衆議院

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第3号 平成29年1月24日(火曜日)

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平成二十九年一月二十四日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第三号

  平成二十九年一月二十四日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 検察官適格審査会委員及び同予備委員の選挙

 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)


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    午後二時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) この際、御紹介申し上げます。

 ただいまポール・マシコット上院議員及びテリー・シーアン下院議員を共同団長とするカナダ連邦議会議員団御一行が外交官傍聴席にお見えになっておりますので、諸君とともに心から歓迎申し上げます。

    〔起立、拍手〕

     ――――◇―――――

 検察官適格審査会委員及び同予備委員の選挙

議長(大島理森君) 検察官適格審査会委員及び同予備委員の選挙を行います。

笹川博義君 検察官適格審査会委員及び同予備委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(大島理森君) 笹川博義君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、検察官適格審査会委員に

      平口  洋君    葉梨 康弘君

   及び 階   猛君

を指名いたします。

 また、

 古賀篤君を葉梨康弘君の予備委員に、

 若狭勝君を古川禎久君の予備委員に、

 柚木道義君を階猛君の予備委員に

指名いたします。

 なお、予備委員宮路拓馬君は平口洋君の予備委員といたします。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

議長(大島理森君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。井上義久君。

    〔井上義久君登壇〕

井上義久君 公明党の井上義久です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました安倍総理の施政方針演説に対し、総理並びに関係大臣に質問します。(拍手)

 安倍総理は、今国会を未来を開く国会と位置づけ、困難な課題に真正面から立ち向かい、新しい国づくりの実現に強い決意を述べられました。私も同じ思いです。

 我が国は、現在、人口減少と高齢化が同時に進行し、未来を悲観的に捉える議論が広まっています。しかし、私は、高度なスキルを有した優秀な中高年者や就職氷河期に就職活動に失敗した高学歴ニート、女性や高齢者の活躍など、日本の持つ潜在力を引き出すことによって、活力ある日本の未来を切り開くことができると確信しています。

 総理は、昨年九月、米国で講演された際に、日本の人口減少や高齢化について、重荷ではなくボーナスだと強調されました。事実、日本はこの四年間で、生産年齢人口は三百四十万人減少しましたが、名目GDPは四十四兆円増加し、九%の経済成長を実現しています。

 安倍内閣発足から四年、自民党と公明党の連立与党による安定した政治基盤のもと、これまでの的確な政策対応によって、経済再生は着実に成果を上げ、経済成長の果実を多くの人々に届ける流れが生まれてきています。

 まずは、成長と分配の好循環をより確実なものとし、さらに、地方創生や社会保障の安定と充実、働き方改革、一億総活躍などの課題に果敢に挑戦をし、社会の隅々にまで希望が行き渡る国を実現しようではありませんか。

 以下、諸課題について質問します。

 初めに、経済再生と、そのために必要な成長戦略について質問します。

 人口減少が進む我が国にあって、経済の好循環と財政再建という二つの目標を達成するためには、働き方改革や技術革新、イノベーションによる生産性の向上などを通じて我が国の持つ潜在力を引き出し、経済の底上げを図る成長戦略が鍵となります。

 安倍内閣では、日本再興戦略を策定し、IoTやビッグデータ、ロボット、人工知能、AIの活用など、第四次産業革命の実現を経済成長の柱に据えて取り組んでいます。しかし、他方で、産業構造の転換による雇用機会の喪失やIoT機器へのサイバー攻撃の懸念など、期待と不安が交錯しているのが現状です。

 公明党は、技術革新の恩恵を国民が享受し、豊かさを実感できる成長戦略、そして、少子高齢化や人口減少など我が国が直面する課題の克服と将来不安を解消する課題解決型のイノベーション創出に重点的に取り組むべきと考えます。

 例えば、昨年、高齢ドライバーの交通事故が相次ぎ、社会問題として大きく取り上げられました。その要因として、運転手の高齢化による身体能力や判断能力の低下、高齢者の生活の足として、マイカーにかわる移動手段が不足していることなどが指摘されています。

 そこで、こうした事故を未然に防ぐ取り組みとして、自動ブレーキなどの安全装置の開発普及や、自動走行による地域の移動手段の確保などが注目されています。

 また、人工知能を搭載したロボット開発の促進は、介護現場や宿泊施設などの労働力不足を補うだけではなく、日本の高い技術力を海外市場に展開する大きなチャンスともなります。

 こうした技術の活用と実用化に向け、安全性の向上を初め、産学官連携した研究開発の促進や、企業の設備投資を後押しする環境整備、さらには新たな技術を担う人材の育成が急務です。

 課題解決型のイノベーション創出とその支援策について、総理の答弁を求めます。

 持続的な経済成長や地方創生の実現には、中小企業やサービス業を中心とした地域経済の活性化が不可欠です。人手不足で人材の確保に苦労している、業績の回復が不十分で賃上げが難しいなど、中小企業の現場からは切実な声が聞かれます。こうした声を真摯に受けとめ、生産性向上や人材への投資を積極的に促し、地域経済の底上げを図るべきです。

 例えば、ITの集中的な導入支援を通じて生産性を高めることや、地域資源を生かした商品、サービスの開発、海外展開も含めた販路の拡大など、収益力の向上を後押ししつつ、賃金の引き上げへとつなげるべきです。

 また、地域経済の活性化には、域外から需要を取り込むことも重要です。域内から調達し、域外へと販売する、地域経済を牽引する事業を重点的に支援すべきです。

 安倍内閣のもと、訪日外国人旅行者は昨年二千四百万人を突破、農林水産物等の輸出額は三年連続で過去最高を記録しました。観光立国の実現や農産物輸出のさらなる拡大に向け、ソフト、ハード両面にわたる支援を戦略的に進めるべきです。

 農業については、所得向上を目指し、肥料や農薬など資材価格の引き下げ、流通の合理化といった改革を着実に推進すべきです。あわせて、生産者が安心して取り組めるよう、収入保険制度を創設するとともに、米や牛乳・乳製品など農畜産物の需要に応じた生産を推進すべきです。

 各地の特色を生かした地域政策の充実も欠かせません。特に、中山間地域における所得向上を力強く後押しするとともに、都市農業も振興すべきです。

 また、農業や工業のみならず、ニーズに応じた多様な産業が導入されれば、地域の潜在力をさらに引き出すことが期待されます。

 地域の特色ある農林水産物や観光資源などをフル活用し、地域から日本を元気にしていく成長戦略について、総理の答弁を求めます。

 次に、働き方改革について質問します。

 総理は、働き方改革を実行するに当たり、安倍内閣にとって最重要課題であり、先送りは許されないとの覚悟を示されました。長時間労働の是正や同一労働同一賃金の実現、柔軟な働き方の普及などは、公明党がこれまで積極的に取り組んできた分野でもあり、政府においては、働き方改革の実現をスピード感を持ってより一層加速するよう、強く求めます。

 以下、具体的な取り組みについて質問します。

 第一に、長時間労働の是正です。

 一年ほど前、大企業で働く入社一年目の前途ある一人の女性社員が、長時間の過重労働によりみずからの命を絶つという痛ましい事件が起きました。改めて御冥福をお祈り申し上げるとともに、こうした事件を二度と起こしてはならないとの強い決意で長時間労働の是正に取り組まなければなりません。

 政府は、緊急対策として、労働基準法違反を繰り返す企業名の公表対象を拡大し、違法残業時間を月百時間超から月八十時間超に引き下げ、長時間労働の是正に向けた取り組みを強化することを決めています。

 長時間労働の是正に当たっては、三六協定でも超えることのできない、罰則つきの時間外労働の上限を定める法改正を急ぐとともに、退社から出社まで一定時間をあける勤務間インターバルの導入を進めるための法規制もあわせて検討すべきです。

 政府の働き方改革実現会議が、長時間労働の是正などに向けた実行計画を今年度中に作成することになっていますけれども、実態を踏まえつつ、抜け道を許さない、実効性のある仕組みを構築することが必要です。

 長時間労働の是正に向けた具体的な取り組みについて、総理の答弁を求めます。

 第二に、非正規雇用の処遇改善です。

 就職氷河期に自身の就職時期が重なってしまったことにより、安定した雇用につけないままフリーターになってしまっている方々が数多く存在します。就職氷河期世代である現在三十五歳から四十四歳のフリーター数は、ここ数年六十万人前後で高どまりしています。十年前の同年齢層は三十万人程度であることを考えると、フリーターの高齢化が進んでいると言えます。

 アベノミクスの推進により雇用情勢が改善し、その結果、不本意な非正規労働者の減少が見られますが、特に就職氷河期世代に多いとされる不本意非正規労働者の正社員化を促していく必要があります。

 企業が積極的にキャリア形成に取り組む正社員に比べて、非正規労働者は能力開発の機会が不足しています。資格の取得などを可能にする長期訓練の拡充など、非正規労働者のキャリアアップ支援を国が一層推進していくべきです。

 また、非正規労働者の占める割合は全体の約四割となっていますが、その賃金などは正社員との間で大きな開きがあります。

 公明党は、現状、正社員の六割程度である非正規労働者の賃金を欧州並みに引き上げることを提案しています。

 正規と非正規の労働者の不合理な待遇差を解消するため、政府は昨年末に、同一労働同一賃金の実現に向けたガイドライン案を発表しました。非正規労働者の処遇改善が確実なものとなるよう、政府の支援が欠かせません。

 ガイドライン案の実効性を確保することに加えて、人件費の急増が企業経営に与える影響などにも配慮しながら、同一労働同一賃金を実現すべきです。

 非正規雇用の処遇改善に向けた取り組みについて、総理の答弁を求めます。

 社会保障と税の一体改革について質問します。

 我が国の二〇三〇年の高齢化率は三二%になると推計されており、三人に一人が高齢者になる時代を迎えます。

 人口減少と高齢化が進み、社会保障をめぐる環境は大きく変化する中でも、誰もが安心して高齢社会を迎えられるためには、これまで進めてきた社会保障と税の一体改革を着実に実行する必要があります。

 改めて、社会保障と税の一体改革の必要性、また推進について、総理の決意を伺います。

 医療保険制度改革について質問します。

 今般の医療保険制度改革において、七十歳以上の高額療養費の見直しや後期高齢者医療制度における保険料軽減特例などについて見直しが予定されております。高齢者の所得の格差が大きいことは以前から指摘されており、現役並みの所得のある高齢者には一定の負担をしていただくことはやむを得ないと考えます。

 しかし一方で、日々の生活が苦しい、また、ひとり暮らしの高齢者もふえています。高齢になって、ひとり暮らしになる可能性は誰にでもあります。こうした高齢者をどのように支援し、孤立化を防ぐか。

 支援が必要な人に確実に支援が行き渡る、かつ、将来にわたって持続可能な社会保障制度の構築は政治の責任です。

 制度構築に当たっては、世代間の公平やプライマリーバランスといった視点が必要であることは当然ですが、同時に、経済的負担がふえる高齢世帯などに対しては、一人一人の生活実態に即したきめ細かな配慮が必要であることを改めて指摘しておきたいと思います。

