衆議院

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第2号 平成28年9月27日(火曜日)

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平成二十八年九月二十七日(火曜日)

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 議事日程 第二号

  平成二十八年九月二十七日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(大島理森君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。野田佳彦君。

    〔野田佳彦君登壇〕

野田佳彦君 民進党の野田佳彦です。

 私は、民進党・無所属クラブを代表して、安倍総理の所信表明演説並びに麻生財務大臣の財政演説について質問いたします。(拍手)

 野党第一党として、国民目線で安倍政権を厳しくチェックするとともに、蓮舫代表が提案型の論戦を掲げておりますので、地に足のついた提案もいたします。

 本年は、熊本地震の発生を初め、北海道や東北にまで何度も台風が上陸するなど、自然災害による甚大な被害が生じています。犠牲となられた方々に謹んで御冥福をお祈り申し上げるとともに、被災者の皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 民進党の要求に応え、台風十号を初めとする四つの台風などによる被害の激甚災害指定を決定したことは率直に評価いたします。引き続き地元自治体や住民に寄り添って、十分な対策を迅速に講じるべきです。

 熊本地震についても、公共事業等のハード面のみならずソフト面も含め、被災者に寄り添ったきめ細かな対策を講じるべきと考えますが、総理の答弁を求めます。

 近年、高齢者ら災害弱者が犠牲となる事例が後を絶たず、対策が求められてきました。国、地方の緊密な連携による情報発信、早期の避難を可能にする体制を確立し、十月にかけても発生し得る台風に対しても万全の体制で臨むべきだと考えますが、安倍総理の答弁を求めます。

 この際、災害対策関連法の体系、運用の全面的見直しが必要と考えます。この間の政府の災害対策の取り組み状況等を検証しつつ、我が国の法体系を見直すとともに、災害時における万全な避難計画を定め、計画を住民に周知徹底する仕組みを確立すること、ボランティアの活動支援などによる地域防災力を強化することに取り組むべきと考えますが、安倍総理より明快なる御所見をお伺いいたします。

 多くの命が失われ、未曽有の被害をもたらした東日本大震災から五年以上がたちました。しかし、発災から五年がたっても復興は思うように進んでおらず、被災地の方々は風化を最も恐れています。にもかかわらず、所信表明演説における震災への安倍総理の言及は余りに淡泊でした。民進党の東日本大震災復興本部長経験者として、まことに残念です。

 民進党は、住宅再建等加速化のための被災者生活支援金増額、用地問題解決の迅速化などを含む復興加速四法案を国会に提出しています。自民党総裁として賛成していただけませんか。安倍総理の御見解を伺います。

 福島の原子力災害について、国の社会的責任を認め、汚染水漏れなど廃炉の課題に主導的に取り組むとともに、風評被害対策、除染の徹底、速やかな賠償などを通じ、生活再建、安定化に取り組み、被災者支援法に基づき、健康調査の強化、母子、父子避難者への支援、帰還支援などを進めるべきであると考えますが、政府の見解を求めます。

 私たちは、与党の皆さんに比べ、より真摯に被災者の皆様の心に寄り添ってきたと自負しています。少なくともおんぶをされて視察するような政務三役はいませんでした。民進党は、福島の再生なくして日本の再生なしという気持ちを今後も変わらず持ち続け、一日も早い震災復興、福島再生が実現されるよう全力を尽くしてまいります。

 今回の補正予算では、再び大規模財政出動頼みの経済対策路線に戻り、二・七五兆円も国債を発行して、公共事業を乱発することになっています。財政規律は緩み、今年度予算は百兆円を突破しました。建設国債だから赤字国債よりよいなどということはありません。借金は借金です。収穫のときを待つ英知を忘れ、今さえよければいいという、将来世代から前借りばかりしていて、プライマリーバランス黒字化はいつ達成できるのですか。実現への道筋を総理に示していただきたい。

 我々は、財政健全化目標を堅持すべきという立場であり、目標や計画の策定、手段を法定化する財政健全化推進法を提案しておりますが、賛成していただけませんか。自民党総裁として、安倍総理の御見解を伺います。

 アベノミクスの失敗により、消費税引き上げ再延期はやむを得ない状況になってしまいました。それだけではありません。私が政治生命をかけて取り組んできた三党合意も風前のともしびとなってしまいました。まことに残念です。

 その発端は、安倍総理が二〇一四年秋に一回目の延期を決めて衆議院を解散したことです。消費税を政争の具にしないという魂が失われてしまいました。この再延期で、財政健全化への道のりは、より険しいものとなってしまいました。

 次の世代より次の選挙を重視する姿勢は、後世で厳しく糾弾されることになるでしょう。そのことを警告しておきます。

 平成三十一年十月に一〇%引き上げを延期したものの、変わらず軽減税率への準備を進めると総理はおっしゃいました。既に、我が党からだけではなく、多くの有識者から、軽減税率は高所得者優遇である、対象品目の線引きが難しく、利権発生の源になりかねない、中小企業、小規模事業者に大きな負担を与えるなど、逆進性対策にはふさわしくないとの指摘がなされています。

 民進党は、消費増税分を中低所得者に払い戻す給付つき税額控除導入に係る法案を国会に提出しています。自民党総裁として賛成していただきたいと思いますが、安倍総理の御見解を伺います。

 消費税引き上げについて国民の理解を得るためには、行革努力は不可欠です。しかし、安倍政権はこの間一体何をやってきたのかと言わざるを得ません。民進党は、行革をさらに進めていくため、行政事業レビューの法定化をすべきと考えますが、安倍総理の御見解を伺います。

 身を切る改革、政治改革も不徹底です。二月の予算委員会でも指摘したとおり、二〇二〇年国勢調査に基づいた議員定数削減、十削減は、ツーリトル・ツーレート、少な過ぎます、遅過ぎです。スタートにしかすぎないと私は理解しています。さらなる削減を協議しませんか。自民党総裁としての御見解を伺います。

 アベノミクスとは何なのかがわからなくなるほど、安倍総理はイリュージョンのように矢を繰り出してきました。三本の矢、新三本の矢、一億総活躍、地方創生、輝く女性、どれも名前は立派です。残念ながら、矢のほとんどは放たれないか、放つ力が弱過ぎて的に届いていません。

 ただ、見当違いのところに突き刺さった矢が二本だけあります。

 一つは、先ほど触れた大規模財政出動です。この矢は国家財政に突き刺さり、深いダメージを与えています。

 もう一つは、異次元の金融緩和です。この矢は金融市場に深々と突き刺さり、深刻な影響をもたらしています。

 金融緩和さえすれば物価が上がるはず、物価が上がりさえすれば人々は早目に物を買うはず、物が売れれば企業は投資するはず、企業がもうかれば賃金は上がり、もっと人々は物を買うはず。こんな安倍政権の描いたシナリオどおりに進んでいないのは、金融緩和が足りないからでしょうか。第一の矢が間違っていたのではないですか。日銀による大量の国債引き受けの結果、二〇一八年には保有残高がGDPを上回る見通しです。株式市場は、日銀のETF購入とGPIFの株購入により官製市場と化し、ゆがみまくっています。

 誰の目から見ても、もう限界です。だから、今回の金融政策決定会合で、日本銀行は総括的検証なるものを行い、二年で二%としていた物価安定目標を放棄したのでしょう。もはやアベノミクス第一の矢の手詰まりは明らかです。

 特に、マイナス金利は金融機関に深々と突き刺さり、経営に悪影響を与えています。地域金融機関においては、より深刻です。日本銀行にマイナス金利を撤回させることを政府として要請することを提案いたしますが、安倍総理の御見解を伺います。

 また、所信の中でたびたび触れられた二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックを安心して迎えるためにも、出口戦略を真剣に考えるべきと考えますが、安倍総理の御所見を伺います。

 政府税制調査会で、配偶者控除の廃止を含む所得税改革の議論が進んでいます。働き方、ライフスタイルに中立な税制にし、再分配により若年層を支援していくという理念自体は、民進党としても賛同いたします。

 しかし、現在の議論は増税が先行している感が拭えません。配偶者控除廃止により得られる財源は、何に使うことを念頭に置いているのですか。財務大臣の明確な答弁を求めます。

 いわゆる移転的基礎控除及び夫婦控除が有力案として俎上に上っていますが、いずれの案にしろ、働きたくても働けない配偶者を抱える世帯にとっては、単なる増税となる案ではありませんか。また、保育園に子供を預けて働きたくても預けられない世帯にとっても、単なる増税となる案ではありませんか。財務大臣の明確な答弁を求めます。

 また、夫婦控除は夫婦を選択しなければ適用されないとなれば、ライフスタイルに中立な税制とは言えないと思いますが、財務大臣の明確な答弁を求めます。

 私が内閣総理大臣のとき、自由貿易、FTAAP推進の基本的な立場から、交渉参加に向けて協議に入りましたが、ハードルが高く、国益を考えるとTPP交渉参加に踏み切れずにいました。そのとき、二〇一二年暮れの総選挙で、TPP断固反対、ぶれないと約束したのは、ほかならぬ安倍総裁です。

 政権をとったら、その舌の根も乾かぬうち、交渉参加するなど、国民にうそを平然とつく姿勢は言語道断です。しかも、五項目の聖域は守られていない、自動車分野のメリットも少ない結果に終わりました。交渉力のある自民党などというのは手前みそにすぎず、我々が参加をちゅうちょしていたものをのみ込んだとしか思えません。

 民進党は、攻めるものを攻め切れず、守るものを守り切れていない現在の協定案には反対せざるを得ません。

 しかも、現在の協定案には米国議会もネガティブで、きょうテレビ討論で論戦を交わした米国大統領候補は二人とも反対しており、早期発効を進める理由がありません。

 TPP関連法案については、しっかり情報開示すること、拙速な審議にしないこと、強引な採決は決してしないことを提案いたしますが、自民党総裁として、安倍総理の明確な答弁を求めます。

 自民党と民進党の経済に対する考え方の大きな違いは、中小企業政策において顕著と私は考えます。

 安倍政権は、既存の大企業重視で、大企業のおこぼれが中小企業に回ることを好循環と呼んでいると理解しています。そうした発想だから、中小企業政策というと、飛び抜けた中小企業を大企業にすることがメーンにならざるを得ないのではないでしょうか。

 安倍総理は、所信表明演説で、百年前に誕生し、大きく成長したかまぼこ店の例を取り上げられました。

 世界で創業百年以上の法人は四万社あると言われていますが、日本にはその約七割の二万七千社があることを御存じでしょうか。その多くが中小企業です。そして、この国の九九・七%は中小企業であり、七割以上の雇用を支えています。まさしく、中小企業が日本経済を支え、牽引してきたのです。

 一方、民進党は、旧民主党政権下で、中小企業政策に係る政府の行動指針を定めた中小企業憲章を制定するなど、中小企業を日本経済の原動力と捉え、中小企業の活力強化に焦点を当ててきました。

 その中小企業の現在の景況感はというと、円安による生産コスト上昇も消費税も価格転嫁できず、資金繰りに影響が出るなど、大変苦しい状況に置かれています。

 総理は中小企業の景況感は好転しつつあると言いますが、果たして現場の感覚はそうでしょうか。中小企業の関係者の皆さんや国民が実際に景気がよくなっているのを実感できるのは一体いつになるのですか。安倍総理の御見解を伺います。

 安倍政権は、マイナス金利、外形標準課税など、中小企業の足を引っ張るばかりではありませんか。中小企業への外形標準課税について引き続き慎重に検討することとしておりますが、この際、外形標準課税の中小企業への適用拡大はしないと安倍総理にははっきりと明言していただきたい。

 また、民進党は、中小企業社会保険料事業主負担軽減法案を国会に提出しております。自民党総裁として賛成していただきたいと思いますが、安倍総理の御見解をお伺いいたします。

 公的年金の積立金を運用しているGPIFは、本年七月二十九日に二〇一五年度の運用損は五兆三千九十八億円であったことを発表しました。この赤字額はリーマン・ショック以降では最大です。この背景には、二〇一四年十月にGPIFが運用の割合を変更し、国内外の株式の割合を倍増させ、積立金の五〇%に引き上げたことがあります。このことについて、私は三つのことを厳しく指摘したいと思います。

 第一は、発表の時期です。

 GPIFは、例年七月上旬までに前年度の運用結果を公表してきました。しかし、本年の公表が参院選後となったことは、明らかに選挙への影響を考慮した損失隠しだったと言わざるを得ません。

 民は知らなくていい、政府に全て任せていればよいのだという、知らしむべからず、よらしむべしは封建時代の統治原理です。

 今後は、民主主義の鉄則である情報公開を徹底し、このようなことは二度と行わないと約束していただけませんか。安倍総理の明確な答弁を求めます。

 第二は、市場のあり方です。

 本来、株価は経済の実勢、今後の先行きを反映する体温計でなければなりません。体温計が適切に機能していなければ処方箋も適切に出せません。支持率維持のために株価をつり上げようと官製相場を演出するような異常なやり方は、いずれ市場の手痛い反撃を受けることは必定です。

 第三は、そもそも論です。

 株価は上がるときも下がるときもあります。バブルが発生するときもはじけるときもあります。そんなハイリスクの資産に国民の老後の生活資金を半分もかけていいのでしょうか。

 民進党は、株への投資を減らし、安全な運用に切りかえることを提案いたしますが、安倍総理の答弁を求めます。

 旧民主党政権下の法改正で決まった、年金受給に必要な保険料支払い期間を二十五年から十年に短縮する措置が、消費税の引き上げ再延期により平成三十一年十月に先送りされることが懸念されていました。

