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法律第百六号(昭二九・五・一五)

  ◎金融機関再建整備法の一部を改正する法律

 金融機関再建整備法(昭和二十一年法律第三十九号)の一部を次のように改正する。

 金融機関再建整備法目次中「第五章 旧勘定の最終処理」を

第五章 旧勘定の最終処理

 
 

第五章の二 在外資産負債の処理

に改める。

 第三十六条の次に次の一条を加える。

第三十六条の二 主務大臣は、前に旧勘定に属した資産及び負債で、最終処理の際、暫定評価基準により評価が行はれてゐたものにつき、確定評価基準を決定することができる。

  第七条第三項及び第九条の規定は、前項の場合にこれを準用する。

 第三十七条第一項中「前条第二項」を「第三十六条第二項」に、同条第二項中「前項」を「第一項」に、同条第三項中「前二項」を「前四項」に改め、同条第一項の次に次の二項を加える。

  前項に規定する処分益又は処分損とは、処分価額と確定評価基準により評価が行はれた時の帳簿価額との差益又は差損をいふ。但し、確定評価基準により評価が行はれてゐない資産及び負債については、処分価額と新勘定及び旧勘定の区分の消滅した時の帳簿価額との差益又は差損をいふ。

  第一項に規定する増価益又は減価損とは、新勘定及び旧勘定の区分の消滅の際、暫定評価基準により評価が行はれてゐたものにつき、前条の規定により設けられた確定評価基準によつて評価が行はれた場合に生じた差益又は差損をいふ。

 第三十七条の三第一項中「整理が完了したとき」の下に「(これらの資産及び負債のうち、第七条第一項の命令で定めるものを除くすべてについて確定評価基準による評価が行はれたときを含む。)」を加え、「確定損を負担した整理債務の債権者にその整理負担額全額まで」を「同条第一項第五号に規定する金額の全額まで」に改め、同条第二項を次のように改める。

  金融機関は、その調整勘定の閉鎖の際、同勘定に利益金の残額があるときは、第二十五条第一項の規定により株主として確定損を負担した者(相続人その他の一般承継人を含む。以下同じ。)に、左の各号の金額を分配しなければならない。

 一 負担した確定損に相当する金額

 二 金融機関の新勘定及び旧勘定の区分の消滅した日の翌日から本号の規定による分配の日までの期間に応じ、前条第一項第四号に規定する約定利率のない整理債務の債権者に分配する場合に附する利率による利息に相当する金額

 第三十七条の三に次の三項を加える。

  前項の場合において、調整勘定の利益金の残額がその分配金額に不足するときは、その確定損の整理負担額に応じ、均等の割合で分配しなければならない。

  金融機関は、第二項の規定により分配してもなおその調整勘定に利益金の残額があるときは、これを当該金融機関の利益準備金として積み立てるものとする。

  前三項の規定は、第三十八条の三の規定により在外資産負債処理勘定を設けてゐる金融機関には、適用しない。

 第三十七条の七中「普通所得」を「所得」に、「(昭和二十三年法律第百十号)」を「(昭和二十五年法律第二百二十六号)」に改め、同条に次の三項を加える。

  第三十七条の二第一項第四号又は第五号の規定により分配される利息に相当する金額は、所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の適用については、同法第九条第一号に規定する利子所得とみなす。

  第三十七条の三第二項第一号の規定により分配する金額は、法人税法による各事業年度の所得及び地方税法による事業税を課する場合における各事業年度の所得の計算上は、これを損金とする。

  第三十七条の三第二項第二号の規定により分配される利息に相当する金額は、所得税法の適用については、同法第九条第二号に規定する配当所得とみなす。

 第五章の次に次の一章を加える。

   第五章の二 在外資産負債の処理

 (在外資産負債)

第三十八条の二 この章において「在外資産」及び「在外負債」とは、金融機関の支店又は従たる事務所のうち金融機関経理応急措置法の施行の際同法の施行地外にあつたもの(以下「在外店舗」という。)に係る資産及び負債であつて、この法律の施行地外に住所を有する者(閉鎖機関令に規定する閉鎖機関及び旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産の整理に関する政令に規定する在外会社を除く。)に係る債権及び債務以外のものをいう。

2 在外店舗がこの法律の施行地内にあつた店舗(事務所を含む。以下同じ。)に向けて振り出した送金為替のうち、未払となつている部分に係る支払の債務は、当該振出店舗の属した金融機関が当該為替の所持人に対して当該振出店舗に係る負債としてこれを負うものとする。

