法律第三十七号(平一九・五・一一)
◎国際刑事裁判所に対する協力等に関 する法律
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 国際刑事裁判所に対する協力
第一節 通則(第三条−第五条)
第二節 証拠の提供等
第一款 証拠の提供(第六条−第十三条)
第二款 裁判上の証拠調べ及び書類の送達(第十四条−第十六条)
第三款 受刑者証人等移送(第十七条・第十八条)
第三節 引渡犯罪人の引渡し等
第一款 引渡犯罪人の引渡し(第十九条−第三十三条)
第二款 仮拘禁(第三十四条・第三十五条)
第三款 雑則(第三十六条・第三十七条)
第四節 執行協力(第三十八条−第四十八条)
第五節 雑則(第四十九条−第五十一条)
第三章 国際刑事警察機構に対する措置(第五十二条)
第四章 国際刑事裁判所の運営を害する罪(第五十三条−第六十五条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、国際刑事裁判所に関 するローマ規程(以下「規程」という。)が定める集団殺害犯罪その他の国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪について、国際刑事裁判所の捜査、裁判及び刑の執行等につ いての必要な協力に関する手続を定めるとともに、国際刑事裁判所の運営を害する行為についての罰則を定めること等により、規程の的確な実施を確保することを目的とす る。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲 げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 国際刑事裁判所 規程第一条に規定 する国際刑事裁判所をいう。
二 管轄刑事事件 規程第五条1及び第 七十条1の規定により国際刑事裁判所が管轄権を有する犯罪について国際刑事裁判所がその管轄権を行使する事件をいう。
三 重大犯罪 規程第五条1の規定によ り国際刑事裁判所が管轄権を有する国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪として規程に定める犯罪をいう。
四 証拠の提供 規程第九十三条1の規 定による国際刑事裁判所の請求により、国際刑事裁判所の捜査又は裁判に係る手続(以下「国際刑事裁判所の手続」という。)に必要な証拠を国際刑事裁判所に提供することをい う。
五 裁判上の証拠調べ 規程第九十三条 1の規定による国際刑事裁判所の請求により、規程第三十九条2に規定する上訴裁判部又は第一審裁判部が行う証拠調べについての援助として日本国の裁判所が行う証拠調べをい う。
六 書類の送達 規程第九十三条1の規 定による国際刑事裁判所の請求により、規程第三十九条2に規定する上訴裁判部、第一審裁判部又は予審裁判部が行う書類の送達についての援助として日本国の裁判所が行う書類 の送達をいう。
七 受刑者証人等移送 規程第九十三条 1及び7の規定による国際刑事裁判所の請求により、証人その他の国際刑事裁判所の手続における関係人(国際刑事裁判所の捜査又は裁判の対象とされる者を除く。)として出頭 させることを可能とするため、国内受刑者(日本国において懲役刑若しくは禁錮刑又は国際受刑者移送法(平成十四年法律第六十六号)第二条第二号に定める共助刑の執行として 拘禁されている者をいう。以下同じ。)を移送することをいう。
八 引渡犯罪人の引渡し 規程第八十九 条1又は第百十一条の規定による国際刑事裁判所の引渡しの請求により、その引渡しの対象とされた者(以下「引渡犯罪人」という。)の引渡しをすることをいう。
九 仮拘禁 規程第九十二条1の規定に よる国際刑事裁判所の仮逮捕の請求により、その仮逮捕の対象とされた者(以下「仮拘禁犯罪人」という。)を仮に拘禁することをいう。
十 執行協力 規程第七十五条5若しく は第百九条1の規定により罰金刑(国際刑事裁判所が規程第七十条3又は第七十七条2(a)の規定により命ずる罰金をいう。以下同じ。)、没収刑(国際刑事裁判所が規程第七 十七条2(b)の規定により命ずる没収をいう。以下同じ。)若しくは被害回復命令(国際刑事裁判所が規程第七十五条2の規定により発する命令をいう。以下同じ。)の確定裁 判の執行をすること又は規程第七十五条4若しくは第九十三条1の規定により没収刑若しくは被害回復命令のための保全をすることをいう。
十一 協力 証拠の提供、裁判上の証拠 調べ、書類の送達、受刑者証人等移送、引渡犯罪人の引渡し、仮拘禁及び執行協力をいう。
十二 請求犯罪 協力(引渡犯罪人の引 渡し及び仮拘禁を除く。)の請求において犯されたとされている犯罪をいう。
十三 引渡犯罪 引渡犯罪人の引渡し又 は仮拘禁に係る協力の請求において当該引渡犯罪人又は仮拘禁犯罪人が犯したとされている犯罪をいう。
第二章 国際刑事裁判所に対する協 力
第一節 通則
(協力の請求の受理等)
第三条 国際刑事裁判所に対する協力に関 する次に掲げる事務は、外務大臣が行う。
一 国際刑事裁判所からの協力の請求の 受理
二 国際刑事裁判所との協議及び国際刑 事裁判所に対して行うべき通報
三 国際刑事裁判所に対する証拠の送付 及び罰金刑、没収刑又は被害回復命令の確定裁判の執行に係る財産の引渡し並びに書類の送達についての結果の通知
(外務大臣の措置)
第四条 外務大臣は、国際刑事裁判所から 協力の請求を受理したときは、請求の方式が規程に適合しないと認める場合を除き、国際刑事裁判所が発する協力請求書又は外務大臣の作成した協力の請求があったことを証明す る書面に関係書類を添付し、意見を付して、これを法務大臣に送付するものとする。
(国際刑事裁判所との協議)
第五条 外務大臣は、国際刑事裁判所に対 する協力に関し、必要に応じ、国際刑事裁判所と協議するものとする。
2 法務大臣は、国際刑事裁判所に対する 協力に関し、国際刑事裁判所との協議が必要であると認めるときは、外務大臣に対し、前項の規定による協議をすることを求めるものとする。
第二節 証拠の提供等
第一款 証拠の提供
(法務大臣の措置)
第六条 法務大臣は、外務大臣から第四条 の規定により証拠の提供に係る協力の請求に関する書面の送付を受けた場合において、次の各号のいずれにも該当しないときは、次項又は第三項に規定する措置をとるものとす る。
一 当該協力の請求が国際捜査共助等に 関する法律(昭和五十五年法律第六十九号)第一条第一号に規定する共助(以下この号及び第三十九条第一項第二号において「捜査共助」という。)の要請と競合し、かつ、規程 の定めるところによりその要請を優先させることができる場合において、当該捜査共助をすることが相当であると認めるとき。
二 当該協力の請求に応ずることによ り、規程第九十八条1に規定する国際法に基づく義務に反することとなるとき。
三 当該協力の請求に応ずることによ り、日本国の安全が害されるおそれがあるとき。
四 請求犯罪が規程第七十条1に規定す る犯罪である場合において、当該請求犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合にその行為が日本国の法令によれば罪に当たるものでないとき。
五 当該協力の請求に応ずることによ り、請求犯罪以外の罪に係る事件で日本国の検察官、検察事務官若しくは司法警察職員によって捜査され又は日本国の裁判所に係属しているものについて、その捜査又は裁判を妨 げるおそれがあり、直ちに当該請求に応ずることが相当でないと認めるとき。
六 その他直ちに当該協力の請求に応じ ないことに正当な理由があるとき。
2 前項の規定により法務大臣がとる措置 は、次項に規定する場合を除き、次の各号のいずれかとする。
一 相当と認める地方検察庁の検事正に 対し、関係書類を送付して、証拠の提供に係る協力に必要な証拠の収集を命ずること。
二 国家公安委員会に証拠の提供に係る 協力の請求に関する書面を送付すること。
三 海上保安庁長官その他の刑事訴訟法 (昭和二十三年法律第百三十一号)第百九十条に規定する司法警察職員として職務を行うべき者の置かれている国の機関の長に証拠の提供に係る協力の請求に関する書面を送付す ること。
3 第一項に規定する協力の請求が裁判 所、検察官又は司法警察員の保管する訴訟に関する書類の提供に係るものであるときは、法務大臣は、その書類の保管者に協力の請求に関する書面を送付するものとす る。
4 法務大臣は、前二項に規定する措置そ の他の証拠の提供に係る協力に関する措置をとるため必要があると認めるときは、関係人の所在その他必要な事項について調査を行うことができる。
(国家公安委員会の措置)
第七条 国家公安委員会は、前条第二項第 二号の書面の送付を受けたときは、相当と認める都道府県警察に対し、関係書類を送付して、証拠の提供に係る協力に必要な証拠の収集を指示するものとする。
(協力の実施)
