衆議院

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第2号 平成29年1月23日(月曜日)

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平成二十九年一月二十三日(月曜日)

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 議事日程 第二号

  平成二十九年一月二十三日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(大島理森君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。野田佳彦君。

    〔野田佳彦君登壇〕

野田佳彦君 民進党の野田佳彦です。(拍手)

 質問に先立ち、昨年は、熊本地震や相次ぐ台風を初めとする自然災害、新潟県糸魚川市での大火など、大きな被害を受けた方々がたくさんいらっしゃいました。被害に遭われた方々に、心からお見舞いを申し上げます。東日本大震災を含む、被災からの復旧復興に向かう皆様と、民進党は常に寄り添ってまいる所存です。また、政府には、復旧復興へ着実な後押しをお願いいたします。

 では、民進党・無所属クラブを代表して、政府四演説に対し、大局的な視野から質問をいたします。

 内外の情勢を見ると、グローバリズムと排外主義との相克、あるいは国家間の緊張の増大、多発するテロなど、私たちは、今、かつてないような複雑で変化の激しい時代に直面しています。この不透明感を増す世界を生き抜いていくために、今こそ人類が培ってきた英知の真価が問われていると私は考えます。

 以下、私は、三つの英知の観点から質問いたします。

 人類が獲得した第一の英知、それは、今だけでなく未来をおもんぱかる能力です。

 人類が新たな地平を開くこととなった農耕社会の成立は、目の前の今ではなく収穫のときを待つという、未来を見る視点を人類が獲得してきたからこそもたらされました。それは、自分だけでなく、将来の世代の利益も思い行動する力となります。今こそこの英知を発揮し、将来世代をおもんぱかり、まさに民進党結党の理念でもある未来への責任を持ち、持続可能な未来を構想しなければなりません。

 しかし、安倍政権は、この英知を持ち続けているでしょうか。

 財政には、出るをはかって入るを制すという原則があります。人々や社会のニーズをきちんと把握し、歳出を確定し、それに見合う歳入をきちんと用意するという当たり前の原則です。

 日本社会も、今だけを見ると、景気や世代内格差だけに目が行きがちですが、未来をおもんぱかれば、少子化対策、人材育成、世代間格差への対応も喫緊の課題です。しかし、安倍政権は、従来型公共事業ばかりを乱発し、今だけに終始しているとしか思えません。

 そして、安倍政権には、歳出に見合った税収をきちんと用意する姿勢が欠けています。経済成長さえすれば税収は後からついてくると言わんばかりに、甘い経済見通しに基づく財政健全化計画を策定したり、消費税引き上げを二度も先送りしたりするなど、今だけよければいいという姿勢が目立ちます。

 内閣府の中長期の経済財政に関する試算は、今後の経済財政の姿について、バブル期並みの生産性上昇率を前提としたケースを基本としています。報道によれば、二〇二〇年の国、地方の基礎的財政収支は八兆円程度の赤字となり、昨年七月に試算された五・五兆円よりもさらに悪化する見通しです。

 もう安倍政権の経済財政政策では二〇二〇年の基礎的財政収支の黒字化は達成不可能と考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。

 安倍政権は、平成二十八年度、名目三・一%、実質一・七%という経済成長を前提として税収を見積もりました。現時点での成長率見込みは、名目一・五%、実質一・三%にすぎません。このため、今回の第三次補正予算案では、税収が当初の見込みを大幅に下回り、この不足分を補うために、約一・七兆円もの赤字国債を追加で発行することとしています。リーマン・ショック以来七年ぶりに、年度途中に新たに国債を追加発行する事態が生じたのです。

 大きな外的ショックなくして、これだけ税収見積もりと乖離した予算がかつてあったでしょうか。アベノミクスが行き詰まり、カジノミクスに走らざるを得なくなったことを証明しています。

 経済成長率を高く見積もった理由と、それが大きく外れた原因について、総理の所見を伺います。

 これだけ見積もりを外したにもかかわらず、平成二十九年度予算案も、名目二・五%、実質一・五%と、極めて甘く危うい経済成長見通しに基づいて税収見積もりを出しています。個別の歳出分野では、防衛費と社会保障関係費以外、対前年度の増減はゼロとめり張りに欠け、ニーズに的確に対応した予算とは言えません。

 発効見込みのなくなったTPP関連予算も含まれており、提出された平成二十九年度予算案は撤回すべきです。そして、未来を見据えた人への投資に重点的に予算をつけ直すことを提案しますが、総理の御所見をお伺いいたします。

 人類が獲得した第二の英知、それは、私たちが住む地球を俯瞰する視点です。

 地球を外から眺めるとの新しい視点を手に入れたからこそ、地球環境を守り、世界を安定へ導くという崇高な使命が人類全体に共有されました。私たちは、常にこの視点に立ち返り、その英知を引き出し、国境を越えた持続可能な取り組みを行い、未来を想起しなければなりません。

 しかし、安倍政権は、この英知を駆使しているでしょうか。

 安倍総理も地球儀を俯瞰する外交を標榜されています。その言葉やよしですが、実際の行動にはさまざまな疑問を呈さなければなりません。

 パリ協定の安倍政権の怠慢による批准のおくれは、未来への責任を果たし切れていない典型例です。国会審議ではTPPを最優先にして、その成立に血道を上げる一方で、パリ協定に対する米国、中国、EU、インドなどの対応を完全に見誤りました。京都議定書など、これまで環境問題で世界をリードしてきた日本外交の、まさに大失態です。

 なぜこのような失態に至ったのか、政府として、つぶさに検証したのでしょうか。主要各国の対応を読み違えるなど、あってはならないことです。地球儀をぽかんと眺めるだけで、真に地球を俯瞰していなかったのではないでしょうか。改めて総理に問います。

 また、安倍総理は、就任以来、延べ百十カ国を訪問し、数々の経済協力の約束も行ってきました。先日もフィリピンで一兆円に及ぶ協力を約束したと報じられています。

 安倍総理就任以来の経済支援の表明総額は、官民合わせて、およそ五十四兆円に及ぶと聞きます。積極的な首脳外交を否定はしませんが、問題は、安倍総理のこうした外交による経済協力について、どのような理念を持って行い、どのような成果が上がっているかです。

 この巨額の経済支援に対し、どれほど日本の国益にかなったと具体的に認識しているでしょうか。安倍総理の地球儀を俯瞰する外交の自己検証について、安倍総理に問います。

 人類が獲得した第三の英知、それは、お互いの間の紛争をルールに基づいて理性的に処理するという作法です。

 言葉を得て、知恵を育んできた人類でさえ、近代に至ってもなお、お互いのいさかいをおさめられず、最終的には力で解決するという誘惑にさいなまれました。一方で、それを乗り越え、理性によって冷静に紛争解決するすべも育みました。それが法の支配です。

 国民と国家の平和と安全を守ること、国の主権、領土、領海、領空を守ることは、国家としての当然の責務です。一方、国際社会が直面する問題は複雑化しており、国家間の緊張が高まる事態も生じているのも現実です。そうしたときこそ、世界の平和と安定、繁栄の基礎となる法の支配はさらに確立すべきです。法の支配にのっとって、平和的に解決していくことを実践していかなければなりません。

 しかし、安倍総理は、この英知を十分に理解し、果たしているでしょうか。総理も常々、法の支配の重要性を強調されます。しかし、我が国を取り巻く状況を考えると、事態は深刻と言わざるを得ません。

 そこで、日米関係についてお聞きします。

 米国時間の二十日、トランプ新大統領が正式に就任しました。就任演説でトランプ新大統領は、アメリカ・ファースト、米国第一主義を全面的に押し出してくる姿勢を明確にし、今後さまざまな分野で大きな政策転換が行われると思われます。

 米国の政策の変化は、世界の政治経済情勢に確実に大きな影響を与えます。我が国は、このトランプ新政権にどう向き合っていくべきか、就任演説やその後の新政権の動きについて、総理の御所感をまずお聞かせください。

 特に就任演説では、アメリカのものを買い、アメリカ人を雇用すると、まさにアメリカ・ファーストの言葉は繰り返されましたが、これまで我々が共有してきた自由、民主主義、人権、法の支配などの言葉は聞かれませんでした。この点を総理はどう受けとめたでしょうか。御所感を伺います。

 また、TPPからの撤退も発表されました。トランプ新政権の具体的な政策が、いよいよ実施に移されようとしています。

 米国抜きのTPPは意味がないとまで述べた総理は、この状況をどう受けとめ、今後どのように対応されるお考えでしょうか。あくまでトランプ新大統領を説得するというのであれば、この状況下でまだ説得できると考える根拠もあわせてお示しください。

 また、トランプ新大統領は就任前に、我が国のトヨタという特定の企業を名指しした上で、本来自由であるべき企業の経済活動について厳しく批判しました。しかも、その手段はツイッターという非公式なものです。

 このわずか百四十字で重要事項を伝達するような乱暴なやり方に対して、日本政府としてきちんと物を言うべきであると思いますが、総理はどのようにお考えでしょうか。

 また、就任前のトランプ氏は記者会見で、米国の貿易赤字の問題を取り上げ、中国やメキシコと並べて同盟国の日本を名指しし、批判しました。

 これもまた本来は、WTOのルールなど、法の支配に基づいてきたことをきちんと説明し、改めて理性的に日本政府や安倍総理が物申すべきではないかと考えますが、総理はどのような御見解をお持ちでしょうか。

 こうした損得外交に対しては、基本的な価値観をお互いに共有しながら話し合っていくべきであると思いますが、今後の安倍総理のトランプ氏との話し合いの姿勢についてお伺いをいたします。

 時間をさかのぼると、昨年十一月、安倍総理は、大統領選に当選して間もないトランプ氏と会談しましたが、まだ権限を持たない次期大統領との会談の後、総理は、私はトランプ次期大統領はまさに信頼できる指導者であると確信しましたと述べました。その言葉は今も変わっていないのでしょうか。安倍総理にお聞きをいたします。

 日ロ関係についてお聞きします。

 昨年十二月、日ロ首脳会談がありました。総理は、昨年秋までは、停滞を打破する突破口を開く手応えを得たと国民の期待をあおり立てていましたが、会談の結果は、何もなかったというのが国民の実感ではないでしょうか。首脳会談で合意された経済協力や共同経済活動が、どのように北方領土の解決、平和条約締結に結びつくか、全く不明確です。

 安倍総理、我々の大先輩たちの努力を、一ミリも動いてこなかったと切って捨て、未来志向の発想という言葉だけが躍るのは、違和感を覚えます。

 総理は新しいアプローチへの転換と言いますが、これまでの歴史的、法的事実に立脚し、両国の間で合意の上作成された諸文書及び法と正義の原則を基礎として北方四島の帰属問題を解決するとしてきた基本方針について、いささかも変更はないのか、明確にお答えください。

 また、今後の北方領土問題の解決と平和条約の締結に向けての道筋について、改めて総理のお考えをお聞かせください。まさか領土問題の明確な進展と国民への説明もないままに、北方領土における共同経済活動に国民の税金が投入されることはないとは思いますが、本当にそうでしょうか。万が一にもその可能性はないと明確に御答弁ください。

 さらにお尋ねします。

 ロシアは、首脳会談直前の昨年十一月までに、国後、択捉両島に地対艦ミサイルを配備しました。その射程は北海道にも届きます。翻って、一九七九年、北方領土のソ連軍の軍備強化が行われた際には、日本政府は厳重にこれに抗議し、軍事基地の撤去を求めました。今回の日ロ首脳会談では、経済協力を進める前提として、この件について総理として強く抗議をした上で交渉に臨んだのでしょうか。明確にお答えください。

 日中関係の先行きについても心配です。

 中国は南シナ海での力による現状変更を進めており、法の支配とは真逆の行いです。決して容認できるものではありません。南シナ海での中国の主権、主張を否定した、昨年七月に出された仲裁裁判所の判決は極めて重要です。この仲裁判決に従った行動をとるよう、粘り強く、我が国や国際社会が中国に対して一層働きかけをしていく必要があると考えますが、総理の決意を伺います。

 尖閣諸島周辺での中国公船の活動に対しても厳しく対応する必要があります。昨年の中国公船の領海侵入は延べ百二十一隻にも及んでおり、過去二番目の多さです。総理は、この傍若無人な行動に対して、今後どのように対応していくお考えでしょうか。

 安倍外交の限界は、こうした日中関係にも色濃くあらわれていると言っても過言ではありません。一方で、日中関係は我が国にとって重要な二国間関係の一つであることも論をまちません。この日中関係の現状認識と関係改善に向けた方針をお聞かせください。

 日韓関係も暗雲が立ち込めています。

 日韓合意の精神を踏みにじる今回の釜山総領事館前の少女像設置は極めて遺憾であり、韓国政府の真摯な対応を求めるものです。

 二〇一二年六月、私が総理のときにも、合意していた日韓軍事情報包括保護協定、日韓GSOMIAの締結が、署名セレモニーの一時間前にキャンセルになるということがありました。相手のゴールポストが勝手に動くようなもので、あってはならないことです。

 そして、今回の少女像設置は、ウィーン条約に規定する領事機関の威厳等を侵害するもので、看過しがたい行為であることは間違いありません。日韓両国が慰安婦問題について最終的かつ不可逆的に解決するために合意したことを受け、その内容について着実に履行するという共通のゴールを目指して努力を続けることこそが肝要です。両国政府、国民の冷静な対応が今ほど求められているときはないかもしれません。

