衆議院

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第3号 平成28年9月28日(水曜日)

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平成二十八年九月二十八日(水曜日)

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 議事日程 第三号

  平成二十八年九月二十八日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)

 二階俊博君の故議員鳩山邦夫君に対する追悼演説


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    午後二時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

議長(大島理森君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。井上義久君。

    〔井上義久君登壇〕

井上義久君 公明党の井上義久です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました安倍総理の所信表明演説及び財政演説に対し、安倍総理並びに関係大臣に質問します。(拍手)

 我が国の未来を切り開く。安倍総理の決意あふれる所信表明演説をお伺いしました。

 総理は、今国会をアベノミクス加速国会と位置づけられ、最低賃金の引き上げや中小・小規模事業者の資金繰り支援、無年金者対策など、あらゆる政策を総動員し、事業規模二十八兆円を超える経済対策でアベノミクスをより一層加速させ、結果を出すことに強い決意を述べられました。私も同じ思いであります。

 安倍内閣発足から三年九カ月が経過し、自民党と公明党の連立政権による政治の安定と、機敏かつ的確な政策対応により、日本経済は大きく改善しています。

 七月の参議院選挙で自公連立与党が改選議席の過半数を大きく上回る勝利を得ることができたのも、政治の安定を求める国民の意思のあらわれであり、私たちに寄せられた国民の期待ではないでしょうか。

 デフレ脱却まであと一歩、経済再生は正念場を迎えています。経済成長の成果を、地方、中小・小規模事業者、家計にまで届け、成長と分配の好循環をより確実なものとしなければなりません。総理の決意をお伺いいたします。

 この夏、八月から九月にかけて、一連の台風によって記録的な豪雨が相次ぎ、東北、北海道を中心に日本各地で、生活インフラや農業、水産業等に甚大な被害をもたらしました。お亡くなりになられた方々、被災された皆様に心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 公明党は、発災直後から国会議員を被災地に派遣し、地方議員と連携して、被災者や被災自治体など現場のニーズを調査し、迅速に対応してまいりました。

 私自身も岩手県釜石市などの被災現場に急行いたしました。サケ・マスのふ化場や養殖施設は壊滅状態。漁港では、流木などの漂流物が散乱し、東日本大震災後にようやく新しくそろえた漁船や機械にも被害が発生。崩落した道路、濁流によってえぐられた川岸など、甚大な被災状況を目の当たりにしました。震災復興の途上で追い打ちをかける深刻な被害に、住民のショックははかり知れません。

 公明党は、今月十四日、各地の被災現場で実施した調査に基づき、復旧復興に向けた緊急要望を政府に提出。政府も十六日の閣議で、今回の暴風、豪雨災害に対し、いち早く激甚災害の指定を決めました。

 今後さらに、インフラの復旧復興はもとより、被災者の生活や住宅再建、なりわいの再生など、ソフト、ハードの両面から、適切な支援策を迅速かつきめ細やかに実施する必要があります。

 被災者が再び希望を持って前へ進めるよう、復旧復興に向けた総理の決意をお伺いいたします。

 以下、諸課題について質問します。

 初めに、景気・経済対策について伺います。

 アベノミクスにより、有効求人倍率は史上初めて四十七都道府県全てで一倍を超え、実質賃金もプラスに転じ、六カ月連続でアップ。雇用の拡大、賃金の上昇による経済の好循環は着実に実現しつつあります。

 しかし、明るい兆しが見えてきたとはいえ、少子高齢化、人口減社会の中で安定した経済成長を実現するためには、本格的な成長と分配の好循環の確立が必要です。成長による果実が生まれなければ分配もなく、適切な分配なくして安定した成長はあり得ないからです。

 中でも、日本経済の発展のためには、地域に根を張り活躍する中小・小規模事業者の成長が不可欠です。

 具体的に二点に絞って質問します。

 一つは、技術革新と新しい産業革命に対する取り組みです。

 ロボット技術や新素材開発、ナノテクノロジー、IoTや人工知能、AI、ビッグデータなどを活用した第四次産業革命をさらに加速させ、新たな需要の創出と生産性を向上させなければなりません。

 そのためには、官民を挙げて、科学技術研究費の大幅な拡充に向けて大胆な目標を掲げ、取り組むべきです。同時に、科学技術の実用化や地域の中小・小規模事業者に対する導入支援を積極的に行うことが成長力をさらに加速させる鍵であると考えます。

 もう一つは、地方創生を後押しする観光戦略の推進も地域経済の起爆剤となる成長の柱です。

 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けて、世界じゅうから日本の魅力に注目が集まります。この絶好の機会を逃すことなく、観光振興による内需拡大策を集中的に展開すべきです。

 地域経済を活性化する成長戦略の加速について、総理の答弁を求めます。

 一方、八月二日には、世界経済の潜在的なリスクに対応するため、足元の経済の現状を踏まえ、未来への投資を実現する経済対策を取りまとめました。そして、二〇一六年度第二次補正予算案が編成され、具体的な対応が始まろうとしております。

 今回の補正予算の特徴は、一億総活躍社会の実現に向けた子育て、介護の環境整備や、訪日外国人観光客の増加に向けた環境整備といった未来につながる投資、また、水道管の更新など生活密着型のインフラ投資策が盛り込まれている点であります。

 古くなった水道管の漏水は早急な対応が必要であり、それを担うのは主に地元の中小・小規模事業者です。地方や中小・小規模企業が主役となる投資策であり、地域経済の下支えになると期待されます。

 第二次補正予算案の経済効果について、総理の答弁を求めます。

 次に、働き方改革について伺います。

 総理が最大のチャレンジと位置づけた働き方改革。その具体的な検討を行う働き方改革実現会議が今月より始動いたしました。

 今回の改革は、長時間労働の是正を初め、同一労働同一賃金の実現など非正規労働者の待遇改善にも積極果敢に挑み、実行できるかどうか、政府の本気度が問われます。

 当然、実行段階においては労使の合意や雇用への影響などの配慮は必要ですが、国民一人一人の活躍を後押ししていくためにも、スピード感を持って実効性ある取り組みを進めていただきたいと思います。

 以下、二点について質問をします。

 第一に着手すべき課題は、長時間労働の是正です。

 我が国は欧州諸国と比べて週四十九時間以上働く長時間労働者の割合が高く、ワーク・ライフ・バランスや健康保持の観点からも、思い切った労働時間法制の見直しが必要です。三六協定で定める時間外労働の限度基準の実効性の確保とともに、特別条項つき協定を結べばさらに労働時間を延長できる現行の仕組みを見直し、上限規制を設けるべきと考えます。

 また、勤務終了時から次の始業時までに一定の休息時間を設ける勤務間インターバルについて、今回の第二次補正予算案に、導入する中小企業への助成が盛り込まれましたが、さらに各企業での取り組みが進むよう、導入に向けた指針の作成や情報提供など、必要な支援を継続すべきです。

 長時間労働の是正について、総理の答弁を求めます。

 第二は、非正規労働者の待遇改善です。

 公明党は、非正規労働者の時間当たり賃金が正社員の六割程度である現状を改め、欧州並みの八割程度に引き上げるために、同一労働同一賃金の実現に向けた検討を急ぐべきと申し上げてまいりました。

 導入に向けては、労働時間が異なる労働者間の賃金の差異をどこまで認めるかなど、さまざまな課題が指摘されています。

 雇用形態にかかわらず、合理的理由のない不利益な取り扱いを禁止するという基本的な考え方のもと、日本型の雇用慣行や中小企業に留意しつつ、同一労働同一賃金の実現に向け、どのように法改正やガイドラインの策定を進めていくか、それが大変重要です。

 あわせて、賃金の引き上げと労働生産性の向上を図るためには、非正規労働者に対する能力開発機会の拡大が必要であり、教育訓練給付の拡充など、労働者の生涯を通じたキャリア形成支援を強化すべきと考えます。

 非正規労働者等の待遇改善について、総理の答弁を求めます。

 次に、社会保障について伺います。

 我が国の高齢者人口がふえ続け、医療費は二〇一四年度に初めて四十兆円を突破しました。社会保障給付費が年々ふえ続ける中、消費税率引き上げの再延長により、社会保障の充実が行き詰まるのではないかと心配する声があります。

 しかし、将来にわたって持続可能な社会保障制度を構築するため、民主、自民、公明の三党合意に基づき社会保障と税の一体改革を進めるという基本的な枠組みは変わりません。三党合意は生きているということを改めて強く申し上げておきたいと思います。

 加速する高齢化などを踏まえた改革の工程表の見直しは必要ですが、消費税率引き上げを再延期しても、一体改革の基本に沿ってしっかりと推進しなければなりません。

 そして、その上で、消費税率一〇%への引き上げと同時に予定していた社会保障の充実策については、必要な財源を確保し、可能な限り前倒しして実施すべきです。

 以下、具体的に質問します。

 公明党が強く主張してきた年金機能強化法の改正法案が今国会に提出されました。これにより、年金の受給資格の取得期間が二十五年から十年に短縮され、今まで年金を受給できなかった人も、保険料を十年間納めていれば年金が受け取れるようになります。

 新たに年金を受給できる人は約六十四万人に上ります。この法改正によって、年金を受け取れる人の裾野が広がる大きな改革です。二〇一七年度中の早い段階で確実に実施すべきと考えますが、総理の決意をお伺いいたします。

 総理は、所信表明演説で、介護の仕事は本当にやりがいがあると述べた学生の言葉を引用し、人材確保への決意を語られました。

 しかし、生産年齢人口が減る中、人材の確保が簡単でないのも事実です。

 福祉、介護人材の賃金は、二〇一七年度予算の厚生労働省の概算要求に月一万円引き上げることが盛り込まれていますが、あわせて、ICTや介護ロボット等による負担軽減、職場環境の改善とともに、キャリアアップの仕組みづくりも促進すべきです。

 福祉、介護人材の確保について、総理の答弁を求めます。

 がん検診受診率の向上に効果が大きい個別の受診勧奨、再勧奨の対象を今後拡大する方針と聞いていますが、新たな取り組みの効果について検証が必要です。

 また、緩和ケアについては、いまだに終末期の医療だと誤解している人が多くいます。がんの診断早期から治療と並行して行うことで、身体的にも精神的にも苦痛が少なく過ごすことができます。

 たとえがんになっても、痛まない、苦しまない、そういう社会を築かなければなりません。そのためには、全ての医療従事者が基本的な知識と技術を身につけるため、緩和ケア研修が重要です。

 一方、二人に一人ががんになる時代となり、がんの罹患者が年々ふえ続けています。そこで、がんとの共生について、具体的な対策が求められています。特に、がんになっても働ける環境づくりが必要です。また、学校や職場におけるがん教育も重要です。

 以上、来年六月のがん対策推進基本計画の見直しを見据え、患者に寄り添ったがん対策の強化について、総理の答弁を求めます。

 TPPについて伺います。

 環太平洋パートナーシップ協定、TPPは、アジア太平洋地域において貿易・投資の新たなルールを確立する戦略的な意義があります。

 また、参加国のGDPは世界全体の約四割を占め、アジアなど海外の成長を日本に取り込むことで、日本経済全体に大きなメリットが期待されます。TPPの早期発効に向け、我が国も全力を尽くすべきと考えます。

 一方、アメリカでは、オバマ大統領は任期中の承認を目指していますが、大統領選挙の候補者がいずれも反対を表明しており、先行きが不透明になっています。

 こうした中、日本がTPPを早期に承認する必要性について、総理に国民への明確な説明を求めたいと思います。

 また、TPPの承認とともに、総合的なTPP関連政策大綱に基づき、国内対策を着実に実行することが重要です。特に、日本の農業は、TPPにかかわらず、高齢化や農業所得の減少など厳しい状態が続いています。

 農業の持続的な発展には、若者が希望を持って取り組める、より魅力ある成長産業への転換が不可欠です。担い手の育成や農産物の輸出拡大、中山間地域等も含めた所得向上などを力強く後押しすべきです。

 本年秋には、公明党が訴えてきた収入保険制度の創設を初め、中長期的な対策を具体化することとしております。政府・与党が緊密に連携しつつ、現場の実態を踏まえ、丁寧に検討してまいりたいと考えます。

 TPPと国内対策について、総理の答弁を求めます。

 次に、外交、安全保障について伺います。

 総理は、G20サミットや第六回アフリカ開発会議、国連総会などの一連の国際会議やキューバ初訪問など、地球儀を俯瞰する外交を積極的に展開されております。

 日本の存在感を着実に高め、国益に資するのみならず、世界の平和と安定に大きな役割を果たしていると高く評価します。我が党も、政府と連携しつつ、政党や議員交流を拡大し、我が国の国益と国際社会の平和と安定に積極的に貢献してまいります。

