衆議院

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第23号 平成29年5月9日(火曜日)

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平成二十九年五月九日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十七号

  平成二十九年五月九日

    午後五時開議

 第一 道路運送車両法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 銀行法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 学校教育法の一部を改正する法律案(内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 法務委員長鈴木淳司君解任決議案(逢坂誠二君外一名提出)


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    午後六時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

笹川博義君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 逢坂誠二君外一名提出、法務委員長鈴木淳司君解任決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(大島理森君) 笹川博義君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、日程第一に先立ち追加されました。

    ―――――――――――――

 法務委員長鈴木淳司君解任決議案(逢坂誠二君外一名提出)

議長(大島理森君) 法務委員長鈴木淳司君解任決議案を議題といたします。

 提出者の趣旨弁明を許します。階猛君。

    ―――――――――――――

 法務委員長鈴木淳司君解任決議案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔階猛君登壇〕

階猛君 皆さん、おばんでございます。

 あっちの方と今村前復興大臣に言われた、東北の岩手県出身、衆議院議員の階猛です。(拍手)

 私は、東北に誇りを持っています。人材、食料、エネルギー。首都圏を含め都市部を支えているのは東北地方です。その東北に対し、今村前復興大臣は、震災がまだ東北で、あっちの方だからよかったと、被災者を初め東北人を深く傷つける暴言を吐き、辞任しました。この発言自体、復興大臣としてはもとより、政治家として、人として許されるものではありません。

 さらに、震災による社会資本の毀損が二十五兆円に上ることに触れつつ、これがもっと首都圏に近かったりすると、莫大、甚大な被害があったと述べています。人口や経済規模だけに着目して、東北だから被害が小さかったという考えのようですが、大切な点を見過ごしています。

 私は、東北地方に住む人々に、ふるさとを自分たちの手で守る、そういう強い意思と、そのような人々のきずながなければ、もっと被害は拡大していたと思っています。

 もしも、水門閉鎖や避難誘導に当たった消防団員を初め、みずからを犠牲にして住民の命を守り抜いた人たちがいなかったら、もっと被害は拡大していたと思います。もしも、住む家も、食べるものも、家族も失ったにもかかわらず、避難所で不平不満を言わず、互いに助け合ってきた人たちがいなかったら、もっと被害は拡大していたと思います。

 きょうも、岩手県の釜石市では山林火災の消火活動が続いています。震災の後も、被災地では多くの災害に見舞われましたが、東北人は決して諦めません。必ず復興をなし遂げます。そして、お世話になった方々への感謝の気持ちを決して忘れません。

 東北は、あっちの方ではありません。日本を支え、日本のすばらしさを体現する、かけがえのない地域であります。このことを、今村前大臣だけでなく、本会議場にいらっしゃる全ての議員の皆様に知っていただきたいと思います。

 前置きが長くなりましたが、ここから本題に入ります。

 私は、民進党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました法務委員長鈴木淳司君解任決議案について、提案の趣旨を説明いたします。

 主文

  本院は、法務委員長鈴木淳司君を解任する。

以上であります。

 以下、その理由を申し述べます。

 まず、委員長解任案提出に至った事実経過であります。

 今回の共謀罪法案が本会議に付されたのは四月六日のことでした。当時、法務委員会では、民法の債権法分野の改正案について、与野党で真剣な議論を行っていました。この法案は、制定後百二十年を経て、二百条にも及ぶ初の大改正として政府から提出されたものです。個人はもとより企業にとっても本法改正の影響は大きいため、本法案が提出される前後で多数の解説書籍が出版されました。

 それほどの大きな改正であるからこそ、各条文について慎重かつ十分な審議を行い、必要があれば修正も行うべきであります。実際、昨年の臨時国会までは、鈴木委員長もそのような私たちの姿勢に理解を示していたと思います。

 ところが、共謀罪法案が本会議に付されるや否や、まだ多くの論点が手つかずであったにもかかわらず、委員長はそれまでの態度を急変させ、質疑終局を急いだわけです。四月の十二日には、政府案に対し、民進党から第三者個人保証の見直しなど合理的な修正案を提出したにもかかわらず、わずか一時間二十分の質疑で法案審議を終えてしまいました。

 鈴木委員長は就任の挨拶で、法務委員会の所管分野に国民生活の根幹にかかわる重要な問題が山積しているとの認識を示しつつ、公正かつ円満な委員会の運営に努めてまいりたいと決意を表明していただけに、私は失望を禁じ得ませんでした。

 次に、鈴木委員長は、法案提出順を無視し、性犯罪に関する刑法改正法案を後回しにして、共謀罪法案の審議に入りました。

 刑法改正案も、法制定後百十年を経て初めての大改正であり、特に性犯罪被害者や犯罪被害者の支援に携わる人たちにとっては待ちに待った法改正です。私たちも、一刻も早く法改正を実現すべきと考えております。

 当初は、与党である公明党の皆さんも、通常の順番どおり、刑法改正を先に行うことを主張しておられました。ところが、与党国対委員長間で共謀罪審議、成立優先の方針が決定されると、鈴木委員長もこれに従ったのです。

 刑法改正案の国会提出を心待ちにし、提出順で見れば、当然、共謀罪より先に審議されるだろうということを確信していた当事者にとってみれば、大変残酷な委員会運営であったと言わざるを得ません。

 魂の殺人とも言われる性犯罪の被害者の切実な声を受けとめず、与党の方針に唯々諾々と従う委員長の姿勢に疑問を感じざるを得ません。

 四月の十九日から始まった共謀罪法案に関する質疑においては、質疑者が要求していないにもかかわらず、鈴木委員長が職権で政府参考人たる法務省刑事局長を招致しました。そして、細目的または技術的事項に当たらない質問についても、大臣等の政務三役ではなく、政府参考人に答弁させました。これは、後で詳しく述べるとおり、衆議院の議事運営上、前例のない暴挙であります。そして、憲法違反と衆議院規則違反に当たります。

 その十九日の質疑直後に、民進党の法務委員連名で抗議の記者会見を行いました。法務委員会の理事会等でも抗議を行い、鈴木委員長に対して再発防止を要請しました。

 にもかかわらず、二十一日の審議で、鈴木委員長は、さらに驚愕すべき行動をとりました。

 理事会において政府参考人登録が整わなかったにもかかわらず、法案審議中の全ての期日における政府参考人招致を採決によって議決してしまったのです。

 そもそも、質疑者の要求なき政府参考人招致は、その日一日限りであっても前例がなかったわけです。よもや、このような包括的な議決が行われようとは夢想だにしませんでした。