 民進党が来年四月実施を強く主張したことで、結局、政府は、来年八月には施行し、短縮措置を九月分の年金を十月に支給するときから適用する法案を提出したとのことですが、なぜ施行をおくらせるのか、安倍総理の明快な答弁を求めます。

 生活保護を受給する高齢者は増加し続け、受給者全体の半数を超えています。低所得者の高齢者の暮らしを支えるため、年金の最低保障機能強化が喫緊の課題となっています。

 旧民主党政権下の法改正で、消費税の一〇%への引き上げの際に、約七百九十万人の低所得者の年金を最大年六万円かさ上げすることを決めました。しかし、消費税引き上げ再延期に伴い、このかさ上げまでもが先送りされることが懸念されています。

 安倍政権は参院選挙前に急遽一回だけ三万円の給付金を配りましたが、そのような、選挙対策としか思えない、財源的にも制度的にも裏づけのないばらまきでは、国民の不安感は増すばかりです。

 民進党は、国民に約束していた社会保障の充実は、予定どおり来年四月から実施することを提案いたしますが、安倍総理の御見解を伺います。

 二〇一三年十一月、赤ちゃん取り違え事件をめぐる判決が大きな話題になりました。六十年前、都内の病院で同じ日に生まれた二人の男児が取り違えられた事件であり、病院側に賠償を命じた判決でした。

 本来なら裕福な家庭の長男として生まれたはずのAさんは、生活保護を受けながら暮らす母親のもとで、六畳一間のアパートで兄二人とともに育てられました。中学を卒業後、町工場に就職。働きながら定時制の工業高校を卒業しましたが、大学進学の夢は果たせませんでした。判決当時は、血のつながっていない兄の介護をしながらトラック運転手をしていました。

 一方、Aさんの十三分後に生まれたBさんは、何らかの理由で取り違えられ、経済的に恵まれた家庭で育ちます。子供のころから家庭教師がつき、私立高校を経て大学にも進学。後に生まれた弟たちとともに、既に亡くなった両親の遺産も相続し、現在も安定した人生を歩んでいるそうであります。

 この事件は、運、不運で片づけてしまう問題でしょうか。裕福な家庭で育てば、学ぶ機会にも恵まれ、豊かな人生を送れる。片や、極貧家庭に生まれれば、学ぶチャンスを奪われ、辛苦の一生を送る。生まれた環境に格差があった場合、映画やドラマのようにその差を逆転することは困難であり、個人や家庭の努力だけでは格差はなくならないのが現実なのではないでしょうか。

 子供は親を選べません。ならば、どんな家庭に生まれようと、子供の育ちや学びを社会がしっかりと後押しをして、機会の均等を実現していかなければなりません。

 子供の貧困解消に向けた第一歩として、民進党は、児童扶養手当の支給年齢の引き上げ、多子加算の増額を提案していますが、安倍総理の御見解を伺います。

 若者の可能性の芽を摘むような国家に未来はありません。そうした観点から、民進党としては、来年度に給付型奨学金を創設することを提案いたしますが、安倍総理のお考えを伺います。

 また、安倍政権の教育再生は、国の都合を押しつける政策ばかりです。これで本当に子供たちの可能性を伸ばすことができるでしょうか。まず、教職員が児童生徒一人一人に向き合い、見守ることのできる体制づくりを進めることが急務であり、三十五人以下学級を小学校から中学まで実現することを提案いたしますが、安倍総理の御見解を求めます。

 北朝鮮は、九月九日、五度目となる核実験を行いました。ことしだけで二回目です。また、核を搭載するための弾道ミサイルも、ことし既に十三回、二十一発を発射しました。これは許しがたい暴挙であって、我が国のみならず、東アジアの平和、ひいては国際社会の安全を損なう重大な脅威であり、断じて容認できません。

 北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威については、最近、核兵器の小型化、弾道ミサイルの発射技術が格段に向上し、北朝鮮が目指す核弾頭ミサイルの実戦配備が近づいていると言って過言ではないと考えます。つまり、我が国の安全保障にとって、今までとは全く異なる新たな脅威の段階に入ったと言わざるを得ませんが、政府の認識を伺います。

 これら北朝鮮の一連の行為について、米国、韓国、中国、ロシアを初めとする関係諸国は、国連安保理決議に違反しており容認できないとの立場で一致してはいますが、その認識には温度差もあり、北朝鮮の挑発行為をとめさせるには至っていません。

 我が国は、これら国際社会と連携し、安保理での新たな制裁決議を目指すなど、北朝鮮の挑発行為が繰り返されることがないよう、リーダーシップを発揮するべきです。このことについて、安倍総理の認識と具体的な方針についてお尋ねをいたします。

 尖閣諸島が我が国の固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いがなく、現に我が国はこれを有効に支配しています。したがって、尖閣諸島をめぐって解決すべき領有権問題は存在しません。このような基本認識のもと、尖閣諸島を長期にわたり平穏かつ安定的に維持管理するために、私は国有化を決定いたしました。

 しかしながら、尖閣諸島周辺における中国当局及び中国漁船の活動状況は、最近ますます活発化しているように見受けられます。これらの活動は我が国に対する重大な挑発行為であり、我が国の主権を保全する観点から、決して看過することはできません。

 民進党は、我が国の領域に対する不法行為に適切かつ迅速に対応し、領土、領海を守るための領域警備法案を既に国会に提出しております。

 一方で、安倍政権は、口先では我が国の領土、領海、領空は断固として守り抜くと言いながらも、これらグレーゾーン事態に対する法整備については依然として放置したままです。これを怠慢と言わずして何と言えばよいのでしょうか。

 そこで、総理にお尋ねします。

 これら尖閣諸島をめぐる情勢に総理はどのように対応されるおつもりなのか、御説明ください。また、この臨時国会において、グレーゾーン事態に対する法整備を行う必要性を総理は全く感じておられないのか、あわせて御認識をお伺いいたします。

 安倍総理は、本年五月のソチにおける首脳会談において、北方領土問題について新しいアプローチを提案しました。私たちも北方領土問題の解決を願いますが、総理の方針を手放しで評価するわけにもいきません。

 過去の交渉経緯もあり、経済分野における協力拡大を求めるロシア側と、北方領土問題の解決を求める我が国との間では、微妙なすれ違いがあるとの見方もあります。領土問題の解決に向けて進展が期待できるのか、経済協力だけロシアにいいとこ取りされるのではないかと心配されるところです。

 新しいアプローチとは何か、これまでと何が違うのか、何を最終的な獲得目標とするのか、安倍総理の御見解を伺います。

 なお、安倍総理は、所信表明演説において、世界じゅうどこであろうとも、一方的な現状変更の試みは認められません、いかなる問題も、力ではなく、国際法に基づいて、平和的、外交的に解決すべきと述べられました。私もこの考え方には全面的に同意しますが、同時に、総理の言葉は二重基準、ダブルスタンダードではないかと危惧せざるを得ません。

 近年、力による現状変更の試みの最たるものといえば、ロシアによるクリミア併合です。総理は、ロシアがウクライナで力による現状変更を試み、また、南シナ海の仲裁判決に対する中国の姿勢を支持していることなどについて十分に検討、認識しておられるのでしょうか。

 欧米諸国等が経済制裁を継続している中で、ロシアとの経済協力に前のめりになっている総理の姿勢は、総理自身の言葉と矛盾していないでしょうか。北朝鮮や中国が挑発行為を繰り返す中での日米同盟への影響を含め、国益上マイナスになっていないのか、総理の御認識を伺います。

 総理は、所信で、与野党の立場を超え、憲法審査会での議論を深めていこうではありませんかと呼びかけられました。

 そこで、お伺いいたします。

 自民党は、国民の権利を軽んじ、天賦人権説を否定して国中心に組み立てを変える自民党憲法草案の実現を目指して議論に臨むのですか。本気で議論する気があるなら、まずは自民党総裁として草案を撤回していただきたいと思いますが、総理の御所見を伺います。

 民進党は、現行憲法に足りないところがあるならば憲法を改正しようという立場であり、子供たちの未来のために現行憲法自体が障害となるようなことがあるならば改正に取り組む考えであることをここで明確にしておきます。

 去る八月八日、ビデオを通じて、天皇陛下から象徴としてのお務めについてお言葉の表明がなされました。(発言する者あり)恐縮ですが、事柄の関係から、ぜひこの議論は静かに聞いていただけませんか。

 去る八月八日、ビデオを通じて、天皇陛下から象徴としてのお務めについて……(発言する者あり)議長、お願いします。

議長(大島理森君) 質問、どうぞそのまま続けてください。

 御静粛に。

野田佳彦君(続) 去る八月八日、ビデオを通じて、天皇陛下から象徴としてのお務めについてお言葉の表明がなされました。改めて、天皇陛下が憲法に定められた象徴としての役割を全身全霊をもって果たされてきたことに深い感銘を受けました。同時に、このような異例の事態になったことは政治の不作為が最大の原因であり、私も関係者の一人として猛省しています。

 政府は、皇室典範は改正せず、今上陛下に限って生前退位可能とする特別措置法を整備する方向で検討に入ったとの報道がなされています。法整備の方向性を政府が先に決めてしまうのではなく、まずは有識者会議の検討に委ねるべきではないでしょうか。総理のお考えをお示しください。

 陛下は、国民統合の象徴であることを強く意識され、種々の国事行為のみならず、被災地の慰労、さきの大戦の激戦地における慰霊など、新たな公務を開拓してこられました。その陛下のお気持ちや御心労に思いをいたすならば、皇室のいやさかについてもあわせて議論を行っていくべきではないでしょうか。

 また、憲法は、「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」と定めていますが、皇室典範改正ではなく特別立法として措置するなら、法律論として問題があるとの指摘も聞かれます。

 よって、一代限り、その場しのぎの特例法による対応に初めから誘導するのではなく、皇室典範改正も視野に入れ、もう少し幅広な議論もあわせて行っていくべきではありませんか。安倍総理の御見解をお伺いいたします。

 野田内閣において皇室制度に関する有識者のヒアリングを行い、女性宮家創設を柱とする論点整理をまとめましたが、当時、安倍総理は月刊誌に寄稿し、民主党議員には皇室問題を任せるわけにはいかないなどと主張されました。このような偏狭な立場に固執するのではなく、もっと広い心で静かに議論を進めていくべきです。国権の最高機関である国会でも静かに議論を進め、立法府の責任を果たしていこうではありませんか。自民党総裁として安倍総理の御所見を伺います。

 民進党としても、党内に議論する場を設け、こうした議論に適切に対応していく所存であります。

 結びに、民進党は、蓮舫代表を先頭に、自民党にかわり再び政権を担い得る政党を目指すことを改めて国民の皆様にお誓い申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 野田佳彦議員にお答えいたします。

 熊本地震及び一連の台風被害からの復旧復興についてのお尋ねがありました。

 まず、改めて、お亡くなりになった方々に哀悼の意を表し、被災された全ての皆様にお見舞いを申し上げます。

 熊本地震については、インフラの復旧や住まいの確保、なりわい、産業の復興をきめ細やかに推進するため、第二次補正予算案に約四千百三十九億円を計上しているところであり、早期の成立の御理解と御協力をお願いいたします。

 北海道、東北地方を襲った一連の台風による災害については、九月十六日、激甚災害に指定し、広範な分野での財政支援等の特例措置を講じたところです。

 できることは全て行うという決意のもと、被災者に寄り添いながら、政府一丸となって、一日も早い被災者の生活再建、被災地の復旧復興に全力を挙げるとともに、今後の台風等に備えるため、とるべき避難行動について、配慮を要する方々を初め、住民へわかりやすく周知すること等の対策を進めてまいります。

 今後とも、自然災害が起こりやすい我が国において、国民の生命と財産を守るため、発生した災害から得られた貴重な教訓をしっかりと踏まえ、法制度のあり方も含め、ハード、ソフト一体となった総合的な防災・減災対策の体系的な見直しを不断に行ってまいります。

 民進党提出法案に対する見解についてのお尋ねがありました。

 東日本大震災からの復興については、住まいの再建やなりわいの再生など、着実に進展し、復興は新たなステージを迎えております。

 引き続き、閣僚全員が復興大臣という意識のもと、必要なことは全てやり遂げるという強い決意を持って、現場第一主義で、被災者に寄り添いつつ、被災地の生活環境の整備、復興に向けて全力で取り組んでまいります。

 御指摘の住宅再建加速化、用地問題の解決などについても、累次にわたる取り組みを進めてきたところであります。その上で、民進党などから提出された復興加速四法案が本当に必要なのかどうかについて、国会で御議論いただければと思います。

 福島の原子力災害についてお尋ねがありました。

 世界にも前例のない東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策については、長期にわたって安全かつ着実に進めるため、国が前面に立って全力で取り組んでまいります。

 また、風評の払拭、除染の確実な実施、迅速な賠償の確保、なりわい再生への支援などにより、生活の再建、帰還支援に取り組んでまいります。

 子ども・被災者支援法の趣旨に沿って、福島県の県民健康調査の支援、家族と離れて暮らす母子、父子避難者に対する支援などを引き続き進めてまいります。

 福島の復興なくして東北の復興なし。東北の復興なくして日本の再生なし。

 被災者の方々の気持ちを大切にし、なりわい、生活、心のケアなどについてそれぞれきめ細かく支援し、安心して戻れるふるさとを一日も早く取り戻せるよう、全力で取り組んでまいります。