 政府はこの問題について今後どのように対応していく方針か、総理にお聞きをいたします。

 あわせて、南スーダンPKOについてお聞きします。

 安倍総理はさきの施政方針演説でほのぼのとした現地のエピソードを紹介していましたが、今後、現地情勢が急変することが十分に考えられます。現時点においてPKO五原則に抵触しないとしても、内紛状態に陥る可能性、自衛隊が安全に意義のある活動が継続できるかなど、治安状況への判断も求められます。

 私が総理のとき、現地の自衛隊員に危険が及ぶおそれがあることから、要員の安全確保のため、ゴラン高原PKOの撤退を決めました。シリアがイスラエル軍による空爆を発表したのは、その撤退完了直後でありました。

 総理も既に言及し始めていますが、政府は、現地を厳しく認識してPKO五原則を厳格に適用し、撤収も含めた慎重な判断をすべきです。現時点、そして今後、いかなる事態を想定し、どういった対応を考えておられるか、改めてお答えください。

 同時に、我が党は、自衛隊の行動に際しての救命救急体制が諸外国と比較して脆弱な現状を踏まえ、少なくとも第一線救急救命体制の充実については可及的速やかに取り組むべきであると考えています。今回の南スーダンに派遣された部隊に関しては、若干の人員、装備等の改善を行ったようですが、政府全体の対応は依然不十分であると言わざるを得ません。

 総理、我が党提出の自衛隊員救急救命法案の審議、成立への協力を強く求めるとともに、自衛隊の救急救命体制の充実に向け、抜本的な対応をとるべきです。総理の決意をお述べください。

 最後に、皇位継承を含む皇室のあり方についてお聞きをいたします。

 昨年八月八日、ビデオを通じて、天皇陛下から象徴としてのお務めについてのお言葉が表明され、真摯な問いかけがなされました。このような異例の展開となったのは、私たち政治家の不作為も大きな要因の一つでもあり、省みなければなりません。

 一方、最近では、まことしやかにか、ひそかにか、政府が二〇一九年一月一日を新天皇即位と新元号開始日とすることを検討しているとの報道があり、これに対して宮内庁の次長が、元日が宮中祭祀や新年祝賀行事が続くことを背景に、譲位、即位に関する行事を設定するのは難しいとの見解を述べていました。皇位継承のあり方についての静かな協議をよそに、新天皇即位と新元号がいつになるかといった話だけが先走って流れてしまう今の政府の姿勢には、いささか疑問を覚えます。

 安倍総理、今回の陛下のお言葉を受けて、政府、とりわけ総理官邸側と皇室、宮内庁側とはしっかりと意思疎通ができているのでしょうか。率直に総理にお聞きをいたします。

 陛下のお言葉を受け、政府が設置した天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議の論点整理が本日中にも明らかにされるところですが、その有識者会議の座長代理は、昨年十二月、新聞社のインタビューで、十月の会議発足の前後で、政府から特別法でという方針は出ていたと答えています。有識者会議そのものが特別法という結論ありきの政府のアリバイづくりの場だと、座長代理みずから認めて進めてきたというようなもので、それはおかしいと思います。

 各種の世論調査では、圧倒的多数が退位を容認し、さらに国民の多くが特例法よりも典範改正による退位の恒久制度化を求めています。これを見ても、有識者会議の議論の方向性は民意から離れているのではないかと危惧いたします。

 思い起こしたのは、昨年のNHK紅白歌合戦の審査結果です。視聴者と会場のお客さんの投票ではいずれも白組が大きく支持されていたのに、十人そこそこの審査員の投票で、なぜか紅組が優勝しました。これには壇上の歌手たちも戸惑い、紅組司会の女優さんも何が起きたのかわからない様子でした。恐らくテレビで見た人も違和感を持ったのではないかと思います。国民の多くは、有識者会議での議論の方向性に同じような違和感を感じているのではないかと思います。

 総理も各種世論調査の結果は御承知と思いますが、総理は民意と有識者会議の方向性に距離があることをどう受けとめておられるでしょうか。御所見をお伺いいたします。

 民進党は、陛下のお言葉を重く真摯に受けとめ、党の考え方を明らかにするため、皇位検討委員会を設置し、有識者からのヒアリングや所属メンバーによる内部検討を通じ、論点整理を行いました。その要点を申し上げます。

 退位については、天皇の退位を認めるべきであり、法案の形態については、皇室典範の改正によるべきであること、皇室典範改正の基礎的論点として、皇嗣が成年、天皇の意思、皇室会議の議決の三点による退位規定の新設、これを提唱しています。

 皇室典範の改正を求めていることについて、私たちは高いハードルを掲げ、特例法が違憲と決めつけているわけではありません。ただ、天皇の退位、即位、天皇の国事行為の正当性などにかかわるだけに、ほんの少しでも違憲の疑いがあることは問題だと、それは避けたいという思いが私たちにはあります。

 また、退位を認める三つの要件は、皇嗣が成年に達していれば、即位と同時に摂政を設ける不合理を避けることができる、強制退位の可能性を退けるために、天皇御自身の御意思に基づくことを要する、皇室会議の議決によることで、十分な理由のない退位を防ぎ、退位の客観性を担保できるとの論拠を持ち合わせていると考えます。

 また、皇室の御活動をどう安定的に維持していくかも現実に差し迫った課題と考え、女性宮家の創設が可能となるよう皇室典範を改正することなども提言をしています。

 国民を代表しているのは国会議員、その集団が政党です。陛下のお言葉については、内閣が責任を負っており、具体的な対応は政府の責務だとは考えますが、天皇の地位は、「主権の存する日本国民の総意に基く。」とある以上、基本的な方向性を定めることは立法府の責務です。

 事柄の性格に鑑み、決して政争の具にされるようなことがあってはなりませんが、政争の具にしないということは、議論しないということと同義ではありません。私どもも議論に積極的に参加し、立法府として主体的な議論を行った上で、民意を反映した責任ある結論を得たいと考えます。

 政府においては、立法府で得られた結論を尊重し、これに沿った具体的な対応を行うべきと考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。

 総理は、昨年の年頭会見で、憲法改正は参院選でしっかり訴えていくと明言しましたが、参院選では、憲法審査会の議論が収れんしていないと、正面から議論することを避けました。さきの施政方針演説では、具体的な議論を深めようと呼びかけましたが、これまで国会で具体的な議論を避けてきたのは、紛れもなく総理であります。

 総理の真意がどこにあるのか不明ですが、次の七十年を見据えるのであれば、都合のいい数字ばかりをかき集めて自画自賛するのではなく、長時間労働など過酷な労働条件に苦しむ働く人の声、災害に見舞われ、今もあすが見えない被災者の声、基地に苦しむ沖縄の声など、心が痛む声にしっかりと耳を傾けること、そして何より、総理の最大の公約でありながら、四年が経過してもいまだ実現できていないデフレ脱却を一刻も早く実現することが前提になると御進言申し上げて、私の代表質問とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 野田佳彦議員にお答えをいたします。

 我が国の財政についてお尋ねがありました。

 安倍内閣においては、国、地方合わせた税収が二十二兆円増加し、新規国債の発行額が十兆円減少し、国の一般会計プライマリーバランスを十四兆円改善させました。

 そして、これまでも、社会保障の改革を含め、徹底的な歳出の重点化、効率化に取り組み、その結果、かつて毎年一兆円ずつふえていた社会保障費の伸びを、今年度予算に続き、来年度予算においても五千億円以下に抑えることができました。

 私たちは、言葉だけではなく、結果を出しています。

 さらに、平成二十九年度予算において、保育士及び介護人材等の処遇改善や、給付型奨学金を新たに創設するなど、一億総活躍の未来を切り開いていくための取り組みに重点化いたしました。

 まず、これらの事実を明確にしておきたいと思います。

 今後とも、経済・財政再生計画の枠組みのもと、経済・財政一体改革を不退転の決意で断行し、経済再生を図りながら、二〇二〇年度におけるプライマリーバランスの黒字化を実現してまいります。

 経済見通しについてお尋ねがありました。

 平成二十八年度の成長率の見通しを引き下げたのは、平成二十八年度の前半に海外経済で弱さが見られたほか、個人消費や設備投資が所得、収益と比べ力強さを欠いた状況となったこと、また、消費税率引き上げの延期に伴い、駆け込み需要による押し上げ効果が見込まれなくなったこと等によります。

 第三次補正予算案においては、平成二十八年度の税収について、対当初予算比で一・七兆円減の五十五・九兆円と見積もりました。その主な要因は、海外経済に弱さが見られる中で、平成二十八年の年初から円高が進行したことにより、法人税収や消費税収が当初予算から減少すると見込んだためであります。

 なお、アベノミクスが行き詰まっているという御指摘ですが、税収について、平成二十九年度では、平成二十八年度補正後税収から一・九兆円増の五十七・七兆円と見込んでいます。これにより、安倍内閣において、国、地方合わせて、民主党政権時に比べて二十二兆円増加しているということも申し添えておきたいと思います。

 平成二十九年度予算についてお尋ねがありました。

 平成二十九年度予算においては、一億総活躍社会の実現に向け、保育士及び介護人材等の処遇改善や、給付型奨学金の創設などの主要な取り組みを確実に行う、科学技術振興費を伸ばすとともに、公共事業関係費の成長分野への重点化を行うなど経済再生に直結する取り組みを推進するなど、予算の中身を大胆に重点化しております。

 めり張りに欠け、ニーズに的確に対応した予算とは言えないとの御指摘は当たりません。

 人への投資といった観点についても、幼児教育の無償化について、住民税非課税世帯の第二子の無償化など、低所得世帯や一人親世帯等の負担軽減策の拡充を行っております。

 また、保育士、介護人材等の処遇改善や、返還不要の給付型奨学金の創設に加え、無利子奨学金についても、低所得世帯の子供に係る成績基準を実質的に撤廃するとともに、残存適格者を解消しています。

 民主党政権では、保育士の処遇について三年三カ月何も行わず、給与はむしろ引き下げられていました。安倍内閣は、言葉を重ねるだけではなくて、結果で応えてまいります。

 なお、平成二十九年度予算における総合的なTPP関連政策大綱を実現するための予算については、海外展開を行おうとする中小企業等への支援などに必要な取り組みであり、TPP協定の発効を前提とするものではありません。

 また、平成二十九年度の税収は、経済対策の推進等による雇用・所得環境の改善や、それに伴う消費や生産の増加等を見込んだ政府経済見通しを反映して見積もったものであり、適切であると考えています。

 最大の経済対策は来年度予算の早期成立であり、御審議の上、速やかに御賛同いただきたいと考えております。

 パリ協定についてお尋ねがありました。

 政府としては、気候変動という国際社会の深刻な課題への取り組みに最大限貢献していくとの立場から、パリ協定の締結のための作業を可能な限り迅速に進め、昨年十一月八日に締結しました。

 COP22ではパリ協定の実施指針の策定が最重要課題であり、我が国はこの交渉に積極的に参加をいたしました。特に、我が国は、パリ協定の着実な実施のために、実施指針策定に明確な期限を設けるべきと主張いたしました。その結果、日本の主張が認められる形で、二〇一八年を期限とすることで合意が形成されました。

 このように、我が国は気候変動問題に積極的に取り組み、世界をリードしてきており、対応を見誤ったとの指摘は全く当たりません。

 我が国の経済協力についてお尋ねがありました。

 ODAについて、国連では、先進国に対し、国民総所得に比べて〇・七%の支出を求めることを決定しております。この決定については民進党の皆さんも御承知のことと思います。これはミレニアム開発目標の一つに掲げられ、さらに、持続可能な開発目標においても引き続きこの目標を追求することとされています。

 これに対し、我が国のODA支出は国民総所得の〇・二一%にとどまっており、率直に申し上げて、国連で設定された目標にはるかに達していないのが現状であります。民進党はそれでも多過ぎるとお考えなのでありましょうか。

 ODAの供与に当たっては、我が国の厳しい財政状況をしっかり勘案しつつ、限られたODA予算の範囲内で無理なく実施でき、最大限の外交的効果が得られるよう工夫しています。さらに、支援の大部分を占める円借款は、その期限が来れば返済されることになっていることを指摘しておきます。協力の実施に当たっては、事後のモニタリング等も実施し、適正性の確保に努めています。

 我が国も戦後、海外からの支援を受けて発展してきた事実も忘れてはなりません。国際社会で協力し、世界全体の発展に貢献することは、我が国自身が裨益することにもつながります。

 ODAは日本外交の柱であり、途上国からも高く評価されています。日本だけがテロ、難民、貧困、感染症などの世界的な課題に目を背けるようなことがあってはならない、このように考えております。

 トランプ新政権との関係についてお尋ねがありました。

 まず、トランプ大統領が二十日に正式に大統領に就任されたことに対し、心から祝意を表します。

 トランプ大統領は、就任演説で、選挙期間中に主張してきた米国第一主義を改めて掲げ、米国を再び偉大にするとの決意を国の内外に鮮明にされました。

 日米は、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値のきずなでかたく結ばれた、揺るぎない同盟国であります。トランプ大統領とできるだけ早期に会談し、トランプ大統領との信頼関係のもとに、揺るぎない日米同盟のきずなをさらに強化していきたいと考えています。

 トランプ政権の貿易政策については、今後、閣僚人事の承認が進み、体制が整うに従って具体化されてくることと思います。

 まずは、日米経済関係をどのように発展、深化させていくか、新政権とさまざまなレベルで議論していきたいと思います。その中で、日本企業の米国経済への貢献等に関する説明を含め、主張すべきは主張し、理解を深めていきたいと考えています。

 トランプ大統領も、自由で公正な貿易の重要性については認識していると考えており、TPP協定が持つ戦略的、経済的意義についても、腰を据えて理解を求めていきたいと考えています。

