衆議院

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第7号 平成30年2月28日(水曜日)

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平成三十年二月二十八日(水曜日)

    ―――――――――――――

  平成三十年二月二十八日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 予算委員長河村建夫君解任決議案(辻元清美君外五名提出)

 平成三十年度一般会計予算

 平成三十年度特別会計予算

 平成三十年度政府関係機関予算

 地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)


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    午後六時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

田野瀬太道君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 辻元清美君外五名提出、予算委員長河村建夫君解任決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(大島理森君) 田野瀬太道君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 予算委員長河村建夫君解任決議案(辻元清美君外五名提出)

議長(大島理森君) 予算委員長河村建夫君解任決議案を議題といたします。

 提出者の趣旨弁明を許します。阿部知子君。

    ―――――――――――――

 予算委員長河村建夫君解任決議案

    〔本号(二)に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 立憲民主党の阿部知子です。

 私は、ただいま議題となりました予算委員長河村建夫君解任決議案につきまして、立憲民主党・市民クラブ、希望の党・無所属クラブ、無所属の会、自由党、社会民主党・市民連合の五会派を代表し、提案の趣旨を説明いたします。(拍手)

 まず、案文を朗読いたします。

  本院は、予算委員長河村建夫君を解任する。

   右決議する。

 以下、その理由を申し上げます。

 日ごろより、大変温厚かつ誠実なお人柄と、社会的弱者に対する深い共感を示す政治家として、与野党を超えて人望を集めてこられた河村委員長に対して、こうした決議の提案をせざるを得ないことを心から残念に思います。

 今般、河村委員長は、平成三十年度の一般会計と特別会計の予算案審議に当たり、職権による理事会、委員会の開催を強行し、さらには、野党側に同意を得ることもなく、その予算案の採決を強行するなど、あるまじき委員会運営をされました。言語道断と言わざるを得ません。

 この予算委員会審議に当たって、五会派は、予算委員会の審議で判明した、立法府のありさまをゆがめる余りにずさんな行政データとその恣意的解釈の是正を要請してまいりました。

 その声に耳を傾け、立法府としてのあるべき公正な姿を目指すべき河村委員長は、十分な説明責任を果たさず、真摯に問題の指摘に向き合おうとしない安倍官邸、ひいては、国会で多数をなす自民党、公明党の意向をそんたくしてか、公平公正な審議の確保を怠られました。その委員会運営のやり方に対して、まず、断固として抗議いたします。

 今日ほど、立法府のあるべき姿とは何かが問われているときはありません。その姿とは、国民に期待されている重要な三つの柱から成り立つものと考えます。第一に立法、第二に行政監視、第三に予算審議です。繰り返します。立法府のあるべき姿とは、第一に立法、第二に行政監視、第三に予算審議です。果たして、今百九十六国会の予算委員会のありさまは、その期待された三つの柱を揺るがせるものとなっております。

 河村委員長は、本来、その期待された三つの柱をしっかりと支えるべきお立場でありながら、その役割を全く果たしておられません。その事実を指摘し、解任を求める理由を、以下、申し述べさせていただきます。

 第一に、立法の観点からです。

 立法の最も重要な役割は、社会問題を解決し、よりよい国家、社会をつくる手だてとすることであります。常に弱者への視点を忘れず、時に強者のおごりを戒め、ともに生きる基盤をつくるため、社会に潜在する不均衡をでき得る限り正していくことです。

 しかしながら、二〇一二年暮れに始まる安倍政権の政治姿勢は、そうした原点からははるかに遠く、立法府のあり方そのものをゆがめるものであることを、本年一月二十六日にお亡くなりになった元自民党幹事長の野中広務さんが厳しく指摘をされております。

 平成二十六年二月の十九日に参議院で開かれた国の統治機構に関する調査会で、議院内閣制における内閣のあり方について、野中広務先生は渾身の御発言をなさいました。以下、国政にかかわる私どもにとって、与党、野党を超えて耳を傾けるべきかけがえのない遺言と考えて、一部を朗読させていただきます。

 以下、野中先生のお言葉です。

 御承知のように、日本国憲法は、立法権と行政権をそれぞれ国会と内閣が担当することを前提に、内閣は国会の信任に依拠して形成され、維持されることになっております。

 繰り返します。

 内閣は国会の信任に依拠して形成され、維持されることになっております。

 また同時に、内閣は、衆議院による内閣不信任案の可決又は信任案の否決には解散をもって応え、それ以外にも解散を行うことができるものともしております。それが我が国の議院内閣制の基本であると存ずるわけでございまして、今日では世界のモデルと言われておると聞いております。

 しかし、ここ数年間、政治の実態を眺めておりますと、憲法が規定し、期待するものと相当に異なったことが平然と行われているように申し上げざるを得ないと存ずるのであります。具体的な指摘をいたしますと、議院内閣制における内閣のあり方というテーマについての意見となりますので、そのように御理解をいただきたいと思います。

 内閣が議会の信任を得た多数、すなわち与党の政策を実現することは当然のことですが、しかし、多数決で信任されたといって、与党だけの内閣ではありません。議会が信任した内閣であります。そこで、大切なことは、与党の政策を実現するにしても、少数派の、すなわち野党の意見を表明させる機会を与えることは議会制民主主義の鉄則であります。さらに、必要とあれば、野党の意見を取り入れることも議会政治には期待されるところであります。

 私は、第一次小渕内閣時代に内閣官房長官を平成十年の七月から平成十一年の十月までやらせていただきましたが、この間、参議院が与野党逆転で大変な苦労をしたことを今思い出しておる次第であります。

 時の総理、今は亡き小渕恵三総理の政治信条は、自民党から選ばれた内閣という意識は全くなく、国会から信任された内閣だから、野党側の意見を徹底的に聞き、妥協できるところは妥協するという姿勢で臨んでこられました。もちろん、総理の信念のもとに、私も独裁政治のようなことができるといった発想を持ったこともなく、反対されても議院内閣制は与野党の国政を運営することが基本だという思いで政治にかかわってまいりました。

 野中広務先生は、同時に、民主党時代についても御意見をお持ちです。きょう私がこれを読み上げるのは、現在の国会の状況が、与党、野党を問わず国民から問われていると思うからであります。

 約三年三カ月続いた民主党政権において、議院内閣制の運用を見ますと、実態の面でいろいろな変化がございました。それは、国会論戦が、裁判所の論争のような特定の意図を持って政府側を攻撃することは、ルールの範囲で審議の行使です。これに対応する内閣側は、私たちの時代と違って、野党の主張を一旦包み込んで野党を説得的に反論するという方法でなくなってまいりました。最初から野党の主張は誤りであるという対応で内閣が行うという場面が多く見かけられたと存じます。

 この結果、予算委員会の質疑などは民事裁判の法廷闘争のような雰囲気になり、著しく国民に不信感を抱かせてしまったという感じを持っております。これでは、議院内閣制の持つ国会と内閣の連携と均衡の機能を失わせしめるものでございます。

 原因は、野党の質問が形骸化したこと。当時野党は自民党です。そして、内閣の答弁が理屈だけで野党に勝とうという、いわゆる論点をかみ合わせることがなく、意見の違いから共通なことを合意していくという議会政治の本旨が失われてきたと存ずるものであります。

 中略。

 平成二十四年の暮れに、自民・公明連立政権に交代をいたしてから、内閣のあり方について申し上げておきたいと思います。

 民主党政権の時代に比べて、両院で与党が圧倒的に多数となり、野党側が少数で、なおかつ結束がされずに、与党との協議関係を結ぼうとする野党が存在する状況で、我が国の議会、議院内閣制の微妙な変化が始まってきたというように感ずるものであります。それは、与党と内閣の関係の希薄化と申せます。内閣、それも首相から突然に発信する重要政策などが与党で十分議論されていないという問題であります。これは、政党政治のあり方に問題となりますし、首相のブレーンが重要政策をまとめ、メディアを利用して正当性を国民にPRし、与党や国会での議論を形骸化するという傾向があらわれてきておると思うのであります。

 特に、外交・安全保障問題や経済政策などについて、偏った立場のブレーンを集め、公的あるいは私的諮問機関で首相の主導される政策の事実上の確定を行っておるのではないかと考えるときが多うございます。時には内閣の内部調整も不十分となる傾向が出てきておると感じます。

 議院内閣制という統治形態であっても、政策の内容を実質的に決めるのは諮問機関であり、ブレーン諮問内閣制です。そして、与党での議論と国会での野党の議論が形骸化していけば、議院制民主主義は機能不全となります。野党の状況もあり、今日相当な危険な状態、事態になっておると言えるのではないかと心配をしております。

 野中広務先生は、この懸念を抱かれたまま天国に旅立たれました。私ども、残され、現在国政にかかわる者が、私はこの文章を何度読み直しても、本当に、今の私どもの議院内閣制のありようをかほどに的確に御指摘されたものはないと存じます。どうか、与党の皆さんも、もちろん私ども野党もそうでございます、議院内閣制とは何か、私たちの守らねばならないものとは何か、胸に手を当てて、しっかりと野中先生の言葉を思い起こしていただきたいとまずお願いを申し上げます。

 今日相当な危険な状態、事態になっておる、そう野中先生は言われました。こうした国会と内閣の危機に対して、私ども立憲民主党は、昨年十月の安倍総理による解散権の濫用によって行われることになった衆議院選挙で、真っ当な政治を掲げて立ち上がり、立憲主義の原点によって国民の中に深く分け入り、国民の声に耳を傾けながら、草の根の民主主義の実践を始めたところでございます。

 今、国民の多くが、原発をなくすこと、震災後七年たってもなお帰れないふるさと、小学校には子供の姿もないふるさと、かわりに田んぼに子供のかかしを立てて、せめて子供らのことを思う人々の心。果たして、私どもの国が向かうべき次の時代、次の社会、次のエネルギー政策とは、そのリスクを負い切れない原発ではなくて、新たに、躍動的な、再生可能エネルギーに向けての大胆な一歩と信じ、国民各位の御理解を仰ぎながら、今、全国行脚を繰り返しております。