 プライマリーバランスの黒字化の時期と道筋についてお尋ねがありました。

 安倍内閣は、二〇二〇年度にプライマリーバランス黒字化を実現するという財政健全化目標を堅持します。そのためにも、経済再生なくして財政健全化なしとの基本方針のもと、未来への投資を実現する経済対策を初めとする強い経済の実現を目指し、取り組みを進めています。

 私たちの経済政策により、国、地方を合わせた税収は、野田政権時代よりも二十一兆円増収をしているところであります。また、これまでも、社会保障の改革を含め、徹底的な重点化、効率化など歳出削減にも取り組んできたところです。

 引き続き、経済・財政再生計画の枠組みのもと、安倍内閣のこれまでの歳出改革の取り組みを強化してまいります。

 財政健全化に向けた取り組みの実効性の確保については、法制化という手段そのものよりも、政府として定めた目標を堅持し、責任を持ってこれを実現していくことこそが重要であると考えております。御提案の財政健全化責任法案については、そうした観点も踏まえ、国会で御議論いただければと思います。

 今後とも、経済再生を進めながら、二〇二〇年度の財政健全化目標に向けてしっかりと取り組んでまいります。

 給付つき税額控除や行政事業レビューについてお尋ねがありました。

 御指摘の給付つき税額控除は、所得が低い方に焦点を絞った支援ができるといった利点はあるものの、消費税そのものの負担が直接軽減されるものではなく、消費者にとって痛税感の緩和の実感につながらないという問題、所得や資産の把握が難しいといった問題等があるものと承知しています。

 他方、軽減税率は、給付つき税額控除とは異なり、日々の生活において幅広い消費者が消費、利活用している商品の消費税の負担を直接軽減することにより、買い物の都度、痛税感の緩和を実感できるとの利点があり、この点が特に重要であるとの判断により、政府・与党において導入を決定いたしました。

 軽減税率制度の導入に伴い、給付つき税額控除は、消費税率引き上げに伴う低所得者対策としては実施することはないと考えています。

 行政事業レビューについては、外部有識者によるチェック対象を重点化したり、新たに基金シートを毎年公表するなど、効果的な取り組みを実施しています。

 また、昨年の秋のレビューでは、税金の使い方を国民に考えてもらうため、学生を含む傍聴者の前で、オープンに政策の議論を行いました。

 今後とも、現行の枠組みのもとで、国の事業がさらに効果的、効率的になるよう、しっかりと取り組んでまいります。

 議員定数削減についてお尋ねがありました。

 衆議院の定数削減については、当時の民主党は区割り改定法に反対しましたが、私たちは政権奪還後、まず〇増五減をなし遂げました。さらに、さまざまな困難を乗り越え、調査会の答申や各党各会派の議論等を踏まえ、さきの国会において定数十を削減するための法律が可決、成立し、現在、選挙区画の見直しに向けての審議が進められているところであります。

 政治の責任とは何でしょうか。それは、実現させていくことであります。言葉を幾ら重ねても、ゼロはゼロであります。それでは政治への信頼は失われます。まずは、この議員定数十削減をきちんと実現させようではありませんか。私たちは、結果を出してまいります。

 その上で、さらに議員定数を見直す必要があるかについては、小さな政党にも配慮しながら、各党各会派が真摯な議論を行うことが重要であると考えています。

 日本銀行の金融政策についてお尋ねがありました。

 政権交代後、アベノミクス三本の矢によって、二十年間続いたデフレからの脱却にチャレンジし、もはやデフレではないという状況をつくり出すことができました。特に、国民生活にとって最も大切な雇用は大きく改善しています。

 今回、日本銀行は、総括的な検証を行った上で、金融緩和を強化するための新しい枠組みの導入を決定したところであり、当面、短期政策金利をマイナス〇・一%、十年物国債金利をゼロ%程度で推移するように長短金利を操作することとしていると承知しています。これは、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するためのものであると理解しております。

 いずれにせよ、金融政策の具体的な手法は日本銀行に委ねられるべきであると考えており、黒田総裁を信頼しております。

 引き続き、政府、日銀は緊密に連携しながら、二%の物価安定目標に向かって、デフレ脱却、そして力強い成長を目指していきます。

 なお、金融緩和の出口戦略に具体的に言及することについて、黒田総裁は、市場の混乱を招くおそれが高いため時期尚早であると述べているものと承知しています。

 TPPについてお尋ねがありました。

 自由で公正な貿易を堅持し発展させる、これこそが世界経済の成長の源泉です。我が国は、戦後、自由貿易のもとで経済成長を遂げてきました。その我が国こそが、世界の自由で公正な貿易・投資ルールの牽引役であり、提唱者でなければならない、このように確信をしております。

 TPPは、その中核です。世界の四割経済圏において、つくり手が丹精込めた付加価値が正当に評価されるようになります。TPPによって新たにつくられるルールは、単にTPPにとどまらず、日・EU経済連携協定、RCEPなどにおけるモデルとなるものです。

 TPPは、参加希望を表明する国々が相次いでおり、潜在的な参加国が数多くあります。TPPが拡大していく機運を積極的につくっていくことこそ、我が国の役割であります。

 私は、政権発足後間もない日米首脳会談で、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することは求められないことなどを直接確認した上で、交渉参加を決断いたしました。

 我が国は、交渉を主導することで、農林水産品の約二割について関税等による保護を維持し、自動車部品の対米輸出額の八割以上の即時撤廃を確保しました。厳しい交渉の中で国益にかなう最善の結果を得ることができました。聖域なき関税撤廃を前提とする限り、TPP交渉の参加に反対するという自民党の国民の皆様とのお約束は、しっかりと守ることができたと考えております。

 攻めるべきは攻め、守るべきは守ることができた以上、後は、決断すべきときに決断し切れないという過去の轍は踏むことのないように全力を尽くしてまいりたいと思います。

 米国も発効に向けて努力を続けていると承知しています。米国にその努力を続けてもらうためにも、交渉をともに牽引してきた日本が、このタイミングで国内手続を前進させていくことが不可欠だと考えています。

 他の署名国の多くも日本の動きに注目し、日本に期待しています。この国会でやらなければならない、こう考えています。

 TPP交渉は、合意された結果が全てです。合意された結果は、全て公表しております。今後の国会審議において、引き続き丁寧に説明してまいります。

 国会における審議の進め方については、国会の御判断に従うべきものと考えています。政府としては、わかりやすく丁寧な説明に努めてまいります。その上で、熟議の後に、決めるべきときは決めなければならない、それが民主主義のルールであると考えます。

 安倍政権の中小企業政策についてお尋ねがありました。

 日本経済を支えているのは、全国三百八十万の中小企業であります。老舗企業も多くあり、三千三百万人を超える方々が中小企業で働いています。

 民主党が政権を担った三年間、行き過ぎた円高は多くの企業を海外へ追いやり、空洞化が進みました。中小企業は取引先を失い、どんなに頑張っても、どんなに汗を流しても、どんなによいアイデアを出してもやっていけない。連鎖倒産という言葉が日本じゅうを覆っていました。その強い危機感が、私たちの政権交代へとつながりました。

 そして、この三年間で、中小企業の倒産は、民主党政権時代と比べて三割減少させることができました。現在の中小企業の業況は、経常利益が過去最高水準で推移するなど、全体としては改善傾向にあると考えています。他方で、地域や業種によってばらつきが見られることから、現場の感覚についても、同様にばらつきがあるのは事実であります。

 中小企業の関係者や国民の皆様が、できる限り早期に、一層景気がよくなってきたと実感できるよう、経営の実態に目配りしながら、最大限の取り組みを進めてまいります。

 経済の好循環を確実にするため、取引条件の改善を図ります。親事業者が負担すべき費用等を下請事業者に押しつけることがないよう、年内をめどに、下請法の運用強化などを進めてまいります。

 今般の経済対策では、革新的な物づくり、サービスの開発支援等の事業を盛り込んでおり、これらの事業を通じて、中小・小規模事業者の生産性向上、販路開拓などの努力を後押しします。

 御指摘のあったマイナス金利につきましては、日本銀行によるマイナス金利導入以降、貸出金利はさらに低下しており、中小企業を含む企業の資金調達コストの低下にしっかりとつながっていると考えています。

 なお、平成二十七年度、二十八年度税制改正における外形標準課税の拡大は、資本金一億円以下の中小法人は対象外としております。外形標準課税の適用対象法人のあり方については、地域経済、企業経営への影響も踏まえながら、引き続き慎重に対応してまいります。

 社会保険料の事業主負担は、働く人が安心して就労できる基盤を整備することが事業主の責任であるとともに、事業主の利益にも資するという観点から事業主に求められているものです。御党の法案は、社会保険料の事業主負担を十年もの長期にわたり公費に転嫁するものであり、適当ではないと考えます。

 年金積立金の運用についてのお尋ねがありました。

 年金積立金については、将来の安定的な年金の給付に向けて、長期的な観点に立って、安定的かつ効率的に運用することを基本としています。

 平成十三年度の自主運用開始以降、十五年間、年金積立金の累積収益は約四十兆円となり、安倍政権の三年間では二十七・七兆円となっています。年金財政上必要な収益を十分に確保しています。

 したがって、市場動向等による短期的な評価損によって年金財政上の問題は生じず、年金額に影響することも全くありません。国民の皆様には御安心をいただきたいと思います。

 短期的な評価損を殊さらに取り上げ、年金制度に対する国民の不安をあおるような声も一部にはありますが、そのようなことは厳に慎むべきであると考えています。

 GPIFの基本ポートフォリオは、長期の経済見通し等に基づき、専門家による検討の結果として定められています。

 一昨年のポートフォリオ変更は、デフレから脱却しつつある経済状況において、国内債券に偏ったポートフォリオでは長期的に必要な利回りを確保できないという考え方のもと、専門的検討の結果、株式等への分散投資をさらに進めたものです。現時点で見直す必要が生じているとは考えておりません。

 また、運用状況の公表日については、GPIFの作業日程等によりGPIF自身が決めたものであると承知しています。政治的な日程を勘案した事実は一切なく、損失隠しとの批判は全く当たりません。

 GPIFでは、本年度から保有資産の銘柄の全面開示に踏み切るなど、情報の開示に積極的に取り組んでいます。政府としても、引き続き適切な情報開示に取り組んでまいります。

 年金の受給資格期間短縮についてのお尋ねがありました。

 来年四月に予定していた消費税率一〇%への引き上げについては、平成三十一年十月まで延期することといたしました。

 こうした中で、年金の受給資格期間の短縮は、現在の法律では消費税率一〇%への引き上げ時に行うこととされていますが、無年金の問題は喫緊の課題であることから、できる限り早期に実施すべきであると判断したものです。民主党が主張したから実施するわけではありません。

 今回の受給資格期間の十年への短縮で、新たに約六十万人を超える方々が年金受給権を得ると見込んでいます。こうした多くの方々が間違いなく年金を受給できるよう、その対応に万全を期するため、平成二十九年八月施行としているものです。

 消費税率の引き上げに伴う社会保障の充実についてお尋ねがありました。

 社会保障の充実については、給付と負担のバランスを考えれば、消費税率の引き上げを延期する以上、全てを行うことはできません。また、赤字国債を財源に社会保障の充実を行うような無責任なことは私たちは行いません。

 しかし、安倍政権の子育て世帯を応援する決意は揺らぎません。消費税財源を活用して行う社会保障の充実のうち、待機児童ゼロや介護離職ゼロを目指した保育、介護の受け皿整備は予定どおり着実に進めます。また、無年金の問題は喫緊の課題です。年金の受給資格期間の十年への短縮を実行します。さらに、保育士、介護職員などの処遇改善など、一億総活躍プランに関する施策については、アベノミクスの果実の活用を含め、財源を確保し、優先して実施していきます。

 その他の施策についても、優先順位をつけながら、税収の動向や、重点化、効率化の効果を見きわめつつ、今後の予算編成過程の中で最大限努力をしてまいります。

 児童扶養手当についてお尋ねがありました。

 子供たちの未来が、家庭の経済事情によって左右されるようなことがあってはなりません。経済的にもさまざまな困難を抱えている一人親家庭や子供の多い世帯には、きめ細かな支援が必要です。

 児童扶養手当の支給対象年齢については、高校進学率が九割を超え、卒業までの間、実質的に稼得能力がないことを考慮したものであり、その年齢の引き上げについては、高校を卒業して就職する道を選ぶ方とのバランス等を踏まえる必要があるため、十八歳までとしています。

 一方で、多子加算については、必要な財源を確保し、子供が二人以上の一人親家庭の加算額を倍額にする改正を行いました。第二子の加算額については約三十六年ぶり、第三子以降の加算額については約二十二年ぶりの引き上げとなります。

 今後とも、子供の貧困対策に全力で取り組んでまいります。

 給付型奨学金についてお尋ねがありました。

 既に、ニッポン一億総活躍プランや未来への投資を実現する経済対策を踏まえ、具体的な検討を進めており、平成二十九年度予算編成過程を通じて、制度内容について結論を得、実現いたします。

 いずれにせよ、若者の将来が家庭の経済事情によって左右されることがないよう、教育費負担軽減に向けて、スピード感を持って取り組んでまいります。

 三十五人以下学級についてお尋ねがありました。

 これまでも、全ての子供たちが世界トップレベルの学力と規範意識を身につけることができるよう、教育再生実行会議を設置し、教育内容の改善などに取り組んできました。

 今後、家庭の状況や障害などの制約を克服し、自信を持って学ぶ環境をつくるため、少人数教育も含めた教職員の指導体制の充実、教員の資質、能力の向上、専門スタッフなども参画したチーム学校の構築を一体的に推進してまいります。