 トランプ大統領がツイッターを活用されていることについては、現代はネット社会であり、政治家であればSNSを活用することは不可欠という時代に我々は生きている、そして多くの首脳も活用していると認識しています。

 昨年十一月にトランプ大統領とニューヨークで会談した際に、トランプ氏は、現職の大統領がいる中で、次期大統領があたかも大統領のように振る舞うことは米国の国益にとってマイナスであるというしっかりとした認識を持ち、現職の大統領に対する敬意をしっかりと示されていました。信頼できる指導者である、そう確信の持てる会談でありました。この考えは、現在も変わることはありません。

 日ロ関係と北方領土問題についてお尋ねがありました。

 先月訪日したプーチン大統領とは、平和条約の問題について二人だけで交渉を行い、その結果、平和条約問題を解決する両首脳の真摯な決意を声明に書き込むことができました。プーチン大統領自身も記者会見で、最も重要なのは平和条約の締結であると明確に述べていました。大きな成果を上げたと考えています。

 歴代の総理が交渉を重ねてきた努力の上に今日の交渉があると考えており、私とプーチン大統領との間でも、これまでに採択された全ての諸文書及び諸合意に基づいて交渉を進めることを確認しています。

 四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの一貫した方針のもと、交渉を進めてまいります。

 新たなアプローチのもと、日ロがともに北方四島の未来像を描き、その中から双方が受け入れ可能な解決策を見出していくという未来志向の発想で、領土問題の解決、そして平和条約の締結にたどり着くことができると考えています。

 北方四島における特別な制度のもとでの共同経済活動については、今後、交渉を進めていく上で、双方にとって経済的に意義のあるプロジェクトの形成に努める考えであります。この方針のもと、将来の予算にかかわる事項については、国民の理解を得ながら進めていくべきことは当然のことであります。

 山口での首脳会談の内容は、事柄の性格上申し上げられませんが、北方四島でのロシア軍による軍備強化については、我が国の立場と相入れず、遺憾である旨をロシア側に明確に申し入れてきています。

 七十年以上動かなかった領土問題の解決は容易なことではありませんが、高齢となられた元島民の皆様の切実な思いを胸に、平和条約締結に向け、着実に前進していく決意であります。

 日中関係についてお尋ねがありました。

 日中関係には隣国ゆえの難しい課題もありますが、戦略的互恵関係の考え方の上に、大局的な観点から、ともに努力を重ね、関係改善を進めてまいります。

 習近平国家主席とは、昨年九月のG20杭州サミット及び十一月のペルーでのAPECの際に会談し、本年の日中国交正常化四十五周年、来年の日中平和友好条約締結四十周年といった節目の機会を捉えて関係を改善させていくことで一致いたしました。

 尖閣諸島周辺における中国公船の領海侵入に対しては、引き続き、我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くとの方針のもと、冷静かつ毅然として対応してまいります。

 南シナ海における一方的な現状変更の試みは国際社会共通の懸念事項です。引き続き、関係国と連携し、南シナ海をめぐる全ての当事国が国際法に基づく紛争の平和的解決に向けて努力する重要性を訴えてまいります。

 慰安婦問題についてお尋ねがありました。

 日韓合意は、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認するものであり、この合意が全てです。我が国はこの合意を誠実に実行してきており、日本側の義務は全て果たしてきています。韓国側に対しても、合意を誠実に履行していくよう粘り強く求めていきます。

 南スーダンPKO及び自衛隊の救急救命体制についてお尋ねがありました。

 南スーダンでは、国づくりを支援するため、危険の伴う活動ではありますが、自衛隊にしかできない責務をしっかりと果たしています。自衛隊の活動はPKO参加五原則が前提であり、今後とも厳格な適用を図ってまいります。

 また、五原則が維持されていても、安全を確保し、意義のある活動が困難と判断する場合には、撤収をちゅうちょすることはありません。この点は、今回初めて閣議決定においても明記しています。

 政府としては、現地情勢について緊張感を持って注視しながら、国連や他の派遣国とも緊密に連携しつつ、想定されるあらゆる事態にしっかりと対応し得るよう、緊急撤収要領を不断に見直すなど、万全を期しているところです。

 また、自衛隊が任務を遂行するに当たり、隊員の命を最大限に守ることは極めて重要であります。御党提出の法案については、議員立法に関するものであり、基本的に国会において判断いただくべきものと考えております。

 いずれにせよ、有事の第一線における救命率の向上は重要な課題と認識しており、必要な体制の強化に努めてまいります。

 宮内庁との意思疎通についてお尋ねがありました。

 宮内庁からは天皇陛下の御活動状況など日ごろから報告は受けており、また、有識者会議には宮内庁にも出席を求めており、意思疎通に何ら問題はないものと考えております。

 なお、御質問の前提とされている元号等に関する報道の内容については、政府は全く関知しておらず、これをもとにさまざまな臆測がなされていることについては、まことに遺憾です。

 天皇陛下の御公務の負担軽減等に関する有識者会議での検討の方向性についてお尋ねがありました。

 昨年八月の天皇陛下のお言葉に対する国民の皆様の受けとめを踏まえ、現在、予断を持つことなく有識者会議で御議論いただいており、本日、論点整理が行われる予定です。

 有識者会議においては、この論点整理に対する各方面の動向等も見据えつつ、さらに議論を深め、提言を取りまとめていただくこととしています。

 天皇陛下の御公務の負担軽減等に係る立法府との関係についてお尋ねがありました。

 この問題は、国の基本、そして、長い歴史とこれからの未来にかけての極めて重い課題であります。決して政争の具にしてはならず、政治家がその良識を発揮しなければならないものであります。

 今後、衆参両院におかれまして、議長、副議長を中心に各党各会派からの意見聴取が行われるものと承知しております。それをしっかり受けとめ、政府における検討をさらに進めていく所存であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 二階俊博君。

    〔二階俊博君登壇〕

二階俊博君 私は、自由民主党・無所属の会を代表し、安倍内閣総理大臣の施政方針演説に対し質問をいたします。(拍手)

 昨年十二月二十二日に新潟県糸魚川市で発生しました大火災は、最大瞬間風速二十七・二メートルの暴風にあおられ、市の中心市街地から北側にかけて約四万平方メートルを焼き尽くしました。被災された糸魚川市の方々に改めてお見舞いを申し上げます。一日も早い生活再建に、政府・与党はできる限りのことをしてさしあげなくてはならないと決意をしているものであります。

 安倍総理は、早速、二十六日に糸魚川市長と面会され、現地の要望をつぶさにお聞きになるとともに、二十八日に派遣した政府調査団の報告を受けられ、通常の火災ではなく、これを風害として検討するよう指示されました。その結果、今回の事案を被災者生活再建支援法の適用要件である自然災害と位置づけ、新潟県が同法を適用できるようになりました。

 また、総理は、一月十一日、海外出張の前日に現地にお入りになり、復興まちづくり推進協議会を設置し、現地の要望に応えて副市長と復興担当の参事を政府から派遣することをお決めになりました。

 再建に向けた確かな足がかりとして、多くの感謝の声が現地から寄せられていることは御承知のとおりであります。

 私たち自由民主党も、年末年始を返上して、大火災発生から二週間で三回の対策会議を行い、さらに現地視察等も実行してまいりました。

 未曽有の大火災に見舞われ、生活の全てを失われた住民の皆さんの苦しみは、察するに余りあります。応急住宅への入居はめどがつき、当座の生活資金、中小企業再建などの御相談は、それぞれの事情に合わせて、国、県、市が懸命に取り組んでおるところであります。なおお困りのことがあれば、即座に検討し、実行していきたいと考えています。

 日本の災害対策の歴史を振り返りますと、関東大震災では火災、阪神・淡路大震災では地震、東日本大震災では津波の対策がそれぞれ強化されてきました。しかし、今回の大火災で現実を目の当たりにし、再び同様な火災が起きても延焼を二度と起こさせないために、災害に強いまちづくりに取り組まなければならないと痛感いたしました。

 今は、どこで何が起こるかわからないような時代です。私たちは、既存の制度をフル活用して対策を行い、なお現行制度で足らざるところは、制度改正でしっかりと対応すべきであります。

 国民の安心、安全を守り、強くしなやかな国づくりに力を入れていくことは、安倍政権の最重要課題だと認識しています。

 例えば、南海トラフの巨大地震が起きた場合、高知県黒潮町では三十四メートルの津波が町をのみ込み、和歌山県太地町では、何も対策をとらなかった場合、住民の七四%が津波で死亡するという厳しい想定が発表されています。政府は、こうした想定を伝えるだけでは、いかにも配慮不足と言わざるを得ません。防災先進県として、何か具体的な対策や、手を差し伸べることが必要であります。

 こうした自然災害に対抗する国土強靱化の取り組みと総理御自身の御決意をお伺いします。

 あわせて、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの際、万が一のことが起きた場合に、オリンピアン、パラリンピアンを初め、観戦に来られる多くの日本人や外国人観光客の誰一人にも被害を出させないということが開催国日本の責任であります。この点についても総理のお考えをお伺いします。

 ことしは、東日本大震災から七年目、復興・創生期間二年目を迎えます。復興計画にのっとって、住まいや町の復興、産業の再生が徐々に進んでいます。

 二〇一六年度の末に、高台移転は六九%、災害公営住宅は八三%の事業が完了する見込みであります。しかし、いまだ避難されている方々は十三万人余りいるということも事実であります。

 今後、福島の帰還困難区域以外については、徐々に避難指示が解除され、にぎわいを取り戻すことになるだろうということが期待されております。帰還困難区域について、復興再生に向けた法案が今国会に提出されることになっています。

 私は、復興に立ち向かうための政治の決意が人々を勇気づけ、あすへの挑戦、さあやるぞというやる気を引き起こすことを信じております。東北の復興に対する総理の御決意をお伺いいたします。

 先月二十二日、二十年越しの課題であった沖縄県北部の四千ヘクタールの米軍訓練地が返還されました。安倍総理がこの難題に果敢にチャレンジし、解決されたことは、基地負担軽減に向けた大きな進展であり、日米両国の長年の悲願をかなえたすばらしい出来事であります。

 一方で、給油訓練中のふぐあいでオスプレイが不時着した事故がありましたが、沖縄県民の気持ちを逆なでするような事態は、到底認められるものではありません。

 私は、本件に関し、特にアメリカの公使に、二度とこのようなことのないように直接申し入れを行ったところでありますが、政府においても、再発防止をアメリカに強く求め続けなければなりません。

 沖縄の負担軽減と抑止力維持に向けた総理の御決意を伺います。

 昨年十一月、高知県黒潮町で、地震津波の脅威と防災の知見を過去から学び、将来の防災リーダーを育成するという世界津波の日高校生サミットが開催されました。世界初の取り組みであり、安倍総理からは丁重なビデオメッセージもいただきましたが、日本を含む世界三十カ国三百六十名の高校生が、津波防災に関する分科会あるいは避難訓練などを主体的に行い、黒潮宣言という形で取りまとめられました。

 私は先日、太平洋・島サミットの閣僚会合で来日されたナウルの大統領を初め、パプアニューギニア、またマーシャルの外相など八カ国の首脳にお会いしましたが、気候変動と津波防災に、引き続き日本との連携を深めていきたいとの申し入れがあったほか、高校生サミットに参加したそれぞれの国の高校生たちが、現在既に若き津波大使として津波防災に熱心に取り組んでいるとの話も伺いました。

 ことしは、この世界津波の日高校生サミットを、多くの離島を抱える沖縄県で開催したいと考えております。

 総理は、一昨年、三月以降の全てのバイ会談で世界津波の日の創設を積極的に働きかけていただき、国連総会において、「稲むらの火」である十一月五日を世界津波の日とする決議案が全会一致で採択されたわけであります。

 安倍総理の御理解に大変感謝を申し上げるとともに、本年沖縄で開催することは県にとっても大変よい機会になると考えておりますが、安倍総理のお考えをお聞かせください。

 農政新時代を目指す安倍政権の方向性は大賛成であります。海外競争力を高め、そして農産品の輸出で外貨を稼ぎ、日本ブランドを向上させるということで、これからの農政の柱の一つとしてどんどんやっていただきたいと思いますが、みんながみんなそうした流れに乗れるかどうかはわかりません。

 中山間地で農業に携わられる方々は、総農家数の約四割とも言われます。私の地元和歌山県でも中山間地が多く、農業者の将来への不安は尽きません。

 担い手の減少で耕作放棄地が広がれば、中山間地の多面的機能を低下させ、下流の安心、安全も守れません。中山間地における農村の振興、発展は日本全体の課題であり、平地に比べて厳しい環境にどう対応するのか、総理のお考えを伺います。

 経済的に困難な状況にあっても、それが理由で意欲のある学生の進学や修学の機会が奪われて……(発言する者あり)黙って聞けよ。

議長(大島理森君) お静かに。

二階俊博君(続) 奪われてはなりません。学生のやる気を後押しし、能力を最大限引き出し、社会に生かすためには、本人の努力を支援する仕組みが必要です。

 党内でも議論を重ね、本年四月から、給付型奨学金制度の一部、これは私立大学の自宅以外から通う学生と社会的擁護を必要とする学生が対象でありますが、先行して始まることになりました。来年度からは、一定の成績を基準として、国公私立の自宅生も含めて支給され、無利子奨学金の貸与人員も増員することになります。

 児童養育制度の施設長や福島で被災した子供たちが通う高校の教師からも、これまで大学進学を諦めたりちゅうちょしていた生徒たちにとっても進学の後押しになり大変ありがたいという声が聞こえております。

 資源のない我が国において、教育への投資は何よりも重要であり、国の将来を見据えた長期戦略と言えるのであります。給付型奨学金制度の意義と国家戦略としての教育投資のあり方について、安倍総理にお伺いしたいと思います。