 鈴木委員長は、政府参考人招致をめぐる前回の抗議に耳を傾けるどころか、本案審査中という言葉を織りまぜる抜き打ちの形で、さらに激しい暴挙に出たわけです。これは、理事会の存在をも否定し、もはや公正かつ円満な委員会運営を放棄したものと言わざるを得ません。

 こうした規則違反の暴挙に対し、私は、二十一日の質疑の事前通告では、いずれの質問も細目的、技術的事項に関するものではなく、政府参考人の出頭は不要であると記載した書面を提出させていただきました。

 そして、当日の質疑の冒頭では、改めて政府参考人招致に抗議するとともに、もし私が本質的、基本的な質問をしたにもかかわらず、これを政府参考人に答弁させたならば、質疑は続行できませんと宣言して、質疑に入りました。

 その質疑の終盤、私は、共謀罪の捜査は実行準備行為の前に行われるのか、後に行われるのかという、極めて本質的かつ基本的な質問を行ったわけです。それにもかかわらず、鈴木委員長は、金田大臣が答弁に窮すると見るや、政府参考人を指名し答弁させるという、衆議院規則四十五条の三に明らかに反する委員会運営を行いました。

 ちなみに、二十八日の私の質疑の冒頭では、今の政府参考人の指名、答弁が規則違反に当たるのではないかとする私の見解が間違っているのかどうか、念のため、鈴木委員長に確認しました。それに対し、委員長自身も間違っておりませんと明言され、みずからの委員会運営に衆議院規則違反があったことを認められております。

 この規則違反の政府参考人答弁を阻止するため、二十一日の質疑当日に、私は、我が党の逢坂筆頭理事とともに激しく抗議を行いました。しかしながら、政府参考人は衆議院規則を無視して答弁を続行したため、事前の申し出どおり、私は質疑を打ち切りました。

 その直後、審議中断中に、私と我が党の法務委員数名で今後の対応を協議していたところ、今のはテロ準備行為ではないかといった不規則発言が聞こえてきました。私は、これから述べるとおり、この不規則発言は看過しがたい問題を多く含むため、声の主を誰何しながら、声の主と見られる土屋理事に詰め寄り、厳しく抗議を行いました。

 二十八日の質疑において、私は、土屋理事に不快な思いをさせたのであればおわびをする旨を申し上げつつ、鈴木委員長に対し、土屋理事に対する発言撤回と謝罪を求めましたが、今なお放置されたままであります。

 次に、土屋理事による不規則発言の問題点を述べさせていただきます。

 まず、正当な理由なく他人を犯罪者呼ばわりすることは、刑法で言うところの名誉毀損罪に当たります。そういう判例もあります。名誉毀損罪が成立する場合、現行犯逮捕が可能であります。現行犯逮捕の場合には、必要かつ相当な範囲での有形力の行使もできるということを申し上げたいと思います。

 そして、テロ準備行為ということで私を犯罪者呼ばわりしたということは、単に私に対する誹謗中傷、名誉毀損にとどまらない問題になります。なぜならば、政府案においてテロ準備行為が成立するのは、組織的犯罪集団の成立があって初めて認められるということを、かねがね首相も法務大臣も説明しているからです。

 何を申し上げたいかといいますと、私の言動をテロ準備行為と論難することは、私の所属する民進党が組織的犯罪集団だと認定したことを前提としているわけです。

 すなわち、単に私の名誉を毀損したというだけではなくて、私の所属する民進党の名誉をも毀損する重大な問題発言だったと言わざるを得ません。

 また、政府案によりますれば、テロ準備行為を実行した者だけではなくて、その準備行為に加担した人たち、この人たちは、準備行為を実際に行っていなくとも、一網打尽で処罰対象になるということであります。

 すなわち、民進党の所属議員のうち、私と常日ごろ一緒に行動していた者は一網打尽で処罰対象になってしまう、こういう問題も含むものであります。

 さらに、テロ準備行為という不規則発言の大きな問題点、さらに申し上げますと……(発言する者あり)不規則発言はやめてください。このような正当な権力に対する批判の言動をテロ準備行為と論じる、そういう言論が許されるとするならば、権力への正当な抗議活動を、国民は萎縮する可能性があります。テロ準備行為というレッテル張りは断じて許されない、言論の自由を守るためにも断じて許されないと考えます。

 さらに、今なお、土屋理事、あるいは、その委員会の運営をしてきた鈴木委員長、発言を撤回しておりませんし、撤回させようともしておりません。

 もし、この撤回しないという理由が、法案への無理解が理由ということであれば、法務委員会のこの法案の審議に四六時中立ち会っている理事ですら理解できない法案を国民が理解できるはずもなく、廃案にすべきであります。

 もし、発言を撤回しない理由が法案を理解した上でのものであれば、組織的犯罪集団や準備行為、あるいは共謀ないし計画の認定は、いとも容易に、安易になされ、極めて危険であります。したがって、この場合も廃案にすべきであります。

 そして、もう一つ問題となっているのは、政府参考人強行招致と違法答弁であります。

 まず、憲法違反の問題です。

 憲法六十三条は、国会の権限を定めた第四章「国会」の中に位置し、その後段において、首相初め国務大臣が答弁または説明のため出席を求められたときは、出席しなければならないと定めております。この規定に基づき、国会議員は国務大臣に対する質問権を有し、国務大臣は答弁義務を負うものと解されています。

 十九日や二十一日の法務委員会の質疑において、我が党の質疑者は、首相や法務大臣に質問し、答弁を求めたのであります。にもかかわらず、法務委員長は、職権で政府参考人を一律招致し、首相や法務大臣が答弁できないと見るや、たびたび政府参考人を指名して答弁させました。これは、国務大臣に課せられた答弁義務に反する運営であり、看過できない憲法違反であります。

 なお、昨日の衆議院予算委員会における、我が党の長妻議員への安倍首相による読売新聞を熟読せよという発言も、国務大臣の答弁義務を定めた憲法六十三条に違反するものと解されます。なぜならば、読売新聞は民間の一商業新聞でありまして、国民の多くはその内容を容易には知り得ません。国権の最高機関である国会の答弁は、国民がその内容を容易に知り得る形で行わなければ答弁義務を果たしたことにならないからであります。憲法を守らない人物に憲法改正を語る資格はないと思います。

 次に、衆議院規則違反について述べます。

 法務委員会など委員会の審査等において、委員の質疑は、国務大臣等政務三役に対して行うのが原則です。ただし、衆議院規則四十五条の三において例外が定められています。すなわち、細目的または技術的事項について、必要があれば、政府参考人の出頭を求め、その説明を聞くことができるとされています。

 十九日以降の質疑において、我が党の質疑者は、細目的または技術的事項につき質問する場合は、あらかじめ政府参考人の出頭をこの規則どおり求めているわけであります。他方、それ以外の質問については、原則どおり政務三役に質問することにしておりました。

