁止)

第三十九条 何人も、左の各号の一に掲げる事項を実現するために、金銭その他の利益を授受し、提供し、要求し、若しくは授受を約束したり、脅迫、強制その他これに類する方法を用いたり、直接たると間接たるとを問わず、公の地位を利用し、又はその利用を提供し、要求し、若しくは約束したり、あるいはこれらの行為に関与してはならない。

一 退職若しくは休職又は任用の不承諾

二 試験若しくは任用の志望の撤回又は任用に対する競争の中止

三 任用、昇給、留職その他官職における利益の実現又はこれらのことの推薦

 (人事に関する虚偽行為の禁止)

第四十条 何人も、試験、選考、任用又は人事記録に関して、虚偽又は不正の陳述、記載、証明、採点、判断又は報告を行つてはならない。

 (受験又は任用の阻害及び情報提供の禁止)

第四十一条 試験機関に属する者その他の職員は、受験若しくは任用を阻害し、又は受験若しくは任用に不当な影響を与える目的を以て特別若しくは秘密の情報を提供してはならない。

第二款 試験

 (試験実施の場合)

第四十二条 試験は、人事委員会規則の定めるところにより、職種及び等級に応じ、これを行う。

 (受験の欠格条項)

第四十三条 第四十四条に規定する資格に関する制限の外、官職に就く能力を有しない者は、受験することができない。

 (受験の資格要件)

第四十四条 人事委員会は、人事委員会規則により、受験者に必要な資格として職種及び等級に応じ、その職務の遂行に欠くことのできない最小限度の客観的且つ画一的な要件を定めることができる。

 (試験の内容)

第四十五条 試験は、職務遂行の能力を有するかどうかを判定することを以てその目的とし、その内容は、実際的なものであることを要する。

 (採用試験の公開平等)

第四十六条 採用試験は、人事委員会規則の定める受験の資格を有するすべての国民に対して、平等の条件で公開されなければならない。

 (採用試験の告知)

第四十七条 採用試験の告知は、公告によらなければならない。

前項の告知には、その試験に係る職種及び等級についての職務及び責任の概要及び給与、受験の資格要件、試験科目及びその各科目の比重、試験の時期及び場所、願書の入手及び提出の場所、時期及び手続その他の必要な受験手続並びに人事委員会が必要と認めるその他の注意事項を記載するものとする。

第一項の規定による公告は、人事委員会規則の定めるところにより、受験資格を有するすべての者に対し、受験に必要な事項が漏れなく判明することのできるように、これを行わなければならない。

人事委員会は、受験の資格を有すると認められる者が受験するように、常に努めなければならない。

 (試験機関)

第四十八条 試験は、人事委員会規則の定めるところにより、人事委員会の定める試験機関が、これを行う。

 (試験の時期及び場所)

第四十九条 試験の時期及び場所は、国内の受験資格者が、無理なく受験することができるように、これを定めなければならない。

第三款 任用候補者名簿

 (名簿の作成)

第五十条 試験による職員の任用については、人事委員会規則の定めるところにより、職種及び等級に応じ、任用候補者名簿(採用候補者名簿及び昇任候補者名簿)を作成するものとする。

 (採用候補者名簿に記載される者)

第五十一条 採用候補者名簿には、当該職種及び等級の官職に採用することができる者として採用試験において合格点以上を得た者の氏名及び得点を、その得点順に記載するものとする。

 (昇任候補者名簿に記載される者)

第五十二条 昇任候補者名簿には、当該職種及び等級の官職に昇任することができる者として、昇任試験において合格点以上を得た昇任候補者の氏名及び得点を、その得点順に記載するものとする。

 (名簿の閲覧)

第五十三条 任用候補者名簿は、受験者、任命庁その他関係者の請求に応じて、常に閲覧に供されなければならない。

 (名簿の失効)

第五十四条 任用候補者名簿が、その作成後一年以上を経過したとき、又は人事委員会の定める事由に該当するときは、何時でも、人事委員会は、任意に、その全部又は一部を失効させることができる。