 こうした努力は、単に立憲民主党だけではありません。それぞれの会派が、創意工夫に基づいて、どのように国民の意見を国政に反映させることができるか、日々心を砕く毎日であると信じております。

 しかし、安倍政権の今国会での目玉法案である働き方改革関連法ではどうでしょうか。国民の現実を直視し、その声に誠実に耳を傾けたものにはなっておりません。

 この法案に対して、過労死された方々の御遺族が強く反対され、政府に再考、出し直しを求めておられることは、安倍総理も重々御承知のことと思います。

 過労死として労災認定を受けた方々の数は、企画業務型裁量労働制への適用拡大後の平成十四年ころから増加し、平成二十八年度で二百五十三人に上り、リーマン・ショック時の平成二十年の三百十三人以降もずうっと高どまりをしております。リーマン・ショックは去っても、命を賭して働かねばならない人の数が減っていない、このことを、経済政策にも国の外交政策にも、あらゆる責任を負われる与党はもっとしっかりと受けとめて、現状打開のために何をなすべきかをお考えになるべきです。

 二〇一五年十二月に過労死された高橋まつりさんは、まだ二十四歳で、女性としても社会人としても、これからが人生を充実させていくそのやさきのことだったと思います。お母様のお悲しみはいかばかりか、我が子を失うことは、我が命を失うこと以上の苦しさであります。そのことに皆様はどこほど思いをいたしておられるでしょうか。

 また、二〇一三年の夏の参議院選挙の取材で月百五十時間を超す残業が重なっていた三十一歳のNHK記者、佐戸未和さんの突然死が過労死として公表されたのは二〇一七年であり、安倍総理が掲げる女性活躍の裏側でこうした不幸な現実が進んでいることは、ひとえに労働政策の誤り以外の何物でもありません。

 もちろん、過労死は、津波と並ぶ、世界に知られた日本語で、恥ずかしいことでもあります。同時に、その犠牲者はあらゆる年齢に広がり、いずれの御家族の悲しみも癒やされることがありません。

 加えて、近年の過労死の増加は若年層にも及び、女性の過労死が社会問題化しましたが、男女別の過労死のデータがとられることになったのはつい最近の二〇一四年からのことであり、まだまだ政策を充実させていくための実感に迫る調査がなされているとは到底思われません。

 女性の方が、より多くの時間を家事や生活を支えていくものに回している現実の中で、労働時間も長く、家事の責任も負い、子育て、介護、あらゆるものが覆いかぶさってくる女性たちの悲鳴が皆さんには聞こえないでしょうか。女性活躍とは、そうした女性を、本当に我が国の貴重な貴重な人材として守っていくことに、まず第一、あるはずと思います。

 くしくも、男女雇用均等法と労働者派遣法は、昭和六十一年、一九八六年に施行され、女性たちは母性保護の多くを奪われる一方、結果的には働く女性の何と六割が非正規雇用となり、多大な努力の末に正社員となった女性たちは、仕事のために必死に我が身を忘れて働き、ついには力尽きるのです。

 働く女性はこうして二極化され、低賃金の非正規あるいは身分不安定な派遣、その一方で、身をそぎ落としてキャリアアップを目指さなければならない正社員となっていることは、ジェンダー差別が厳然としてある日本ゆえ、女性に顕著ですが、男性もまた強いられている構造だと思います。

 そんな中で、安倍政権が提出を目指している働き方改革関連法は、裁量労働制のさらなる対象拡大を目指したものなのです。

 もしも、それがよりよい社会をつくるために必要なのであれば、積極的にデータを開示し、その審議を進め、建設的な議論をすることが、真っ当な国会のあり方であると言えましょう。

 しかるに、この間の加藤厚生労働大臣始め安倍総理の姿勢は、そうした、謙虚にデータに向き合い、与野党の知恵を集めてよりよい働き方をつくろうとするものとは百八十度異なり、あげくの果てには、審議不十分なまま強行採決が行われました。極めて残念です。

 そもそも、裁量労働制が導入された一九八七年以降、一体どれくらいの労働者がそうした制度のもとで働いているのか。裁量労働制もまた派遣労働と同様にその対象を拡大してまいりましたが、果たしてその制度のもとで働く労働者の男女の比率、労働時間がどうなっているのかを示すデータは全く存在をいたしておりません。労働時間はもちろんのこと、そもそもの、こうしたジェンダーも見据えた統計がないことも大きな問題であります。

 加えて、裁量労働制は本人契約時の自覚がない場合も多く、裁量労働制による過労死の実態把握も困難で、労災認定につながりづらいことから、判明したものは氷山の一角とすら言えます。

 安倍総理が答弁する、保育園の送り迎えが容易になるなどの答弁は、到底、働く女性たちからは、一体何を根拠にそうした御発言があるのか、想像もつきません。女性たちは、待機児童問題でも、また、今、派遣あるいは期間限定の雇用でも、不安定、低賃金。まして、母子家庭ともなれば、三つも四つも仕事をかけ持って、子供を保育園に迎えに行くことすらかなわず、親子でいる時間は剥奪されている。その実態を知った上での、保育園の送り迎えが可能になるでしょうか。

 私は、余りにも総理が、こうした実態を御存じない、あえて言えば無知、このことに心から憤りを感ずるものです。

 一方で、恣意的な比較データから始まり、専門家でなくても一見してわかる誤りまで、次々と、今や四百件にも及ぶ間違いが判明し、加藤厚生労働大臣すらそれを認められています。しかし、その全ては、実は、予算委員会で野党の委員一人一人が、膨大な資料を読み解き、点検し、明らかにした結果であります。厚生労働省からは、間違いでしたと非を認め、訂正、謝罪したものは、これまで一件たりともありません。

 その最たるものが、安倍総理が一月二十九日に衆議院予算委員会で行った、平均的な方で比べれば、裁量労働制で働く人の労働時間は、一般労働者よりも短いというデータもある旨の答弁です。これは、この三年間、政府・与党によって繰り返され、多くの答弁をされた閣僚の皆さん、塩崎大臣もそのような閣僚のお一人でありました。心からそう信じておられたんでしょうか。

 私たちは、このデータを見れば見るほど、なぜこのように恣意的に、捏造と言われる状態にすらなったのか。事は、どこやらの審議会か外部有識者会議から押しつけられたものでないのか。本当に疑念を強めております。

 そもそも、この答弁は、一般労働者には最長の残業時間を尋ねる一方で、裁量労働者には単に労働時間を尋ねてそれを比較するという、当然比較にもならないものを全く恣意的に比較して、多くの答弁に利用されました。

 そして、この欺瞞に満ちた答弁も、実は、長妻昭、我が党の政策審議会長が総理に対して問いただした中で明らかになったものでございます。

 労働者を守るべき厚生労働省が、労働者が長時間労働を強いられ、過労死が起きている実態を無視し、その是正こそが必要であると誰もが認識している今、その認識をも無視する形で、否、根拠となるデータをねじ曲げるやり方で、働き方改革と称して、長時間労働を強いられる状況にある労働者にまで裁量労働の対象を拡大していく法案を出そうとしているのです。

 裁量は誰にあるのでしょう。使用者側の裁量で働かせ放題、残業代ゼロ、これがまさしく現下の裁量労働の、多く労働者を苦しめる実態であります。労働者にどこほどの裁量権があるのか、お調べになったことはあるのでしょうか。この調査、単に時間だけでなく、どのような契約のもと、どのような働かせられ方があるのか、これをまず明らかにすべきではありませんか。

 この間の激しい野党の追及によって、本日午前中の予算委員会では、安倍総理は、実態把握をしない限り前には進めないと御答弁をされましたが、果たしてそれは、野党が求めております再調査や、あるいは労働政策審議会への差戻し、法案の出し戻しでなくては、何ら意味がありません。実態把握と称して自分たちの恣意的な項目だけを並べるのであれば、今の捏造データと何ら変わりのない結果になると思います。求められているものは再調査であり、労政審への差戻しであり、法案の再提出であります。

 与党の皆さんは、このことを肝に銘じて、党内の、与党内の論議をしっかりと行われ、安倍総理が国民の不興を買うことにならないよう、しっかり与党の責任を果たされるべきだと思います。それでこそ、野中先生の御心配も一つクリアされるかもしれません。遅過ぎることはありません。まだ法案も出されておりません。十分な調査を皆さんにはなさる時間があるのです。ただ、その気持ちがなければ調査はされません。思いのない者、意思のない者に政治はつかさどることができない、このことが、野中先生が皆さんに残した言葉であります。

 私は、健全な野党と、そしてきちんとわきまえを持った与党が、この国を更によりよいものにしていくと信じてやみませんので、今笑われた与党の皆さんは、みずから何をなすべきか考えていただきたいと思います。笑っている場合ではないのです。人の死がかかわり、多くの悲しみが降り積もって、今や日本の社会が過労死だらけになっているということに、もっともっと思いを深くしていただきたいと思います。

 河村予算委員長は、予算委員長として責任を持って、この明らかになった行政府のデータ問題を正すことができて初めて、予算委員長としての役割が果たせたと言えるのではないでしょうか。また、その役割を果たすことなく審議を打ち切った以上、私たちは、辞任していただくしかないと考え、解任を求める決議の提案をいたしました。本当に、繰り返しますが、残念です。

 第二に、国会の役割の一つ、行政監視の観点から、河村委員長の解任を求める理由を以下述べさせていただきます。

 一つ。行政監視の観点からの役割の一つ。首相による撤回、謝罪の対象となったデータについて、詳細な説明をせよと求めた私たちに対して、厚生労働省が予算委員会に出してきた資料は、黒塗りの、ノリ弁当以上の真っ黒け、何の説明にもなっていない不十分なものでした。情報公開すらなされていない、厚生労働省として恥ずかしい限りだと思います。

