衆議院

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第8号 平成28年11月1日(火曜日)

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平成二十八年十一月一日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第六号

  平成二十八年十一月一日

    午後一時開議

 第一 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案(第百九十回国会、内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 御報告することがあります。

 崇仁親王殿下には、去る十月二十七日薨去されました。まことに痛惜哀悼の念にたえません。

 本院の弔詞は、議長において昨十月三十一日奉呈いたしました。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 大勲位崇仁親王殿下には にわかに薨去されました まことに痛惜哀悼の念にたえません

 衆議院はここに謹んで弔意を表します

     ――――◇―――――

 日程第一 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長丹羽秀樹君。

    ―――――――――――――

 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔丹羽秀樹君登壇〕

丹羽秀樹君 ただいま議題となりました公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、公的年金制度の保障機能の強化のため、老齢基礎年金等の受給資格期間の短縮に係る施行期日を消費税率の一〇%への引き上げ時から平成二十九年八月一日に改める等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る十月二十一日本委員会に付託され、同日塩崎厚生労働大臣から提案理由の説明を聴取し、二十六日から質疑に入りました。

 二十八日には、民進党・無所属クラブより、年金機能強化法の施行期日を平成二十九年四月一日とする等の修正案が、また、日本共産党より、年金機能強化法により受給権が発生する老齢基礎年金等の費用の財源に関する規定を削除する修正案が提出され、両修正案について趣旨説明を聴取した後、原案及び両修正案について質疑を行い、同日質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、民進党・無所属クラブ提出の修正案について内閣の意見を聴取した後、原案及び両修正案について採決を行った結果、両修正案はいずれも賛成少数をもって否決され、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第二、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長浮島智子君。

    ―――――――――――――

 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔浮島智子君登壇〕

浮島智子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、我が国企業による石油等の資源の確保を促進するため、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構の機能を強化する等の措置を講ずるものであります。

 その主な内容は、

 第一に、我が国企業が行う海外の資源会社の買収や資本提携の支援を行うことを可能とすること、

 第二に、民間では実施が困難な海外の国営石油企業の株式の取得を行うことを可能とすること、

 第三に、このような業務等に必要な資金を政府保証つき長期借入金等により調達することを可能とすること

等の措置を講ずるものであります。

 本案は、去る十月二十五日本委員会に付託され、翌二十六日、世耕経済産業大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、二十八日、質疑終局後、討論、採決を行った結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案(第百九十回国会、内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、第百九十回国会、内閣提出、公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣塩崎恭久君。

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) ただいま議題となりました公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 公的年金制度については、社会保障と税の一体改革を踏まえ、社会保障制度改革国民会議で、長期的な持続可能性を強固にし、セーフティーネット機能を強化するための課題が示され、その課題の検討にも資するよう、平成二十六年に財政検証を行いました。さらに、社会保障審議会年金部会で制度の見直しを検討してきましたが、今般、これらを踏まえ、公的年金制度の持続可能性を高め、将来の世代の給付水準の確保等を図るため、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、短時間労働者について適切に年金の保障を行う観点から、平成二十八年十月一日から施行された被用者保険の適用拡大において対象外となっている一定の規模以下の企業の短時間労働者について、労使の合意に基づき、対象とすることができることとしています。

 第二に、次世代育成支援の観点から、国民年金の第一号被保険者について、産前産後期間の保険料を免除するとともに、その免除期間について基礎年金給付を保障することとしております。

 第三に、公的年金制度の持続可能性を高め、将来の世代の給付水準を確保する観点から、年金額の改定ルールを見直すこととします。

 具体的には、いわゆるマクロ経済スライドについて、年金額が前年度を下回らない措置を維持しつつ、賃金変動や物価変動の範囲内で、前年度までの未調整分を含めて調整するとともに、賃金が低下し、物価変動を下回る場合には、賃金変動に合わせて年金額を改定することとしています。

 第四に、年金積立金管理運用独立行政法人について、国民から一層信頼される組織体制の確立を図り、年金積立金をより安全かつ効率的に運用する観点から、合議制の経営委員会を設け、中期計画の作成等について議決するとともに、役員の業務の執行の監督を行うこととしています。また、リスク管理のための年金積立金の運用方法を追加することとしております。

 第五に、日本年金機構に不要財産が生じた場合における国庫納付に関する規定を設けることとしています。

 最後に、この法律案の施行期日は、公布の日など、改正事項ごとに所要の施行期日を定めることとしています。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案(第百九十回国会、内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。とかしきなおみ君。

    〔とかしきなおみ君登壇〕

とかしきなおみ君 自由民主党のとかしきなおみです。(拍手)

 質問に入る前に、まず、改めまして、三笠宮崇仁親王殿下が薨去されましたことに、謹んで哀悼の意を申し上げます。

 さて、私は、年金制度改革法案について、自由民主党・無所属の会を代表して質問させていただきます。

 我が国の年金制度は、若い世代の皆様に保険料を払っていただき、それに税金部分をあわせて高齢者世代を支えるという助け合いの仕組み、賦課方式で成り立っています。

 戦後、今の高齢者の方は、御両親を自宅で支えていました。日本は昔からこういった世代間の支え合いを大切にしてきた国であります。その後、経済が発展していく中で、支え合いの形は変わり、社会全体で現役世代が高齢世代を支える仕組みとなりました。今の年金制度は、この世代間の支え合いを体現したものであります。

 年金は、五十年、百年という非常に長い期間で運営する制度です。これを将来世代に責任を持って引き継ぐためには、誰からも信頼され、支持される、安定した年金制度であるべきです。その観点から質問をいたします。

 最初に、先日、ある新聞に、年金の水準を示す物差しである所得代替率の記事が載っておりました。政府試算では所得代替率が高く算出されているといった内容でありましたが、その後、訂正記事が掲載をされました。

 国民の皆様の中には誤解をしている方もいらっしゃると思います。そこで、正確なところをお伝えすべく質問いたします。

 平成十六年の改正法により、この年金の水準の計算方法と、その計算方法に基づく水準は将来にわたって五〇%を保障すること、これを少なくとも五年に一度は検証するということを政府は決めたわけであります。つまり、国会が決めた計算方法と目標に従って政府は計算し、目標が達成できるか検証しているわけです。

 直近の検証作業は平成二十六年に行われたと承知していますが、総理からその結果を改めてお知らせください。

 次に、短時間労働者の皆様の厚生年金への適用拡大についてお尋ねします。

 ことしの十月から、既に一定の条件に当てはまる大企業の短時間労働者の皆様が厚生年金の対象となっており、これにより将来の年金水準も大きく改善します。この適用拡大は、まさに将来の所得確保につながるものであり、現役世代の安心につながるものであると評価します。

 一方で、百六万円の壁といった言葉が飛び交っております。人口が減少する中でも社会全体の活力を維持していくためには、働きたい人が働ける社会を目指す必要があります。そうした観点からも、一度適用になれば年収の上限を気にせず働ける被用者保険の適用拡大は重要です。

 今回の適用拡大の方向性について、厚生労働大臣の見解をお聞かせください。

 次に、年金額改定ルールの見直しについて、国民の皆様に正確にお伝えするという観点から質問をいたします。

 少子高齢化が進む中で、将来の年金制度はどうなるのだろうか、自分は年金をもらえるのだろうかという不安の言葉も聞かれます。このような不安に応えるためにも、老後の柱となる年金制度をどの世代にも安心できる仕組みとすることが大切です。

 その観点から、今回の改正は、責任ある与党として、若い世代に対してもしっかり対応していると考えています。今回の改革法案は、世代間の公平を確保し将来の年金水準が下がらないようにすることで、若い世代の信頼を醸成するためのものであり、将来年金水準確保法案であります。しかし、一部の野党は年金カット法案だとレッテル張りをしています。

 ところが、驚くことに、批判ばかりを繰り返している旧民主党が政権与党のときに示した年金制度案は、賃金が物価よりも低下した場合には賃金に連動して引き下げられるということになっており、まさに、今回政府が提案しているデフレ経済下における年金改定の方法を先取りしてくださったと言えるのではないでしょうか。

 加えて申し上げますと、その年金制度案では、年金額を賃金に連動して引き下げる場合には、賃金のマイナス分に加えて、十五歳から六十四歳までの人口減少に一定の係数を乗じた分をさらに引き下げるという、政府が示している年金額改定ルールよりもさらに強烈に下げる仕組みとなっております。

 今回政府が提案している法案を年金カット法案と民進党の方はおっしゃいますけれども、民主党時代に提案した案の方がはるかに年金カットとなるわけであります。この矛盾にどのように民進党の方々がお答えになるのか、私はぜひ伺いたいものであります。

 そもそも、安倍政権では、今までに実現できなかった規模とレベルの賃金上昇を実現させています。にもかかわらず、一部の野党は、仮定の話を持ち出して、あたかもすぐ年金が減るといった誤解を与えるような数字を提示しています。

 これを聞いた若い人たちはどう思うでしょうか。やはり年金制度は信頼できないといった、誤った情報に基づいて判断してしまうことがあるかもしれません。年金を支える若い世代の方の信頼こそが年金制度を安定させる上で必要であり、このような誤った事実を喧伝するような議論は直ちにやめて、冷静な議論をするべきであります。