 北朝鮮の核、ミサイル問題についてお尋ねがありました。

 北朝鮮の核実験及び弾道ミサイルの発射は許しがたい暴挙であり、断じて容認できません。

 北朝鮮は、核弾頭の爆発実験を実施したと発表しており、潜水艦からの弾道ミサイル発射や、三発の弾道ミサイルを同時に発射し、三発とも我が国の排他的経済水域内に着弾させるなど、ことしに入って二十一発の弾道ミサイルを発射していることと相まって、今回の核実験は新たな段階の脅威であります。これに対する対応も、全く異なるものでなければなりません。

 北朝鮮に対して、このまま核やミサイルの開発を続けていけば、ますます国際社会から孤立し、その将来を切り開くことができないということを理解させなければなりません。

 我が国は、非常任理事国として、新たな安保理決議の採択に向け、米国、韓国、中国、ロシア等と緊密に連携しながら、リーダーシップを発揮してまいります。北朝鮮への物資、資金の流れを厳しく規制する新たな安保理決議、そして我が国独自の措置により、断固たる対応をとっていく決意です。

 核、ミサイル、そして、引き続き最重要課題である拉致問題に関し、北朝鮮が問題の解決に向け具体的行動をとるよう強く求めてまいります。

 グレーゾーン事態への対応についてお尋ねがありました。

 政府においては、昨年五月、武力攻撃に至らない侵害に際し、いかなる不法行為に対しても切れ目のない十分な対応を確保するため、海上警備行動等の発令手続の迅速化のための閣議決定を行ったところです。

 また、警察や海上保安庁など関係機関において、対応能力の向上、情報共有、連携の強化、各種訓練の充実など、必要な取り組みを一層推進しているところです。

 切れ目のない対応を確保する上で大切なことは、意思決定、判断が迅速的確に行われ、それに従って関係機関が整々とその役割を果たすことができる体制をしっかり整えることであります。

 その意味において、現下の安全保障環境において、武力攻撃に至らない侵害に際し、切れ目のない十分な対応に必要な体制を整備したところであり、現時点では新たな法整備が必要であるとは考えていません。

 北方領土問題と日ロ関係についてお尋ねがありました。

 戦後七十年以上を経てもなお平和条約が締結をされていない異常な状態を打開するため、首脳同士の信頼関係のもとに解決策を見出していく必要があります。

 プーチン大統領との間では、五月のソチにおける首脳会談で、これまで停滞してきた交渉に突破口を開くため、未来志向の考え方に立って、今までの発想にとらわれない新しいアプローチで交渉を精力的に進めていくことで一致しました。

 そして、今月のウラジオストクにて行った通算十四回目となる首脳会談では、二人で突っ込んだ議論を行い、交渉を具体的に進めていく道筋が見えてくるような手応えを強く感じました。

 経済分野では、先般の首脳会談においては、八項目の協力プランの具体化を含む日ロ協力の現状や今後の見通し等について意見交換を行ったところです。

 経済分野を含め、幅広い分野で日ロ関係を国益に資するような形で進めていく中で、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべく、引き続きロシア側との間で粘り強く交渉に取り組んでまいります。

 法の支配を重視する我が国として、力による一方的な現状変更の試みは認められず、この観点から、ウクライナや中国との関係を含め、ロシアの行動は常に注視しています。

 特に、ウクライナ情勢については、私からプーチン大統領に対して、全ての当事者がミンスク合意の履行に向けた努力を継続することの必要性を強調しつつ、ロシアが建設的な役割を果たすよう直接働きかけてきています。

 ウクライナのポロシェンコ大統領とは、四月の訪日の際に会談し、今月も国連総会の際に会談を行いました。ウクライナに対してG7と連携しつつ支援を行っていることは、ポロシェンコ大統領からもG7各国からも高く評価されています。

 我が国の対ロ措置については、今後の情勢を踏まえ、引き続きG7連携を重視しつつ、適切に対応していく考えです。

 対ロ政策をめぐっては、私自身、オバマ大統領や先般のバイデン副大統領との会談で意見交換をしてきており、引き続き米国とは緊密な意思疎通を行ってまいります。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 憲法改正は、最終的には国民投票によって国民が決めるものですが、まずは、国会の憲法審査会という静かな環境において各党が真剣に議論し、国民的な議論につなげていくことが必要と考えております。

 その際、大切なことは、各党がそれぞれの考え方を示すことであります。自民党は草案という形でこれをお示ししているところであり、それを撤回しなければ議論ができないという御主張は理解に苦しみます。

 特定の党の意見への批判を繰り返し、取り下げを求めるのではなく、みずからの考えをしっかりと提案した上で議論を闘わせることにより、初めて建設的な議論をするようなことが可能になるものと考えております。

 天皇陛下の御公務の負担軽減等に関する検討の進め方についてお尋ねがありました。

 今般設置した有識者会議は、公務の負担軽減等について、予断を持つことなく静かに議論を進めていただく場として開催するものです。さまざまな専門的知見を有する方々からヒアリングを行い、高い識見を有する方々に、幅広い意見を反映した提言を取りまとめていただくことを予定しております。

 議論を経て一定の方向性が示されれば、それを踏まえ、政府としてしっかり対応していく考えであり、政府が方向性を誘導するということはありません。

 また、この有識者会議では、今上陛下が八十二歳と御高齢であることも踏まえ、公務の負担軽減等に絞って議論していただくこととしております。

 まずは、有識者会議で静かに議論を進め、一定の段階で与野党も交えた議論を行うことも考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 配偶者控除の見直しを含みます所得税改革についてのお尋ねがあっております。

 配偶者控除につきましては、配偶者の就労を抑制する効果があるとの指摘があります一方、家族の助け合いや家庭における子育てに対する配偶者の貢献を積極的に評価すべきとの御指摘もあります。などなど、さまざまな立場から議論がなされておりますのは御存じのとおりであります。

 この課題は、家族のあり方や働き方に関する国民の価値観に深くかかわるということから、幅広く丁寧な国民的議論が必要であると考えております。したがって、現時点において、配偶者控除の廃止や夫婦控除の導入などの方針が決まっているものではありません。

 配偶者控除につきましては、御指摘の、働きたくても働けない配偶者を抱える世帯などの取り扱いや、夫婦控除を導入した場合、夫婦を選択しなければ適用されず、ライフスタイルに中立ではないのではないかとの御意見等々も含め、引き続き、政府税制調査会や与党での議論も踏まえつつ、丁寧に検討していきたいものだと考えております。

 なお、今回の見直しは、多様な働き方に中立的な仕組みの構築を目指しておりまして、税収中立の考え方を基本といたしております。したがいまして、増税が先行した議論との御指摘は当たりません。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 二階俊博君。

    〔二階俊博君登壇〕

二階俊博君 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、安倍内閣総理大臣の所信表明演説に対し質問をいたします。(拍手)

 冒頭、このたびの一連の台風被害に遭われ、不幸にもお亡くなりになられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに、北海道や岩手などで被害に遭われた人々に深くお見舞いを申し上げるものであります。

 総理は、早速十四日、北海道の被害現場を御視察いただきました。二日後の十六日に、閣議において激甚指定をお決めになりました。河川の氾濫、住宅や農地への浸水、道路の決壊、土砂災害などの状況は誰が見たって激甚なわけですから、初めから激甚だという判断で積極的にかかわっていかなければ、迅速な災害復旧というものは実現できません。

 内閣府防災がリーダーシップをとり、過去のあらゆるノウハウを駆使して特例を認めていく。農地、住宅地などのインフラ復旧には、査定前着工の活用や査定の簡素化、人手の確保など、スピードを上げなければなりません。

 特別交付税措置も十分な配慮が必要であります。熊本地震のときと同様、特別交付税の枠外に復興基金をつくることや、さまざまな中小企業補助金の優先的配分、観光支援のための交付金制度、風評被害の未然防止など、当然考えることが政治の責任であります。

 復旧復興に当たる総理の御決意を最初にお伺いしておきたいと存じます。

 私は、八月二十八日、急遽、北海道の深川市や美瑛町など三カ所に入り、現地の被害状況をつぶさに見てまいりました。一目見て激甚災害とわかるほどの状況であり、直ちに党本部に対策本部を設置して、副幹事長の皆さんを北海道と岩手県に派遣しました。

 以下、派遣団の報告に基づいてお尋ねをいたします。

 北海道の農業再生は日本全体の問題であります。表土の流出や土砂が堆積した農地の復旧を急がなければ、農作物の安定供給が危険にさらされます。既に都内のスーパーではタマネギやジャガイモなどの価格高騰も見られ、ことしの作付ができなければ、来年以降も価格の高騰は続く見込みであります。鉄道、道路網の寸断で、農作物の輸送コストアップが生じております。

 農作物の安定供給や輸送コスト高騰対策、営農支援策等について、農林水産大臣の御決意をお尋ねしておきたいと思います。

 足寄町特産の長芋やゴボウは共済の対象外であります。その他、一部のハウスやポテトチップ工場のジャガイモも適用外のものもあり、この未曽有の自然災害に共済はどう対応できるのか、農林大臣のお考えをお尋ねしておきたいと思います。

 来年の春には雪の流結倒壊も予想され、被害がさらに広がり、農地やインフラの原形復旧では来る災害に対処できないとの声があります。

 岩手県は、五年半前の東日本大震災からようやく復興し、安定軌道に乗るやさきの被害となりました。五年半もの間に二度の大きな災害を受けられた岩手県は、東日本大震災同様の手厚い財政支援が必要であります。

 岩泉町では、高齢者グループホームで、避難するいとまもなく九名ものとうとい人命が失われました。避難は早目にするにこしたことはありませんが、避難準備情報などの名称や意味が直観的にわかりにくく、緊急性を感じ取れなかったことが指摘されています。社会福祉施設の早期避難体制や避難情報の呼称について、早急に改善を図らなければなりません。

 サケ・マスのふ化施設もやられました。北海道では、流木被害で沖合の網も損壊し、四年後の再生産ができるかどうか、大変深刻な状況であります。

 こうした漁業の支援について、農林水産大臣及び農林水産省はどのような取り組みをお考えになっておるか、この方針を伺いたいと思います。

 東日本大震災から五年が経過し、復興は新たなステージに入りました。岩手、宮城など被災地においては、来春までに約九割の災害公営住宅、約七割の高台移転事業が完了し、平成三十年までには住まいに関する復興事業がおおむね完了する見込みであります。

 これからの五年間で必ず復興をなし遂げ、大災害の教訓を決して風化させることなく、新しい東北の展望を開く総仕上げに向けて、国が全力を挙げて取り組まなければなりません。

 一方、東京電力福島第一原子力発電所事故からの復興、原子力事故被災地域の再生については、来年三月までの避難指示解除に向けて道筋がついてきておりますが、廃炉問題などは中長期的な対応が必要であり、国が前面に立って福島の再生に取り組んでいくことが不可欠であります。

 東北の復興に対する総理の御決意を改めてお伺いしておきたいと思います。

 災害に待ったはありません。自然災害は忘れたころにやってくると言われてきましたが、今は、忘れないうちに次から次へとやってきます。従来では考えられないレベルの災害が、考えられもしない地域で起きています。将来の首都直下地震や南海トラフ等の地震の発生も懸念されております。

 こうした自然災害の変化に対し、私たち自民党は、強くしなやかな国づくりのために……(発言する者あり)黙って聞け。国土強靱化に取り組んでまいりました。

 コンクリートから人へという言葉がありましたが、今や、国民の生命を守るためには国土を強靱化しなければならないことは、日本全体の共通認識になっていると思います。

 三百年に一度の洪水のために……(発言する者あり)

議長(大島理森君) 御静粛に。

二階俊博君(続) スーパー堤防をつくるのかと非難された方が野党第一党の大幹部の中におられますが、今や、三百年に一度の洪水があす起きても不思議ではありません。

 総理の国土強靱化に対するお考え、国民的運動の取り組みについてのお考えをお尋ねしておきたいと思います。

 昨年十二月の国連総会において、実に百四十二カ国の共同提案国の賛同をいただき、世界津波の日の決議案が全会一致で採択されました。ことしは、世界津波の日の元年であります。国際社会が連帯して自然災害に対峙していくスタートの年としたいと考えております。

 この世界津波の日を記念する最大のイベントとして、ことしは、「世界津波の日 高校生サミットin黒潮」を高知県黒潮町で開催いたします。次世代を担う若者たちが、若き津波大使として、津波による被害や復旧復興の現実を正しく認識するとともに、世界に向けて何ができるのか、みずから考え議論し、心を通わせていく機会にしたいと考えております。

 四年後の東京五輪には、多くの選手や観客が我が国を訪れることになります。その開催中に万々が一にも首都直下地震が起こったとしても、誰もけがをさせることなく、一人の命も失わせないことが、開催国日本、東京の責任であり、国土強靱化の使命であると考えています。

 この際、防災先進国である日本から世界に向けて、総理の力強いメッセージを発すべきだと考えます。総理の御意見をお尋ねいたします。

 総理も力を入れておられるWAW!においても、防災における女性のリーダーシップ研修が期待されると聞いております。女性が輝く社会づくりは一億総活躍の根幹であります。国土強靱化の面でも、連携を深めることが重要であると考えます。

 また、現在、地方公共団体において地域強靱化計画の策定が進んでおりますが、この取り組みは、地域における安心、安全とコミュニティーの力を高めると同時に、新たな技術や産業の創出等を通じ、地域活性化にもつながってまいります。