 第二次安倍政権は発足以来四年が経過し、税収も所得も格段にふえ、経済環境に明るさを取り戻していることは、客観的な統計から見ても明らかであります。今後とも腰を据えて経済最優先で取り組んでいくことは言うまでもありません。安倍総理に、経済最優先に当たるこれからの御決意についてお伺いをします。

 経済成長の鍵はイノベーションにあります。昨年十一月にパリ協定が発効しましたが、脱炭素化は世界的潮流であり、すぐれた環境・エネルギー技術を持つ我が国は、この分野で世界をリードできる存在であります。

 将来の市場規模や潜在力が巨大と予測される中、成長戦略として地球温暖化対策に積極的に取り組むことについて、総理のお考えを伺いたいと存じます。

 経済のパイを拡大すると同時に、経済の成長、いわゆる持続可能な社会保障の問題、それらの構築を着実に進めていかなくてはなりません。社会保障制度は世代を超えた助け合いの精神が基本であります。したがって、世代間の対立にならない改革が必要であります。

 この精神は、日本人の気質といいますか、勤勉で真面目な国民性とも合致した、いわば日本人の生きざまとも言えるのであります。

 例えば、介護離職ゼロの取り組みは、介護サービスの充実によって、高齢者だけではなく、若い世代の生活の向上にもつながるのであります。

 我が国の社会保障制度は世界でも類を見ないほどの恵まれた状況にあり、世界に冠たる社会保障制度を次世代に引き継ぐために、国民の社会保障制度に対する御理解をいただくことが安倍政権の重要な役割だと考えております。この点について、総理のお考えをお伺いします。

 また、年金、医療、介護の改革、充実を国民の納得感を持ってどのように進めていくのか、塩崎厚生大臣にお伺いをいたします。

 地方創生は本格的な展開の段階に入り、オンリーワンの色をどれだけ出せるのかということが問われており、ボールは市町村の側にあります。

 したがって、私の地元、和歌山県の田辺市上秋津地区では、地域の小学校移転を契機として、地域住民が立ち上がり、その旧校舎を活用して、都市と農村の交流を深めるため、体験的なグリーンツーリズム、秋津野ガルテンが八年前に設立されたのです。地域の……(発言する者あり)やじっている人もそんなことを考えてみなさいよ。地域の野菜と果物をふんだんに使った農家レストランを初め、宿泊、農林業体験、地元の果物を使ったお菓子づくり、ミカンの木のオーナー制度等、上秋津の魅力をふんだんに詰め込んだものであります。

 自分たちでできることは、行政ではなく自分たちでやるという活動が各地で始まっています。私たちは、こうした動きを大切にし、後押しをしたいと思います。

 誰一人見捨てない、誰一人忘れない。ノーワン・レフト・ビハインドという声が地方からも聞こえています。多世代にもわたる、ぬくもりのある支援が必要であります。地域における声なき声に耳を傾け、必要な法制度については検討を進めてまいりたいと考えております。

 私は、ほんの小さな取り組みでありますが、自民党本部前で、各地の物産を集めた販売会を時々行っています。東京のど真ん中でふるさとをアピールする機会をつくることによってアイデアやノウハウが蓄積されます。地方創生の一助になることを信じ、今後とも続けてまいりたいと考えております。

 昨年十月から今日までの間、沖縄県、秋田県、滋賀県、徳島県、和歌山県、岩手県、群馬県川場村、七県が、みずから手を挙げ、アイデアを凝らし、大変なにぎわいを見せてくれました。この際、地方創生にかける安倍総理の意気込みについてお尋ねをしておきたいと思います。(発言する者あり)なお、一生懸命やじっている人たちは、私は、みずからの地域で何をなしたかということを、どんな場所でもいいから御説明をいただきたいと思います。

 次に、天皇陛下の御退位の問題は、国家の基本にかかわる重大な課題であり、決して政局にしてはなりません。与野党は、静かな環境の中で節度ある真摯な議論を行い、両院正副議長のもとで、しかるべく、国民の総意として立法府の考えを取りまとめていくことが求められています。

 天皇の地位は、日本国民の総意に基づくものであり、国民の代表である国会議員が、陛下のお気持ちに沿いながら、多くの国民の御理解を得て進めていかなければなりません。

 政府におかれては、議長のもとで取りまとめられた立法府の考えを最大限尊重することは当然のことでありますが、安倍総理の基本的なお考えを伺いたいと存じます。

 次に、現行憲法制度は七十年が経過し、時代に合わせて憲法を改正していくことが求められています。衆参の憲法審査会で議論を深めていくことは、各党の共通の認識であります。

 憲法の三大原則、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重を堅持し、二十一世紀における新たな国家像を示すものとして、どの部分を変えるのかという具体的な項目の論議を行い、広く国民の皆様に知っていただくことが私たちの責務であります。次の七十年を見据えた憲法のあり方、また国会での憲法論議について、安倍総理のお考えをお伺いします。

 一方、一億総活躍社会を目指す安倍政権にとって、全ての人に働きやすい職場づくりを進めていくことが一層求められています。だらだらと働いていては生産性は上がりません。長時間労働を是正し、ワーク・ライフ・バランスを図り、めり張りをきかせていくことが大切であります。

 一億総活躍社会は、国土強靱化の観点からも大いに推進してまいりたいと考えています。レジリエンスとは、もともと精神医学の言葉で、何事にもめげない、耐え抜き、回復するという意味であり、国民運動として、私たちはこのことを、自由民主党として五年前からそのような政治思想を持って進めてまいりました。(発言する者あり)何か他に御提案がありますか。

 日本が主催した第三回国際女性会議WAW!が先月東京で開催されましたが、強くしなやかな国づくり、女性も男性も、お年寄りも若い人も、障害のある方も、全ての国民の皆さんが、ハード面においてもソフト面においても一緒になって参加していただくことが大切であります。政府はこの点を忘れないで、国民全員参加で進めていただきたいと思います。

 一億総活躍社会と働き方改革、また社会全体のマインド醸成について、加藤担当大臣にお伺いをいたします。

 安倍政権は、日本外交の格と評価を上げております。G7やG20においても日本のプレゼンスが高まっており、礎となっている我が国の政治の安定性が各国からこれほどまで評価をされているときはないのであります。

 総理は、先週、フィリピン、オーストラリア、インドネシア、ベトナムの四カ国を訪問され、各国との連携を強化してまいりました。世界を俯瞰する外交は五年目を迎え、成功例として世界の注目を集め続けております。今回の外国訪問の成果を総理にお伺いをします。

 世界の首脳に先駆け、大統領選直後のトランプ氏にニューヨークで早速お会いになったことは、お二人の信頼関係を構築する上で大きな一歩になったことは間違いありません。我が国も……(発言する者あり)野党も行ってやってくればいいじゃない。我が国も、今後多くの議員を派遣し、さまざまなレベルでのチャンネルを広げ、日米関係の深化に力を尽くしてまいります。

 総理は、近いうちにトランプ大統領と首脳会談に臨まれますが、日米関係を希望の同盟としてこれまで以上に発展させることの御決意についてお伺いをいたします。

 外交は、両国がウイン・ウインの関係でないとうまくいかないことは誰でも承知のとおりで、その点で、韓国は大変難しい国だというのが今率直な感想であります。

 釜山総領事館前の市民団体による慰安婦像の設置は、ウィーン条約に照らして問題があり、看過した韓国政府の国際的な評価を低下させています。一昨年の日韓合意はしっかりと守ってもらいたいと強くこの際申し上げておきたいと思います。

 しかし、こうした時期だからこそ、私たちの方から交流を絶やすことをしてはならないと思います。政府間の交渉は当然のこと、党は、人的交流を通じ、交流を進めてまいりたいと存じます。

 日中関係は、ことし国交正常化四十五周年、来年は平和友好条約四十周年の節目の年であります。さまざまな分野で相互理解を進めるよいチャンスだと考えております。党として、防災、環境、観光、青少年交流など、より一層進めてまいりたいと思います。

 日ロ関係は、先般のプーチン大統領との首脳会談を踏まえ、今後とも粘り強く交渉していくことが必要であります。日ロ会談について、総理の御決意を改めて伺っておきたいと思います。

 外交は、相手の国との波長を合わせることが何よりも重要であります。私は、木を植え、種をまき、井戸を掘ることを旨とする外交に今日までいささか努力を続けてまいりましたが、幹と根のしっかりした大木に育つことには、長い間の時間が必要であります。

 安倍総理の外交はまさにそうした観点から行われているものであり、今後とも、短期的な視野に陥ることなく、長い目で見て両国によい影響を及ぼすよう努めていただきたいと存じます。

 私たち自由民主党は、今や国会においても国民の皆様から多数の支持を頂戴しておりますが、こうしたときこそ、初心を忘れることなく、仕事に邁進していかなければなりません。

 さきの国会で成立しました部落差別解消推進法は長年の悲願であり、ここに改めて御賛同をいただいた議員各位に深く感謝を申し上げます。部落解消推進にかける総理の意気込みをお尋ねしておきたいと思います。

 目の前に起きる社会の動向に敏感に反応し、世の中の動きをつぶさに掌握し、スピード感を持って、常にあすを見詰める洞察力を持ちながら未来に向けて行動することは、当然のことであります。

 丁寧に幅広く意見を聞き、建設的な議論を行い、国民にわかりやすい、未来を開く国会にしていきたいと思います。

 社会的に弱い立場の人を大切にするのが政治の使命であります。国際環境が混沌とする中、日本が政治を安定して前に進め、落ちついた環境の中で仕事を進めていくことが求められております。

 政治の使命を果たすために、議員各位の協力をお願いし、これをもって私の代表質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 二階俊博幹事長にお答えをいたします。

 国土強靱化の推進についてのお尋ねがありました。

 昨年は熊本地震や台風被害など多数の災害が発生し、今後も南海トラフ地震等の発生が懸念される中、国土強靱化は、我が国にとって焦眉の急であります。

 施設の耐震化、避難施設や海岸堤防の整備、防災訓練の実施など、ハードとソフトを適切に組み合わせ、オール・ジャパンで国土強靱化を強力に進めてまいります。

 また、国土強靱化は、我が国を訪れる外国人に対する一種のおもてなしでもあります。

 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックにおいて、選手や観客、国民の皆様が安心して大会を楽しむことができるよう、首都の強靱化、避難誘導等の対策を強化するとともに、安全、安心な国日本を世界に向けて発信してまいります。

 東北の復興についてお尋ねがありました。

 東日本大震災から間もなく七年目を迎え、復興・創生期間も二年目に入ろうとしております。復興は着実に進展しておりますが、今後とも、切れ目のない被災者支援や、住まいと町の復興、なりわいの再生を一層加速化してまいります。

 福島の復興再生は、引き続き、国が前面に立って、全力で取り組んでまいります。

 帰還困難区域以外の区域については、避難指示解除や帰還に向けて、引き続き環境整備に取り組んでまいります。帰還困難区域についても、新たな制度のもと、復興拠点を設け、ふるさとに戻って住めるようにすることを目指します。

 福島復興特措法の改正案を提出し、成立に向けてしっかり議論を重ねてまいります。

 東北には、美しい自然、おいしい食べ物などの魅力があふれています。観光先進地東北を目指し、東北の外国人宿泊者数を二〇二〇年に百五十万人にするという目標の達成に向け、東北の観光復興を加速してまいります。

 東北の復興なくして日本の再生なし。あの大震災、困難の日々を胸に刻みながら、被災地の皆さんと力を合わせ、新しい東北の未来を切り開いてまいります。

 沖縄の負担軽減と抑止力維持に向けた決意についてお尋ねがありました。

 沖縄の基地負担の軽減を図ることは、政府の大きな責任です。地元の皆さんの理解を得る努力を続けながら、確実に結果を出していかなければなりません。

 先月、北部訓練場、四千ヘクタールの返還が二十年越しで実現しました。沖縄県内の米軍施設の約二割、本土復帰後最大の返還です。地位協定についても、半世紀の時を経て初めて、軍属の扱いを見直す補足協定が実現しました。

 引き続き、普天間飛行場の全面返還に向けて全力で取り組んでまいります。

 また、オスプレイを含め米軍機の飛行安全の確保は、米軍が我が国に駐留する上での大前提です。引き続き、事故の再発防止を強く求めるとともに、米側と連携を密にして、安全確保に万全を期してまいります。

 今後とも、米国との信頼関係のもと、抑止力を維持しながら、沖縄の基地負担軽減に一つ一つ結果を出していく決意です。

 世界津波の日についてお尋ねがありました。

 世界津波の日の制定は、津波の脅威と防災の知見を過去から学び、将来のリーダーを育成する観点から、日本にとってのみならず、世界にとって非常に有意義であり、制定を主導された二階議員に改めて敬意を表したいと思います。

 昨年、高知県の黒潮町で初めて開催された世界津波の日高校生サミットでは、参加した高校生が、津波防災に関して活発に意見交換を行い、高台への避難訓練を体験し、成果を黒潮宣言として取りまとめるとともに、「稲むらの火」で有名な和歌山県を訪問するなど、大変充実したプログラムのもと、貴重な経験ができたと承知しています。

 昨年に続いて、本年、世界津波の日高校生サミットを沖縄県で開催することは、防災教育や防災を通じた青少年交流の観点から、大変意義深いことと考えます。

 中山間地域の農業についてお尋ねがありました。

 中山間地域は、農業産出額と耕地面積のそれぞれ四〇%を占めるなど、我が国農業、農村の中で重要な役割を果たしております。

 農は国の基であり、中山間地域などの美しい田園風景を守ることは政治の責任です。

 しかしながら、農業従事者の平均年齢が六十六歳を超えていることを初め、農業をめぐる状況は厳しいものとなっています。特に、第一次産業就業者の割合が高い中山間地域の農業の振興は、地域の活力の維持や多面的機能の発揮の観点から、大変重要な課題であると認識しています。