 また一つ、驚いたことに、労働政策審議会にも、何の説明もつけずにあの誤りだらけのデータを提出されていたこと、これも予算委員会の中で判明をいたしました。ところが、厚生労働省は、労働政策審議会の専門家であれば、データを正確に読めたはずだとまでおっしゃいました。自分たちがしっかりしたデータも出さずに労政審の審議を仰ぐこと自体がそもそもの誤りであるにもかかわらず、誤ったデータでもちゃんと読めとはどんな厚かましい要求であるのか、恥を知れと言いたいと思います。

 一つ。労働政策審議会は、厚生労働省設置法に基づいて、厚生労働大臣が任命し、労働政策に関する重要事項の調査審議を行う機関であり、内閣提出法案の民主的なプロセスの一つと考えられています。そこで恣意的なデータの出し方をして、働き方改革と称して裁量労働制の対象を拡大しようとした厚生労働省。そして、それがそのまま首相の国会答弁に使われるという事態まで引き起こしています。

 総理は、事務方の責任であるやに言いますが、御自身がこのデータをごらんになったとき、おかしいと思われなかったのでしょうか。さほどに裁量労働制の実態を御存じないのかと思います。数々の答弁をされた大臣の皆様にも、裁量労働制の方が短い場合もあるということが答弁としてどう成り立っているのかを御自身で考える、それが政治家の国民に対しての姿勢であると思います。

 官僚の書かれた答弁をうのみにし、また、それがたくさんの捏造に基づく答弁であったことすら見抜けず、そうであれば、一体この国会は、政治家は、何のためにあるのでしょうか。

 また、果たしてそれは、働き方改革を売り物にしようとする総理が望まれたそんたくなのかとすら思ってしまいます。(発言する者あり)あるいは、そうです、総理の指示なのかという御指摘もありました。そう聞きたくなるのが、私たちの偽らざる思いであります。

 審議会は官僚の隠れみのであると言われてきました。今となっては、官僚の隠れみのなのか、官邸の隠れみのなのか、そんたくの館となってしまったのか、はたまた、おどろおどろしいどんな意思が働いたのか、国民としては不可解きわまりない事態であります。

 審議会は、建前上、民主的な政策決定プロセスであると標榜されています。しかし、今となっては、その建前もかなぐり捨て、専門家にばれなければ不適切なデータを潜り込ませ、誤った根拠に基づいた立法を官邸主導で行うことができる場になってしまったのでしょうか。

 これほど内閣提出法案をばかにした話はありません。そして、それは同時に、立法府である国会をばかにした話でもあります。

 立法府での審議プロセス以前の、行政府での審議プロセスもいいかげんだったことになります。立法府での審議プロセスでも、厚生労働省は、ねじ曲がった事実を根拠にして、働き方改革と称して内閣提出法案と称しているのですから、行政も偽りの上、そして立法府にも砂上の楼閣のような偽りのデータを示して、一体何をしようとしているんでしょう。

 本来、強大な権限を持つ予算委員長は、立法府で最大の国政調査権を有している方と言っても過言ではありません。予算委員会の良心と言っても過言ではありませんし、また、その権限をお持ちの方でもあります。健全な行政監視の役割を果たすべき職責を持ちながら、それを発揮されないのであれば、解任を求めるしかありません。

 行政監視の観点から、その他の問題も枚挙にいとまがありません。

 安倍総理が、学校法人森友学園に関し、私や妻がこの許可あるいは国有地払下げにかかわっていたら総理大臣も国会議員もやめると答弁されたのは、昨年二月の予算委員会でした。

 以来、一年が経過しますが、ついに、ことしの二月二十日の衆議院予算委員会で、我が党の逢坂誠二議員の質問に対して安倍総理は、私の妻が森友学園の国有地についてかかわっていたのは貸付けの段階だと、関与を認めました。もともと、国有地売却の話が、貸付けを求めるところに介在し、しかし、それは、総理は、売却にはかかわっていないからという詭弁を弄して昭恵夫人の関与を否定する。

 物事は流れの中にあります。貸付けから、さらに売却、さらにごみ。ごみも、本当に撤去に費用を要するものであったということは、何ら実証されておりません。にもかかわらず、八億円もバーゲンセールをする。多くの国民が税金を払うこの季節に、余りにも特権的、なおかつお友達的な采配は、国民にとっては大きな失望であり、政治への不信を抱く何よりの事柄と思います。

 事実、このことを答弁された佐川局長は、いまだにホテルから各役所、職場に通うという、極めて逃げ回るような姿勢。国民への説明責任を欠き、本来の自分の役割を正々堂々と言えない事態が発覚をしております。この問題は、昭恵夫人と財務省の関与なしには起こり得ないことでした。

 また、質問主意書への答弁の中で、安倍内閣総理大臣の夫人が内閣総理大臣の公務の遂行を補助すると職務が定義されている昭恵総理夫人付の職員がおられて、ファクスのやりとりをしてきたこと、このことも既に明らかです。

 そのことは、財務省理財局長が中心となって、存在しない、ない、ない、ないと言い続けてきたにもかかわらず、ことし二月九日になって財務省が新たに提示した財務省総括法務監査官の二十件の文書が証明したも同然であります。

 この間、昭恵夫人や佐川元理財局長の証人喚問を、野党は国民への説明責任の観点から徹底して求めてまいりましたが、与党はこれに一切応じておりません。職権を発揮するとしたら、本来は、国有財産をめぐる問題を解明するためにまず発揮すべきところ、河村委員長には、その姿勢がみじんも見られませんでした。

 加計学園問題も同様です。加計孝太郎さんの証人喚問も含め、理事会の場で真摯に協議を行うよう求めた数々の要求事項について、全くのゼロ回答という与党側に対し、河村委員長は、何のリーダーシップも発揮されませんでした。果たすべき役割が果たされないのであれば、予算委員長の職を辞していただくしかありません。

 第三に、国会の役割の一つ、予算審議の観点から、河村予算委員長の解任を求める理由を述べます。

 そもそも、解明すべきデータを整理し、説明責任を負わせるべき証人を喚問して立法府としての役割を果たすことに力を注げば、この予算委員会のように、多くの時間を、森友学園問題、あるいは厚労省のずさんデータ問題に使わずとも、本来のあるべき予算審議にもっと時間を割くことができたはずであります。その意味で、采配の誤りが大事な予算審議をないがしろにさせていること、このことも、委員長の役割を大きく欠いているものと思います。

 本来の一般会計と特別会計予算の審議の内容は、ともに時間も全く不十分なままで、衆議院での採決をひたすら急ぐ姿勢は、決して許されるべきものではありません。

 今回提案されている一般会計九十八兆円の歳入を見てみますと、国民からいただく税収は五十九兆円で、その六割にすぎません。三割をなす三十三兆円は、国債、つまり借金です。一方、歳出の三分の一は社会保障関係費三十三兆円で、昨年より五千億円増、二十三兆円強は、過去に発行した国債の元金償還と利払いに使われています。

 国債発行は、国債を買う富裕層に、未来世代の歳入から利息つきで償還することを意味します。いかに次世代への配慮を欠き、また、若い世代に過労死が広がることに目を向けずに、ひたすら働かせ方のみを考える政府の、この予算の審議における不誠実も指摘しておかねばなりません。

 今の私たちが二十三兆円強の国債の償還に追われて、本来の税金の使い道が縛られているように、これからの世代が、三十三兆円もの新たな国債発行に縛られ、やがて将来世代の税の使い道を大きく縛ることを意味しております。

 また、同時に、この予算委員会では、いまだに事故処理に膨大な費用を要している福島の原発の処理費用も論議されず、ほとんどが国税を投入しながら行われているにもかかわらず、原発は安い安いと今もふれ回り、そして本当に変えるべき産業政策にも言及されずに終わったと思います。

 私ども立憲民主党は、原発ゼロ法案を提出いたしました。次世代への責任と心得ております。これに対しても、無責任のそしりを口にされる閣僚がありますが、どちらが無責任か、よくお考えになるべきであり、私たち立憲民主党は、この論議が国会で活発に行われることを心から願い、野党と与党の本当の論戦の場としたいと思っています。

 そして、そうした中、安倍総理は、第二次政権以降、連続して防衛関係費と公共事業を増大させ続けておられます。

 安倍政権になって特徴的なのは、その中でも、特に防衛費であります。予算委員会でも何人かの方が取り上げられましたが、まだまだ時間の不十分ゆえ、その構造的問題が明らかにされず、しかし、アメリカと口約束の先払いのFMS、有償軍事援助の名のもとで、米国の軍事産業の武器を、米国政府を通して、米国の言い値と条件で買う約束をして、新たな戦闘機やミサイル防衛装備の購入方針が、国会審議にかける前に閣議決定されているという、まことにいびつな国会軽視のありさまであります。

 この国の防衛の姿を決めるのは、主権者たる国民であります。日本国憲法の言う主権在民はここでもまたないがしろにされ、勝手な閣議決定、中身の審議は不十分、借金が山のように積もり積もっていく、このことも指摘せねばなりません。まさに、トランプ大統領の要求する、バイ・アメリカン、アメリカ製品を買えというその言に踊らされている、今の安倍総理の姿そのものです。

 一方で、戦闘機の事故も相次いでおります。沖縄でも、また佐賀での自衛隊機、あるいは青森三沢でのあの燃料タンクの放棄事件、いずれも深刻な、国民の安全と安心を奪う、そうした、空を見れば、窓枠が落ちてくるあるいは燃料タンクが落ちてくる、そんな中に私たちが暮らしていながら、日米地位協定の改定一つ言い出すことができない弱腰の外交で、果たして日本の主権も、国民の血税も、全てアメリカの言いなりであると言って過言ではないと思います。

 特別会計の三百八十九兆円の審議も全く不足しております。強調しますが、本来解明すべきデータをさっさと厚生労働省の官僚に説明をさせ、過ちを正し、問題となった法案、準備される法案の撤回の上で、再調査をして、再提出に事を運べば、本来は、あの国会での審議がこれほどに押し詰まることもなかったし、また、重々の予算の審議が行われてきた。それこそ立法府としての役割を果たすことであります。