第八条 国際捜査共助等に関する法律第七 条、第八条、第十条、第十二条及び第十三条の規定は、第六条第一項の請求による証拠の提供に係る協力について準用する。この場合において、同法第七条第一項中「第五条第一 項第一号」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律(平成十九年法律第三十七号)第六条第二項第一号」と、同条第二項中「前条」とあるのは「国際刑事裁判所 に対する協力等に関する法律第七条」と、同条第三項中「第五条第一項第三号」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第六条第二項第三号」と、同法第十三条 中「この法律に特別の定めがある」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第八条において準用する第八条、第十条及び前条に規定する」と読み替えるものとす る。
(虚偽の証明書の提出に対する罰 則)
第九条 前条において準用する国際捜査共 助等に関する法律第八条第三項の規定による証明書の提出を求められた者が、虚偽の証明書を提出したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の規定は、刑法(明治四十年法律 第四十五号)又は第四章の罪に触れるときは、これを適用しない。
(処分を終えた場合等の措置)
第十条 検事正は、証拠の提供に係る協力 に必要な証拠の収集を終えたときは、速やかに、意見を付して、法務大臣に対し、収集した証拠を送付しなければならない。第六条第二項第三号の国の機関の長が協力に必要な証 拠の収集を終えたときも、同様とする。
2 都道府県公安委員会は、都道府県警察 の警視総監又は道府県警察本部長が協力に必要な証拠の収集を終えたときは、速やかに、意見を付して、国家公安委員会に対し、収集した証拠を送付しなければならな い。
3 国家公安委員会は、前項の証拠の送付 を受けたときは、速やかに、意見を付して、法務大臣に対し、これを送付するものとする。
4 第六条第三項の規定により証拠の提供 に係る協力の請求に関する書面の送付を受けた訴訟に関する書類の保管者は、速やかに、意見を付して、法務大臣に対し、当該書類又はその謄本を送付しなければならない。ただ し、直ちにこれを送付することに支障があると認めるときは、速やかに、法務大臣に対し、その旨を通知しなければならない。
(証拠の提供の条件)
第十一条 法務大臣は、前条第一項、第三 項又は第四項の規定により送付を受けた証拠を国際刑事裁判所に提供する場合において、必要があると認めるときは、当該証拠の使用又は返還に関する条件を定めるものとす る。
(協力をしない場合の通知)
第十二条 法務大臣は、第六条第二項第二 号若しくは第三号又は第三項の規定による措置をとった後において、同条第一項第一号から第四号までのいずれかに該当すると認めて、証拠の提供に係る協力をしないこととする ときは、遅滞なく、その旨を証拠の提供に係る協力の請求に関する書面の送付を受けた者に通知するものとする。
(外務大臣等との協議)
第十三条 法務大臣は、次の各号のいずれ かに該当する場合には、あらかじめ、外務大臣と協議するものとする。
一 第六条第一項第一号から第三号まで のいずれかに該当することを理由として、証拠の提供に係る協力をしないこととするとき。
二 第六条第一項第五号又は第六号のい ずれかに該当することを理由として、証拠の提供に係る協力をすることを留保するとき。
三 第十一条の条件を定めると き。
2 国際捜査共助等に関する法律第十六条 第二項の規定は、証拠の提供に係る協力の請求に関し法務大臣が第六条第二項各号の措置をとることとする場合について準用する。
第二款 裁判上の証拠調べ及び 書類の送達
(法務大臣の措置)
第十四条 法務大臣は、外務大臣から第四 条の規定により裁判上の証拠調べ又は書類の送達に係る協力の請求に関する書面の送付を受けた場合において、第六条第一項各号のいずれにも該当しないときは、相当と認める地 方裁判所に対し、当該協力の請求に関する書面を送付するものとする。
(裁判所の措置等)
第十五条 外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法 (明治三十八年法律第六十三号)第一条第二項、第一条ノ二第一項(第一号、第五号及び第六号を除く。)、第二条及び第三条の規定は、裁判上の証拠調べ又は書類の送達に係る 協力について準用する。
2 前条の地方裁判所は、裁判上の証拠調 べ又は書類の送達を終えたときは、速やかに、法務大臣に対し、当該裁判上の証拠調べにより得られた証拠を送付し、又は書類の送達の結果を通知しなければならない。
(準用)
第十六条 第十二条及び第十三条第一項 (第三号を除く。)の規定は、法務大臣が第十四条の規定による裁判上の証拠調べ又は書類の送達に係る協力に係る措置をとった場合について準用する。この場合において、第十 二条中「同条第一項第一号」とあるのは、「第六条第一項第一号」と読み替えるものとする。
第三款 受刑者証人等移 送
(受刑者証人等移送の決定等)
第十七条 法務大臣は、外務大臣から第四 条の規定により受刑者証人等移送に係る協力の請求に関する書面の送付を受けた場合において、第六条第一項第四号及び次の各号のいずれにも該当せず、かつ、当該請求に応ずる ことが相当であると認めるときは、三十日を超えない範囲内で国内受刑者を移送する期間を定めて、当該受刑者証人等移送の決定をするものとする。
一 国内受刑者の書面による同意がない とき。
二 国内受刑者が二十歳に満たないと き。
三 国内受刑者の犯した罪に係る事件が 日本国の裁判所に係属するとき。
2 法務大臣は、前項の決定をする場合に おいて、必要があると認めるときは、受刑者証人等移送に関する条件を定めるものとする。
3 法務大臣は、第一項の請求に応ずるこ とが相当でないと認めて受刑者証人等移送をしないこととするとき及び前項の条件を定めるときは、あらかじめ、外務大臣と協議するものとする。
4 国際捜査共助等に関する法律第十九条 第三項の規定は、第一項の決定をした場合について準用する。
(国内受刑者の引渡しに関する措置 等)
第十八条 法務大臣は、前条第四項におい て準用する国際捜査共助等に関する法律第十九条第三項の規定による命令をしたときは、外務大臣に受領許可証を送付しなければならない。
2 外務大臣は、前項の規定による受領許 可証の送付を受けたときは、直ちに、これを国際刑事裁判所に送付しなければならない。
3 第一項に規定する命令を受けた刑事施 設の長又はその指名する刑事施設の職員は、速やかに、国内受刑者を国際刑事裁判所の指定する場所に護送し、国際刑事裁判所の指定する者であって受領許可証を有するものに対 し、当該国内受刑者を引き渡さなければならない。
4 国際捜査共助等に関する法律第二十一 条及び第二十二条の規定は、前項の規定による国際刑事裁判所の指定する者に対する引渡しに係る国内受刑者について準用する。この場合において、同法第二十一条中「受刑者証 人移送」とあるのは、「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第二条第七号に規定する受刑者証人等移送」と読み替えるものとする。
第三節 引渡犯罪人の引渡し 等
第一款 引渡犯罪人の引渡 し
(引渡犯罪人の引渡しの要件)
第十九条 引渡犯罪人の引渡しは、引渡犯 罪が重大犯罪である場合には、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これを行うことができる。
一 引渡犯罪に係る事件が日本国の裁判 所に係属するとき。ただし、当該事件について、国際刑事裁判所において、規程第十七条1の規定により事件を受理する旨の決定をし、又は公判手続を開始しているときは、この 限りでない。
二 引渡犯罪に係る事件について日本国 の裁判所において確定判決を経たとき。ただし、当該事件について、国際刑事裁判所において、規程第十七条1の規定により事件を受理する旨の決定をし、又は有罪の判決の言渡 しをしているときは、この限りでない。
三 引渡犯罪について国際刑事裁判所に おいて有罪の判決の言渡しがある場合を除き、引渡犯罪人が引渡犯罪を行っていないことが明らかに認められるとき。
2 引渡犯罪人の引渡しは、引渡犯罪が規 程第七十条1に規定する犯罪である場合には、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これを行うことができる。
一 引渡犯罪に係る行為が日本国内にお いて行われたとした場合において、当該行為が日本国の法令により死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮に処すべき罪に当たるものでないとき。
二 引渡犯罪に係る行為が日本国内にお いて行われ、又は引渡犯罪に係る裁判が日本国の裁判所において行われたとした場合において、日本国の法令により引渡犯罪人に刑罰を科し、又はこれを執行することができない と認められるとき。
三 引渡犯罪について国際刑事裁判所に おいて有罪の判決の言渡しがある場合を除き、引渡犯罪人がその引渡犯罪に係る行為を行ったことを疑うに足りる相当な理由がないとき。
四 引渡犯罪に係る事件が日本国の裁判 所に係属するとき、又はその事件について日本国の裁判所において確定判決を経たとき。
五 引渡犯罪人の犯した引渡犯罪以外の 罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について引渡犯罪人が日本国の裁判所において刑に処せられ、その執行を終わらず、若しくは執行を受けないことと なっていないとき。
