衆議院

メインへスキップ



法律第百三十号(平一五・七・二五)

  ◎環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律

 (目的)

第一条 この法律は、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会(以下「持続可能な社会」という。)を構築する上で事業者、国民及びこれらの者の組織する民間の団体(以下「国民、民間団体等」という。)が行う環境保全活動並びにその促進のための環境保全の意欲の増進及び環境教育が重要であることにかんがみ、環境保全活動、環境保全の意欲の増進及び環境教育について、基本理念を定め、並びに国民、民間団体等、国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、基本方針の策定その他の環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に必要な事項を定め、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「環境保全活動」とは、地球環境保全、公害の防止、自然環境の保護及び整備その他の環境の保全(良好な環境の創出を含む。以下単に「環境の保全」という。)を主たる目的として自発的に行われる活動のうち、環境の保全上直接の効果を有するものをいう。

2 この法律において「環境保全の意欲の増進」とは、環境の保全に関する情報の提供並びに環境の保全に関する体験の機会の提供及びその便宜の供与であって、環境の保全についての理解を深め、及び環境保全活動を行う意欲を増進するために行われるものをいう。

3 この法律において「環境教育」とは、環境の保全についての理解を深めるために行われる環境の保全に関する教育及び学習をいう。

 (基本理念)

第三条 環境保全活動、環境保全の意欲の増進及び環境教育は、地球環境がもたらす恵みを持続的に享受すること、豊かな自然を保全し及び育成してこれと共生する地域社会を構築すること並びに循環型社会を形成し、環境への負荷を低減することの重要性を踏まえ、国民、民間団体等の自発的意思を尊重しつつ、持続可能な社会の構築のために社会を構成する多様な主体がそれぞれ適切な役割を果たすこととなるように行われるものとする。

2 環境保全活動、環境保全の意欲の増進及び環境教育は、森林、田園、公園、河川、湖沼、海岸、海洋等における自然体験活動その他の体験活動を通じて環境の保全についての理解と関心を深めることの重要性を踏まえ、地域住民その他の社会を構成する多様な主体の参加と協力を得るよう努めるとともに、透明性を確保しながら継続的に行われるものとする。

3 環境保全活動、環境保全の意欲の増進及び環境教育は、森林、田園、公園、河川、湖沼、海岸、海洋等における自然環境をはぐくみ、これを維持管理することの重要性について一般の理解が深まるよう、必要な配慮をするとともに、国土の保全その他の公益との調整に留意し、並びに農林水産業その他の地域における産業との調和、地域住民の生活の安定及び福祉の維持向上並びに地域における環境の保全に関する文化及び歴史の継承に配慮して行われるものとする。

 (国民、民間団体等の責務)

第四条 国民、民間団体等は、前条の基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、環境保全活動及び環境教育を自ら進んで行うよう努めるとともに、環境保全の意欲の増進その他の環境の保全に関する取組を行うことにより、他の者の行う環境保全活動、環境保全の意欲の増進及び環境教育に協力するよう努めるものとする。

 (国の責務)

第五条 国は、経済社会の変化に伴い、持続可能な社会の構築に関し国民、民間団体等が行う環境保全活動、環境保全の意欲の増進及び環境教育の果たすべき役割がより重要となることにかんがみ、基本理念にのっとり、環境の保全に関する施策の策定及び実施に当たっては、環境保全活動、環境保全の意欲の増進及び環境教育を行う国民、民間団体等との適切な連携を図るよう留意するものとする。

2 国は、基本理念にのっとり、環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施するよう努めるものとする。

 (地方公共団体の責務)

第六条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施するよう努めるものとする。

 (基本方針)

第七条 政府は、環境保全の意欲の推進及び環境教育の増進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。

2 基本方針には、次に掲げる事項について、環境保全活動、環境保全の意欲の増進及び環境教育の動向等を勘案して、定めるものとする。

 一 環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関する基本的な事項

 二 環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関し政府が実施すべき施策に関する基本的な方針

 三 その他環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関する重要な事項

3 環境大臣及び文部科学大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

4 環境大臣及び文部科学大臣は、基本方針の案の作成に関する事務のうち、農林水産省、経済産業省又は国土交通省の所掌に係るものについては、それぞれ、農林水産大臣、経済産業大臣又は国土交通大臣と共同して行うものとする。

5 環境大臣及び文部科学大臣は、基本方針の案を作成しようとするときは、広く一般の意見を聴かなければならない。

6 環境大臣及び文部科学大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。

7 第三項から前項までの規定は、基本方針の変更について準用する。

 (都道府県及び市町村の方針、計画等)

第八条 都道府県及び市町村は、基本方針を勘案して、その都道府県又は市町村の区域の自然的社会的条件に応じた環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関する方針、計画等を作成し、及び公表するよう努めるものとする。

 (学校教育等における環境教育に係る支援等)

第九条 国、都道府県及び市町村は、国民が、その発達段階に応じ、あらゆる機会を通じて環境の保全についての理解と関心を深めることができるよう、学校教育及び社会教育における環境教育の推進に必要な施策を講ずるものとする。