第四款 任用

 (任命権者)

第五十五条 職員の任用は、採用試験による場合、昇任試験による場合又はその他の場合を問わず、すべて任命権者が、これを行う。

任命権は、法律に別段の定のある場合を除いては、その官職の等級の別に従い、政令の定めるところにより、内閣、内閣総理大臣又は各大臣その他の機関の長に属する。

前項に規定する機関の長たる任命権者は、政令の定めるところにより、その任命権を、その部内の上級の職員に限り委任することができる。

 (採用候補者名簿による採用の方法)

第五十六条 採用候補者名簿による職員の採用は、当該採用候補者名簿に記載された者の中、採用すべき者一人につき、試験における高点順の志望者五人の中から、これを行うものとする。

 (昇任候補者名簿による昇任の方法)

第五十七条 昇任候補者名簿による職員の昇任は、当該昇任候補者名簿に記載された者の中、昇任すべき者一人につき、試験における高点順の志望者五人の中から、これを行うものとする。

 (任用候補者の推薦)

第五十八条 任命権者が職員を採用し、又は昇任しようとする場合において、その請求があるときは、人事委員会は、人事委員会規則の定めるところにより、任命権者に対し、当該任用候補者名簿に記載された任用候補者の中当該任用の候補者たるべき前二条の規定による員数の者を提示しなければならない。

 (条件付採用期間)

第五十九条 人事委員会規則の定める職種及び等級の職員の採用は、すべて条件付のものとし、その職員が、その官職において六月を下らない期間を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに、正式のものとなるものとする。

条件付採用に関し必要な事項は、人事委員会規則でこれを定める。

 (臨時的任用)

第六十条 任命権者は、人事委員会規則の定めるところにより、緊急の場合、臨時の官職に関する場合又は任用候補者名簿がない場合には、人事委員会の承認を得て、六月を超えない任期で、臨時的任用を行うことができる。この場合において、その任用は、人事委員会規則の定めるところにより人事委員会の承認を得て、六月の期間で、これを更新することができるが、再度更新することはできない。

人事委員会は、臨時的任用につき、職種又は等級により、その員数を制限し、又は、任用される者の資格要件を定めることができる。

人事委員会は、前二項の規定に違反する臨時的任用を取り消すことができる。

臨時的任用は、任用に際して、いかなる優先権をも与えるものではない。

前四項に定めるものの外、臨時的に任用された者に対しては、この法律及びこれに基いて発する政令及び人事委員会規則を適用する。

第五款 休職、復職、退職及び免職

 (休職、復職、退職及び免職)

第六十一条 職員の休職、復職、退職及び免職は任命権者が、これを行う。

第四節 給与

 (給与の根本基準)

第六十二条 職員の給与は、その官職の職務と責任に応じてこれをなす。

前項の規定の趣旨は、できるだけ速かに、且つ、現行制度に適当な考慮を払いつつ、可能な範囲において、達成せられるべきものとする。

第一款 給与準則

 (給与準則による給与の支給)

第六十三条 職員の給与は、法律により定められる給与準則に基いてなされ、これに基かずには、いかなる金銭又は有価物も支給せられることはできない。

人事委員会は、必要な調査研究を行い、職階制に適合した給与準則を立案し、これを内閣総理大臣に提出しなければならない。

 (俸給表)

第六十四条 給与準則には、俸給表が規定されなければならない。

俸給表には、等級ごとに俸給額が一定の幅を以て、明確に定められ、且つ、生計費、民間における賃金その他の事情を考慮して定めらるべきものとする。

 (給与準則に定むべき事項)

第六十五条 給与準則には、前条の俸給表の外、左の事項が規定されなければならない。

一 同一等級内における俸給の昇給の基準に関する事項

二 その官職に職階制が初めて適用せられる場合の給与に関する事項

三 時間外勤務、夜間勤務及び休日勤務に対する給与に関する事項

四 特別地域勤務、危険作業その他特殊な勤務に対する手当に関する事項

五 常時勤務を要しない官職、生活に必要な施設の全部又は一部を官給する官職その他勤務条件の特別なものについて、人事委員会のなす給与の調整に関する事項

前項第一号の基準は、勤続期間、勤務能率その他勤務に関する諸要件を考慮して定められるものとする。

 (給与額の決定)