六 引渡犯罪人が日本国民であると き。
(法務大臣の措置)
第二十条 法務大臣は、外務大臣から第四 条の規定により引渡犯罪人の引渡しに係る協力の請求に関する書面の送付を受けたときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、東京高等検察庁検事長に対し、関係書類を 送付して、引渡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当するかどうかについて東京高等裁判所に審査の請求をすべき旨を命ずるものとする。
一 明らかに前条第一項各号又は第二項 各号のいずれかに該当すると認めるとき。
二 当該協力の請求が逃亡犯罪人引渡法 (昭和二十八年法律第六十八号)第三条に規定する逃亡犯罪人の引渡しの請求又は同法第二十三条第一項に規定する犯罪人を仮に拘禁することの請求と競合し、かつ、規程の定め るところによりこれらの請求を優先させることができる場合において、当該逃亡犯罪人の引渡し又は犯罪人を仮に拘禁することが相当であると認めるとき。
三 当該協力の請求に応ずることによ り、規程第九十八条に規定する国際法に基づく義務又は国際約束に基づく義務に反することとなるとき。
四 当該協力の請求に応ずることによ り、引渡犯罪以外の罪に係る事件で日本国の検察官、検察事務官若しくは司法警察職員によって捜査されているもの又は引渡犯罪以外の罪に係る事件(引渡犯罪人以外の者が犯し たものに限る。)で日本国の裁判所に係属しているものについて、その捜査又は裁判を妨げるおそれがあり、直ちに当該請求に応ずることが相当でないと認めるとき。
五 その他直ちに当該協力の請求に応じ ないことに正当な理由があるとき。
2 法務大臣は、前項の規定による命令そ の他引渡犯罪人の引渡しに関する措置をとるため必要があると認めるときは、引渡犯罪人の所在その他必要な事項について調査を行うことができる。
(引渡犯罪人の拘禁)
第二十一条 東京高等検察庁検事長は、前 条第一項の規定による命令を受けたときは、引渡犯罪人が仮拘禁許可状により拘禁され、又は仮拘禁許可状による拘禁を停止されている場合を除き、東京高等検察庁の検察官をし て、東京高等裁判所の裁判官があらかじめ発する拘禁許可状により、引渡犯罪人を拘禁させなければならない。
2 逃亡犯罪人引渡法第五条第二項及び第 三項、第六条並びに第七条の規定は、前項の拘禁許可状による引渡犯罪人の拘禁について準用する。この場合において、同法第五条第三項中「請求国の名称、有効期間」とあるの は、「有効期間」と読み替えるものとする。
(審査の請求)
第二十二条 東京高等検察庁の検察官は、 第二十条第一項の規定による命令があったときは、引渡犯罪人の現在地が分からない場合を除き、速やかに、東京高等裁判所に対し、引渡犯罪人を引き渡すことができる場合に該 当するかどうかについて審査の請求をしなければならない。
2 逃亡犯罪人引渡法第八条第一項後段、 第二項及び第三項の規定は、引渡犯罪人の引渡しに係る前項の審査の請求について準用する。
(東京高等裁判所の審査)
第二十三条 東京高等裁判所は、審査の結 果に基づいて、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める決定をしなければならない。
一 前条第一項の審査の請求が不適法で あるとき 却下する決定
二 引渡犯罪人を引き渡すことができる 場合に該当するとき その旨の決定
三 引渡犯罪人を引き渡すことができる 場合に該当しないとき その旨の決定
2 逃亡犯罪人引渡法第九条の規定は前条 第一項の審査の請求に係る東京高等裁判所の審査について、同法第十条第二項及び第三項の規定は前項の決定について、同法第十一条の規定は第二十条第一項の規定による命令の 取消しについて、同法第十二条の規定は引渡犯罪人の釈放について、同法第十三条の規定は当該審査に係る裁判書の謄本について、それぞれ準用する。この場合において、同法第 九条第三項ただし書中「次条第一項第一号又は第二号」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律(平成十九年法律第三十七号)第二十三条第一項第一号又は第三 号」と、同法第十一条第一項中「第三条の」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第四条の」と、「請求国」とあるのは「国際刑事裁判所」と、「受け、又は 第三条第二号に該当するに至つた」とあるのは「受けた」と、同条第二項中「第四条第一項の」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第二十条第一項の」と、 「第四条第一項各号」とあるのは「同条第一項各号」と、「第八条第三項」とあるのは「同法第二十二条第二項において準用する第八条第三項」と、同法第十二条中「第十条第一 項第一号若しくは第二号」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第二十三条第一項第一号若しくは第三号」と読み替えるものとする。
(審査手続の停止)
第二十四条 東京高等裁判所は、前条第二 項において準用する逃亡犯罪人引渡法第九条の審査において、引渡犯罪人から、引渡犯罪に係る事件が外国の裁判所に係属すること又は当該事件について外国の裁判所において確 定判決を経たことを理由として、当該引渡犯罪人の引渡しが認められない旨の申立てがされた場合には、国際刑事裁判所において当該事件につき規程第十七条1の規定により事件 を受理するかどうかが決定されるまでの間、決定をもって、審査の手続を停止することができる。
2 東京高等検察庁検事長は、前項の申立 てがあったときは、速やかに、法務大臣に対し、その旨の報告をしなければならない。
3 法務大臣は、前項の報告を受けたとき は、外務大臣に対し、第一項の申立てがあった旨の通知をするものとする。
4 外務大臣は、前項の通知を受けたとき は、国際刑事裁判所に対し、第一項の申立てがあった旨の通報をするとともに、引渡犯罪につき規程第十七条1の規定による事件を受理するかどうかの決定に関し、国際刑事裁判 所と協議するものとする。
5 東京高等検察庁の検察官は、第一項の 規定により審査の手続が停止された場合において、必要と認めるときは、引渡犯罪人の拘禁の停止をすることができる。この場合において、必要と認めるときは、当該引渡犯罪人 を親族その他の者に委託し、又は当該引渡犯罪人の住居を制限するものとする。
6 東京高等検察庁の検察官は、前項の規 定による拘禁の停止がされている場合において、国際刑事裁判所において引渡犯罪につき規程第十七条1の規定により事件を受理する旨の決定があったときは、その拘禁の停止を 取り消さなければならない。
7 逃亡犯罪人引渡法第二十二条第三項か ら第六項までの規定は、前項の規定により引渡犯罪人の拘禁の停止を取り消した場合について準用する。
8 第一項の規定により審査の手続が停止 された場合における前条第二項において準用する逃亡犯罪人引渡法第九条第一項の規定の適用については、同項中「二箇月」とあるのは、「二箇月(国際刑事裁判所に対する協力 等に関する法律第二十四条第一項の規定により審査の手続が停止された期間を除く。)」とする。
(引渡犯罪人の引渡しに関する法務大臣 の命令等)
第二十五条 法務大臣は、第二十三条第一 項第二号の決定があった場合において、第二十条第一項第二号から第五号までのいずれにも該当しないと認めるときは、東京高等検察庁検事長に対し引渡犯罪人の引渡しを命ずる とともに、引渡犯罪人にその旨を通知しなければならない。この場合において、当該引渡犯罪人が拘禁許可状により拘禁されているときは、その引渡しの命令は、当該決定があっ た日から十日以内にしなければならない。
2 法務大臣は、前項に規定する決定があ った場合において、第二十条第一項第二号又は第三号のいずれかに該当すると認めるときは、直ちに東京高等検察庁検事長及び引渡犯罪人にその旨を通知するとともに、東京高等 検察庁検事長に対し拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人の釈放を命じなければならない。
3 東京高等検察庁の検察官は、前項の規 定による命令があったときは、直ちに、拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人を釈放しなければならない。
4 法務大臣は、第一項に規定する決定が あった場合において、第二十条第一項第四号又は第五号のいずれかに該当すると認めるときは、東京高等検察庁検事長に対し、その旨を通知するとともに、拘禁許可状により拘禁 されている引渡犯罪人の拘禁の停止をするよう命じなければならない。
5 東京高等検察庁の検察官は、前項の規 定による拘禁の停止の命令があったときは、直ちに、拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人の拘禁の停止をしなければならない。この場合においては、前条第五項後段の規 定を準用する。