2 国、都道府県及び市町村は、環境の保全に関する体験学習等の学校教育における環境教育の充実のための措置、環境教育に係る教育職員の資質の向上のための措置その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

3 国は、都道府県及び市町村に対し、第一項に規定する施策及び前項に規定する措置に関し必要な助言、指導その他の措置を講ずるよう努めるものとする。

4 国は、前項の措置を講ずるに当たっては、都道府県及び市町村に対し、第十七条の規定による情報の提供(第十一条第七項に規定する登録人材認定等事業に関する情報の提供を含む。)その他の環境教育の推進に資する情報の提供等により、学校教育及び社会教育における環境教育の実施の際に、環境の保全に関する知識、経験等を有する人材が広く活用されることとなるよう、適切な配慮をするよう努めるものとする。

5 国、都道府県及び市町村は、環境教育の内容及び方法についての調査研究を行い、その結果に応じて、これらの改善に努めるものとする。

 (職場における環境保全の意欲の増進及び環境教育)

第十条 事業者及び国民の組織する民間の団体(次項及び第二十三条第一項において「民間団体」という。)、事業者、国並びに地方公共団体は、その雇用する者に対し、環境の保全に関する知識及び技能を向上させるために必要な環境保全の意欲の増進又は環境教育を行うよう努めるものとする。

2 国、都道府県及び市町村は、民間団体又は事業者であってその雇用する者に対して環境保全の意欲の増進又は環境教育を行うものに対し、環境の保全に関する指導を行うことができる人材、環境保全の意欲の増進又は環境教育に係る資料等に関する情報の提供その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。

 (人材認定等事業の登録)

第十一条 環境の保全に関する知識及び環境の保全に関する指導を行う能力を有する者を育成し、又は認定する事業(以下「人材認定等事業」という。)であって主務省令で定めるものを行う国民、民間団体等は、当該人材認定等事業について、主務大臣の登録を受けることができる。

2 前項の登録(以下この条及び第十三条から第十五条までにおいて単に「登録」という。)の申請をしようとする者は、主務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を主務大臣に提出しなければならない。

 一 氏名又は名称及び住所並びに法人その他の団体にあっては代表者の氏名

 二 人材認定等事業の内容

 三 その他主務省令で定める事項

3 次の各号のいずれかに該当する者は、登録の申請をすることができない。

 一 第二十六条に規定する罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者

 二 第十四条第一項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から二年を経過しない者

 三 法人その他の団体であって、その役員(法人でない団体にあっては、その代表者)のうちに前二号のいずれかに該当する者があるもの

4 主務大臣は、登録の申請に係る人材認定等事業が次の各号のいずれにも適合していると認めるときは、その登録をしなければならない。

 一 基本方針に照らして適切なものであること。

 二 環境の保全に関する知識及び環境の保全に関する指導を行う能力を有する者の育成又は認定を適正かつ確実に行うに足りるものとして主務省令で定める基準に適合するものであること。

5 主務大臣は、登録をした場合においては、遅滞なく、その旨を申請者に通知するとともに、その旨を公示しなければならない。

6 主務大臣は、登録の申請に係る人材認定等事業が第四項各号に掲げる要件に適合しないと認める場合においては、遅滞なく、その理由を示して、その旨を申請者に通知しなければならない。

7 登録を受けた人材認定等事業(以下「登録人材認定等事業」という。)を行う国民、民間団体等(以下「登録民間団体等」という。)は、第二項各号に掲げる事項を変更したとき又は登録人材認定等事業を廃止したときは、主務省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を主務大臣に届け出なければならない。

8 主務大臣は、前項の規定による届出があったときは、遅滞なく、その旨を公示しなければならない。

 (報告、助言等)

第十二条 主務大臣は、登録民間団体等に対し、その実施する登録人材認定等事業に関し、登録人材認定等事業の適正な実施を確保するために必要な限度において報告若しくは資料の提出を求め、又はその実施する登録人材認定等事業の適正な運営を図るため必要な助言をすることができる。

 (表示の制限)

第十三条 人材認定等事業を行う者は、当該人材認定等事業について、登録を受けていないのに、登録を受けた人材認定等事業を行う者であると明らかに誤認されるおそれのある表示をしてはならない。

 (登録の取消し)

第十四条 主務大臣は、次の各号のいずれかに該当する場合には、登録を取り消すことができる。

 一 登録人材認定等事業が、第十一条第四項各号に掲げる要件に適合しなくなったとき。

 二 登録民間団体等が、第十一条第三項各号のいずれかに該当するに至ったとき。

 三 登録民間団体等が、第十二条の規定による報告又は資料の提出を求められて、報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をしたとき。

 四 登録民間団体等が、偽りその他不正の手段により登録を受けたとき。

2 主務大臣は、前項の規定により登録を取り消したときは、遅滞なく、その理由を示して、その旨を当該登録の取消しを受けた者に通知するとともに、その旨を公示しなければならない。