 逆に、行政府のいいかげんなデータが、立法府の予算そのものの審議を食い荒らし、私たちの審議権を奪ったとすら言える事態は、河村委員長の采配の不手際であると思います。

 加えて、質疑に際しての河村委員長の対応は極めて不適切でした。その最たるものは、二月十九日、厚生労働省の極めて不備の多い裁量労働制に関するデータ問題について、野党側が加藤厚生労働大臣の不十分な答弁を指摘し、抗議の意思表明で退席をした際の対応です。

 河村委員長は、この際、事態の打開に動こうともせず、休憩もさせず、無所属の会の黒岩議員、金子議員の質疑時間をいたずらに経過させ、両議員の発言の機会を奪いました。

 私たち国会議員には、国民の代表として質疑をする権利があります。こうした時間の浪費によって奪われた金子議員並びに黒岩議員の質問権は、今や取り戻すことができない。本当にこのような運営がまかり通れば、国会は死に体になると思います。

 そもそも、予算委員長を含め常任委員長は、国会法に定める各議院の役員であり、厳正、中立、公平な立場で委員会運営に当たるべき立場にあります。そのことは、先ほど朗読させていただいた野中広務さんの、与党、野党の役割とお互いを尊重した上の審議ということにもつながってまいります。

 河村予算委員長も、昨年十一月の委員長就任に際しては、議会制民主主義の本旨にのっとり、公正かつ円満な委員会運営に努めてまいる所存と、委員会運営に当たって決意を表明しておられます。

 公正かつ円満だったでしょうか。不公正、恣意的、質問をさせない、これではとても委員長としての運営を是認することができないのです。

 このような予算委員会のありようを国民の期待に応えるものに転換させるために、私どもは、河村建夫予算委員長の解任を提出いたしております。

 以上の理由をもって、重ねて、予算委員会、河村建夫君の解任を強く求め、提案理由の説明を終わりとしたいと思います。

 議員各位の御賛同を心よりお願いして、国会の機能を取り戻すためにともに頑張っていきたいと思います。

 終わりです。ありがとうございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 討論の通告があります。順次これを許します。田中和徳君。

    〔田中和徳君登壇〕

田中和徳君 自由民主党の田中和徳です。

 私は、自由民主党及び公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました予算委員長河村建夫君解任決議案に対しまして、断固反対の立場から討論を行います。(拍手)

 平成二十四年十二月の第二次安倍内閣の発足以来、政府は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略のアベノミクス三本の矢を一体的かつ強力に推進し、さらに、希望を生み出す強い経済、夢を紡ぐ子育て支援、安心につながる社会保障という新三本の矢を打ち出し、アベノミクスは第二ステージに進んでおり、これらの取組によって、史上初めて四十七全ての都道府県において有効求人倍率が一倍を超えるなど、雇用そして所得環境は大幅に改善し、経済の好循環は着実に回り始めています。

 安倍内閣は、このような経済の好循環をより確かなものとして、持続的な経済成長を実現するために、昨年十二月に、新しい経済政策パッケージを取りまとめ、人づくり革命と生産性革命を車の両輪として、少子高齢化という最大の長期的な課題に立ち向かっていく方針を示しました。

 平成三十年度予算は、これまでの歳出改革の取組を強化しつつ、人づくり革命や生産性革命を始めとした現下の重要課題に重点を置いた予算であります。

 特に、人づくり革命については、人生百年時代を見据え、社会保障制度を全世代型社会保障へ転換し、人への投資を拡充することとし、保育の受皿の拡大と保育士の処遇改善、幼児教育の段階的無償化、給付型奨学金の拡充等の措置が盛り込まれております。

 言うまでもなく、国民生活にとって、これらの重要かつ密接に関係する諸政策が一刻も早く実行できるよう、平成三十年度予算を早期に成立させるとともに、必要な立法措置等をできる限り速やかに講じていくことが、国民から負託された重責であることを、我々全ての国会議員は、この際、改めて肝に銘じる必要があるのではないでしょうか。

 それにもかかわらず、維新を除く野党から今回提出された予算委員長の解任決議案は、国民生活の向上にとって極めて重要な平成三十年度予算の審議をあえて政局化させて、その成立をいたずらにおくらせることを目的としたもの以外の何物でもありません。このような国民生活を人質にとるような暴挙は断じて許されないということは、誰の目にも明らかであります。

 我が与党としても、同じ国会議員の立場から、このような事態を国民に対してまことに申しわけなく存じております。

 河村委員長は、昨年十一月の予算委員会における就任挨拶で、議会制民主主義の本旨にのっとり、公正な委員会の運営を図ってまいる所存である旨を述べておられます。

 その重い言葉のとおり、河村委員長は、常に、理事はもとよりオブザーバーにも丁寧に意見を求めるなど、全会派の主張や意見に真摯に耳を傾け、野党もより納得いくような理事会や委員会の運営を行うべく、まことに誠心誠意、一心不乱に努力されてきたところであります。

 さらに、野党が求め続けた集中審議の実現に向け、与党側や政府との調整等にも、我々与党が恐縮してしまうほど、全身全霊で当たられたのでございます。

 河村委員長が各会派の主張に対し誠実に対応されてきたことは、野党の諸君が実は一番よく御承知なのではありませんか。自分自身の胸に手を当てて、いま一度、思い出していただきたいと思います。

 無論、政治の世界ですから、与野党の主張が平行線をたどるときもあります。今回の予算委員会におきましても、そうした状況はありましたが、河村委員長はその都度、与野党双方にさらなる協議を求め、妥協点の模索を促すなど、極めて丁寧な運営に腐心し、円満かつ円滑な委員会運営を実行されてきたのであります。

 また、河村委員長は、委員会の審議中においても、野党の質疑者が政府の答弁が不十分と主張した際には、野党側の意見に真摯に耳を傾け、その上で公正に判断し、必要があれば、再度、政府に答弁を促しておられました。

 このように、河村委員長は、就任挨拶でのお言葉のとおり、公正な委員会運営を実践してこられ、与野党双方の主張を公正中立な立場で聞き、予算委員長としての職責を公正に果たしてこられました。

 このようなすばらしい河村委員長に対し、解任決議案を提出することは、余りにも荒唐無稽な暴挙であり、維新を除く野党の諸君は、みずからの行為を恥じるべきであります。

 温厚篤実にして人情味にもあふれ、幅広い分野に精通して、識見、経験ともに大変豊かな河村委員長に対し、全く理不尽な理由で委員長職の解任を求める諸君の態度はまことに失礼であり、我々与党は、断じてこれを許すことはできません。

 以上、申し上げました理由により、本解任決議案に断固反対を表明するとともに、公平な委員会運営に細心の配慮を続けてこられた河村委員長の御労苦に心より敬意を表し、私の反対討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 青柳陽一郎君。

    〔青柳陽一郎君登壇〕

青柳陽一郎君 立憲民主党の青柳陽一郎でございます。

 私は、ただいま提案されました予算委員長河村建夫君の解任決議案に対して、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 河村委員長、今から三年前の二〇一五年二月十六日、この日を覚えていらっしゃいますでしょうか。河村委員長は、この場所に立ち、本院議員として在職二十五年の永年表彰をお受けになりました。今は亡き町村議長から、常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた、この功績を多として表彰をされたわけであります。

 同時に十二名の議員の皆様が受彰されましたけれども、河村委員長が代表して、この場所で、議場にいる議員に対し、次のように発言されました。

 折に触れて叱咤激励を賜った全国各地の方々に深く感謝する。ひたむきに議員活動に取り組むことは、党派を超えて、皆気持ちは一つ。私の政治信条は、至誠通天であり、何事にも誠を尽くし、誠心誠意事に当たることだ。そして、傍聴席にいらっしゃる御夫人に、深い感謝の誠をささげ、全力で国家国民のために政治活動に邁進する、このことをお誓いになりました。

 私は、三年前、この河村委員長のスピーチにとても胸が熱くなり、感動したあのときのことをこの瞬間も鮮明に覚えています。

 しかし、今、河村委員長の予算委員会における議事運営を間近で見て、あのときの感動は、今や完全に失望に変わってしまいました。

 本日、河村委員長が演説した同じ場所で、河村委員長解任決議案に賛成する討論を行わなければならないこの状況を、私は、非常に悲しく、残念に思っています。

 河村委員長には、こうした思いを持つ野党議員がいることをぜひ自覚していただき、委員会運営を回想し、猛省を促し、みずから辞任することを求めたいと思います。

 河村委員長は、国政上の重要案件を扱う予算委員会の長としての役割を全く果たそうとせず、国民の声を聞く姿勢、委員会で指摘された多くの疑問や懸念、疑惑の解明に全く関心を示すことなく、官邸や政府・与党ばかりをそんたくし、ただただ審議時間をいたずらに経過させようとすることが自身の役割であるかのような委員会運営に徹し、公正かつ円満な委員会を心がけたとは到底言えません。

 委員長自身が誓った国民の声を聞く姿勢、これを少しでも取り戻していただきたいと思いますが、時既に遅く、もはや河村委員長のもとで適正な委員会運営を期待することはできません。

 特に本日の委員会は、これまで各委員が質疑で求めてきた資料や政府見解が提出されていない、このことだけでなく、証人喚問や参考人招致が全く実現していない中での委員長職権による委員会開会、委員長職権による予算案の強行採決は、言語道断、断固として抗議いたします。これこそ、与党による数のおごりそのものであり、強行採決を実行した委員長の解任を強く求めます。

 実際の予算審議は、議論が尽くされないまま、骨抜きになりました。

 今国会は、安倍総理みずから、働き方改革国会と銘打って改革したものです。その目玉法案として位置づけている働き方改革関連法のもとになるデータが全くのでたらめ、間違ったデータを用いて、総理も厚労大臣も、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもあると答弁いたしました。

 データが明らかに間違っていると判明した後も、答弁は撤回してもデータは撤回しないという全く意味不明な答弁と対応に終始し、さらに、官房長官に至っては、データの間違い発覚後も、法案の今国会提出を予定どおり行うと述べるなど、政府・与党の国民無視の姿勢はとどまるところを知りません。