6 法務大臣は、第四項の規定による拘禁 の停止の命令をした後において、第二十条第一項第四号及び第五号のいずれにも該当しないこととなったときは、第一項の規定による引渡しの命令をしなければならな い。
7 東京高等検察庁の検察官は、前項の引 渡しの命令があったときは、第五項の規定による拘禁の停止を取り消さなければならない。
8 逃亡犯罪人引渡法第二十二条第三項か ら第六項までの規定は、前項の規定により引渡犯罪人の拘禁の停止を取り消した場合について準用する。
(引渡犯罪人の引渡しの命令の延 期)
第二十六条 法務大臣は、前条第一項に規 定する場合(引渡犯罪が重大犯罪である場合に限る。)において、次の各号のいずれかに該当し、かつ、直ちに引渡犯罪人の引渡しをすることが相当でないと認めるときは、同項 の規定にかかわらず、その引渡しの命令を延期することができる。
一 引渡犯罪人の犯した引渡犯罪以外の 罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき。
二 前号に規定する事件について、引渡 犯罪人が日本国の裁判所において刑に処せられ、その執行を終わらず、又は執行を受けないこととなっていないとき。
2 法務大臣は、前項の規定により引渡犯 罪人の引渡しの命令を延期するときは、東京高等検察庁検事長に対し、その旨を通知するとともに、拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人の拘禁の停止をするよう命じなけ ればならない。
3 東京高等検察庁の検察官は、前項の規 定による命令があったときは、直ちに、拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人の拘禁の停止をしなければならない。この場合においては、第二十四条第五項後段の規定を準 用する。
4 法務大臣は、第二項の規定による拘禁 の停止の命令をした後において、第一項各号のいずれにも該当しないこととなったとき、又は当該引渡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認める事由がなくなったときは、東京 高等検察庁検事長に対し、前条第一項の規定による引渡しの命令をしなければならない。
5 東京高等検察庁の検察官は、前項の引 渡しの命令があったときは、第三項の規定による拘禁の停止を取り消さなければならない。
6 逃亡犯罪人引渡法第二十二条第三項か ら第六項までの規定は、前項の規定により引渡犯罪人の拘禁の停止を取り消した場合について準用する。
(拘禁が困難な場合における拘禁の停止 及びその取消し)
第二十七条 東京高等検察庁の検察官は、 拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人の申立てにより又は職権で、拘禁によって著しく引渡犯罪人の健康を害するおそれがあるときその他拘禁を継続することが困難である と認めるときは、当該引渡犯罪人の拘禁の停止をすることができる。
2 東京高等検察庁検事長は、前項の申立 てがあったとき又は東京高等検察庁の検察官が職権で拘禁の停止をしようとするときは、法務大臣に対し、その旨の報告をしなければならない。
3 法務大臣は、前項の報告を受けたとき は、外務大臣に対し、その旨の通知をするものとする。
4 外務大臣は、前項の通知を受けたとき は、国際刑事裁判所に対し、引渡犯罪人の拘禁の停止に関する意見を求めるものとする。
5 東京高等検察庁の検察官は、第一項の 規定により拘禁の停止をするかどうかの判断に当たっては、前項の意見を尊重するものとする。ただし、急速を要し、当該意見を聴くいとまがないときは、これを待たないで当該 拘禁の停止をすることができる。
6 第二十四条第五項後段の規定は、第一 項の規定により拘禁の停止をする場合について準用する。
7 東京高等検察庁の検察官は、必要と認 めるときは、いつでも、第一項の規定による拘禁の停止を取り消すことができる。
8 逃亡犯罪人引渡法第二十二条第三項か ら第六項までの規定は、前項の規定により引渡犯罪人の拘禁の停止を取り消した場合について準用する。
(拘禁の停止中の失効)
第二十八条 次の各号のいずれかに該当す るときは、第二十四条第五項、第二十五条第五項、第二十六条第三項又は前条第一項の規定により停止されている拘禁は、その効力を失う。
一 引渡犯罪人に対し、第二十三条第一 項第一号又は第三号の決定の裁判書の謄本が送達されたとき。
二 引渡犯罪人に対し、第二十三条第二 項において準用する逃亡犯罪人引渡法第十一条第二項の規定による通知があったとき。
三 引渡犯罪人に対し、第二十五条第二 項の規定により法務大臣から第二十条第一項第二号又は第三号のいずれかに該当する旨の通知があったとき。
(引渡犯罪人の引渡しの期限)
第二十九条 第二十五条第一項の規定によ る命令に基づく引渡犯罪人の引渡しは、当該命令の日(拘禁の停止がされているときは、当該拘禁の停止の取消しにより引渡犯罪人が拘禁された日)から三十日以内にしなければ ならない。
2 第二十五条第一項の規定による命令が あった後に第二十七条第一項の規定により拘禁の停止がされた場合における前項の規定の適用については、当該拘禁の停止がされていた期間は、同項の期間に算入しないものとす る。
(外務大臣との協議)
第三十条 法務大臣は、次の各号のいずれ かに該当する場合には、あらかじめ、外務大臣と協議するものとする。
一 第二十条第一項第一号(第十九条第 一項に係る部分に限る。)に該当することを理由として、第二十条第一項の規定による命令を留保するとき。
二 第二十条第一項第二号又は第三号の いずれかに該当することを理由として、引渡犯罪人の引渡しに係る協力をしないこととするとき。
三 第二十条第一項第四号又は第五号の いずれかに該当することを理由として、同項の規定による命令を留保し、又は第二十五条第四項の規定による措置をとるとき。
四 第二十六条第一項の規定により引渡 犯罪人の引渡しの命令を延期するとき。
(引渡犯罪人の引渡しに関する措 置)
第三十一条 逃亡犯罪人引渡法第十六条第 一項から第三項まで、第十七条第一項、第十八条及び第十九条の規定は、第二十五条第一項の規定による引渡しの命令に係る引渡犯罪人の引渡しについて準用する。この場合にお いて、同法第十八条中「前条第五項又は第二十二条第六項の規定による報告」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第二十五条第八項、第二十六条第六項又は 第二十七条第八項において準用する第二十二条第六項の規定による報告(同法第二十七条第八項において準用する場合にあっては、同法第二十五条第一項の規定による引渡しの命 令があった後に拘禁の停止の取消しがされた場合における報告に限る。)」と、同法第十九条中「請求国」とあるのは「国際刑事裁判所」と読み替えるものとする。
2 前項において準用する逃亡犯罪人引渡 法第十六条第一項の引渡状及び同条第三項の受領許可状には、引渡犯罪人の氏名、引渡犯罪名、引渡しの場所、引渡しの期限及び発付の年月日並びに国際刑事裁判所の言い渡した 拘禁刑の執行中に逃亡した引渡犯罪人の引渡しにあっては国際刑事裁判所が引渡先として指定する外国の名称を記載し、法務大臣が記名押印しなければならない。
第三十二条 前条第一項において準用する 逃亡犯罪人引渡法第十七条第一項の規定による指揮を受けた刑事施設の長又はその指名する刑事施設の職員は、引渡犯罪人を、引渡状に記載された引渡しの場所に護送し、国際刑 事裁判所の指定する者であって受領許可状を有するものに引き渡さなければならない。
第三十三条 前条の規定により引渡犯罪人 の引渡しを日本国内において受けた者は、速やかに、当該引渡犯罪人を国際刑事裁判所又は第三十一条第二項に規定する引渡先として指定された外国に護送するものとす る。
第二款 仮拘禁
(仮拘禁の命令)
第三十四条 法務大臣は、外務大臣から第 四条の規定により仮拘禁に係る協力の請求に関する書面の送付を受けたときは、第二十条第一項各号(第一号については、第十九条第一項第三号に係る部分を除く。)のいずれか に該当すると認める場合を除き、東京高等検察庁検事長に対し、仮拘禁をすべき旨を命じなければならない。
(仮拘禁に関する措置)
第三十五条 東京高等検察庁検事長は、前 条の規定による命令を受けたときは、東京高等検察庁の検察官をして、東京高等裁判所の裁判官があらかじめ発する仮拘禁許可状により、仮拘禁犯罪人を拘禁させなければならな い。
2 逃亡犯罪人引渡法第五条第二項及び第 三項、第六条並びに第七条の規定は前項の仮拘禁許可状による仮拘禁犯罪人の拘禁について、同法第二十六条の規定は仮拘禁許可状により拘禁されている仮拘禁犯罪人の釈放につ いて、同法第二十七条の規定は仮拘禁許可状が発せられている仮拘禁犯罪人について第二十条第一項の規定による命令があった場合について、同法第二十八条の規定は前条に規定 する書面の送付があった後に国際刑事裁判所から仮拘禁犯罪人の引渡しの請求をしない旨の通知があった場合について、同法第二十九条の規定は仮拘禁許可状により拘禁されてい る仮拘禁犯罪人について、それぞれ準用する。この場合において、同法第五条第三項中「請求国の名称、有効期間」とあるのは「有効期間」と、同法第二十六条第一項中「第三条 の規定による引渡しの請求に関する」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第二十条第一項に規定する」と、「第四条第一項各号」とあるのは「同項各号」 と、同法第二十七条第三項中「第八条第一項」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第二十二条第二項において準用する第八条第一項後段」と、同法第二十九 条中「拘束された日から二箇月(引渡条約に二箇月より短い期間の定めがあるときは、その期間)」とあるのは「拘束された日の翌日から六十日」と読み替えるものとす る。