 そこで、厚生労働大臣に伺います。

 今回の年金改革法案が、世代間の公平を確保し、若い世代の安心と年金制度への信頼も確保するものであることを御説明ください。

 その一方で、年金を受給している世代への目配りも重要です。若い世代が支払った保険料が現在の制度を支え、逆に、高齢者世代の御理解のもと、若い世代の安心や信頼が生まれると思います。

 今の現役世代の賃金に応じて改定するという年金額改定ルールの見直しは、低所得、低年金の方に最大六万円の福祉的給付を行った後で実施することになっています。これは非常に重要なポイントです。この福祉的給付も含め、年金受給世代の皆様にどのような配慮を政府は行っているのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いします。

 次に、年金積立金の運用についてお伺いします。

 ことしの四月から六月までで大きな損失が出ており、国民の中にも不安の声がありますが、これは短期的な評価損であり、自主運用を開始してから十五年間のトータルで見ますと、実に四十兆円の運用益が出ています。しかも、安倍政権になってからは、アベノミクスの成功を受け、二十七・七兆円の運用益となっています。

 年金積立金の運用は、長期の時間軸で見ていくことが原則です。一部の野党は、足元の短期的な運用損だけを取り上げて不安を殊さらにあおるような主張を繰り返していますが、こうした姿勢は到底受け入れられません。

 何よりも重要なことは、短期で上下する運用益を議論するのではなく、国民からお預かりした積立金を適切に運用し、長期的に収益が上げられるよう、GPIFのガバナンス体制をより強化していくことであります。

 そこで、長期的に見て年金積立金の運用状況がどのようになっているのか、また、今回の法案によってGPIFをどのように変革し、国民の安心と信頼を得ていこうとしているのか、厚生大臣に伺います。

 最後に、いま一度申し上げますと、少子高齢化が進む中においても、誰もが安心できる年金制度を将来の世代に引き継いでいくことが大切です。今回の年金改革法案について、その内容がどのように国民の皆さんの信頼を築き、将来世代の年金を確かなものとしていくのか、その全体像と意気込みを改めて総理に伺います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) とかしきなおみ議員にお答えをいたします。

 平成二十六年財政検証についてお尋ねがありました。

 日本の年金制度は、平成十六年改正において、将来世代の負担を過重にしないため、将来の保険料の上限を固定し、その範囲内で年金の給付水準を調整するマクロ経済スライドを導入しました。

 これにより、制度を持続可能なものとするとともに、少なくとも五年に一度、人口や経済の長期の前提に基づき、おおむね百年間という長期的な給付と負担の均衡を図るための財政検証を行っています。

 平成二十六年の財政検証においては、日本経済が再生し、高齢者や女性の労働参加が進めば、将来の所得代替率は五〇%を上回ることが確認されています。また、この所得代替率は、法律に規定された方法で適切に計算されています。

 安倍政権は、まさにデフレ脱却、賃金上昇を含む経済の再生や一億総活躍社会に向けて全力で取り組んでまいります。

 なお、御指摘の、所得代替率が高く算出されているという新聞記事については、その後訂正されたものと承知しています。

 年金改革法案の見直しの内容と意義についてのお尋ねがありました。

 現在継続審査中の年金改革法案は、いわば将来の年金水準確保法案であり、中小企業の短時間労働者への被用者保険の適用拡大、国民年金の産前産後期間の保険料免除、年金額改定ルールの見直しなどを内容としています。

 平成二十六年までは、本来よりも高い水準の年金が支給されていた中で、少子高齢化による人口の構造の変化を踏まえて年金水準を調整するマクロ経済スライドが発動されなかったことにより、今の年金の所得代替率が上昇し、その分、マクロ経済スライドによる調整が長期間になり、結果として、マクロ経済スライドが完了した時点での基礎年金の給付水準が約一割低下しました。

 このため、年金額改定ルールの見直しについては、マクロ経済スライドの調整期間の長期化を防ぎ、将来世代の基礎年金の給付水準を確保するため、マクロ経済スライドの未調整分を先送りせずに、できる限り早期に調整し、賃金に合わせた年金額の改定により、支え手である現役世代の負担能力に応じた給付とする見直しを行うこととしたものであります。このような改定ルールの見直しを行うことが責任ある対応であると考えます。

 ただし、年金額改定ルールの見直しに当たっては、低年金の方にも十分配慮します。

 まず、少子高齢化による人口の構造変化を踏まえて年金水準を調整するマクロ経済スライドについては、賃金、物価がプラスのときに発動し、また、マクロ経済スライドによって、前年度よりも年金の名目額を下げないという配慮の措置は維持します。その上で、未調整分を繰り越して好況のときに調整する仕組みを導入します。

 そして、賃金が下がった際に賃金に合わせて改定する見直しについては、実際の適用は、低年金、低所得の方に対する年最大六万円の福祉的な給付を平成三十一年十月までにスタートした後の平成三十三年度からであります。これによって、年金と相まって、今まで以上に高齢者の生活を支えます。

 もとより、安倍政権では、デフレ脱却、賃金上昇を含む経済の再生に全力で取り組んでいるので、賃金が下がるということを前提としているわけではありません。

 今回の法案を初め、不断の改革に取り組むことで、将来にわたって所得代替率五〇%を確保し、高齢世代も若い世代も安心できる年金制度をしっかり構築していきます。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) とかしきなおみ議員にお答え申し上げます。

 まず、適用拡大の方向性についてのお尋ねがございました。

 短時間労働者の就業調整を防ぎ、労働参加を支援するとともに、所得や年金を確保していくためには、被用者保険の適用拡大を着実に進めていくことが重要でございます。

 この十月から、大企業で働く約二十五万人の短時間労働者を対象に被用者保険が適用されており、さらに、今回提出している法案は、中小企業などで働く約五十万人の短時間労働者についても適用拡大の道を開くものでございます。

 さらなる適用拡大については、この十月の施行から三年以内に検討することが法律で定められており、適用拡大の施行状況、個人の就労実態や企業に与える影響などを見ながら、引き続き取り組んでまいります。

 年金改革法案による信頼確保についてのお尋ねがございました。

 年金は、限られた財源を世代間で配分する分かち合いの仕組みであり、本法案は、世代間の公平を確保し、将来世代の年金水準を確保するためのものです。

 安倍政権は、賃金上昇を含む経済再生に全力で取り組みますが、将来、不測の経済状況が生じて賃金が下がったときにも、将来の基礎年金の水準がこれ以上下がることがないよう、改定ルールを見直すものです。

 この見直しによって、若い世代が将来受け取る年金の水準が確保され、若い世代の年金制度への信頼が高まることで、安心して今の高齢者の年金を支えていただけることになり、年金の持続可能性も高まると考えております。

 年金受給世代の方々への配慮措置についてのお尋ねがございました。

 今回の年金額改定ルールの見直しは、マクロ経済スライドについては、賃金や物価がプラスのときに発動をし、前年度よりも年金の名目額を下げないという配慮措置を維持し、賃金が下がったときに賃金に合わせて年金額を改定する見直しについては、低所得、低年金の方に最大年六万円の福祉的給付を平成三十一年十月までにスタートさせた後の平成三十三年度から導入をいたします。

 さらに、低所得の高齢者への対策については、年金の受給資格期間を二十五年から十年に短縮する措置に関する法案を先ほど本院で御可決いただきました。あわせて、医療、介護の保険料の負担の軽減を行うなど、社会保障制度全体で総合的に低所得の高齢者を支えてまいります。

 年金積立金の運用などについてのお尋ねがございました。

 平成十三年度の自主運用開始以降、年金積立金の累積収益は約四十兆円と、長期的に見て、年金財政上必要な収益を十分に確保しております。国民の皆様には御安心をいただきたいと思います。

 今回の法案は、GPIFのさらなるガバナンスの強化を図るため、これまで制度的には執行の責任者である理事長が一人で意思決定も行っていた仕組みを改め、合議制の経営委員会を新たに設け、法人の重要な方針を決定するとともに、執行部がこの方針に基づいて適切に業務を行っているかを経営委員会が監督することなどの改革を盛り込んでいます。

 今後とも、国民から一層信頼される組織体制の確立に取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 柚木道義君。

    〔柚木道義君登壇〕

柚木道義君 民進党の柚木道義でございます。

 私は、民進党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案に対して質問いたします。(拍手)

 冒頭、三笠宮崇仁親王殿下の御薨去の御訃報に接し、国民の皆様とともに、謹んで心からの哀悼の意を表します。

 さて、冒頭、先ほど、とかしき議員の質問の中に、民主党政権時代に年金カット新ルール以上のカットを進めようとしていたというような全く事実ではない指摘があったことについて、こういう場でまさにそのようなレッテル張りをすることに厳重に抗議をし、また、物価が上がっても賃金が減少すれば、賃金減少額に合わせて問答無用に年金カットをするような年金カット新ルールについてももちろん議論すらしていないことを、まず冒頭明言しておきます。

 さて、民主党政権時に決定した、年金受給に必要な保険料の支払い期間を二十五年から十年に短縮する無年金者救済法案を、我々野党の求めに応じ、年金カット法案と分離、先行審議をし、本日、衆議院本会議で可決できたことは、全国約六十四万人の無年金者の方々にとって大変大きな前進であり、巨大与党に対して野党の提案が実現をした特筆すべき成果だと考えます。