 以下、具体的に質問します。

 我が国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しています。北朝鮮は、ことしに入り、二度の核実験の強行や、奇襲能力の高い潜水艦発射弾道ミサイル、SLBMを含む二十一発の弾道ミサイルを発射しました。北朝鮮の核兵器製造能力や弾道ミサイル性能、発射技術は確実に前進しております。

 日米韓を初め、中国、ロシアなど関係国と緊密な連携を図るとともに、国際社会が一致して、北朝鮮関連の安保理決議に基づく制裁措置の完全履行や、新たな非難と実効性を伴う安保理決議の早期採択など、厳しく対応することが重要です。

 また、日米同盟の強化とともに、日韓の安全保障分野の強化も重要です。そのため、直接情報をやりとりする軍事情報包括保護協定の早期締結を行うべきです。

 北朝鮮の核実験、弾道ミサイル発射への対応、また、拉致問題解決に向けた取り組みについて、総理の答弁を求めます。

 G20の機会を捉えた日中首脳会談は、両国関係のプラス面をふやし、困難な課題にはお互いに努力してマイナス面を減らしていくとの両首脳の共通認識のもと、前向きで充実した内容だったと承知しております。

 戦略的互恵関係に基づいて、来年の日中国交正常化四十五周年や再来年の日中友好条約締結四十周年、さらには二〇二〇年、二二年に両国で開催されるオリンピック・パラリンピックを見据えて、人的交流や経済交流など各種交流を進めることが重要です。

 ASEAN首脳会議の機会を捉えた日韓首脳会談は、昨年末の日韓合意以降、日韓関係が着実に前進している中での充実した会談だったと承知しております。引き続き、政治、経済、安全保障などの各分野で未来志向の協力を進めることが重要です。

 慰安婦問題については、合意に基づいて、七月末に和解・癒やし財団が設立され、十億円の支出も完了しました。今後とも、合意内容を誠実かつ着実に進めることが重要です。

 こうした流れを年内に日本で開催する日中韓サミットへとつなげるべきです。日中、日韓関係の改善に向けた取り組みについて、総理の答弁を求めます。

 第二回東方経済フォーラムの機会を捉えた日ロ首脳会談では、五月の首脳会談以降の日ロ関係進展に向けた肯定的な流れの中で、経済や安全保障など、さまざまな分野についてじっくり意見交換されたと伺っております。

 特に、平和条約締結問題については、真剣ながらも打ち解けた雰囲気の中で、新しいアプローチに基づく、交渉を具体的に進めていく道筋が見えてくるような議論だったと承知しております。

 北方領土問題を解決するため、首脳会談などを積み重ねて、平和条約締結へ向けた議論を加速させるべきと考えます。北方領土問題を含めた日ロ関係の取り組みについて、総理の答弁を求めます。

 次に、東日本大震災からの復興の加速について伺います。

 東日本大震災の発災から五年を過ぎ、東北の未来を開くための新たなステージ、復興・創生期間に入って半年が経過しました。来年春までに災害公営住宅の約九割、高台移転の約七割が完了見込みのほか、水産加工施設の八七%が再開し、インフラの整備やなりわいの再建など、被災地の復興は着実に進んでおります。

 しかし、今なお約十四万人以上の方々が避難生活を余儀なくされており、中でも福島県の県内外の避難者は、全体の約六割を占める八万八千人に上っております。

 公明党は、引き続き被災者に寄り添い、全ての被災者が人間としての心の復興、人間の復興をなし遂げるその日まで闘い続けることを改めてお誓い申し上げます。

 福島の再生には、原子力事故災害に係る廃炉・汚染水対策の加速と充実が不可欠です。特に廃炉問題は、国が前面に立ち、あらゆる英知を結集して立ち向かうとともに、正確な情報を発信し続けることで、県民、国民の理解を得ながら安全に進めることが重要です。

 避難指示解除準備区域と居住制限区域については、来年三月までに両区域全てで避難指示を解除できる道筋が見えてきました。避難指示区域内の除染作業や、医療施設、生活拠点、インフラの復旧を加速するとともに、解除後も被災者の意向に沿った手厚い支援策の推進が求められます。

 また、先月、帰還困難区域の地元七市町村長の意見を踏まえながら、与党として、政府に対する、復興加速化のための第六次提言を提出しました。提言には、帰還困難区域の取り扱いについて、地元からその検討を求める声が出ていることを踏まえ、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興再生に責任を持って取り組むとの決意を明記いたしました。

 提言に掲げた基本方針を受けて、政府は、除染とインフラ整備を一体的に進める復興拠点の整備を柱としながら、来年度から五年を目途に、放射線量の低下状況も踏まえて避難指示を解除することを決めました。

 また、低線量、内部被曝の防止対策に万全を期しながら、継続的な健康調査を実施するとともに、放射線による健康被害への不安に対するリスクコミュニケーションの実施、風評被害対策も重要です。帰還支援、生活再建支援策などについては、国が引き続き責任を持って行っていくべきです。

 東日本大震災からの復興の加速、福島の再生について、総理の答弁を求めます。

 次に、防災・減災対策について伺います。

 近年、頻発する大規模な自然災害により各地で甚大な被害が相次いでおり、防災、減災の取り組みの推進が求められております。

 防災・減災対策に関する研究開発の強化とともに、災害発生時のより速やかな初期対応を可能とするための、災害庁、日本版FEMAの設置を視野に、災害対策を担う専門的な人材の確保を図ることが必要です。

 また、大規模水害等に対応するため、自治体の枠を超えた、流域ごとのタイムラインの作成や、避難行動に直結するハザードマップの作成、適切な避難勧告や避難指示発令のための体制構築にも取り組むべきです。

 さらに、インフラ整備とともに、地域防災力の向上と防災拠点の整備も大変に重要です。

 被災者支援システムを全国の自治体に完備、普及することや、自主防災コミュニティーの組織化、訓練、防災マップの作成などを進めなければなりません。

 防災拠点の整備としては、スマホ等でさまざまな情報を得るための災害に強い公衆無線LANの設置や、子供や女性、高齢者や障害者が避難所生活でつらい思いをすることがないよう、避難所の環境整備や防犯体制の強化とともに、マンホールトイレの普及、整備促進等も欠かせません。

 防災・減災対策の推進について、石井国土交通大臣の答弁を求めます。

 最後に、一言申し上げます。

 人口減少とそれを上回る高齢化が同時に進行する日本においては、経済や社会保障、さらには地域社会の持続可能性をめぐって、大きな困難に直面しております。

 本来、政治や経済は、生活者が豊かに人間らしく生きるための手段でなければなりません。生活者を置き去りにした経済優先の政策ではなく、生活者優先であり、また一人一人の生活の持続可能性を保障するものでなければなりません。そのためには、生活の場である地域社会の再生と持続が必要であり、その根底には人々の支え合いがなければならないと考えます。

 これは、安倍内閣が目指す地方創生、一億総活躍社会の実現にも符合するものと考えます。

 また、この夏のG20サミットで採択された杭州コンセンサスは、誰も置き去りにしないという理念を基調としています。開発途上国の貧困や飢餓の問題だけではなく、先進国の格差拡大などの課題に対して、誰もが豊かな社会を共有するための提言となっており、公明党が目指す考え方と同じであります。日本は、G7議長国として、一連の政策推進に当たって、その理念を追求しながら、リーダーシップを発揮すべきです。

 公明党もまた、与党として、その責任の一端を担い、努力してまいることを改めてお誓い申し上げ、私の代表質問を終わります。

 御清聴、大変にありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 井上義久議員にお答えをいたします。

 成長と分配の好循環についてお尋ねがありました。

 安倍内閣としては、持続的な経済成長を通じて富を生み出すことにより、経済全体のパイや個人の所得を増加させ、その果実を所得の再分配に活用することで、さらなる成長につなげてまいります。

 政権交代後、デフレ脱却を目指して経済再生に取り組む中、名目GDPは三十三兆円増加し、税収は国、地方合わせて二十一兆円ふえました。

 さらに、未来への投資を実現する経済対策を講じ、内需を力強く下支えし、アベノミクスを一層加速するとともに、全国の中小・小規模事業者の生産性向上、販路開拓などの努力を後押しし、経済の好循環を一層促進してまいります。

 また、経済成長の果実を生かし、子育て支援や介護離職ゼロに向けた取り組みなどの社会保障の充実を行うことにより、安心できる社会基盤を築き、その基盤のもとに、さらに経済を成長させていくという成長と分配の好循環をつくり上げてまいります。

 一連の台風被害からの復旧復興についてのお尋ねがありました。

 私自身、九月十四日に被災地を視察し、甚大な被害を目の当たりにするとともに、被災者の皆様の大変な御苦労を直接伺い、復旧復興に向けた決意を新たにいたしました。

 北海道や岩手県を初めとする東北地方を襲った一連の災害を激甚災害に指定し、広範な分野で財政支援等の特例措置を講じたところですが、今後も、被災者の皆さんが再び希望を持って前に進めるよう、道路、河川などのインフラ復旧、被災者の住宅再建、農林水産業、観光産業などの復旧について、地元自治体と緊密に連携しつつ、被災地の方々の気持ちに寄り添い、ソフト、ハードの両面から、できることは全て行うとの方針で、スピード感を持って全力で取り組んでまいります。

 地域経済を活性化する成長戦略の加速についてお尋ねがありました。

 全国津々浦々に至るまで景気回復を実感できる状況を実現する。このため、地域に根を張り活躍する中小・小規模事業者の成長を応援していきます。

 近年、ロボットからビッグデータ、AIまで、デジタル技術の活用が進んでいます。これを中小企業が活用し、新たな需要を創出し、生産性を向上できるよう、第四次産業革命の実現を後押ししていきます。

 既に、中小企業が先進的な取り組みを始めています。百以上の中小縫製工場をITでつなぐ。数千のデザイナーと数百の3Dプリンター工場をマッチングする。生産資源を効率的、柔軟に活用し、多様な顧客とつながることで、中小企業が手軽に多様なニーズに応える商品を開発、提供できるようになります。

 こうした動きが全国に拡大していくよう、革新的な物づくり、サービス開発等を支援してまいります。また、官民合わせた研究開発投資を対GDP比四%以上、民間投資の呼び水となる政府研究開発投資を一%にすることを目標としています。

 日本の各地を多くの外国人が訪れるようになったことも、地域の中小・小規模事業者にとって大きなチャンスです。安倍政権はこれまで、ビザの緩和、免税制度の拡充など、外国人観光客の増加に精力的に取り組んでまいりました。

 ことし三月、二〇二〇年に訪日外国人旅行者数を四千万人という新たな目標を掲げました。この実現に向けて、豊富で多様な観光資源の魅力を最大限に高めるとともに、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境を早急に整えてまいります。政治が前面に立って、常に先手を打って万全の対策を講じていく決意であります。

 経済対策の地方、中小企業への波及についてお尋ねがありました。

 先般閣議決定した経済対策では、未来への投資をキーワードにしています。地方が主役となる施策を講じてまいります。

 地方創生の切り札である観光においては、岸壁の整備、客船ターミナルの建設、WiFiの利便性向上など、ハード、ソフト両面でインフラ整備を進めることで、観光客の利便性をさらに高め、外国人観光客四千万人の高みを目指します。

 地方が誇る魅力の源である農林水産業においては、農林水産品の輸出基地、輸出対応型施設を全国に整備することで、輸出額一兆円目標の早期達成を目指します。

 中小企業、小規模事業者に対しても、サービス産業等における革新的な開発の支援を行うことなどにより、その経営力強化、生産性向上を図ります。

 また、生活密着型インフラの整備においては、鉄道立体交差化やホームドアの設置、バリアフリー化などを推進し、高齢者や障害者が住みやすいまちづくりを進めてまいります。

 これらの施策を通じて、地域経済が下支えされるだけでなく、地方が主役となる未来が切り開かれていくものと考えています。

 長時間労働是正についてのお尋ねがありました。

 誰もがその能力を存分に発揮できる社会をつくる。一億総活躍の未来を切り開いていく、その最大の鍵は働き方改革です。子育て、介護など多様なライフスタイルと仕事とを両立させるためには、長時間労働の慣行を断ち切ることが必要です。

 私としては、働き方改革実現会議において、労使のトップや有識者に集まっていただき、時間外労働の上限規制の労働基準法のあり方を含め、長時間労働の是正について、働く人の立場、視点に立って議論を進め、年度内に具体的な働き方改革実行計画を取りまとめ、関連の法案を提出します。

 また、勤務間インターバルは、働く方の生活時間や睡眠時間を確保し、健康な生活を送るために重要であり、今回の第二次補正予算では、インターバルを導入する中小企業への助成金の創設や好事例の周知を通じて、労使の自主的な取り組みを推進します。

 働き方改革は、安倍内閣の最重要課題であります。

 働き方改革の目的は、働く方によりよい将来の展望を持っていただくことです。パートタイム労働者の賃金水準は、欧州諸国においては正規労働者に比べて二割低い状況でありますが、日本では四割低くなっているとの指摘もあります。一刻も早く同一労働同一賃金を実現し、正規と非正規の労働者の格差を埋め、若者が将来に明るい希望が持てるようにしなければなりません。