3 東京高等検察庁の検察官は、仮拘禁許 可状により拘禁されている仮拘禁犯罪人の申立てにより又は職権で、拘禁によって著しく仮拘禁犯罪人の健康を害するおそれがあるときその他拘禁の継続が困難であると認めると きは、当該仮拘禁犯罪人の拘禁の停止をすることができる。
4 第二十七条第二項から第七項まで及び 逃亡犯罪人引渡法第二十二条第三項から第五項までの規定は、前項の規定による仮拘禁犯罪人の拘禁の停止及び当該拘禁の停止を取り消した場合について準用する。
5 第三項の規定により仮拘禁許可状によ る拘禁の停止があった場合において、仮拘禁犯罪人に対し第二項において準用する逃亡犯罪人引渡法第二十七条第一項の規定による告知がされたときは、当該仮拘禁許可状による 拘禁の停止は、第二十七条第一項の規定による拘禁の停止とみなす。
6 第三項の規定により仮拘禁許可状によ る拘禁の停止があった場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、停止されている仮拘禁許可状による拘禁は、その効力を失う。
一 仮拘禁犯罪人に対し、第二項におい て準用する逃亡犯罪人引渡法第二十六条第一項又は第二十八条第二項の規定による通知があったとき。
二 仮拘禁犯罪人が仮拘禁許可状により 拘束された日の翌日から六十日以内に、当該仮拘禁犯罪人に対し、第二項において準用する逃亡犯罪人引渡法第二十七条第一項の規定による告知がないとき。
第三款 雑則
(行政手続法等の適用除外)
第三十六条 前二款の規定に基づいて行う 処分については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章の規定は、適用しない。
2 前二款の規定に基づいて行う処分(行 政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)第三条第二項に規定する処分をいう。)又は裁決(同条第三項に規定する裁決をいう。)に係る抗告訴訟(同条第一項に規定する 抗告訴訟をいう。)については、同法第十二条第四項及び第五項(これらの規定を同法第三十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。
(準用)
第三十七条 逃亡犯罪人引渡法第三十二条 の規定は、前二款に定める東京高等裁判所若しくはその裁判官又は東京高等検察庁の検察官の職務の執行について準用する。
第四節 執行協力
(執行協力の要件)
第三十八条 執行協力は、請求犯罪が重大 犯罪である場合には、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これを行うことができる。
一 没収刑のための保全に係る執行協力 については、請求犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき。ただし、当該事件について、国際刑事裁判所において、規程第十七条1の規定により事件を受理する旨の決定 をし、又は公判手続を開始しているときは、この限りでない。
二 没収刑のための保全に係る執行協力 については、請求犯罪に係る事件について日本国の裁判所において確定判決を経たとき。ただし、当該事件について、国際刑事裁判所において、規程第十七条1の規定により事件 を受理する旨の決定をし、又は有罪の判決の言渡しをしているときは、この限りでない。
三 没収刑のための保全に係る執行協力 については、請求犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において、日本国の法令によれば当該執行協力の請求に係る財産が没収保全をすることができる財産に当たるも のでないとき(当該請求に係る財産が、請求犯罪に係る行為によりその被害を受けた者から得た財産である場合には、その者又はその一般承継人に帰属することを理由として没収 保全をすることができる財産に当たるものでないときを除く。)。
四 被害回復命令のための保全であって その内容及び性質を考慮して日本国の法令によれば没収の保全に相当するものに係る執行協力については、請求犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において、日本国 の法令によれば当該執行協力の請求に係る財産が没収保全をすることができる財産に当たるものでないとき(当該請求に係る財産が、重大犯罪に係る行為によりその被害を受けた 者から得た財産であって、被害回復命令によりその者又はその一般承継人に返還すべきものである場合には、それらの者に帰属することを理由として没収保全をすることができる 財産に当たるものでないときを除く。)。
五 被害回復命令のための保全であって その内容及び性質を考慮して日本国の法令によれば追徴の保全に相当するものに係る執行協力については、請求犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において、日本国 の法令によれば当該執行協力の請求に係る財産が追徴保全をすることができる財産に当たるものでないとき。
2 執行協力は、請求犯罪が規程第七十条 1に規定する犯罪である場合には、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これを行うことができる。
一 請求犯罪に係る行為が日本国内にお いて行われたとした場合において、日本国の法令によればこれについて刑罰を科すことができないと認められるとき。
二 請求犯罪に係る事件が日本国の裁判 所に係属するとき、又はその事件について日本国の裁判所において確定判決を経たとき。
三 没収刑のための保全に係る執行協力 については、請求犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において、日本国の法令によれば当該執行協力の請求に係る財産が没収保全をすることができる財産に当たるも のでないとき(当該請求に係る財産が、請求犯罪に係る行為によりその被害を受けた者から得た財産である場合には、その者又はその一般承継人に帰属することを理由として没収 保全をすることができる財産に当たるものでないときを除く。)。
(法務大臣の措置)
第三十九条 法務大臣は、外務大臣から第 四条の規定により執行協力の請求に関する書面の送付を受けたときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、相当と認める地方検察庁の検事正に対し、関係書類を送付し て、執行協力に必要な措置をとるよう命ずるものとする。
一 前条第一項各号又は第二項各号のい ずれかに該当すると認めるとき。
二 執行協力の請求が組織的な犯罪の処 罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号。以下「組織的犯罪処罰法」という。)第五十九条第一項の規定による共助、国際的な協力の下に規制薬物に 係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号)第二十一条の規定による共助又は捜査共助の要請 と競合し、かつ、規程の定めるところによりその要請を優先させることができる場合において、当該要請に係る措置をとることが相当であると認めるとき。
三 執行協力の請求に応ずることによ り、規程第九十八条1に規定する国際法に基づく義務に反することとなるとき。
四 執行協力の請求に応ずることによ り、請求犯罪以外の罪に係る事件で日本国の検察官、検察事務官若しくは司法警察職員によって捜査され又は日本国の裁判所に係属しているものについて、その捜査又は裁判を妨 げるおそれがあり、直ちに当該請求に応ずることが相当でないと認めるとき。
五 その他直ちに執行協力の請求に応じ ないことに正当な理由があるとき。
2 法務大臣は、次の各号のいずれかに該 当する場合には、あらかじめ、外務大臣と協議するものとする。
一 前項第二号又は第三号のいずれかに 該当することを理由として、執行協力に係る協力をしないこととするとき。
二 前項第一号(前条第一項第一号及び 第二号に係る部分に限る。)、第四号又は第五号のいずれかに該当することを理由として、前項の規定による命令を留保するとき。
3 第六条第四項の規定は、第一項の規定 による命令その他執行協力に関する措置をとる場合について準用する。
(検事正の措置及び審査の請 求)
第四十条 前条第一項の規定による命令を 受けた検事正は、その庁の検察官に執行協力に必要な措置をとらせ、執行協力の実施に係る財産を保管しなければならない。