 このため、安倍内閣では、中山間地域の困難な状況の中でも創意工夫を発揮して、付加価値の高い農産物の生産や六次産業化などに取り組む意欲ある農業者を積極的に支援してきました。

 また、農業、農村の多面的機能の発揮のための地域活動や営農の継続等を支援するため、平成二十六年度から日本型直接支払い制度を実施しております。

 さらに、平成二十九年度当初予算においては、地域の特色を生かした取り組みを後押しするため、中山間地農業ルネッサンス事業を創設することといたしました。都道府県が作成する地域別農業振興計画に基づいて実施される多様な取り組みを総合的、優先的に支援することとしております。

 これらの事業を初め、政府としては、引き続き、多様な施策を講じ、中山間地域の農業の振興と発展を図ってまいります。

 給付型奨学金制度の意義と教育投資のあり方についてお尋ねがありました。

 我が国の未来、それは子供たちであり、一人一人の個性を大切にする教育再生を着実に進めることが重要です。

 どんなに貧しい家庭で育っても夢をかなえることができるよう、誰もが希望すれば進学できる環境を整えなければなりません。

 このため、高校生への奨学給付金を拡充するとともに、成績にかかわらず、必要とする全ての学生が無利子の奨学金を受けられるようにします。さらに、新年度から、返還不要の給付型奨学金制度を新たに創設することとしました。

 教育投資は未来への先行投資です。一人一人の豊かな人生と、成長し続け、安心して暮らせる社会の実現に必要な国家戦略として、必要な財源を確保しつつ、教育投資の充実にしっかりと取り組んでまいります。

 経済最優先に当たる決意についてお尋ねがありました。

 五年前、日本にはまだ、まさにデフレマインド、諦めという名の壁が立ちはだかっていました。しかし、政権交代後、アベノミクスによって、極めて短い期間で、デフレではないという状況をつくり出すことができ、名目GDPは四十四兆円、実質GDPは二十五兆円増加し、過去最高の水準となりました。

 特に、国民生活にとって最も大切な雇用は大きく改善しており、就業者数は百十万人近く増加、有効求人倍率は、史上初めて四十七全ての都道府県で一倍を超え、賃上げは、中小企業を含め、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが三年連続で実現し、税や社会保障負担等を差し引いた家計の可処分所得は二年連続で増加するなど、全国津々浦々で確実に経済の好循環が生まれています。

 さらに、国、地方を合わせた税収は二十二兆円増加しました。

 昨年後半から世界経済も全体として上向きつつある中、日本経済にも明るい兆しが見られます。

 この機を捉え、本年もぶれることなく、経済最優先で、金融政策、財政政策、成長戦略の三本の矢の政策を続け、デフレから脱却し、日本経済の新たな成長軌道を確固たるものとしていく決意であります。

 成長戦略としての地球温暖化対策の取り組みについてお尋ねがありました。

 議員御指摘のとおり、地球温暖化対策と経済成長を両立させる鍵は、イノベーションです。

 政府としては、エネルギー・環境イノベーション戦略に基づき、次世代の蓄電池や太陽光発電等の研究開発強化に取り組みます。

 パリ協定を契機として、途上国を含め、世界の低炭素市場の一層の拡大が見込まれます。我が国が有するすぐれた技術を生かして、国内のみならず世界全体の温室効果ガスの排出削減等に最大限貢献し、我が国のさらなる経済成長につなげてまいります。

 社会保障制度についてお尋ねがありました。

 社会保障制度を持続可能なものとして次世代に引き渡していくことは、安倍内閣の重要な責務です。不断の改革を行い、国民の理解が十分に得られるよう取り組んでまいります。

 そのため、引き続き、所得の低い方々には配慮しつつ、医療や介護などの給付と負担のあり方について不断の見直しを行い、世代間、世代内の負担の公平を図るなど、社会保障制度の持続性確保に向けた改革を進めます。

 その際、若者も含め全ての世代の安心と納得を得られる全世代型の社会保障とすることが重要であります。高齢者人口がふえていく中で、現役世代、子育て世代への支援を強化するため、保育士及び介護人材等の処遇改善や、保育、介護の受け皿整備などを実施してまいります。

 地方創生にかける意気込みについてお尋ねがありました。

 日本の地方には、それぞれの魅力、観光資源、ふるさと名物があります。例えば、飛騨高山は、北アルプスや温泉、高山祭り、伝統工芸品といった地域が誇る観光資源や農林水産物をブランド化し組み合わせることで、多様な外国人観光客の獲得に成功しました。御紹介いただいた和歌山県田辺市の秋津野ガルテンは、遊休資産を再生し、新たな企業や人を呼び込みました。

 このような地域の魅力を磨いて経済を活性化させる意欲的な挑戦を、自由度の高い地方創生推進交付金などによって重点的に支援します。

 誰一人見捨てない。誰一人忘れない。

 例えば、過疎が進む中山間地域、安心して暮らしていけるよう、買い物、交通、コミュニティーの維持など、さまざまな機能を複数の集落が連携して確保する小さな拠点づくりを支援していきます。

 今後とも、情報、人材、財政面での支援などあらゆる手段を活用し、地方創生にチャレンジする地方の皆様を全力で応援します。

 天皇陛下の御公務の負担軽減等に関する検討の進め方についてお尋ねがありました。

 昨年八月の天皇陛下のお言葉に対する国民の皆様の受けとめを踏まえ、現在、有識者会議で御議論いただいており、本日、論点整理が行われる予定です。

 この問題は、国の基本、そして、長い歴史とこれからの未来にかけての極めて重い課題であります。決して政争の具にしてはならず、政治家がその良識を発揮しなければならないものであります。

 今後、衆参両院におかれまして、議長、副議長を中心に各党各会派からの意見聴取が行われるものと承知しております。それをしっかり受けとめ、政府における検討をさらに進めていく所存です。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 ことしは、憲法施行から七十年の節目の年です。

 憲法は、国の未来そして理想の姿を語るものであり、新しい時代の理想の姿を私たち自身の手で描いていくという精神が、日本の未来を切り開いていくことにつながっていくと考えております。

 国民主権、基本的人権の尊重、平和主義といった現行憲法の基本原理を堅持することは当然のことでありますが、新しい時代にどのような憲法がふさわしいのか、国会の憲法審査会において議論が深められ、具体的な姿があらわれてくることを期待したいと思います。

 フィリピン、オーストラリア、インドネシア、ベトナム訪問の成果についてお尋ねがありました。

 今回訪問した各国の首脳とは既に何回も会談を重ねていますが、今回はさらに胸襟を開いて、二国間関係や地域の課題について率直な議論を行うことができました。

 特に、航行の自由、法の支配、紛争の平和的解決、武力による威嚇や武力の行使に訴えないことといった基本原則を堅持していくことが重要であることを各国首脳と確認することができたことは大きな成果であります。

 自由で公正な経済圏を拡大していくことの重要性を確認したこと、多数の経済界のリーダーに同行していただき、トップセールスを行ったことも非常に有意義でありました。

 この四カ国への訪問は、本年の地球儀を俯瞰する外交の皮切りとして、大きな成果を上げることができたと考えます。

 今後の日米関係についてお尋ねがありました。

 まず、トランプ大統領が二十日に正式に大統領に就任されたことに対し、心から祝意を表します。

 昨年十一月にトランプ大統領とニューヨークで会談を行い、さまざまな課題について私の基本的な考え方を伝えました。温かい雰囲気の中、大変充実した意見交換を行い、日米同盟の重要性を確認できたと考えています。

 日米同盟は、我が国の外交、安全保障の基軸であり、トランプ大統領とできるだけ早期に会談したいと考えています。アジア太平洋や世界の平和と繁栄について幅広く意見交換し、トランプ大統領との信頼関係のもとに、揺るぎない日米同盟のきずなをさらに強化していきたいと考えています。

 日ロ関係についてお尋ねがありました。

 戦後七十年以上たってもロシアとの間で平和条約が締結されていないことは異常であり、これを打開するために、首脳同士の信頼関係のもとに解決策を見出していく必要があります。

 先月訪日したプーチン大統領とは、平和条約の問題について二人だけで交渉を行い、その結果、平和条約問題を解決する両首脳の真摯な決意を声明に書き込むことができました。プーチン大統領自身も記者会見で、最も重要なのは平和条約の締結であると明確に述べていました。大きな成果を上げたと考えています。

 元島民の方々のふるさとへの自由な訪問やお墓参り、北方四島全てにおける特別な制度のもとでの共同経済活動について交渉を開始することで合意し、新たなアプローチのもと、平和条約の締結に向けて重要な一歩を踏み出すことができました。

 部落差別解消に向けた意気込みについてお尋ねがありました。

 部落差別のない社会を実現することは重要な課題であります。政府としても、これまで、教育、啓発活動など、さまざまな施策を講じてきたところでありますが、さきの国会で成立した部落差別の解消の推進に関する法律の趣旨を踏まえて、今後とも、差別の解消に向けてしっかりと対処してまいりたいと考えています。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 二階俊博自民党幹事長にお答え申し上げます。

 年金、医療、介護の改革、充実についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 引き続き、社会保障と税の一体改革を進め、社会保障の充実、安定化と重点化、効率化に取り組むとともに、ニッポン一億総活躍プランに盛り込まれた各施策を着実に実施してまいります。

 そのため、来年度予算案では、喫緊の課題である無年金の問題に対処するための年金の受給資格期間の十年への短縮や、待機児童ゼロや介護離職ゼロを目指した保育、介護の受け皿整備、さらに、保育士、介護職員などの処遇改善など、一億総活躍プランに関する施策について必要な予算額を盛り込んでおります。

 また、若者も含め全ての世代の安心と納得が得られる全世代型の社会保障とすることが重要であります。年齢にかかわりなく負担能力に応じた負担をお願いする観点から、所得の低い方などに配慮をしつつ、高額療養費制度や高額介護サービス費制度などの見直しを行います。

 こうした取り組みを通じ、今後とも、社会保障制度を持続可能なものとし、次世代に引き渡していく未来への責任を果たしてまいります。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 二階俊博幹事長より、一億総活躍社会と働き方改革、社会全体のマインド醸成についてのお尋ねがございました。

 我が国の経済成長の隘路の根本にある少子高齢化という構造的な問題に真正面から立ち向かうため、誰もが生きがいを持って、その能力を存分に発揮できる一億総活躍社会の実現を目指してまいります。

 そのため、昨年六月に閣議決定いたしましたニッポン一億総活躍プランに基づき、名目GDP六百兆円、希望出生率一・八、介護離職ゼロに向け、保育、介護の受け皿整備や人材の処遇改善などの取り組みを着実に進めてまいります。

 また、最大のチャレンジである働き方改革については、年度内を目途に、同一労働同一賃金や長時間労働是正に向けた具体的な法制度のあり方を含む実行計画を取りまとめることとしております。

 社会全体のマインド醸成については、新聞、雑誌など多様な媒体を活用した広報への取り組みはもとより、制度改正や法執行の強化により経営層などの意識改革を迫るとともに、有識者や現場の方々との意見交換、労使団体への呼びかけ、先導的な企業の取り組みとその成果の紹介などにより、広く国民の理解と参加を得るべく、社会全体のマインド醸成を図ってまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 大串博志君。

    〔大串博志君登壇〕

大串博志君 民進党の大串博志でございます。

 私は、民進党・無所属クラブを代表し、安倍総理の施政方針演説について質問をさせていただきます。(拍手)

 まず、私も、野田幹事長と同様、熊本地震、相次ぐ台風被害、さらには糸魚川大火事と、大きな災害に見舞われた被災地の皆様に心からお見舞いを申し上げるとともに、復興復旧に向けて全力で取り組んでいく決意を表明させていただきたいと思います。

 さて、安倍政権のおごり、緩みが省庁にも波及しているのではないかと思われる問題が発覚しました。文部科学省が、元高等教育局長の天下りなどを組織的にあっせんしたという国家公務員法違反等の事案です。一連の責任をとって、事務次官が辞任し、さらに幹部七名が処分される事態となりました。

 組織的な天下りあっせんで、一体何人がどこに天下っていたのか、その全容はまだ全く明らかになっていません。しかも、再就職等監視委員会に対する隠蔽工作と大学との口裏合わせまで行っていたとのことであり、悪質きわまりないものです。

 文部科学大臣にお尋ねします。

 このような悪質な事案はなぜ発生したとお考えでしょうか。隠蔽工作まで行われていたとのことですが、文科省におけるガバナンスはどうなっているのでしょうか。いつ、どのような経緯で大臣その他政務三役に情報が上がり、どのような指示を出されたのでしょうか。そもそも役所全体の体質が問われる問題であって、事務次官まで関与していたわけですから、トカゲの尻尾切りで済む話ではありません。大臣自身の責任も免れないと思いますが、いかがでしょうか。責任ある答弁をお願いします。

 国家公務員法を改正し、再就職等監視委員会の設置を決めたのは第一次安倍内閣のときです。安倍総理は、法案の趣旨説明で、これらの措置により天下りは根絶できると答弁しましたが、今回の事案は、安倍政権のもとで霞が関が緩み切っていることを端的に示しています。