 医療保険制度改革の取り組みについて、総理の答弁を求めます。

 年金制度の充実について質問します。

 老後の安心のためには年金制度の充実が必要であることは言うまでもありません。

 消費税率の引き上げが延期されたことによって、一部を除いて、予定されていた社会保障の充実も延期されましたが、我が党の強い主張により、消費税率引き上げを待たずに、ことし八月から、年金の受給資格が二十五年から十年に短縮されます。これにより、新たに六十四万人が年金を受け取れるようになり、しかも、この制度改革によって将来の無年金者がほぼ解消されることにもなります。

 これに加えて、公明党が主張してきた低年金者への福祉的な措置として、最大月額五千円、年六万円を加算支給する年金生活者支援給付金についても、できるだけ早く実現すべきと考えます。

 年金制度の充実について、総理の答弁を求めます。

 がん対策について質問します。

 がんは、日本人の二人に一人が生涯のうちにかかる国民病であり、国民の生命と健康を守る上で、がん対策は国の最重要課題です。

 公明党は、二〇〇六年のがん対策基本法の成立を主導して以来、早期からの緩和ケアの導入や、がん検診受診率の向上、がん登録の義務化など、がん対策を一貫して推進してきました。

 国を挙げてがん対策に取り組んできた結果、がんは、かつての不治の病から、今日、長くつき合う病になったとも言われております。

 そこで新たな課題として浮かび上がってきたのが、治療と就労の両立です。働きながら通院治療するがん患者は約三十三万人に上る一方、がんを患った人の三人に一人が解雇や依願退職で職を失っているのが現状です。

 昨年十二月に改正されたがん対策基本法では、がん患者の雇用継続に企業が配慮するよう努力義務を明記し、患者の就労について企業の配慮を求めています。また、がんに関する知識や理解を深めるため、学校などでのがん教育に必要な施策を講じることも盛り込まれました。

 ことしの夏には、次期がん対策推進基本計画が策定されますが、今回の法改正の趣旨をしっかりと反映した実効性ある基本計画にすべきです。

 がん対策推進基本計画の策定について、総理の答弁を求めます。

 次に、教育支援について質問します。

 近年、子供の貧困対策が大きな課題になっています。貧困の連鎖を断ち切り、生まれ育った環境に左右されることのない社会をつくるには、生活や経済支援に加えて、教育支援が重要です。

 昨年十月末に総務省が公表した調査結果では、一九九九年に統計をとり始めて以来初めて子供の相対的貧困率が減少し、数値も最低を記録しました。安倍内閣が進めてきた教育支援が子供の貧困の連鎖を断ち切ることに一定の成果を上げつつあることのあらわれと考えられます。

 総理は、本年の年頭所感において、子供たちこそ我が国の未来そのものと述べられました。子供たちの可能性を最大限に開花させるために教育はあります。

 公明党はこれまで、全ての子供が希望すれば大学まで進学できる仕組みの構築を一貫して主張し、奨学金の拡充に力を入れてきました。

 二〇一七年度予算案では、有利子、無利子合わせて百三十三万人を超える貸与人員となり、とりわけ、進学意欲があるのに経済的理由で進学を断念せざるを得ない生徒を後押しする給付型奨学金が実現をします。

 来年度は一部先行実施ですが、本格実施となる二〇一八年度からは約二万人規模で実施する予定です。住民税非課税世帯で学校からの推薦を受けた生徒に対して、月額二万円から四万円が給付されます。さらに、公明党の提案で、児童養護施設出身者などには入学時に二十四万円が追加給付されます。

 一方、無利子奨学金については、有利子から無利子への流れを加速させ、来年度も貸与枠が拡大されます。住民税非課税世帯は成績要件が実質的に撤廃となり、さらに、要件を満たしていても予算の関係でこれまで無利子奨学金を借りられなかった人たちも、全てが借りられるようになります。

 加えて、卒業後の所得に応じて奨学金の返還額が変わる新たな所得連動返還型奨学金も本年四月から導入されます。今後、給付型を大きく育てるとともに、無利子奨学金の拡充などによって、より多くの子供たちの進学を支援していくべきと考えます。

 また、二〇一七年度予算案では、奨学金以外にも、教育費負担を軽減するための施策が大きく拡充されました。大学授業料の減免枠が、国立で二千人分、私立で一万人分広がります。私立小中学校に通う年収四百万円未満の世帯には年間十万円の授業料の負担軽減を図り、高校生等奨学給付金については、住民税非課税世帯第一子の給付額が増額されます。

 また、幼児教育の無償化に向けた取り組みとして、住民税非課税世帯の第二子を無償化するとともに、一人親世帯等の保護者負担を第一子について大幅に引き下げることなども盛り込まれました。

 今後も、奨学金制度を初めとする、日本の未来を担う子供たちの可能性を開く教育支援をさらに拡充していくべきと考えますが、総理の決意を伺います。

 東日本大震災の復興加速化について質問します。

 東日本大震災の発災から、この三月十一日で丸六年を迎えます。インフラや住宅の整備、まちづくり、なりわいの再生など、復興は着実に進んでいます。

 しかしながら、今なお約十三万人が避難生活を余儀なくされ、中でも約五万人の方々がプレハブの仮設住宅で六度目の正月を迎えています。痛恨のきわみです。

 被災者が一日も早く当たり前の日常生活を取り戻せるよう、全力を挙げなければなりません。特に、生活再建への不安や社会的孤立などに直面している被災者も多い中で、心のケアのより一層の充実が求められています。

 被災者一人一人が人間としての心の復興、人間の復興をなし遂げるまで、引き続き寄り添い、復興を加速しなければならないと決意を新たにしております。

 来月には復興庁が発足して丸五年になります。この五年間の復興庁の取り組みを総括するとともに、さらなる復興加速へ、総理の決意を伺います。

 昨年八月、与党として、復興加速化のための第六次提言を政府に提出しました。

 この提言を踏まえ、昨年十二月には原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針が閣議決定され、福島の復興加速へ希望の道筋が見え始めています。

 この基本指針には、原発の廃炉技術やロボットの研究開発など、日本の新たな産業基盤を生み出すための福島イノベーション・コースト構想を法律に位置づけることや、福島県を再生可能エネルギーと水素エネルギーのモデル地域として発展させる福島新エネ社会構想の実現に向けた取り組みなどが盛り込まれています。

 避難指示区域がほぼ四月一日までに解除され、希望すれば住民の帰宅が可能になります。また、帰還困難区域についても、二〇一七年度から国の責任で除染やインフラ整備を集中的に進める復興拠点を設置し、五年後をめどに避難指示を解除することを目指しています。国の着実な取り組みが求められます。

 福島イノベーション・コースト構想や、復興拠点の整備などを盛り込んだ福島復興再生特別措置法の改正案が今国会に提出される予定になっています。法案の早期成立に向けて、皆様の御協力を心よりお願い申し上げます。

 原子力事故災害からの福島の復旧復興は緒についたばかりです。被災者にこそ希望が行き渡らなければなりません。

 福島の原子力事故災害からの復興について、総理の決意を伺います。

 近年、各地で、甚大な被害をもたらした自然災害が相次いでいます。

 昨年も、熊本や鳥取県などの地震災害や、北海道や岩手県を中心に甚大な台風被害が発生しています。また、昨年末には、新潟県糸魚川市で大規模火災が発生しました。いずれも復旧復興は緒についたばかりであり、引き続き国の力強い支援が求められています。

 今後も、首都直下地震や南海トラフ巨大地震などの大規模地震の発生が懸念されるとともに、洪水被害や土砂災害をもたらす集中豪雨や台風による大規模な被害の発生は、地球温暖化等の気候変動によって増加傾向にあると指摘されています。

 自然災害の脅威から国民生活を守るための防災・減災対策の強化は、まさに喫緊の課題です。自然災害に対する防災・減災対策の取り組みについて、石井国土交通大臣に答弁を求めます。

 外交課題について質問します。

 総理は、本年初頭から、フィリピン、オーストラリア、インドネシア、ベトナムを歴訪するなど、地球儀を俯瞰する積極的な外交を展開されており、その取り組みを高く評価するものです。

 ことしは、トランプ米国大統領の誕生や、フランス、ドイツなどで選挙が予定されるなど、世界の政治が大きく動くことが予想されています。世界情勢が不透明感、不確実性を増す中で、日本の国益を守り、あわせて我が国が世界の平和と安定や経済の発展に貢献するためにも、総理の強いリーダーシップに期待したいと思います。

 そのためにも、政権基盤の安定が重要であり、公明党としても、自公連携し、安倍内閣をしっかりと支えていく決意です。

 ことしは日中国交正常化四十五周年、来年は日中平和友好条約締結四十周年の節目でもあります。この節目を好機と捉え、さまざまな分野の深化を進め、日中関係を揺るぎないものにすべきです。

 与党としても、日中与党交流協議会などを通じて日中関係の発展に力を尽くしたいと考えています。

 昨年十二月の日ロ首脳会談は、平和条約締結に向けた大きな一歩となりました。

 今後は、会談の成果を踏まえて、日ロ両国の平和条約問題に関する立場を害さないという共通認識のもと、さまざまな分野の共同経済活動を具体的に進めていただきたい。

 また、北方領土の元島民の方々が御高齢であることを十分配慮し、希望につながる取り組みをできるところから着実に実施していただきたいと思います。

 日中、日ロ関係の今後の取り組みについて、総理の答弁を求めます。

 最後に、一言申し上げます。

 今、我が国は、本格的な人口減少社会を迎え、今を生きる私たちはもとより、未来を生きる若者世代のために、安倍内閣として、経済の再生や社会保障の安定、充実、地方創生、働き方改革、一億総活躍社会の実現などの課題に真っ正面から挑戦し、着実に成果を上げてきました。

 安倍内閣が発足して四年。自民党と公明党の連立与党による安定した政権基盤のもと、政治の安定があったればこその成果と確信します。

 しかし、政治が国民の思いを正確に取り込むことができなくなれば、国民の支持を失い、政治は行き詰まります。

 私たち公明党は、これからも、「大衆とともに」の理念のもと、現場第一主義を貫き、国民の思いを酌み取り、一人でも多くの国民に希望が行き渡ることを目指し、全力で闘うことをお誓いし、私の代表質問を終わります。

 御清聴、大変にありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 井上義久議員にお答えをいたします。

 イノベーション創出とその支援策についてお尋ねがありました。

 人口が減り、超高齢化社会を迎える中で、国民生活を豊かにするそのため、御指摘のとおり、課題解決型のイノベーション創出に向け、人工知能やロボットなど、近年の目覚ましい技術革新を産学官が一体となって活用していきます。

 例えば、自動走行については、我が国の英知を結集した研究開発を進めるとともに、官民でロードマップを策定し、安全面を含めて、必要な制度やインフラの整備をまとめています。

 こうした動きに企業も呼応し、ロボットタクシーの実験が藤沢市で実施され、自動運転機能を国産で初搭載したミニバン車が昨年八月に発売されています。

 あすからは、高齢ドライバーの交通事故防止対策の一環として、関係省庁の副大臣が集まり、自動ブレーキなどを搭載した自動車の普及啓発について検討していきます。

 人工知能については、人工知能技術戦略会議において、研究開発目標と産業化のロードマップを本年度中にまとめます。この中で、産学官一体の研究拠点において、介護士の動作などのデータを人工知能によって解析し、介護支援ロボットの研究開発に取り組む予定です。