 しかしながら、法案の本質的、基本的事項に関する質問についても、法務委員長は質疑者の了解なく政府参考人の出頭と答弁を命じたのであります。これらは明確な衆議院規則違反であるとともに、政府委員制度の廃止を決めた平成十一年の与野党申し合わせ事項や、政府参考人を招致する場合は質疑通告の時点であらかじめ要請するとした平成十二年の与野党申し合わせ事項を空文化するものであり、断じて容認できません。

 また、この間の政府参考人のあり方についても申し述べたいと思います。

 政府参考人は、先ほど申し上げました法務省の刑事局長です。もともとは検察官出身であります。いわば、この法案が成立した後は、捜査、処罰を行う立場にあるわけです。専門知識はあると言えるかもしれませんが、その反面、自分たちに都合のいいような答弁でこの審議を切り抜けようという思惑もあるのではないか、そういう疑惑も生じ得るわけであります。政府参考人が、このような立場で、自分から積極的に手を挙げて衆議院規則に違反するような答弁を重ねていることは、極めて問題だと私は考えます。

 以上、るる申し上げましたけれども、憲法違反、衆議院規則違反、ルールを守るという規範意識の乏しい政府・与党がつくった今回の法案が、この法案のとおり運用されるという保証はないと言えるのではないでしょうか。法案に関する運用の不安、懸念は全く払拭されていないということを申し上げます。

 さて、今回、私の、委員長解任決議案、この決議案提出に至ったそもそもの原因を挙げていきたいと思います。

 まず、今回の問題を生んだ原因の一つに、法務大臣の答弁能力があります。

 この一月以降、金田法務大臣は、審議のたびに、たびたび答弁に詰まり、速記がとまった回数は、きのうの逢坂委員の質疑が終わった段階で何と六十六回に上ります。このような法務大臣が、国民の権利、自由に重要な影響を与える法案について説明責任を果たせるわけがありません。

 また、審議中断が多いだけではなくて、オウム返しの答弁が多いということも挙げられます。

 私どもが質問すると、まず、政府参考人あるいは副大臣、政務官、こうした方が答弁に立ち、その直後で法務大臣が同じ内容を繰り返し答弁する、こういうことがたびたび見られました。

 オウム真理教のテロ行為を処罰しようという、オウム事件に端を発したようなこの法案でありますが、大臣ももう一つのオウム事件を起こしていると言わざるを得ません。

 そして、的外れの答弁の多さということも挙げさせていただきます。

 私どもの質問に対して、聞かれたことに素直に答えない法務大臣……(発言する者あり)

議長(大島理森君) 御静粛に。

階猛君(続) イエスかノーかで聞いているにもかかわらず、イエスともノーとも答えず、いろいろなことを述べて時間を空費している。私たちは、このような的外れな答弁で論議が深まらない、これを非常に問題だと思っております。質問に真正面から答えず、時間を空費するような大臣に、大臣としての資格はないと言わざるを得ません。

 さらに、もう一つ問題点、言い逃れの答弁の多さであります。

 法案提出前は、成案が出ていないので答えられない、また、成案が出る前、出た後、共通して、事前に通告を受けていないので答えられない、こういう答弁がたびたびありました。しかし、成案が出ても、事前に通告をしても、なお答えられない。結局は、成案が出ていないこと、事前に通告を受けていないこと、これは単なる自分の答弁能力を隠蔽するための言い逃れだったと言わざるを得ません。

 そして、国会への責任転嫁という問題もありました。

 二月六日、予算委員会の質疑の後、法務大臣は、突然、記者クラブに文書を配付しました。質問に対して政府参考人の同席を求めること、あるいは、成案が出た後で答弁しますといったようなこと、私たちの質問権を制限するようなこの文書に対して、我々は断固として抗議をしました。私たちは、この文書、まさに憲法六十三条違反ではないかということで、二月八日の委員会では、厳しく大臣に対して資質を問う追及をしたわけであります。

 その中で、大臣は、文書は撤回する、今後は自分の力で答弁するということを申し述べたわけでありますが、そのような言葉を忘れてしまったのか、今は、先ほどから申し上げているとおり、政府参考人に頼ったり政務三役に頼ったり、そして、なかなか聞かれたことには答えず、的外れな答弁を繰り返しているわけです。

 私は、こうした二月六日の文書の提出も含め、大臣に対しては厳しく物を言ってまいりました。私も、二月の八日に質疑に立った際には、大臣のこの国会の言論を弾圧するような、国会の質問権を封じるような対応というのは、本質的な意味においては、まさにテロ等準備行為ではないかといったようなことも言っております。

 これをあえて申し上げたのは、私は先ほど、土屋理事の不規則発言を問題にしたわけです。それを捉まえて、ブーメランではないかと三流のマスコミが批判するということが予想されますので、あえてこの点について触れさせていただきました。

 私は、今の大臣に対するテロ等準備行為という発言の後に、こう申し上げました。もし私の発言が間違いであれば、それを指摘してください、そうすれば、この場ですぐ撤回します、ただし、間違いだというのであれば、準備行為とは何か、組織的犯罪集団とは何か、これをちゃんと説明してくださいということなどを申し上げました。しかし、それに対して大臣は、まともな答えはなされず、最後には、憲政史上に残るあの有名な答弁、私の頭脳では対応できません、申しわけありません、こういう発言をするに至ったわけであります。

 私は、単に批判のための批判をしたわけでも、大臣の資質に対して暴言を吐いたわけでもありません。委員会の正式な議論の中で、大臣に対する反論権も与え、そして、誤りであれば撤回しますよということも述べた上で、私は申し上げました。ブーメランだという批判は全く的外れだということを申し上げたいと思います。

 さて、今回の問題を生んだ原因のその二としまして、法案自体の問題、これがあると思います。法案自体問題があるからこそ審議を急がざるを得ない、また、法案自体に問題があればこそ、答弁にたけた法務局長に答弁させざるを得ない、こういうことがあったのだと思います。

 それでは、この法案にどういう危険があるかということを申し上げたいと思います。

 まず一つは、憲法二十一条の表現の自由あるいは集会、結社の自由が萎縮する危険であります。

 このような法案が通るということになれば、集まって本音を出し合って、権力に対する批判も含め、いろいろなことをぶつけ合って議論する、こうしたことに対して萎縮的な効果が生ぜざるを得ないというふうに考えます。

 そして、問題は、この萎縮効果は、単に基本的人権である集会、結社の自由や言論の自由を侵害するだけではなくて、民主主義を根底から壊す危険をはらんでいるということであります。

 なぜならば、権力に対する自由な批判、言論が萎縮されるようなことになれば、国民は有意義な情報が得られず、権力の言い分だけを素直に聞かざるを得なくなって、そして、権力の腐敗、暴走が進んでいくことになりかねないからであります。