 このため、どのような賃金差が正当でないと認められるかを、年内を目途にガイドラインをつくって具体的に明らかにし、さらに、賃金格差について裁判で争われた場合に、裁判所の判断の根拠となる規定を整備することなどを含め、法改正についてちゅうちょなく行っていきます。

 また、非正規雇用で働く方の能力開発を支援するため、非正規従業員の企業内でのキャリアアップに取り組む企業に対する助成や、非正規で働く方が自発的に教育訓練を受けた場合の支援に積極的に取り組んでまいります。

 年金の受給資格期間の短縮についてお尋ねがありました。

 来年四月に予定していた消費税率一〇%への引き上げについては、平成三十一年十月まで延期することといたしました。

 こうした中で、年金の受給資格期間の短縮は、現在の法律では消費税率の一〇%への引き上げ時に行うこととされていますが、無年金の問題は喫緊の課題であることから、できる限り早期に実施すべきであると判断したものです。

 今回の受給資格期間の十年への短縮で、新たに約六十万人を超える方々が年金受給権を得ると見込んでいます。こうした多くの方々が間違いなく年金を受給できるよう、その対応に万全を期すため、平成二十九年八月施行としました。これにより、十月から確実に受け取れる予定であります。

 納付した年金保険料を極力給付に結びつけることにより、国民の年金制度に対する信頼を一層高めてまいります。

 福祉、介護人材の確保についてお尋ねがありました。

 福祉、介護人材の確保に当たっては、介護の仕事は本当にやりがいがあると大きな希望を持って福祉、介護の道を選んだ皆さんの高い使命感にしっかりと応えていくことが重要です。

 このため、ニッポン一億総活躍プランに基づき、平成二十九年度から、技能や経験に応じた給料アップの仕組みを構築し、月額平均一万円相当の処遇の改善、一旦仕事を離れた人が再び仕事につく場合の再就職準備金の倍増等に取り組んでまいります。

 あわせて、ICTや介護ロボットを活用した生産性向上の推進などにより、現場の負担軽減や職場環境の改善を進めていきます。

 このように、あらゆる手段を尽くして、今後、福祉、介護人材の確保に努めてまいります。

 がん対策についてお尋ねがありました。

 がん対策については、がん検診の受診を促し、受診率向上を図るとともに、研修の充実を通じた緩和ケアの推進や、治療と仕事が両立できるよう、職場や医療機関における支援を充実させていきます。

 さらに、がん教育のモデル事業の推進や、職場でのがんの普及啓発に取り組んでおります。

 現在、来年六月からの次期基本計画の策定に向け、厚生労働省の協議会で議論を行っているところです。

 がんによる死亡を減らすとともに、がんになっても安心して暮らせる社会の構築に向けて、がん対策をより一層進めます。

 TPP協定についてお尋ねがありました。

 自由で公正な貿易を堅持し発展させる、これこそが世界経済の成長の源泉です。

 我が国は、戦後、自由貿易のもとで経済成長を遂げてきました。その我が国こそが、世界の自由で公正な貿易・投資ルールの牽引役であり、提唱者でなければならない、このように確信しています。

 TPPは、その中核です。世界の四割経済圏において、つくり手が丹精込めた付加価値が正当に評価されるようになります。TPPによって新たにつくられるルールは、単にTPPにとどまらず、日・EU経済連携協定、RCEPなどにおけるモデルとなるものです。

 TPPは、参加希望を表明する国々が相次いでおり、潜在的な参加国が数多くあります。TPPが拡大していく機運を積極的につくっていくことこそ、我が国の役割です。

 米国も発効に向けて努力を続けていると承知しています。米国にその努力を続けてもらうためにも、交渉をともに牽引してきた日本が、このタイミングで国内手続を前進させていくことが不可欠だと考えています。

 他の署名国の多くも日本の動きに注目し、日本に期待しています。この国会でやらなければならない、こう考えています。

 TPPの国内対策についてお尋ねがありました。

 我が国の農業については、農業従事者の平均年齢が六十六歳を超えるなど、その活性化は待ったなしの課題であります。

 安倍内閣では、農業の成長産業化の実現に向け、農政全般にわたる抜本的な改革を進めてまいりました。これにより、四十代以下の新規就農者が年間二万人を超え、この九年間で最も多くなりました。

 そして、TPP。アジア太平洋に巨大な経済圏が生まれることは、日本の農業にとって大きなチャンスです。おいしくて安全な農産物の輸出を初め、このチャンスを生かそうとする意欲ある農業者の取り組みを、あらゆる政策を動員して力強く後押ししていきます。

 総合的なTPP関連政策大綱に基づき、攻めの農業への転換に必要な体質強化策を講じてまいります。

 今回の補正予算においても、農林水産物の輸出の拡大、次世代を担う経営感覚にすぐれた担い手の育成、中山間地域の農業所得の向上などに必要な対策を盛り込んでおります。

 さらに、生産資材及び農産物の流通、加工構造の改革の具体策や農業経営のセーフティーネットとなる収入保険制度の検討に当たり、公明党とも緊密に連携しつつ、年内を目途に改革プログラムを取りまとめます。

 農政新時代を実現し、夢や情熱を持って農業の未来に挑戦する方々を全力で応援してまいります。

 北朝鮮の核・ミサイル開発及び拉致問題についてお尋ねがありました。

 北朝鮮の核実験及び弾道ミサイルの発射は許しがたい暴挙であり、断じて容認できません。

 今回の核実験は、相次ぐ弾道ミサイル発射と相まって、新たな段階の脅威であり、これに対する対応も、全く異なるものでなければなりません。

 北朝鮮に対して、このまま核やミサイルの開発を続けていけば、ますます国際社会から孤立し、その将来を切り開くことができないということを理解させなければなりません。

 我が国は、非常任理事国として、各国による安保理決議の厳格な履行の確保及び新たな安保理決議の採択に向け、米国、韓国、中国、ロシア等と緊密に連携しながら、リーダーシップを発揮してまいります。北朝鮮への人、物資、資金の流れを厳しく規制する新たな安保理決議、そして我が国独自の措置により、断固たる対応をとっていく決意です。

 また、北朝鮮の核、ミサイルの脅威に対処するため、同盟国たる米国と緊密に連携するとともに、安全保障分野での日韓協力をより一層進めてまいります。

 拉致問題は安倍政権の最重要課題です。一日も早い全ての拉致被害者の帰国に向け、北朝鮮が真剣に対話に応じるよう、厳しい圧力をかけながら、対話と圧力、行動対行動の原則のもと、全力を尽くしてまいります。

 日中、日韓関係の改善に向けた取り組みについてお尋ねがありました。

 G20の際に、習近平主席と三回目の首脳会談を行い、戦略的互恵関係の考え方のもと、日中関係をさらに安定的に発展させていくことで合意いたしました。

 来年の日中国交正常化四十五周年や再来年の日中友好条約締結四十周年、二〇二〇年、二二年に両国で開催されるオリンピック・パラリンピックを見据えて、交流を進めていくことが重要であることを確認しました。

 東アジア・サミットの際には、朴槿恵大統領と首脳会談を行い、昨年末の慰安婦問題に関する合意を引き続き双方が誠実に実施していくことで一致し、未来志向の協力を進め、相互の信頼のもとに日韓新時代を築いていくことを確認しました。

 年内に我が国で開催する予定の日中韓サミットを弾みとして、中国、韓国との関係をさらに発展させていきたいと考えています。

 北方領土問題と日ロ関係についてお尋ねがありました。

 戦後七十年以上を経てもなお平和条約が締結されていない異常な状態を打開するため、首脳同士の信頼関係のもとに解決策を見出していく必要があります。

 プーチン大統領との間では、五月のソチにおける首脳会談で、これまで停滞してきた交渉に突破口を開くため、未来志向の考え方に立って、今までの発想にとらわれない新しいアプローチで交渉を精力的に進めていくことで一致いたしました。

 そして、今月のウラジオストクにて行った通算十四回目となる首脳会談では、二人で突っ込んだ議論を行い、交渉を具体的に進めていく道筋が見えてくるような手応えを強く感じました。

 また、先般の首脳会談においては、八項目の協力プランの具体化を初めとする、経済や安全保障分野を含む日ロ協力の現状や今後の見通し等について、意見交換を行ったところです。

 これらの分野を含め、幅広い分野で日ロ関係を国益に資するような形で進めていく中で、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべく、引き続きロシア側との間で粘り強く交渉に取り組んでいく考えであります。

 十二月に予定する山口県での日ロ首脳会談では、こうした考えに基づき、静かな雰囲気の中で率直に議論し、平和条約締結交渉を前進させてまいります。

 東日本大震災からの復興の加速、福島の再生についてのお尋ねがありました。

 井上議員におかれては、公明党の東日本大震災復興加速化本部長として、累次にわたり与党提言の取りまとめを主導していただいており、改めて感謝申し上げたいと思います。

 必要なことは全てやり遂げるという強い決意のもと、切れ目のない被災者支援や住まいと町の復興、なりわいの再生を進めてまいります。

 特に、福島では、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策について、世界の英知を結集し、国が前面に立って、安全かつ着実に取り組むとともに、県民、国民の皆様の御理解を得られるよう、正確でわかりやすい情報発信を行ってまいります。

 帰還困難区域以外の区域については、来年三月までに避難指示を解除できるよう、環境整備を加速させてまいります。

 帰還困難区域についても、与党の提言を踏まえて八月末に決定した考え方をもとに、年末を目途に具体策を検討し、関係法案の次期通常国会への提出や、来年度予算等に向けて作業を進めてまいります。

 あわせて、御指摘のとおり、継続的な健康調査、リスクコミュニケーションの実施、風評被害対策等に取り組んでまいります。

 東北の復興なくして日本の再生なし。あの大震災、困難な日々を胸に刻みながら、被災地の皆さんと力を合わせ、新しい東北の未来を切り開いてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣石井啓一君登壇〕

国務大臣(石井啓一君) 防災・減災対策の推進についてお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、昨年九月の関東・東北豪雨や本年八月からの一連の台風災害による広範囲にわたる浸水、本年四月の熊本地震における住宅の損壊、高速道路、新幹線の通行どめ、運行休止など、地域に深刻な影響を与える大きな災害が続いております。

 これらを踏まえ、我が国の国民生活の安全、安心の確保と持続的な経済成長を支えるために、防災・減災対策をハード、ソフトの両面からしっかりと進めていく必要があります。

 大規模災害につきましては、おのおのの災害で想定される具体的な被害の特性に合わせて、避難路、避難場所の整備、ゼロメートル地帯の堤防の耐震化、防災ステーションなど防災拠点の整備、避難所におけるマンホールトイレの整備、水防組織や地域住民と連携した防災訓練の実施や支援等、実効性のある対策を推進してまいります。

 特に、大規模水害につきましては、施設では守り切れない大洪水は必ず発生するとの考え方に立ちまして、決壊までの時間を少しでも引き延ばす堤防構造を工夫するなどの危機管理型のハード対策、自治体の的確な判断や住民みずからの避難行動等につながるタイムラインの策定、ハザードマップの整備など、ハード、ソフト一体となった取り組みを推進してまいります。

 なお、災害庁の設置につきましては、災害対応を行う組織のあり方について、各省庁にまたがる幅広い観点からの検討が必要な課題であり、大規模災害等が発生した際に、国、地方を通じた関係機関が持てる力を最大限に発揮できる体制を構築することが重要であると考えております。

 このため、今後とも、関係省庁や自治体と連携しながら必要な体制の検討と実践を重ね、その中で、専門的な人材の確保に努めるとともに、災害から国民の命と暮らしを守るため、総合的な防災対策を不断に見直してまいります。

 以上でございます。(拍手)

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議長(大島理森君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。(拍手)

 この間、台風十号を初め風水害が相次ぎました。犠牲となった方々への哀悼とともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。

 農漁業の被害、大震災からの復興途上での中小企業・業者への被害が深刻であり、被害実態にふさわしい支援を求めます。三十二名もの命が奪われ、六名が行方不明となっています。風水害から命を守るために防災対策と避難計画の総点検が必要だと考えますが、いかがですか。

 熊本地震から五カ月。住宅再建は切実な課題ですが、一部損壊と認定されますと一切の支援策が断たれることが大問題となっております。被災者生活再建支援法を改正し、全壊の場合の支援額を三百万円から五百万円に引き上げること、半壊、一部損壊も支援対象にすることを強く求めます。

 総理は、熊本地震の際、前例にとらわれず、必要な支援をちゅうちょしないと発言されました。今こそ、前例にとらわれない支援に踏み出すべきではありませんか。答弁を求めます。