第六十六条 職員は、その官職につき職階制において定められた職種及び等級について給与準則の定める俸給額が支給せられる。

職員の給与準則の基準を決定する場合においては、職務に関係のない事項によつて、差別が設けられてはならない。

 (給与準則の改訂)

第六十七条 人事委員会は、給与準則に関し、常時、必要な調査研究を行い、給与額を引き上げ、又は引き下げる必要を認めたときは、遅滞なく改訂案を作成して、これを内閣総理大臣に提出しなければならない。

第二款 給与の支払

 (給与簿)

第六十八条 職員に対して給与の支払をなす者は、先づ受給者につき給与簿を作成しなければならない。

給与簿は、何時でも人事委員会の職員が検査し得るようにしておかなければならない。

前二項に定めるものを除いては、給与簿に関し必要な事項は、政令又は人事委員会規則でこれを定める。

 (給与簿の検査)

第六十九条 職員の給与が法令又は人事委員会規則に適合して行われることを確保するため必要があるときは、人事委員会は給与簿を検査し、必要があると認めるときは、その是正を命ずることができる。

 (違法の支払に対する措置)

第七十条 人事委員会は、給与の支払が、法令又は人事委員会規則に違反してなされたことを発見した場合には、自己の権限に属する事項については自ら適当な措置をなす外、必要があると認めるときは、事の性質に応じて、これを会計検査院に報告し、又は検察官に通報しなければならない。

第五節 能率

 (能率の根本基準)

第七十一条 職員の能率は、充分に発揮され、且つ、その増進がはかられなければならない。

前項の根本基準の実施につき、必要な事項は、この法律に定めるものを除いては、人事委員会規則でこれを定める。

人事委員会は、職員の能率の発揮及び増進について、調査研究を行い、これが確保のため適切な方策を講じなければならない。

 (勤務成績の評定)

第七十二条 職員の執務については、その所轄庁の長は、定期的に勤務成績の評定を行い、その評定の結果に応じた措置を講じなければならない。

人事委員会は、前項の勤務成績の評定及びその記録に関し必要な事項を定める権限を有し、且つ、この法律の趣旨に則つて職員の能率の発揮及び増進のためにとるべき措置を関係庁の長に勧告する権限を有する。

人事委員会は、勤務成績の優秀な者に対する表彰に関する事項及び成績のいちじるしく不良な者に対する矯正方法に関する事項を立案し、これを内閣総理大臣に提出しなければならない。

 (能率増進計画)

第七十三条 人事委員会及び関係庁の長は、職員の勤務能率の発揮及び増進のために、左の事項について計画を樹立し、これが実施に努めなければならない。

一 職員の教育訓練に関する事項

二 職員の保健に関する事項

三 職員の元気回復に関する事項

四 職員の安全保持に関する事項

五 職員の厚生に関する事項

前項の計画の樹立及び実施に関し、人事委員会は、その総合的企画並びに関係各庁に対する調整及び監視に当る。

第六節 分限、懲戒及び保障

 (分限、懲戒及び保障の根本基準)

第七十四条 すべて職員の分限、懲戒及び保障については、公正でなければならない。

前項に規定する根本基準の実施につき必要な事項は、この法律に定めるものを除いては、人事委員会規則でこれを定める。

第一款 分限

 (身分保障)

第七十五条 職員は、法律に定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、休職され、又は免職されることはない。

職員は、人事委員会規則の定める事由に該当するときは、降給されるものとする。

 (欠格による失職)

第七十六条 職員が第三十八条各号の一に該当するに至つたときは、人事委員会規則に定める場合を除いては、当然失職する。

 (弾劾による罷免)