 民主主義は、言論の自由、集会の自由が十全に守られているからこそ機能するものである、そして、それを機能させるためには、このような法案が通ることによって言論の自由を萎縮させるようなことがあってはならないということをまず申し上げたいと思います。

 そして、二つ目の危険として、監視の危険であります。

 憲法十三条の幸福追求権の帰結として、憲法上、プライバシーの権利が保障されると解されております。壁に耳あり障子に目ありということわざもありますけれども、今の世の中は、壁に耳ありネットに目ありということが言えるかもしれません。アメリカでは、先ごろ、テレビの報道番組でも取り上げられていましたけれども、大量監視プログラムでテロ対策を理由に監視が肥大化し、プライバシーの侵害が行われていたということが明らかになっております。

 日本でも、既に大分県警が、不法に建築物、敷地内に侵入し、監視カメラで監視をしていた、こういう事件もありました。また、さきの最高裁判決で、任意捜査でGPSを用いることは違法だという判決も出たわけです。昨年は、通信傍受の対象範囲も拡大されております。今現在は、通信傍受の対象範囲に、今回の共謀罪は含まれておりませんけれども、将来、この対象犯罪に共謀罪が加わることを法務大臣も否定しておりません。今の技術のもとでは、一億総活躍ならぬ、一億総監視社会になりかねません。

 私は、国民の監視より、まずもって行うべきは行政の監視であると思っております。

 森友学園の問題にしても、私たち国会が財務省に対して説明を求めても、資料は全部廃棄されたということで、国会議員の行政監視機能を潜脱する、無に帰しめる、そういった国会での違法な活動がされているわけであります。私たちは、こうしたことをする政府が国民の監視に力を入れることは、断じてあってはならないと考えております。

 さらに、この法案、冤罪の危険もあります。

 火のないところに煙は立たず、こういうことわざがありますが、火のないところに煙を立てかねない、そういう共謀罪法案になっていると思います。共謀罪は、話し合ったことが重要な立証のテーマになります。話し合ったことは、監視体制を強化するか、しからざれば、話し合った内容を取り調べによって明らかにしていく、そのいずれかしかありません。必然的に、取り調べへの依存度も高めていくことになるわけです。

 可視化が不十分である中で、今の可視化の、三%しか対象になっていない中で、このまま共謀罪を導入して、取り調べで共謀の有無を立証するというのは、極めて冤罪の危険を高めることになると思います。

 過去にも、冤罪でたくさんの方がぬれぎぬを着せられてきました。捜査機関の暴走を私もみずから体験しております。私が以前勤めていた日本長期信用銀行でも、粉飾決算の罪で強制捜査が行われ、私も、自分の机を洗いざらい調べられました。にもかかわらず、最高裁で最終的には無罪であります。

 こうした無罪判決が出ても、捜査機関、あるいは裁判所、誰も責任をとらないわけであります。

 冤罪の危険を高めるような法案のたてつけ、この法案の中には自首減免規定もあります。他人を罪に陥れるような、そういう行動がむしろ促進されかねません。

 また、来年からは、刑事免責手続という新たな制度が刑訴法の改正によって施行されます。これは、証人は、自分は罪に問われないまま、他人の犯罪に関する事項、これをしゃべることが許される。

 何が問題になっているかというと、共謀罪で、一方が共謀の事実があった、一方が共謀の事実がなかったと見解が分かれる場合、どちらかがうそをついているわけであります。

 被告人が幾ら否定したとしても、証人がこの刑事免責手続を利用して、自分は罪に問われないからといって、被告人に対する共謀の存在を事実に反して話してしまう、こういう危険性も今後は生じ得るということも指摘させていただきます。

 さらに、この共謀罪の法案は、憲法三十一条、いわゆる罪刑法定主義にも反する内容になっていると私は考えます。

 今回のこの共謀罪については、新たな犯罪類型であるということを大臣は答弁されました。新たな犯罪類型ということは、過去の判例、過去の法律解釈が成り立たないということであります。

 これから、どのような範囲で捜査対象、処罰対象にするか、これは捜査機関の一存に委ねられております。極めて予見可能性が低い中で、だからこそ、犯罪の構成要件は、一点の曇りもなく明確性が保たれていなくてはいけません。

 しかし、組織的犯罪集団にしても、準備行為にしても、あるいは共謀ないし計画にしても、答弁を聞く限りにおいて、明確性が明らかになったとは到底言えないと思います。

 私たちは、過去の苦い経験に学ぶべきだと思います。戦前の治安維持法、あれも、一般人には適用はされない、こういう政府答弁があって、そして成立がされました。しかし、その後、どんどん、捜査対象、処罰対象が拡大されて、およそ国体の変革とは関係のない、出版記念の祝賀パーティーのようなものまで検挙されてしまった。

 この経験に学ぶならば、法案がひとり歩きしないように、文言の厳格性、明確性については徹底的に詰めていくべきだと私は考えます。

 さて、今回の法案、安倍首相にしましても、金田大臣、あるいは政務三役、参考人にしましても、法案の必要性ということのみを強調されます。しかし、法案の必要性だけではなくて、憲法上許されるか、こういう許容性の観点からの検討も必要不可欠だと思います。これが、まさに立憲主義、法の支配、その本質であります。

 安倍政権下では、立憲主義や法の支配というのが軽んじられているのではないか。安保法制にしましても、きのうの総理の発言にしましても、およそ憲法を尊重しているような発言には聞こえませんでした。

 こうした政権のもとで、必要性だけが強調されて、憲法上許されるかという許容性の観点が抜け落ちたまま強引に法案が通されるということは、あってはならないと考えております。

 そして、こうした法案の危険性を隠蔽するために、さまざまな仕掛けが盛り込まれております。

 まず、罪名についてであります。

 テロ等準備罪という罪名は、法案のどこを探してもありません。テロという文言すら、当初与党に示された政府原案には見当たりませんでした。

 テロ等準備罪、名づけ親は誰なのか、私が法務省に尋ねたところ、名づけ親は知りません、いつの間にかそうなっていました、とんでもない答えでありました。

 そもそも、テロ等準備罪、その言葉だけを聞いてみると、殺人罪や窃盗罪のような、一つの犯罪だけを意味するような錯覚にとらわれます。しかし、実際には、テロ等準備罪は、政府の数え方でいえば二百七十七、私たちの数え方でいえば三百を優に超える罪、こうした罪に関する実質的な共謀罪を定めるものであるということが隠蔽されているわけです。

 そして、このような多数の罪のうち、テロ等準備罪と言っておりますが、テロに関係するものが少数、テロ等の等に当たるものの方の割合が多いということも、これは明らかな欺瞞であると私は考えております。これこそまさに印象操作であります。