 他省庁では同様の事案はないのか、政府全体の信頼をどう取り戻すのか、これらに向けた対応をどう考えるのか、安倍総理の責任も重大です。総理の明確な答弁を求めます。

 今回もまた、指摘しなければならない閣僚や前閣僚の看過できない行動や発言があります。

 まず、年末の稲田防衛大臣の靖国神社参拝についてお聞きします。

 私も、祖国のために命をささげた英霊に感謝と敬意と追悼の意をあらわすことの大切さは十分に理解いたします。しかし、防衛大臣という立場の重さがあります。

 総理の真珠湾訪問に同行した稲田大臣は、ハワイから帰国直後のタイミングをわざわざ選んで、現役の防衛大臣として初めて靖国神社を参拝しました。これは、総理がオバマ前大統領とともに訴えた和解の力のメッセージを損なうと同時に、地域の緊張を高める行動と言わざるを得ません。

 この稲田大臣の靖国神社参拝について、総理への事前の報告はあったのでしょうか。そして、総理は了解されたのでしょうか。そもそもこの参拝は、我が国の諸国との和解に資するのでしょうか。総理にお伺いします。

 次に、高木毅前復興大臣が、約三十年前に女性の下着を盗んだとする疑惑についてです。

 自民党福井県連の独自調査の結果、高木前大臣が現行犯逮捕されたということです。

 高木前大臣は、大臣在任中、疑惑に関し、そんな事実はないと繰り返し答弁していたのは全くうそだったことになります。総理も黙認するかのような答弁をしてきました。うそをつき続けた大臣に震災復興という重要任務を任せたのであれば、総理もその任命責任を免れません。

 山本拓自民党福井県連会長あるいは高木前大臣のどちらかがうそをついているのでしょうか。総理の所見を求めます。

 安倍総理の経済運営のもとで、既に四年余りが経過しました。

 安倍総理はアベノミクスの成果を自画自賛していますが、他方で、各種世論調査では、実に七割から八割の人々が景気回復を実感できないと回答し続けています。このことは、実質経済成長率や実質賃金が旧民主党政権時を下回っていることからも裏づけられます。

 アベノミクスの失敗は税収にもあらわれています。平成二十八年度第三次補正予算では、一・七兆円も税収を下方修正する羽目に陥りました。

 他方で、GDP基準を改定して数字をかさ上げする等、アベノミクスが前に進んでいるように見せかけるためのびほう策が目に余ります。

 アベノミクスの失敗を覆い隠すように、実行が伴わないスローガンばかりが打ち出され続けています。地方創生、女性活躍社会、新三本の矢及び一億総活躍社会、そして今国会は、未来を開く。空疎なスローガンはもう聞き飽きました。

 一体安倍総理は何をしたいのか、日本をどこへ向かわせようとしているのか、さっぱりわかりません。

 円安、株高に誘導しても、企業や国民に根強い将来不安がある限り、設備投資も消費も伸びません。これがアベノミクス失敗の根源です。

 今必要なことは、将来不安の払拭と持続的な経済成長のための人への投資です。民進党は、昨年末、この人への投資を軸に据えた経済政策を取りまとめました。

 国民の将来不安は、短期的には消費、長期的には人口動態にあらわれます。将来不安を払拭すれば、消費も上向き、家庭を持つことのハードルも下がり、必ずや経済成長につながります。

 また、知識とイノベーションを生み出す主体である人を育て、成長させることこそが、民進党の経済政策である人への投資です。

 この観点から、民進党は、人への投資のために、就学前教育から大学までを含めた教育の無償化を大胆に進めることを提言します。

 具体的には、就学前教育の無償化、小中学校の給食費等の無償化、子供たちを区別しない高校の無償化、大学学費の大幅減免、無利子奨学金の拡充等です。そのための施策を、消費税再引き上げの税収の一部も活用しつつ、段階的にでも実施していくべきです。

 総理、高等教育の経済効果は投資額の二・四倍、就学前教育では二・八倍になるとの試算もあります。アベノミクスの失敗を糊塗するのではなく、国民に将来の安心をもたらすため、今こそ、民進党が主張する人への投資を柱に据えた新しい経済政策に大転換すべきです。総理の御所見を求めます。

 教育の無償化に向けて大胆に人への投資を行っていく観点からは、政府の政策は全く不十分です。

 まず、給付型奨学金です。

 政府も来年度から大学の給付型奨学金を創設するとしていますが、来年度は、月額最大四万円、対象人数はわずかに二千八百人。本格実施以降も、対象規模は一学年当たり二万人にすぎません。これでは余りにも不十分、やったふりをしているだけです。まさかこれで打ちどめですか。総理にお伺いします。

 また、就学前の大きな問題である待機児童解消のための保育士の処遇改善については、政府も平成二十九年度予算案に改善策を盛り込みました。しかし、全職員対象の処遇改善はわずか二%、月額六千円程度。全産業平均との賃金差約十一万を埋めるにはほど遠い金額です。

 潜在保育士の職場復帰等を進めるには、我が党の案のように、全ての保育士の処遇を大幅に月額五万円アップすることが不可欠です。総理の御見解をお伺いします。

 次に、雇用の問題です。

 若者を初め国民一人一人が社会で存分に能力を発揮するためには、雇用の安心が必要です。ところが、安倍政権の働き方改革は言葉だけ、実行を全く伴っていません。

 まず、長時間労働規制についてです。

 電通、高橋まつりさんの痛ましい過労自殺により、他の企業でも違法な長時間労働が行われている実態が次々に明るみに出ています。長時間労働規制は、もはや喫緊の課題です。しかし、働き方改革実現会議は、昨年秋から年末にかけて五回開かれたものの、長時間労働規制は、何と一度も議題に上がっていません。安倍政権の働き方改革は、口先だけと断ぜざるを得ません。

 口先だけでないのであれば、既に民進党など野党四党が提出している長時間労働規制法案を一日も早く審議し、成立させるべきです。あくまでも政府で法案をというのであれば、労働時間の上限規制とインターバル規制を含む法案を即刻この国会に出すべきです。政府の明確な答弁を求めます。

 なお、具体的な労働時間の上限については、ILOの三者構成原則に基づく公正かつ正当な議論の場である労働政策審議会で労使合意のもとで決定されるのが筋であって、その際には、現行の三六協定の一カ月の上限である四十五時間が大事な基礎であることは言うまでもありません。この点につき、総理の考えを伺います。

 政府は、今国会でいわゆる残業代ゼロ法案の審議を求めています。同法案の高度プロフェッショナル制度や裁量労働制の営業職への拡大は、長時間労働是正のための法案とは全く逆向きであり、長時間労働をむしろ助長するものであります。

 安倍政権は、長時間労働をふやそうとしているのか、なくそうとしているのか、全く不明で、支離滅裂としか言いようがありません。本気で長時間労働をなくそうと思うのであれば、残業代ゼロ法案は取り下げるべきです。総理の答弁を求めます。

 次に、同一労働同一賃金についてです。

 政府は、昨年末、同一労働同一賃金ガイドライン案を提示しました。しかし、これに法的拘束力を持たせるには法改正が必要ですが、法案提出のめどは全く見えず、これも安倍総理の本気度は疑わしい限りです。

 非正規雇用で働く方々の厳しい暮らしを考えれば、速やかに法案を提出すべきです。また、法案が本当に効果を発揮するためには、正社員と非正規の労働者の待遇に差をつける際の合理性の立証責任を企業側に負わせるべきです。

 何が合理的かの判断が難しいといった時間稼ぎの理屈にいつまでもつき合ってはいられません。いつ法案を出すのか、また、法案に立証責任を明記するのか、明確な答弁を求めます。

 次に、年金について伺います。

 将来世代を含めた老後の安心のためには、多くの方々が老後破産、老後格差におびえるような年金制度であってはなりません。ましていわんや、平成二十九年度予算案において医療、介護を含めた国民負担増が前提となっていることを踏まえれば、なおさらです。

 しかし、昨年十二月、物価が上がっても賃金が下がれば年金が下がる新ルールを定める年金カット法が、与党等の強行採決を経て成立しました。新ルールのもとでは、現在世代のみならず、将来世代の年金もカットされかねません。

 しかも、政府としての影響試算の求めに対し、厚労省は昨年十二月二十七日になってようやく試算を示しましたが、二年分に限って賃金上昇率をリーマン・ショック時の実績に置きかえただけの全く不十分なものでした。

 そのような不誠実な試算ではなく、デフレから脱却していないという現実を誠実に踏まえた試算を出すべきです。その上で年金のあり方を抜本的に議論することが、将来世代も含めた老後の安心につながります。

 このような誠実な姿勢で抜本改革を進める考えはないのか、総理にお伺いします。

 次に、中小企業政策についてお伺いします。

 人口減少に苦しむ地方、地域の安心を確保するため、中小企業の活力を高めていかなければなりません。

 しかし、現在の中小企業は、アベノミクスが招いた円安による生産コストの上昇などで大変苦しい状況に置かれています。総理は、中小企業の倒産は民主党政権時代と比べて三割減少したなどと胸を張っていますが、休廃業や解散などの形でそもそも事業を断念するケースは依然として高い水準で推移しています。

 中小企業にとって、現在、大きな問題となっているのが人手不足です。しかしながら、中小企業が、人材、特に正社員を雇用できない、ふやせない理由の一番に挙げられるのが、社会保険料の事業主負担の重さです。

 そこで、民進党は、中小企業社会保険料負担軽減法案を提出しています。これは、正規労働者を増加させた中小企業に対し、雇用の増加数に応じて助成金を支給するものです。

 しかし、与党の賛同が得られず、審議すらされておりません。新規人材の活用により中小企業を支えるべく、法案成立に御協力いただきたいと思います。総理の前向きな御答弁を求めます。

 人口減少に苦しむ地方、地域の安心を確保するためには、農林漁業政策は鍵です。ところが、安倍政権の農業、経済連携政策への取り組みは、我が国農業を危機的状況に陥れかねないものと言わざるを得ません。

 まず、TPP協定についての対応です。

 昨年、安倍総理は、トランプ氏がTPP離脱方針を示しているにもかかわらず、国内の強い反対や懸念の声を押し切って、TPP協定承認案を強行に可決させました。

 トランプ大統領は、TPPではなく二国間協定に軸足を移すと明言しています。こうした意向に基づき、仮に日米間でFTA協議を行うことになれば、厳しい要求を相対で突きつけられることになります。特に、TPP協定を国会で強行の上承認可決した今、その内容が交渉のスタートラインとなり、そこからさらなる譲歩を求められることを強く懸念します。

 相手より先にこちらが手のうちを見せる、極めて拙い交渉手法だと思いますが、TPP協定をスタートラインとしないと強くはねられるのか、総理の所見をお伺いします。

 あわせて、日・EU・EPA交渉についても、TPP協定を前提とした結果にならないか、強い危惧があります。総理の方針をお尋ねします。

 なお、牛と豚の畜産経営安定事業、いわゆるマルキンの法制化について、私たち民進党は、TPP協定の発効を待たずに直ちにマルキンを法制化するための議員立法を昨年の通常国会に提出しました。残念ながら廃案となりましたが、我々は同様の法案の再提出を準備しています。

 一方で、与党も我々と同じ内容の議員立法の提出を検討しているとの報道がありましたが、そうであれば、我々の議員立法に与党が賛成していただけるものと思います。自民党総裁でもある安倍総理に方針をお尋ねします。

 トランプ新政権は、大統領就任演説の直後に、六項目の施政方針を発表し、改めてTPPから離脱すると表明しました。安倍政権は、これまでの予算において多額のTPP対策費を計上し、その多くは既に執行されています。TPP協定が発効しないことが明白となった今、投入した予算は何だったのか、総括が必要です。総理の考えを伺います。

 加えて、平成二十九年度予算案にもTPP関連予算が含まれています。組み替えを行うべきと考えますが、総理の所見を伺います。

 昨年十一月、規制改革推進会議が出した農協改革案は、地方の農業の切り捨てになりかねない内容でした。

 もちろん、農協が真に農家のための組織に生まれ変わるための改革が必要であることは論をまちません。しかしながら、農協は純然たる民間組織であって、組合員が共同で設立、所有し、民主的な管理運営を行う協同組合であります。国が組織体制にまで口を出し、数値目標や計画の実施状況を監視するというのは、民間組織に対する過剰な行政指導以外の何物でもありません。

 農協は既に自己改革案を取りまとめて取り組みをスタートさせており、政府が年次計画の進捗を管理するなどということはやめるべきと考えますが、これに関する総理の考えを伺います。

 次に、国民の生活の安心を大きく揺るがす共謀罪の問題について伺います。

 今回の法案提出の検討に当たっては、テロ対策を進めるために、罪名を共謀罪からテロ等準備罪とし、対象を団体から組織的犯罪集団に絞る、要件に実行準備行為も加えるほか、対象罪種の限定を検討することなどが報じられてはいます。

 そもそも共謀罪は、国際組織犯罪防止条約締結のための国内法整備として必要とされています。しかし、同条約は、自国の国内法の基本原則に従って必要な措置をとることを求めているにすぎません。

 この点、我が国の刑法体系においては、予備罪、準備罪、幇助罪、共謀共同正犯などの形で、共謀を犯罪とする措置が既にとられています。ですから、条約が求める国内法の整備としては現行法で十分という有力な議論があります。

 条約に照らして、なぜ共謀罪を創設しなければならないのか、他国で既に条約に従って共謀罪を創設した国はあるのか、答弁ください。

 また、組織的犯罪集団や準備行為に限ったといっても、その定義自体が不明確なことも深刻な問題です。捜査側の解釈によって適用対象が拡大され、権力の濫用につながるおそれがあります。こうした懸念は、前回の廃案時に与党と民主党で行った修正協議の時点から既に指摘されていた話です。