 このように、国土強靱化は、一億総活躍、女性活躍、地方創生ともしっかり連携していかなければなりません。

 長年観光の仕事に携わってきた一員として、二〇二〇年に訪日外国人四千万人を目指すという目標は、大変高いハードルのようでありますが、これ以上チャレンジングな仕事はないと感じております。

 インバウンドは成長戦略の柱であり、地方創生の起爆剤であります。東京でオリンピック・パラリンピックを楽しんでから、地方の温泉に泊まり、おいしい日本食を味わっていただくということなど、観光客もふえてくると予想されております。

 地方創生の目玉の一つに、リニア中央新幹線の早期着工と整備新幹線の加速が掲げられております。大都市交通網の整備はもとより、基本計画路線も、地方創生に役立つ幹線鉄道ネットワークの構築を忘れてはなりません。

 地方創生回廊とはどういう考え方なのでしょうか。また、去る八月二日に自民党総務会で決定された、未来への投資を実現する経済対策案につきまして附帯決議事項がありますが、政府はきちんとこれを受けとめておるものと考えていますが、国土交通大臣、これら地方の切実な願いに、国土の均衡ある発展の観点からお答えを願いたいと思います。

 観光立国を進めるためには治安対策は欠かせません。海外の方々にも日本が世界で一番安全な国であると認識してもらえるように、治安関係機関の人的、物的基盤の拡充はさらに進める必要があります。

 私は、先日、沖縄を訪問し、クルーズ船の港などを見てまいりました。一遍に五千人ほどの外国人の観光客がクルーズでやってくる。これまでの観光の常識では到底考えられなかったことでありますが、これは、うれしい反面、入国審査の現場は悲鳴を上げているのが実態であります。入管、税関機構の向上のために、やるべき課題は山積しております。

 沖縄は、日本にとってはもとより、私たち自民党にとっても大変重要な位置づけであり、経済面、安全保障面など、話し合うべきテーマは山ほどあります。難しい問題もあります。柔軟に耳を傾けていく必要があるのであります。お互いの心を通わせながら始めていくためにも、今回、沖縄担当の、私たち自民党に副幹事長を任命し、今後、沖縄との間で定期的に意見交換を行っていく予定であります。

 総理、沖縄にかける総理の意気込みをお聞かせ願いたいと思います。

 TPP協定は、アジア太平洋地域の十二カ国、世界のGDPの約四割、人口八億人という巨大な一つの経済圏をつくり出していくものであります。企業や消費者がTPPのもたらす利益を一日も早く享受するためには、我が国が率先して協定を承認し、早期発効に向けた機運を高めていくことが重要であります。

 TPPの発効には米国の承認が不可欠でありますが、現職のオバマ大統領は任期中に承認するとの明確な意思を示される一方、民主、共和の両大統領候補は、いずれも否定的な姿勢を示しています。仮に米国から再交渉を求められても、応じるべきではありません。

 我が国は、農林水産品の関税撤廃の例外について、十一カ国平均が一・五%にとどまる中、二割近くを獲得し、最善の成果を得ましたが、いまだ不安を感じる方々もおる。昨年十一月に取りまとめたTPP関連政策大綱の中で、改めて、農林水産業の転換や、重要五品目を中心とした経営安定のためのセーフティーネット構築に万全を期することとしています。

 TPPがあるかなしかにかかわらず、夢と希望の持てる農政新時代を実現していかなくてはなりません。資材価格の引き下げ、流通、加工の構造改善は不可欠であり、党内では、この秋には成案を得るべく、連日熱心な議論を重ねています。農業団体の皆さんも自発的に努力を行っていただいております。

 このような不安や課題にどのように取り組むのか、総理のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

 総理の外交は目をみはるものがあります。世界の中心で輝く日本をつくる。それを体現したのが伊勢志摩サミットでありました。主要国首脳が神宮の凜とした空気に触れる。これ以上ない舞台で大成功をおさめられました。まず、サミットの成果について総理にお尋ねをいたします。

 オバマ大統領の広島訪問は歴史的であり、永遠に語り継がれる外交成果であると考えます。

 日米は、苦しい時代もありました、戦火を交えた時代もありました。そうした先人のつらい経験のもと、今日の日本の繁栄があることを考えるとき、この十一月に大統領選挙を控えるアメリカは変革の年でありますが、総理は今後日米関係をどのように強化していこうとされておるのか、その意気込みと、そして方針についてお尋ねをしておきたいと思います。

 私たちは、唯一の被爆国として、過去を語り継ぎ、世界平和に一層貢献していかなければなりません。オバマ大統領の広島訪問に果たされた総理の主導的役割は、言葉に尽くせないぐらい重要なことでありました。今後、核兵器のない世界の実現に向け、総理は各国にどのように働きかけをしていくのか、総理のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

 総理のパワフルな外交はまだまだ続いています。八月下旬のTICAD、九月に入ってから、日ロ首脳会談、G20、ASEAN関連首脳会議、国連総会、そして歴史的なキューバへの訪問。これまで延べ百を超える国・地域を訪れ、国会が始まる直前まで大変な活躍ぶりでありました。

 一連の会議を通じ、特に日中、日韓関係の改善に対しての手応え、また、世界経済の行方、キューバへの経済支援等について、総理のお考えを披瀝していただきたいと思います。

 私は、先般ベトナムとインドネシアを訪問し、各国首脳と会談してまいりました。

 中でもインドネシアでは、日本が中心となり提唱した東アジア・ASEAN経済研究センター、ERIAにおいて各国のASEAN大使と意見交換をし、日本の指導的役割に対して感謝と同時に、今後も地域の発展格差の縮小と持続的な成長に日本が寄与してもらいたいという強い要望が寄せられました。

 私からは、日本とASEANの連携のために、日本に各国大使を御招待したいと申し出ましたところ、積極的なお返事をいただきました。

 総理は、ERIAを通じたASEANとの連携や、今後ERIAをどのように活用するお考えであるのか、その御方針を伺っておきたいと思います。

 十一月にはペルーでAPEC首脳会議、十二月には、東京で日中韓サミット、プーチン大統領が総理のお地元山口を御訪問されるとのことであります。

 これら会議を前に、特に、暴挙を繰り返す北朝鮮に日中韓でどう連携強化をしていくのか、また、北方領土返還の道筋や日ロ平和条約の締結についての総理の意気込みを改めてお伺いしておきたいと存じます。

 北朝鮮は、今月、五回目の核実験を強行しました。本年二十一発目の弾道ミサイルを我が国の排他的経済水域に落下させる暴挙を行っております。言語道断であり、断じてこれを容認することはできません。

 昨日、衆参両院本会議において、五度目の核実験に対する抗議決議を全会一致で採択したところでありますが、この際、ミサイルの残骸を海から引き揚げてくる、調査研究等も積極的に考えるべきであります。

 拉致問題も、一昨年に、拉致被害者を初め全ての日本人の調査を我が国に約束し、特別調査委員会を設置したものの、一度も調査結果報告を行うことなく、本年、委員会の解体を一方的に宣言したことは、極めて遺憾であります。核、ミサイル、拉致問題の一刻も早い包括的な解決に向けた総理の御所見をお伺いします。

 日本と世界の平和と安定を守るために、昨年取り組んだ平和安全法制の成立から一年がたちました。駆けつけ警護や宿営地の共同防衛などの新任務は、現地情勢や部隊の訓練などをよく見きわめて行うものと考えますが、総理に改めてこれらの点についての御見解をお伺いしたいと思います。

 私たち国民は、先月の天皇陛下のお言葉を真摯に重く受けとめなければならないと存じます。政府におかれては、有識者会議で議論を深め、陛下のお気持ちに沿うような結論を出していただきたいと思います。

 さて、政権発足から三年九カ月。政権交代前の薄暗い時代は過去のものとなりました。アベノミクス、地方創生、一億総活躍、数々の政策を果断に実行し、実績を上げてまいりました。

 今国会では、既に未来へのチャレンジが始まります。今や、地方の党員の皆さんを初め各級議員も一致団結して、私たち自民党はまさにやる気に満ちておるのであります。

 我が党は、衆参四百十五人の議員を擁する大政党となりました。おかげさまであります。おかげさまで、国民の皆様からの期待を一身に頂戴している状況であり、自民党は、国民政党として常に目線を低くして、国民の皆さんからの期待に応え続けなければなりません。

 さきの参議院選挙で頂戴した期待を裏切ることのないよう、党員一人一人が気を引き締めて戦わなければなりません。党運営においては、スピード感を持って当たりたいと考えております。

 新体制になって初めての国会であります。みんなで力を合わせて頑張ってまいることを国民の皆様にお誓いを申し上げる、これが大事なんです。

 私の質問を以上をもって終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 二階俊博議員にお答えいたします。

 一連の台風被害からの復旧復興に当たっての決意についてのお尋ねがありました。

 私自身、九月十四日に被災地を視察し、甚大な被害を目の当たりにするとともに、被災地の皆様の大変な御苦労を直接伺い、復旧復興に向けた決意を新たにいたしました。

 北海道や岩手県を初めとする東北地方を襲った一連の災害を激甚災害に指定し、広範な分野で財政支援等の特例措置を講じたところですが、今後も、被災者の皆さんがもとの日常を取り戻せる日まで、道路、河川などのインフラ復旧、被災者の住宅再建、農林水産業、観光産業などの復旧について、地元自治体と緊密に連携しつつ、被災地の方々の気持ちに寄り添い、できることは全て行うとの方針で、スピード感を持って全力で取り組んでまいります。

 台風被害を受けた岩手県への財政支援についてお尋ねがありました。

 今般の豪雨、台風は、東日本大震災からの復旧復興に懸命に取り組んでいる岩手県に大きな被害をもたらしました。政府としては、できることは全て行うという方針のもと、この復旧復興に万全を期してまいります。

 今回の補正予算において追加した災害復旧等事業費等により、また、災害復旧等事業費等での対応が困難な場合には予備費等も活用して、しっかりと対応してまいります。

 社会福祉施設における避難についてお尋ねがありました。

 多数の方が亡くなられた今回の痛ましい事態を踏まえ、都道府県等と連携し、社会福祉施設の早期避難体制の整備について、各施設の避難計画等を再点検し、改善すべき点は可及的速やかに改善してまいります。

 避難準備情報については、配慮を要する方々が避難行動を開始すべき段階であるという趣旨を改めて周知徹底したところですが、情報を受け取った方が的確な避難行動をとれるよう、名称変更も含め、避難情報提供の改善方策について年内をめどに検討してまいります。

 政府としては、今後とも、政府一丸となって自然災害からの避難に万全を期してまいります。

 東北の復興についてお尋ねがありました。

 四月から復興・創生期間に入り、地震、津波被災地域の復興の総仕上げ、福島の本格的な復興に向けた新たなステージを迎えています。

 必要なことは全てやり遂げるという強い決意のもと、切れ目のない被災者支援や住まいと町の復興、なりわいの再生を進めてまいります。

 福島では、東京電力福島第一原子力発電所の長期にわたる廃炉作業を安全かつ着実に進めるため、国が前面に立って取り組んでまいります。

 帰還困難区域以外の区域については、来年三月までに避難指示を解除できるよう、環境整備を加速させてまいります。

 帰還困難区域についても、八月末に決定した考え方をもとに、復興に一日も早く着手するため、年末を目途に具体策を検討し、関係法案の次期通常国会への提出や、来年度からの必要な予算等の措置に向けて作業を進めてまいります。

 また、外国人宿泊者数を二〇二〇年に今の三倍にするという目標の達成に向け、東北の観光復興を加速してまいります。観光先進地東北を目指し、新たなチャレンジを支援してまいります。

 東北の復興なくして日本の再生なし。あの大震災、困難の日々を胸に刻みながら、被災地の皆さんと力を合わせ、新しい東北の未来を切り開いてまいります。

 国土強靱化の推進についてお尋ねがありました。

 熊本地震や台風被害など、ことしも多数の災害が発生し、首都直下地震や南海トラフ地震の発生が懸念される中、国土強靱化は我が国にとって焦眉の急であります。

 施設の耐震化や老朽化対策など、国民の命と暮らしを守るための防災・減災対策を重点的に進めてまいります。

 また、国土強靱化は、持続的な経済成長のほか、地方創生や誰もが活躍できる一億総活躍社会、女性が輝く社会の実現に寄与するものであり、国、地方、民間が一体となって、国民運動として進めてまいります。

 ことしは世界津波の日元年です。高校生サミットin黒潮や津波防災に関するシンポジウムの開催を通じて、防災教育や防災を通じた若者交流を進めていきます。

 さらに、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、国土強靱化への取り組み、安全、安心な国日本を世界に向けて発信してまいります。

 沖縄にかける意気込みについてお尋ねがありました。

 沖縄は、成長するアジアの玄関口に位置する地理的特性や日本一高い出生率といった優位性、潜在力を有しており、日本のフロントランナーとして経済再生の牽引役となる可能性を秘めています。

 政府としては、これまで公共事業や特区による支援などさまざまな施策により沖縄の振興に取り組んできたところであり、引き続き、重要な国家戦略として、沖縄振興策を総合的、積極的に推進してまいります。

 一方、戦後七十一年を経てなお、沖縄には大きな基地負担を背負っていただいており、このような現状は是認できるものではありません。沖縄の負担軽減を図ることは政府の大きな責任であり、できることは全て行うとの方針のもと、抑止力を維持しながら、負担軽減に全力を尽くします。一つ一つ、確実に結果を出すことによって、沖縄の未来を切り開いてまいります。