 安倍政権が、昨年九月十九日、安保法制、戦争法を強行してから一年。この法制は全面的な運用段階に入ろうとしています。八月二十四日、稲田防衛大臣は、安保法制に基づく自衛隊の新任務の訓練に全面的に着手していくと表明しました。九月十二日、総理は、自衛隊幹部を前にした訓示で、今こそ実行のときだと号令をかけました。

 ところが、総理は、所信表明で、安保法制について一言も触れませんでした。安保法制は、総理も認めているように、国民の理解を得ることなく強行可決されたものです。その運用まで国民の理解を求めることなく強行するつもりでしょうか。

 政府は、南スーダンPKOに派遣する自衛隊に駆けつけ警護や宿営地共同防護など安保法制に基づく新任務を付与することを想定し、訓練を開始しましたが、武器使用基準などを定めた部隊行動基準も、いかなる訓練を行っているかも一切明らかにしていません。全て国民に隠して事を進めるつもりでしょうか。当然、国会に報告すべきではありませんか。答弁を求めます。

 南スーダンでは、七月、首都ジュバで大統領派と副大統領派による大規模な戦闘が起こり、民間人数百人が死亡し、副大統領が国外に脱出するなど、内戦の悪化が深刻になっています。自衛隊の宿営地の隣のビルで二日間にわたって銃撃戦が起こり、宿営地内で複数の弾痕が確認されるなど、自衛隊は危険と隣り合わせで活動しています。この事態に際して、国連安保理は八月、四千人のPKO部隊の増派を決め、この部隊には事実上の先制攻撃の権限が与えられました。

 総理は、ことし一月の私の本会議質問に対して、南スーダンPKOの活動地域において武力紛争が発生しているとは考えておらず、派遣の前提となるPKO参加五原則は維持されていると答弁しました。しかし、今起こっているのは、紛れもない内戦そのものではありませんか。紛争当事者間の停戦合意を初めとするPKO参加五原則は、もはや総崩れではありませんか。

 安保法制に基づいて自衛隊に新任務を付与し、任務遂行のための武器使用を認めるならば、南スーダンが、殺し、殺される初めてのケースとなる深刻な危険があると考えますが、いかがですか。

 南スーダンにおける安保法制の発動は中止すべきです。自衛隊を南スーダンから撤退させ、日本の貢献は、憲法九条に立った非軍事の人道支援、民生支援の抜本的強化へと転換すべきです。総理の明確な答弁を求めます。

 日本共産党は、憲法違反の安保法制、戦争法を廃止し、立憲主義を取り戻すために、他の野党、広範な市民の運動と協力し、全力を挙げることを表明するものであります。

 暮らしと経済の問題について質問します。

 総理は、所信表明で、アベノミクスによって経済の好循環が生まれていると自画自賛しました。しかし、日本経済の六割を占める個人消費は、二〇一四年度、一五年度と、戦後初めて二年連続マイナスとなりました。月ごとで見ても、家計消費は、昨年九月以来、二月のうるう年効果を除けば十一カ月連続で前年比マイナスが続いています。好循環どころか、アベノミクス不況ともいうべき状況に陥っているのが事の真相ではありませんか。

 安倍政権は、参院選直後に、二十八兆円を超える大規模な経済対策を打ち出しました。政権発足以来最大規模となる経済対策、景気対策を打たねばならない。そのこと自体、日本経済の悪化をみずから認めるものではありませんか。

 しかも、この経済対策は、リニア建設への巨額の公的資金投入を初め、借金頼みの大型開発へのばらまきという、破綻が証明された対策が中心です。

 リニア新幹線は、それ自体が、巨額の建設費、採算見通しのなさ、環境破壊など、さまざまな問題点を持っています。大体、この事業は、JR東海が民間資金で行うとしていた事業であり、公的資金を投入しても工事量がふえるわけではありません。

 当面の経済対策として、一体どのような効果が見込まれるというのですか。採算がとれなくなった場合に国民が負担を肩がわりする、国民にリスクを肩がわりさせるだけではありませんか。答弁を求めます。

 大企業がもうかればいずれは国民の暮らしに回ってくるというアベノミクスの破綻は、今や明瞭です。日本共産党は、国民の暮らしを応援して経済をよくする、次の三つのチェンジを提案するものです。

 第一は、税金の集め方のチェンジです。

 消費税頼みの財源論が行き詰まっていることは、八%への増税が家計消費と日本経済への甚大な打撃となり、二度にわたって一〇%への増税を延期せざるを得なくなっていることからも明らかです。一〇%への増税は中止し、消費税に頼らない財源論へのチェンジが必要です。

 株取引にかかる税金が軽いため、所得一億円を超える富裕層ほど所得税の負担率が軽くなるという逆転現象が生まれています。研究開発減税など専ら大企業が使う優遇税制のため、法人税の実際の負担率は、中小企業の二〇%程度に対して大企業は一二%程度になるという逆転現象が生まれています。

 総理、これは誰がどう考えても不公平ではありませんか。この不公平を正し、税金は負担能力に応じての原則に立った税制改革で暮らしを支える財源を賄うべきだと考えますが、いかがですか。答弁を求めます。

 第二は、税金の使い方のチェンジです。

 国民からお預かりした大切な税金は、まず、社会保障、若者、子育てに優先して使う、これが日本共産党の提案です。

 社会保障をめぐって、医療、介護、生活保護などの大改悪案が政府の審議会で出され、来年度の予算案や法案で具体化されようとしていることは極めて重大です。

 介護保険では、要支援一、二と認定された人の保険給付外しに続いて、要介護一、二と認定された人のデイサービス、ホームヘルパー、介護ベッド、車椅子などの福祉用具貸与などの保険給付外しが具体化されようとしています。全額自己負担となれば、負担は十倍です。

 日本ホームヘルパー協会は、この動きに強く反対して、次のように述べています。

 初期段階における専門性の高い生活援助サービスの提供こそが、利用者の気力の衰えの回復や交流不足を補い、生活の再生、状態の維持改善、悪化の防止につながり、わずかな支援で高齢者が自分らしく暮らす期間を長くすることができる助けになっていることを介護の実践を通じて確信しております。また、それは、将来の介護給付費削減につながると認識しております。

 総理、日々、介護の最前線で頑張っておられる専門家のこの声をどう受けとめますか。要支援一、二と要介護一、二を合わせれば、要支援、要介護と認定された人全体の六五%を超えます。高い保険料を徴収しながら、六五%以上の方から保険給付を取り上げるというのは、国家的詐欺と言うほかないではありませんか。

 社会保障の拡充は、何よりも憲法二十五条の要請です。社会保障の切り捨て計画を中止し、社会保障拡充路線に転換することを強く求めるものです。

 総理は、所信表明で、給付型の奨学金の実現を図ると述べましたが、どのような規模の制度にするかが問題です。

 日本共産党は、月額三万円の給付奨学金を七十万人の学生に支給する制度を創設し、規模を拡大していくことを提案しています。制度をスタートさせる上で必要最小限の提案だと考えますが、いかがですか。

 総理は、所信表明で、保育の受け皿整備を加速すると述べましたが、規制緩和による詰め込みではなく、保護者が安心して預けられる保育が必要です。

 日本共産党は、三十万人分の認可保育所の緊急整備の提案をしております。野党共同で、保育士の給与を月額五万円引き上げる法案を提出しています。未来への投資という総理の言葉が真実なら、これらの提案は余りに当然のものではありませんか。答弁を求めます。

 第三は、働き方のチェンジであります。

 総理は、所信表明で、働き方改革を行うとして、長時間労働の慣行を断ち切ると述べました。本気でこれに取り組むというのなら、二つのことをやるべきです。

 一つは、残業時間の上限を法律で規制する労働基準法改正です。残業は、月四十五時間、年間三百六十時間以内という大臣告示を法定化することを強く求めます。

 いま一つは、サービス残業、ただ働きを根絶するために、違法なただ働きが発覚したら残業代を二倍にして払わせる罰則を科すということです。ここに踏み込む意思はありますか。

 同時に、長時間労働をなくすというなら、残業代ゼロ法案を撤回すべきであります。

 この法案は、成果で賃金を払うことと一体に、労働時間規制をなくし、残業代支払い義務をなくしてしまおうというものです。そんな制度が導入されれば、とめどもない長時間労働が強制され、過労死をひどくすることは明らかではありませんか。この悪法はきっぱり撤回することを強く求めるものです。

 総理は、所信表明で、非正規という言葉を一掃すると述べました。しかし、一掃すべきは、言葉ではなく、使い捨てという働かせ方ではありませんか。改悪に次ぐ改悪を積み重ねてきた労働者派遣法を抜本改正し、非正規から正社員への流れをつくる雇用のルールの強化を図るべきではありませんか。

 日本共産党は、財界のもうけのために働く者を犠牲にするにせの改革ではなく、労働者の命、健康、権利を守る本物の改革を強く求めるものであります。

 安倍政権は、この臨時国会で、TPP協定の批准を強行しようとしています。

 多国籍企業がグローバルにもうけるために、各国の国内産業、雇用、国民生活を犠牲にするTPPの矛盾は、他のTPP参加国の国内でも広がっています。

 アメリカでは、大統領候補がそろって現行のTPP協定案反対を公約にしています。参加国のGDPの六割を占めるアメリカが承認しない限り、現行TPP協定は発効しません。総理は、協定発効へのどういう見通しを持っているのですか。当選を果たした大統領が公約をたがえるとでも考えているのですか。答弁を求めます。

 TPPにかかわって、この間、新たな大問題が発覚しました。輸入米の価格、SBS価格が偽装されていたという問題です。

 政府はこれまで、輸入米の国内販売価格は国産米と同水準だから、TPPで米は影響を受けないと説明してきました。ところが、その輸入米の価格が偽装され、政府の公表より、六十キロで最大三千六百円も安く販売されていたという事実が明らかになったのです。TPPによる影響の政府試算の前提が崩れたんです。

 さらに、農水省は、二年も前にこの価格偽装の情報を得ていたことを認めています。だとすれば、政府は、真相を隠し、国民を欺いてきたことになるではありませんか。真相の徹底究明と、誤った前提に基づく政府試算の撤回を求めます。

 さきの参議院選挙では、TPPが一大争点となった東北で、自民党は、六県中五県で野党統一候補に敗北しました。総理はこの民意をどう受けとめておられますか。

 日本共産党は、日本の食料と農業、食の安全、経済主権を多国籍企業に売り渡すTPP協定の批准に断固反対して、闘い抜く決意を表明するものです。

 安倍政権の沖縄に対する強権的な振る舞いは、常軌を逸したものです。

 安倍政権は、参院選直後、人口百四十人の東村高江地区に全国から五百人もの機動隊を動員して、反対する住民を力ずくで排除し、米軍オスプレイ着陸帯建設を強行しています。警察が生活道路を封鎖する、自衛隊ヘリが外から重機を運び込む、防衛局が無断で国有林を大量伐採する、どれも違法行為そのものじゃありませんか。

 辺野古の米軍新基地建設をめぐっても、安倍政権は、総務省の国地方係争処理委員会が国と県との真摯な話し合いを求めたにもかかわらず、話し合いによる解決を放棄し、県を一方的に提訴するという暴挙に打って出ました。これは、国と自治体が対等、協力の関係であることを定めた地方自治法を根底からじゅうりんする態度ではありませんか。

 参議院選挙では、辺野古新基地建設反対のオール沖縄の伊波洋一候補が自民現職閣僚を十万票を超える大差で破って勝利し、沖縄選出の衆参六名の国会議員の全員がオール沖縄の議員となり、自民党議員はゼロになりました。

 総理、選挙でこの上なく明瞭な民意が示されているにもかかわらず、それを一顧だにしない態度が民主主義の国で許されると考えているのですか。

 問われているのは、日本の地方自治、民主主義の根本です。しかと答弁を願いたい。

 北朝鮮の核実験は、弾道ミサイル発射とともに、世界の平和と安定にとっての重大な脅威であり、国連安保理決議違反の暴挙であって、我が党は厳しく糾弾するものです。

 北朝鮮の核・ミサイル開発に国際社会がどう対応すべきか。二つの点が大切だと考えます。

 第一は、軍事対軍事の危険な悪循環でなく、対話による解決に徹することです。

 三月の国連安保理決議では、制裁措置の強化とともに、六カ国協議の再開を強く呼びかけました。核・ミサイル開発を放棄させるために、北朝鮮を六カ国協議という対話のテーブルに着かせる、そのために、中国を含む国際社会が一致して制裁の厳格な実施、強化を図ることなど、政治的、外交的努力を抜本的に強めることが重要であります。

 第二は、より根本的には、国際社会が本気になって核兵器のない世界への具体的行動に取り組むことが重要となっています。

 すなわち、核兵器禁止条約の国際交渉開始という方向に進むことが、北朝鮮の核開発の口実を失わせ、核開発放棄を迫る上で急務となっています。国際社会が、我々はもう核を捨てる、だからあなたも捨てなさいと迫ることが、北朝鮮に対して最も強い立場に立つことになるのではないでしょうか。