 残念ながら、世論調査の結果を見る限り、この印象操作が大きく影響しているような、そういうことも見てとれるわけでありますけれども、私どもは、それにごまかされてはならないということを国民の皆様にも強く訴えたいと思います。

 そして、二つ目の仕掛け、いわゆる今回の法案の欺瞞性でございます。

 TOC条約に加盟するに当たって、政府の説明では、共謀罪あるいは参加罪の新設が必要だ、もともとない国においては必要だ、こういうことをおっしゃるわけでございますが、実際に共謀罪を新設したのは二カ国のみであります。

 立法ガイドの解釈、これも、政府は口頭で確認したということでありますが、文言を素直に読めば、わざわざ共謀罪や参加罪を設けなくても、自国の法制度で十分な対応がされるのであれば加盟可能だということが読み取れるわけであります。現に、アメリカは留保つきで加盟をしております。条約の文言どおりの立法手当てをしているわけではありません。

 また、法務委員会の質疑の中で、北朝鮮もこのTOC条約に加盟しているということが明らかになっておりますが、加盟するに当たってどのような立法手当てがなされたのかという問いに対して、政府は、確認しておりませんといった無責任な答弁でありました。

 私どもは、政権当時から、このTOC条約について、特段の立法措置を講じなくても、現行の共謀共同正犯理論、あるいは未遂の手前の予備、準備罪についても取り締まる部分もあるわけでありますから、これを根拠にして、十分留保つきで加盟できるのではないかということを考え、政府内でも検討をしてきておりました。

 残念ながら、東日本大震災への対応などにも追われて、結論を見出すには至りませんでしたけれども、今なお、TOC条約加盟に関しては、特段の立法措置を講ぜずとも加盟はできるというのが私どもの立場であり、この点について明確な反論、説得的な反論はなされていないと言わざるを得ません。

 そして、三つ目の仕掛け、欺瞞性として、テロ対策に関する欺瞞性があります。

 審議の中で、テロ対策と言っていますけれども、どういう立法事実があるのかということでさまざまな議論が行われました。九・一一のような航空機を使ったテロ行為、あるいは地下鉄サリン事件のような毒物を使ったテロ行為、あるいはサイバーテロ、こうしたものを未然に防ぐためには現行法では足りないんだという説明がありましたけれども、これについては、我が党の議員の質疑により、現行法のもとでも特別法などによって十分対応できるということが明らかになったわけであります。

 そして、組織的犯罪集団というおどろおどろしい言葉で、一般市民は関係ないかのような説明がされております。しかし、答弁の中で政府は、一般の会社、宗教団体、サークルなど、こうした普通の正当目的の団体についても、目的が一変すれば組織的犯罪集団に当たるということを言われているわけです。一変したかどうかは犯罪の嫌疑があった時点で考えるということでありますが、一般人も捜査対象としなければ、組織的犯罪集団に当たるかどうかは決することができないと考えるわけであります。

 この点についても、きのうも逢坂委員は質疑の中で取り上げましたけれども、いまだに明確な答えはないと言わざるを得ません。

 そして、共謀罪法案との同質性、これについても、全く違うというふうにかねがね総理大臣も法務大臣も答弁しておりますが、質疑の過程で、組織的犯罪集団という文言がなかった過去の政府案と犯罪の主体の範囲は変わらない、明文化しただけだということが明らかになりました。

 また、実行準備行為を構成要件に加えて、犯罪成立時期をおくらせた、犯罪を絞ったという説明もされておりますが、我々が追及した結果、合意を処罰する対象にしているということはTOC条約との関係で変わらないということを答弁されました。また、任意捜査も実行準備行為前から可能だということを言われました。これでは、結局のところ、実行準備行為を盛り込んだとしても、捜査の開始時期あるいは捜査の主たるテーマ、これは従来の共謀罪と変わらないと言わざるを得ません。

 先ごろも、この任意捜査の一つである参考人取り調べで、参考人とされていた方が長時間にわたる取り調べの直後に自殺するという痛ましい事件がありました。先ほども触れました、私が所属していた銀行の冤罪事件においても、参考人取り調べが長時間にわたって続く中で、自殺者も出たわけであります。任意捜査だからといって、安易に許すようなことがあってはなりません。

 そして、共謀罪と実質的に変わらない以上は、法務大臣は共謀罪に対する不安や懸念が払拭されるよう法案の改善をしたと言っているわけでありますが、改善はされていないわけでありまして、潔く廃案とするべきだと考えます。

 ここで、私ども、TOC条約への考え方、そしてテロ対策への考え方、若干触れたいと思います。

 TOC条約につきましては、現在の法制度のもとでも十分に対応できます。留保という手段を用いることによってアメリカも加盟をしております。日本もそれに学ぶべきであります。

 そして、テロ対策については、必要性だけを強調すれば、どうしても国民の人権、国民の自由は後回し、国民の人権や自由はどんどんないがしろにされてしまいます。自由と安全をどのように両立すべきか、この観点から私たちはテロ対策を考えたいと思います。

 その意味で、一つは、航空テロ対策について。現行の制度のもとでは、民間の航空会社が主体となって所持品検査などを行っている。セキュリティーの万全を期すためにも、国が責任主体となってこの体制を強化すべきだと考えております。そのための新しい法案を、今、国会に提出すべく準備をしているところであります。

 そして、もう一つ、テロを含む組織的犯罪。私たちは、先ほど申し上げました予備罪の共謀共同正犯という現行法あるいは解釈上確立された考え方によって対応できるというふうに考えております。

 ただ、テロ対策、組織犯罪対策で不十分な点があれば、そこを予備罪の追加という形で補っていけばいいのではないかということで検討を進めてまいりました。その観点から、今回、組織的詐欺罪、そして組織的人身売買罪について予備罪を設ける、そういう組織的犯罪処罰法の改正案も国会に提出すべく準備中であるということを申し上げたいと思います。

 自由と安全の両立の観点から、共謀罪のような包括的、多数の不明確な犯罪をつくるのではなくて、私たちは自由と安全を両立するテロ対策を行うべきだということを申し上げます。

 最後に申し上げます。

 まず、自民党の皆さんに申し上げたいと思います。

 過去の共謀罪法案、今は引退されておりますけれども、早川先生を初め多くの自民党の皆さんも、政府案を金科玉条とせず、真摯に問題点を指摘し、改めるべきは改めていただいた、こういうふうに、記録を見ていると如実にわかります。

 今回の法案についても、拙速に採決するのではなくて、私たちの案も受けとめていただきながら、本当に国民にとってベストなテロ対策のあり方をともに考えていこうではありませんか。