 (主務省令への委任)

第十五条 第十一条から前条までに定めるもののほか、登録に関し必要な事項は、主務省令で定める。

 (都道府県又は市町村が行う人材の育成又は認定のための取組に対する情報提供等)

第十六条 主務大臣は、都道府県又は市町村が環境の保全に関する人材の育成又は認定のための取組を行う場合において必要があると認めるときは、情報の提供、助言、指導その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 (人材の育成又は認定のための取組に関する情報の収集、提供等)

第十七条 主務大臣は、国民、民間団体等の行う環境の保全に関する人材の育成又は認定のための取組に関する情報の収集、整理及び分析並びにその結果の提供を行うものとする。

 (人材の育成のための手引その他の資料等の質の向上)

第十八条 主務大臣は、環境の保全に関する人材の育成のための手引その他の資料等の作成、提供等を行う国民、民間団体等の求めに応じ、必要な助言を行うよう努めるものとする。

2 主務大臣は、前項の手引その他の資料等の質の向上を図るため、これらに関連する情報の収集、整理及び分析並びにその結果の提供を行うものとする。

 (環境保全の意欲の増進の拠点としての機能を担う体制の整備)

第十九条 国は、国民、民間団体等並びに都道府県及び市町村が行う環境保全の意欲の増進と相まって、環境保全の意欲の増進を効果的に推進するため、次に掲げる拠点としての機能を担う体制の整備に努めるものとする。

 一 国民、民間団体等が行う環境保全の意欲の増進の内容に関する情報その他環境の保全に関する情報及び資料を収集し、及び提供すること。

 二 環境の保全に関する人材の育成のための手引その他の資料等に係る助言を行うことその他環境の保全に関し、照会及び相談に応じ、並びに必要な助言を行うこと。

 三 環境保全の意欲の増進を行う国民、民間団体等相互間の情報交換及び交流に関し、その機会を提供することその他の便宜を供与すること。

 四 その他環境保全の意欲の増進を行うこと。

2 都道府県及び市町村は、その都道府県又は市町村の区域の自然的社会的条件に応じ、国民、民間団体等及び国が行う環境保全の意欲の増進と相まって、環境保全の意欲の増進を効果的に推進するための拠点としての機能を担う体制の整備(次項において「拠点機能整備」という。)に努めるものとする。

3 国は、都道府県及び市町村が行う拠点機能整備について、必要な支援に努めるものとする。

 (国民、民間団体等による土地等の提供に関する措置)

第二十条 国は、土地又は建物の所有者又は使用及び収益を目的とする権利(臨時設備その他一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。)を有する者(国民、民間団体等に限る。)が当該土地又は建物を自然体験活動の場として提供することその他の多数の者を対象とするのにふさわしい環境保全の意欲の増進に係る体験の機会の場として自発的に提供することを促進するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 (協働取組の在り方等の周知)

第二十一条 国は、協働取組(二以上の国民、民間団体等がそれぞれ適切に役割を分担しつつ対等の立場において相互に協力して行う環境保全の意欲の増進その他の環境の保全に関する取組をいう。以下この条において同じ。)について、その在り方、その有効かつ適切な実施の方法及び協働取組相互の連携の在り方の周知のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 (財政上の措置等)

第二十二条 国及び地方公共団体は、環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に必要な財政上又は税制上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとする。

 (情報の積極的公表等)

第二十三条 国、地方公共団体、民間団体及び事業者は、環境保全の意欲の増進その他の環境の保全に関する取組への国民、民間団体等の参加を促進するため、その行う環境保全の意欲の増進の内容に関する情報その他の環境の保全に関する情報を積極的に公表するよう努めるものとする。

2 国は、前項の情報の収集、整理及び分析並びにその結果の提供を行うよう努めるものとする。

 (配慮等)

第二十四条 国及び地方公共団体は、この法律に基づく措置を実施するに当たっては、環境保全の意欲の増進又は環境教育を行う国民、民間団体等の自立性を阻害することがないよう配慮するとともに、当該措置の公正性及び透明性を確保するために必要な措置を講ずるものとする。

 (主務大臣等)

第二十五条 この法律における主務大臣は、環境大臣、文部科学大臣、農林水産大臣、経済産業大臣及び国土交通大臣とする。

2 この法律における主務省令は、環境大臣、文部科学大臣、農林水産大臣、経済産業大臣及び国土交通大臣の発する命令とする。

 (罰則)

第二十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

 一 偽りその他不正の手段により第十一条第一項の登録を受けた者

 二 第十二条の規定による報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者

第二十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同条の刑を科する。

第二十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の過料に処する。

 一 第十一条第七項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

 二 第十三条の規定に違反した者

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、平成十五年十月一日から施行する。ただし、第十一条から第十六条まで及び第二十六条から第二十八条までの規定は、平成十六年十月一日から施行する。

 (検討)

2 政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

(総務・文部科学・農林水産・経済産業・国土交通・環境・内閣総理大臣署名) 

衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.