3 在外資産に属する債権又は在外負債に属する債務で別表に換算率の定があるものの金額は、同表の換算率により換算した金額とする。但し、在外資産に属する債権のうち、その債務者が閉鎖機関令に規定する閉鎖機関であるものについては同令に定める換算率、旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産の整理に関する政令に規定する在外会社であるものについては同令に定める換算率を適用するものとする。

4 前項の債権及び債務については、金融機関再建整備法の一部を改正する法律(昭和二十九年法律第百六号)の施行の日以後は、利息は附されないものとする。

 (在外資産負債処理勘定の設定)

第三十八条の三 在外資産又は在外負債を有する金融機関(以下この章において単に「金融機関」という。)は、主務大臣の指定する日において在外資産負債処理勘定(以下「在外勘定」という。)を設けなければならない。

2 第三十九条第一項に規定する整備計画書の定めるところにより、事業の全部を譲渡して解散した金融機関が、金融機関経理応急措置法の施行の際、在外資産又は在外負債を有していたときは、当該事業を譲り受けた金融機関は、主務大臣の定めるところにより、当該在外資産又は在外負債をその譲り受けた金融機関の在外資産又は在外負債として引き継ぎ、在外勘定を設けなければならない。

3 在外資産及び在外負債は、在外勘定に属するものとし、他の勘定に属せしめてはならない。

 (在外勘定の経理)

第三十八条の四 金融機関の在外負債に関する債権者が、債権者であることを証する物件を添えて、当該金融機関に申し出た場合において、当該金融機関は、その申出が正当であるときは、その申出に係る債権に関する債務を当該金融機関の在外勘定の債務として確認しなければならない。

2 金融機関は、その在外資産については当該金融機関への帰属が確定した金額を在外勘定の資産の部に、在外負債については前項の規定により確認した金額を在外勘定の負債の部に計上するものとする。

3 金融機関は、金融機関経理応急措置法第三十二条第三項の規定により当該金融機関の旧勘定に属させられた在外店舗に対する借のうち、在外勘定の設定の際、当該金融機関の他の勘定に計上されているものを在外勘定に対する借とするものとする。

4 金融機関は、その調整勘定の閉鎖の際、同勘定に利益金の残額があるときは、これをその在外勘定に繰り入れて資産の部に計上するものとする。

5 在外勘定は、他の勘定と区分して経理しなければならない。

6 在外勘定の経理に関し必要な事項は、主務大臣が定める。

 (支払)

第三十八条の五 金融機関は、在外勘定に計上された第三十八条の二第二項の未払送金為替に係る債務のうち、主務大臣の指定する日までに前条第一項の債権者の申出があつたものにつき、その指定された日から九十日以内に、在外勘定に計上された資産の範囲内において、一件五万円(当該送金為替につき既に支払われた金額があるときは、その支払われた金額を五万円から差し引いた金額)を限度として支払をしなければならない。

2 金融機関は、前項の規定による支払をした後その在外勘定になお資産が計上されているとき、又はその支払後在外勘定に新たに資産が計上されたときは、主務大臣の認可を受け、省令で定めるところによりあらかじめ公告をして、在外勘定に計上されている債務につき、当該資産の範囲内において、支払をしなければならない。

3 前二項の場合において、支払に充てる資産が不足するときは、在外勘定に計上された債務の債権者に対し、その支払われるべき金額に応じ、それぞれ均等の割合で支払をしなければならない。

 (支払資金の繰入)

第三十八条の六 金融機関が前条第一項の規定による支払をする場合に、在外勘定にその支払に充てるべき資産が不足するときは、当該金融機関は、その調整勘定からその利益金の範囲内で当該不足金額の全部又は一部を在外勘定に繰り入れ、その支払に充てることができる。

2 前項の規定により在外勘定への繰入をした金融機関は、前条第一項の規定により支払を行つた後、在外勘定に資産が計上されたときは、同条第二項の規定による支払に先立ち、随時、その繰り入れた金額に相当する金額を返済しなければならない。但し、当該金融機関の調整勘定が第三十七条の三第一項の規定により閉鎖されたときは、この限りでない。

 (支払資金の借入)

第三十八条の七 調整勘定を設けなかつた金融機関が第三十八条の五第一項の規定による支払をする場合に、在外勘定にその支払に充てるべき資産が不足するときは、当該金融機関は、旧勘定の最終処理の際における旧勘定の積立金のうち、第二十五条第一項第二号の規定により取りくずされなかつた部分に相当する金額の範囲内で、他の勘定から当該不足金額の全部又は一部を在外勘定に借り入れ、その支払に充てることができる。

2 前条第二項本文の規定は、前項の規定による借入金の返済について準用する。

 (在外勘定の閉鎖)