 こうした中、本日、安倍政権による年金カット法案が審議入りとなったわけですが、この間、我々の再三再四にわたる試算要求に出してきたその試算が、国民の皆様に大変大きな誤解を招く問題試算であって、この試算では、十年前から年金カット法案が発動していた場合に、直近の年金受給額が基礎年金で一人当たり三%カット、月額二千円カット、年額二万四千円カットとなっていますが、将来の基礎年金は、驚くべきことに何と七%アップ、月額五千円アップ、年額六万円のアップと、減額分の二・五倍もアップするとの大変な誤解を招く試算を発表されました。

 しかし、我々の試算では、基礎年金で五・二%、つまり年額四万円の減額、厚生年金で十四万二千円の減額と、政府試算と二%もの差額が生じました。

 原因は、我々の試算では、可処分所得割合の減額マイナス〇・二%が、現行ルールのもとでも年金カット新ルールのもとでもひとしく適用される改定である以上、当然マイナス〇・二%の影響を含めるべきと考えます。

 ところが、政府試算では、新ルールの試算をするときだけ意図的にこのマイナス〇・二%の影響を除いているために、我々の試算より二%程度減額幅が少なくなっているのです。

 安倍総理、現行ルールと新ルールの比較をする際に、双方ともマイナス〇・二%にするか、双方ともマイナス〇・二%を除いて比較をするか、どちらにしても基準を同じにしなくては、年金新カットルールによる影響額は測定できません。これは基本的な前提です。

 安倍総理、なぜ政府は意図的に、減額幅の少ない試算を出されたんですか。また、基準をそろえて比較をすれば、民進党の試算どおり五・二%の減額、つまり基礎年金で年額四万円カット、厚生年金で十四万二千円カットになることをお認めになられますよね。

 先ほどの減額試算も過小評価で大問題ですが、増額の試算も過大かつ年金カット法案の影響額とは無関係の試算ということで、これは減額の試算以上に国民の皆様に大いなる誤解を生んでおり、訂正、謝罪、試算の出し直しが不可欠です。

 政府の将来試算では、現役世代の将来の基礎年金水準は七%アップ、月額五千円のアップとあります。これは過去十年間に年金カット新ルールを適用したと仮定した場合の試算ですが、まず、この増額試算自体が、過去十年間に年金新カットルールを適用したと仮定した場合に導き出された試算でありますから、これは年金カット法案の影響額とは無関係な試算であることを厚労省年金局も認めました。

 次に、この試算は、平成二十六年度財政検証ケースEをもとに計算していますが、このケースEというのは、今後約百年間ずっと賃金が上がり続ける、物価上昇率を賃金上昇率が上回り続けるあり得ない経済前提と年金局も認めました。

 さらに、この経済状況のもとでは、そもそも年金カット法案自体が発動いたしません。

 これらの点を指摘し続けた結果、先月二十六日の衆議院厚生労働委員会で、私への答弁で塩崎厚生労働大臣も、七%上がるわけではないと初めて公式に認める答弁をされたわけでございます。

 安倍総理、厚労省年金局は、先月二十六日の私への塩崎大臣の答弁以降、ここに来て急遽、今回の計算の構造は将来に当てはめても同様と逃げの回答をし始めました。さらに、塩崎大臣の答弁も、数値はさておきというのがもはや枕言葉のようになってまいりました。

 ここは、今回政府が示した基礎年金七%、五千円アップ、年額六万円アップの試算は国民に大きな誤解を与える数字であったと、安倍総理御本人が政府を代表してお認めになり、訂正、謝罪され、所管の厚生労働大臣に改めてきちんと試算を出すことを指示されるべきだと考えます。答弁を求めます。

 年金カット法案が発動された場合の影響額試算の公表を、せめて厚生労働委員会での審議入りまでに、基礎年金、厚生年金も年金カット新ルールを将来に向けて適用した場合の年金受給額についての試算を公表いただきますように、これは、我々はこの間何度も何度も要望してまいりましたので、ぜひ安倍総理からこの場で厚生労働大臣に御指示をお願いいたします。

 国民に大きな影響を及ぼす厚生年金の将来試算についても、ぜひきちんとお示しをいただきたいと思います。

 基礎年金については、わざわざ七%、五千円アップと国民の皆様に誤解を与える試算を出したにもかかわらず、厚生年金を出さないのは、そもそも三%、七千円カットの減額幅に比べて増額幅がとても少ないからではないかと想定しますが、違いますか。

 本法案は、年金積立金管理運用独立行政法人、GPIFなどでも問題があります。

 安倍内閣が二〇一四年十月に株式投資を五〇%まで倍増させた後、GPIFは昨年度と今年度の十五カ月で十兆円以上の運用損を出しております。十兆円以上損を出しても誰も責任をとらず、誰も賠償もせず、理事長は独法でトップの年収三千百三十一万円という高年収を受けられる。私は業績連動性にすべきだと思いますが、そのような無責任体制を見直すべきだと考えますが、安倍総理に伺います。

 また、本法案では、国内株式インハウス運用の検討を示しています。これは、GPIFが、信託銀行など投資機関を通さずに直接、国内株式に投資することで、年金資金を高いリスクにさらし、市場への政治介入のおそれもあります。GPIFの国内株式インハウス運用はやるべきではないと考えますが、総理の見解を伺います。

 平成二十六年の年金財政検証では八パターン全てで、賃金上昇は常にプラスで、しかも物価上昇を上回るという前提で計算しています。しかし、足元の経済では、直近十年のうち六年は賃金がマイナスで、かつ物価の伸びをも下回っております。

 安倍政権における経済の状況を見ても、平成二十五年度と二十八年度は賃金がマイナスとなり、物価の伸びよりも下回っていて、これは年金カット法案の新ルールが適用される見込みになる状況になっています。

 だからこそ、現実的な数字に基づいて年金の財政検証をやり直すべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

 年金カット法案による年金カット新ルールで、年金の最低保障機能が大幅に損なわれていきます。加えて、安倍政権では、医療費や介護費用の負担増メニューオンパレードが検討されております。

 こうしたトータルでの負担増や年金カット法案の影響などによって、高齢者の生活保護受給者の激増が心配されます。政府としては、きちんと高齢者の貧困率を調査すべきです。

 そして、年金カット法案の影響も含めて、トータルでの負担増でどれだけ生活保護受給者がふえていくのかをきちんと試算、想定をして、必要な対策を前倒しで準備をして実施していくのが責任ある政治だと考えますが、安倍総理の認識をお答えください。

 年金生活者支援給付金はこれまで二回にわたって延期されましたが、仮に消費税一〇%がさらに先送りされた場合でも、給付金は実施されるのでしょうか。

 また、給付金以外にどのような具体策で年金受給者の最低保障機能を強化するお考えか、御答弁をお願いいたします。

 厚労省の試算でも、二〇一四年の基礎年金の所得代替率が三六・八%であるのに対して、二〇四三年、これはマクロスライド調整が終わる、我々の世代がちょうど受給世代になるころです、このころには二六%、約三〇%も減少するんです。これでは、将来世代の老後の生活は成り立たなくなるのではないかと心配しますが、安倍総理の所見を伺います。

 安倍総理、将来世代の年金額を守るには、焼け石に水の場当たり的な年金カット法案でお茶を濁すのではなくて、将来世代がまともな年金額をもらえるように、年金制度の真の抜本改革に取り組んでいくお考えはおありでしょうか。

 最後に、安倍総理、この週末、私も地元で何人もの高齢者の方々から、柚木さん、年金をこれ以上減らされたら生活できませんと切実な訴えをいただきました。

 今回の年金カット法案が施行された場合、仮に年金制度は守られても、現在、そして将来の年金生活者は守れません。年金制度と年金生活者の両方を守ってこそ、将来はもとより現在の年金生活者を守ってこそ責任ある政治であり、未来への責任だと考えます。そのためには、現実的な試算をきちんと政府が示し、責任ある議論を与野党が進められる環境を整えることが不可欠です。

 総理、老後の最大かつ人によっては唯一の生活保障である年金、万々が一にもこの年金カット法案の強行採決はこの国会では絶対に行わないとこの場で国民の皆様にお約束いただきますようにお願いをして、私の代表質問を終わります。

 なお、答弁が不十分な場合には、再質問、再々質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 柚木道義議員にお答えいたします。

 年金改革法案の影響についてお尋ねがありました。

 今回の計算は、御党からのお求めに応じて実施したものであります。そもそも、現実には、平成二十六年度までは本来よりも高い特例水準の年金額が支給されていたため、今回の改定ルール見直しは発動されず、足元の年金額の低下や将来の年金額の増加は起こりません。

 今回の額改定ルールの見直しは、厚生年金保険料の引き上げに伴う可処分所得割合の減少分の影響がなくなる平成三十三年度から実施するものである以上、計算においてもこの影響を織り込まずに行うことが適当と考えます。したがって、足元での基礎年金の影響は、御指摘の五・二%減でなく三%減となります。

 現行の年金制度は、いわば世代間の分かち合いの仕組みであり、マクロ経済スライドにより、おおむね百年間で収支の均衡を図ることとしているため、足元の年金水準が低下すれば将来の年金水準が上昇するのは当然であります。したがって、今回の計算における基礎年金の影響は、足元で三%減となる一方、将来は七%増となります。

 繰り返しになりますが、今回の計算は、御党の求めに応じて、仮に特例水準が適用されず、今回の額改定ルールの見直しが平成十七年度から実施されていたと仮定して、財政検証に当てはめて計算した結果であり、御党の主張にそぐわない結果が示されたことをもって、大変な誤解を招くということはいかがなものかと思っております。