 こうした技術を産業の現場に速やかに導入するため、革新的な物づくり、サービス開発などの整備、投資を支援するとともに、安全性の確保に加え、個人情報の取り扱い、人工知能時代に活躍できる人材の育成、確保など、幅広い課題に取り組んでいきます。

 地域の成長戦略についてお尋ねがありました。

 みずからの未来を創意工夫と努力で切り開く。安倍政権は、地方の意欲的なチャレンジを応援します。

 地域経済を支える中小企業の生産性向上を図ります。

 一定の要件を満たす経営計画を持った企業であれば、赤字であっても活用できる固定資産税の軽減措置や低利融資等の支援を、製造業から小売サービス業に拡大します。地域経済を牽引する事業を、税、予算、低利融資、規制緩和といった政策手段を組み合わせて重点的に支援してまいります。

 インバウンド需要を取り込むための地域ぐるみでのリノベーションや、農産物輸出に向けた地域商社による販路開拓を実現します。

 日本の地方には、それぞれの魅力、観光資源、ふるさと名物があります。例えば、福島県の歴史的な宿場町、大内宿では、人里離れた山間部に立ち並ぶカヤぶき屋根の民家群を再生し、魅力的な観光資源として開花させました。このような地域の魅力を磨いて経済を活性化させる意欲的な挑戦を、自由度の高い地方創生推進交付金などによって応援します。

 地方経済の核である農業については、農業競争力強化プログラムに基づき、生産資材価格の引き下げや、米などの農産物の流通、加工改革、農産物輸出のさらなる拡大、収入保険制度の導入、生乳改革など、大胆な構造改革を進めてまいります。加えて、中山間地域や都市において、その特色を生かした農業振興を図ってまいります。こうした取り組みを通じ、成長と分配の好循環を全国津々浦々まで広げてまいります。

 長時間労働の是正についてお尋ねがありました。

 一年余り前、入社一年目の女性が、長時間労働によって過酷な状況の中、みずから命を絶ちました。このような悲劇を二度と繰り返してはならないとの強い決意で長時間労働の是正に取り組みます。しっかりと問題の構造を突き詰め、時間外労働の限度は何時間なのか具体的に定め、実行しなければなりません。

 政府としては、三月の働き方改革実行計画の取りまとめに沿って、いわゆる三六協定でも超えることができない、罰則つきの時間外労働の限度を定める法改正に向けて作業を加速し、早期に法案を提出します。

 また、勤務間インターバルは、働く方の生活時間や睡眠時間を確保し、健康な生活を送るために重要です。インターバルを導入する中小企業への助成金の創設や好事例の周知を通じて、自主的な取り組みを推進し、規制導入についての環境整備を進めます。

 大切なことは、スピードと実行です。もはや先送りは許されません。実効性のある施策を必ずややり遂げるという強い意思を持って取り組んでまいります。

 非正規雇用の処遇改善についてお尋ねがありました。

 いわゆる就職氷河期に就職時期を迎えたことなどにより、現在、不本意ながら非正規として働いている方々などの処遇改善や正社員化を進めることは極めて重要と考えております。このため、平成二十九年度予算では、正社員として雇い入れた事業主への助成措置の新設、資格の取得などを可能にする長期訓練の拡充などの支援施策を盛り込んでいます。

 また、同一労働同一賃金については、昇給の扱いが違う、通勤などの各種手当が支給されない、福利厚生や研修において扱いが異なるなど、不合理な待遇差を個別具体的に是正するため、賃金にとどまらず、教育訓練もカバーした詳細なガイドライン案を昨年末公表しました。

 このガイドライン案の実効性を担保するため、裁判での強制力を持たせるようにする法改正案の早期国会提出を目指し、三月の働き方改革実行計画の取りまとめを受けて立案作業を進めます。

 これらの取り組みを着実に進め、非正規労働者の処遇改善や正社員化に全力で取り組んでまいります。

 社会保障と税の一体改革の必要性と推進についてお尋ねがありました。

 少子高齢化が進展する中で、社会保障制度の持続可能性の確保と財政健全化を同時に達成する観点から、引き続き、社会保障と税の一体改革を進めていくことが必要です。

 平成二十九年度予算においては、喫緊の課題である年金受給資格期間の短縮や保育の受け皿の確保など、社会保障の充実を進めているところであり、今後とも、世界に誇るべき社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすため、社会保障と税の一体改革を着実に推進してまいります。

 医療保険制度改革についてお尋ねがありました。

 今回の医療保険制度の改革は、社会全体が高齢化し、医療費が増大する中、制度を持続可能なものとし、次世代に引き渡していくため、高齢者の方々にも、制度の支え手として、負担能力に応じた御負担をいただくものです。

 このため、今回の改革においては、七十歳以上の高額療養費制度の見直しや七十五歳以上の保険料軽減特例の見直しなどを行います。その際、所得の低い方については自己負担の上限額を据え置き、長期に療養される方の外来の自己負担がふえないよう年間上限を創設して負担額を抑える、さらに、所得の低い方の保険料軽減特例は据え置くなど、きめ細かな配慮を行うこととしています。

 政府としては、このような改革を行うことにより、制度の持続可能性を高めてまいります。あわせて、高齢者が住みなれた地域で暮らし続けることができるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく確保される地域包括ケアシステムの構築にしっかり取り組んでまいります。

 年金制度の充実についてお尋ねがありました。

 年金の受給資格期間の短縮については、御党から強い御要望をいただいており、政府としても無年金の問題は喫緊の課題と考えていることから、消費税率引き上げを延期した中でも、本年八月に施行し、十月から新しく六十四万人の方々に年金支給を開始することとしました。

 加えて、今般の年金改革法により、本年四月から、中小企業で働く短時間労働者に被用者保険の適用拡大の道を開くとともに、平成三十一年四月からは、いわゆる第一号被保険者の産前産後期間の保険料を免除することとしております。今後、これらの改革の円滑な施行に取り組んでまいります。

 なお、年金生活者支援給付金も含め、社会保障・税一体改革による社会保障の充実については、給付と負担のバランスを考えれば、消費税率引き上げを延期した以上、全てを行うことはできませんが、引き続き、可能な限り実現できるよう取り組んでまいります。

 がん対策についてのお尋ねがありました。

 国民の二人に一人がかかると言われているがんは、国民の関心が高く、早期発見、早期治療とともに、療養中の生活の質の向上が重要であると考えます。

 昨年十二月、がん対策基本法が改正され、仕事と治療の両立のためのがん患者の就労支援やがんに関する教育の推進などが盛り込まれました。

 既に政府においては、働き方改革実現会議などにおいて、企業と医療機関の連携など、具体策の検討を進めています。

 本年夏を目途に策定する次期がん対策推進基本計画においては、がん検診の受診率の向上、緩和ケアの充実、がん研究の推進などに取り組むとともに、この改正法の趣旨も反映し、就労支援やがん教育などをさらに推進するための方策を盛り込み、がんになっても安心して暮らせる社会の構築に全力で取り組みたいと考えております。

 教育支援の拡充についてのお尋ねがありました。

 我が国の未来、それは子供たちであり、一人一人の個性を大切にする教育再生を着実に進めることが重要であります。どんなに貧しい家庭で育っても夢をかなえることができるよう、誰もが希望すれば進学できる環境を整えなければなりません。このため、これまでも、幼児教育無償化の段階的推進、奨学金制度の充実、授業料免除の拡大などに取り組んできたところであります。

 来年度からは、御党の提言も踏まえ、成績にかかわらず、必要とする全ての学生が無利子の奨学金を受けられるようにします。さらに、返還不要の給付型奨学金制度を新たに創設することとしました。

 意欲と能力があるにもかかわらず、経済的理由によって進学を断念せざるを得ないということがあってはなりません。家庭の経済状況にかかわらず、必要とする全ての子供に教育の機会を与えられるようにしていきたい。今後とも、必要な財源を確保しつつ、教育費負担の軽減にしっかりと取り組んでまいります。

 東日本大震災の復興支援、原子力事故災害からの福島の復興についてのお尋ねがありました。

 井上議員におかれては、公明党の東日本大震災復興加速化本部長として、累次にわたり与党提言の取りまとめを主導していただいており、改めて感謝申し上げます。

 ことしの三月で、東日本大震災から六年がたちます。復興庁を司令塔として、省庁の縦割りを排し、現場主義を徹底し、被災者の心に寄り添いながら、東日本大震災からの復興に取り組んでまいりました。

 復興は着実に進展しておりますが、今後とも、切れ目のない被災者支援や、住まいと町の復興、なりわいの再生を加速化してまいります。

 原子力災害からの復興再生についても、引き続き国が前面に立って全力で取り組んでまいります。

 福島復興特措法を改正し、福島イノベーション・コースト構想を推進するとともに、帰還困難区域についても、新たな制度のもと、復興拠点を設け、ふるさとに戻って住めるようにすることを目指します。帰還困難区域以外の区域については、引き続き、避難指示解除や帰還に向けて、着実に環境整備に取り組んでまいります。

 福島の復興なくして東北の復興なし。東北の復興なくして日本の再生なし。

 あの大震災、困難の日々を胸に刻みながら、被災地の皆さんと力を合わせ、新しい東北の未来を切り開いてまいります。

 日中、日ロ関係についてお尋ねがありました。

 昨年九月のG20杭州サミット及び十一月のペルーAPECの際に習近平国家主席と会談し、本年の日中国交正常化四十五周年、来年の日中平和友好条約締結四十周年といった節目の機会を捉えて、関係を改善させていくことで一致しました。

 日中関係には隣国ゆえの難しい問題もありますが、御指摘の与党間交流を初め、連立与党において、政党間、議員間の交流を今後も積極的に積み重ねていっていただくことは非常に有意義であると考えます。

 政府としても、引き続き、戦略的互恵関係の考え方の上に、大局的な観点から、ともに努力を重ね、関係改善を進めてまいります。

 戦後七十年以上たってもロシアとの間で平和条約が締結されていないことは異常であり、これを打開するために、首脳同士の信頼関係のもとに解決策を見出していく必要があります。

 先月訪日したプーチン大統領とは、平和条約の問題について二人だけで交渉を行い、その結果、平和条約問題を解決する両首脳の真摯な決意を声明に書き込むことができました。プーチン大統領自身も記者会見で、最も重要なのは平和条約の締結であると明確に述べていました。大きな成果を上げたと考えます。

 元島民の方々のふるさとへの自由な訪問やお墓参り、北方四島全てにおける特別な制度のもとでの共同経済活動について交渉を開始することで合意し、新たなアプローチのもと、平和条約の締結に向けて重要な一歩を踏み出すことができました。この機会に弾みをつけるため、本年の早い時期にロシアを訪問したいと考えています。

 七十年以上動かなかった領土問題の解決は容易なことではありませんが、高齢となられた元島民の皆様の切実な思いを胸に、平和条約締結に向け、着実に前進していく決意であります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣石井啓一君登壇〕