第七十七条 職員の弾劾に関する規程は、別に法律でこれを定める。

 (本人の意に反する降任及び免職の場合)

第七十八条 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、人事委員会規則の定めるところにより、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。

一 勤務実績が挙がらない場合

二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合

三 その他その職種又は等級の官職に必要な適格性を欠く場合

 (本人の意に反する休職の場合)

第七十九条 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反して、これを休職することができる。

一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合

二 刑事事件に関し起訴された場合

 (休職の効果)

第八十条 前条第一号の規定による休職の期間は、満一年とし、休職期間中その故障の消滅したときは、速やかにこれに復職を命ずるものとし、休職のまま満期に至つたときは、当然退職者とする。

前条第二号の規定による休職の期間は、その事件が裁判所に係属する間とする。

休職者は、職員としての身分を保有するが、職務に従事しない。休職者は、その休職の期間中俸給の三分の一を受ける。

 (適用除外)

第八十一条 左に掲げる職員の分限については、第七十五条、第七十八条乃至前条及び第八十九条乃至第九十二条の規定は、これを適用しない。

一 臨時的職員

二 条件付採用期間中の職員

三 官制若しくは定員の改廃又は予算の減少に因り廃職又は過員となつた職員

四職階制による官職の格付の改正の結果、降給又は降任と同一の結果となつた職員

前項各号に掲げる職員の分限については、人事委員会規則で必要な事項を定めることができる。

第一項第三号に掲げる者のいずれを降任し、休職し、又は免職すべきかは、勤務成績その他の能力の実証に基いて、これを定める。

第二款 懲戒

 (懲戒の場合)

第八十二条 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲成処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。

一 この法律又は人事委員会規則に違反した場合

二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合

三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

 (懲戒の効果)

第八十三条 停職の期間は、一月以上一年以下とする。

停職者は、職員としての身分を保有するが、その職務に従事しない。停職者は、その停職の期間中俸給の三分の一を受ける。

減給は、一月以上一年以下俸給の三分の一以下を減ずる。

 (懲戒権者)

第八十四条 懲戒処分は、任命権者が、これを行う。

 (刑事裁判との関係)

第八十五条 懲戒に付せらるべき事件が、刑事裁判所に係属する間は、同一事件に関し懲戒の手続を進めることができない。

第三款 保障

第一目 勤務条件に関する行政措置の要求

 (勤務条件に関する行政措置の要求)

第八十六条 職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事委員会に対して、人事委員会又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われることを要求することができる。

 (事案の審査及び判定)

第八十七条 前条に規定する要求のあつたときは、人事委員会は、必要と認める調査、口頭審理その他の事実審査を行い、一般国民及び関係者に公平なように、且つ、職員の能率を発揮し、及び増進する見地において、事案を判定しなければならない。

 (判定の結果採るべき措置)

第八十八条 人事委員会は、前条に規定する判定に基き、勤務条件に関し一定の措置を必要と認めるときは、その権限に属する事項については、自らこれを実行し、その他の事項については、その職員の所轄庁の長に対し、その実行を勧告しなければならない。

第二目 職員の意に反する不利益な処分に関する審査

 (職員の意に反する降給等の処分に関する説明書の交付)

第八十九条 職員に対し、その意に反して、降給し、降任し、休職し、免職し、その他これに対しいちじるしく不利益な処分を行い、又は懲戒処分を行わうとするときは、その処分を行う者は、その職員に対し、その処分の際、処分の事由を記載した説明書を交付しなければならない。

職員が前項に規定するいちじるしく不利益な処分を受けたと思料する場合には、同項の説明書の交付を請求することができる。

 (審査請求)

第九十条 前条第一項に規定する処分を受けた職員は、処分説明書を受領した後三十日以内に、人事委員会に、その審査を請求することができる。

 (調査)

第九十一条 前条に規定する請求を受理したときは、人事委員会又はその定める機関は、ただちにその事案を調査しなければならない。

前項に規定する場合において、処分を受けた職員から請求があつたときは、口頭審理を行わなければならない。口頭審理は、その職員から請求があつたときは、公開して行わなければならない。