 組織的犯罪集団とは何ですか。準備行為とは何ですか。本当に厳密に定義できるのですか。お答えください。

 今、政府は、テロ対策だというふりをして法案に理解を求めようとしていますが、もし本当にテロ対策に限るのであれば、今度は、国際組織犯罪を処罰するという条約の目的と合致しなくなります。

 テロ対策の重要性は、私たちも十分認識します。しかし、テロ対策の名前をかりて一般市民に対する権力の濫用につながりかねない共謀罪を創設しようとするのは、不誠実きわまりない態度ではありませんか。総理の見解を求めます。

 次に、いわゆるIR法、カジノ法について伺います。

 成長戦略がカジノ頼みとは笑止千万。しかも、議員立法にあるまじき強硬な国会運営の上採決されたことは言語道断です。

 IR法は、必要な法制上の措置を施行後一年以内を目途に講じるよう定めますが、カジノについては、賭博罪に当たらないようにするためにどう違法性をなくすのかという根本的な問題があります。

 加えて、ギャンブル依存症の問題、マネーロンダリング対策、治安対策など、問題は山積しています。政府・与党にギャンブル依存症対策を検討する動きがありますが、それさえ手当てすれば問題が解消されるというものでは全くありません。

 どのような法案が必要で、いつまでに国会に提出するのか、総理にお伺いします。

 東日本大震災からことしの三月で六年目を迎えます。昨年三月からは復興・創生期間に入りましたが、東北の復興はいまだ道半ばです。

 民進党は、震災復興、被災地再生に全力で取り組み続けます。その一環として、昨年、復興加速と今後の災害対策のための四法案を国会に提出しました。復興を進めるために重要な法案ですから、成立に御協力いただきたいと思います。総理の前向きな答弁を求めます。

 福島の原子力災害については、福島第一原発事故の処理に必要とされる金額が、総額十一兆円から二十一・五兆円と、ずるずると十兆円以上もふえるという試算が発表されました。さらに大幅な費用増の可能性もあります。この費用は、原因者である東京電力が負担すべきであることは当然です。

 ところが、昨年十二月に閣議決定された福島復興加速のための基本方針では、福島第一原子力発電所の廃炉費用、賠償費用について、送電線の利用料にしわ寄せするとしました。結局、新旧電力会社を通じて利用者の負担となります。

 そもそも、原発は安全で重大な事故は起きないという神話を守るためにこの議論を避けてきた国と電力会社の責任は重大です。国と電力会社の責任を明らかにしないまま、特定の供給区域内の全ての利用者に一律に負担を求める仕組みを設けるべきではありません。総理の所見をお伺いします。

 最後に、沖縄に対する安倍政権の姿勢についてお伺いします。

 昨年十二月、米軍普天間飛行場をめぐる違法確認訴訟で、県側敗訴が確定しました。しかし、政府と自治体や住民との間の意見対立は、司法の場だけで解決できるものではありません。第二次安倍政権発足以降、多くの住民の気持ちを踏みにじる強引な進め方によって、対立はむしろ深刻化しています。一定条件を前提として出された司法判断を金科玉条のように振りかざしてさらに強引な手法に傾けば、県民の怒りはさらに強まるのではないでしょうか。

 さらに、同月、米海兵隊のオスプレイが沖縄県名護市の海岸に墜落する事故が起こりました。事故からわずか六日で飛行再開、そして年始には空中給油訓練が日本政府の容認のもと再開されました。これは県民不在の中での決定であり、しかも原因が明確に究明されていない中での見切り発車とも言える決定であって、さらなる沖縄の怒りを買っています。

 この間の沖縄に対する政府の対応を見ていると、政府の視野には沖縄の人々の声や思いが入っていないのではないかと危惧しています。沖縄に寄り添い、沖縄の意見に耳を傾けることが、沖縄県民のみならず、中長期的な日米関係の安定的発展や沖縄を含めた南西島嶼部の安全保障という見地からも必要なのではないかと私たちは考えますが、総理の基地問題に関する沖縄県民の皆さんに対する考えをお聞かせください。

 昨年末、ノートルダム清心学園理事長であられた渡辺和子さんがお亡くなりになりました。その著書である「置かれた場所で咲きなさい」は、今を生きる多くの人々の共感を呼び、ベストセラーとなりました。このことは、安倍政権のもと、置かれた場所で咲きたくても咲けない悩みを抱えた人たちがたくさんいることの証左でもあります。

 子供が生まれた喜びもつかの間、保育園探しで母子ともに疲れ果て、大学まで卒業しても多額の奨学金の返済を背負い、就職しても厳しい残業に追われる日々。地域の産業は廃れ、人口減少はとまらない。そして、老後は老後破産や老後格差におびえる。これでは、とても安心して花を咲かせることができません。

 国民一人一人がその花を咲かすことができない状況を拡大させ続けた安倍政権にかわって、我々民進党こそが、将来不安を解消し、人への投資を進めることで、国民一人一人が大輪の花を咲かせる社会をつくり上げることをお約束申し上げ、私の質問といたします。

 御清聴ありがとうございます。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 国家公務員の天下りについてお尋ねがありました。

 今回の文部科学省における再就職規制違反事案は、国民の信頼を揺るがすものであり、あってはならないことであります。まずは、文部科学省において徹底した調査を行い、再発防止策を講じてもらいたいと思います。

 また、現行制度による厳格な監視が機能したからこそ本事案が明らかになったものでありますが、本事案で生じた国民の疑念を払拭するため、山本国家公務員制度担当大臣に対し、同様の事案がないかどうか、全省庁について徹底的な調査を行うよう指示をいたしました。

 今後、準備ができ次第調査をし、その結果を明らかにしてまいります。

 稲田大臣の靖国神社参拝に関する事前報告と了解、また、和解との関係についてのお尋ねがありました。

 国のために戦い、とうとい命を犠牲にされた方々に対して、哀悼の誠をささげるとともに、尊崇の念を表し、みたま安らかなれと御冥福をお祈りすることは自然なことだと思います。

 その上で、閣僚が私人としての立場で行う靖国神社参拝については、政府として立ち入るべきものではないと考えており、お答えは差し控えたいと思います。

 高木前復興大臣に関する私の任命責任についてお尋ねがありました。

 閣僚の任命責任は、内閣総理大臣たる私にあります。その上で、政治家の行動については、内閣、与党、野党にかかわらず、一人一人の政治家が、国民の信頼が得られるよう、みずから襟を正し、説明責任を果たしていかなければならないものであります。

 なお、お尋ねの事柄については、閣僚当時、高木議員御本人が、国会の場において、報道されている内容を明確に否定しているものと承知しています。

 なお、高木前復興大臣は、昨年三月には復興・創生期間における東日本大震災からの復興の基本方針を取りまとめるなど、復興大臣としての在職期間中、東日本大震災からの復興という重要な職責を十分に果たしたものと考えています。

 人への投資についてお尋ねがありました。

 安倍内閣が進めている政策は、成長と分配の好循環をつくり上げていくというものであります。成長し、富を生み出し、それが国民に広く均てんされ、多くの人たちがその成長を享受できる社会を実現していきます。

 政権交代後、アベノミクスによって、極めて短い期間で、デフレではないという状況をつくり出すことができ、名目GDPは四十四兆円、実質GDPは二十五兆円増加し、過去最高の水準となりました。

 特に、国民生活にとって最も大切な雇用は大きく改善しており、就業者数は百十万近く増加、そして有効求人倍率は、史上初めて四十七全ての都道府県で一倍を超え、賃上げは、中小企業を含め、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが三年連続で実現し、税や社会保障負担等を差し引いた家計の可処分所得は二年連続で増加するなど、全国津々浦々で確実に経済の好循環が生まれています。

 さらに、国、地方を合わせた税収は二十二兆円増加しました。

 世論調査について御指摘がございました。

 世論調査における民進党の支持について申し上げる気持ちはございませんが、安倍内閣発足後と民進党政権時代の生活意識を比較した内閣府の調査では、現在の生活に満足を感じている人がふえ、不満を感じている人が減っているという結果が出ています。

 アベノミクスの取り組みをさらに進め、力強い成長を実現してまいります。そして、成長の果実も生かしながら、人への投資や一億総活躍社会への実現に向けた取り組みを進めていきます。

 平成二十九年度予算においては、保育士、介護人材等の処遇改善や教育費負担の軽減等、若者への投資も拡大しております。

 民進党も、まず、赤字国債で財源を賄う、または民進党政権の際の子ども手当のように財源がはっきりしないというような提案ではなく、しっかりした財源も含めた、実現可能で責任ある案を出していただきたいと思います。

 教育投資は未来への先行投資です。特に、どんなに貧しい家庭で育っても夢をかなえることができるよう、誰もが希望をすれば進学できる環境を整えなければなりません。このため、これまでも、幼児教育無償化の段階的推進、奨学金制度の充実、授業料免除の拡大などに取り組んできたところであります。

 来年度からは、高校生への奨学給付金を拡充するとともに、成績にかかわらず、必要とする全ての学生が無利子の奨学金を受けられるようにします。さらに、返還不要の給付型奨学金制度を新たに創設することとしました。

 意欲と能力があるにもかかわらず、経済的理由によって進学を断念せざるを得ないということがあってはなりません。高等教育について、家庭の経済状況にかかわらず、必要とする全ての子供が機会を与えられるようにしていきたい。今後とも、必要な財源を確保しつつ、しっかりと取り組んでまいります。

 保育士の待遇改善についてお尋ねがありました。

 安倍政権では、高い使命感と希望を持って保育の道を選んだ方々に仕事を続けていただくために、処遇改善を初め、潜在保育士の再就職支援や保育士の事務負担の軽減などに総合的に取り組んでいます。

 民進党等が提出した法案については、恒久的な財源の確保策が明らかになっていない点、人材確保のための総合的な対策となっていない点が問題であると考えます。

 そもそも、民主党は、あの三年三カ月、保育士の処遇改善を何一つ行わず、それどころか、給与はマイナス一・二%、引き下げられているんです。

 安倍政権は、政権交代直後から、毎年度、保育士等の待遇改善に取り組んできました。来年度、全職員について二%改善し、安倍政権のもと、合計一〇%の改善が実現します。

 一律の処遇改善に加え、努力が評価され、将来に希望が持てるようなキャリアアップの仕組みを構築します。このため、経験年数がおおむね七年以上の中堅職員に対しては月額四万円、経験年数がおおむね三年以上の職員に対しては月額五千円の処遇改善を行います。

 長時間労働の是正についてのお尋ねがありました。

 一年余り前、入社一年目の女性が、長時間労働によって過酷な状況の中、みずから命を絶ちました。このような悲劇を二度と繰り返さないとの強い決意で長時間労働の是正に取り組みます。

 野党が提出している労働基準法改正案では、どのような方に何時間の時間外労働の上限をかけるのか全く検討されておらず、厚生労働省令に丸投げするなど、具体的な中身がありません。現実を変えるためには、しっかりと問題の構造を突き詰め、具体的な内容を示し、実行しなければなりません。

 政府としては、いわゆる三六協定でも超えることができない、罰則つきの時間外労働の限度を定める法改正に向けて作業を加速し、早期に法案を提出します。しっかりと結果を出す働き方改革を進めてまいります。

 働き方改革実現会議については、毎回テーマを決めて議論しています。長時間労働の是正は改革の柱となる重要なテーマであり、当然、しっかりと議論していきます。

 勤務間インターバルは、働く方の生活時間や睡眠時間を確保し、健康な生活を送るために重要です。インターバルを導入する中小企業への助成金の創設や好事例の周知を通じて、自主的な取り組みを推進し、将来採用する企業の割合をふやすことで、規制導入についての環境整備を進めます。

 なお、働き方改革実現会議では、私みずから議長となってレベルを上げて、労使のトップに集まっていただき、審議を行っています。労働政策審議会での取り扱いについては、この場で取りまとめる実行計画の中身を見て扱いを検討します。

 労働基準法改正法案についてのお尋ねがありました。

 現在提出している労働基準法改正案は、長時間労働を是正し、働く人の健康を確保しつつその意欲や能力を発揮できる新しい労働制度の選択を可能とするものであり、残業代ゼロ法案といったレッテル張りの批判に明け暮れていれば、中身のある議論が行えない、このように思うところでございます。

 同一労働同一賃金についてお尋ねがありました。

 昇給の扱いが違う、通勤などの各種手当が支給されない、福利厚生や研修において扱いが異なるなど不合理な待遇差を個別具体的に是正するため、詳細なガイドライン案を昨年末公表しました。

 このガイドライン案の実効性を担保するため、裁判での強制力を持たせるようにする法改正案の早期国会提出を目指し、三月の働き方改革実行計画の取りまとめを受けて立案作業を進めます。

 裁判上の立証責任についてのお尋ねがありますが、訴訟においては、訴える側、訴えられる側がそれぞれの主張を立証していくことになるものと思われます。

 いずれにせよ、法制度の具体的内容については、働き方改革実現会議等の場で議論をいただきたいと考えております。

 年金制度の抜本改革についてお尋ねがありました。

 さきの臨時国会で成立した年金改革法は、仮に賃金が物価より低下するという望ましくない経済状況となったときでも、将来の所得代替率をこれ以上下がらないようにし、将来世代の給付水準を確保するものです。

 年金制度を決して政争の具としてはなりません。今回の年金改革法をあたかも年金額を引き下げるための法律であるかのように表現することは、国民に無用の誤解を与えるものです。厳に慎んでいただきたいと思います。

 お尋ねの試算は、御党からの強い求めに応じて、一時的に賃金がリーマン・ショック時並みのマイナスとなるような前提を置いて、昨年末に厚生労働省からお示ししたものであり、誠実に対応したものと考えています。