国務大臣(石井啓一君) 防災・減災対策についてお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、昨年も、四月の熊本地震、六月から七月にかけての梅雨前線豪雨、北海道、東北に大きな被害をもたらした台風十号を初め、八月から九月に相次いだ台風の上陸、十月に鳥取県中部で発生した地震、年末の糸魚川市における大規模火災等、数多くの災害が発生をいたしました。

 被災者の方々が日常の生活となりわいを取り戻し、復旧復興がなし遂げられるまで、国土交通省も全力で取り組んでまいります。

 また、このような災害の教訓を踏まえ、行政、住民、企業の全ての主体が災害リスクに関する知識と心構えを社会全体で共有し、地震、洪水、土砂災害等のさまざまな災害に備える防災意識社会へ転換し、整備効果の高いハード対策と住民目線のソフト対策を総動員していく必要があると考えております。

 切迫する南海トラフ巨大地震や首都直下地震等に対しては、想定される具体的な被害特性に合わせ、密集市街地対策、避難路、避難場所の整備、ゼロメートル地帯の堤防の耐震化等、実効性のある対策を推進いたします。

 また、全国各地で頻発、激甚化する水災害に対しては、一昨年来、水防災意識社会再構築ビジョンに基づき、ハード、ソフトが一体となった取り組みを進めてまいりましたが、今国会ではこの取り組みをさらに加速するため、水防法等を改正する法律案を提出する予定であります。

 具体的には、水害リスクの高い地域に立地する介護施設、学校、病院等の施設における避難計画の作成、訓練実施の義務化や、中小河川も含めた地域住民への水害リスク情報の周知等を図り、洪水等からの逃げおくれゼロと社会経済被害の最小化の実現を目指してまいります。

 現在、国土交通省の公共事業関係費の半分以上を防災・減災、老朽化対策等に重点化しており、今後とも、国土交通省の現場力を最大限活用し、災害から国民の命と暮らしを守るため、総力を挙げて防災・減災対策に取り組んでまいります。

 以上であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。(拍手)

 まず、安保法制、戦争法の問題です。

 安倍政権は、昨年十一月、安保法制に基づいて、南スーダンPKOに派兵されている自衛隊に駆けつけ警護などの新任務を付与しました。重大なことは、安倍政権が、内戦状態が続き、戦闘が繰り返されている南スーダンの深刻な現実に目をつぶり、覆い隠す、極めて無責任な態度をとっていることです。

 三つの点について総理の見解を伺います。

 一つ。南スーダン政府軍によって国連PKOに対する敵対的行為が繰り返されているという事実を認めますか。

 昨年十二月の党首討論で私がこの問題をただしたのに対して、総理は、南スーダンのキール大統領は自衛隊を歓迎していると答弁しました。しかし、建前は歓迎でも、実態は、国連PKOに対する敵対的行為が持続的、組織的、恒常的に繰り返されていることは、国連報告書が克明に述べていることです。

 こうしたもとで駆けつけ警護を行えば、自衛隊が南スーダン政府軍に対して武器を使用することになり、憲法が禁止する海外での武力行使となる危険性があることは明らかではありませんか。

 二つ。国連PKOに参加する陸上自衛隊幹部が、首都ジュバで昨年七月に大規模な戦闘が発生した際の状況を記録した日報を廃棄していたことが明らかになりました。

 陸自は廃棄の理由として、上官に報告したからと説明していますが、こういう理由で廃棄がまかり通れば、組織にとって都合の悪い文書は全て闇に葬られ、国民は南スーダンで自衛隊が置かれている状況について知るすべがなくなるではありませんか。

 総理、日報を廃棄した自衛隊幹部の行為を是とするのか非とするのか、明確な答弁を求めます。

 三つ。昨年十二月、大量虐殺を回避するために国連安全保障理事会に提出された南スーダンに対する武器輸出を禁止する決議案に、日本政府は中ロなどとともに棄権し、廃案にしてしまいました。米国のパワー国連大使は、棄権した国々に対して歴史は厳しい審判を下すだろうと批判しましたが、総理はこの批判にどう応えますか。

 決議案に賛成すれば、日本政府が現地の危機的な状況をみずから認めることになる、これが棄権した理由ではありませんか。自衛隊の派兵を続けるために、大量虐殺の悲劇を抑え込むための国際社会の努力を妨害するとは、理不尽きわまりないことではありませんか。

 自衛隊への新任務付与を直ちに撤回し、自衛隊を南スーダンから速やかに撤退させ、日本の貢献を非軍事の民生支援、人道支援に切りかえることを強く求めます。

 日本共産党は、憲法違反の安保法制、戦争法を廃止し、集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回するために、他の野党、市民の運動と連携し、全力を挙げることを表明するものであります。

 次に、経済政策はどうあるべきかの根本について質問します。

 まず、今日までの二十年間に日本の経済社会にどのような変化が生まれたかについて、総理の基本認識を伺います。

 私は、三つの特徴的な変化が生まれたと考えます。

 第一の特徴は、富裕層への富の集中が進んだことです。純金融資産五億円以上を保有する超富裕層では、一人当たりが保有する金融資産は、この二十年間で六・三億円から十三・五億円へと二倍以上にふえました。

 第二の特徴は、中間層の疲弊が進んだことです。労働者の平均賃金は、一九九七年をピークに、年収で五十五万六千円も減少しました。政府の国民生活基礎調査では、この二十年間で、生活が苦しいと答えた人が四二%から六〇%と大きくふえる一方で、普通と答えた人は五二%から三六%と大きく減りました。

 第三の特徴は、貧困層の拡大が進んだことです。この二十年間で、働きながら生活保護水準以下の収入しかないワーキングプア世帯は、就業者世帯の四・二%から九・七%と二倍以上となりました。貯蓄ゼロ世帯は三倍に急増し、三〇・九%に達しています。

 総理、事実の問題として、今日までの二十年間に、富裕層への富の集中、中間層の疲弊、貧困層の拡大が進んだという認識がありますか。その認識があるのならば、格差と貧困を正し、中間層を豊かにすることを国の経済政策の根本に据えるべきだと考えますが、いかがですか。答弁を求めます。

 日本共産党は、格差と貧困を正す経済民主主義の改革として、次の四つの改革を提案するものです。

 第一は、税金の集め方の改革です。格差拡大に追い打ちをかける消費税増税は中止し、富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革を実行すべきです。

 特に、日本では、株の配当と譲渡に対する税率は二〇%と、欧米主要国の三〇から四〇%と比べて著しく低い大株主天国となっており、年収一億円を超える富裕層ほど所得税の負担率が軽くなる逆転現象が生まれています。

 大株主優遇の不公平税制の是正は急務であります。経済同友会が昨年十月に発表した税制改革提言でも、高所得者層の実効税率の適正化を図るためにも、株式等譲渡所得及び配当所得への課税を強化する必要があると提言しています。大株主優遇税制の是正は、日本共産党から今や財界まで求める税制改革であり、直ちに実行すべきと考えますが、いかがですか。

 第二は、税金の使い方の改革です。五兆一千億円と史上最高となった軍事費や不要不急の大型開発にメスを入れ、社会保障、教育、子育て支援など、格差と貧困の是正につながる予算をふやすべきです。

 自公政権が二〇〇〇年代になって始めた社会保障費の自然増削減額は、合計三兆三千億円に上ります。総理が施政方針で、これを改革の成果と自慢したことには驚きました。自然増削減の一つ一つが、年金、介護、医療、生活保護など社会保障のあらゆる分野での制度改悪の傷跡をつくり出しています。それによる国民の苦しみの声は耳に入らないのですか。

 財源がないと言いながら、第二次安倍政権だけで四兆円もの法人税減税が行われています。一方で社会保障費の自然増を削りに削って三兆三千億円、他方で大企業を中心に四兆円もの減税ばらまきを行う。これは余りにゆがんだ政治ではありませんか。社会保障費の自然増削減路線を中止し、拡充へとかじを切りかえるべきではありませんか。答弁を求めます。

 総理は施政方針で、給付型奨学金を創設すると表明しましたが、その規模はスズメの涙としか言いようのないものです。対象はわずかに二万人。住民税非課税世帯で、かつ成績優秀者に限定される。学生五十五人にたったの一人です。私は、率直に言って、こうした制度設計を行った政府の認識が根本から間違っていると言わざるを得ません。

 この二十年間に、奨学金は、貸与額で約五倍、貸与人員で約四倍に急速に拡大し、今や学生の二人に一人は奨学金を借りています。総理は、その原因はどこにあるとお考えか。この二十年間に、中間層の所得が減少し、貧困層が拡大し、学費の値上げもあり、若者自身が借金をしなければ大学に進学できない社会に急速に変わってしまった結果にほかなりません。この現実を正面から直視した改革が必要ではありませんか。

 日本共産党は、月額三万円の給付型奨学金を、七十万人、学生総数の四人に一人に支給する制度をまず創設し、規模を拡大することを提案するものであります。

 第三は、働き方の改革。八時間働けば普通に暮らせる社会への改革であります。

 格差と貧困の拡大、中間層の疲弊の根底には、人間らしい雇用のルールの破壊があります。その最大の特徴は、労働者派遣法の連続改悪を初めとする労働法制の規制緩和によって、この二十年間で非正規雇用労働者の割合が二〇%から三七%へと急増したことです。それは、労働者全体の賃下げ、労働条件全体の悪化をもたらし、正社員には異常な長時間過密労働の常態化を招きました。

 それは、働く人の体と心を深く傷つけ、過労死、過労自殺の労災認定件数は、一九九八年度の五十二件から、二〇一五年度には百八十九件へと、四倍近くに激増しました。昨年、電通の若い女性社員が労災認定され、大きな社会問題になりましたが、こうした痛ましい出来事は、個々の企業の問題ではありません。それにとどまりません。自民党政治がつくり出した政治災害と言わなければなりません。総理にその自覚はありますか。お答えいただきたい。

 総理は、施政方針で、同一労働同一賃金を実現すると述べました。しかし、政府が作成したガイドライン案は、基本給の格差を容認するなど、正規と非正規との格差を固定化する危険を抱えたものとなっています。本気で格差をなくすというのなら、労働者派遣法を抜本改正して非正規から正規への流れをつくるとともに、労働基準法、男女雇用機会均等法、パート労働法、派遣法などに、均等待遇、同一労働同一賃金の原則を明記すべきです。総理にその意思はありますか。

 総理は、施政方針で、長時間労働の是正に取り組むと述べました。それならば、まず、幾ら残業しても残業代を一円も払わなくても済む制度、高度プロフェッショナル制度を導入する残業代ゼロ法案を撤回すべきであります。

 総理は、抽象的なスローガンを叫ぶだけでは世の中は変わらない、時間外労働の限度は何時間なのか具体的に定めることですと述べました。日本共産党は、残業は週十五時間、月四十五時間以内という厚生労働大臣告示を直ちに法定化すること、インターバル規制、連続休息時間として、EU並みの最低十一時間を確保することを具体的に提案しております。我が党の提案に対して、抽象的なスローガンでなく、具体的な答弁を求めるものであります。