 そして、公明党の皆さんにも申し上げたいと思います。

 公明党の皆さんには、この共謀罪について問題点をチェックしていただいている点、これについては、私は積極的に評価をしたいと思います。

 しかしながら、私は、この共謀罪、今のままでは一般市民も対象になってしまう、先ほども申し上げました普通の団体、これは宗教団体も含めてですけれども、対象になる可能性も否定できない。ここはもう一段、皆様には厳しい目をさらに厳しくいただいて、問題があれば積極的に改正案、議論させていただきたい、このように思っております。

 さらに、国民の皆様にもこの場をかりて申し上げたいと思います。

 参考人質疑の場で、小林よしのり参考人は、この法案は物言わぬ市民にとっては余り関係のない法案かもしれないということを言われつつ、ただ、物を言わない国民でも、一生に一回は命をかけて物を言わなくてはいけないときがある、そのときに物を言えない社会をつくっていいのか、こういう観点から、この共謀罪については反対だということを言われておりました。

議長(大島理森君) 発言者に申し上げます。

 そろそろ終結にしなさい。

階猛君(続) まさに、物言う市民と物言わぬ市民は互換性があるわけです。共謀罪に無関心ではいられたとしても、共謀罪に無関係であることはできない、このことを国民の皆様にはぜひ知っていただきたいと思います。

 委員長には同情いたしますけれども、ルールに反した運営をしてまで大臣を守り、法案を拙速に通すための運営は許されません。

 法務委員会にかかる法案は、人権に直結するものが多数あります。国民に直接関係する法案を取り扱う委員会であるからこそ、国会議員も大臣らも、慎重かつ充実した審議の場を維持する努力をしなくてはいけないわけです。

 るる述べてきましたが、鈴木委員長はその任にたえることはできないということを明らかにしました。

 以上が、法務委員長鈴木淳司君解任決議案を提出する理由であります。

 議員諸氏がその良心に従い、本決議案に御賛同賜らんことを最後に訴えまして、趣旨説明を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 討論の通告があります。順次これを許します。宮崎政久君。

    〔宮崎政久君登壇〕

宮崎政久君 自由民主党・無所属の会の宮崎政久です。

 私は、会派を代表いたしまして、ただいま議題となりました法務委員長鈴木淳司君解任決議案に対し、断固反対の立場から討論を行うものであります。(拍手)

 冒頭、先ほどの階委員の趣旨説明の中で、我が党の理事がテロ等準備行為と言ったことを批判しながら、軽々に「もう一つのオウム」と言ったことは、オウム事件の被害者の方々の心を深く傷つけるものであり、断じて許すことができません。ぜひ撤回をして、オウム事件被害者の皆様に謝罪をしていただきたいと思います。

 さて、さきの臨時国会で就任以来、鈴木委員長は、与野党双方に最大限の配慮を行いながら、一貫して公平公正で、円満な委員会運営に努められ、約百二十年ぶりの大改正となった民法改正案も、充実した審議の上、今国会での委員会採決を実現しております。

 さらに、ただいま審議中のテロ等準備罪処罰法案でも、野党の要望に応える形で、内閣総理大臣、外務大臣、国家公安委員会委員長出席のもとでの質疑を行ったほか、有識者を招いた参考人質疑も行い、多様な意見を反映できるよう、丁寧な議論の積み上げに配慮されております。

 鈴木委員長が、その温厚な人柄そのままに、公平公正で、円満な委員会運営に尽くされてきたことは、誰の目から見ても明らかなところであります。

 テロ等準備罪処罰法案は、国際組織犯罪防止条約を締結し、国際社会と協力してテロ等の組織犯罪に立ち向かっていくために不可欠なものでありますが、刑罰という国民の人権に直接かかわるこのような法案については、審議の内容を充実させ、国民への詳細な情報提供を行う責務があり、規定の解釈や捜査、公判の実務に精通した法務省刑事局長に、政府参考人として、細目的、技術的事項についての詳細な答弁をさせる必要性が高いものであります。

 しかるに、野党の一部委員は、詳細な質問通告をせず、政府参考人の出席も拒否して、法務大臣に対して細目的、技術的事項の答弁を執拗に求めるなど、本法案に対し、真剣に向き合っているとは到底言いがたい姿勢をとり続けておりました。

 このような委員に対して、鈴木委員長は、充実した審議を行うため、細目的、技術的な質問をする場合には政府参考人の出席要求をしてほしいと再三にわたり協力を要請したのでありますが、彼らは拒否をし続けたのであります。

 そもそも、衆議院規則第四十五条の三では、委員会は、必要があれば、政府参考人の出頭を求め、説明を聞くことができることとされております。

 また、刑事局長の招致自体、委員長が独善的に行ったのではなく、審議充実の観点から、委員会の議決により行ったのであり、さらには答弁者の指名についても、質疑者の質問内容に十分に配慮して行われております。これにより、テロ等準備罪の構成要件の詳細な解釈、実務上想定される取り扱いなどが明確になり、法案の審議が充実したものとなっていることは明々白々であります。

 また、委員会の開催についても、与野党各会派の意見を十分に聞いた上で決定したことであり、何ら批判に値するものではありません。

 しかし、民進党・無所属クラブは、委員長の謝罪、刑事局長を常時出席させた上で委員長が局長を指名することもあるという運用の撤回、さらには与党理事の発言についての謝罪、撤回を要求し、それがかなわなければ法務委員会における審議に応じないという、国民の負託を受けた国会議員とは思えない主張を繰り返したのであります。当然、このような理不尽な要求に応じることはできません。

 そして、鈴木委員長が委員会を開催したところ、何と、委員長の解任決議案を提出したのであります。

 そもそもは、ある野党委員が、法務委員会の場で、まず答弁者に、続いて与党理事に不適切な行為に及んだのが発端であることを棚に上げて、言いがかりにも等しい、本末転倒の主張を行っていることが、およそ理解できません。

 加えて、鈴木委員長のもと、理事会において、与党理事に対する謝罪要求は野党理事がこれを取り下げたにもかかわらず、再三にわたりこれを蒸し返すことこそ糾弾されるべきであります。

 本決議案の提出理由にある、国会が言論の府であることをみずから否定しているという言葉を、そのままブーメランで民進党の諸君にお返ししたいと思います。

 鈴木委員長の判断は、法案の審議を充実させるため、その職責から適正に行われたものであり、鈴木委員長が解任に値するという主張は、断じて退けられなければなりません。

 以上の理由から、本決議案に断固反対の意見を表明して、私の反対討論を終わります。(拍手)

議長(大島理森君) 井出庸生君。

    〔井出庸生君登壇〕

井出庸生君 民進党、信州長野の井出庸生です。

 私は、民進党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました法務委員長鈴木淳司君解任決議案に強く賛成する立場から討論を行います。(拍手)