2 前項の検察官は、執行協力の請求が罰 金刑、没収刑又は被害回復命令の確定裁判の執行に係るものであるときは、裁判所に対し、執行協力をすることができる場合に該当するかどうかについて審査の請求をしなければ ならない。この場合において、当該請求が被害回復命令の確定裁判の執行に係るものであるときは、当該被害回復命令の内容及び性質を考慮し、これが日本国の法令によれば没収 又は追徴の確定裁判のいずれに相当するかについて、意見を付さなければならない。
(裁判所の審査等)
第四十一条 裁判所は、審査の結果に基づ いて、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める決定をしなければならない。
一 前条第二項の審査の請求が不適法で あるとき 却下する決定
二 執行協力の請求に係る確定裁判の全 部又は一部について執行協力をすることができる場合に該当するとき その旨の決定
三 執行協力の請求に係る確定裁判の全 部について執行協力をすることができる場合に該当しないとき その旨の決定
2 裁判所は、被害回復命令の確定裁判に 係る執行協力の請求について、前項第二号に定める決定をするときは、当該被害回復命令の内容及び性質に応じ、当該確定裁判が日本国の法令によれば没収又は追徴の確定裁判の いずれに相当するかを示さなければならない。
3 裁判所は、没収刑の確定裁判の執行に 係る執行協力の請求について、第一項第二号に定める決定をするときは、滅失、毀損その他の事由により当該確定裁判を執行することができない場合にこれに代えて当該確定裁判 を受けた者から追徴すべき日本円の金額を同時に示さなければならない。被害回復命令の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、同号に定める決定をする場合において、 前項の規定により当該確定裁判が没収の確定裁判に相当する旨を示すべきときも、同様とする。
4 裁判所は、没収刑の確定裁判の執行に 係る執行協力の請求について、第一項第二号に定める決定をする場合において、請求犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において日本国の法令によれば当該請求に係 る財産が没収の裁判をすることができる財産に当たるものでないと認めるとき(当該請求に係る財産が、請求犯罪に係る行為によりその被害を受けた者から得た財産である場合に は、その者又はその一般承継人に帰属することを理由として没収の裁判をすることができる財産に当たるものでないと認めるときを除く。)は、その旨及び当該確定裁判の執行に 代えて当該確定裁判を受けた者から追徴すべき日本円の金額を同時に示さなければならない。
5 裁判所は、被害回復命令の確定裁判に 係る執行協力の請求について、第一項第二号に定める決定をする場合(第二項の規定により当該確定裁判が没収の確定裁判に相当する旨を示すべきときに限る。)において、請求 犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において日本国の法令によれば当該請求に係る財産が没収の裁判をすることができる財産に当たるものでないと認めるとき(当該 請求に係る財産が、重大犯罪に係る行為によりその被害を受けた者から得た財産であって、被害回復命令によりその者又はその一般承継人に返還すべきものである場合には、それ らの者に帰属することを理由として没収の裁判をすることができる財産に当たるものでないと認めるときを除く。)は、その旨及び当該確定裁判の執行に代えて当該確定裁判を受 けた者から追徴すべき日本円の金額を同時に示さなければならない。
6 裁判所は、没収刑の確定裁判の執行に 係る執行協力の請求について、第一項第二号に定める決定をする場合において、当該確定裁判に係る目的とされている財産を有し又はその財産の上に地上権、抵当権その他の権利 を有すると思料するに足りる相当な理由のある者が、自己の責めに帰することのできない理由により、当該確定裁判に係る手続において自己の権利を主張することができなかった と認めるときは、その旨及び当該確定裁判の執行に代えて当該確定裁判を受けた者から追徴すべき日本円の金額を同時に示さなければならない。被害回復命令の確定裁判の執行に 係る執行協力の請求について、同号に定める決定をする場合(第二項の規定により当該確定裁判が没収の確定裁判に相当する旨を示すべきときに限る。)においても、同様とす る。
7 前条第二項の規定による審査に関して は、没収刑の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、当該請求に係る財産を有し若しくはその財産の上に地上権、抵当権その他の権利を有すると思料するに足りる相当な 理由のある者又はこれらの財産若しくは権利について没収刑のための保全がされる前に強制競売の開始決定、強制執行による差押え若しくは仮差押えの執行がされている場合にお ける差押債権者若しくは仮差押債権者が、当該審査請求事件の手続への参加を許されていないときは、第一項第二号に定める決定をすることができない。被害回復命令の確定裁判 であってその内容及び性質を考慮して日本国の法令によれば没収の確定裁判に相当すると認めるものに係る同号に定める決定についても、同様とする。
8 組織的犯罪処罰法第五十九条第三項及 び第六十二条第三項の規定は没収刑の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について第一項第二号に定める決定をする場合(被害回復命令の確定裁判の執行に係る執行協力の請求 について、同号に定める決定をする場合において、第二項の規定により当該確定裁判が没収の確定裁判に相当する旨を示すべきときを含む。)について、同条第五項及び第七項か ら第九項までの規定は執行協力の請求に係る前条第二項の規定による審査について、組織的犯罪処罰法第六十三条の規定は前条第二項の審査の請求に係る決定に対する抗告につい て、それぞれ準用する。
(執行協力の実施に関する決定の効力 等)
第四十二条 次の各号に掲げる確定裁判の 執行に係る執行協力の請求について、前条第一項第二号に定める決定が確定したときは、当該確定裁判は、執行協力の実施に関しては、それぞれ、当該各号に定める日本国の裁判 所が言い渡した確定裁判とみなす。
一 罰金刑の確定裁判 罰金の確定裁 判
二 没収刑及び前条第二項の規定により 没収の確定裁判に相当する旨が示された被害回復命令の確定裁判(次号に掲げるものを除く。) 没収の確定裁判
三 没収刑又は前条第二項の規定により 没収の確定裁判に相当する旨が示された被害回復命令であって、同条第四項から第六項までの規定により追徴すべき日本円の金額が示されたものの確定裁判 追徴の確定裁 判
四 前条第二項の規定により追徴の確定 裁判に相当する旨が示された被害回復命令の確定裁判 追徴の確定裁判
2 前項第二号に掲げる確定裁判について の執行協力を実施する場合において、その没収刑又は被害回復命令の目的とされている財産について、滅失、毀損その他の事由により当該確定裁判を執行することができないとき は、同項の規定にかかわらず、当該確定裁判は、これを受けた者から前条第三項の規定により示された金額を追徴する旨の日本国の裁判所が言い渡した確定裁判とみな す。
3 検察官は、第一項第二号に掲げる確定 裁判についての執行協力の実施に係る財産で、国際刑事裁判所への送付に適さないものについては、これを売却することができる。この場合において、その代価は、当該確定裁判 についての執行協力の実施に係る財産とみなす。
4 検事正は、罰金刑、没収刑又は被害回 復命令の確定裁判の執行に係る執行協力の実施を終えたときは、速やかに、その執行協力の実施に係る財産を法務大臣に引き渡さなけばならない。
5 組織的犯罪処罰法第六十五条の規定 は、第一項に規定する執行協力の請求に係る前条第一項第二号に定める決定の取消しについて準用する。この場合において、組織的犯罪処罰法第六十五条第二項中「没収」とある のは「罰金、没収」と、同条第三項中「第六十三条」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律(平成十九年法律第三十七号)第四十一条第八項において準用する 第六十三条」と読み替えるものとする。
(没収保全の請求)
第四十三条 検察官は、執行協力の請求 が、没収刑のための保全に係るものであるとき、又は被害回復命令のための保全に係るものであってその内容及び性質を考慮して日本国の法令によれば没収の保全に相当するもの であると認めるときは、裁判官に、没収保全命令を発して当該請求に係る財産についてその処分を禁止することを請求しなければならない。この場合において、検察官は、必要と 認めるときは、附帯保全命令を発して当該財産の上に存在する地上権、抵当権その他の権利の処分を禁止することを請求することができる。
2 第四十条第二項の審査の請求があった 後は、前項の没収刑又は被害回復命令のための保全に関する処分は、その審査の請求を受けた裁判所が行う。
(没収保全命令)