 農業者の不安の払拭と農政新時代についてお尋ねがありました。

 農は国の基であり、美しい田園風景を守ることは政治の責任であります。

 関税撤廃が原則というTPP交渉の中で、特に農業分野については、重要五品目を中心に、関税撤廃の例外をしっかり確保し、関税割り当てやセーフガード等の措置を獲得しました。

 それでもなお残る農業者の方々の不安を受けとめ、安心して再生産に取り組めるよう、総合的なTPP関連政策大綱に基づく対策を実施しております。

 さきの通常国会においては、平成二十七年度補正予算に、攻めの農政への転換に向けて緊急に実施していく必要がある体質強化対策を盛り込むとともに、肉用牛や肉豚、砂糖に関する経営安定化対策の充実を図るため、TPP整備法案を提出しました。

 また、今回の補正予算において、産地の国際競争力の強化や農林水産物の輸出の拡大など、さらなる体質強化対策を盛り込んでおります。

 さらに、農家の所得をふやす観点から、生産資材及び農産物の流通、加工構造の改革の具体策について、与党とも緊密に連携しつつ、年内を目途に改革プログラムを取りまとめます。

 農業者の皆さんの不安を払拭できるよう、引き続き万全の対策を講じてまいります。農政新時代を実現し、夢や情熱を持って農業の未来に挑戦する方々を全力で応援してまいります。

 G7伊勢志摩サミットの成果についてお尋ねがありました。

 伊勢志摩サミットの最重要テーマである世界経済については、原油価格の低迷、新興国経済の減速、英国のEU離脱等のリスクがある中、新たな危機に陥ることを回避するため、G7が金融財政政策と構造改革という全ての政策対応を行うことで合意することができました。

 さらに、日本がリードしてきた質の高いインフラ、保健、女性が輝く社会、テロや難民、気候変動や持続可能な開発など世界が直面するさまざまな課題、八年ぶりにアジアで開催されるサミットとして、北朝鮮、東シナ海や南シナ海の海洋安全保障などアジア太平洋の情勢等について、G7首脳と率直に議論し、大きな成果を上げることができました。

 伊勢志摩の凜とした雰囲気の中で、各国首脳を出迎え、我が国の悠久の歴史と文化、伝統に触れていただき、日本ならではの魅力を存分に世界に向けて発信することができました。

 今後の日米関係の強化についてお尋ねがありました。

 日米両国は、戦後、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値のきずなでかたく結ばれた揺るぎない同盟国となりました。日米同盟は、二十一世紀においては、希望の同盟として、国際社会が直面する課題に互いに協力して貢献してまいります。

 オバマ大統領の広島訪問は、日米が希望の同盟として国際社会の課題に貢献していくことを示す一つの象徴となったと考えます。

 次の米国大統領が誰になるにせよ、日米同盟のきずなを一層強化し、アジア太平洋地域の平和と繁栄を確保するために、今後とも主導的役割を果たしていくとともに、世界の諸課題にともに手を携えて対処してまいります。

 核兵器のない世界の実現に向けた働きかけについてお尋ねがありました。

 我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向け、国際社会の取り組みをリードしていく使命を有しています。

 五月には、オバマ大統領の広島への歴史的訪問が実現しました。世界で唯一の原子爆弾を使用した国の大統領が、被爆の実相に触れ、被爆地から核兵器のない世界に向けて発信したことは、その実現に向けて大きな力になったと思います。

 今後も、世界の指導者や若者に被爆の悲惨な実相に触れてもらうこと、核兵器国と非核兵器国の双方に協力を求めることなどを通じ、核兵器のない世界の実現に向けた取り組みをさらに進めてまいります。

 日中、日韓関係、世界経済、キューバ支援についてのお尋ねがありました。

 G20サミットの際に、習近平主席と三回目の首脳会談を行い、戦略的互恵関係の考え方のもと、日中関係をさらに安定的に発展させていくことで合意しました。

 東アジア・サミットの際には、朴槿恵大統領と首脳会談を行い、未来志向の協力を進め、日韓新時代を築いていくことで一致いたしました。

 年内に我が国で開催する予定の日中韓サミットを弾みとして、中国、韓国との関係をさらに発展させていきたいと考えています。

 世界経済は、G20サミットの最大のテーマでありました。私から、伊勢志摩サミットにおける議論をベースに、世界経済が大きなリスクに直面している今、国際協調を強化していく重要性を強調し、新興国とも世界経済への危機感を共有し、金融財政政策及び構造改革の全ての政策対応を行っていく必要性について一致することができました。中国などの新興国が過剰設備などの構造的な問題にもしっかりと取り組んでいくことで合意できたことも大きな成果でありました。

 キューバには、日本の総理大臣として初めての訪問となりました。非同盟諸国の中で影響力を有するキューバに対し、経済協力を本格化させ、キューバの旺盛な成長需要に対し、官民一体となって応えてまいります。

 ERIAを通じたASEANとの連携についてお尋ねがありました。

 ERIAは、これまで、経済統合の深化、発展格差の縮小、持続可能な経済成長といった分野で有意義な研究や提言を行ってきており、こうしたERIAの活動を支援してこられました二階議員に改めて敬意を表します。

 現在、ERIAは、ERIA二・〇プログラムのもとで、東アジアの統合に貢献する政策提言を積極的に行うとともに、各国政府との対話を強化しています。

 我が国は、このようなERIAの政策提言力を活用し、ASEANの統合深化、格差是正、ASEAN全体での課題解決といった分野でASEANとの連携強化に取り組んでまいります。

 北朝鮮の核、ミサイル、拉致問題及び日ロ平和条約締結に関するお尋ねがありました。

 北朝鮮がまたも核実験を強行したことは断じて容認できません。相次ぐ弾道ミサイルの発射と相まって、新たな段階の脅威です。これに対する対応も、全く異なるものでなければなりません。

 北朝鮮への人、物資、資金の流れを厳しく規制する安保理決議、そして我が国独自の措置により、確固たる対応をとっていく決意です。

 我が国は、非常任理事国として、新たな安保理決議の採択に向けた取り組みを主導してまいります。引き続き、中国、韓国を含む関係国と緊密に連携し、北朝鮮に対し安保理決議等の遵守を強く求めます。また、年内に開催予定の日中韓サミットも念頭に、対北朝鮮政策に係る日中韓協力を推し進めていきたいと考えています。

 加えて、北朝鮮情勢について、弾道ミサイルの開発状況も含め、引き続き、情報収集、分析を徹底してまいります。

 拉致問題は安倍政権の最重要課題です。一日も早い全ての拉致被害者の帰国に向け、北朝鮮が真剣に対話に応じるよう、厳しい圧力をかけながら、対話と圧力、行動対行動の原則のもと、ストックホルム合意に基づき全力を尽くしてまいります。

 今月、プーチン大統領と十四回目となる会談を行いました。日ロ平和条約締結問題に関し、突っ込んだ議論を行い、新しいアプローチに基づく交渉を具体的に進めていく道筋が見えてくるような手応えを強く感じました。

 戦後七十年以上を経てもなお平和条約が締結されていない異常な状態を打開するため、首脳同士の信頼関係のもとに解決策を見出していく必要があります。四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべく、十二月に予定する山口県での日ロ首脳会談では、静かな雰囲気の中で率直に議論し、交渉を前進させていく考えであります。

 平和安全法制についてのお尋ねがありました。

 我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、平和安全法制の成立により、日米の信頼関係は大きく向上し、日米同盟関係は一層強固なものとなりました。

 また、世界各国から強い支持と高い評価が寄せられています。これは、この法制が、戦争を抑止し、世界の平和と安全に貢献する法律であることの何よりのあかしです。

 駆けつけ警護や宿営地の共同防護など新たな任務については、現在、自衛隊において所要の訓練を行っているところです。

 南スーダンPKOに派遣する部隊にいかなる任務を付与するかについては、現地の情勢や訓練の進捗状況等を慎重に見きわめながら、総合的に検討してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣山本有二君登壇〕

国務大臣(山本有二君) 二階議員よりいただきました御質問にお答えいたします。

 農作物の安定供給や輸送についてお尋ねがありました。

 北海道は我が国最大の農業地帯であり、食料の安定供給の観点から、一日も早く、被災地域の農産物を生産、輸送できる体制を再生する必要があります。特に、厳しい冬を迎える前に、可能な限り被災農地の復旧を図ることは、大変重要な課題であります。

 このため、政府としては、早期復旧が可能な農地について、災害査定の前に応急工事の着手が可能となる査定前着工制度の活用を進める取り組みを行っております。

 引き続き、安倍総理の、できることは全てやるとの考えのもとに、被災地域の農産物の円滑な生産、出荷に必要な対策を順次実施し、被災地域の農産物の供給力の再生を図ってまいります。

 今般の台風災害に対しまして共済はどう対応できるかのお尋ねがありました。

 今般の一連の台風災害では幅広い品目が被害を受けていますが、バレイショ、てん菜、タマネギ等の農業共済対象品目については、農業共済団体等に対し、迅速かつ的確な損害評価、共済金の早期支払いを指導したところでございます。

 一方、長芋、ゴボウ等の農業共済対象外の品目につきましても、ことしの作の減収が見込まれる中、種子の購入等に要する経費の助成など、次期作に向けた営農継続の円滑化を図るための対策を検討しているところでございます。

 また、農業用ハウスの再建、修繕につきましては、経営体育成支援事業による支援を検討しております。

 さらに、ポテトチップス工場内で被害を受けたバレイショの扱いにつきましては、契約取引を行っている関係者間の対応を注視しているところでございます。

 今般の未曽有の台風災害に際し、被災された農業者の皆さんが今後の営農意欲を失うことのないよう、復旧復興に向け万全の対応をとってまいります。

 次に、漁業支援についてのお尋ねがありました。

 今般の台風により、岩手県のサケのふ化放流施設に甚大な被害が発生し、また、北海道と岩手県の定置網に流木被害が発生するなど、今期の稚魚の放流と、四年後の親サケの回帰や漁獲に深刻な懸念が生じております。

 このため、農林水産省としては、災害復旧事業の査定前着工等による、ふ化放流施設の早期復旧への支援を迅速に行っております。また、関係省庁の連携による流木の回収、処理や、被災を免れたふ化放流施設における稚魚の生産拡大への支援を実施してまいります。さらに、被害を受けた漁業者に対しては、無利子融資や漁業共済の早期支払い等を行っております。

 このような総合的な支援に全力で取り組み、岩手県と北海道の漁業の一日も早い復旧復興を実現してまいります。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣石井啓一君登壇〕

国務大臣(石井啓一君) 地方創生回廊の考え方についてお尋ねがございました。

 国土交通省といたしましては、新幹線等の幹線鉄道ネットワークや高速道路網、国内航空ネットワークなどの高速交通網を活用し、三大都市圏を初めとする大都市圏と地方、また地方と地方とを結ぶ人の流れを拡大、創出することによって、各地域を活性化し、地方創生につなげていくものと考えております。

 また、幹線鉄道ネットワークについてのお尋ねがございました。

 幹線鉄道ネットワークにつきましては、地方創生に重要な役割を果たすものと認識をしております。

 このため、国土交通省といたしましては、新幹線につきまして、既着工三区間を着実に整備することに加え、未着工区間である北陸新幹線敦賀―大阪間のルートを決定し、財源の確保を行うことで整備計画路線の確実な整備にめどを立てること、また、リニア中央新幹線について、現下の低金利状況を生かし、財政投融資の手法を活用することにより、大阪までの全線開業を最大八年間前倒しすることに取り組んでまいります。

 そのような中、御指摘の八月の二日に自由民主党から提示をされました、未来への投資を実現する経済対策案等に関する附帯要望事項におきまして、基本計画路線も含め、地方創生に役立つ幹線鉄道ネットワークの構築に向けて取り組むべきであるとされているものと承知をしております。

 国土交通省におきましては、こういった状況や御指摘の国土の均衡ある発展の観点も踏まえながら、平成二十九年度概算要求におきまして、今後、基本計画路線を含む幹線鉄道ネットワーク等のあり方の検討に必要となる、我が国の交通ネットワークの現状や効率的な整備手法等のさまざまな課題について調査する経費を要求しているところでありまして、この調査にしっかりと取り組んでまいりたいと存じます。

 以上でございます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 大串博志君。

    〔大串博志君登壇〕

大串博志君 民進党の大串博志です。

 私は、民進党・無所属クラブを代表し、安倍総理の所信表明演説について質問をさせていただきますので、総理、喉の調子が本調子ではいらっしゃらないようでありますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)

 まず、熊本地震により大きな被害を受け復興途上の被災地の皆様、東日本大震災被災地の皆様を初め、今般の台風等による大雨によって被害を受けた多くの被災地の皆様に改めましてお見舞いを申し上げ、民進党として、一日も早い復旧復興に向け、全力で取り組んでまいります。

 第三次安倍内閣の第二次改造内閣が、参議院選挙後の八月三日に発足しました。しかし、この改造は一体何のためのものなのか、意図不明です。

 安倍総理は、政治家は信なくば立たずとよくおっしゃいます。しかし、過去三十年間、政治と金の問題で辞任した十八人の閣僚のうち八人が安倍内閣の閣僚です。任命責任は極めて重大であります。

 そして今回も、新閣僚の不祥事がここ二カ月の間にさまざま出てきています。

 山本幸三地方創生担当大臣は、自身が代表取締役社長を務める会社に資金提供をした人物への強制調査に対し、衆議院予算第一分科会で、インサイダー事件の調査をする証券取引等監視委員会に対して、調査に圧力をかけているともとれる発言をした口きき疑惑が明らかになりました。