 今、核兵器のない世界の扉を開く画期的な動きが起こっています。八月、国連の核軍縮作業部会が、核兵器禁止条約の締結交渉を来年中に開始することを国連総会に勧告する報告書を採択したのです。来年中の交渉開始を支持しているのは、国連加盟百九十三カ国の過半数となる百六カ国に上ります。しかし、日本政府は作業部会での採決で棄権しました。

 総理、唯一の戦争被爆国の政府の対応としては、余りに情けないものではありませんか。こうした態度を抜本的に見直すことを強く求めるものであります。

 最後に、憲法改定問題について質問します。

 総理は、参院選投票日の翌日の会見で、いかに我が党の案をベースにしながら三分の二を構築していくか、これがまさに政治の技術と公言しました。

 しかし、自民党改憲案は、憲法九条二項を削除し、国防軍の保持を書き込み、海外での無制限の武力行使を可能にするとともに、公益及び公の秩序の名で基本的人権の大幅な制約を可能にするなど、憲法によって権力を制限するという立憲主義を根底から否定し、憲法を憲法でなくしてしまう恐るべき内容が満載されています。

 総理に伺います。

 この案をベースに憲法審査会で議論するというのが自民党の方針ですか。我が党は、憲法改定の発議をする憲法審査会を動かすことにはもともと反対ですが、自民党改憲案をベースにした議論など、いよいよもって論外と言わなければなりません。

 日本共産党は、現行憲法の前文を含む全条項を守り、特に平和的、民主的諸条項の完全実施を目指すという明確な対案を掲げ、それを綱領で明記しています。今変えるべきは、憲法ではなく、憲法をないがしろにした自民党政治であることを訴え、代表質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 志位和夫議員にお答えをいたします。

 風水害対策についてのお尋ねがありました。

 この夏、北海道、東北地方を襲った一連の台風による災害については、九月十六日、激甚災害に指定し、広範な分野で財政支援等の特例措置を講じたところであります。この特例措置により、農地、農林水産業の施設等の災害復旧事業の支援や、激甚災害の指定を受けた地域の被災中小企業に対する政策金融、信用保証による資金繰り支援を拡充いたしました。

 今後とも、できることは全て行うとの決意のもと、地元自治体と緊密に連携しつつ、被災者の生活再建、なりわいの再建、被災地の復旧復興に全力で取り組んでまいります。

 また、今回の痛ましい事態を踏まえ、都道府県等と連携し、堤防の整備や、地域住民への水害リスクやとるべき避難行動の周知等、総合的な取り組みを加速化するとともに、地域の防災計画を再点検し、改善すべき点は可及的速やかに改善してまいります。

 被災者生活再建支援金の増額と支援対象の拡充についてのお尋ねがありました。

 被災者生活再建支援制度は、自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた方に対し、全都道府県の相互扶助及び国による財政支援により最大三百万円の支援金を支給するものです。

 このような制度の趣旨からすれば、支給対象の拡大や支給額の引き上げについては、他の制度とのバランス、国や都道府県の財源負担などを勘案して慎重に検討すべきものと考えます。

 他方、住宅に半壊の被害を受け、みずからの資力では応急修理ができない方に対しては、災害救助法に基づく応急修理の支援が行われています。また、一部損壊の住宅等について、耐震性等を向上させる改修を行う際には、社会資本整備総合交付金等により必要な支援を行っております。

 政府としては、引き続き、被災自治体と一体となって、被災者の方々へのきめ細やかな支援策を講じてまいります。

 平和安全法制についてお尋ねがありました。

 平和安全法制は、二百時間を超える国会審議の結果、内容的にも手続的にも適切に制定されたものと考えています。

 本制度については、ことし一月、この一年間の政府方針について述べた施政方針演説において、平和安全法制の施行に向けて万全の準備を進めます、国民の生命と平和な暮らしを守り抜くという政府の最も重い責任をしっかりと果たしてまいりますと申し上げています。

 本法制は、昨年成立した後、半年後に施行されていることなどから、今回の所信表明演説では改めて個別に取り上げることはしていませんが、この夏の参議院選挙において、我々は平和安全法制の意義について全国各地で訴え、改選議席の過半数を与党が大幅に上回る勝利を得ることができました。国民の皆様の信任を得ることができたと考えています。

 平和安全法制により、日本を守るために日米が互いに助け合うことが可能となり、日米のきずなは一層強固なものになりました。

 ことしに入ってから繰り返されている北朝鮮の核実験及び弾道ミサイル発射への対処に当たっても、日米は、従来よりも一層緊密かつ円滑に連携することができました。

 今後とも、その運用についても、国民の皆様に一層の御理解をいただけるよう、努力を続けてまいります。

 そして、今回の所信表明でも申し上げたとおり、我が国の領土、領海、領空は断固として守り抜く、そして、世界の平和と繁栄に貢献していく決意であります。

 駆けつけ警護等についてのお尋ねがありました。

 駆けつけ警護や宿営地の共同防護など新たな任務については、自衛隊において所要の訓練を開始したところです。

 政府としては、平和安全法制の運用には国会が十全に関与し、国会の民主的統制としての機能を果たすとの五党合意及び国会における附帯決議の趣旨を尊重し、適切に対処してまいります。国民の皆様に一層の御理解をいただけるよう、努力を続ける考えであります。

 なお、南スーダンPKOに派遣する部隊にいかなる任務を付与するかについては、現地の情勢や訓練の進捗状況等を慎重に見きわめながら、総合的に検討してまいります。

 南スーダンPKOについてお尋ねがありました。

 南スーダンの首都ジュバで七月に発生した事態は武力紛争とは考えておらず、現在、現地の情勢は比較的落ちついています。今起こっているのは内戦そのものとの御指摘は当たりません。

 PKO参加五原則は一貫して維持されていると考えています。自衛隊の活動に当たっては、安全を確保しつつ、適切に任務を遂行し得るよう、万全の体制を整えてまいります。

 また、武器の使用は厳格な警察比例の原則に基づき、相手に危害を与える射撃が許されるのは、正当防衛または緊急避難の場合に限られます。殺し、殺されるなどというおどろおどろしいレッテル張りは、全くの的外れであります。

 今後、南スーダンPKOに派遣する部隊にいかなる任務を付与するかについては、現地の情勢や訓練の進捗状況等を慎重に見きわめながら、総合的に検討してまいります。

 これまでも、我が国は、自衛隊派遣のみならず、人道支援や民生支援などで大きな貢献を行い、南スーダンや国連を初め、国際社会から高い評価を受けています。

 今後とも、現地情勢について緊張感を持って注視しながら、国際社会の平和と安定に貢献していく考えであります。

 我が国の経済についてのお尋ねがありました。

 政権交代後、三本の矢の政策を進めることにより、経済の好循環は着実に回り始め、現在は、デフレではないという状況をつくり出すことができました。

 特に、国民生活にとって最も大切な雇用は大きく改善しています。

 具体的には、過去最高水準の企業収益を雇用の拡大、賃金の上昇につなげることにより、就業者数は百十万近く増加、正規雇用も、昨年、八年ぶりにプラスに転じ、二十六万人増加、有効求人倍率は、史上初めて四十七全ての都道府県で一倍を超え、賃上げは、中小企業を含め、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが三年連続で実現しています。実質賃金もプラスに転じ、六カ月連続でアップするなど、経済の好循環が生まれています。

 また、個人消費は、二〇一六年一―三月期、四―六月期と二四半期連続で前期比プラスになるなど、総じて見れば底がたい動きとなっています。

 このような中、企業収益の動向や賃金の増加など、着実に回り始めている経済の好循環に向けた動きについて、それを支出面につなげていくことが重要であります。

 今般閣議決定された未来への投資を実現する経済対策においても、同一労働同一賃金の実現、長時間労働の是正といった働き方改革の推進等により、所得と消費の底上げを図るとともに、IoTビジネスの創出などを支援し、企業の生産性向上へ向けた取り組みにより、未来への投資への加速を進めることとしているところであります。

 こうした対応により、家計が安心して消費できる環境をつくり出すとともに、企業の前向きな動きを引き出し、民需主導の持続的な成長と一億総活躍社会の着実な実現に向けて取り組んでまいります。

 リニア中央新幹線についてのお尋ねがありました。

 リニア中央新幹線については、現下の低金利環境を生かし、財政投融資を活用することで、大阪までの全線開業を最大八年間前倒しし、整備効果を早期に発現してまいります。

 この全線開業により、三大都市圏が一時間で結ばれ、人口七千万人の世界最大の巨大な都市圏が形成されます。我が国の国土構造が大きく変革され、国際競争力の向上が図られるとともに、その成長力が全国に波及し、日本経済全体を発展させるものであります。

 また、早期の全線開業を見越して、沿線地域における民間企業の先行投資、民間都市開発や住環境整備等のまちづくりが誘発されることが期待でき、まさに未来への投資を加速する効果があると考えております。

 今般の貸し付けに際しては、貸付主体となる鉄道・運輸機構において、償還確実性に関する審査を行うとともに、貸し付け後も定期的に会社の財務状況の確認等をしてまいります。

 そもそもJR東海は、収益力の高い東海道新幹線と一体的に経営を行うものであり、貸し付けた公的資金はJR東海より確実に償還されるものと考えており、国民が負担を肩がわりするといった批判は全く当たらないものと考えております。

 消費税率引き上げの中止等についてお尋ねがありました。

 消費税率の一〇%への引き上げは、世界に冠たる社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、市場や国際社会からの国の信認を確保するために必要であり、中止することはありません。その増収分は全額、社会保障の充実、安定化に充てられることとしており、所得の再分配にも資するものであります。

 また、消費税には、税収が安定している、特定の者への負担が集中しないといった特性があり、社会保障費の財源としてふさわしいと考えています。

 金融所得に係る分離課税の税率に関しては、平成二十六年から、上場株式等の配当及び譲渡益について、地方税を含め一〇%の軽減税率を廃止し、地方税を含め二〇%の本則税率としたところです。

 大法人と中小法人の法人税負担率については、どのような計算をされたのか承知しておりませんが、安倍政権のもとで進めてきた法人税改革は、課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げるとの考え方のもと、政策税制や大企業の欠損金繰越控除制度の見直しなどを行ってきたところであります。

 いずれにせよ、公平、中立、簡素の三原則を踏まえつつ、今後の税制のあり方を検討してまいります。

 社会保障と介護保険の見直しについてお尋ねがありました。

 介護保険は、高齢者の自立を支援し、介護の重度化を防ぐことを理念に掲げています。これまでも累次の改正を行い、効果的なサービスの提供を進めてまいりました。

 前回の介護保険法改正では、要支援の方を介護保険の対象外とするのではなく、引き続き介護保険の地域支援事業の対象として、市町村が必要なサービスを地域の実情に応じて効果的かつ効率的に提供できるよう仕組みを見直しました。

 軽度の要介護者に対する生活援助サービスや福祉用具貸与等の支援のあり方については、現在、専門家などで構成される厚生労働省の審議会において、高齢者の自立を支援し、介護の重度化を防ぐ観点からしっかり検討を行っているところです。

 この検討は、介護保険制度の持続可能性を確保しつつ、高齢者の自立を支援し、真に必要なサービスが提供されるようにするためのものです。国家的詐欺との御批判は全く当たりません。

 今後とも、各制度においてきめ細かく配慮を行いながら、憲法二十五条に基づき、国が社会保障の向上、増進に努める責務をしっかりと果たしてまいります。

 給付型奨学金についてお尋ねがありました。

 子供たちの未来が、家庭の経済事情によって左右されるようなことがあってはなりません。希望すれば誰もが大学等に進学できる環境を整えるため、奨学金制度の充実は重要です。

 給付型奨学金については、既にニッポン一億総活躍プランや未来への投資を実現する経済対策を踏まえ、さまざまな御意見を伺いつつ、具体的な検討を進めているところであり、平成二十九年度予算編成過程を通じて、制度内容について結論を得、実現いたします。

 保育の受け皿整備と保育士の処遇改善についてのお尋ねがありました。

 政府としては、待機児童解消加速化プランに基づき、これまでの三年間で三十一・四万人分もの保育の受け皿を整備してきました。これは年平均約十一万人増と、年平均四万人増だった民主党政権時代の二・五倍を超えるペースであります。また、安倍政権になってからは、毎年度、全国の総計で見れば、申込者数の増加を上回る保育の受け皿整備が実現しています。

 各自治体が保育ニーズを再度見直した結果、平成二十九年度末までの五年間の受け皿拡大量は、昨年度時点での計画よりも二・七万人分増加しました。国としては、今回の補正予算を初め、保育の受け皿整備に必要な予算を継続的に確保してまいります。

 保育士の処遇改善については、総合的な保育人材の確保対策の一環として平成二十九年度当初予算に計上し、かつ継続して実施すべく、予算編成過程でしっかり検討してまいります。