第四十四条 裁判所又は裁判官は、前条第 一項前段の規定による請求を受けた場合において、第三十八条第一項各号及び第二項各号のいずれにも該当しないと認めるときは、没収保全命令を発して、当該請求に係る財産に ついて、この節の定めるところにより、その処分を禁止するものとする。
2 裁判所又は裁判官は、地上権、抵当権 その他の権利がその上に存在する財産について没収保全命令を発した場合又は発しようとする場合において、当該権利が没収刑の執行によって消滅すると思料するに足りる相当な 理由がある場合であってその執行のため必要があると認めるとき、又は当該権利が仮装のものであると思料するに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官の請求により、 附帯保全命令を別に発して、当該権利の処分を禁止することができる。
3 組織的犯罪処罰法第二十二条第三項、 第四項及び第六項並びに第二十三条第六項の規定は、第一項の没収保全命令又は前項の附帯保全命令について準用する。この場合において、組織的犯罪処罰法第二十二条第三項中 「被告人」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第二条第十号に規定する没収刑又は被害回復命令の裁判を受けるべき者」と、「公訴事実」とあるのは「同条 第十二号に規定する請求犯罪」と、同条第四項中「第一項若しくは第二項」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第四十四条第一項若しくは第二項」と、組織 的犯罪処罰法第二十三条第六項中「第一項又は第四項」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第四十三条第一項」と読み替えるものとする。
4 第一項の没収保全命令又は第二項の附 帯保全命令については、国際刑事裁判所において規程第六十一条1に規定する審理が行われる前であっても、これをすることができる。
5 組織的犯罪処罰法第二十三条第七項及 び第六十八条の規定は、前項の場合における没収保全命令について準用する。この場合において、組織的犯罪処罰法第二十三条第七項中「公訴の提起があった」とあるのは「国際 刑事裁判所に関するローマ規程第六十一条1に規定する審理が開始された」と、「被告人」とあるのは「当該審理の対象とされる者」と、組織的犯罪処罰法第六十八条第一項中 「没収又は追徴のための保全の共助の要請が公訴の提起されていない」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第二条第十号に規定する没収刑又は被害回復命令 のための保全に係る同号に規定する執行協力の請求が国際刑事裁判所に関するローマ規程第六十一条1に規定する審理が開始されていない」と、「要請国」とあるのは「国際刑事 裁判所」と、「公訴が提起された」とあるのは「当該審理が開始された」と、同条第二項中「要請国」とあるのは「国際刑事裁判所」と、「公訴を提起できない」とあるのは「国 際刑事裁判所に関するローマ規程第六十一条1に規定する審理を行うことができない」と読み替えるものとする。
6 前項において準用する組織的犯罪処罰 法第六十八条第二項の規定による更新の裁判は、検察官に告知された時にその効力を生ずる。
(追徴保全の請求)
第四十五条 検察官は、執行協力の請求 が、被害回復命令のための保全に係るものであってその内容及び性質を考慮して日本国の法令によれば追徴の保全に相当するものであると認めるときは、裁判官に、追徴保全命令 を発して被害回復命令の裁判を受けるべき者に対しその財産の処分を禁止することを請求しなければならない。
2 第四十三条第二項の規定は、前項の被 害回復命令のための保全に関する処分について準用する。
(追徴保全命令)
第四十六条 裁判所又は裁判官は、前条第 一項の規定による請求を受けた場合において、第三十八条第一項各号及び第二項各号のいずれにも該当しないと認めるときは、追徴保全命令を発して、被害回復命令の裁判を受け るべき者に対し、その財産の処分を禁止するものとする。
2 組織的犯罪処罰法第二十二条第四項、 第二十三条第六項及び第四十二条第二項から第四項までの規定は、前項の追徴保全命令について準用する。この場合において、組織的犯罪処罰法第二十二条第四項中「第一項若し くは第二項」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第四十六条第一項」と、組織的犯罪処罰法第二十三条第六項中「第一項又は第四項」とあるのは「国際刑事 裁判所に対する協力等に関する法律第四十五条第一項」と、組織的犯罪処罰法第四十二条第三項及び第四項中「被告人」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律 第二条第十号に規定する被害回復命令の裁判を受けるべき者」と、同項中「公訴事実」とあるのは「同条第十二号に規定する請求犯罪」と読み替えるものとする。
(準用)
第四十七条 この節に特別の定めがあるも ののほか、裁判所若しくは裁判官のする審査、処分若しくは令状の発付、検察官若しくは検察事務官のする処分又は裁判所の審査への利害関係人の参加については組織的犯罪処罰 法第三章、第四章(第二十二条、第二十三条、第三十二条、第三十三条、第四十二条、第四十三条、第四十七条及び第四十八条を除く。)及び第六十九条から第七十二条まで、刑 事訴訟法(第一編第二章及び第五章から第十三章まで、第二編第一章、第三編第一章及び第四章並びに第七編に限る。)、刑事訴訟費用に関する法令並びに刑事事件における第三 者所有物の没収手続に関する応急措置法(昭和三十八年法律第百三十八号)の規定を、執行協力の請求を受理した場合における措置については逃亡犯罪人引渡法第八条第二項並び に第十一条第一項及び第二項の規定を、それぞれその性質に反しない限り、準用する。
(政令への委任)
第四十八条 この節に定めるもののほか、 没収保全命令による処分の禁止と滞納処分との手続の調整について必要な事項で、滞納処分に関するものは、政令で定める。
第五節 雑則
(通過護送の承認)
第四十九条 外務大臣は、国際刑事裁判所 から通過護送(外国の官憲又は国際刑事裁判所の指定する者(次条において「外国官憲等」という。)が規程第八十九条1の規定による引渡しの対象となる者(次条において「引 渡対象者」という。)を日本国内を通過して護送することをいう。次条において同じ。)の承認の請求があったときは、請求の方式が規程に適合しないと認める場合を除き、これ を承認するものとする。
(護送中の着陸があった場合の措 置)
第五十条 警察官又は入国警備官は、外国 官憲等が護送(前条の規定による承認を受けた通過護送を除く。)中の引渡対象者が搭乗する航空機が天候その他やむを得ない理由により日本国内に着陸した場合において、当該 引渡対象者を発見したときは、外国官憲等に引き渡すため、これを拘束することができる。
2 入国警備官は、前項の規定により引渡 対象者を拘束したときは、これを直ちに警察官に引き渡すものとする。この場合において、警察官は、当該引渡対象者を引き続き拘束することができる。
3 前二項の規定による引渡対象者の拘束 は、着陸の時から九十六時間を超えて行うことができない。
4 第一項の規定により引渡対象者を拘束 した警察官又は第二項の規定により引渡対象者の引渡しを受けた警察官は、外務大臣に対し、その旨を通知するものとする。
5 外務大臣は、前項の通知を受けたとき は、国際刑事裁判所に対し、引渡対象者を拘束した旨を通報するものとする。
6 外務大臣は、国際刑事裁判所から前条 の通過護送の承認の請求を受理したときは、第四項の警察官に対し、その旨を通知するものとする。
7 第三項に規定する期間内に前条の通過 護送の承認の請求が受理された場合には、警察官は、同項の規定にかかわらず、引渡対象者の護送を行う外国官憲等に引渡対象者を引き渡すまでの間、当該引渡対象者を引き続き 拘束することができる。ただし、外務大臣から当該通過護送の承認をしない旨の通知を受けた場合には、その拘束を続けることができない。
8 警察官は、第三項又は前項の規定によ り引渡対象者の拘束を続けることができなくなったときは、これを入国警備官に引き渡すものとする。
9 前各項に定めるもののほか、警察官に よる引渡対象者の拘束に関する手続について必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。
(最高裁判所規則)
第五十一条 この章に定めるもののほか、 証拠の提供に関する令状の発付、証人尋問及び不服申立てに関する手続、引渡犯罪人の引渡し及び仮拘禁に関する裁判所の審査及び令状の発付に関する手続並びに執行協力に関す る手続について必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第三章 国際刑事警察機構に対する 措置
第五十二条 国家公安委員会は、国際刑事 裁判所から国際刑事警察機構を通じて管轄刑事事件の捜査に関する措置の請求を受けたときは、第六条第一項第四号に該当する場合を除き、次の各号のいずれかの措置をとること ができる。
一 相当と認める都道府県警察に必要な 調査を指示すること。