 本日の予算委員会において、我が党の逢坂議員の質問に対し、安倍総理は、きっちり実態把握をしない限り、政府全体として前に進めないと答弁しました。これは、我々野党が要求していた再調査に事実上応じるに等しいことであり、そうであれば、現在準備している法案は撤回すべきだと思います。

 また、政府は、データを精査すると言いながら、実態は、我々野党がデータの間違いを指摘して、政府がそれを追認する、こういうありさまです。本日までに四百件以上ものデータ間違いが発覚し、我々野党が精査すればするほど、間違いだらけ、間違いがふえ続けているのであります。

 この予算委員会の答弁で、安倍総理や加藤厚労大臣はたびたび、精査する、精査中、精査している、こういう答弁を繰り返してきました。しかし、今精査すべきは、安倍政権そのものであり、河村委員長の委員会運営そのものではないでしょうか。

 また、予算編成や政策立案の基本方針であるEBPM、エビデンス・ベースド・ポリシー・メーキングをみずから否定する安倍政権の対応や、政府答弁が答弁の体をなしていない場面がたびたびあったにもかかわらず、河村委員長は適切に答弁するよう促すことはほとんどなく、早く審議を進めることのみに尽力している姿勢は、断じて容認できません。

 裁量労働制のもと、何人もの方が過労死で命を絶たれました。いつになれば、過労死という言葉がなくなるのでしょうか。

 この法案は、人の命がかかっているのです。それにもかかわらず、政府・与党、予算委員長のこのとても残念な対応は、立法府としても、国会議員としても問われる事態ではないでしょうか。

 その証拠に、与党からも多くの疑問や懸念の声が上がっているではないですか。これは当然のことだと思います。この当然の疑問や懸念に河村委員長は全く応えることなく、職権で委員会を立て、職権による強行採決を行ったことは、本当に許せない行為で、これは解任に値します。

 そして次に、森友学園の問題です。

 どうしてこのような事態になったのか、事実はいまだ明らかになっていません。真相解明には、これまで虚偽答弁を続けてきた佐川長官や、当事者である安倍昭恵夫人の証人喚問は必要不可欠です。

 予算委員会の審議で、多くの委員からたびたび証人喚問要求や参考人での招致要求がありましたが、委員長は、こうした要求に一切応じることなく、事実を隠蔽する政権に加担してしまっています。一方だけを喚問し、真相解明を避けて、真実を国民の前に明らかにしようとしない政府・与党、河村委員長の委員会運営には、疑問符をつけざるを得ません。

 確定申告が始まって以降、多くの国民が全国で国税庁に押しかけました。いつまで、佐川長官隠し、安倍昭恵夫人隠しを続けるのでしょうか。これが本当に適材適所の人事なんでしょうか。

 国民は怒っています。重ねて、委員長の解任を求めます。

 こうした問題以外にも、河村委員長の職責が問われる事案は数多くあります。一つ一つ挙げれば、枚挙にいとまがありません。これらの責任は大変重大であり、河村委員長がその職責を果たしているとは到底言えません。

 以上の理由から、河村委員長解任決議に賛成し、国民の声を真摯に聞き、公正かつ円満な委員会運営を行う委員長を新たに選任することを求めて、私の討論を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 後藤祐一君。

    〔後藤祐一君登壇〕

後藤祐一君 希望の党の後藤祐一でございます。

 私は、希望の党・無所属クラブを代表して、河村建夫予算委員長に対する解任決議案に賛成の立場から討論をいたします。(拍手)

 河村予算委員長は、この予算案審議の最大の争点である裁量労働制のデータに関し、野党から求められた資料がまだ提出されていないにもかかわらず、また、当然必要な再調査を決めることもなく、本日の予算委員会の開催と予算案の採決を職権で決定いたしました。言語道断であります。予算委員長として河村委員長は不適格であると言わざるを得ません。

 以下、その理由を申し上げます。

 世論調査によれば、国民の約六割が裁量労働制の拡大に反対しております。裁量労働制の適用拡大を法案として提出するのであれば、説得力のあるデータを示す説明責任が政府にはあるのではないでしょうか。そして、委員長には、政府に説明責任を果たさせる責任があるのではないでしょうか。

 しかしながら、委員会の質疑においては、裁量労働制に関し、少なくとも延べ九人の委員から十四の資料提出要求を理事会で協議しますと引き取ったにもかかわらず、河村委員長が政府側から提出させたのはわずか二つだけであります。

 本日の予算委員会でも、安倍総理は、実態把握をしない限り政府全体として前に進めないと答弁されました。精査、自主点検、実態把握、取り繕う言葉が乱発され、混乱のきわみではないでしょうか。

 本日午後の野党合同ヒアリングの場においても、厚生労働省の現場の責任者に、きょう総理が答弁で言った実態把握とは一体何をすることですか、自主点検との関係はどうなっているんですかと我々が伺っても、何ともお答えできないという状態であります。

 きょうは予算案の採決を強行した日ですよ。そんな日に、現場の厚労省の課長が答えられない。こんな大混乱の状況で、人の命にかかわる制度改正を強引に進めていくのが厚生労働省なんでしょうか。そして、それをやすやすと容認するのが国会なんでしょうか。

 少なくとも、裁量労働制で働く方々に直接聞く形での徹底した再調査を行うことでしか、国民は納得しないのではないでしょうか。にもかかわらず、河村委員長におかれては、この再調査を求めることなく、採決を強行したわけであります。国民の命を守る政治としての責任放棄ではないでしょうか。

 政府・与党と野党が裁量労働制に関し立場が異なるのは当然でありますが、委員長は、中立の立場に立ち、必要な資料を委員会に提出させ、議論を深めていく、すなわち熟議の場とすることが最大の責任であります。しかしながら、河村委員長には、そのような積極的な姿勢はついぞ本日まで見られませんでした。

 過去の名委員長と言われるような委員長は、政府側に厳しい対応を迫り、結果として与党の懐の広さを見せることで、国会の権威と与党としての責務を両立させてきたのではないでしょうか。河村委員長は、長い政治経験がおありで、良識ある政治家だと思っていますが、今回の予算委員長としての仕事ぶりは、残念ながら、そのような懐の広さが全く見られませんでした。至極残念であります。

 また、森友問題についても、佐川国税庁長官、安倍昭恵夫人らに対するたび重なる証人喚問や参考人としての招致要求に応じなかった委員長の責任も重大であります。

 中でも、佐川国税庁長官は、今も行われている確定申告の現場に現に混乱をもたらしており、世論調査においても、佐川氏を証人喚問する必要があると八割近くの国民が回答しております。その国民の思いを代表し、今国会だけで少なくとも延べ十四回の招致要求がなされたにもかかわらず、河村委員長は真剣に取り合うことはありませんでした。結果として、安倍総理に忠誠を誓い、そんたくする官僚は昇進するというあしき人事慣例が昨年できてしまいました。

 これに対し、国会は本来、佐川長官を証人喚問することでこういった慣例に厳しく監視すべきところを、逆に、総理にそんたくする官僚は国会すらも守ってくれるんだ、こういうあしき慣例をまさに今回つくってしまったのではないでしょうか、皆さん。

 河村委員長の責任は極めて重く、政府を監視する国会の責任を放棄するものであります。

 予算委員会質疑中の現場における河村委員長の議事運営のあり方にも、不公平さが目に余ります。

 まず、安倍総理や加藤大臣らが質問に対して答えていないと思われるような場面で、野党の理事が委員長席に歩み寄って抗議しているにもかかわらず、なかなか速記をとめない。結果的に質疑時間の浪費につながるということが、例年に比べても、ひどいものがありました。答弁が難しい質問こそ、核心をついた質問であり、その後ろには国民がいるのであります。

 さらに、不規則発言に対する注意についても気になります。

 議場が騒然となったときはともかく、安倍総理からやじを注意するよう促されて、その都度委員長が注意するのは、安倍総理に委員長が味方しているように感じられてしまいます。委員長は、総理のすれ違いの長答弁に対し簡潔な答弁を求めるべきなのに、河村委員長からそのような緊張感を求める裁きは全くと言っていいほど見られませんでした。予算委員長が総理の不誠実な答弁を容認するような、そんな不公平な運営のもとで、国会はどうやって政府を監視するんでしょうか。

 また、先ほど阿部さんからもありましたけれども、二月十九日月曜の高井崇志委員の質疑の際、菅原与党筆頭理事が自席に座ったまま大声で実質的な与野党協議を長々と行っていたにもかかわらず、与党理事を委員長席に呼び寄せることをせず、つまり、時計がとまらない状態で約十五分過ぎたところで速記をとめたということがありました。前代未聞の失態であります。結果として休憩になったのですから、早い段階で河村委員長は休憩を宣言すべきだったのではないでしょうか。

 今回の予算委員会では与党側の質問時間配分がふえましたが、総理へのよいしょ質問や時間を余らせる自民党議員までおり、それなら野党に時間を返すべきではないでしょうか。また、裁量労働制のデータをめぐる答弁を撤回した以上、撤回前の答弁を前提に行っていた質疑時間は野党側に返すべきではないでしょうか。

 ようやく与党でも、きのうになってから、裁量労働制のデータの問題点が議論になってきていると聞きます。今回、この部分は法案から切り離すべきではないか、そんな御意見を述べられた方もいらっしゃると報道では聞いておりますが、遅きに失した感があります。

 この際、与党の皆さんも徹底的にこの問題、御議論いただきまして、裁量労働制の再調査、これを行う間、予算委員会は採決を待たせていただいて、失った野党の質問時間を取り戻して、審議を続けるべきだったのではないでしょうか。

 最後に、委員長による委員会運営について、三つ、建設的な提案をしたいと思います。

 第一に、政府に対する調査の要求、資料提出要求は毅然として行うこと。

 第二に、答弁に疑義がある場合は、時計をちゃんととめて、質問に答えるよう求めること。

 第三に、長過ぎる答弁に対しては、簡潔な答弁を求めること。

 いずれも、熟議の国会として必要最小限のルールではないでしょうか。

 国会の監視機能を果たしていない河村委員長は、その議事運営の不公平さもあわせ、解任に相当することを改めて申し上げるとともに、裁量労働制に関する再調査を早急に行うこと、裁量労働制の適用拡大と高度プロフェッショナル制度は法案から除外すること、佐川長官を証人喚問することを強く求め、私の賛成討論とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 菊田真紀子君。