第三十八条の八 金融機関は、在外負債に関する債権者への支払が完了したと認められるときは、主務大臣の認可を受け、省令の定めるところによりあらかじめ公告をして、その在外勘定を閉鎖することができる。

2 金融機関は、前項の規定による閉鎖の際、その在外勘定に資産が計上されているときは、当該資産の範囲内において、第三十八条の五の規定により支払われた債務の債権者に対し、主務大臣の定めるところにより、利息に相当する金額を分配しなければならない。

3 前項の規定による分配をしてもなおその在外勘定に資産があるときは、当該金融機関は、当該資産の範囲内において、第二十五条第一項の規定により株主として確定損を負担した者に対し、第三十七条の三第二項各号の金額を分配しなければならない。

4 第三十七条の三第三項の規定は、前項の規定による分配について準用する。

5 第三項の規定による分配を全額までしてもなおその在外勘定に資産があるときは、これを他の勘定に移し、これに相当する金額は、当該金融機関の利益準備金として積み立てるものとする。

6 調整勘定を有する金融機関の在外勘定の閉鎖の際、その在外勘定に資産があるときは、前三項の規定にかかわらず、当該資産を引当てにこれに見合う利益金をその調整勘定に繰り入れるものとする。

第三十八条の九 金融機関は、在外資産のないことが確定したときは、主務大臣の認可を受け、省令の定めるところにより公告をして、その在外勘定を閉鎖するものとする。

2 金融機関が前項の規定により在外勘定を閉鎖したときは、その在外負債に関する債権は、すべて同勘定の閉鎖の日において消滅するものとする。

 (税法上の特例)

第三十八条の十 在外勘定に繰り入れる金額又は在外勘定から支出する金額は、法人税法による各事業年度の所得及び地方税法により事業税を課する場合における各事業年度の所得の計算上、これを益金又は損金に算入しない。

2 第三十七条の七第二項から第四項までの規定は、第三十八条の八第二項又は第三項の規定により分配される金額について準用する。

 第六十三条中第十号を第十一号とし、第九号の次に次の一号を加える。

 十 第三十七条の三第二項若しくは第三項(第三十八条の八第四項において準用する場合を含む。)、第三十八条の五又は第三十八条の八第二項若しくは第三項の規定による支払若しくは分配を怠り、又はこれらの規定に違反してその支払若しくは分配をなしたとき

 第六十三条に次の二号を加える。

 十二 第三十八条の四の規定による経理を怠り、又は同条の規定に違反してその経理をなしたとき

 十三 第三十八条の六第二項(第三十八条の七第二項において準用する場合を含む。)の規定による返済を怠り、又は同項の規定に違反してその返済をなしたとき

 第七十条第一号中「又は第三十四条第一項」を「、第三十四条第一項、第三十八条の五第二項、第三十八条の八第一項又は第三十八条の九第一項」に改める。

 附則の次に別表として次のように加える。

別表

(一) 第三十八条の二第二項の未払送金為替に係る債務について適用する換算率表

表示通貨単位名

換算率(本邦通貨1円に対する金額)

(満州中央銀行券)

 

1円

(中国連合準備銀行券)

表示金額のうち

330,000円以下の部分

11円

表示金額のうち

330,000円をこえ

21円

750,000円以下の部分

表示金額のうち

750,000円をこえる部分

51円

(中央儲備銀行券)

表示金額のうち

1,830,000円以下の部分

61円

表示金額のうち

1,830,000円をこえ

117円

4,170,000円以下の部分

表示金額のうち

4,170,000円をこえる部分

394円

(昭和十二年軍用手票)

 

10円

(

グルデン

外貨表示軍用手票又は南方開発金庫券

)

1グルデン

(二) 債券(債務者たる金融機関の在外負債として経理されるものを除く。)又は第三十八条の二第二項の未払送金為替に係る債務以外の債務について適用する換算率表

在外店舗所在地域

表示通貨単位名

換算率(本邦通貨1円に対する金額)

朝鮮

1.5円

台湾

1.5円

樺太

1円

琉球

1円

関東州

1.6円

華中

(中国連合準備銀行券)

100円

(中央儲備銀行券)

2,400円

(昭和十二年軍用手票)

10円

ジヤワ

(

グルデン

外貨表示軍用手票又は南方開発金庫券

)