 御指摘の法案については、恒久的な財源の確保策が明らかとなっておらず、人材確保のために必要な総合的な対策となっていない点などが問題であると考えています。

 長時間労働是正についてお尋ねがありました。

 誰もがその能力を存分に発揮できる社会をつくる。一億総活躍の未来を切り開いていく、その最大の鍵は働き方改革です。子育て、介護など、多様なライフスタイルと仕事とを両立させるためには、長時間労働の慣行を断ち切ることが必要です。

 私としては、働き方改革実現会議において、労使のトップや有識者に集まっていただき、時間外労働の上限規制の労働基準法のあり方を含め、長時間労働の是正について、働く人の立場、視点に立って議論を進め、年度内に具体的な働き方改革実行計画を取りまとめ、関連の法案を提出します。

 なお、現在提出している労働基準法改正案は、長時間労働を是正し、働く人の健康を確保しつつ、その意欲や能力を発揮できる新しい労働制度の選択を可能とするものであり、残業代ゼロ法案との批判は当たりません。

 非正規雇用を取り巻く雇用環境については、不本意ながら非正規の職についている方の割合は前年に比べ低下しています。働き盛りの五十五歳未満では、二〇一三年から十四四半期連続で、非正規から正規に移動する方が正規から非正規になる方を上回っているなど、着実に改善しています。

 非正規という言葉を日本国内から一掃すると私が言っているのは、どの働き方を選択してもしっかりした処遇を受けられるようにし、人々が自分のライフスタイルに合わせて多様な働き方を自由に選択できるようにするということであります。多様な働き方の選択肢を、処遇の差を気にすることなく選べる社会を実現したいと考えています。

 また、昨年成立した労働者派遣法改正法は、正社員を希望する方にその道が開けるようにするとともに、派遣を積極的に選択している方については待遇の改善を図るものであり、施行状況についてはしっかりと注視し、その目的が達成されるよう努めてまいります。

 TPP発効の見通しについてお尋ねがありました。

 自由で公正な貿易を堅持し発展させる、これこそが世界経済の成長の源泉であります。

 我が国は、戦後、自由貿易のもと経済成長を遂げてきました。米国に追従するのではなく、我が国こそが、世界の自由で公正な貿易・投資ルールの牽引役であり、提唱者でなければなりません。

 TPPは、その中核です。世界の四割経済圏において、つくり手が丹精込めた付加価値が正当に評価されるようになります。TPPによって新たにつくられるルールは、単にTPPにとどまらず、日・EU経済連携協定、RCEPなどにおけるモデルとなるものであります。

 TPPは、参加希望を表明する国々が相次いでおり、潜在的な参加国が数多くあります。TPPが拡大していく機運を積極的につくっていくことこそ、我が国の役割であります。

 米国も発効に向けて努力を続けていると承知しています。大統領選においてTPP協定に関してさまざまな声がある中、現職のオバマ大統領は、今月も、自身の任期中にTPP協定の承認が得られるよう米国議会への強い働きかけを続けていくとの決意を表明しています。

 米国にその努力を続けてもらうためにも、交渉をともに牽引してきた日本が、このタイミングで国内手続を前進させていくことが不可欠だと考えています。

 他の署名国の多くも日本の動きに注目し、日本に期待しています。この国会でやらなければならない、私はこのように考えております。

 国会でTPP協定が承認され、整備法案が成立すれば、再交渉はしないとの立法府も含めた我が国の意思が明確に示されます。これにより、TPP協定の早期発効に弾みを与えることができると考えています。

 米のSBSについてお尋ねがありました。

 TPP交渉においては、米が我が国最大のセンシティブ品目であることを踏まえ、国会決議を後ろ盾にぎりぎりの交渉を行いました。

 その結果、国家貿易制度の維持など多くの例外措置を獲得することができたことから、輸入の大幅な増大は見込みがたいと考えております。

 また、新たに設定される米国、豪州向けのSBSの国別枠において輸入される米については、輸入量に相当する国産米を備蓄米として買い入れることにより、国内の需給及び価格に与える影響を遮断することとしております。

 TPPの影響試算はこのことを前提としたものであり、国民を欺いていたとの指摘は当たらず、撤回の必要はないと考えております。

 なお、一部で報道されているSBSの入札参加事業者間の金銭のやりとりについては、そのような実態があるとすれば、民間事業者間の問題とはいえ、米農家に不信感を生じさせるとの問題も指摘されています。

 このため、農林水産省において、事業者のヒアリング調査や価格動向の分析などを鋭意進めており、可能な限り速やかに公表したいと考えております。

 TPPと民意についてお尋ねがありました。

 選挙結果は、真摯に受けとめたいと思います。

 常々申し上げているとおり、農業は国の基であります。農林水産業に従事する皆様が、毎日、土や水と向き合いながら、伝統あるふるさとを守ってきました。

 他方で、農業の平均年齢は六十六歳を超えました。大切な農業を守るためにこそ、改革を進めなければならない。農政改革を進めたことで、農産物の輸出や若者の新規就農もふえてきました。TPPも契機に、一層の改革を進め、若い農家が将来に夢や希望を持てる農業をつくっていく決意であります。

 そうした考えは、一定の御理解をいただいていると考えています。確かに、東北地方においては、我が党の候補者は、残念ながら当選を果たすことが、多くの候補者ができなかったわけでありますが、例えば全国有数の農業県である熊本県や宮崎の一人区を含め、多くの農業県で自民党の議員が大差で当選を果たしているわけであります。ちなみに、共産党系と言われる野党統一候補にも大差で勝利を果たしました。

 これからも一層の御理解を得られるよう努めてまいります。

 沖縄の基地負担軽減についてお尋ねがありました。

 北部訓練場、四千ヘクタールの返還は、沖縄県内の米軍施設の約二割、本土復帰後、最大の返還です。二十年越しの課題であり、もはや先送りは許されません。

 返還に向けた工事における警察の警備活動や、自衛隊のヘリコプターによる機材の空輸については、関係法令に従って適切に行われたものであり、何ら問題はありません。樹木の伐採についても、一部手続上の問題があったとの報告は受けていますが、違法との御指摘は当たりません。

 また、政府としては、普天間の全面返還に向け、沖縄県との和解内容に誠実に従い、訴訟と協議とを並行して行いながら、解決に向け努力してまいります。

 地方自治法を根底からじゅうりんするとの御指摘が全く当たらないことは、今月十六日の福岡高裁那覇支部の判決からも明らかであります。

 沖縄における選挙の結果については、真摯に受けとめています。その上で、普天間の危険性を除去し、沖縄の基地負担を軽減していくとの思いは、国も沖縄県も同じであり、全く変わらないものと思います。

 この共通の目標に向かって努力している政府の取り組みが、民主主義に反するものとは考えていません。先般の高裁判決においても、普天間の移転は沖縄県の負担軽減に資するものであり、普天間飛行場その他の基地負担の軽減を求める民意に反するとは言えないとされています。

 今後とも、抑止力を維持しながら、沖縄の基地負担軽減に全力を尽くします。一つ一つ、確実に結果を出すことによって、沖縄の未来を切り開いてまいります。

 北朝鮮の核・ミサイル開発及び核兵器のない世界についてのお尋ねがありました。

 北朝鮮の核、ミサイル問題を解決するためには対話が必要であります。事実、私たちは対話を重ねてまいりました。国際社会もそうでありました。しかし、残念ながら、北朝鮮側が、その対話において約束したことを果たしていないのは厳然たる事実であります。

 でありますから、北朝鮮とは、対話のための対話では意味がありません。北朝鮮が真剣に対話に応じるよう、厳しい圧力をかけていく必要があります。対話と圧力、行動対行動の原則のもと、臨んでいく決意であります。

 北朝鮮に対して、このまま核やミサイルの開発を続けていけば、ますます国際社会から孤立し、その将来を切り開いていくことができないということを理解させなければなりません。

 我が国は、非常任理事国として、各国による安保理決議の厳格な履行の確保及び新たな安保理決議の採択に向け、米国、韓国、中国、ロシア等と緊密に連携しながら、リーダーシップを発揮してまいります。北朝鮮への人、物資、資金の流れを厳しく規制する新たな安保理決議、そして我が国独自の措置により、断固たる対応をとっていく決意であります。

 核、ミサイル、そして、引き続き最重要課題である拉致問題に関し、北朝鮮が問題の解決に向け具体的行動をとるよう強く求めてまいります。

 我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向け、国際社会の取り組みをリードしていく使命を有しています。

 核兵器禁止条約について議論が行われた国連の軍縮作業部会においては、我が国は、核兵器のない世界を実現していく上で、核兵器国と非核兵器国双方の協力を得て、現実的かつ実践的な取り組みを積み重ねていくことが不可欠との考えに基づき、積極的に議論に貢献しました。

 今後も、核兵器国と非核兵器国の双方に協力を求めることなどを通じて、核兵器のない世界の実現に向けた取り組みをさらに進めてまいります。

 憲法改正についてのお尋ねがありました。

 憲法改正は、国会が発議し、最終的に国民投票において国民が決めるものであり、どの条文をどのように変えるかは、国民的な議論の末に収れんしていくものであります。

 まずは、憲法審査会という静かな環境において、自民党が草案としてお示しをしているように、各党がそれぞれの考え方を示した上で、真剣に議論し、国民的な議論につなげていくことが必要と考えております。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 馬場伸幸君。

    〔馬場伸幸君登壇〕

馬場伸幸君 日本維新の会の馬場伸幸です。

 私は、日本維新の会を代表し、安倍内閣総理大臣の所信表明演説及び麻生財務大臣の財政演説に対して質問をいたします。(拍手)

 我が党は、政治家みずからの身を切る改革を最優先に掲げ、中央集権の統治機構を根本から見直す、グレートリセットを目指す改革政党です。

 昨年の結党に当たっては、大阪の改革を全国へと広げていく覚悟を示すため、党名をおおさか維新の会とし、七月の参議院選挙では五百十五万票を超える御支持をいただき、参議院の交渉会派として議員立法を提出する権限をいただきました。

 今後、日本全国で改革を進め、さらなる党勢拡大を期するため、先月の党大会において党名を日本維新の会に改めました。

 さきの通常国会の冒頭、我々は提案型責任政党を目指すと申し上げましたが、今国会では、単なる提案にとどまらず、日本維新の会の政策を百本の法律案として具体化することを目指すとともに、重要法案の成立に向けて積極的に交渉を進め、我が党の政権担当能力を示してまいりたいと考えております。

 我々は、政府提出の法律案や予算案などに対し、反対のための反対はいたしません。また、選挙目的や党利党略で、理念、政策を捨ててまで離合集散するようなことも決していたしません。

 誰と組むかではなく、何を実現するかが大事であり、是々非々の立場から政権に向き合ってまいります。誤った政策や足らざるところは厳しく批判しますが、提案型責任政党として建設的な議論に努めてまいります。

 さて、昨今の地方議会に目を転じれば、兵庫県の号泣県議の一件で住民の怒りを買った政務活動費の問題がさらに広がりを見せています。今度は、政務活動費の不正が発覚し、富山県議会議員、市議会議員の辞任ドミノが続いています。

 地方自治法では、政務活動費を支給された議員は議長宛ての収支報告書を提出するよう義務づけており、議長は政務活動費の使途について透明性を確保するよう努めることとなっていますが、実際に収支報告書等を公開するか否かは各議会の裁量によって異なります。

 地方議会での政務活動費の情報公開と運用の現状を安倍総理はいかが御認識でしょうか。また、富山県において地方議員が政務活動費の不正により相次いで辞任している現状について、安倍総理はどのようにお受けとめか、御所見を伺います。

 ちなみに、大阪では、政務活動費の収支報告書や領収書等の写しのほか、海外視察報告書も全て議会ホームページで公開しております。また、東京都議会では、東京維新の会が議員報酬の三割削減を提案しております。

 また、我が党では、自主的な取り組みとして、国会議員の文書通信交通滞在費の使い道をネットで公開しておりますし、寄附金による控除も党の内規で申請できないことになっています。加えて、企業・団体献金も受け取っておりません。

 まず隗より始めよです。国会や国政政党が文書通信交通滞在費の使い道を明らかにするなど透明性を確保し、身を切る改革を率先して進めるべきではないでしょうか。

 我が党は、教育無償化法案、公職に係る二重国籍禁止法案とともに、身を切る改革関連九法案を昨日参議院に提出いたしました。

 具体的には、国民との約束である議員定数の大幅削減を初め、議員歳費の二割削減、議員歳費の自主返納を可能にする、企業・団体献金の禁止、文通費の使途公開、政治資金の使途制限、公務員人件費の二割削減などであります。

 政治と金の問題は個々の政治家の問題として矮小化されがちですが、制度自身を改めることにより根本解決を図らなければ、国民の政治不信は増すばかりです。自民党総裁としてリーダーシップを発揮し、我が党が提案する身を切る改革の実現に取り組まれることを期待しますが、安倍総理はその意思をお持ちか、お伺いいたします。