    〔菊田真紀子君登壇〕

菊田真紀子君 無所属の会の菊田真紀子です。

 私は、無所属の会を代表いたしまして、ただいま議題となりました予算委員長河村建夫君解任決議案に対して、賛成の立場で討論を行います。(拍手)

 予算委員会において、さまざまな論点で議論が行われてきましたが、特に大きな争点となった問題が二つあります。森友学園への国有地売却問題に関する佐川国税庁長官の情報隠蔽、虚偽答弁及び安倍昭恵総理夫人の関与と、裁量労働制をめぐる重大なデータの誤りの問題であります。

 まず、国民の貴重な財産が極めて不透明、不適切な形で処理されたのではないかと疑われる森友学園との交渉記録を廃棄したと、佐川国税庁長官が国会で繰り返し答弁したことは虚偽であったと明白になりました。

 佐川国税庁長官が、この虚偽答弁、資料の隠蔽について、国会においてみずからの言葉で説明しないことは、納税者の怒りを買い、確定申告の現場にも悪影響を与えてしまいました。その罪は非常に重いと言わざるを得ません。

 安倍昭恵夫人の関与についても、新しい資料によって、政府側がそんたくした結果、学園側に便宜供与が行われた疑いがますます濃厚になっています。総理は否定していますが、少なくとも、安倍昭恵夫人がみずから国会の場で発言しなくては、国民の理解と信頼は決して得られません。

 佐川長官及び安倍昭恵夫人に対する国民の疑念はますます強まり、国会招致を求める声が高まっています。こうした国民の声に応えて、我々は、二人に対する証人喚問を強く求めてまいりましたが、河村建夫君は、官邸の指示を受けたのか、ひたすらそんたくしているのか、断固として国会招致に応じることはありませんでした。

 次に、総理が施政方針演説で最大のチャレンジと高らかにうたった働き方改革について、法案や答弁の基礎となったデータに重大な誤りがあり、総理自身が委員会における発言を撤回、謝罪するという異例の事態が生じました。過労死という人の命にかかわる重大な問題であり、決して許されない誤りであります。

 総理は、施政方針演説の中で、抽象的なスローガンを叫ぶだけでは世の中は変わりませんとおっしゃいましたが、抽象的でなく具体的なデータにはっきりと明白な誤りがあったのです。データを再調査すること及び関連法案の提出を見送ることは当然です。

 また、貴重な予算委員会の質疑時間が、誤りがあったデータに基づくやりとりで費やされてしまいました。加藤勝信厚生労働大臣に至っては、データに誤りがあったことを把握しておきながら、従来どおりの答弁を平然と続けていたことまでありました。不誠実きわまりない態度であり、国会審議の冒涜と言えます。

 こうして、いわば無駄になってしまったとも言える質疑時間は、政府によるデータの精査が終わった後で、改めて、実際に質問を行った議員に当然確保されるべきです。

 少なくとも精査が終わるまで予算委員会の審議を続けることは予算委員長として当然の責務にもかかわらず、河村建夫君は、その責務を果たしてはおりません。

 このような状況にもかかわらず、数の力に物を言わせて平成三十年度予算案の強行採決を行ったことは、中立公平であるべき委員長の職責に反し、国権の最高機関である国会の権威を失墜せしめる行為であり、断じて許すことはできません。

 河村建夫君の責任は極めて重大であり、予算委員長の任に値しないことを強く申し述べまして、私の予算委員長解任決議案に対する賛成討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 この採決は記名投票をもって行います。

 本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参されることを望みます。――議場閉鎖。

 氏名点呼を命じます。

    〔参事氏名を点呼〕

    〔各員投票〕

議長(大島理森君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開票。――議場開鎖。

 投票を計算させます。

    〔参事投票を計算〕

議長(大島理森君) 投票の結果を事務総長から報告させます。

    〔事務総長報告〕

 投票総数 四百五十五

  可とする者(白票)       百三十七

  否とする者(青票)       三百十八

議長(大島理森君) 右の結果、予算委員長河村建夫君解任決議案は否決されました。(拍手)