二 第六条第二項第三号の国の機関の長 に当該措置の請求に関する書面を送付すること。
2 国際捜査共助等に関する法律第十八条 第三項から第八項までの規定は、前項に規定する請求に係る措置について準用する。この場合において、同条第四項中「同項第二号」とあり、及び同条第七項中「第一項第二号」 とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第五十二条第一項第二号」と、同条第六項中「第一項第一号」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律 第五十二条第一項第一号」と読み替えるものとする。
第四章 国際刑事裁判所の運営を害 する罪
(証拠隠滅等)
第五十三条 他人の管轄刑事事件に関する 証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
2 犯人の親族が犯人の利益のために前項 の罪を犯したときは、その刑を免除することができる。
(証人等威迫)
第五十四条 自己若しくは他人の管轄刑事 事件の捜査若しくは裁判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、その事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、一 年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
(証人等買収)
第五十五条 自己又は他人の管轄刑事事件 に関し、証言をしないこと、若しくは虚偽の証言をすること、又は証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造すること、若しくは偽造若しくは変造の証拠を使用することの報酬とし て、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
(組織的な犯罪に係る証拠隠滅 等)
第五十六条 規程が定める罪に当たる行為 が、団体(共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に 従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。以下この項において同じ。)により反復して行われるものをいう。次項において同じ。)の活動として、当該行為を実行す るための組織により行われた場合において、その罪に係る管轄刑事事件について前三条(第五十三条第二項を除く。次項において同じ。)のいずれかに該当する行為をした者は、 三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
2 規程が定める罪が、団体に不正権益 (団体の威力に基づく一定の地域又は分野における支配力であって、当該団体の構成員による犯罪その他の不正な行為により当該団体又はその構成員が継続的に利益を得ることを 容易にすべきものをいう。以下この項において同じ。)を得させ、又は団体の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で犯された場合において、その罪に係る管轄刑事事件につ いて前三条のいずれかに該当する行為をした者も、前項と同様とする。
(偽証等)
第五十七条 規程第六十九条1に定めると ころに従って宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。
2 前項の罪を犯した者が、その証言をし た管轄刑事事件について、その裁判が確定する前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
3 国際刑事裁判所における手続に従って 宣誓した鑑定人、通訳人又は翻訳人が虚偽の鑑定、通訳又は翻訳をしたときは、前二項の例による。
(収賄、受託収賄及び事前収 賄)
第五十八条 国際刑事裁判所の裁判官、検 察官その他の職員(以下「国際刑事裁判所職員」という。)が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。この場合に おいて、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。
2 国際刑事裁判所職員になろうとする者 が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、国際刑事裁判所職員となった場合において、五年以下の懲役に処す る。
(第三者供賄)
第五十九条 国際刑事裁判所職員が、その 職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
(加重収賄及び事後収賄)
第六十条 国際刑事裁判所職員が前二条の 罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、一年以上の有期懲役に処する。
2 国際刑事裁判所職員が、その職務上不 正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しく は約束をしたときも、前項と同様とする。
3 国際刑事裁判所職員であった者が、そ の在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処す る。
(あっせん収賄)
第六十一条 国際刑事裁判所職員が請託を 受け、他の国際刑事裁判所職員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要 求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
(没収及び追徴)
第六十二条 犯人又は情を知った第三者が 収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
(贈賄)
第六十三条 第五十八条から第六十一条ま でに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。
(職務執行妨害及び職務強要)
第六十四条 国際刑事裁判所職員が職務を 執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 国際刑事裁判所職員に、ある処分をさ せ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
(国民の国外犯)
第六十五条 この章の罪は、刑法第三条の 例に従う。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、規程が日本国につい て効力を生ずる日から施行する。ただし、第五十五条及び第五十六条(第五十五条に該当する行為に係る部分に限る。)の規定は、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度 化に対処するための刑法等の一部を改正する法律(平成十九年法律第▼▼▼号)の施行の日又はこの法律の施行の日のいずれか遅い日から施行する。
(経過措置)
第二条 この法律の施行前に犯された請求 犯罪又は引渡犯罪に係る協力の請求については、第二章の規定は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、適用しない。
一 国際刑事裁判所が規程第十三 条(b)の規定により管轄権を行使するとき。
二 当該請求犯罪又は引渡犯罪が、規程 の締約国である外国について規程が効力を生じた後に、当該外国内若しくはその国籍を有する船舶若しくは航空機内で犯され、又は当該外国の国籍を有する者により犯されたもの であるとき。
三 当該請求犯罪又は引渡犯罪が、規程 第十二条3の規定により当該請求犯罪若しくは引渡犯罪について国際刑事裁判所の管轄権の行使を受諾した国の国内若しくはその国籍を有する船舶若しくは航空機内で犯され、又 は当該国の国籍を有する者により犯されたものであるとき。
2 前項の規定は、国際刑事警察機構を通 じた管轄刑事事件の捜査に関する措置の請求に係る第三章の規定の適用について準用する。
(逃亡犯罪人引渡法の一部改 正)
第三条 逃亡犯罪人引渡法の一部を次のよ うに改正する。
第四条に次の一項を加える。
3 法務大臣は、第一項の規定による命 令その他逃亡犯罪人の引渡しに関する措置をとるため必要があると認めるときは、逃亡犯罪人の所在その他必要な事項について調査を行うことができる。
(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に 関する法律の一部改正)
第四条 刑事収容施設及び被収容者等の処 遇に関する法律(平成十七年法律第五十号)の一部を次のように改正する。
第十五条第一項第四号中「第二十五条 第一項又は」を「第二十五条第一項、」に改め、「第二十三条第一項」の下に「又は国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律(平成十九年法律第三十七号)第二十一条第一項 若しくは第三十五条第一項」を加える。
(内閣総理・法務・外務大臣署名)