 第四は、産業構造の改革です。

 大企業と中小企業で働く労働者の間には、事業所規模で見ても、中規模で大企業の約六割、小規模では五割程度という大きな賃金格差が存在しています。総理は、同一労働同一賃金と言いますが、大企業と中小企業の賃金格差を解消する意思はありますか。

 一九九九年に改悪された中小企業基本法は、それまでの基本法が掲げていた中小企業と大企業の格差是正の理念を捨て去ってしまいました。強いものを育てるという政策のもとで中小企業の淘汰が進み、一九九九年には四百二十三万だった小規模事業者が、二〇一四年には三百二十五万に、実に九十八万も激減しました。格差是正という理念と政策目標を、中小企業政策の基本に据え直すべきです。総理にその意思はありますか。答弁を求めます。

 日本共産党は、一%の富裕層と大企業のための政治から、九九%の国民のための政治へと経済政策を抜本的に切りかえるために、全力を挙げて奮闘するものであります。

 次に、外交政策はどうあるべきかの根本について質問します。

 総理は、施政方針で、五百回以上の首脳会談を行ってきたと自賛しました。しかし、問題はその中身であります。安倍首相の外交の最大の致命的問題点は、異常なアメリカ追随外交にあります。私は、二つの問題について総理の姿勢をただしたいと思います。

 第一は、核兵器廃絶の問題です。

 昨年十二月、国連総会は、核兵器禁止条約の締結交渉を開始する決議を、賛成百十三カ国という圧倒的多数で採択しました。二カ月後には、国連本部で締結交渉が開始されます。この動きは、文字どおり画期的意義を持つものです。

 核兵器禁止条約を仮に最初は核保有国が拒否したとしても、国連加盟国の多数が参加して条約が締結されれば、核兵器は、人類史上初めて違法化されることになります。そうなれば、核保有国は、法的拘束は受けなくても、政治的、道義的拘束を受け、核兵器廃絶に向けて世界は新しい段階に入ることになるでしょう。

 ところが、日本政府は、アメリカの圧力に迎合して、この歴史的決議に反対票を投じました。

 総理、地球儀俯瞰外交と言いますが、一体どこに目をつけているんですか。核兵器廃絶を求める世界の画期的な流れがあなたの目には入らないのですか。唯一の戦争被爆国の政府にあるまじき、日本国民の意思を踏みにじる態度ではありませんか。しかと答弁をいただきたい。

 第二は、沖縄を初めとする在日米軍基地の問題です。

 総理は、施政方針で、日米同盟の強化を前面に打ち出し、名護市辺野古の新基地建設を強権的に進める姿勢をあらわにしました。沖縄の基地負担軽減と言いますが、今進められていることは正反対のことです。

 北部訓練場の一部返還の代償に、東村高江のオスプレイ着陸帯の建設が強行されました。辺野古新基地は、普天間基地の移設などという生易しいものではありません。一千八百メートルの滑走路を二本持ち、強襲揚陸艦も接岸できる軍港を持ち、耐用年数二百年の最新鋭の巨大基地がつくられようとしています。沖縄の海兵隊基地を世界への殴り込みの一大拠点として抜本的に強化し固定化する、これが今進められていることの正体ではありませんか。

 沖縄では、名護市長選挙、県知事選挙、総選挙、参議院選挙と、繰り返し新基地建設反対の圧倒的審判が下されています。総理、日米同盟のためなら沖縄県民の民意を踏みにじっても構わないというのがあなたの立場ですか。辺野古新基地建設は断念し、普天間基地の無条件撤去を求めてアメリカと正面から交渉すべきではありませんか。

 昨年十二月、米海兵隊のオスプレイが名護市の海岸に墜落しました。(発言する者あり)不時着じゃありません。墜落です。米軍は、事故後わずか六日でオスプレイの訓練を再開し、事故後三週間余りで空中給油の訓練も再開しました。

 驚くべきことに、安倍政権は、いずれに対しても理解すると表明しました。日本の捜査機関が独自の情報を何も持っていないのに、さらには米軍の調査でも事故原因が特定されていないのに、理解するとは一体どういうことですか。沖縄県民や国民の安全よりも日米同盟を優先する、主権国家の政府とは言えない恥ずべき態度ではありませんか。答弁を求めます。

 トランプ米国新大統領が米国第一を宣言するもとで、今後、日本に対する軍事的、財政的負担の強化を求めてくる可能性があります。そのときに、日本政府が、これまでのような日米同盟第一、日米同盟絶対という硬直した思考を続けるなら、その矛盾はいよいよ拡大し、対応不能に陥ることになるでしょう。

 日本共産党は、異常なアメリカ追随外交を根本から見直し、対等、平等、友好の日米関係に切りかえることを強く求めて戦うものであります。

 総理は、施政方針で、憲法改定案をつくるため憲法審査会で具体的な議論を深めようと、改憲への前のめりの姿勢をあからさまにしました。

 端的に二問伺います。

 第一に、総理は、新しい国づくりのためには憲法改定が必要だと主張していますが、総理の考える新しい国づくりにとって、現行憲法のどこが問題で、どう変えなければならないとお考えなのか、具体的に提示していただきたい。

 第二に、自民党改憲案は、憲法九条二項を削除して、国防軍創設を明記するとともに、公益及び公の秩序の名で基本的人権の大幅な制約を可能にするなど、憲法によって権力を縛るという立憲主義を全面的に否定するものとなっています。この案はきっぱり撤回すべきではありませんか。答弁を求めます。

 日本国憲法は、憲法九条という世界で最も進んだ恒久平和主義の条項を持ち、三十条にわたる極めて豊かで先駆的な人権規定が盛り込まれています。変えるべきは憲法ではありません。安保法制の強行に見られるような、憲法をないがしろにした政治こそ変えるべきであります。

 最後に、共謀罪法案について質問します。

 政府は、名前をテロ等準備罪に変えて今国会に提出しようとしています。

 法案のレッテルを張りかえても、共謀、すなわち、相談、計画しただけで犯罪に問えるという本質は変わりません。それは、犯罪の実際の行為のみを罰するという刑法の大原則に真っ向から反するだけでなく、日本国憲法第十九条が侵してはならないとする国民の思想や内心を処罰の対象とする違憲立法にほかなりません。

 政府は、オリンピック・パラリンピックに向けて、テロを防ぐ国際組織犯罪防止条約を締結するためという新たな口実を持ち出していますが、そもそも、この条約は、マフィア、暴力団などによる経済犯罪への対処を目的にした条約です。テロ対策というならば、日本は既にテロ防止のための全ての条約を締結し、国内法も整備しています。

 テロ対策の名で国民を欺き、国民の思想や内心まで取り締まろうという共謀罪は、物言えぬ監視社会をつくる現代版の治安維持法にほかなりません。提出の企てを直ちに断念することを強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 志位和夫委員長にお答えをいたします。

 南スーダンPKOについてお尋ねがありました。

 御指摘の敵対行為が何を意味するものか、必ずしも明らかではありませんが、国連の報告書において、UNMISSに対する移動制限等が報告されていることは承知しています。

 他方、南スーダン政府自身は、これまで累次の機会にUNMISSへの協力を表明してきています。

 また、自衛隊に対しては、南スーダンのキール大統領から、また、政府内で反主流派を代表するタバン・デン第一副大統領からも感謝の言葉が示されており、南スーダン政府によるUNMISS及び自衛隊に対する受け入れ同意は安定的に維持されているものと考えています。

 このように、南スーダン政府が自衛隊に敵対するものとして登場しないことを確保していることから、自衛隊が南スーダン政府との間で駆けつけ警護の任務に基づき武器を使用する事態が生じることは想定されず、自衛隊が憲法の禁ずる武力の行使を行うことはありません。

 南スーダンPKOの日報についてのお尋ねがありました。

 御指摘の日報は、南スーダン派遣施設部隊が、毎日、上級部隊に報告を行うために作成している文書であり、公文書等の管理に関する関係法令及び規則に基づき取り扱っている旨の報告を受けています。

 なお、日報の内容は、報告を受けた上級部隊において、南スーダンにおける活動記録として整理、保存されていると承知しています。

 いずれにせよ、行政機関の作成した文書については、関係法令等に基づいて取り扱いを行うべきことは当然と考えております。

 政府としては、これまでも、南スーダンPKO活動について、さまざまな機会を捉えて国民の皆様への丁寧な説明を心がけており、今後とも適時適切な説明に努めてまいります。

 南スーダン制裁に関する安保理決議案についてのお尋ねがありました。

 我が国は、南スーダン政府が状況改善のための取り組みを進める中で、制裁決議案が南スーダンの平和と安定に資するものであるかとの観点から検討を行いました。

 大切なことは、南スーダンの状況を改善し、平和と安定を図ることです。そのためには、南スーダン政府が進めているPKO部隊の増強に向けた協力や国民対話の実施など、前向きな取り組みを後押しすることが重要です。

 また、当時、南スーダン政府は、新たに創設が決定されていたPKO部隊の即時受け入れを閣議決定したばかりでありました。このため、米国とは異なる判断となりましたが、そのようなタイミングにおいて武器禁輸及び主要な当事者への制裁を行うことは生産的ではないと我が国として判断をしたものであります。

 現地の危機的な状況をみずから認めることになることが棄権した理由との指摘は、全く的外れであります。また、他国の意見の逐一についてコメントすることは差し控えたいと思います。

 これまでも、我が国は、自衛隊派遣のみならず、人道支援や民生支援などで大きな貢献を行い、南スーダンや国連を初め国際社会から高い評価を受けています。今後とも、現地情勢について緊張感を持って注視しながら、国際社会の平和と安定に貢献していく考えであります。

 貧困と中間層についてお尋ねがありました。

 安倍内閣が進めている政策は、成長と分配の好循環をつくり上げていくというものです。成長し、富を生み出し、それが国民に広く均てんされ、多くの人たちがその成長を享受できる社会を実現していきます。

 格差等の問題について、例えば相対的貧困率については、長期的に緩やかに上昇する傾向にありましたが、昨年公表された全国消費実態調査では、集計開始以来初めて低下しています。

 特に子供の相対的貧困率は、十五年前の九・二%から、十年前に九・七%と上がり、五年前に九・九%とさらに上がったものが、今回七・九%と二ポイント改善しています。これは初めてのことであります。これは、アベノミクスの成果により、雇用が大きく増加するなど経済が好転する中で、子育て世帯の方々の収入が増加したことによるものであります。

 こうした状況をさらに推し進めるため、一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジである働き方改革を加速してまいります。

 同一労働同一賃金を実現し、正規と非正規の労働者の格差を埋め、若者が将来に明るい希望が持てるようにすることにより、中間層が厚みを増すことにつながると考えています。

 アベノミクスをさらに加速させ、こうした取り組みを続けることにより、格差が固定化されず、誰にでもチャンスがあり、頑張れば報われる社会をつくり上げてまいります。

 消費税率引き上げの中止等についてお尋ねがありました。

 消費税率の一〇%への引き上げは、世界に冠たる社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、市場や国際社会からの国の信認を確保するために必要であり、中止することはありません。