 なお、今回の計算の前提としている平成二十六年財政検証では、デフレから脱却し、長期的に物価、賃金ともにプラスとなる経済前提を想定しているため、将来にわたり今回の改定ルールが発動する前提とはなっておりません。

 今回の改正は、あらゆる事態に備えて見直しを行うものであります。安倍政権としては、何よりも重要なことは、強い経済をつくっていくことであり、そのため、デフレから脱却をし、賃金上昇を含む経済の再生に全力で取り組んでおります。お尋ねのような、賃金が物価よりも低下する状況を前提とした基礎年金と厚生年金の計算を行うことは考えておりません。

 なお、厚生年金の報酬比例部分については、審議の過程で、必要であれば厚生労働省に検討させたいと考えています。

 GPIFについてのお尋ねがありました。

 年金積立金については、将来の安定的な年金の給付に資するよう、長期的な観点に立って運用することを基本としております。

 平成十三年度の自主運用開始以降、年金積立金の累積収益は約四十兆円となり、政権交代後の安倍政権のもとでは二十七・七兆円のプラスとなっています。

 このように、年金財政上必要な収益を十分に確保しています。国民の皆様には御安心をいただきたいと思います。

 このように、市場の動向に伴う最近の評価損によっても年金財政上の問題は生じておらず、GPIFの体制や運用の仕組みが無責任との御指摘は当たらないと考えます。

 また、GPIFの理事長の報酬は、他の金融機関の報酬水準を踏まえ、適切に設定されていると考えています。

 今回の法案には、GPIFのガバナンスの一層の強化のため、外部の有識者などから成る合議制の経営委員会を設けるなどの改革を盛り込んでおります。これは、年金積立金運用に対する国民の信頼を高めるためのものであります。

 株式のインハウス運用については、積極的な立場、慎重な立場の双方から意見があり、今回の法案には盛り込んでおりません。本法案の附則では、改正法の施行後三年をめどとした検討規定を設けておりますが、必ずしもインハウス運用の実施を前提としたものではありません。

 財政検証のやり直しと年金の最低保障機能の強化等についてのお尋ねがありました。

 平成二十六年の財政検証における経済前提は、経済、金融の専門家で構成される専門委員会における客観的な検討を経て設定しており、前提がおかしいという批判は当たりません。したがって、年金の財政検証を早急にやり直す必要はないと考えています。

 日本の年金制度は、世代間の公平を図るとともに、制度を持続可能なものとするため、平成十六年改正において、若い世代の負担が重くなり過ぎないよう、将来の保険料の上限を固定し、その範囲内で年金の給付水準を調整するマクロ経済スライドを導入しました。その上で、少なくとも五年に一度、人口や経済の長期の前提に基づき、おおむね百年間という長期的な給付と負担の均衡を図るための財政検証を行っています。

 今後とも、財政検証を定期的に行うことにより、必要な改革を実施し、年金制度を安定的に運営していきます。言うまでもなく、安倍政権は、デフレ脱却、賃金上昇を含む経済の再生や一億総活躍社会に向けて全力で取り組んでいきます。

 また、生活保護の受給状況については、高齢者の世帯構成の変化、経済情勢や資産の状況など、さまざまな要素の影響を受けるものであることから、年金額の動向によって生活保護の受給者がどの程度変化するかといったことをお示しすることは難しいと考えます。

 なお、高齢者の生活状況については、国民生活基礎調査や全国消費実態調査などのさまざまな統計データの活用により多角的な実態把握に努めており、長期的に見れば、高齢者の相対的貧困率は若干改善が見られます。

 年金生活者支援給付金については、社会保障・税一体改革において、低所得、低年金の高齢者に対する福祉的な給付として、消費税率を一〇%に引き上げる平成三十一年十月までに実施してまいります。

 さらに、低所得、低年金、無年金の高齢者については、社会保障・税一体改革において、年金生活者支援給付金のほか、先ほど御可決をいただきました年金の受給資格期間の短縮、医療、介護の保険料負担軽減など、社会保障全体を通じた低所得者対策を講じることとしており、加えて、年金の保障機能を一層強化し、老後の所得保障を厚くするため、高齢者の就労機会の確保、厚生年金のさらなる適用拡大、個人型確定拠出年金への加入促進等にも取り組んでまいります。

 所得代替率の低下と年金制度の抜本改革についてのお尋ねがありました。

 厚生年金については、現役時代に被用者であった人の生活をある程度賄うことができる額を確保していきたいと考えており、平成二十六年財政検証においても、日本経済が再生し、高齢者や女性の労働参加が進めば、将来の被用者年金の所得代替率は五〇%を上回ることが確認されております。

 他方、同じ平成二十六年財政検証において、マクロ経済スライド調整終了後の基礎年金の所得代替率は約二六・〇%となっています。

 国民年金については、年金で必要なもの全てを賄うことは難しいですが、それまでの間の蓄えを含めて、万全な老後が可能となるよう、政府としても努力してまいります。

 繰り返しになりますが、低所得や低年金の高齢者への対策については、社会保障・税一体改革において、年金の受給資格期間の二十五年から十年への短縮、年金生活者支援給付金の創設、医療、介護の保険料の負担の軽減など、社会保障制度全体で総合的に講じることとしております。まず、これらにしっかりと取り組んでいくことが重要であります。

 なお、年金の抜本改革を行う必要があるとのお尋ねでございますが、社会保障と税の一体改革以降の将来の年金制度体系のあり方については、国民の前で議論する場である国会において御党の考え方を明らかにしていただき、議論されるものではないかと考えております。

 年金の改革法案の審議の取り扱いについてのお尋ねがありました。

 年金改革法案は、世代間の公平を図り、将来世代の給付水準を確保するものであり、年金制度への信頼を高めるために必要なものと考えております。

 国会における審議の進め方については、国会の御判断に従うべきものと考えています。政府としては、わかりやすく丁寧な説明に努めてまいります。その上で、熟議の後に、決めるべきときは決めなければならないというのが民主主義のルールであると考えております。(拍手)

議長(大島理森君) 柚木道義君から再質疑の申し出がありますが、残り時間がわずかであります。ちなみに、二分二十八秒でございます。ごく簡単に願います。柚木道義君。

    〔柚木道義君登壇〕

柚木道義君 先ほどの総理の答弁を聞いて、私は大変驚きました。発動されない試算を出してきたと、初めてこの国会でお認めになりました。

 これは、三%、二千円のカットをされても、将来は七%、五千円上がると、全てのメディアが報道しているんですよ。それを、発動しない試算だということを今ここで認めた。

 これをもってしても、まず私は、安倍総理大臣が、三%、二千円最初はカットされるけれども、将来は七%、五千円上がる、こういう試算は事実でなかったということをこの場でお認めになって、国民の皆様に撤回と謝罪、そして新たな試算の出し直しを改めて要求いたします。

 そして、もう一問。

 これは、そうおっしゃるんだったら、発動される試算を出してくださいよ、年金カット法案が。我々は、ちゃんと五・二%減額の試算を示して、それに対して政府に対して対案を求めたんですよ。求めた対案が発動されない試算だったということでいいんですか、総理。

 ぜひ、発動される試算を出していただき、私は、現実的な財政検証の見直しなど、提案もしましたよ。聞いていらっしゃったと思いますよ。そして、あしたにも厚生労働委員会を強行審議入りするような話も聞こえてまいります。そうであるならば、なおさら、あしたまでに現実的な正しい試算を出していただくことをお願いして、再質問といたします。

 少し時間があるので、不十分であれば再々質問いたします。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 今回の計算は、御党からのお求めに応じて実施したものであります。

 そもそも、先ほど答弁をさせていただきましたとおりでありまして、現実には、平成二十六年度までは本来よりも高い特例水準の年金額が支給されていたため、今回の改定ルール見直しは発動されず、足元の年金額の低下や将来の年金額の増加は起こりません。

 今回の額改定ルールの見直しは、厚生年金保険料の引き上げに伴う可処分所得割合の減少分の影響が少なくなる平成三十三年度から実施するものである以上、計算においてもこの影響を織り込まずに行うことが適当と考えます。したがって、足元での基礎年金の影響は、御指摘の五・二%減でなく三%減となります。これは先ほど申し上げたとおりであります。

 現行の年金制度は、いわば世代間の分かち合いの……(発言する者あり)

議長(大島理森君) 御静粛に。御静粛に。

内閣総理大臣(安倍晋三君)(続) 分かち合いの仕組みであり、マクロ経済スライドにより、おおむね百年間で収支の均衡を図ることとしているため、足元の年金水準が低下すれば将来の年金水準が上昇するのは、これは当然のことであります。したがって、今回の計算における基礎年金の影響は、足元で三%減となる一方、将来は七%増となるわけでございます。(拍手)

議長(大島理森君) 議場内交渉係が協議中ですので、しばらくお待ちください。(発言する者あり)

 お静かにしてください、今協議中ですから。

 柚木道義君からさらに再質疑の申し出があります。残り時間四十三秒です。ごく簡単に願います。柚木道義君。

    〔柚木道義君登壇〕

柚木道義君 本当に試算を出していただきたいんです、総理。三%減については、我々は五・二パーですけれども、お認めになりましたけれども、しかし、発動されない、そういう表現。しかも、七%上がる。つまり、減るよりふえる方が多い。この点については全く明言されなかったんですね。