 稲田防衛大臣は、政治資金管理団体ともみ組ですか、政治資金管理団体としてはユニークな名称だなと思いましたが、この領収書の中に、金額、宛名、年月日が同じ筆跡の領収書が何と五百二十万円分も存在し、それはともみ組の収支報告書の担当者が記入したものだったと報道されています。

 鶴保沖縄北方担当大臣は、高速道路で何と四十キロメートルもオーバーしてスピード違反で書類送検され、しかも、これを一つの経験として前向きに捉えるなどととんでもない発言をしました。四十キロメートルオーバーであれば前科となるスピード違反ですが、遵法精神も反省の色も全くありません。

 加えて、鶴保大臣は、九月十六日の記者会見で、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設計画をめぐり政府と沖縄県が争っている違法確認訴訟について、注文はたった一つ、早く片づけてほしいということに尽きると、沖縄の皆様の感情を逆なでするような発言をしました。普天間移設問題に対する政府の強硬姿勢を見るにつけ、対話を尽くすのではなく、力ずくで問題を解決しようとする政府の本音が明らかとなりました。

 務台内閣府政務官兼復興政務官は、九月一日に岩手県岩泉町の被災現場で、政府の職員におんぶされながら水の流れを渡るという信じられない行動をとりました。これは、役人におんぶにだっこの安倍政権そのものの姿を見事に体現したものであります。まさに、衆参両院で多数を占め、何をやっても居座っていればそのうち世間も忘れるだろうという態度がありありとうかがえます。権力者としての謙虚な姿勢は全く見られません。

 安倍総理は、ここで指摘した大臣、政務官が、本当に大臣、政務官としての資質があると考えますか。また、総理の任命責任についてどのように考えますか。御答弁を願います。

 安倍政権が誕生して既に三年九カ月が経過しました。安倍総理は、雇用がふえ、給料が上がったなどと誇らしげに語っています。しかし、国民にその実感はありません。

 アベノミクスの失敗から国民の目をそらすため、スローガンもころころと変わりました。地方創生、一億総活躍、未来への投資など新たなスローガンが次々と生まれ、首相官邸の会議が乱立しました。ところが、例えば女性活躍社会というスローガンもありましたが、輝く女性応援会議は平成二十六年三月二十八日に一度開かれただけで、真剣に取り組む姿勢が全く見られません。

 結局、アベノミクスは、金融緩和の当初、日銀の国債大量購入開始から円安になって、輸出関連企業の株価が上昇したことによる恩恵が多少あったというだけの話でした。

 安倍政権の政策は、つまるところ、円安に誘導し、公共事業を行えば景気はよくなるという、かつての成長期の日本であれば通用した古いタイプの政策を言葉だけかえて復活しているだけにすぎません。

 先進国経済として成熟期を迎えた今の日本社会においては、人口減少、高齢化の時代にふさわしい政策に大胆に転換すべきであると提案したいと思います。

 すなわち、人への投資を通じて、子育て、教育、雇用、老後などの将来不安を取り除き、人生の全てのライフステージを安心して過ごせる生活支援を行うこと、安心することで消費が喚起され、実需が生まれ、経済成長が実現できる安心の好循環社会を速やかにつくり上げることが、現代に求められる成長戦略であります。

 ところが、安倍政権は、国民の不安を大きくする政策ばかりを実行し、景気の歯車を逆回転させています。

 以下、具体的に指摘し、質問します。

 総理の所信表明では、消費税一〇%への引き上げを三十カ月延期した上で、アベノミクスの果実も生かし、優先順位をつけながら、社会保障を充実するとしています。

 本来、消費税一〇%への引き上げがなされた場合には、低年金者への最大月五千円の上乗せ、年金受給資格期間の二十五年から十年間への短縮、介護保険料軽減の完全実施、子ども・子育て予算の積み増しの措置を講ずるはずでありました。しかし、現状では、消費税という具体的な財源を失った上、アベノミクスの果実という余りにも不安定なもので社会保障を充実すると言われても、国民の不安は大きくなるばかりです。

 安倍総理、本来行われるはずだった社会保障の充実四項目について、どのような順番でいつから実施するつもりなのか、明確にお答えください。加えて、アベノミクスの果実なるものが、まさか安定財源などとは言わないでしょうね。この点についても答弁願います。

 安倍政権は、要支援高齢者に対する訪問介護、通所介護サービスを市町村に移管する要支援切りに続いて、要介護一、二に対する生活援助サービスや福祉用具貸与等についても給付の見直し等を行うことを検討していると聞いています。まさに社会保障の充実に逆行する愚策と言わざるを得ません。

 総理は介護離職ゼロを目指すと言いながら、私たちが提案した介護職員給与引き上げ法案を通常国会で否決したのみならず、このような介護離職をむしろふやす方向の政策を推進しようとしています。このような検討は速やかに再考すべきであると考えますが、いかがでしょうか。安倍総理の見解を伺います。

 現在、子供の相対的貧困率は上昇を続け、先進国で最悪レベルになっているにもかかわらず、安倍政権は人への投資を怠り続けています。昨日の所信表明演説に関しては、子供の貧困に言及すらありませんでした。

 一人親家庭等の半数は、貧困に苦しんでいます。加えて、ことしの通常国会で政府が提出して成立した児童扶養手当法の改正は、甚だ不十分な内容であって、子供の貧困を解消できるものにはなっていません。

 民進党など野党五党が提出した議員立法では、支給対象期間を二十歳未満まで延長、多子加算を全て一万円とする、家計の安定のため支払い回数を毎月支払いとすることとしました。ところが、政府・与党は、これらの民進党などの野党の具体的かつ建設的な提案をかたくなに拒み、否決しました。

 成立した政府案の附帯決議には、児童扶養手当の支給額について引き続き検討すること、地方公共団体の負担等を調査し、支給回数について検討することが盛り込まれました。これについては、八月三十日にようやく関係省庁連絡会議が一度開かれただけで、二回目以降の開催予定も決まっておらず、真剣に検討しているとはとても言えません。総理、支給回数と支給額について、いつまでに結論を出すのかについて明確にお答えください。

 雇用の面の不安は深刻です。

 安倍総理は、働き方改革実現推進室の開所式で、かつての猛烈社員、そういう考え方自体が否定される、そういう日本にしていきたいと述べられておられます。その考え方に私たちも大賛成です。しかし、安倍総理は、その言葉とは裏腹に、過重な長時間労働を促進する残業代ゼロ法案で、より多くの猛烈社員をつくろうとしているのではないですか。言行不一致も甚だしい。本当に猛烈社員をなくしたいのであれば、残業代ゼロ法案は撤回し、見直すべきです。御答弁願います。

 一方、ニッポン一億総活躍プランでは、長時間労働の是正のための時間外労働規制のあり方について再検討する方針を示すにとどめています。しかも、二〇一八年度までかけて検討するというだけで、労働基準法の改正まで踏み込むのか、肝心なことも明らかにせず、本気度が全く見えません。

 時間外労働規制に本気で取り組み、猛烈社員のない社会をつくるというのであれば、既に民進党など野党四党が提出した、労働時間の上限規制が盛り込まれている長時間労働規制法案に速やかに賛同して成立させればよいではありませんか。もはや悠長に検討している余裕はありません。総理の見解を伺います。

 安倍総理は所信表明演説で、非正規という言葉を、皆さん、この国から一掃しようではありませんかと述べています。これについても、私たちも賛成です。しかし、安倍政権下で非正規労働者は実際には大幅に増加しており、単に非正規という言葉を違う言葉に置きかえてお茶を濁そうとしているとしか思えません。不本意で非正規雇用で働いている人などを本気でなくそうというのであれば、まずは、安倍政権が行った、生涯派遣で低賃金の派遣社員をふやす労働者派遣法の改悪を今すぐ見直すべきです。直ちに見直すつもりがあるのか、総理の答弁を求めます。

 民進党の提案を受けて、政府もようやく同一労働同一賃金を進めようとしているかに見えます。しかし、そもそも、これまで私たちが同一価値労働同一賃金の法制化を提案してきたにもかかわらず、調査研究するとの一言で逃げ続けてきた安倍政権が本当に実効性のある制度をつくることができるのか、根本的な疑問があります。

 加えて、ニッポン一億総活躍プランによれば、同一労働同一賃金に関する法案の提出は二〇一八年度になる見込みです。法案がすぐに成立したとしても、各企業で非正規雇用の賃金や福利厚生を見直す準備期間が必要です。仮に実効性のある法改正が行われ、非正規雇用の処遇改善が図られるとしても、遠い未来の話です。非正規雇用で働きながら子供を育てるシングルマザー、結婚したくても経済的な理由で結婚できない非正規雇用で働く若者に、何年も待つ余裕はありません。非正規で働く方々の処遇がいつになったら改善されるのか、総理の明快な答弁をお願いします。

 正規雇用と非正規雇用の待遇格差を是正するために、正規雇用の待遇を下げて非正規雇用の待遇に合わせたのでは、元も子もありません。安倍総理は、世界で一番企業が活躍しやすい国を目指すと言っています。ですから、正規雇用の待遇を下げて待遇格差を是正する結果となることが危惧されます。そうではなく、非正規の待遇を改善し、正規並みにすることで非正規という言葉をなくし、同一労働同一賃金を実現すると明言してください。総理の明快な答弁を求めます。

 国民が不安に思っているのは、社会保障や子ども・子育て、雇用問題だけではありません。地方は、人口減少や高齢化、アベノミクスによる中央と地方の格差拡大に直面し、深刻に疲弊しています。

 その中で、TPPは、国会決議に反した内容で合意した結果、地方をより不安にさせています。TPPは、産業や国民生活への広い影響が予想され、多くの国民から不安や疑念が表明されています。ところが、政府は、丁寧な説明を行わず、日付と表題以外は全て黒塗りの交渉経緯メモを示し、四年間は交渉経緯を明かせないと説明しています。

 TPPは我が国にどのような利益があるのか全く不明なままで、明らかなのは、衆参の農林水産委員会が重要五品目を守るべしとした国会決議がないがしろにされ、全品目で譲歩を重ねたことと、政府・与党が農家の声を真摯に受けとめていないということだけです。よって、民進党は今回のTPP合意に反対の立場を明確にしています。

 ところが、TPPをアベノミクスの柱の一つと位置づける安倍政権は承認に前のめりで、安倍政権は全力でこの臨時国会で承認を得ると発言しています。

 大統領選中の米国で、民主、共和両党の候補がTPPに否定的で、オバマ大統領の残任期中の議会承認に黄色信号がともっています。そのために、日本が率先して発効への機運を高めるということをもくろんでいるのでしょう。しかし、大統領候補がTPP締結に否定的なのは、その内容に満足していないからです。すなわち、日本からさらなる譲歩を引き出さなければならないと考えているのです。

 相手がさらに譲歩を求めて交渉しようと言っているときに、こちら側からここまでのみますよと先んじて言って手のうちをさらすような極めて下手な交渉戦術をとるとしたら、全く愚かなことです。したがって、TPP協定と関連法案の審議を行い、承認、成立を目指すことは、大統領選後に米国の方針が明らかになる前には行うべきではないと考えますが、総理の答弁を求めます。

 加えて、外国産米の売買同時入札、SBSの不透明な取引が横行していた問題で、農林水産省が取引業者間で支払われる調整金の存在を把握したとされる二〇一四年十月に、担当者がSBSでの輸入価格を高値に偽装する手法を詳細に記した資料を入手していたにもかかわらず、放置していたと報道されています。

 一方で、農水省はその後も、TPP交渉に反発する農家らに、SBS米と国産米の価格に大差はないと説明を続けてきました。輸入価格の偽装のみならず、国民への説明の偽装ではないですか。

 この件に関して、農水省は、十月上旬をめどに、輸入業者、買い受け業者に対する聞き取り調査の結果を公表すると言っています。しかし、単なる聞き取り調査では全く不十分です。

 TPP合意では、新たに最大七・八万トンのSBS米が米豪から入ってくることとなっております。本件に係る結果は、TPPの影響試算の根本を揺るがします。また、今回の補正予算案にはTPP対策も含まれています。この予算の土台も崩れます。

 したがって、本件に関しては、聞き取り調査とは別に、より客観的な調査結果が出て、その調査結果を厳密に検証し、農水省が説明してきたとおり、安い米が入っていないことが明確に証明された後にならなければ、補正予算、TPPの審議に進むことができないものであると私は考えます。この問題は、政府のTPPの影響に関する説明がそもそも信頼に足るのかに関する重要な事例です。総理の答弁を求めます。

 安全保障政策についてお尋ねします。

 多くの国民が反対し、憲法学者の大多数が違憲と回答した安保法制の強行採決から一年が経過しました。

 安全保障法制の施行により、本年十一月に南スーダンに派遣されるPKOの陸上自衛隊部隊に駆けつけ警護の任務が付与されると報じられています。駆けつけ警護は、他国の軍隊等を広くその対象に含むことや、場合によっては隊員が厳しい戦闘行為の場の当事者になる可能性がある、これまで行ってきたPKOの任務とは全く異質の危険な任務です。

 政府は、安全保障法制の実際の運用開始について、隊員の安全を確保しつつ適切に任務を遂行することができるよう、あらゆる面で万全の体制を整え、周到に準備を進めると繰り返し答弁してきました。しかし、報道によると、九月から訓練を始めた隊員が十一月には派遣されることになるということですが、これでは、本当に十分な訓練が行われ、安全に任務遂行ができるのか、隊員の安全が確保できるのか、極めて疑問です。