 公務員人件費については、ことし八月、三年連続となる公務員給与の引き上げを人事院が勧告しました。官民給与の比較方法等に問題のある勧告に国民の理解が得られるか甚だ疑問です。

 そもそも、昨年八月の人事院勧告及び昨年の給与法改正による給与引き上げに、公務員の給与カットの法案を出していたはずの民進党を含む与野党は賛成し、我が党は反対をいたしました。さらに、大阪府では職員の給与引き上げを見送りました。

 そこで、安倍総理にお伺いいたします。

 国の借金が膨らんでいく中で、公務員給与について、人事院勧告に従い三年連続で引き上げを行うのか否か、お伺いをいたします。

 政治資金の問題については、民進党の前政調会長である山尾議員の政党支部が選挙区内の有権者に渡す花代などを支出していたことが問題となりました。

 政党支部を通じたこうした公選法違反の疑いを持たれる行為を禁ずるため、我が党は、昨日、政治家本人や後援団体の寄附と同様に、選挙区支部から選挙区内の者への寄附を禁止する法案を参議院に提出しました。

 民進党代表選で、蓮舫新代表は、日本維新の会を念頭に、行革は我々の原点、まがいもののようなところに持っていかれてはいけないと発言しました。

 我が党は、大阪で、身を切る改革も徹底した行革も実行しましたが、旧民主党政権はどちらも行いませんでした。どちらがにせもの、まがいものかは一目瞭然です。民進党が改革政党に生まれ変わろうとするならば、我が党の選挙区支部寄附禁止法案に反対する理由はないはずです。

 また、さきの参議院選挙の際には、舛添前都知事による政治資金の公私混同が大きな問題となりました。

 そこで、我が党は、昨日、政治資金の個人的支出を禁止し、個人的支出に該当するかを第三者機関が調査するという法案も提出をいたしました。

 そこで、安倍総理にお伺いします。

 政治家の後援会が選挙区内の有権者に寄附をするのは既に禁止されているのに対し、政党支部からの同様の寄附は許されていますが、おかしくないでしょうか。我が党の法案のように、政党支部からの選挙区内の寄附も禁止すべきではないでしょうか。また、政治資金の使い道に制限がない現状は、国民の政治に対する信頼を大きく損ねているのではないでしょうか。

 我が党の政治資金使途制限法案を成立させ、政治への信頼を回復すべきではないか、御所見をお伺いいたします。

 さて、政治家が襟を正すべき問題は、政治と金の問題にとどまりません。

 民進党の蓮舫新代表の件で国民の知るところとなった二重国籍の問題についても、政治家は、国益のため、国民のために、国籍法上の義務はもとより、しかるべき説明責任を果たすべきです。

 現行法でも、二重国籍者は外交官にはなれません。日本と外国の二つの国籍を持った者が外交に携われば、我が国と当該国で利害対立があれば、国益が損なわれるおそれがあるからです。

 これに対し、国会議員については、二重国籍者でも立候補できますし、外交交渉を行う閣僚や総理大臣に就任する可能性もあります。国会議員の国籍につき、外交官に係る制度と同様の趣旨で制限を設けることは、不自然ではありません。

 こうした観点から、我が党は、まず、公職選挙法を改正して、被選挙権の国籍要件を明確にする、公職に係る二重国籍禁止法案を国会に提出いたしました。

 そこで、安倍総理にお伺いいたします。

 二重国籍者が外交官になれないのに対し、国会議員にはこの点に何の制約もない現状をいかが御認識でしょうか。二重国籍者について、国政選挙での被選挙権等に一定の制限を課すべきではないでしょうか。御認識をお伺いいたします。

 次に、TPPについてお伺いいたします。

 旧民主党政権はTPPを推進し、野党時代の自民党は聖域なきTPP参加には反対の立場をとりました。自民党が政権を取り戻すと、安倍自民党政権はTPPを推進し、交渉を妥結させました。逆に、野党となった旧民主党、現在の民進党は、TPP反対に転じています。

 これに対し、我が党は、TPPは一貫して推進の立場をとってきました。アジア太平洋地域での貿易・投資ルールを日米主導で自由で公正なものに変えることは、経済上も外交、安全保障上も重要だからです。

 しかし、今のアメリカでは、TPP反対論が優勢です。大統領選挙での有力な二候補はいずれもTPPに反対で、連邦議会でもTPP反対派が優勢です。ふだん日米同盟を批判する日本の複数の政党が、TPP反対論に限ってはアメリカ追随を始めるほどです。

 我が国がTPP協定の発効を目指すに当たっては、今後のアメリカの動向に十分に留意し、見通しをしっかり立てていく必要があります。

 そこで、安倍総理にお伺いいたします。

 アメリカでのTPP協定承認に係る見通しについて、どのように御認識されているのでしょうか。また、アメリカの現状を踏まえ、この臨時国会でTPP協定の承認、関連法案の成立を目指すことが、最終的なTPP発効にどうつながるのか、御認識をお伺いいたします。

 次に、補正予算案についてお伺いいたします。

 今回の補正では、東京―大阪間のリニア新幹線の全線開通前倒しのための財政投融資が盛り込まれました。

 我が党は、東京一極集中を打破して多極分散型の国家を実現するため、まずは東京と大阪の二極が手を携えて発展することを目指すべきであると考えています。

 この考えのもと、さきの通常国会の予算委員会において、我が党は、具体的な方策を申し上げ、全線開業の前倒しを提案いたしました。政府の提案は、我々の考え方をベースにされたものとして、基本的に賛成できます。

 そこで、安倍総理にお伺いいたします。

 東京と大阪の二極がハブとなって発展し、それを日本経済全体の発展につなげるためには、リニアの全線開業前倒しに加え、国際的なビッグイベント開催も極めて有効と考えます。

 二〇二〇年には東京でオリンピック・パラリンピックが行われます。その後の日本全体の持続的な経済成長のためには、その五年後、二〇二五年の日本での万博、博覧会の大阪への誘致につき、政府としても積極的な支援をすべきではないでしょうか。安倍総理の御認識をお伺いいたします。

 次に、教育無償化についてお伺いいたします。

 我が党は、ことし三月に発表した憲法改正原案に教育無償化を掲げました。改正原案の二十六条一項において、経済的理由によって教育を受ける機会を奪われないことを明記し、二項では、幼児教育から高等教育までの学校教育を法律の定めるところによって無償にするとしています。

 教育無償化を憲法上の制度とすれば、国はこれを実現するための立法や予算措置を行う義務を負います。また、憲法に定めることで、その時々の政権の判断に左右されずに、教育は無償であり続けることになります。

 我が党は、以上の理由から、教育無償化は憲法にこそ明記すべきと考えています。

 これに対し、参議院選挙中の討論会で他党より、教育を無償化するためには法律で十分で、憲法改正は必要ないといった反論をいただきました。

 我が党としては、さきに述べたとおり、教育無償化を最も確実に、安定的に実現できるのは、憲法に定めることと考えております。憲法改正が必要ないと主張される会派でも、法案であれば反対される理由はないはずです。

 以上のように考え、昨日、我が党は、幼児教育から大学までの授業料を無償化する教育無償化法案を提出いたしました。各会派には、ぜひとも成立に御協力をいただきたいと考えております。

 また、政府は、幼児教育無償化や私立小中への授業料補助の実施を目指しておられます。政府も我が党と方向性は一致していると考えますので、我が党の提案を真摯に御検討いただくようお願いいたします。

 そこで、安倍総理にお伺いします。

 教育無償化こそが未来への投資として最も有効な施策ではないでしょうか。

 我が党の試算では、幼児教育から大学まで授業料の無償化に要する費用は、毎年約四兆円であります。公務員人件費削減や歳出削減など行財政改革を断行し、めり張りのある予算配分を行えば実現可能な話と考えますが、御所見をお伺いいたします。

 最後に、憲法改正についてお伺いします。

 我が党は、日本国憲法の三原則はしっかりと守り、少子高齢化といった具体的な課題を解決していくために、憲法をよりよくしていくことが求められていると考えています。

 我が党は、さきに述べた教育の無償化とともに、東京一極集中を打破し、自治体権限を強化する統治機構改革と、さらに、昨年の安保国会のような違憲、合憲に特化した不毛な議論を避けるための憲法裁判所の設置という三項目につき、既に憲法改正原案をまとめ、公表しております。

 今後、我が党は、この改正原案の実現に向けた取り組みを強化するとともに、各党が憲法について忌憚なく議論できる環境づくりに尽力したいと考えております。

 そこで、安倍総理にお伺いします。

 総理は、所信表明演説で、与野党の立場を超え、憲法審査会での議論を深めていこうではありませんかと呼びかけられました。総理の言われるとおり、今国会中に憲法審査会を再開し、各党が具体的な提案を持ち寄って、憲法改正の発議を行うか否かの議論について開始すべきと考えますが、改めて御認識をお伺いします。

 最後に、日本維新の会は、真の改革政党、提案型責任政党として、身を切る改革、徹底行革、統治機構改革を実現し、国会においては真摯で建設的な議論を行い、議員立法の提案、提出を通じた政策実現を本気で目指すことをお誓いして、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 馬場伸幸議員にお答えをいたします。

 地方議会の政務活動費をめぐる現状についてのお尋ねがありました。

 政務活動費については、地方自治法上、議長が使途の透明性の確保に努める義務を負っており、各地方議会において、住民に対する説明責任の徹底や使途の透明性の向上を図るための不断の努力が求められていると承知しております。

 今回の富山県での不正による相次ぐ議員辞職については、地方議会みずからの取り組みを通じて住民の信頼回復に努めていただきたいと考えております。

 身を切る改革についてお尋ねがありました。

 我々政治家は、政策を実現するため、真摯に努力を続け、国民の負託に応えていかなければなりません。国民の皆さんにさまざまな御負担を求める以上、我々政治家も常にみずからを省みる必要があることは当然であり、御党がそうした観点からさまざまな具体的な提案をしておられることにつきましては、敬意を表したいと思います。

 その上で申し上げるとすれば、議員定数の問題を含め政治に要する費用の問題は、議会政治や議員活動のあり方、すなわち民主主義の根幹にかかわる重要な課題であり、国会において国民の代表たる国会議員が真摯に議論を行い、国会において合意を得る努力は行わなければならない問題であると考えております。

 公務員の給与についてお尋ねがありました。

 労働基本権が制約されている国家公務員の給与については、その代償措置である人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢のもと、民間の水準を踏まえて決定されております。

 本年の人事院勧告を受けて、現在、国政全般の観点から検討を進めております。

 なお、人事院が行っている官民比較の手法については、調査対象企業の規模も含めて、人事院において専門的見地から判断されるものであると考えております。

 政治資金の使途制限についてお尋ねがありました。

 公職選挙法においては、金のかかる選挙を是正するため、寄附禁止の規定が設けられ、順次強化されてきたものと承知しております。

 その結果、現在、当該選挙区内にある方に対する寄附は、政治家本人によるものは原則として禁止されておりますが、政党支部については、政治家個人の後援団体には当たらないと解されているため、政治家本人の氏名を表示する場合等を除き、寄附の制限はないものとされています。

 いずれにせよ、政党支部からの寄附を含め、政治団体の支出の制限のあり方については、まさに選挙制度の根幹、政治活動の自由にかかわる事柄であり、各党各会派においてしっかりと御議論いただくべきものと考えております。

 二重国籍者の被選挙権についてお尋ねがありました。

 二重国籍者は、御指摘のとおり、外交官になることはできません。外交交渉においては国益と国益がぶつかるからであります。

 他方、現行の公職選挙法上、日本国民で年齢要件を備えている者は、法定の欠格事項に該当しなければ被選挙権を有することとされており、二重国籍者に関する規定は設けられておりません。

 被選挙権の取り扱いについては、民主主義の土台である選挙制度の根幹にかかわる事柄であり、各党各会派において御議論いただくべき事柄であると考えております。

 TPP発効の見通しについてお尋ねがありました。

 自由で公正な貿易を堅持し発展させる、これこそが世界経済の成長の源泉です。

 我が国は、戦後、自由貿易のもとで経済成長を遂げてきました。米国に追従するのではなく、我が国こそが、世界の自由で公正な貿易・投資ルールの牽引役であり、提唱者でなければなりません。

 TPPは、その中核であります。世界の四割経済圏において、つくり手が丹精込めた付加価値が正当に評価されるようになります。TPPによって新たにつくられるルールは、単にTPPにとどまらず、日・EU経済連携協定、RCEPなどにおけるモデルとなるものです。

 TPPは、参加希望を表明する国々が相次いでおり、潜在的な参加国が数多くあります。TPPが拡大していく機運を積極的につくっていくことこそ、我が国の役割であります。

 米国も発効に向けて努力を続けていると承知をしております。大統領選挙においてTPP協定に関してさまざまな声がある中、現職のオバマ大統領は、今月も、自身の任期中にTPP協定の承認が得られるよう米国議会への強い働きかけを続けていくとの決意を表明しています。