 シンプルにお聞きしますよ。上がる方、七%上がる。これを、五千円、年額六万円上がるのは事実ですか、事実でないんですか。イエスかノーで、最後にお答えください。国民はそれを知りたがっています。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほどお答えしたとおりであります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 伊佐進一君。

    〔伊佐進一君登壇〕

伊佐進一君 公明党の伊佐進一です。

 公明党を代表して、ただいま議題となりました公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 まず冒頭、改めまして、三笠宮崇仁親王殿下の御薨去されましたことに、謹んで哀悼の意を表します。

 年金制度は支え合いの制度です。今生きている我々の間だけではなく、これから生まれてくる世代も含めた支え合いの制度であり、その意味では、現在の年金受給世代はもちろん、子、孫、ひ孫の代まで、百年という長期にわたって安定させ、次世代に引き継いでいくことが重要です。

 こうした基盤を構築したのが平成十六年の改正です。平成十六年改正においては、若い世代の負担を過重なものとしないため、保険料の上限が固定されるなど、世代間の公平を図るための一連の改革がなされました。現在の年金制度は、その骨格において持続可能で安定したものであること、また、この点について財政検証で確認されていることを説明願います。

 年金積立金の運用について伺います。

 私たちの年金は、長期的な視点で安定した運用がなされていることが重要です。一時の評価損で年金制度が崩壊したかのような議論をすることは、国民の皆様の不安をあおる以外の何物でもありません。

 高齢者の皆さんにお届けしている年金は、賦課方式であって、現役世代の支払う年金と国庫負担分としての税金の投入部分がほとんどです。つまり、運用している年金の積立金からは一割程度しか支出をしていないため、そもそも運用の影響は限定的です。

 さらに言えば、一部の野党の皆さんは、自公政権が運用のポートフォリオを変更したことにより十兆円の損を出したと指摘をしています。しかし、実際は、本年九月までの運用を試算した最新の民間調査では、世界経済の影響を受けながらも、ポートフォリオ変更後の運用がプラスに転じたとの数字が出てきております。

 改めて伺います。

 自公政権三年十カ月を含め、これまでの年金運用の収益はどうなっているのか、実際にもらえる年金は減ることになるのかについて伺います。

 将来受け取る年金を厚くする趣旨から、短時間で働いている方々に対しても、厚生年金に入りやすくする措置が、本年十月からスタートいたしました。今回の法改正は、中小企業の皆さんにおいてもこうした取り組みを選択できるようにするものであり、厚生年金の適用拡大を目指すものです。

 中小企業の皆さんは、地域経済の支え手であるだけでなく、社会保障を支え、雇用を生むなど、社会の公器としての役割を担っていただいています。アベノミクスの成果として雇用の増加が挙げられますが、その多くは、雇用の七割を占める中小企業の皆さんの御努力のおかげです。

 中小企業の皆さんに厚生年金適用の拡大を選択していただくためにも、人材確保に積極的に取り組む中小企業を応援し、また労働者の雇用環境の改善に意欲的な企業に政府から手厚い後押しをする必要があると思いますが、答弁を求めます。

 年金額の改定ルール見直しと三党合意との関係について伺います。

 今回の法改正において、マクロ経済スライドの調整ルールにキャリーオーバーの考え方を採用すること、また、現役世代の負担能力が低下しているときは賃金変動に合わせて年金を改定することが措置されています。

 既に、平成二十一年の財政検証において、現在の高齢者の所得代替率が上昇し、その分、マクロ経済スライドの調整期間が長くなり、結果、将来世代の年金が減る傾向が明らかになっていました。

 こうした背景から、民主党政権下、平成二十四年二月に閣議決定された社会保障・税の一体改革大綱においては、デフレ経済下では年金財政安定化策は機能を発揮できないこと、また、世代間の公平の確保が課題として言及されています。

 つまり、一部野党の皆さんが年金カット法案とレッテルを張る今回の改定ルールの見直しは、当時の民主党を含めた三党で既に共有された問題意識に対しての措置であると理解していますが、いかがでしょうか。

 今回の改定ルールの見直しは、施行後、これからの将来の不測の事態に備える措置となっています。それを一部野党は、日本が長きにわたって苦しんできた過去十年のデフレ経済に当てはめて、もらえる年金がすぐにでも五%下がるかのような誤解を国民の皆さんに与えていることは、非常に遺憾です。

 そもそも、今回の改定ルールは、世代間の分かち合いの仕組みを調整することであり、現役世代の負担が過重とならないよう、将来世代の年金が目減りしないようするものです。

 もし年金カット法案とのレッテル張りをするのであれば、我々としては、本法案は、将来世代も含めて年金制度の信頼を確保するための年金確保法案だと思いますが、この点についてわかりやすく御答弁いただきたいと思います。

 今回の改定ルールの見直しは、将来の不測の事態に対しても、年金を安定させ、持続可能としていくものです。

 しかし、一部野党は、自公政権が景気、経済の回復と賃金の上昇を目指している一方で、賃金が下がるような不測の事態への備えに取り組むことは矛盾していると指摘しています。しかし、不測の事態に対する備えを措置することは、国民生活に責任を持ち、誠実に政治を行う与党として当然のことと思います。

 政府に伺います。

 経済対策を着実に行っていくことと、いざというときの備えをしっかりと取り組むことは、車の両輪であると思われますが、政府の認識を伺います。

 民進党からは、改定ルールの見直しにあわせて、月々最大五千円、年六万円を低所得者の皆さんの年金に加算する、福祉的給付金を早期に実施すべきとの提案がなされました。

 しかし、賃金・物価スライドの施行は平成三十三年四月であるため、その時期には既に福祉的給付金は施行されています。また、マクロ経済スライドのキャリーオーバーについても、発生するのは最速で平成三十一年度であり、福祉的給付が始まる時期にほぼ一致しています。この調整には、そもそも名目下限措置が維持されているため、キャリーオーバーの制度で年金が減額されることはありません。

 よって、民進党の提案は既に織り込まれており、消費税増税にあわせて福祉的給付を確実に行っていくことが重要であると考えますが、答弁を求めます。

 本臨時国会での年金に関する議論において、一部野党の方から年金制度は既に破綻しているという指摘があったことは、非常に残念です。

 平成二十四年五月の民主党政権下、社会保障と税の一体改革特別委員会において野田総理は、年金制度が破綻している、あるいは将来破綻をするということはございませんと答弁されております。また、同委員会で岡田副総理は、年金制度破綻というのは、私もそれに近いことをかつて申し上げたことがございます、それは大変申しわけないことだというふうに思っております、やや言葉が過ぎたことは間違いありませんとの見識を述べておられます。

 国民の老後の生活の根幹をなす年金制度に対して、不必要に不安をあおることなく、皆様からの信頼を着実に築いていくことが重要だと思いますが、政府にその見解をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 伊佐進一議員にお答えをいたします。

 年金制度の枠組みについてお尋ねがありました。

 日本の年金制度は、平成十六年改正において、若い世代の負担が重くなり過ぎないように、将来の保険料の上限を固定し、その範囲内で年金の給付水準を調整するマクロ経済スライドを導入しました。

 このマクロ経済スライドを着実に実施することなどにより、将来にわたって給付水準を確保する仕組みとし、制度を持続可能なものとしています。

 その上で、少なくとも五年に一度、人口や経済の長期の前提に基づき、おおむね百年間という長期的な給付と負担の均衡を図るための財政検証を行っています。

 平成二十六年の財政検証においては、日本経済が再生し、高齢者や女性の労働参加が進めば、将来の所得代替率は五〇%を上回ることが確認されています。

 年金額改定ルールの見直しと経済政策の関係についてお尋ねがありました。

 もとより、安倍政権では、デフレ脱却、賃金上昇を含む経済の再生に全力で取り組んでいます。賃金が下がるということを前提としているわけではありません。

 その上で、非常に長期にわたって運営される公的年金制度を持続可能なものとしていくためには、あらゆる事態に対応できる仕組みにする必要があります。支え手である現役世代の負担能力に応じた給付を行う仕組みにしておくことが必要です。

 これにより、若い世代が受け取る年金の水準が下がることを防止し、世代間の公平性が確保され、若い世代が安心して今の高齢者の年金を支えることができるものと考えています。

 年金制度を次世代にしっかりと引き継いでいくためにも、年金制度について、あらゆる事態に対応できるよう不断の見直しを行うとともに、年金を初めとする社会保障制度を支える力強い経済を実現すべく、経済再生に全力で取り組んでまいります。

 年金制度の信頼性の確保についてお尋ねがありました。

 現在継続審査中の年金改革法案は、いわば将来の年金水準確保法案であり、中小企業の短時間労働者への被用者保険の適用拡大、国民年金の産前産後期間の保険料免除、年金額改定ルールの見直しなどを内容としています。

 平成二十六年までは、本来よりも高い水準の年金が支給されている。少子高齢化による人口の構造の変化を踏まえて年金水準を調整するマクロ経済スライドが発動されなかったことにより、今の年金の所得代替率が上昇し、その分、マクロ経済スライドによる調整が長期間になり、結果として、マクロ経済スライドが完了した時点での基礎年金の給付水準が約一割低下しました。