 共謀罪をめぐる今国会審議は、国会審議のあり方、政治家同士の議論を深めようという国会改革の流れに大きな波紋を投げかけました。

 平成十一年七月、国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律、いわゆる国会審議活性化法が成立し、公布されました。国会審議活性化法は、特に第二章の国会法の改正で、政府委員制度の廃止という、国会審議のあり方に大きな変革をもたらしました。

 過去の政府委員制度は、帝国議会以来存在してきたものですが、かつて、政府委員は、国務大臣とともに、憲法上、議院への出席発言権が認められていたのに対し、日本国憲法では、議院への出席発言権は国務大臣についてのみ規定されており、政府委員について規定する国会法においても、当然の出席権を与えず、その任命に当たって両院議長の承認を要することとし、発言通告、出席要求など、国会側の立場を強くしております。

 さらに、委員会審議の実態において、政府委員に対する質疑が中心となり、国会ひいては国民に対して直接の責任を負わない政府委員が、本来政治家が担うべき政策議論の枢要な部分についてまで大きな影響力を持ってきたとの指摘もありました。このことが議員同士の政策論争の場であるべき国会審議を形骸化させているとの批判が強まり、一連の国会改革の流れの中で、政府委員制度そのものを廃止するべきであるとの結論に至ったのであります。

 鈴木淳司君が、ことし四月十九日、法務委員会において、全ての野党と無所属の委員が反対をする中、政府参考人林眞琴刑事局長の出席を強引に議決し、また、わずか二日後、四月二十一日の法務委員会冒頭には、あろうことか、本法案審査中、すなわち共謀罪法案審議の間ずっと、刑事局長の常時出席を強制的に議決したことは、政治家同士の議論を深めようという現在の政府参考人登録制度の根幹をぶち壊す悪行と断じざるを得ません。

 振り返れば、ことし二月、金田法務大臣が予算委員会審議期間中にいわゆる金田ペーパーを発表したことが問題の始まりでした。

 金田ペーパーには、共謀罪が成案を得てから、専門知識を有する政府参考人、刑事局長も加わって審議を行うことが審議の実を高めるとし、国会法や政党間の申し合わせに一切規定されていない、通告の内容、中身についてまでも、質問通告が大まかな項目では不十分と注文をつけ、さらには、外務大臣を登録することを求めた上で、法務委員会で議論を重ねるべきと、国会運営に公然と口出しをしたのであります。

 いや、金田大臣は、ペーパー発表以前からも、予算委員会の場で大手を振るって、参考人を入れろと連呼し、また、その後の法務委員会でも相変わらず刑事局長を答弁させてほしい趣旨の発言を繰り返しております。

 ちなみに、党首討論の導入などに当たり我が国が参考にしたイギリス議会では、事前の通告制度はあるものの、答弁の準備は大臣、政治家を中心に行われ、官僚が遅くまで残ることはないという話を、当時、イギリス議会について学んだ方から、今回の件で伺いました。イギリス議会がいかに政治家同士の議論を重んじるか、その一端を私も改めて学んだ次第です。

 法務委員長たる鈴木淳司君がやるべきことは、法務大臣に責任感を持って答弁できるよう促すことであり、政府参考人を強制出席させ、答弁のできない大臣を守ることではありません。

 私は、金田大臣が就任した昨年来、金田大臣と質疑を重ねてまいりました。政府参考人の登録は省庁に一任し、質疑中に、大臣に対する質疑で意に沿わず政府参考人が答弁に立ったときも、殊さらそのことを非難したことはございません。

 しかし、私は、私のそうした審議姿勢すらも、金田大臣の委員会への参加姿勢、責任感を失わせる一因になったのではないかと反省をしております。このため、私は、以後、不要不急の政府参考人登録を厳に慎み、金田大臣に答弁の改善を求めてまいりました。

 再三の参考人登録の要請があったというお話がございましたが、共謀罪法案の趣旨説明の後、初めての質疑となった四月十九日、その日の民進党質疑者の中核を担った枝野幸男委員は自発的に刑事局長を登録するよう通告、四月二十一日には、枝野幸男委員、山尾志桜里委員が、委員会開催自体が委員長の職権立てであったにもかかわらず、その前日に、刑事局長の登録を自発的に法務省に伝えております。さらに、四月二十八日の審議では、逢坂誠二委員、それから私も、刑事局長並びに人権擁護局長の登録を求めております。

 私はともかく、我が党は、必要とあらば政府参考人登録を自発的に進めてまいりましたし、また、他党、特に日本共産党からは、参考人登録は質疑者の自主性に委ねるべきだと再三にわたって抗議があったことも申し添えます。

 鈴木淳司君が強行した刑事局長の強制登録の後も、刑事局長と大臣の答弁の大事なところでの食い違い、また、刑事局長が発言をした後、大臣が同じ発言を繰り返すなど、いたずらに審議時間を答弁で浪費しております。このままでは、審議時間は通常の二倍必要であると今後の審議でお願いせざるを得ません。

 金田大臣は、法務委員会への介入、侮辱ともとれる文書を、国会運営に介入する意図はないとして撤回をされましたが、大臣の本心までを撤回することができなかったことは、いまだ刑事局長に答弁をさせてほしいと繰り返すそのお姿を見れば明らかであり、鈴木淳司君は、残念ながら、その金田大臣の守り神となってしまったと言わざるを得ません。

 また、共謀罪の法務委員会審議では、総理大臣の出席、金田大臣みずからが要求された外務大臣の出席、そして国家公安委員長の出席を求めることも、法案の重要性に鑑み、特例ではあるが妨げないという合意が理事会でされております。しかし、残念ながら、質疑者の要求する出席が必ずしも全てかなっているわけではありません。

 与党におかれましては、政府と立法府との間でいろいろ御苦労があることは推察をいたしますが、立法府の一員、立法府の中心を担われているということに思いをいたしていただきたい。

 さて、私どもと日本共産党は、共謀罪審議について、刑法の諸原則、条約締結のあり方、テロ対策の穴、計画、実行準備行為、組織犯罪集団の解釈、捜査のあり方、憲法に照らした内心捜査のおそれなど、七つのテーマに分けて、複数回参考人質疑を行って、これらのテーマに参考人の意見を求めるよう理事会で要請をしておりますが、いまだ回答はいただけず、今後の審議でも強くその実現を求めてまいります。

 以上を踏まえ、ここまで私は大臣の答弁を注視しながら議論に参加してまいりましたが、もはや、今の体制では、議論が深まるどころか、議論は混迷を深めると言わざるを得ません。