 米国にその努力を続けてもらうためにも、交渉をともに牽引してきた日本が、このタイミングで国内手続を前進させていくことが不可欠だと考えています。

 他の署名国の多くも日本の動きに注目し、日本に期待しています。この国会でやらなければならない、こう考えております。

 国会でTPP協定が承認され、整備法案が成立すれば、再交渉はしないとの立法府も含めた我が国の意思が明確に示されます。これにより、TPP協定の早期発効に弾みを与えることができると考えております。

 国際博覧会についてお尋ねがありました。

 国際博覧会の国内への誘致は、日本の魅力を世界に発信する絶好の機会となります。開催地のみならず、我が国各地を訪れる観光客が増大し、地域経済が活性化する起爆剤になることが期待されます。

 大阪府が二〇二五年の国際博覧会の誘致に取り組んでいることは承知しています。

 国際博覧会を誘致するに当たっては、地元の支持の状況、テーマや期間、収支計画等について、国が博覧会国際事務局の審査を受けることになるため、これらを具体化し、他国と競争できるような内容とすることが求められます。このため、大阪府がこの秋にも策定する予定の基本構想の内容をよく伺い、しっかりと検討を進めてまいります。

 教育の無償化についてお尋ねがありました。

 子供、若者こそ、我が国の未来です。子供たちの未来が、家庭の経済事情によって左右されるようなことがあってはなりません。このような思いについては、御党とも共有しているのではないかと考えております。

 政府としては、これまでも幼児教育無償化の段階的推進、奨学金制度の充実、授業料免除の拡大などに取り組んできたところであり、今後とも、教育費負担の軽減に努めてまいります。

 憲法改正についてのお尋ねがありました。

 憲法改正は、最終的には国民投票によって国民が決めるものですが、まずは、国会の憲法審査会という静かな環境において各党が真剣に議論し、国民的な議論につなげていくことが必要と考えております。

 その際、大切なことは、御党のように、各党がそれぞれの考え方を具体的に示すことであります。憲法改正について真摯に議論しようとされている御党を初め、各党との間で、建設的な議論が進められることを期待しております。(拍手)

副議長(川端達夫君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

    〔副議長退席、議長着席〕

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 御報告することがあります。

 議員鳩山邦夫君は、去る六月二十一日逝去されました。痛惜の念にたえません。謹んで御冥福をお祈りいたします。

 鳩山邦夫君に対する弔詞は、議長において去る七月十二日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力され 特に院議をもってその功労を表彰され さきに文教委員長 議院運営委員長 地方創生に関する特別委員長等の要職につき またしばしば国務大臣の重任にあたられた議員正三位旭日大綬章 鳩山邦夫君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

    ―――――――――――――

 故議員鳩山邦夫君に対する追悼演説

議長(大島理森君) この際、弔意を表するため、二階俊博君から発言を求められております。これを許します。二階俊博君。

    〔二階俊博君登壇〕

二階俊博君 ただいま大島議長から御報告のありました、本院議員鳩山邦夫先生は、去る六月二十一日、御逝去されました。まだ六十七歳の若さでありました。

 先生の急逝の報に接しましたときには、誰もが同じ思いでありましょうが、驚きの余りにただ絶句するばかりでありました。亡くなられる一時間ほど前までは御家族の方々と普通にお話をされておられたと伺っております。突然の出来事にお身内の皆様や関係者の深い悲しみはいかばかりであったかと今なお察するに余りあり、お慰めする言葉もありません。

 私は、ここに、ありし日の鳩山先生の面影をしのび、議員各位の御同意を得て、謹んで哀悼の言葉を申し述べさせていただきます。

 鳩山先生は、昭和二十三年九月十三日、文京区音羽の地において、大蔵事務次官、参議院議員、外務大臣を務められた父威一郎先生と母安子様の次男としてお生まれになりました。祖父は鳩山一郎元総理大臣、兄由紀夫氏も元総理であり、鳩山家は、政界では名門中の名門であることは今さら申し上げるまでもありません。

 さかのぼれば、衆議院議長を務められた曽祖父和夫氏は、今でいえば東京大学法学部に当たる法科大学の教頭や、早稲田大学の前身、東京専門学校の校長も務められ、曽祖母春子様は現在の共立女子学園の創設者であり、祖母薫様はその理事長という、類いまれな教育者の御一家でもあります。

 こうした家庭環境に育った鳩山先生は、祖父の鳩山一郎総理大臣が、保守合同による自由民主党の創設と、日ソ国交回復という日本の政治史の大きな転換点にまさに身命を賭して深くかかわられたお姿を見て、小学二年生にして早くも、将来は政治家になることを夢見ていたとのことであります。

 長じて、昭和四十六年三月、先生は東京大学法学部を優秀な成績で御卒業された後、やがて内閣総理大臣となられる田中角栄先生の門をたたき、いよいよ政治家を目指す活動を開始されました。

 当時、田中先生は口癖のように、戸別訪問は三万軒、つじ説法は五万回と語っておられましたが、その先生の真意は、各地域の実情をしっかりと把握しろとのことであったと述懐されております。

 田中先生のもとで政治とは何かを学ばれた鳩山先生は、父威一郎先生の秘書を経て、昭和五十一年十二月の総選挙に無所属で勇躍立候補されました。選挙運動では、田中先生の言葉のとおり、足のまめが潰れ、白い運動靴が血で真っ赤に染まるまで、歩いて歩いて支持を訴え続けられました。そのかいあって、祖父が築かれた盤石な地盤に頼ることなく、二十八歳の若さで見事初陣を飾られたのであります。

 以来、本院議員に当選すること十三回、在職三十七年九カ月の長きに及び、御承知のとおり、平成十五年十月には、永年在職議員として院議をもって表彰を受けられました。

 この間、国政に残された御功績は枚挙にいとまがありません。その一端を御紹介いたしたいと存じます。

 まず、本院においては、議員生活の第一歩を無党派クラブという小会派から出発され、法務委員会に所属されました。今でも、明快な先生のその当時の論旨と、颯爽と質問されておられる御様子は、先輩議員の語りぐさであります。当選一回の議員ながら既に論客の風格を感じさせるものがあったと言われております。

 以後、法務、文教、予算などの各常任委員会や、倫理選挙特別委員会などの重要委員会で、若き理事として各党との折衝に当たられたほか、文教委員長、議院運営委員長、武力攻撃事態への対処に関する特別委員長、地方創生に関する特別委員長などの要職を歴任されました。与野党が対立する難しい法案の取り扱いなどに当たっては、持ち前の円満な人柄により、公平かつ円滑な委員会運営に尽力されました。

 内閣においては、平成三年、宮沢内閣の文部大臣として最年少閣僚で初入閣を果たされました。教育者の家系でもある鳩山家の一員として、祖父一郎先生も御経験された文部大臣に若くして御就任のお喜びは、格別なものがあったであろうと想像されます。その後、平成六年には羽田内閣の労働大臣、自民党に復党されてからは、第一次安倍内閣、福田内閣の法務大臣、麻生内閣の総務大臣として、四度にわたり国務大臣の重責を担われました。

 自由民主党においては、文教部会長、選挙制度調査会長、司法制度調査会長、政治倫理審査会長などを歴任され、卓越した手腕を遺憾なく発揮され、党の中枢にあって、政策づくりの根幹を担われたのであります。さらに、昨年の十一月からは、地方創生実行統合本部長に就任され、安倍政権の最重要課題である地方創生を党のサイドから推進されている最中に病魔に倒れられたのであります。

 さまざまなお立場で重任に当たられた鳩山先生ですが、その政治に対する基本姿勢は明確であり、終生、揺らぐことはなかったのであります。

 常に国民の目線に立ち、おかしいと思うことは、それを正すべくはっきりと物を言い続けることによって、国民にわかりやすく問題提起をして議論を促すという政治スタイルであります。初めて立候補された当時のみずからの著書で、選挙を通じてわかりにくい政治をわかりやすい政治にすると訴えられ、政治家の役割は世の中を幸せにするお手伝いをすることだと述べておられます。この初心をその後も徹底的に貫き、行動されてきたと言えましょう。

 一例を挙げますと、鳩山先生は、同和対策、人権擁護に対しても大変熱心でありました。さきの国会に議員立法で提出し、継続審議中となっている部落差別の解消の推進に関する法律案について、いまだ苦しんでおられる多くの方々のために何としてもこの法律を成立させなければならないと強く訴えておられました。我々は、一日も早くこの法案を成立させ、亡き鳩山先生に御報告しなければなりません。

 鳩山先生の長い政治生活は、この議場において永年表彰を受けられた際に御本人がいみじくも語っておられるとおり、政治改革に邁進し、政界再編のための新党の実験の真っただ中に身を置かれたもので、その存在は常に政界の中心にあったと言われております。

 そんな先生が、一度だけ国政の場を離れられたことがありました。すなわち、平成十一年四月の都知事選への挑戦でありました。立候補に際し、熟考され、まとめられたのが、その後まさに先生の終生のライフワークとなる、これも、最も大切なもの、先生の政治課題として、自然との共生でありました。

 残念ながら、この選挙は一敗地にまみれる結果となりました。その後、平成十二年六月の総選挙で、自由民主党の国会議員として返り咲かれたのであります。

 当選後、先生は、仲間を募り、超党派の自然との共生を考える国会議員の会を立ち上げられ、メンバーの皆さんとの間でいつも熱心に議論を交わしておられたようであります。

 先生の自然との共生の理念は、生態系の破壊が、結局は地球環境の破壊、ひいては人類の破滅につながるものとして、文明論にまで及ぶ高邁な思想でありました。その志が道半ばでついえてしまった今、先生の無念さはいかばかりかと拝察するものであります。

 鳩山先生のもう一つ大きな御功績は、多くの方々が語っておられるように、政界を中心として多くの人材をお育てになられたということであります。自他ともに認める腕前の手料理を後輩たちに振る舞い、政治家とはどうあるべきかについて深い愛情を持って語られ、今や、先生の御薫陶を受けた数多くの多彩な顔ぶれの政治家が、国政や地方議会の場で御活躍されております。これこそが、先生の政治に対する最大の貢献であると言っても過言ではありません。

 こうしたことが可能であったのは、とりもなおさず、鳩山先生が多くの人々から慕われ、包容力のある魅力的な政治家であったからであろうと存じます。堂々とした体躯で、明るく大きな声で気さくに話しかける先生の笑顔に、再び私たちは接することができないと思うと、惜別の思いと寂しさを抑え切れないものがあります。

 政治家としての鳩山先生は、多才に過ぎたと評する向きもありますが、しかし、その極めてすぐれた知性、才能をもってすれば、何でもできたに違いありません。

 事実、御自分でも、もう一度人生をやり直せるならば、やりたいことは、政治家のほか、食文化の殿堂づくり、また、農業、そして大好きなチョウの研究家という趣旨の文章をつづられ、多彩な生き方を夢見ておられたとのことであります。

 四十三年間苦楽をともにされた、先生を身近でお支えしておられた奥様は、お別れの会で、いつまでも少年のような純粋な心を持った人でしたとおっしゃっておられました。

 先生が標榜された自然との共生は、子供のころの御自宅や軽井沢の豊かな自然の中でチョウを追った原体験に基づいた、自然を愛する心から発しているものであります。しかし、そればかりではなく、我々が及びもつかないほど遠い未来を見据えて、理想とする世界の実現という見果てぬ夢を追い続けておられたのかもしれません。

 私たちは、人類の未来にさえも警鐘を鳴らし続けておられた鳩山先生を失いましたことは、本院はもとより、国家にとっても大きな損失であります。まことに痛恨のきわみであります。しかし、その思いと理念は、私たち後進の政治家の心の中にいつまでも生き続け、あたかも丹精込めてつくられたあなたの精緻なチョウの標本のごとく、永久に輝きを放ち続けるものと確信しております。

 ここに、改めて鳩山邦夫先生の生前の御功績をたたえ、その人となりをしのび、心から御冥福をお祈りして、追悼の言葉といたします。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       財務大臣     麻生 太郎君

       総務大臣     高市 早苗君

       法務大臣     金田 勝年君

       外務大臣     岸田 文雄君

       文部科学大臣   松野 博一君

       厚生労働大臣   塩崎 恭久君

       農林水産大臣   山本 有二君

       経済産業大臣   世耕 弘成君

       国土交通大臣   石井 啓一君

       環境大臣     山本 公一君

       防衛大臣     稲田 朋美君

       国務大臣     石原 伸晃君

       国務大臣     今村 雅弘君

       国務大臣     加藤 勝信君

       国務大臣     菅  義偉君

       国務大臣     鶴保 庸介君

       国務大臣     松本  純君

       国務大臣     丸川 珠代君

       国務大臣     山本 幸三君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  萩生田光一君

       財務副大臣    木原  稔君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  横畠 裕介君


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