 このため、年金額改定ルールの見直しについては、マクロ経済スライドの調整期間の長期化を防ぎ、将来世代の基礎年金の給付水準を確保するため、マクロ経済スライドの未調整分を先送りせずに、できる限り早期に調整し、賃金に合わせた年金額の改定により、支え手である現役世代の負担能力に応じた給付とする見直しを行うこととしたものであります。このような改定ルールの見直しを行うことが責任ある対応と考えます。

 今回の法案を初め、不断の改革に取り組むことで、将来にわたって所得代替率五〇%を確保し、高齢世代からも若い世代からも信頼され、安心できる年金制度をしっかり構築してまいります。

 我々は、政治家として責任を持った議論を行っていきたい、このように考えているわけであります。その中において、年金が破綻する、あるいは年金カット法案といった無責任なレッテル張りを行うべきではない、このように考えております。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 伊佐進一議員にお答えを申し上げます。

 年金積立金の運用についてのお尋ねがございました。

 平成十三年度の自主運用開始以降、年金積立金の累積収益は約四十兆円、また、政権交代後では二十七・七兆円となっており、長期的に見て、年金財政上必要な収益を十分に確保しております。短期的な評価損により年金額が下がることはなく、国民の皆様方には御安心をいただきたいと考えております。

 厚生年金の適用拡大についてのお尋ねがございました。

 厚生年金の適用拡大は、短時間労働者の就業調整を防ぎ、労働参加を支援するとともに、所得や年金を確保していくために重要な施策です。

 この十月から、大企業で働く約二十五万人の短時間労働者を対象に厚生年金が適用されており、さらに、今回提出している法案は、中小企業等で働く約五十万人の短時間労働者についても適用拡大の道を開くものでございます。

 今後、中小企業でも適用拡大が進むよう、短時間労働者の賃金引き上げや本人の希望を踏まえて働く時間を延ばすことにより人材確保を図る意欲的な企業に対してキャリアアップ助成金を拡充し、積極的に支援を行ってまいります。

 年金額改定ルールの見直しについてのお尋ねがございました。

 今回の年金額改定ルールの見直しは、過去に賃金がマイナスとなった際、マクロ経済スライドによる調整が行われず、年金水準が維持をされた結果、現在の高齢者の年金の給付水準を示す所得代替率が上昇をし、その分、マクロ経済スライドによる調整期間が長期化をし、その結果、若い世代が将来受給する基礎年金の水準が低下したことを背景とするものでございます。

 この状況は平成二十一年財政検証で確認されており、平成二十四年二月に、当時の民主党政権が閣議決定した社会保障・税一体改革大綱において課題とされた、世代間の公平や年金財政の安定化の観点から、デフレ経済下におけるマクロ経済スライドのあり方の見直しを考えようとする問題認識に通じており、今回の法案はこれを解決するものでございます。

 次に、本法案の趣旨についてお尋ねがございました。

 年金制度は、限られた財源を世代間で配分をする分かち合いの仕組みであります。今回の法案は、世代間の公平を確保し、将来世代の年金水準の低下を防ぐ意味で、御指摘のように、将来の年金水準確保法案であり、世代間の公平確保法案であると考えております。

 この改革によって、若い世代の年金制度への信頼が高まり、安心して今の高齢者の年金を支えていただけることとなり、年金の持続可能性も高まると考えております。

 次に、福祉的給付についてのお尋ねがございました。

 今回の賃金に合わせた年金額の改定ルールの見直しについては、社会保障・税一体改革において行うこととされている、低所得、低年金の方への最大年六万円の福祉的給付を平成三十一年十月までにスタートさせた後の平成三十三年度に導入する予定であり、この福祉的給付によって高齢者の生活をしっかりとお支えしてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、国民年金法等の一部を改正する法律案について質問します。(拍手)

 国民年金法第一条は、「国民年金制度は、日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。」と明記しています。収入が公的年金あるいは恩給だけという高齢者世帯は五五%を占め、公的年金はまさに高齢者の生活を支える命綱となっています。

 ところが、今、六十五歳以上の単身世帯は、昨年の国民生活調査で二六・三%と、年々ふえ続けています。単身高齢者の基礎的消費支出は約七万二千円に対し、国民年金の平均受給額は約五万円にすぎません。相次ぐ年金引き下げは憲法違反だと、全国四十二都道府県、四千五百九十八人もの高齢者が三十九の地方裁判所に提訴しました。総理は、こうした高齢者の訴えをどう受けとめているのでしょうか。

 次に、法案について具体的に質問します。

 今回の年金改定ルールの変更の一つは、賃金が物価を下回った場合には賃金に合わせ、物価が上がった場合でも賃金が下がれば賃金に合わせて年金を削減するというものです。政府は、今まで、公的年金が他の私的年金と違って有利なところは物価スライドであると説明してきたのではなかったでしょうか。

 今回の改定は、こうした国民への約束を一方的に破る禁じ手であり、憲法に基づく財産権及び生存権の保障という点からも取り返しのつかない事態になり、許されるものではありません。

 物価が上がれば、それに伴って年金受給額も上がり、少なくともそれまでの生活水準は維持できるという期待権をも裏切るものではありませんか。

 現在の年金制度は、いわゆる百年安心とうたった二〇〇四年の改定によってつくられました。これは、世代間の不公平是正を口実に、マクロ経済スライドを導入すること、所得代替率は五〇%を下回らないこと、保険料は毎年引き上げるが、上限を厚生年金は一八・三%、国民年金は一万六千九百円に固定することが法定化されました。

 改定案は、マクロ経済スライド調整率による削減率が、物価、賃金のスライド率よりも大きくて引き切れなかった場合、翌年度以降に持ち越すというキャリーオーバー制度を導入するものです。

 現行のマクロ経済スライドは、前年よりは下げないという原則があったため、これまでたった一回しか発動しませんでした。キャリーオーバー制度はそのための苦肉の策と言えますが、そもそも、二〇〇四年当時描いていた、物価が上がり、賃金はそれ以上に上がるだろうという夢のような設計が間違っていたことを総理はお認めになりますか。

 民主党政権時に、いわゆる特例水準の解消がありました。デフレ下に二〇〇〇年度から二〇一四年度まで特例として年金水準を維持したことを、年金のもらい過ぎだとまで言って、十四年分、二・五%をわずか三年間で削減しました。

 今回制度化しようとするキャリーオーバーの制度も、二年後、三年後と持ち越される場合も考えられます。仮に物価、賃金が上がった場合でも、持ち越された調整分によって、実質的な年金額は削減されます。これでは、政府がいつも言う後代へのツケ回しであり、現役世代にも信頼される年金制度とは到底言えません。

 マクロ経済スライドによる基礎年金部分の調整期間は、報酬比例部分と比べて長期間にわたり、将来の基礎年金の水準が相対的に低下します。国民年金だけ、あるいは厚生年金部分の低い受給者の生活にまともに影響します。そのために、社会保障審議会の議論の整理では、放置できないとまで指摘されています。

 基礎年金へのマクロ経済スライドの適用はやめるべきです。お答えください。

 国民年金第一号被保険者の産前産後の保険料免除は、厚生年金では既に実施しており、当然のことです。しかし、次世代育成、少子化対策のためというなら、その財源は、財政基盤の弱い国民年金保険料負担のみによって賄うのではなく、国民全体で支えるべきではないでしょうか。

 短時間労働者への厚生年金の適用拡大は、将来の年金額がふえるという点では意義があり、必要なことです。しかし、本来、同じ条件の短時間労働者なら、事業所の規模にかかわらず全員が適用拡大の対象とならなければなりません。従業員五百人以上の事業所については十月から適用されますが、それ以外は、今回の改定案で労使合意を得て適用されることになります。

 今回の改定案では、中小企業も大企業と同じように、短時間労働者に適用させる方策がとられているのでしょうか。ないとすれば、中小企業の事業主負担に対する何らかの方策をとるべきではありませんか。

 長く非正規で働き、国民年金の保険料も払えなかったなど、未加入のまま働き続けている方もいらっしゃいます。厚生年金に加入しても十年に満たず、掛け捨てにならざるを得ない場合があり得ます。政府はこのような場合がどのくらいあるのか把握しているのか、何らかの救済策を考えるべきと思いますが、厚労大臣の見解を伺います。

 昨年度とことし第一・四半期でGPIFが十兆円を超える運用損を出したことが大問題となりました。二〇一四年十月にポートフォリオを変更し、国内、外国の株式投資に積立金の半分を使えるようにしたことで、株価操作につながり、外国投資を呼び込み、見せかけの景気浮上に使われました。

 GPIF法第二十一条には、国民の保険料から成る年金積立金の運用は、安全かつ効率的に行われなければならないと定められており、この間の事態は、安定的に運用することから逸脱していると言わざるを得ません。

 昨年度の業務概況書によると、GPIFが運用受託機関を通しての間接的に保有している国内外債券、株式について、GPIFが三十三社の実質的な筆頭株主になっていることがわかりました。上位十社の中には、三菱UFJ、三井住友、みずほフィナンシャルグループなどの運用受託機関が名を連ねてもいます。

 GPIF改革は、政府の経済対策と一体に政府の側から持ち出されてきたものです。GPIFの理事長、新たに設けられる経営委員会の委員長及び委員は厚労大臣の任命になりますが、どのように中立性を担保するのか、お答えください。