 その増収分は全額社会保障の充実、安定化に充てられることとしており、所得の再分配に資するものであります。

 御指摘の金融所得課税については、平成二十六年から、上場株式等の配当及び譲渡益について、地方税を含め一〇%の軽減税率を廃止し、地方税を含め二〇%の本則税率としたところであります。

 加えて、安倍内閣においては、税制の再分配機能の回復を図るため、所得税の最高税率の引き上げ、給与所得控除の見直し、相続税の最高税率の引き上げ等を講じてきたところであります。

 今後の税制のあり方については、これまでの改正の効果を見きわめるとともに、経済社会の情勢の変化等も踏まえつつ検討する必要があるものと考えております。

 平成二十九年度予算と社会保障等についてのお尋ねがありました。

 平成二十九年度予算は、経済・財政再生計画の二年目に当たる予算であり、現下の重要な課題に的確に対応しつつ、経済再生と財政健全化の両立を実現するものとして適切に編成しています。

 防衛関係費については、厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、中期防衛力整備計画の対象経費として、南西地域の島嶼部における防衛態勢の強化等のために必要な経費を計上しています。

 また、公共事業関係経費については、厳しい財政状況も踏まえ、豪雨・台風災害等を踏まえた防災・減災対策などへの重点化を行い、全体として前年度同水準としたところであります。

 社会保障に関しては、少子高齢化が進行する中で、社会保障費の伸びが引き続き見込まれる中、持続可能な社会保障制度を構築するために、医療や介護などの給付と負担のあり方について不断の見直しを行いつつ、社会保障・税一体改革やニッポン一億総活躍プランに掲げた充実を図ってきたところです。

 具体的には、社会保障の充実について、安定財源を確保して、保育、介護の受け皿整備や年金の受給資格期間の短縮などを実施することとしたほか、保育士、介護人材等の処遇改善を実施することとしております。

 御指摘の、格差と貧困の是正につながる予算についても、先ほど申し上げた社会保障の充実のほか、返還不要の給付型奨学金の創設に加え、無利子奨学金の拡充を行っています。また、幼児教育の無償化について、低所得世帯や一人親世帯等の負担軽減策の拡充を行っています。

 なお、安倍内閣において、平成二十七年度、二十八年度に取り組んだ法人税改革は、課税ベースの拡大等により、財源をしっかりと確保しながら税率を引き下げたものであり、ばらまき減税との御指摘は当たりません。

 給付型奨学金についてのお尋ねがございました。

 教育投資は未来への先行投資です。特に、どんなに貧しい家庭で育っても夢をかなえることができるよう、誰もが希望すれば進学できる環境を整えなければなりません。このため、これまでも、奨学金制度の充実、授業料免除の拡大などに取り組んできたところであります。

 来年度からは、成績にかかわらず、必要とする全ての学生が無利子の奨学金を受けられるようにするとともに、返還不要の給付型奨学金制度を新たに創設することといたしました。

 意欲と能力があるにもかかわらず、経済的理由によって進学を断念せざるを得ないということがあってはなりません。高等教育について、家庭の経済状況にかかわらず、必要とする全ての子供が機会を与えられるようにしていきたい。今後とも、必要な財源を確保しつつ、しっかりと取り組んでまいります。

 労働法制に関するお尋ねがありました。

 一年余り前、入社一年目の女性が、長時間労働によって過酷な状況の中、みずから命を絶ちました。このような悲劇を二度と繰り返してはならない。正規、非正規にかかわらず、過重労働で苦しむ人々がいなくなるよう、労働基準監督機関による監督指導を徹底するとともに、長時間労働の是正に取り組みます。

 平成二十七年に成立した労働者派遣法改正法は、正社員を希望する方にその道が開けるようにするとともに、派遣を積極的に選択している方については待遇の改善を図るものです。施行状況についてはしっかりと注視し、その目的が達成されるよう努めてまいります。

 なお、非正規雇用を取り巻く雇用環境については、不本意ながら非正規の職についている方の割合は前年に比べて低下、働き盛りの五十五歳未満では、二〇一三年から十五四半期連続で、非正規から正規に移動する方が正規から非正規になる方を上回っているなど、着実に改善しています。

 また、二〇一五年については、正規雇用労働者が、第一次安倍内閣以来八年ぶりに前年比でプラスに転じ、二十六万人増加しました。

 正社員の有効求人倍率も〇・九〇倍と、調査開始以来過去最高となっています。

 平成二十九年度予算においても、非正規から正社員への転換などを行う事業主へのキャリアアップ助成金の拡充など、企業における正社員転換や待遇改善の強化を進めることとしています。

 同一労働同一賃金についてお尋ねがありました。

 正規と非正規の間の待遇差については、昨年末に公表したガイドライン案において、均衡だけではなく均等にも踏み込み、職務内容や人材活用の仕組みなどが同じであれば同一の待遇を保障し、違いがあれば違いに応じた待遇を保障することとしています。

 このような考え方に沿って、三月の働き方改革実行計画の取りまとめを受けて、法改正の早期国会提出を目指し、立案作業を進めます。

 なお、欧州の法制度においても、待遇差そのものではなく、合理性のない待遇差を禁止していると承知しています。

 長時間労働是正についてのお尋ねがありました。

 現在提出している労働基準法改正案は、長時間労働を是正し、働く人の健康を確保しつつ、その意欲や能力を発揮できる新しい労働制度の選択を可能とするものです。残業代ゼロ法案といったレッテル張りの批判に明け暮れていては、中身のある議論はできないと考えます。

 政府としては、実現会議で取りまとめる三月の実行計画に沿って、いわゆる三六協定でも超えることができない、罰則つきの時間外労働の限度が何時間か具体的に定め、法改正に向けて作業を加速し、早期に法案を提出します。

 また、インターバル規制については、中小企業への助成金の創設などを通じて、規制導入について環境整備を進めます。

 大企業と中小企業の賃金格差及び中小企業政策の基本についてお尋ねがありました。

 安倍政権の中小企業政策は、多様で活力のある成長、発展を図ることを目的としています。

 御指摘の大企業と中小企業の間の賃金格差は、中小企業の労働生産性が大企業に比べて低いことが要因であります。これを改善するため、自助努力を支援するという原則に立ちつつ、多様な中小企業が生産性を高め、賃金の引き上げを行えるよう、しっかりと支援してまいります。

 具体的には、一定の要件を満たす経営計画を持った企業であれば、赤字であっても活用できる固定資産税の軽減措置や低利融資等の支援を創設しました。これを製造業から小売サービス業にも拡大することで、商店街等における攻めの投資を促します。

 下請中小企業の取引条件改善に向けて、五十年ぶりに下請代金の支払いについて通達を見直し、現金払いを原則としました。さらに、下請法の運用基準を十三年ぶりに抜本改正し、金型を無料で保管させるなど、コストの一方的な押しつけが禁止されていることを明確にしました。

 小規模事業者については、経営者の高齢化等により減少していますが、安倍政権では、平成二十六年に成立した小規模企業振興基本法に基づき、販路開拓に対する助成など、支援施策を充実させています。

 引き続き、きめ細かな取り組みにより、中小企業の賃上げを後押しし、成長と分配の好循環を実現してまいります。

 核兵器廃絶に関するお尋ねがありました。

 核兵器を廃絶するためには、核兵器国がそれに同意することが必要不可欠であります。

 御指摘の核兵器禁止条約の交渉開始決議については、最初から核兵器国は一国たりとも交渉に参加せず、決議にも賛成しませんでした。この決議は、核兵器国と非核兵器国の間の亀裂を一層深め、核兵器のない世界の実現をさらに遠のかせてしまう結果となることから、我が国は反対しました。米国の圧力に屈したとの批判は当たりません。

 先ほど南スーダンの件では米国に賛成しろと迫り、今度は米国の圧力に屈したと批判をしている。これはまさにちぐはぐではないでしょうか。

 我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向け、国際社会の取り組みをリードしていく使命を有しています。

 我が国としては、核兵器国と非核兵器国の双方に協力を求め、核兵器のない世界の実現に向けて、現実的かつ実践的な取り組みを重ねてまいります。

 沖縄における基地負担軽減についてのお尋ねがありました。

 北部訓練場、四千ヘクタールの返還は、〇・九六ヘクタールのヘリパッドを既存の訓練場内に移設することにより、二十年越しで実現したものであり、沖縄県内の米軍施設の約二割、本土復帰後最大の返還であります。

 地元の国頭村や東村からは、国立公園の指定、世界自然遺産への登録を目指すとして、早期返還の要望を受けていたものであり、基地負担軽減に大きく寄与するものであります。

 普天間飛行場の辺野古移設のための埋立面積は全面返還される普天間の面積の三分の一以下であり、滑走路の長さも大幅に短縮されています。滑走路が二本になるのは、地元の要望を踏まえ、離陸、着陸のいずれの飛行路も海上になるよう、V字形に配置するためです。これにより、騒音も大幅に軽減されます。

 また、岸壁の整備は、故障した航空機を搬出する運搬用の接岸のためのものであり、強襲揚陸艦の運用を前提とするものではありません。

 このように、沖縄の海兵隊基地を抜本的に強化、固定化するとの御指摘は全く当たりません。

 沖縄における選挙の結果については、いずれの選挙の結果も真摯に受けとめております。

 沖縄の基地負担の軽減を図ることは、政府の大きな責任です。同時に、この思いは、国も沖縄の皆さんも同じであり、変わらないはずだと思います。政府の進めている負担軽減の取り組みが沖縄の民意を踏みにじるとの御指摘は当たりません。

 引き続き、地元の皆さんの御理解を得る努力を続けながら、普天間の全面返還に向けて全力で取り組んでまいります。

 オスプレイの事故についてのお尋ねがありました。

 オスプレイを含め米軍機の飛行安全の確保は、米軍が我が国に駐留する上での大前提です。

 先般のオスプレイの不時着水事故については、事故後、飛行停止と空中給油訓練の停止措置がとられましたが、その再開に当たっては、米軍だけの判断ではなく、日米で協議を行い、日本政府においても、防衛省・自衛隊の専門的知見及び経験に照らして独自に分析を行いました。

 その結果、米国が、事故を引き起こした可能性のある各種要因に有効であると思われる対策を幅広くとっていることを確認しました。また、今後とも、空中給油訓練は陸上から離れた場所でしか行わないことも確認しています。

 これらのことから、日本政府として、再発防止について有効な対策等がとられていると判断したことから、その再開については理解できると述べたものであります。

 いずれにせよ、沖縄県民や国民の安全よりも日米同盟を優先するとの御指摘は全く当たりません。

 引き続き、事故の再発防止を強く求めるとともに、米側と連携を密にして、安全確保に万全を期してまいります。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 憲法改正は、国会が発議し、最終的に国民投票において国民が決めるものであり、どの条文をどのように変えるかは、国民的な議論の末に収れんしていくものです。

 国民主権、基本的人権の尊重、平和主義といった現行憲法の基本原理を堅持することは当然のことでありますが、新しい時代にどのような憲法がふさわしいのか、各党各会派がそれぞれの意見を持ち寄り、国会の憲法審査会において議論が深められ、具体的な姿があらわれてくることを期待したいと思います。