    ―――――――――――――

辻元清美君外五名提出予算委員長河村建夫君解任決議案を可とする議員の氏名

阿久津 幸彦君   阿部  知子君   青柳 陽一郎君   荒井   聰君

池田  真紀君   石川  香織君   生方  幸夫君   枝野  幸男君

尾辻 かな子君   大河原 雅子君   逢坂  誠二君   岡島  一正君

岡本 あき子君   落合  貴之君   海江田 万里君   神谷   裕君

亀井 亜紀子君   川内  博史君   菅   直人君   近藤  昭一君

佐々木 隆博君   櫻井   周君   篠原   豪君   末松  義規君

高井  崇志君   高木 錬太郎君   武内  則男君   辻元  清美君

手塚  仁雄君   中谷  一馬君   長尾  秀樹君   長妻   昭君

西村 智奈美君   長谷川 嘉一君   初鹿  明博君   日吉  雄太君

堀越  啓仁君   本多  平直君   松田   功君   松平  浩一君

道下  大樹君   宮川   伸君   村上  史好君   矢上  雅義君

山内  康一君   山尾 志桜里君   山川 百合子君   山崎   誠君

山花  郁夫君   山本 和嘉子君   横光  克彦君   吉田  統彦君

早稲田 夕季君   青山  大人君   浅野   哲君   井出  庸生君

井上  一徳君   伊藤  俊輔君   泉   健太君   稲富  修二君

今井  雅人君   小川  淳也君   小熊  慎司君   大串  博志君

大島   敦君   大西  健介君   岡本  充功君   奥野 総一郎君

柿沢  未途君   吉良  州司君   城井   崇君   岸本  周平君

源馬 謙太郎君   小宮山 泰子君   後藤  祐一君   近藤  和也君

佐藤  公治君   斉木  武志君   階    猛君   下条  みつ君

白石  洋一君   関  健一郎君   田嶋   要君   玉木 雄一郎君

樽床  伸二君   津村  啓介君   寺田   学君   中山  成彬君

長島  昭久君   西岡  秀子君   古川  元久君   古本 伸一郎君

細野  豪志君   前原  誠司君   牧   義夫君   松原   仁君

緑川  貴士君  もとむら賢太郎君   森田  俊和君   山岡  達丸君

山井  和則君   柚木  道義君   笠   浩史君   渡辺   周君

安住   淳君   江田  憲司君   岡田  克也君   金子  恵美君

菊田 真紀子君   黒岩  宇洋君   中川  正春君   中村 喜四郎君

野田  佳彦君   原口  一博君   平野  博文君   広田   一君

福田  昭夫君   赤嶺  政賢君   笠井   亮君   穀田  恵二君

志位  和夫君   塩川  鉄也君   田村  貴昭君   高橋 千鶴子君

畑野  君枝君   藤野  保史君   宮本  岳志君   宮本   徹君

本村  伸子君   玉城 デニー君   照屋  寛徳君   吉川   元君

青山  雅幸君   赤松  広隆君   重徳  和彦君   中島  克仁君

鷲尾 英一郎君

否とする議員の氏名

あかま 二郎君   あきもと 司君   あべ  俊子君   安倍  晋三君

逢沢  一郎君   赤澤  亮正君   秋葉  賢也君   秋本  真利君

麻生  太郎君   穴見  陽一君   甘利   明君   安藤  高夫君

安藤   裕君   井野  俊郎君   井上  信治君   井上  貴博君

井林  辰憲君   伊東  良孝君   伊藤 信太郎君   伊藤  忠彦君

伊藤  達也君   伊吹  文明君   池田  道孝君   池田  佳隆君

石川  昭政君   石崎   徹君   石田  真敏君   石破   茂君

石原  伸晃君   石原  宏高君   泉田  裕彦君   稲田  朋美君

今枝 宗一郎君   今村  雅弘君   岩田  和親君   岩屋   毅君

うえの賢一郎君   上杉 謙太郎君   上野  宏史君   江渡  聡徳君

江藤   拓君   衛藤 征士郎君   遠藤  利明君   小倉  將信君

小此木 八郎君   小里  泰弘君   小田原  潔君   小野寺 五典君

小渕  優子君   尾身  朝子君   越智  隆雄君   大岡  敏孝君

大串  正樹君   大隈  和英君   大塚  高司君   大塚   拓君

大西  英男君   大西  宏幸君   大野 敬太郎君   大見   正君

岡下  昌平君   奥野  信亮君   鬼木   誠君   加藤  鮎子君

加藤  勝信君   加藤  寛治君   梶山  弘志君   勝俣  孝明君

門   博文君   門山  宏哲君   金子  俊平君   金子 万寿夫君

金子  恭之君   金田  勝年君   上川  陽子君   神谷   昇君

神山  佐市君   亀岡  偉民君   鴨下  一郎君   川崎  二郎君

河井  克行君   河村  建夫君   神田  憲次君   神田   裕君

菅家  一郎君   木原  誠二君   木原   稔君   木村  次郎君

木村  哲也君   木村  弥生君   城内   実君   黄川田 仁志君

岸   信夫君   岸田  文雄君   北川  知克君   北村  誠吾君

工藤  彰三君   国光 あやの君   熊田  裕通君   小泉 進次郎君

小泉  龍司君   小島  敏文君   小寺  裕雄君   小林  茂樹君

小林  鷹之君   小林  史明君   古賀   篤君   後藤  茂之君

後藤田 正純君   河野  太郎君   高村  正大君   國場 幸之助君

左藤   章君   佐々木  紀君   佐藤  明男君   佐藤   勉君

佐藤 ゆかり君   齋藤   健君   斎藤  洋明君   坂井   学君

坂本  哲志君   櫻田  義孝君   笹川  博義君   塩谷   立君

繁本   護君   柴山  昌彦君   下村  博文君   白須賀 貴樹君

新谷  正義君   新藤  義孝君   菅   義偉君   菅原  一秀君

杉田  水脈君   鈴木  馨祐君   鈴木  俊一君   鈴木  淳司君

鈴木  貴子君   鈴木  憲和君   鈴木  隼人君   関   芳弘君

薗浦 健太郎君   田所  嘉徳君   田中  和徳君   田中  英之君

田中  良生君   田野瀬 太道君   田畑   毅君   田畑  裕明君

田村  憲久君   平   将明君   高市  早苗君   高木   啓君

高木   毅君   高鳥  修一君   高橋 ひなこ君   竹下   亘君

竹本  直一君   武井  俊輔君   武田  良太君   武部   新君

武村  展英君   橘  慶一郎君   棚橋  泰文君   谷   公一君

谷川  とむ君   谷川  弥一君   津島   淳君   辻   清人君

土屋  品子君   寺田   稔君  とかしきなおみ君   冨樫  博之君

渡海 紀三朗君   土井   亨君   冨岡   勉君   中曽根 康隆君

中谷   元君   中谷  真一君   中根  一幸君   中村  裕之君

中山  展宏君   中山  泰秀君   永岡  桂子君   長尾   敬君

長坂  康正君   二階  俊博君   丹羽  秀樹君   西田  昭二君

西村  明宏君   西村  康稔君   西銘 恒三郎君   額賀 福志郎君

根本   匠君   根本  幸典君   野田  聖子君   野田   毅君

野中   厚君   葉梨  康弘君   萩生田 光一君   橋本   岳君

馳    浩君   鳩山  二郎君   浜田  靖一君   林   幹雄君

原田  憲治君   原田  義昭君   百武  公親君   平井  卓也君

平口   洋君   平沢  勝栄君   福井   照君   福田  達夫君

福山   守君   藤井 比早之君   藤丸   敏君   藤原   崇君

船田   元君   船橋  利実君   古川   康君   古川  禎久君

古田  圭一君   古屋  圭司君   穂坂   泰君   星野  剛士君

細田  健一君   細田  博之君   堀内  詔子君   本田  太郎君

牧島 かれん君   牧原  秀樹君   松島 みどり君   松野  博一君

松本   純君   松本  剛明君   松本  文明君   松本  洋平君

三浦   靖君   三谷  英弘君   三ッ林 裕巳君   三ッ矢 憲生君

三原  朝彦君   御法川 信英君   宮内  秀樹君   宮川  典子君

宮腰  光寛君   宮澤  博行君   宮路  拓馬君   宮下  一郎君

武藤  容治君   務台  俊介君   宗清  皇一君   村井  英樹君

村上 誠一郎君   望月  義夫君   茂木  敏充君   盛山  正仁君

森   英介君   森山   裕君   八木  哲也君   簗   和生君

山際 大志郎君   山口  俊一君   山口  泰明君   山口   壯君

山下  貴司君   山田  賢司君   山田  美樹君   山本  公一君

山本  幸三君   山本   拓君   山本  有二君   吉川  貴盛君

吉野  正芳君   義家  弘介君   和田  義明君   若宮  健嗣君

渡辺  孝一君   渡辺  博道君   赤羽  一嘉君   井上  義久君

伊佐  進一君   伊藤   渉君   石井  啓一君   石田  祝稔君

稲津   久君   浮島  智子君   江田  康幸君   大口  善徳君

太田  昭宏君   太田  昌孝君   岡本  三成君   北側  一雄君

國重   徹君   佐藤  茂樹君   佐藤  英道君   斉藤  鉄夫君

高木 美智代君   高木  陽介君   竹内   譲君   遠山  清彦君

富田  茂之君   中野  洋昌君   浜地  雅一君   濱村   進君

古屋  範子君   桝屋  敬悟君   鰐淵  洋子君   足立  康史君

井上  英孝君   浦野  靖人君   遠藤   敬君   串田  誠一君

下地  幹郎君   杉本  和巳君   谷畑   孝君   馬場  伸幸君

丸山  穂高君   森   夏枝君

     ――――◇―――――

田野瀬太道君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 平成三十年度一般会計予算、平成三十年度特別会計予算、平成三十年度政府関係機関予算、右三案を一括議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(大島理森君) 田野瀬太道君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 平成三十年度一般会計予算

 平成三十年度特別会計予算

 平成三十年度政府関係機関予算

議長(大島理森君) 平成三十年度一般会計予算、平成三十年度特別会計予算、平成三十年度政府関係機関予算、右三案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。予算委員長河村建夫君。

    ―――――――――――――

 平成三十年度一般会計予算及び同報告書

 平成三十年度特別会計予算及び同報告書

 平成三十年度政府関係機関予算及び同報告書

    〔本号(二)に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔河村建夫君登壇〕

河村建夫君 ただいま議題となりました平成三十年度一般会計予算外二案につきまして、予算委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、予算三案の概要について申し上げます。

 平成三十年度一般会計予算の規模は九十七兆七千百二十八億円であり、前年度当初予算に対して〇・三%の増加となっております。

 歳出のうち、国債費を除いた基礎的財政収支対象経費の規模は七十四兆四千百八億円であり、前年度当初予算に対して〇・七%の増加となっております。

 歳入のうち、公債金は三十三兆六千九百二十二億円で、公債依存度は三四・五%となっております。

 特別会計予算については、十三の特別会計があり、会計間の取引額などの重複額等を控除した歳出純計額は百九十五兆七千四百七十六億円となっております。

 政府関係機関予算については、沖縄振興開発金融公庫など四機関の予算を計上しております。

 なお、財政投融資計画でありますが、その規模は十四兆四千六百三十一億円で、前年度当初計画に対して四・四%の減少となっております。

 この予算三案は、去る一月二十二日本委員会に付託され、同月二十六日麻生財務大臣から提案理由の説明を聴取し、二月二日から質疑に入り、基本的質疑、一般的質疑、集中審議、岡山県と静岡県における現地視察及び地方公聴会、中央公聴会、分科会を行うなど、慎重に審査を重ね、本日締めくくり質疑を行いました。

 審査においては、経済・財政・金融政策、憲法改正問題、外交・安全保障政策、教育の無償化及び質の向上、北陸地方を中心とした豪雪被害への対策、国有財産の売却問題、働き方改革、裁量労働制労働及び一般労働者の労働時間に関する厚生労働省のデータ問題など、国政の各般にわたって熱心に質疑が行われました。その詳細は会議録により御承知願いたいと存じます。

 本日、質疑を終局し、討論、採決を行いました結果、平成三十年度予算三案は賛成多数をもっていずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 平成三十年度一般会計予算外二案に対しては、原口一博君外六名から、三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出されております。

 この際、その趣旨弁明を許します。黒岩宇洋君。

    ―――――――――――――

 平成三十年度一般会計予算、平成三十年度特別会計予算及び平成三十年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議

    〔本号(二)に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔黒岩宇洋君登壇〕

黒岩宇洋君 無所属の会の黒岩宇洋です。

 私は、無所属の会、立憲民主党・市民クラブ、希望の党・無所属クラブ、日本共産党、自由党、社会民主党・市民連合六会派を代表し、ただいま議題となりました政府提案の平成三十年度予算三案を撤回のうえ編成替えを求めるの動議に関して、その趣旨を弁明いたします。(拍手)

 冒頭、本日の予算委員会での強行採決に対し、断固抗議をさせていただきます。

 予算という国民生活に直結する重要な議題を十分に審議せず、途上で打ち切るという手法は、国民に対する不誠実さのきわみであり、予算委員会における説明責任を放棄したも同然です。これこそ、安倍一強支配の弊害の産物であり、国民の声が届かない立法府の現状を象徴する対応であったと憤りを禁じ得ません。

 このような手段、プロセスで予算の衆院通過を図ることは、到底国民が納得しないということを強く指摘させていただきます。

 また、この強行採決という暴挙を是認した予算委員長の議事整理は、許されるものではありません。にもかかわらず、予算委員長解任決議案が否決されてしまったことも、甚だ遺憾であります。

 予算委員長は当然、与野党の別なく、公平な立場で委員会を運営することが責務であり、その責任を全うされなかったことにも改めて抗議し、今後このような委員会運営を厳に慎んでいただきますことを、この本会議場で訴えさせていただきます。

 次に、安倍総理みずから、今国会を働き方改革国会と銘打ったわけですが、その働き方改革の最大の柱であり、与野党間、労使間で最も課題が山積する裁量労働制に関する平成二十五年度労働時間等総合実態調査の不適切データ問題に関し、予算委員会での審議が余りにも不十分だったことについても、断固抗議をいたします。

 この問題は、予算委員会質疑初日の一月二十九日、安倍総理の答弁が改めて口火を切りました。

 厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもあるということは御紹介させていただきたいと思います、この答弁です。この日から本日まで丸一カ月、すなわち予算委員会質疑の冒頭から審議打切りまで、終始議論し続けられ、予算委員会の多くの時間を割くこととなりました。

 しかし、審議すれば審議するほど、議論が深まるどころか疑問は広がり続け、厚労省は、私ども野党が求める不適切データの実態、検証などの要請には全く応えず、今日を迎えております。

 そこで、この労働時間等総合実態調査をめぐる主な二つの問題点を指摘させていただきます。

 一番目の問題は、何といっても、比べてはいけないデータを比較してしまったことであります。さらに、その比較を、三年前、平成二十七年三月二十六日、当時の民主党厚労部会で公表したことです。ここから、一般労働者の一日の労働時間九時間三十七分、裁量労働企画業務型が九時間十六分で、裁量労働制の方が短いという結果と、そして数字がひとり歩きを始めました。

 本予算委員会を通じて判明いたしましたが、一般労働者については最長の者を選び、また労働時間の算出方法は、法定外労働時間に単純に法定労働時間八時間を足すというものでした。片や、裁量労働制については平均的な者の労働時間ということで、全く違う条件で得られたデータを比較したわけであります。