 老後の支えである年金の安定確保を願う国民の思いとの開きを、そもそもどう認識しているのか、総理に伺います。

 終わりに、無年金、低年金対策は喫緊の課題です。十年の加入期間で受給資格を得られる納付期間短縮法案が先ほど可決されました。再延期された消費税一〇%と切り離し、来年八月から施行するもので、本制度により初めて老齢基礎年金の受給資格を得る人は約四十万人と言われています。しかし、納付期間が十年なら、年金は月額一万六千円にしかなりません。

 無年金、低年金生活者の根本的な解決のためには、その実態をつかみ、国連社会権規約委員会から二度も勧告されている最低保障年金の創設が必要です。総理、お答えください。

 以上、終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 高橋千鶴子議員にお答えをいたします。

 年金に関する訴訟についてお尋ねがありました。

 御指摘の訴訟は、特例水準の解消に関するものと思われ、政府としては、民主党政権時に成立した特例水準を解消する法律に基づき適切に対応したところでありますが、裁判所で係争中であることから、具体的なコメントは差し控えます。

 年金額改定ルールの変更と期待権の関係についてお尋ねがありました。

 年金制度は、現役世代が負担する保険料や税によって高齢者世代を支えるという仕組みによって運営されています。その仕組みにおいては、今回提案している、賃金に合わせた年金額の改定の見直しは、支え手である現役世代の負担能力に応じた給付とすることで、将来にわたって給付水準を確保し、世代間の公平の確保等に資するものであります。

 また、この見直しについては、低年金、低所得の方に対する年最大六万円の福祉的な給付が平成三十一年十月までにスタートした後の平成三十三年度から実際に適用することとしており、現在の受給者にも十分配慮しています。これにより、年金と相まって、今まで以上に高齢者の生活を支えてまいります。

 あわせて、医療、介護の保険料の負担の軽減など、年金のみならず、社会保障制度全体で総合的に講じることとしており、まずこれらにしっかりと取り組んでいくことが重要です。

 このように、所得の低い方々に対してきめ細かく配慮を行い、憲法二十五条に基づき、国が社会保障の向上、増進に努める責務をしっかりと果たしてまいります。

 平成十六年の財政再計算において設定していた経済前提についてお尋ねがありました。

 平成十六年の財政再計算における経済前提は、経済、金融の専門家で構成される社会保障審議会における客観的な検討を経て、中長期的な視点に立って設定されたものであります。

 その後、デフレ経済が続く中、マクロ経済スライド調整が発動されず、今の年金の所得代替率が上昇し、その分、マクロ経済スライドによる調整が長期間になり、結果として、マクロ経済スライドが完了した時点の基礎年金の給付水準が約一割低下しました。このような事実を踏まえ、今回のマクロ経済スライドの見直しなどを法案として取りまとめました。

 いずれにせよ、所得代替率五〇%を確保できるよう、適切な年金制度の運営に努めていきます。

 年金額の改定ルールについてお尋ねがありました。

 今回のマクロ経済スライドの見直しは、年金制度の持続可能性を高め、将来世代の給付水準を確保するため、前年度よりも名目額を下げないという措置の結果、生ずる未調整分についてキャリーオーバーの制度を導入することによって、翌年度以降に持ち越し調整することとしたものであります。

 このように、キャリーオーバーの制度は、未調整分をできる限り現在の受給世代の中で調整する仕組みであり、後代へのツケ回しという批判は当たらないと考えております。

 基礎年金へのマクロ経済スライドの適用についてお尋ねがありました。

 マクロ経済スライドは、平成十六年の改革により、将来世代の負担を過重にしないため、将来の保険料水準を固定し、その範囲内で給付水準を調整する仕組みとして導入されたものです。このような仕組みは、基礎年金を含め、公的年金制度全体に共通する考え方であります。

 こうしたマクロ経済スライドを含む現行制度のもと、年金額が低い方や年金が受けられない方への対応として、社会保障・税一体改革において、年金の受給資格期間の二十五年から十年への短縮、年金生活者支援給付金の創設、医療、介護の保険料負担の軽減など、社会保障全体を通じた対応を講じることとしています。

 産前産後期間の保険料免除についてお尋ねがありました。

 国民年金は、厚生年金と同様、被保険者が受給者を支える仕組みです。厚生年金では既に産前産後期間の保険料免除分を厚生年金の被保険者で支えているところであり、国民年金についても、国民年金の第一号被保険者全体が共同して負担することが適当と考えております。

 厚生年金の適用拡大についてお尋ねがありました。

 今回の法案は、中小企業で働く短時間労働者に、労使合意に基づき、厚生年金の適用拡大の道を開くものです。

 社会保険料の事業主負担は、働く人が安心して就労できる基盤を整備することが事業主の責任であるとともに、事業主の利益にも資するという観点から事業主に求められているものです。

 その上で、中小企業でも適用拡大が進むよう、賃金引き上げなどにより人材確保を図る意欲的な企業に対し、キャリアアップ助成金を拡充し、積極的に支援を行ってまいります。

 GPIFの運用についてお尋ねがありました。

 年金積立金は、将来の安定的な年金の給付に向けて、長期的な観点に立って運用することを基本としています。

 平成十三年度の自主運用開始以降、年金積立金の累積収益は約四十兆円となり、政権交代後の安倍政権のもとでは二十七・七兆円のプラスとなっています。このように、年金財政上必要な収益を十分に確保しています。国民の皆様には御安心をいただきたいと思います。

 また、長期的な観点から行った一昨年の基本ポートフォリオの変更を含め、積立金の運用は専ら被保険者の利益のために行っており、その結果、長期的に見て年金財政上必要な収益を十分に確保してきております。

 今後とも、国民の皆様の理解を得ながら、内外の経済動向等を考慮しつつ、安全かつ効率的な運用に取り組んでまいります。

 無年金、低年金対策についてお尋ねがありました。

 今回、受給資格期間を二十五年から十年に短縮することにより、六十万人を超える方が新たに年金の受給権を得ると見込んでいます。

 また、経済的事情により保険料を納付することができない方に対しては保険料の免除制度を用意しており、なるべく多くの方が年金を受け取れるよう、今後とも制度の周知を図ってまいります。

 所得の低い方については、社会保障・税一体改革の中で、年金生活者支援給付金の創設、医療、介護の保険料の負担の軽減など、社会保障制度全体で総合的に講じることとしており、まずは、これらにしっかりと取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 高橋千鶴子議員にお答え申し上げます。

 保険料納付済み期間が十年に満たない方への救済策についてのお尋ねがございました。

 今回の受給資格期間の短縮は、納付した年金保険料を極力給付に結びつけることで、年金制度への信頼を高めるものでございます。

 改正後において、七十歳までの期間を全て納付したとしても受給資格期間を満たすことができない無年金の方は、約二十六万人と見込んでおります。

 このような方に対しては、年金額には反映されないものの受給資格期間には含まれる、いわゆる空期間があればこれを活用することや、過去五年間の未納分の保険料納付を可能とする特例的な後納制度の利用によって、十年の受給資格期間を満たすケースもあると考えられるため、個別にはがきを送付するなどにより、制度を十分周知してまいります。

 GPIFの役員の中立性についてのお尋ねがございました。

 年金積立金の運用は、法律上、専ら被保険者の利益のために行うこととされており、積立金はこれまでも一貫して被保険者の利益のために運用され、この点は、本法案による改正後も全く変更はございません。

 また、本法案では、検討段階における労使の代表者の意見も踏まえ、役員の任命を厚生労働大臣が行うこととしていますが、任命に際しては、その任命基準を、社会保障審議会の意見を聞いて定めるとともに、経営委員に、拠出者団体の推薦に基づき、被保険者、事業主の利益を代表する者各一名を任命することとしており、適切な任命が確保される仕組みとしています。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 河野正美君。

    〔河野正美君登壇〕

河野正美君 日本維新の会の河野正美です。

 私は、日本維新の会を代表して、ただいま議題となりました公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 冒頭、安倍総理にお伺いをいたします。

 厚生労働委員会の質疑において、本法案は、年金カット法案や将来年金確保法案などさまざまな名前で呼ばれています。総理は、本法案の審議を進めるに当たり、どのような呼び方がふさわしいと考えておられますか。国民にわかりやすくお示しください。

 我々日本維新の会は、結党以来、現在の年金制度の賦課方式の問題点を指摘し、積立方式移行という抜本的な年金制度改革を提案してまいりました。少子高齢化が進行する中で、賦課方式による年金方式では、世代間格差が生じて社会正義に反する上、将来世代の活力が奪われて我が国の長期的な成長と繁栄が妨げられるからです。そこで、積立方式に移行して、どの世代も受益と負担が一致するべきと考えています。

 そのような立場から、本法案の前提とする現行年金制度と本法案の論点についてお伺いいたします。

 年金についての不安は若者も高齢者も皆が持っていますが、政府・与党は、現行の年金制度につき、百年間は安心を保てるという趣旨の説明をしてきました。平成十六年の年金制度改正において、既に生まれている世代の年金受給終了までの約百年間について年金財政の均衡を図ると称する制度を導入したからです。

 十二年前に導入されたこの年金制度により、当時の厚生年金のバランスシート上は、資産と負債が全体として均衡することとなりました。一方で、世代ごとのバランスシートを比較すると、平成十六年度の制度改正によって、将来世代の負担を約四百兆円ふやして、現役、引退世代の約四百兆円の債務超過を穴埋めしているとの批判もなされました。