6グルデン

    附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 金融機関再建整備法の規定による調整勘定を設けなかつた金融機関のうち、同法第二十五条第一項第三号の規定により資本を減少したものは、この法律の施行の日の属する事業年度の決算において、前に旧勘定に属した資産及び負債について、新勘定及び旧勘定の区分の消滅した日の翌日からこの法律の施行の日までに生じた利益金及び損失金(金融機関再建整備法第三十七条第一項第一号又は第四号に規定する利益金及び損失金をいう。次項において同じ。)を計算し、その差益に相当する金額を限度として、同法第二十五条第一項の規定により株主として確定損を負担した者に対し、同法第三十七条の三第二項の規定に準じて計算した金額を支払わなければならない。

3 金融機関再建整備法の規定による調整勘定を設けた金融機関のうち、この法律の施行前に金融機関再建整備法第三十七条の二第一項第五号に規定する金額の全額まで分配してその調整勘定を閉鎖したものは、この法律の施行の日の属する事業年度の決算において、改正前の金融機関再建整備法第三十七条の三第二項の規定により法定準備金に併せられた金額と、前に旧勘定に属した資産及び負債について、調整勘定を閉鎖した日からこの法律の施行の日までに生じた利益金及び損失金を計算した場合の差益に相当する金額との合計額を限度として、金融機関再建整備法第二十五条第一項の規定により株主として確定損を負担した者に対し、同法第三十七条の三第二項の規定に準じて計算した金額を支払わなければならない。

4 金融機関再建整備法第三十七条の三第三項の規定は、前二項の規定による支払について準用する。

5 金融機関再建整備法第三十七条の七第三項の規定は、第二項又は第三項の規定による支払金額のうち利息に相当する金額を除く部分について、同法第三十七条の七第四項の規定は、第二項又は第三項の規定による支払金額のうち利息に相当する金額について、それぞれ準用する。

6 金融機関再建整備法の規定による調整勘定を設けている金融機関は、前に旧勘定に属した資産で資産再評価法(昭和二十五年法律第百十号)による再評価を行つた後、この法律の施行前に処分したものにつき、この法律の施行の日の属する事業年度の決算において、改正後の金融機関再建整備法第三十七条の規定により調整勘定で経理すべき処分益を再計算しなければならない。

7 左の場合には、その行為をした金融機関の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、三年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。

 一 第二項から第四項までの規定による支払を怠り、又はこれらの規定に違反してその支払をしたとき。

 二 前項の規定による経理を怠り又は同項の規定に違反してその経理をしたとき。

8 資産再評価法の一部を次のように改正する。

  第百五条及び第百六条を次のように改める。

  (調整勘定を設けている金融機関の再評価積立金の取くずし)

 第百五条 金融機関再建整備法の規定による調整勘定を設けている金融機関が、前に旧勘定に属した資産で再評価を行つたものを処分し、同法第三十七条第一項に規定する処分益を生じた場合は、当該金融機関は、再評価積立金を貸借対照表の負債の部に計上している間は、その処分した日において、その処分益に相当する金額の再評価積立金を取りくずさなければならない。但し、その処分の際、当該資産の処分価額とその時における帳簿価額との差益があるときは、処分益とその差益との差額に相当する再評価積立金を取りくずせば足りる。

 2 前項に規定する金融機関において、前に旧勘定に属した資産で再評価を行つたものにつき、金融機関再建整備法第三十七条第一項に規定する増価益を生じた場合は、当該金融機関は、再評価積立金を負債の部に計上している間は、その確定評価基準による評価を行つた日において、その増価益に相当する金額の再評価積立金を取りくずさなければならない。但し、その確定評価基準による評価を行つた際、当該資産の評価価額とその直前の帳簿価額との差益があるときは、増価益とその差益との差額に相当する再評価積立金を取りくずせば足りる。

 第百六条 削除

  第百七条第一項第一号及び第百二十六条第二号中「第百三条又は第百四条の規定」を「第百三条から第百五条までの規定」に改める。

  第百十一条を次のように改める。

 第百十一条 削除

9 改正後の資産再評価法第百五条の規定は、この法律の施行前に処分された資産につき第六項の規定により再計算された処分益の経理についても適用する。この場合において、同条中「その処分した日」とあるのは、「金融機関再建整備法の一部を改正する法律(昭和二十九年法律第百六号)附則第六項に規定する決算の日」と読み替えるものとする。

10 農林漁業組合再建整備法(昭和二十六年法律第百四十号)に基く再建整備又は農林漁業組合連合会整備促進法(昭和二十八年法律第百九十号)に基く整備を行つている農業協同組合及び農業協同組合連合会並びに当該農業協同組合連合会の構成員たる農業協同組合及び農業協同組合連合会に対する金融機関再建整備法第三十七条及び資産再評価法第百十一条の規定の適用については、この法律によるこれらの規定の改正にかかわらず、なお従前の例による。

(大蔵・内閣総理大臣署名) 

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