 国際組織犯罪防止条約の国内担保法の整備の必要性についてお尋ねがありました。

 東京オリンピック・パラリンピックの開催を三年後に控える中、テロ対策は喫緊の課題です。既に百八十七の国と地域が締結している国際組織犯罪防止条約の締結は、テロの未然防止のために国際社会と緊密に連携する上で必要不可欠であります。

 国内担保法のあり方については、現在、犯罪の主体を一定の犯罪を犯すことを目的とする集団に限定し、準備行為があって初めて処罰の対象とするなど、一般の方々がその対象となることはあり得ないことがより明確になるよう検討を行っているところであり、国民の皆様の御理解を得られるような法整備に努めてまいります。

 なお、現在政府が検討しているテロ等準備罪は、テロ等の実行の準備行為があって初めて処罰の対象となるものであり、これを共謀罪と呼ぶのは全くの誤りであります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 馬場伸幸君。

    〔馬場伸幸君登壇〕

馬場伸幸君 日本維新の会の馬場伸幸です。

 私は、我が党を代表して、安倍総理に質問をいたします。(拍手)

 まず、昨年十二月に起きた新潟県糸魚川市の大規模火災の被災者の皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 我が党は、東日本大震災、熊本地震等についても、復興はまだ道半ばの思いで、今後も真摯に全党体制で取り組んでまいります。

 我が党は、昨年の通常国会の冒頭で、提案型責任政党を目指すと国民に宣言しました。臨時国会では、参議院選公約のほとんどを百一本の法案にまとめ、参議院に提出をいたしました。公約は公党が選挙時に国民と交わした約束なので、法案として具体化して、確実に実現すべきと考えたからです。

 我が党は、野党でありながら、公約を法制化し、政権構想を国民に示し、実現していくことによって、政権与党にぴりっと緊張感を与える野党、野党を野党らしくする責任野党でありたいと考えております。

 戦後七十二年目を迎え、我が国の社会構造は大きく変化し、あらゆる制度に変革が求められています。急速に進む少子高齢化、東京一極集中、教育格差と経済格差の悪循環などの課題は、これまでの政治、行政の延長線上の政策では決して解決できません。既存の枠組みを超えた抜本的な改革が求められています。

 このような認識の中で、我が党は、日本の国に必要な改革を形にするため、百一本の法案をつくりました。少子高齢化による世代間格差には公的年金の積立方式移行法案、東京一極集中の打破には道州制改革基本法案、教育格差と経済格差の問題には教育無償化法案などを提案いたしました。

 今国会以降、これらの法案を確実に成立させることで、我が党の目指す日本の姿を国民に示し、新たな議員立法をさらに引き続き提案してまいります。

 アメリカではトランプ政権が発足し、世界じゅうがその一挙手一投足に注目する中で、この通常国会が開会されました。アメリカの新政権への対応を決めるべき国会という意味で、今国会はトランプ国会とも言えるでしょう。

 トランプ大統領の政治姿勢を大衆迎合主義として批判する声もあります。しかし、既存の政治が無視してきた課題を率直な言葉で国民に直接訴える姿勢は、アメリカの国民の心を捉えました。国民の思いを無視する古い政治との戦いは、どの国、どの地域でも必要です。

 大阪では、我が党の橋下前代表と松井現代表があらゆる既存政党と戦ってきました。当初は激しく批判された維新改革は、現在では着実に改革が進んでいるという評価に変わりました。

 トランプ大統領の誕生も大阪の維新改革も、既存の枠組みに対するチャレンジとして、時代が求める必然性のあるものと信じています。

 以上、基本的な立場を申し上げ、質問に移ります。

 まず、憲法改正についてお伺いいたします。

 憲法改正は、国民投票という国民による主権の行使で実現するものです。したがって、憲法改正は、特定の思想の表現のためではなく、主権者である国民が抱えている課題の解決のために行うべきです。

 我が党は、三つの国民的課題につき、憲法改正項目として提案をいたしました。

 第一に、教育の機会均等実現と将来世代への重点投資のための教育の無償化。第二に、東京一極集中を打破して地域を発展させるための、国と地方の行政の仕組みを変える統治機構改革。第三に、平和安全法制等の法令の合憲性について司法による判断を可能にするための憲法裁判所の設置。これらは国民の理解を得られるものであると信じております。

 このうち、教育無償化については、安倍総理も施政方針演説で思いを述べられました。教育無償化を予算措置だけでなく憲法に位置づければ、子供たちが国の未来を背負うのは自分たちだという強い責任感を持ちます。これこそがこの国の発展につながるはずです。

 そこで、安倍総理にお伺いいたします。

 昨年、安倍総理が、自民党が検討する改憲項目として教育無償化を挙げたとの報道がありますが、事実でしょうか。今後、憲法改正項目に教育無償化を入れるべきか否かについて、総理の御認識をお伺いいたします。

 憲法改正は、最終的には国民投票で決まるものです。しかし、国民投票では、国民は具体的な改憲案についてイエスかノーの意思表明をすることしかできません。

 安倍総理、具体的な改憲案をつくる国会議員を選ぶ選挙もまた、国民投票と同様に重要なものであるはずです。恐らく次の衆議院選挙がこれに該当するのではないかと思いますが、そうだとすれば、具体的な憲法改正項目を掲げた上で、憲法改正への賛否を国民に問いかけてはいかがでしょうか。

 憲法改正を実現するプロセスとして、一、改憲案を示しての衆議院選挙、二、国会での濃密な議論、三、国民投票の三つの手続が必要と考えております。

 我が党は既に、教育無償化、国と地方の統治機構改革、憲法裁判所の設置の改革案を示しておりますが、各党もそれぞれの案を示した後、解散し、選挙をすることにより、国民が憲法改正について明確な判断を示すことができると思います。

 解散の大義を憲法改正とする憲法改正解散についての安倍総理のお考えをお聞かせください。

 次に、外交・安保政策についてお伺いいたします。

 まず、トランプ政権の誕生が日本に及ぼす影響についてお伺いいたします。

 トランプ氏は、昨年の選挙の際に、日本は在日米軍の駐留経費の全額負担をすべきだ、応じなければ在日米軍の撤収を検討すると主張しました。その後、トランプ氏当選が決まった後、総理はニューヨークでトランプ氏と会われ、信頼できる指導者と確信したとおっしゃっていました。

 安倍総理が信頼できる指導者と確信したと言われた意味をお伺いいたします。日米同盟のきずなである駐留経費の負担増は求められないと認識されたということでしょうか。御見解をお伺いいたします。

 私たちは、古い同盟を強化し、新たな同盟をつくり上げる。トランプ新大統領の就任式でのスピーチの一節です。

 我が党は、トランプ政権が日米同盟の新たな形を提案してくるのではないかと予想しています。その最大の根拠は、オバマ前政権と違い、中国、台湾に対する政策をより強いものに見直すことになると考えるからです。このため、在日米軍について新たな役割、負担が検討されることになるでしょう。

 国家の外交政策の見直しは軍事戦略の見直しを意味することは、世界の常識であります。今後、アメリカのアジア外交見直しで、日米同盟強化や在日米軍強化が提案されてきたときの日本の対応について、議論を始めなければなりません。その際、日米同盟に伴う在日米軍の強化と、不平等条約である日米地位協定の抜本改定と、沖縄米軍基地の過重な負担の軽減が交渉の大前提でなければなりません。

 日米同盟強化と米軍基地の過重な負担軽減を総理はどう認識されているのか、御見識をお聞かせください。

 次に、身を切る改革について質問します。

 政治が国民の信頼を失えば、いかなる政策も国民の支持を得られません。その意味においても、政治家自身の身を切る改革こそ最優先で取り組むべき課題であると考えます。

 我が党は、身を切る改革に関する法案を累次にわたり多数提出し、党としても自主的に実践してまいりました。

 我が党は昨年末から、歳費の手取り二割相当分、毎月十八万円を、党を通じて各地の災害被災地に寄附することを決めて、実行しております。年間五千八百万円ほどですが、少数政党にできる精いっぱいの金額の寄附を、歳費二割削減法案成立まで続けてまいります。

 昨年十二月の糸魚川で発生した大規模火災で、厳しい環境の中で頑張られている皆様に対して、党からのお見舞金を、他党に先駆け、現地を視察した上で、十二月二十八日にお渡しいたしました。

 平成四十九年まで復興のための増税を国民にお願いしている状況の中で、なぜ大政党自民党の議員や閣僚がおやりにならないのか、疑問を感じます。

 そのほかにも、消費税の一〇%への増税など、国民が痛みを伴うことをお願いする以上は、政治家みずからが身を切る改革を行うべきではないでしょうか。少なくとも、議員歳費の二割削減、文通費の使途公開、企業・団体献金の禁止、議員による寄附を控除の対象としない、この四つの身を切る改革法案を成立させるべきではないでしょうか。

 安倍総理は、自民党総裁として、四点の身を切る改革を今すぐにでも実行させるべきと考えますが、御認識をお伺いいたします。

 次に、現在復活の動きのある地方議員の年金についてお伺いいたします。

 国でも地方でも身を切る改革が進まない中で、地方議員年金の復活を主張し、しかも、厚生年金として自分たちの保険料負担を自治体住民に押しつけようなどというのは言語道断です。

 地方議員年金は復活すべきでないと考えますが、総理の御認識をお伺いいたします。

 昨年、富山県議会、市議会で、政務活動費に伴う不正が発覚し、ドミノ辞任が起きました。政治への不信感と住民の怒りが最高潮に達した瞬間でした。

 我が党は、政治への信頼を回復するためには、政務活動費の使途公開について、努力規定しかない今の地方自治法を改正し、政務活動費の収支報告書をネット公開するという議員立法を提出しました。この法案にぜひ自民党も賛同していただきたく、安倍総理の御認識をお伺いいたします。

 次に、来年度予算案についてお伺いいたします。

 公務員人件費がまた上がっています。一方、先ほども述べたように、平成二十五年から平成四十九年まで、国民には復興所得税が課せられています。四人家族の場合、年収五百万円なら年間の税額は千六百円で、その税収総額は年間で約三千億円となります。

 これに対し、復興財源確保のための議員歳費の二割削減と公務員給与の削減は既に終わり、平成二十六年度予算案での公務員人件費は二千七百億円増加いたしました。その後、平成二十七年度予算から来年度の二十九年度予算案まで公務員人件費は三年連続で増加を続け、累計で一千億円もふえました。

 国民の給与がなかなか上がらず、所得格差が教育格差につながり、子供の貧困が問題になっている中で、また、政府債務が一千兆円を超え、税収が減少する中で、公務員給与を上げ続けるべきでしょうか。

 公務員人件費を減らすべきだというのが国民の素朴な思いと考えます。また、人事院勧告の基礎となる官民給与比較の実態調査のあり方も見直すことが急務であると考えますが、安倍総理の御認識をお伺いいたします。

 先日、文部科学省による組織的な天下りが発覚しました。この国がいまだに公務員天国であるという事実を知って、国民の怒りは頂点に達しています。

 総理、今後、天下り規制を今以上に大幅に強化するべきではありませんか。さらに、独立行政法人を含む天下り法人への交付金、補助金を大幅に削減して、教育無償化に回すべきではありませんか。安倍総理の御所見を伺います。