処分を行つた者又はその代理者及び処分を受けた職員は、すべての口頭審理に出席し、自己の代理人として弁護人を選任し、陳述を行い、証人を出席せしめ、並びに書類、記録その他のあらゆる適切な事実及び資料を提出することができる。

前項に掲げる者以外の者は、当該事案に関し、人事委員会に対し、あらゆる事実及び資料を提出することができる。

 (調査の結果採るべき措置)

第九十二条 前条に規定する調査の結果、処分が正当であることが判明したときは、人事委員会はその処分を確認しなければならない。

前条に規定する調査の結果、その処分が事実と相違し、その他正当でないことが判明したときは、人事委員会は、その処分の取消又は変更、その職員の官職上の権利の回復、その職員がその処分の結果受けた不公正の訂正及びその職員がその処分の結果失つた給与に関する補償につき、その職権に属するものは、自らこれを実行し、その他のものは、これに関する意見を内閣総理大臣に申し出なければならない。

内閣総理大臣は、前項に規定する申出のあつた場合においては、その申出の趣旨に従い、その職員の所轄庁の長に対し、指示を与える等必要な措置を講じなければならない。

第三目 公務傷病に対する補償

 (公務傷病に対する補償)

第九十三条 職員が公務に基き死亡し、又は負傷し、若しくは疾病にかかり、若しくはこれに起因して死亡した場合における、本人及びその直接扶養する者がこれによつて受ける損害に対し、これを補償する制度が樹立し実施せられなければならない。

前項の規定による補償制度は、法律によつてこれを定める。

 (法律に規定すべき事項)

第九十四条 前条の補償制度には、左の事項が定められなければならない。

一 公務上の負傷又は疾病に起因した活動不能の期間における経済的困窮に対する職員の保護に関する事項

二 公務上の負傷又は疾病に起因して、永久に、又は長期に所得能力を害せられた場合におけるその職員の受ける損害に対する補償に関する事項

三 公務上の負傷又は疾病に起因する職員の死亡の場合におけるその遺族又は職員の死亡当時その収入によつて生計を維持した者の受ける損害に対する補償に関する事項

 (人事委員会の補償制度立案の責務)

第九十五条 人事委員会は、なるべく速かに補償制度の研究を行い、その成果を内閣総理大臣に提出しなければならない。

第七節 服務

 (服務の根本基準)

第九十六条 すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。

前項に規定する根本基準の実施に関し必要な事項は、この法律に定めるものを除いては、人事委員会規則でこれを定める。

 (服務の宣誓)

第九十七条 職員は、人事委員会規則の定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。

 (法令及び上司の命令に従う義務)

第九十八条 職員は、その職務を遂行するについて、誠実に、法令に従い、且つ、上司の職務上の命令に従わなければならない。但し、上司の職務上の命令に対しては、意見を述べることができる。

 (信用失墜行為の禁止)

第九十九条 職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

 (秘密を守る義務)

第百条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。

法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表するには、所轄庁の長(退職者については、その退職した官職又はこれに相当する官職の所轄庁の長)の許可を要する。

前項の許可は、法律又は人事委員会規則の定める条件及び手続に係る場合を除いては、これを拒むことができない。

 (職務に専念する義務)

第百一条 職員は、特別の事情により所轄庁の長の承認を受けた場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用いなければならない。

 (政治的行為の制限)

第百二条 職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与してはならない。

職員は、人事委員会規則で別段の定をした場合は、公選による公職の候補者となることができない。

法律又は人事委員会規則で定めた職員は、政党その他の政治的国体の役員となることができない。

 (私企業からの隔離)

第百三条 職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。

職員であつた者は、その退職後二年間は、その退職前二年間に在職していた官職と職務上密接な関係にある営利企業を代表する地位に就いてはならない。

前二項の規定は、人事委員会規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事委員会の承認を得た場合には、これを適用しない。