 平成十六年度の年金制度改正は、それ以前に比べて、将来世代とそれ以外の世代との世代間格差を広げたのでしょうか。もしそうだとすると、現在まで続く百年安心プランについても、世代間格差は続いているのではないでしょうか。安倍総理の御認識を伺います。

 個々人の年金に関する世代別の損得勘定、世代間格差についてもさまざまな試算があります。

 ある試算によれば、一九四〇年生まれの方と二〇一〇年生まれでは、年金の損得でいえば、一九四〇年生まれの人の方が生涯で五千五百万円以上も年金の純受取額が多いとされています。

 本法案での年金額の改定ルール見直しは、高齢者の年金給付を見直して、将来世代の給付をできるだけ減らさないという趣旨で導入されたはずです。

 本法案によるルール見直しで、各世代の生涯にわたる年金の純受取額について、どの程度の格差是正が見込まれるのでしょうか。さきに発表された年金受給試算ではなく、負担と給付を合わせた純受取額について、塩崎厚生労働大臣の御認識を伺います。

 次に、本法案の前提となっている平成二十六年度の財政検証についてお伺いいたします。

 この財政検証では、各種の経済指標について、八つのシナリオでの年金財政を検証しています。そのうち、年金が百年安心となっている五つのシナリオでの名目運用利回りは、四・二から二・五%となっています。

 これについては、非現実的なほど高い想定との批判があります。また、全要素生産性については、全てのシナリオで現実より相当高いとも批判されています。こうした楽観的過ぎる想定により、現在の年金財政の深刻な状態が隠されているのではないか。残り三つのシナリオで検証する方がはるかに現実的ではないかと思われますが、塩崎厚生労働大臣の御認識をお伺いいたします。

 年金の積立金残高は、リーマン・ショックを挟んで減り続けた後、アベノミクスの影響でまたふえました。ただ、運用のいかんにかかわらず、保険料収入よりも年金給付の方が大きいという基本的な構造は変わっておりません。平成二十六年度財政検証の八つのシナリオのうち、積立金が枯渇するとしているのは、最も経済成長率の低いシナリオのみですが、そこでの成長率の想定は〇・五%で、そう非現実的な数字ではありません。

 そこで、安倍総理にお伺いいたします。

 年金の積立金が枯渇する場合もあり得るというシナリオについて、政府はどの程度現実的なものと考えているのか、御認識をお聞かせください。

 また、仮に年金の積立金が枯渇して、完全な賦課方式に移行した場合、年金財政にはどのような影響が生じるでしょうか。積立金の運用益や元本の利用という収入があった方が、完全な賦課方式よりも望ましいとお考えかどうか、総理の御認識をお伺いいたします。

 最後に、年金制度の積立方式への移行についてお伺いをいたします。

 積立方式は、世代間の不公平を解消できる制度です。運用利回りが一定ならば、さきに挙げたような、世代ごとの年金の純受取額の格差は、保険料と給付についてはゼロとすることができます。この制度への移行に際して、移行時の現役世代が、現行の賦課方式での保険料と自分たちの積み立てのための保険料の二つを負担するという、いわゆる二重の負担が大きなデメリットとして挙げられています。

 しかし、二重負担の問題については、年金目的の薄く広い相続税や、遠い将来までの低率の年金目的の所得税の導入、移行期間のみ発行される国債等が、解決策として有識者から提案されております。

 こうした提案を踏まえても、なお積立方式への移行は不可能とお考えでしょうか。

 また、制度の持続可能性を考えれば、移行に先立ち、少なくとも支給年齢の引き上げが不可欠と考えますが、安倍総理の御認識をお伺いいたします。

 我々日本維新の会は、年金に関するあらゆる世代の不安を払拭し、世代間格差や対立を解消し、国民が安心して暮らしていける社会を築くため、引き続き抜本的な年金制度改革案を粘り強く提案し続けてまいります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 河野正美議員にお答えをいたします。

 年金改革法案の呼び方についてお尋ねがありました。

 この法案は、いわば将来の年金水準確保法案であり、中小企業の短時間労働者への被用者保険の適用拡大、国民年金の産前産後期間の保険料免除、年金額改定ルールの見直しなどを内容としています。

 このうち、年金額改定ルールの見直しについては、マクロ経済スライドの調整期間の長期化を防ぎ、将来世代の基礎年金の給付水準を確保するため、マクロ経済スライドの未調整分を先送りせずに、できる限り早期に調整し、賃金に合わせた年金額の改定により、支え手である現役世代の負担能力に応じた給付とすることとしたものです。

 つまり、世代間の公平性を確保するための見直しであり、この観点からは、世代間の公平確保法案と呼ぶこともできます。

 いずれにせよ、法案の呼び方については、さらなるお知恵があれば拝借させていただきたいと考えております。

 年金の世代間格差についてお尋ねがありました。

 我が国の年金制度は、現役世代が支払う保険料などによって、そのときの高齢者の年金給付を支え、今の若い世代が受給者になった際も、そのときの若い世代が支えるという助け合いの仕組みを基本としています。

 平成十六年改正では、若い世代の負担が重くなり過ぎないように、将来の保険料の上限を固定し、その範囲内で年金の給付水準を調整するマクロ経済スライドを導入しました。

 これにより、将来にわたり給付水準を確保し、世代間の公平を保つとともに、制度を持続可能なものとしました。次世代へ年金制度を確実に引き継ぐために行ったものであり、決して世代間の格差を広げたものではありません。

 その上で、少なくとも五年に一度、人口や経済の長期の前提に基づき、おおむね百年間という長期的な給付と負担の均衡を図るための財政検証を行っていきます。

 平成二十六年の財政検証においては、日本経済が再生し、高齢者や女性の労働参加が進めば、将来の所得代替率は五〇%を上回ることが確認されています。

 財政検証のシナリオと完全な賦課方式への移行についてお尋ねがありました。

 財政検証においては、八通りのケースのうち、七通りのケースでは積立金はなくならないが、最も低成長のケースにおいては将来的に積立金がなくなり、完全な賦課方式に移行する見通しとなっております。

 しかしながら、安倍政権では、積立金が枯渇するような経済状態に陥らないよう、デフレ脱却、賃金上昇を含む経済の再生に全力で取り組んでまいります。

 現在の年金制度は、将来の保険料水準を固定した上で、積立金の活用を含め、その固定された財源の範囲内で長期的な給付と負担の均衡を図る仕組みとなっています。政府は、五年に一度、財政検証を行い、年金財政の健全性を検証することとされており、この仕組みにより、一定の積立金を保有しつつ、財政均衡を保つことができるよう取り組んでおります。

 もとより、積立金とその運用収入は、主に少子高齢化が進行した将来の受給者の給付水準を確保するために重要な役割を果たしていると考えています。

 年金制度の積立金方式への移行と支給開始年齢の引き上げについてお尋ねがありました。

 我が国の公的年金制度は、現役世代が負担する保険料や税によって高齢者世代を支えるという助け合いの仕組み、いわゆる賦課方式を基本としています。

 現に賦課方式から積立方式へ切りかえる場合には、若い世代を含む全世代が、自分の積立金に加えて、現在の高齢者の給付を賄うこととなる、いわゆる二重の負担の問題が生じることになります。

 二重の負担を解決するとの御提案でありますが、現在の高齢者の給付を賄うためには非常に大きな資金が必要となることを踏まえる必要があると考えております。

 また、年金の支給開始年齢については、社会保障改革国民会議の報告書において、支給開始年齢の問題は、年金財政の観点というよりは、平均寿命が延び、個々人の人生が長期化する中で、就労期間と引退期間のバランスをどう考えるか、就労人口と非就労人口のバランスをどう考えるかという問題として検討されるべきものと整理されています。

 今般、年金額改定ルールの見直しを提案させていただいたところであり、法案の御審議をお願いしたいと思います。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 河野正美議員にお答えを申し上げます。

 年金額改定ルールの見直しと世代間の給付と負担の関係についてのお尋ねがございました。

 今回の額改定ルールの見直しは、賃金が物価より低下するという望ましくない経済状態となった場合でも所得代替率が上昇しないように備え、将来世代の年金水準をしっかりと確保していくため行うものでございます。

 世代ごとの給付と負担の関係を考える際には、例えば家庭内での扶養から年金制度を通じた社会的な扶養への移行といった時代の変化などを考慮することが必要であり、そもそも保険料負担と受け取る年金額の対比のみで世代間の公平性を論じることは適当ではないと考えております。

 平成二十六年財政検証の経済前提についてのお尋ねがございました。

 平成二十六年財政検証の経済前提は、設定プロセスの透明性を確保する観点から、経済、金融の専門家で構成をされる公開の専門委員会で十分御議論いただいた上で、高成長のシナリオから低成長のシナリオまで客観的に幅広く八通りの経済前提を設定したものでございます。

 御指摘の三つのシナリオは、さまざまな議論を行うベースとして、低成長を前提としたものもお示ししたものでありますが、政府としては、何よりも重要なことは強い経済をつくっていくことであり、そのため、デフレから脱却し、賃金上昇を含む経済の再生に全力で取り組んでまいります。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       厚生労働大臣   塩崎 恭久君

       経済産業大臣   世耕 弘成君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  萩生田光一君

       厚生労働副大臣  橋本  岳君


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