 鈴木淳司君は、充実審議のために参考人の強制登録をした旨弁明されておりますが、大臣と刑事局長答弁の大事なところでの食い違い、そして、同じ答弁の繰り返しによる時間稼ぎ。充実した審議をするためには、大臣の答弁が改善されることこそが唯一の方法であることは明らかであります。

 委員長として、大臣に猛省を求めないばかりか、国会改革に逆行する政府参考人常時登録によって大臣を守った鈴木淳司君の責任は極めて重く、解任以外ございません。同時に、即刻、政府参考人強制出席の議決の撤回を強く求めるものであります。

 私どもは、共謀罪という法案が、そもそも被害者のいない、実行可能性に疑義のある犯罪計画を捉え、捜査開始を時間的に大きく前倒しし、断片的な少ない情報の中で捜査機関が見当違いに捜査対象を広げることを強く懸念しております。共謀罪を二百七十七もの犯罪に一気に創設するリスクは、日本の良好な治安を守ってきた謙抑的な刑法を根幹から変えかねません。

 刑法、刑罰に謙抑的で、かつ、良好な治安をつくり上げてきた先人たちの努力の積み重ね、日本の国柄を台なしにしかねない重大な懸念を改めて表明するとともに、国際的な組織犯罪対策の連携を進めるために日本のとるべきよりよい方法、さらに、共謀罪はテロ対策にあらずということを今後の審議で一層鮮明にしてまいります。

 以上で、私の法務委員長解任決議案に対する賛成討論を終わります。(拍手)

議長(大島理森君) 藤野保史君。

    〔藤野保史君登壇〕

藤野保史君 私は、日本共産党を代表して、法務委員長解任決議案に賛成の討論を行います。(拍手)

 まず、安倍総理が五月三日、憲法九条に自衛隊を明記する改憲を行い、二〇二〇年に施行を目指すと表明した問題です。

 憲法尊重擁護義務を負う行政府の長が、憲法の平和主義の核心である九条を名指しして、期限を区切って改悪する決意を表明したことは、極めて重大であり、断じて許せません。

 しかも、総理は、予算委員会でこの問題を質問されると、読売新聞を熟読していただきたいと答弁しました。総理みずから重大な発言をしておきながら、あとは新聞を読めと言って国会での説明を拒む。これは、国民の代表機関である国会を事実上否定するものです。我が党は、議会制民主主義の根幹を揺るがす総理の姿勢に対して断固抗議するものです。

 次に、鈴木淳司委員長の解任決議についてです。

 その賛成する最大の理由は、安倍政権が、過去三回廃案となり、憲法違反が明白な共謀罪法案を今国会で何が何でも押し通そうとするもとで、鈴木委員長が、政府・与党言いなりに、職権で委員会の開会を強行し続けてきたことです。

 本法案については、日弁連を初めとする法律家七団体、百六十名を超える刑事法学者が、刑法の基本原則に反する違憲立法だと明確に反対を表明しています。また、全国の地方議会、日本ペンクラブ、ジャーナリスト、作家など、広範な団体、個人から不安と懸念の声が寄せられています。

 今、国会がやるべきことは、こうした国民の声に応えて、本法案について徹底した審議を行うことです。鈴木委員長は、法務委員会の委員長として、徹底審議の立場を貫く責任があります。

 ところが、実態はどうか。本法案の審議は、四月十九日、安倍総理出席のもとで始まりました。その冒頭で、鈴木委員長は、政府参考人として刑事局長の出席を発議し、与党の賛成で一方的に決定しました。

 このもとで何が起きたか。この日、私が大臣に答弁を求めたにもかかわらず、鈴木委員長は刑事局長を指名して答弁させ、その直後、金田大臣がほぼ同じ文言で答弁するという場面が何度も繰り返されました。これは議員の質問権の侵害であり、憲法六十三条に定められた大臣の答弁義務をないがしろにするものです。

 また、同日、安倍総理が、私の質問に全く答えないのみならず、委員長を差しおいて勝手に刑事局長を答弁者に指名するという前代未聞の事態も起きました。ところが、鈴木委員長は、総理の行為を正すこともせず、総理の言うがままに刑事局長に答弁させました。これは総理による委員会審議への介入であり、大問題であります。

 中立公正な立場で委員会運営を行うべき重い職責を持っているにもかかわらず、鈴木委員長はその職責を果たしているとは到底言えません。

 既に委員会質疑を通じて、本法案の危険な本質が浮き彫りになっています。

 参考人質疑では、弁護士や刑事法学者など法律の専門家三人全員が、一般の方々も本法案の対象になると認めました。ところが、金田大臣ただ一人、いまだに、一般の方々は犯罪捜査の対象にも嫌疑の対象にも告発の対象にもならないと強弁しています。これは犯罪捜査の実態とも国民の常識ともかけ離れた説明です。

 大臣は、一般の方々について、組織的犯罪集団とかかわりのない方々だという説明を繰り返していますが、これは同義反復にすぎず、何の説明にもなっていません。共謀罪が普通の市民も対象にするという事実を覆い隠すために、説明責任を放棄して破綻した答弁を繰り返す、こんなやり方で国会審議をやり過ごそうとするなど、絶対に許せません。

 政府は、国民を欺くために、テロ対策のためだという説明を繰り返しています。しかし、参考人質疑では、高山佳奈子京大教授は、テロ対策は既に立法的手当てがなされていると強調しました。例えば、二〇一四年改正のテロ資金提供処罰法により、テロ目的の資金、土地、建物、物品、役務、その他の利益の提供など、テロ目的の行為が包括的に処罰対象とされており、テロの観点での五輪対策は完了していると指摘されました。テロ対策という説明も既に破綻しているのです。

 本法案の最大の問題は、何を考え、何を合意したか、憲法十九条が保障する内心の自由を侵害することです。

 この点について、金田大臣は、実行準備行為があって初めて処罰するのだから、内心を処罰するものではないと説明しています。しかし、実行準備行為かどうか、花見と犯行の下見をどう区別するのかという私の質問に対して、大臣は、ビールと弁当を持っていたら花見、地図と双眼鏡を持っていたら犯行の下見だと答弁しました。内心を処罰するという本質をごまかそうとするから、こういう荒唐無稽な答弁になるのです。

 本法案の質疑はまだ始まったばかりです。私たち日本共産党は、徹底した審議を通じて憲法違反という本法案の本質を明らかにするとともに、市民の皆さんとかたく連帯して、必ず本法案を廃案に追い込む、その決意を表明して、解任決議に対する賛成討論といたします。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本決議案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立少数。よって、法務委員長鈴木淳司君解任決議案は否決されました。(拍手)

     ――――◇―――――

笹川博義君 議事日程は延期し、本日はこれにて散会されることを望みます。

議長(大島理森君) 笹川博義君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後七時三十三分散会


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