 まさにこれは、参議院選挙に不利になるからという思惑で選挙後までに実施を先送りし、そして今度は、次の選挙への影響を避けるために拙速に派遣を決定しようとしているのではないかという疑念を抱かざるを得ません。昨日は盛んに自衛隊員などに拍手を送られましたが、本件は、政治の都合優先で、隊員の安全という視点が全く欠けているとんでもないやり方であります。

 自衛隊員を今以上の危険にさらし、紛争に巻き込まれる可能性を総理はどのように認識されているのでしょうか。本当に十分な訓練、準備の上で送り出されることになるのか、総理の明確な答弁を求めます。

 そして、稲田大臣。稲田大臣におかれましては、先日、南スーダン現地を訪問される予定が、体調不良により実現できなかったと聞いております。お見舞い申し上げます。

 その上で、この任務はこれまでとは異なる次元の危険度を伴うものであり、現地の安全の状況を大臣みずから確認されようとされたことは、極めて重要なことだと思います。

 稲田大臣、駆けつけ警護任務を付与する前には、現地に赴き、みずから現地の状況を確認した上で任務付与の可否を決定するべきだと思いますが、いかがでしょうか。答弁願います。

 憲法改正についてお尋ねします。

 これまでも、自公政権は、安保法制などの重要政策について、数の力による強引な国会運営、強行採決を繰り返してきました。今、改憲勢力が三分の二超と言われていますが、憲法改正においては、数に物を言わせ発議を強行するようなことは断じてあってはならないと思います。まずは、幅広い意見を丁寧に受けとめ、じっくりと時間をかけて合意を形成すべきです。

 改憲勢力が三分の二だからといって、その勢力だけで発議を強行せず、ほかの野党も含め幅広い合意が得られるかどうかを探るというプロセスで進めるべきであると考えますが、総理のお考えを伺います。

 今回の総理の所信表明演説において、介護や農業で働く人々の率直な御意見が引用されています。しかし、このような声一つ一つは、安倍政権が三年九カ月、これらの問題に十分な成果を上げられなかった具体的な証拠ではないでしょうか。

 加えて、総理は、世界一を目指す気概と述べましたが、その成果とされているものは、むしろ国民一人一人のたゆまぬ努力によって得られたものであって、政権の政策により導かれたものでは全くありません。

 成果が公正に分配されず、格差は拡大し、国民の不安はますます大きくなっています。今こそ、政策を大きく転換し、子育て、教育、雇用、老後などの将来不安を取り除き、人生の全てのライフステージを安心して過ごせる生活支援を行うこと、安心を確かなものにすることで消費が喚起され、実需が生まれ、経済成長が実現できる安心の好循環社会をつくらなければなりません。その実現のために、民進党は、これからも具体的な提案を行い、政権を担える政党としての信頼をかち得ることを目指していくことをお誓い申し上げ、私の質問とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 大串博志議員にお答えをいたします。

 大臣や政務官の資質と任命責任についてお尋ねがありました。

 今回の組閣に当たっては、多士済々の与党の中で、その専門性や政治経験などを踏まえ、適材適所の人事を行ったところであります。もとより政治活動については、内閣、与党、野党にかかわらず、一人一人の政治家が、国民の信頼が得られるよう、みずから襟を正し、説明責任を果たすべきものと考えています。

 とりわけ、政府には常に国民の厳しいまなざしが注がれており、高い緊張感を持って政権運営に当たるべきは言うまでもありません。一年余りの野田政権の間の三度にわたる内閣改造において政務官や総理補佐官を歴任された大串議員も、身をもって体験しておられることと存じます。

 今後、内閣が一丸となって経済再生を初め各般の政策を力強く前進させることにより、先般の参議院選挙において国民の皆様からいただいた負託に応え、国民への責任を果たしていく決意であります。

 消費税率の引き上げ延期と社会保障の充実についてお尋ねがありました。

 消費税財源を活用して行う社会保障の充実のうち、待機児童ゼロや介護離職ゼロを目指した保育、介護の受け皿整備は、予定どおり着実に進めます。

 また、無年金の問題は喫緊の課題です。年金の受給資格期間の十年への短縮を実行します。

 さらに、保育士、介護職員などの処遇改善など一億総活躍プランに関する施策については、アベノミクスの果実の活用を含め財源を確保し、優先して実施していきます。

 その他の施策についても、優先順位をつけながら、税収の動向や重点化、効率化の効果を見きわめつつ、今後の予算編成過程の中で最大限努力をしてまいります。

 介護保険の給付の見直しについてのお尋ねがありました。

 介護保険は、高齢者の自立を支援し、介護の重度化を防ぐことを理念に掲げています。これまでも累次の改正を行い、効果的なサービスの提供を進めてまいりました。

 前回の介護保険法改正では、要支援の方を介護保険の対象外とするのではなく、引き続き、介護保険の地域支援事業の対象として、市町村が必要なサービスを地域の実情に応じて効果的かつ効率的に提供できるよう、仕組みを見直しました。

 軽度の要介護者に対する生活援助サービスや福祉用具貸与等の支援のあり方については、現在、厚生労働省の審議において、高齢者の自立を支援し、介護の重度化を防ぐ観点から、しっかり検討を行っているところです。

 この検討は、まさに介護離職ゼロを実現するために、介護保険制度の持続可能性を確保しつつ、高齢者の自立を支援し、真に必要なサービスが提供されるようにするためのものです。介護離職をむしろふやす方向の政策を推進しようとしているとの御批判は全く当たりません。

 児童扶養手当についてのお尋ねがありました。

 子供たちの未来が、家庭の経済事情によって左右されるようなことがあってはなりません。経済的にもさまざまな困難を抱えている一人親家庭や子供の多い世帯には、きめ細かな支援が必要です。

 このため、児童扶養手当については、必要な財源を確保し、子供が二人以上の一人親家庭の加算額を倍額にする改正を行い、ことし八月に施行しました。第二子の加算額については約三十六年ぶり、第三子以降の加算額については約二十二年ぶりの引き上げとなります。

 改正時の附帯決議では、児童扶養手当の支給額と支給回数について検討を求められています。

 一人親家庭の所得状況や生活実態、今後の経済状況の変化等を踏まえつつ、引き続き支給額のあり方について検討するとともに、手当の支給回数について、八月に関係省庁連絡会議を設置しており、自治体からのヒアリングなどを行った上で、それらの結果も踏まえ、鋭意検討してまいります。

 長時間労働是正についてのお尋ねがありました。

 誰もがその能力を存分に発揮できる社会をつくる。一億総活躍の未来を切り開いていく。その最大の鍵は長時間労働是正を含む働き方改革であり、安倍内閣の最重要課題です。

 現在提出している労働基準法改正案は、長時間労働を是正し、働く人の健康を確保しつつ、その意欲や能力を発揮できる新しい労働制度の選択を可能とするものであり、残業代ゼロ法案との批判は当たりません。

 私としては、働き方改革実現会議において、労使のトップや有識者に集まっていただき、時間外労働の上限規制の労働基準法のあり方を含め長時間労働の是正について、働く人の立場、視点に立って議論を進め、年度内に具体的な働き方改革実行計画を取りまとめ、関連の法案を提出いたします。

 同一労働同一賃金についてお尋ねがありました。

 昨年成立した労働者派遣法改正法は、正社員を希望する方にその道が開けるようにするとともに、派遣を積極的に選択している方については待遇の改善を図るものであり、施行状況についてはしっかりと注視し、その目的が達成されるよう努めてまいります。

 他方、働き方改革の目的は、働く方によりよい将来の展望を持っていただくことです。一刻も早く同一労働同一賃金を実現し、正規と非正規の労働者の格差を埋め、若者が将来に明るい希望が持てるようにしなければなりません。

 このため、どのような賃金差が正当でないと認められるかを、年内を目途にガイドラインをつくって具体的に明らかにし、さらに、賃金差について裁判で争われた場合に、裁判所の判断の根拠となる規定を整備することなどを含め、労働法制についてちゅうちょなく行っていきます。法律案は、二〇一八年度と言わず、可能な限り早期に提出いたします。

 同一労働同一賃金の主要な目的は非正規の労働者の待遇改善であり、不合理に低くなっている方の待遇の改善を図る方向で検討すべきものと考えています。

 TPP協定と関連法案の審議についてお尋ねがありました。

 TPP協定の再交渉については、繰り返し繰り返し述べてきたとおり、仮に米国から求めがあっても、応じる考えは全くありません。つまり、さらなる譲歩を求められても、応じる考えはありません。

 そもそもの前提として、交渉に応じないわけでありますから、こちら側の手のうちをさらすということも、これは、もちろんありません。全く、先ほどの批判は空振りであります。

 TPP参加各国とも、再交渉はあり得ないとの認識で一致しています。このことは、九月十二日に石原大臣が、米国を含めたTPP各国の駐日大使と意見交換した際にも改めて確認したところであります。

 国会でTPP協定が承認され、整備法案が成立すれば、再交渉はしないとの立法府も含めた我が国の意思が明確に示されます。これにより、TPP協定の早期発効に弾みを与えることができると考えます。

 米のSBSについてお尋ねがありました。

 TPP交渉においては、米が我が国最大のセンシティブ品目であることを踏まえ、国会決議を後ろ盾にぎりぎりの交渉を行いました。

 その結果、国家貿易制度の維持など多くの例外措置を獲得することができたことから、輸入の大幅な増大は見込みがたいと考えております。

 また、新たに設定される米国、豪州向けのSBSの国別枠において……(発言する者あり)聞こえるように、なるべく静かにしていただきたいと思います。

 SBSの国別枠において輸入される米については、輸入量に相当する国産米を備蓄米として買い入れることにより、国内の需給及び価格に与える影響を遮断することとしております。

 TPPの影響試算や、今回の補正予算のTPP対策はこのことを前提としたものであり、国民への説明を偽装したとの指摘は全く当たらないと考えております。

 なお、一部で報道されているSBSの入札参加事業者間の金銭のやりとりについては、そのような実態があるとすれば、民間事業者間の問題とはいえ、米農家に不信感を生じさせるとの問題も指摘されています。

 このため、農林水産省において、事業者のヒアリング調査や価格動向の分析などを鋭意進めており、可能な限り速やかに公表したいと考えております。

 平和安全法制についてお尋ねがありました。

 平和安全法制に基づく新たな任務を命じるに当たっては、あらかじめ十分な教育訓練を行うなど周到な準備を行い、安全を確保しつつ、適切に任務を遂行し得るよう、あらゆる面で万全の体制を整えるべきことは当然のことです。

 また、いわゆる駆けつけ警護は、PKO参加五原則が満たされることなどを大前提とした上で、施設整備などを行う部隊が、その人員、装備などに応じ、あくまでも安全を確保しつつ、対応できる範囲内で行うものです。

 武器の使用は厳格な警察比例の原則に基づくものであり、相手に危害を与える射撃が認められるのは、正当防衛または緊急避難に該当する場合に限られます。このようなことから、自衛官が戦闘行為を行ったり、紛争に巻き込まれるとの御指摘は当たりません。

 南スーダンPKOに派遣する部隊にいかなる任務を付与するかについては、現地の情勢や訓練の進捗状況等を慎重に見きわめながら、総合的に検討してまいります。

 いずれにせよ、政治の都合優先であるとか、隊員の安全という視点が欠けているなどという御指摘も、これも全く当たりません。

 憲法改正についてのお尋ねがありました。

 憲法改正は、国会が発議し、最終的に国民投票において国民が決めるものであり、どの条文をどのように変えるかについては、国民的な議論の末に収れんしていくものであります。

 まずは、憲法審査会という静かな環境において、各党がそれぞれの考え方を示した上で、真剣に議論し、国民的な議論につなげていくことが必要と考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣稲田朋美君登壇〕

国務大臣(稲田朋美君) 大串議員にお答えいたします。

 防衛大臣みずから南スーダンを訪問した上で駆けつけ警護任務付与の可否を決定すべきとのお尋ねがありました。

 防衛大臣に着任してからこれまで国内外の部隊を視察してきましたが、南スーダン派遣施設隊の活動状況の確認や隊員への激励をしたいとの思いを引き続き持っており、諸般の事情が許せば、同国を早期に訪問できればと考えています。

 今後、南スーダンPKOに派遣される部隊にいかなる業務を新たに行わせるかについては、現地情勢や訓練の進捗状況等を慎重に見きわめて、政府として総合的に判断してまいります。(拍手)

     ――――◇―――――

笹川博義君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十八日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

副議長(川端達夫君) 笹川博義君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(川端達夫君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       財務大臣     麻生 太郎君

       総務大臣     高市 早苗君

       法務大臣     金田 勝年君

       外務大臣     岸田 文雄君

       文部科学大臣   松野 博一君

       厚生労働大臣   塩崎 恭久君

       農林水産大臣   山本 有二君

       経済産業大臣   世耕 弘成君

       国土交通大臣   石井 啓一君

       環境大臣     山本 公一君

       防衛大臣     稲田 朋美君

       国務大臣     石原 伸晃君

       国務大臣     今村 雅弘君

       国務大臣     加藤 勝信君

       国務大臣     菅  義偉君

       国務大臣     鶴保 庸介君

       国務大臣     松本  純君

       国務大臣     丸川 珠代君

       国務大臣     山本 幸三君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  萩生田光一君

       財務副大臣    木原  稔君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  横畠 裕介君


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