 次に、IR実施法案についてお伺いいたします。

 昨年の臨時国会でIR推進法案が成立いたしました。今後、我が国の統合型リゾートのあり方につき、国民の理解を得られるような、真剣で慎重な論議が必要です。国民の疑問や誤解があるならば、しっかりと国会の場で答えていくべきです。

 我が国で定着しているさまざまな娯楽に新たに統合型リゾートが加わり、日本経済への大きな貢献が期待されています。一方、ギャンブル依存症の方は五百万人を超えると言われています。早急な対策のため、IR実施のための閣法が提出される前に、議員立法でギャンブル依存症対策に関する法案を提出すべきだと考えております。我が党も、ギャンブル依存対策に関する法案をまとめ、成立に向けて努力をしてまいります。

 統合型リゾート法案が日本経済に及ぼす経済効果をどのような数字で国民に説明されるのか、ギャンブル依存症対策についてのお考えはいかがか、お伺いをいたします。

 大阪府は、二〇二五年の万国博覧会の誘致を目指しています。政府においても前向きに検討が行われていると承知をしております。

 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに続き、一九七〇年以来五十五年ぶりに再び日本万博を大阪で開催することは、大阪のみならず、日本経済全体に大きな波及効果があると考えます。

 二〇二五年日本万博誘致の必要性について、安倍総理の御認識をお伺いいたします。

 最後に、天皇陛下の譲位に関する法案についてお伺いいたします。

 我が党は、有識者懇談会の提言を真摯に受けとめています。また、衆参議長が進められる静かな環境のもとでの議論を強く支持するものであります。

 安倍総理は、今回の譲位についての基本的な考え方はどのように持たれているのか、お聞かせください。

 我が党は、この通常国会において、維新、つまり、全てのことが改められてすっかり新しくなること、その意味を追い求めて、政治を推し進め、国民の期待に応えてまいります。国民のための維新とますます評価されるよう、さまざまな政策を提案し、政治行動をしていくことを申し上げ、私の代表質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 馬場伸幸議員にお答えをいたします。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 日本維新の会が、憲法改正について、教育のあるべき姿を含め具体的な考え方を示して真摯に議論しようとされていることに、まずもって敬意を表したいと思います。

 子供たちこそ日本の未来であります。次なる七十年を見据えたときに、教育が重要であることは論をまちません。

 憲法は、国の未来そして理想の姿を語るものであり、新しい時代の理想の姿を私たち自身の手で描いていくという精神が日本の未来を切り開いていくことにつながっていくと考えております。

 新しい時代にどのような憲法がふさわしいのか、各党各会派がそれぞれの意見を持ち寄り、国会の憲法審査会において議論が深められ、具体的な姿があらわれてくることを期待したいと思います。

 また、憲法改正解散についてお尋ねがありましたが、衆議院の解散については現在一切考えておりません。

 日米同盟強化及び沖縄の負担軽減についてお尋ねがありました。

 昨年十一月にトランプ大統領とニューヨークで会談し、さまざまな課題について私の基本的な考え方を伝えました。議論の詳細は差し控えますが、大変充実した意見交換を行い、日米同盟の重要性を確認できたと考えています。

 トランプ政権の在日米軍駐留経費に係る立場について予断することは差し控えますが、アジア太平洋地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中、日米同盟は、アジア太平洋の平和と繁栄の礎として不可欠な役割を果たしています。日米安保体制は、日米いずれかのみが利益を享受するような枠組みではなく、したがって、在日米軍の駐留経費についても、日米間で適切な分担が図られるべきものと考えます。

 日米同盟は、我が国の外交、安全保障の基軸であり、トランプ大統領とできるだけ早期に会談したいと考えています。アジア太平洋や世界の平和と繁栄について幅広く意見交換し、トランプ大統領との信頼関係のもとに、揺るぎない日米同盟のきずなをさらに強化していきたいと考えています。

 沖縄の基地負担軽減を図ることは政府の大きな責任です。地元の方々の理解を得る努力を続けながら、確実に結果を出していかなければなりません。

 先月、北部訓練場、四千ヘクタールの返還が二十年越しで実現しました。沖縄県内の米軍施設の約二割、本土復帰後最大の返還です。今月には、日米地位協定の軍属に関する補足協定に署名しました。引き続き、普天間飛行場の全面返還に向けて全力で取り組んでまいります。

 今後とも、米軍との信頼関係のもと、抑止力を維持しながら、沖縄の基地負担軽減に一つ一つ結果を出していく決意であります。

 身を切る改革についてお尋ねがありました。

 我々政治家は、政策を実現するため、真摯に努力を続け、国民の負託に応えていかなければなりません。国民の皆さんにさまざまな御負担を求める以上、我々政治家も常にみずからを省みる必要があることは当然であります。

 日本維新の会がそうした観点から具体的な行動に取り組んでおられることにつきましては敬意を表したいと思います。

 その上で申し上げるとすれば、政治に要する費用の問題は、議会政治や議員活動のあり方、すなわち民主主義の根幹にかかわる重要な課題であり、国会において国民の代表たる国会議員が真摯に議論を行い、合意を得る努力を重ねなければならない問題であると考えております。

 地方議員の年金、政務活動費についてお尋ねがありました。

 地方議員の厚生年金への加入については、国民の幅広い政治参加や、地方議会における人材確保の観点から必要との考え方もありますが、他方で、保険料の公費負担などの課題もあります。

 いずれにせよ、地方議員の身分の根幹にかかわることであり、国民の皆様の声や地方議員の声もよく聞きながら検討がなされる必要があると考えています。

 また、政務活動費の収支報告書のネット公開という御提案をいただきましたが、政務活動費については、現行法上、議長が使途の透明性確保に努める義務を負っています。まずは、各地方議会において、住民に対する説明責任の徹底や使途の透明性の向上などみずからの取り組みを通じて、住民の信頼確保に努めていただきたいと考えております。

 公務員の給与についてお尋ねがありました。

 労働基本権が制約されている国家公務員の給与については、その代償措置である人事院勧告制度を尊重するとの基本方針のもと、民間の水準を踏まえて決定されております。

 また、人事院が行っている官民比較の手法については、人事院において専門的見地から判断されるものであると考えております。

 こうした中にあっても、厳しい財政事情を踏まえ、国家公務員の総人件費に関する基本方針に沿って、給与制度の総合的見直しの実施や定員合理化等を行うことなどにより、人件費の抑制を図ってまいります。

 国家公務員の天下り等についてお尋ねがありました。

 今回の文部科学省における再就職規制違反事案は、国民の信頼を揺るがすものであり、あってはならないことであります。まずは、文部科学省において徹底した調査を行い、再発防止策を講じてもらいたいと思います。

 また、現行制度による厳格な監視が機能したからこそ本事案が明らかになったものでありますが、本事案で生じた国民の疑念を払拭するため、山本国家公務員制度担当大臣に対し、同様の事案がないかどうか、全省庁について徹底的な調査を行うよう指示しました。今後、準備ができ次第調査をし、その結果を明らかにしてまいります。

 必要なことは何でもやるとの考えで、国民の信頼を確保してまいります。

 また、教育の無償化の財源についてお尋ねがありましたが、我が国の未来、それは子供たちであり、どんなに貧しい家庭で育っても夢をかなえることができるよう、誰もが希望すれば進学できる環境を整えなければなりません。このため、これまでも、幼児教育無償化の段階的推進、奨学金制度の充実、授業料免除の拡大などに取り組んできたところであります。

 来年度からは、高校生への奨学給付金を拡充するとともに、成績にかかわらず、必要とする全ての学生が無利子の奨学金を受けられるようにします。さらに、返還不要の給付型奨学金制度を新たに創設することとしました。

 今後とも、必要な財源を確保しつつ、教育費負担の軽減にしっかりと取り組んでまいります。

 なお、交付金、補助金については、徹底的に効率化を図り、不要なものについて削減することは当然のことであります。

 IRの経済効果及びギャンブル依存症対策についてお尋ねがありました。

 IRについては、プールや水族館など家族連れで過ごせる施設があり、ビジネスの国際会議を世界じゅうから招致し、家族連れで会議に参加してもらえるなど、まさに総合的なリゾート施設であり、観光や地域振興、雇用創出といった効果が非常に大きいと期待されます。

 シンガポールでは、経済情勢などの要因もあるかと思いますが、開業後四年で、国全体の観光客数が六割増、観光収入が九割増となったと聞いております。我が国においても、その効果が十分に発揮されるよう、検討を進めてまいります。

 一方で、IRについてはさまざまな懸念点もあると認識しており、制度上の措置の検討も必要です。

 政府としては、推進法の国会審議における御議論や同法の附帯決議の内容も十分に受けとめながら、ギャンブル等依存症対策も含め、我々、さまざまな懸念事項への対策について検討を進めてまいります。

 二〇二五年国際博覧会の日本への誘致の必要性についてお尋ねがありました。

 国際博覧会の国内への誘致は、日本の魅力を世界に発信する絶好の機会となります。開催地のみならず、我が国各地を訪れる観光客が増大し、地域経済が活性化する起爆剤になると考えます。

 昨年、私から関係閣僚に対し、協力して立候補に向けた検討を進めるよう指示しました。既にフランスは、開催国に立候補しています。現在、経済界や学識経験者、関係省庁等が行っている、大阪府の基本構想の検証と立候補に向けた国としての検討を、スピード感を持って進めます。

 先日、東南アジア諸国への出張の際には、各国首脳に日本が正式に立候補した際の支持を要請しました。立候補が正式に決定すれば、全力で誘致に取り組んでまいります。

 天皇陛下の御公務の負担軽減等に係る基本的な考え方についてお尋ねがありました。

 昨年八月の天皇陛下のお言葉に対する国民の皆様の受けとめを踏まえ、現在、有識者会議で御議論いただいており、昨日、論点整理が行われ、公表されました。先ほど、衆参両院の議長、副議長にもお示ししたところです。

 この問題は、国の基本、そして、長い歴史とこれからの未来にかけての極めて重い課題であります。決して政争の具にしてはならず、政治家がその良識を発揮しなければならないものです。

 今後、衆参両院におかれまして、議長、副議長を中心に各党各会派からの意見聴取が行われるものと承知しております。それをしっかり受けとめ、政府における検討をさらに進めていく所存であります。(拍手)

副議長(川端達夫君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(川端達夫君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       財務大臣     麻生 太郎君

       総務大臣     高市 早苗君

       法務大臣     金田 勝年君

       外務大臣     岸田 文雄君

       文部科学大臣   松野 博一君

       厚生労働大臣   塩崎 恭久君

       農林水産大臣   山本 有二君

       経済産業大臣   世耕 弘成君

       国土交通大臣   石井 啓一君

       環境大臣     山本 公一君

       防衛大臣     稲田 朋美君

       国務大臣     石原 伸晃君

       国務大臣     今村 雅弘君

       国務大臣     加藤 勝信君

       国務大臣     菅  義偉君

       国務大臣     鶴保 庸介君

       国務大臣     松本  純君

       国務大臣     丸川 珠代君

       国務大臣     山本 幸三君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  萩生田光一君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  横畠 裕介君


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