営利企業について、株式所有の関係その他の関係により、当該企業の経営に参加し得る地位にある職員に対し、人事委員会は、人事委員会規則の定めるところにより、株式所有の関係その他の関係について報告を徴することができる。

人事委員会は、人事委員会規則の定めるところにより、前項の報告に基き、企業に対する関係の全部又は一部の存続が、その職員の職務遂行上適当でないと認めるときは、その旨を当該職員に通知することができる。

前項の通知を受けた職員は、その通知の内容について異議があるときは、その通知を受領した後三十日以内に、人事委員会に異議の申立をすることができる。

第九十一条第二項及び第三項の規定は、前項の異議の申立のあつた場合に、これを準用する。

第六項の異議の申立をしなかつた職員及び人事委員会が異議の申立について調査した結果、通知の内容が正当であると決定せられた職員は、人事委員会規則の定めるところにより、人事委員会規則の定める期間内に、その企業に対する関係の全部若しくは一部を絶つか、又はその官職を退かなければならない。

 (他の事業又は事務の関与制限)

第百四条 職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他他の事業に従事し、若しくは事務を行うには、その所轄庁の長の許可を要する。

 (職員の職務の範囲)

第百五条 職員は、職員としては法令による職務を担当する以外の義務を負わない。

 (勤務条件)

第百六条 職員の勤務条件その他職員の服務に関し必要な事項は、人事委員会規則でこれを定めることができる。

前項の人事委員会規則は、この法律の規定の趣旨に沿うものでなければならない。

第八節 退職者に対する恩給

 (退職者に対する恩給の根本基準)

第百七条 職員であつて、相当年限、忠実に勤務して退職した者に対しては、恩給が与えられなければならない。

前項の恩給に関して必要な事項は、法律によつてこれを定める。

公務に基く負傷若しくは疾病に基き退職した者又は公務に基き死亡した者の遺族に対しては、法律の定めるところにより、恩給を与えることができる。

 (恩給制度の目的)

第百八条 前条の恩給制度は、本人及び本人がその退職又は死亡の当時直接扶養する者をして、退職又は死亡の時の条件に応じて、その後において適当な生活を維持するに必要な所得を与えることを目的とするものでなければならない。

前条第三項の場合においては、第九十三条の規定による補償制度との間に適当な調整が図られなければならない。

恩給制度は、健全な基礎のもとに計画され、人事委員会によつて運用されるものでなければならない。

人事委員会は、なるべく速かに、恩給制度に関して研究を行い、その成果を内閣総理大臣に提出しなければならない。

第四章 罰則

第百九条 第三十九条の規定による禁止に違反した者は、三年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。

前項の者の収受した金銭その他の利益は、これを没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。

第百十条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。

一 第十七条第二項の規定により、証人として喚問を受け虚偽の陳述をした者

二 第十七条第二項の規定により、書類又はその写の提出を求められ、虚偽の事項を記載した書類又は写を提出した者

三 第四十条又は第四十一条の規定による禁止に違反した者

四 第百三条第二項の規定による禁止に違反した者

第百十一条 第十七条第二項の規定により証人として喚問を受け、正当の理由がなくてこれに応ぜず、又は同項の規定により書類若しくはその写の提出を求められ、正当の理由がなくてこれに応じなかつた者は、これを三千円以下の過料に処する。

附 則

第一条 この法律中附則第二条の規定は、昭和二十二年十一月一日から、その他の規定は、昭和二十三年七月一日からこれを施行する。

人事委員会は、遅くとも昭和二十四年一月一日には設置されなければならない。

この法律中人事委員会及び服務に関する規定(これらに関する附則の規定を含む。)以外の規定は、法律又は人事委員会規則の定めるところにより、実行の可能な限度において、逐次これを適用することができる。

第二条 内閣総理大臣の所轄の下に、臨時人事委員会を置く。

臨時人事委員会は、この法律の施行に必要な範囲内において、官職、在職状況その他人事行政一般に関する調査その他の準備の事務を掌る権限を有する。

臨時人事委員会は、昭和二十三年七月一日から人事委員会の設置に至るまで、この法律に定める人事委員会の職権を行う。この場合において、この法律中「人事委員会」とあるのは「臨時人事委員会」、「人事委員」とあるのは「臨時人事委員」と読み替えるものとする。

