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法律第百五号(昭二七・四・二八)

◎平和条約の実施に伴う刑事判決の再審査等に関する法律

 (目的)

第一条 この法律は、日本国との平和条約(以下「平和条約」という。)第十七条(b)項の規定に基く刑事判決の再審査等について定めることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「連合国」とは、平和条約第二十五条に規定する連合国をいう。

2 この法律において「連合国人」とは、左の各号に掲げるものをいう。

一 連合国の国籍を有する者

二 連合国の法令に基いて設立された法人

三 前号に掲げるものを除く外、営利を目的とする法人で、前二号若しくは本号に掲げるもの又はこれらに準ずる団体がその株式又は持分(当該法人の役員が前二号若しくは本号に掲げるもの又はこれらに準ずる団体の計算において有する株式又は持分を除く。)の全部を有するもの

四 第二号に掲げるものを除く外、前三号若しくは本号に掲げるもの又はこれらに準ずる団体が支配する営利を目的としない法人

 (再審の請求)

第三条 連合国人が有罪の言渡を受け、その判決が昭和十六年十二月八日から日本国と当該連合国との間に平和条約が効力を生ずる日までの間において確定した場合において、当該連合国人がその間における訴訟手続において被告人として事件について充分な陳述ができなかつたときは、日本国と当該連合国との間に平和条約が効力を生じた日から一年内に限り、その判決に対して、当該連合国人の利益のために、再審の請求をすることができる。

 (請求についての審査)

第四条 前条の規定による再審の請求を受けた裁判所は、充分な陳述ができなかつたことが原判決に影響を及ぼすか否かについて審査し、原判決に影響を及ぼすと認めるべき相当な理由がある場合には再審開始の決定をし、その他の場合には請求を棄却する決定をしなければならない。

2 前項の決定をするには、検察官及び再審の請求をした者の陳述を聞かなければならない。

3 裁判所は、審査のため必要があるときは、合議体の構成員に事実の取調をさせ、又は地方裁判所、家庭裁判所若しくは簡易裁判所の裁判官にこれを嘱託することができる。この場合には、受命裁判官及び受託裁判官は、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。

4 検察官及び再審の請求をした者は、裁判所に押収、捜索、検証、証人尋問又は鑑定の処分を請求することができる。

5 第一項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

 (再審の審判)

第五条 裁判所は、前条第一項の規定による再審開始の決定が確定した事件については、原判決当時の事実及び刑罰法令に基いて更に審判をしなければならない。

2 前項の場合において、大赦を受けた罪と大赦を受けなかつた罪とが併合罪の関係にあるときは、前項の規定による刑の言渡と同時に、別に、大赦を受けた罪と大赦を受けなかつた罪とに分けて、刑を定めて言い渡さなければならない。

3 大赦を受けた罪について言い渡された刑は、この法律に定める地位の回復又は救済の関係においてのみ効力を生ずる。

 (刑事訴訟法等の適用)

第六条 この法律に定める再審については、この法律の規定による外、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)又は従前の刑事訴訟法(大正十一年法律第七十五号)及び日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律(昭和二十二年法律第七十六号)の定めるところによる。

 (国の責任)

第七条 この法律に定める再審の手続において再審開始の理由があることが認められた場合において、当該連合国人が原判決の結果損害を受けたときは、国は、その者を原判決前の地位に回復するか又はその者に対しそれぞれの事情の下において公正且つ衡平な救済を与える責に任ずる。

2 前項の規定による国に対する請求は、再審の判決が確定した日から一年内にしなければならない。

3 第一項に定める地位の回復又は救済の手続については、別に法律で定める。

附 則

この法律は、平和条約の最初の効力発生の日から施行する。

(法務総裁・内閣総理大臣署名) 

 

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