 安倍政権では、デフレから脱却し、賃金上昇を含む経済の再生に全力で取り組んでいます。中長期にわたって賃金が低下する状況はそもそも想定していません。不適切な前提に基づいた試算を行うことは、責任ある立場として決して行うべきでないと考えています。

 安倍政権は、我が国の年金を、将来世代への責任を果たし、持続可能な制度としていくため、今般の改革法を初め、不断の改革に今後とも取り組みます。

 その上で抜本改革とおっしゃるのであれば、国民の前で議論する場であるこの国会に具体的なその案を提出していただきたいと思います。

 民進党提出の中小企業社会保険料負担軽減法案についてのお尋ねがありました。

 社会保険料の事業主負担は、年金や医療の給付を保障することで、働く人が安心して就労できる基盤を整備することが、事業主の責任であるとともに、働く人の健康の保持及び労働生産性の増進を通じ、事業主の利益にも資するという観点から、事業主に求められているものです。

 御党の法案は、社会保険料の事業主負担を十年もの長期にわたり公費で肩がわりするものであり、適当ではないと考えます。

 日米FTA及び日・EU・EPA交渉についてお尋ねがありました。

 トランプ政権の貿易政策については、今後、閣僚人事の承認が進み、体制が整うに従って具体化されてくることと思われます。それまでは、米国の方針を予断することは差し控えたいと思います。

 まずは、日米経済関係をどのように発展、深化させていくか、新政権とさまざまなレベルで議論していきたいと思います。その中で、国会で御承認いただいたTPP協定が持つ戦略的、経済的意義についても、腰を据えて理解を求めていきたいと考えています。

 自由で公正な二十一世紀型の通商ルールを目指すEUとの交渉については、できる限り早期の合意を目指し、精力的に交渉を進めています。その内容については、攻めるべきは攻め、守るべきは守り、国益の観点から最善の結果を追求していきます。

 肉用牛の肥育及び養豚に関する経営安定対策、いわゆるマルキンについてお尋ねがありました。

 牛・豚マルキンについては、昨年秋の臨時国会において成立したTPP整備法により法制化され、TPP協定の発効日に施行されることとされています。

 これらはTPP協定の発効による関税削減等の影響に対応するためのものであることから、政府としては、協定の発効日から実施することが適当であると考えております。

 昨年、御党を初め野党四党が提出した法案は、TPPによる影響が生じていない段階で新たな国庫負担を伴う経営安定対策を講じようとするものであり、適当でないと考えています。

 TPPと予算についてお尋ねがありました。

 一昨年十一月に決定した総合的なTPP関連政策大綱に掲げられた施策には、TPPの発効を見据え、これに備えることをきっかけとした海外展開を可能とする中小企業等への支援、対内直接投資の活性化、農林水産業の体質強化など同協定の発効を前提とせずに取り組むべき施策と、TPP協定発効後に必要となる施策の二種類があります。

 これまで予算措置したもの及び平成二十九年度における政策大綱を実現するための予算案については、その内容を既に公表していますが、全て前者に該当するものであります。これらは、いずれも、世界の自由貿易の推進に主導的な役割を果たしていく我が国として、TPPにかかわらず、我が国の経済再生、地方創生のため、実施していく必要があるものと考えております。

 農協改革についてお尋ねがありました。

 昨年十一月に決定した農業競争力強化プログラムにおいては、農業者の所得向上を図る観点から、生産資材価格を国際水準まで引き下げ、農産物の流通、加工構造を時代の変化を踏まえた効率的なものにしていくための施策を盛り込みました。

 中でも、役割の大きい全農が生産資材の買い方や農産物の売り方を改革すれば、関係業界の再編も大きく動き出します。本プログラムは、全農とも合意の上で取りまとめたものです。そして、現在取り組んでいる自己改革をより一層後押しする内容であるとJAグループみずから評価されています。

 合意内容を確実に実現し、農業者の所得向上を図っていくため、全農の年次計画の進捗を管理することは政府として当然のことであり、行政による過剰な行政指導であるとの指摘は当たりません。

 政府としても、本プログラムを実現するため、農業版の競争力強化法案を初め、八本に及ぶ農政改革関連法案を今国会に提出することとしております。農家のための全農改革を初め、引き続き抜本的な農政改革を進めてまいります。

 国際組織犯罪防止条約が求める国内法の整備についてお尋ねがありました。

 この条約は、重大な犯罪を行うことの合意または組織的な犯罪集団の活動への参加の少なくとも一方を犯罪とすることを求めています。

 我が国の現行法の規定には、この条約が求める重大な犯罪の合意罪はごく一部しか存在せず、また、そもそも参加罪も存在しません。したがって、我が国の国内法はこの条約上の義務を満たしておらず、新たな立法措置が必要であると考えております。

 重大な犯罪の合意罪について、この条約を締結するに当たり新たに国内法を整備した国としては、ノルウェー及びブルガリアがあると承知していますが、米国や英国等は重大な犯罪の合意罪を、ドイツやフランス等は参加罪を、この条約の締結以前よりそれぞれの国内において法制化していたため、新たに国内法を整備する必要はなかったと承知しております。

 いずれにせよ、三年後に差し迫った東京オリンピック・パラリンピックを開催するためには、テロを含む組織犯罪を未然に防止し、これと闘うための国際協力を可能にするこの条約を締結することは必要不可欠であります。

 なお、現在政府が検討しているテロ等準備罪は、テロ等の実行の準備行為があって初めて処罰の対象となるものであり、これを共謀罪と呼ぶのは全くの間違いです。

 テロ対策と国際組織犯罪防止条約の国内担保法の整備との関係についてお尋ねがありました。

 テロが世界各地で発生し、日本人も犠牲者となる中、我が国は、東京オリンピック・パラリンピックの開催を三年後に控え、テロ対策は最重要課題の一つと認識しております。

 テロを防ぐためには、情報収集や捜査共助において国際社会と緊密に連携することが必要不可欠であり、既に百八十七の国と地域が締結している国際組織犯罪防止条約の締結は、そうした協力関係を構築する上で極めて重要な前提です。

 開催国である我が国が、条約の国内担保法を整備し、本条約を締結することができなければ、東京オリンピック・パラリンピックを開けないと言っても過言ではありません。

 国内担保法のあり方については、現在、犯罪の主体を一定の犯罪を犯すことを目的とする集団に限定し、準備行為があって初めて処罰の対象とするなど、一般の方々がその対象となることはあり得ないことがより明確になるよう検討を行っているところであり、国民の皆様の御理解を得られるように、法整備に努めてまいります。

 IR推進法に基づく必要な法制上の措置についてのお尋ねがありました。

 まず初めに、成長戦略がカジノ頼みという、根拠のない中傷はやめていただきたい。政権交代後、アベノミクスによって、極めて短い期間で、デフレではないという状況をつくり出すことができ、名目GDPは九・〇%、四十兆円、実質GDPは五・一%、二十五兆円増加し、過去最高の水準となっています。お互い、建設的な議論を行おうではありませんか。

 統合リゾートについては、ホールや水族館など家族連れで過ごせる施設があり、ビジネスの国際会議を世界じゅうから招致し、家族連れで会議に参加してもらえるなど、まさに総合的なリゾート施設であり、観光や地域振興、雇用創出といった効果が非常に大きいと期待されます。

 一方で、さまざまな懸念点もあると認識しており、制度上の措置の検討も必要です。

 IR推進法第五条では、政府は、特定複合観光施設区域の整備に必要となる法制上の措置について、法施行後一年以内を目途として講じなければならないとされています。

 政府としては、推進法の国会審議における御議論や同法案の附帯決議の内容も十分に受けとめながら、さまざまな懸念事項への対策も含め、検討を進めてまいります。

 民進党などの提出法案に対する見解についてお尋ねがありました。

 東日本大震災からの復興については、新たなステージである復興・創生期間の二年目に入ろうとしております。復興は着実に進展しておりますが、切れ目のない被災者支援や、住まいと町の復興、なりわいの再生を一層加速化させるため、今後とも現場第一主義で、被災地の生活環境の整備、復興に向けて全力で取り組んでまいります。

 これまで、住宅の再建、医療、学校施設の復旧等、さまざまな取り組みを進めてきたところであります。その上で、民進党などから提出された四法案が本当に必要かどうかについて、国会で御議論いただければと思います。

 原発事故の対応に関する国と東京電力の責任についてお尋ねがありました。

 東京電力福島原発事故について、政府及び原子力事業者が、いわゆる安全神話に陥り、あのような悲惨な事態を招いたことを片時も忘れず、真摯に反省し、その教訓を踏まえていくべきことは当然のことであります。

 原発事故に係る対応については、東京電力が責任を持って対応し、負担することが大原則です。その上で、福島の復興再生を一日も早く実現するため、国も前面に立って取り組みます。

 東京電力には徹底した経営改革を求めます。同時に、電力自由化のもとで、廃炉、賠償等が中長期的、安定的に実施できるような環境を整備することが政府の責任です。その中で、今回の仕組みは、議員御指摘の安全神話にとらわれた過去の反省に立ちながら、最大限公平性を追求したものであります。

 沖縄の基地問題に関する考えについてお尋ねがありました。

 沖縄の基地負担の軽減を図ることは政府の大きな責任です。同時に、この思いは、国も沖縄の皆さんも同じであり、変わらないはずだと思います。

 かつて、最低でも県外という、裏づけのない言葉だけの政治が沖縄の皆さんを翻弄し、失望だけが残りました。あの三年三カ月、普天間飛行場の現実は、一ミリたりとも変わることはありませんでした。

 必要なことは、実行です。沖縄の皆さんの思いを実現するため、理解を得る努力を続けながら、確実に結果を出していくことであります。

 普天間に配備されていた空中給油機十五機全機について、山口県岩国基地への移駐を実現いたしました。

 言いたくはありませんが、民進党政権時代には全く動かなかったではありませんか。のみならず、この移駐等について、岩国基地の負担に対して、地元の民主党の国会議員は反対をしていたんです。

 これをしっかりと説得して、地域の自治体の皆さんとしっかりと話し合いながら、地域の皆さんの理解を得て実行している。そのことを、今まさに政府に求められているんです。言葉だけではかえって混乱を招くということは、皆さんにはっきりと申し上げておきたいと思います。

 現在の普天間の移設も、沖縄県と合意した和解の内容に従って進めているものです。国は、和解に従って、全ての埋立工事を一時中断してきました。

 司法の判断を仰ぐことも、和解に沿ったプロセスです。国と県は、確定判断とその趣旨に従い、互いに協力して誠実に対応することも合意しています。

 政府としては、引き続き、和解の内容に従い、一日も早い普天間の全面返還に向け、全力で取り組んでまいります。

 また、オスプレイを含め米軍機の飛行安全の確保は、米軍が我が国に駐留する上での大前提です。

 引き続き、事故の再発防止を強く求めるとともに、米側と連携を密にして、安全確保に万全を期してまいります。

 なお、オスプレイの普天間への配備は民主党政権時代に決定されたものでありますが、平成二十四年十月一日、野田総理は記者会見において、オスプレイの安全性について、日本政府として、安全性を十分に確認できたと考えていますと答弁されていることも申し添えておきたいと思います。

 その判断は、現在も妥当なものと考えております。

 今後とも、抑止力を維持しながら、沖縄の基地負担軽減に一つ一つ結果を出していく決意であります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣松野博一君登壇〕

国務大臣(松野博一君) 職員の再就職等規制違反についてのお尋ねがありました。

 今回の問題については、文部科学省全体として、再就職等規制の理解が不十分であったこと及び関係法令の遵守の意識が不足していたことが、背景の一つにあると考えております。

 まず、この点につきまして、文部科学省全体として深く反省すべきであると考えております。

 また、職員が再就職等監視委員会の調査に対して虚偽の報告をし、隠蔽を行ったことについては、まことに遺憾であり、国民の信頼を裏切る行為であったと認識しています。

 これらの行為について、関係者に対し厳正な処分を行いました。

 私に対し事務方より報告が上がった時期でありますが、昨年十二月初旬に、再就職等監視委員会から委員会調査が開始された旨の報告がありました。私からは、委員会の調査に誠実に対応するように指示しました。その後、副大臣、大臣政務官に報告がなされたと承知しております。

 私につきましては、文部科学省の責任者として、大臣俸給六カ月の全額を自主的に返納することといたしましたが、今後、再就職等監視委員会から指摘を受けた事項について徹底した調査を行うことはもちろん、これらのほかに再就職等規制に違反するものがなかったかどうかにつきましても、この再就職等規制制度発足時にさかのぼってしっかりと調査をし、厳正に対処してまいります。

 さらに、このような問題が二度と生じないようにするために、文部科学省職員の抜本的な意識改革及び省内の体制づくりを責任を持って進めてまいります。(拍手)

     ――――◇―――――

笹川博義君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十四日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

副議長(川端達夫君) 笹川博義君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(川端達夫君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       財務大臣     麻生 太郎君

       総務大臣     高市 早苗君

       法務大臣     金田 勝年君

       外務大臣     岸田 文雄君

       文部科学大臣   松野 博一君

       厚生労働大臣   塩崎 恭久君

       農林水産大臣   山本 有二君

       経済産業大臣   世耕 弘成君

       国土交通大臣   石井 啓一君

       環境大臣     山本 公一君

       防衛大臣     稲田 朋美君

       国務大臣     石原 伸晃君

       国務大臣     今村 雅弘君

       国務大臣     加藤 勝信君

       国務大臣     菅  義偉君

       国務大臣     鶴保 庸介君

       国務大臣     松本  純君

       国務大臣     丸川 珠代君

       国務大臣     山本 幸三君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  萩生田光一君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  横畠 裕介君


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