臨時人事委員会は委員長及び委員二人を以て、これを組織する。

委員長及び委員は、人事委員会が設置されたときは、退職するものとする。この場合においては、委員長は、遅滞なくその事務を人事委員長に引き継がなければならない。

第五条第一項、第三項乃至第五項及び第十一条第二項の規定は、委員長及び委員について、これを準用する。

臨時人事委員会に事務局を置く。

事務局に事務局長一人及び政令で定める所要の職員を置く。

臨時人事委員会の権限を実施するため必要な事項は、昭和二十三年六月三十日までは政令で、その後は法律又は人事委員会規則で、これを定める。

第三条 第五条第六項にいう大学学部又は高等学校には、大学令による大学学部又は高等学校令若しくは専門学校令による高等学校若しくは専門学校を含むものとする。

第四条 最初に任命される人事委員の中二人の任期は、第七条第一項本文の規定にかかわらず、一人は五年、他の一人は三年とする。この場合において、いづれの人事委員の任期を、いづれとするかは、内閣総理大臣が、これを決定する。

第五条 人事委員長以外の人事委員が、ともに最初に任命された人事委員である場合において、第十一条第三項の規定を適用するについては、同項中「先任の人事委員」とあるのは、「任期の長い人事委員」と読み替えるものとする。

第六条 第三十八条第三号にいう懲戒免職の処分には、従前の規定による懲戒免官を含むものとする。

第七条 従前の規定により休職を命ぜられた者又は懲戒手続中の者若しくは懲戒処分を受けた者の休職又は懲戒に関しては、なお従前の例による。

第八条 第八十二条第二号又は第三号の規定は、同条の規定適用前の行為についても、また、これを適用する。

第九条 人事委員会の指定する日において、その指定する官職に在任する者は、人事委員会規則の定めるところにより、この法律に基く試験又は選考に合格し、その他その官職の属する職種及び等級に必要な資格要件を具備し、且つ、この法律に基く手続によりその官職に就いた者とみなす。但し、附則第十一条に規定する者については、この限りでない。

第十条 前条の規定による官職の指定があつた場合において、その官職に任用される臨時的職員については、任命権者は、人事委員会の承認を得て、第六十条第一項に規定する任期に関する制限にかかわらず、前条の規定により指定された日から三年を超えない期間、その者を在任させることができる。

第十一条 人事委員会の指定する日において、総理庁若しくは各省の外局若しくは内局又は人事委員会の指定する機関の長及び次長その他これらに準ずべき官職で人事委員会の指定するものに存任する者は、人事委員会規則の定めるところにより、その際前条の規定による臨時的職員に任用されたものとみなす。但し、その在任は、昭和二十三年七月一日から三年を超えることはできない。

前項に規定する官職については、人事委員会は、遅くとも昭和二十三年七月一日から二年以内に、職階の格付及び試験又は選考の実施ができるように努めなければならない。

第十二条 第百条の規定は、従前職員であつた者で同条の規定施行前退職した者についても、これを適用する。

第十三条 外交官、領事官その他の在外職員、学校教員、裁判所の職員、検察官その他の一般職に属する職員に関し、その職務と責任の特殊性に基いて、この法律の特例を要する場合においては、別に法律又は人事委員会規則を以て、これを規定することができる。但し、その特例は、この法律第一条の精神に反するものであつてはならない。

第十四条 この法律の各規定施行又は適用の際、現に効力を有する政府職員に関する法令の規定の改廃及びこれらの規定の適用を受ける者に、この法律の規定を適用するについて、必要な経過的特例その他の事項は、法律又は人事委員会規則でこれを定める。

(内閣総理・外務・内務・大蔵・司法・文部・厚生・農林・商工・運輸・逓信・労働大臣署名)

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