 この比較を民主党部門会議に提示した経緯と理由を予算委員会で厚労大臣に問うても、大臣は曖昧な答弁に終始してまいりました。しかし、予算委員会で、この実態調査の調査、集計、分析のどの作業においても、厚労省担当課の管理下で行われ、担当課が誰よりもこのデータの意味合いを理解していたことが明らかになりました。

 捏造とは、辞書によれば、実際になかったことを故意に事実のように仕立て上げることとあります。自民党幹部いわく、高校生でもわかる、やってはいけない比較を、その内容を最も熟知した厚労省が行ったことは、過失ではなく、明白に故意であります。これを捏造と言わずして、何を捏造と言うのでしょうか。

 二番目は、データの信頼性です。

 予算委員会当初は、一般労働者の法定時間外労働十五時間超、すなわち、一日の労働時間が二十四時間を超えるものが九件あること、一日の法定外時間と週と月の法定外労働時間の整合性がとれないという不適切事例が指摘されました。

 その後も、野党側のデータ精査によって次々と問題点が見つかり、厚労省も後手後手に回りながら、一般労働者の労働時間一日二十四時間超の件数が十五件、日と週と月の労働時間数でつじつまの合わない事例が百十七件、週と月の法定外労働時間が記入されているのに一日の最長の法定外労働時間がゼロの件数が二百三十三件と、不適切データを認めました。

 このほか、裁量労働制で平均な者と最長の者のうち、一日の労働時間が一時間以下のものが二十七件、一般労働者の日と週と月のいずれかに時間が記入されているのにもかかわらず、またいずれかがゼロとなっているという不自然なデータも五十件以上、野党から指摘されています。

 既にデータとしての信頼性は損なわれていますし、今後さらに荷崩れを起こす可能性が高いことは明らかでしょう。我々は、総理の答弁のみの撤回ではなく、データの撤回、ひいては実態調査そのものの撤回を求める次第であります。

 そこで、今動議においては、平成二十五年度労働時間等総合実態調査の再実施を含む裁量労働制についての全般的な再調査を行う歳出も計上いたしております。再調査を強く求め、裁量労働制については労政審での審議のやり直し、働き方改革法案からの切離し、出し直しを重ねて強く求めます。そのためには、安倍総理、総理の、立ちどまり、一歩後ろに戻る決断が必要なんです。これが働く現場からの声です。そして、多くの国民の願いなんです。

 それでは、ここから編成替えを求める理由を申し述べます。

 安倍総理はアベノミクスについて過去どう説明していたのでしょうか。五年前の予算委員会では、こう得意げにおっしゃっていらっしゃいました。「インフレ期待に変わっていくことによって、言わばお金を持っているよりも投資をしなければいけない、物の値段も上がっていきますから来年買うよりも今日買ってしまおうかと、こうやって消費もだんだん活発になっていくわけであります。デフレマインドをインフレマインドに変えるためには、これは絶対的に大胆な金融緩和が必要であると、こう考えたわけであります。」こうおっしゃっておられました。

 さて、結果はどうでしょう。

 毎月勤労統計調査によると、二〇一二年に一〇四・八であった実質賃金指数は、二〇一七年の速報値で一〇〇・五まで低下をしております。

 家計調査によると、世帯で見た収入、支出の実質指数も低迷しています。二〇一二年一―三月期から十―十二月期まで一〇三から一〇四の間で推移していた収入の実質指数は、二〇一六年十―十二月期から二〇一七年四―六月期まで一〇〇を割る水準を記録しました。二〇一二年一―三月期から十―十二月期まで一〇三から一〇六の間で推移していた支出の実質指数は、二〇一五年七―九月期から一〇〇を割り続け、それ以降、一〇〇を超えたのは二〇一七年四―六月期一回のみです。

 そのような中、消費は振るわず、特に個人消費は五年間横ばい、二〇一七年の名目経済成長率は一・四%、実質経済成長率は一・六%、直近の二〇一七年十―十二月期の経済成長率は、年率換算で、名目マイナス〇・一%、実質〇・五%にすぎません。これまで名目を強調してきた安倍総理も、最近は余り触れなくなっています。しかも、これは、GDPの基準改定により上げ底された数字です。

 誰も、物の値段が上がるから、来年買うよりもきょう買ってしまおうかとはならず、物の値段が上がるなら何とか節約しようとなり、物は売れず、消費は伸びず、物価も上がらないという結果になったわけです。五年もたってこのような状況なわけですから、総理の考えが物の見事に外れたことは明々白々であります。

 今こそ、アベノミクスからの経済政策の転換が必須です。人への投資と地域活性化を経済政策の柱に置き、国民一人一人の能力を最大限伸ばし、それを発揮できる環境を整えること、それぞれの地域の知恵を最大限発揮できるようにする仕組みづくりをしていくことが、今求められております。

 安倍政権は、人への投資を重視するかのようなことは言いますが、口先だけであり、箱物偏重の予算構造を変えようとはしません。また、政府提出予算案には、不要不急の事業や必要性の疑われる事業が多数見られます。代表的なものとしては、補正予算と当初予算を合計すると概算要求額すら上回る予算などが挙げられます。こうした予算を適正化し、人への投資に最大限、重点配分を行うべきです。

 次に、編成替えの概要を御説明いたします。

 第一に、人への投資に〇・四兆円程度の予算を振り向けます。

 具体的には、小中学校の給食費無償化に向けた負担軽減に〇・二兆円程度を計上いたします。

 昨今は、経済的な格差が教育の格差を生み、更に経済的格差を助長するという負の連鎖が問題視されております。小中学校という義務教育時においては、学校教育に不可欠な給食費を無償化することにより、家庭の教育費負担を軽減いたします。経済的格差を縮めることこそ教育格差を是正し、誰しもに安心して教育を受けられる環境を整備いたします。

 また、所得制限なしの高校無償化を推し進めてまいります。

 民主党政権時導入された高校無償化を、自民党はばらまきと強く批判をしておりました。しかし、政権がかわっても、所得制限つきながら高校無償化が存続しているのは、その有用性を現政権も認めざるを得なかったからでしょう。高校進学率が九九%にも上る現在、どの家庭にとっても高校の無償化は喜ばれ、そして既に定着しております。

 ただ、所得制限がかけられているというのは財政上の理由でしょうが、高校の現場にはゆがみをもたらしているのです。授業料を納付するかしないかで、家庭の所得の違いが明らかになります。この状況は、多感な高校生にとって、よりよき環境とは言えないでしょう。私どもは、このゆがみを是正するべく費用を計上いたしました。

 そして、保育士等の給与引上げの拡充を実施するために〇・二兆円程度の費用を計上いたします。

 政府も保育士等の処遇改善に努めていることは承知しております。ただ、問題は二つあります。

 その一つは、政府が示す月額給与の処遇改善額ほど実際の給与が上がっておりません。

 政府は、平成二十五年度から二十八年度にかけて月額約二万六千円の処遇改善策を講じていますが、厚生労働省の賃金構造基本統計調査によりますと、平成二十四年の保育士の月給、給与は、平成二十八年までの四年間で約九千円しか上がっておりません。年収に換算しても、年額十一万七千円のアップにとどまります。すなわち、処遇改善策の月額二万六千円と大きな乖離が生じているのです。

 二点目は、処遇改善されても、全産業の平均給与との差は依然として大きいということです。

 平成二十八年で見ても、全産業に比べ、保育士の給与は月額十一万円も下回っています。これでは保育士等の確保がままならないのは当然です。結果、保育所はあっても、保育士が不足して子供を預けることができない。待機児童解消の大きな妨げになっています。

 これは、単に待機児童問題にとどまらず、多くの子供を抱える女性、そして男性の就労の妨げになっているのです。働き方改革にもつながる重要な課題であり、子育て中の方たち、特に女性、高齢者の労働市場参入が我が国の生産性を高める大きな方策ですので、保育士等の給与引上げはさらなる拡充が求められます。裁量労働制の対象拡大を図るより、はるかに効果的な生産性革命になるのではないでしょうか。

 第二に、一括交付金を〇・七兆円規模で復活させるとともに、見合いの交付金、補助金を廃止、縮減いたします。

 民主党政権下で導入した一括交付金は、霞が関支配、政官業の癒着の温床と指摘されてきたひもつき補助金から、地方自治体にとって自由度が高く創意工夫を生かしやすい交付金にかえることで、地域の知恵を最大限に発揮できる仕組みを導入するものでした。しかし、安倍政権になると、即座に一括交付金は廃止され、霞が関支配が復活いたしました。そこで、平成二十四年度の一括交付金の財源となっていた事業に関係する補助金、交付金を再び廃止、縮減し、一括交付金を復活させてまいります。

 平成の大合併を経て、地方自治体の数はほぼ半数となりました。それほど地方は自助努力をして、自治体規模を大きくし、行政能力や効率の向上を図ってきたわけです。そんな新たな時代だからこそ、地方自治体の権限を拡大し、地方自治体がみずからの地域に適した施策と予算の使い方を可能にするのが国の役割だと考えます。魅力ある地域づくり、国づくりのために、一括交付金を復活させようではありませんか。御理解いただきたいと願います。

 第三に、農業者戸別所得補償制度を〇・八兆円規模で復活させます。また、養豚経営安定化対策補填率引上げ、国庫負担率引上げの費用を計上いたします。その財源として、交付金等を廃止するとともに、土地改良事業費について、三十年度当初予算額水準までに抑制をいたします。

 民主党政権下で実施した農業者戸別所得補償制度は、再生産可能な農家所得を保障し、農業経営の安定を図り、営農が継続されることを通じて、多面的な機能の維持を図るものでした。しかし、安倍政権は、農業者戸別所得補償制度を縮減、廃止し、小規模農家を切り捨て、規模拡大と競争力強化のみを強調する余り、小規模農家を中心として離農が相次ぎ、担い手への集積よりも、むしろ担い手不足が深刻化し、耕作放棄地が増大するなど、日本の農業の根幹を崩し始めています。

 今必要なのは、欧米でも当然のように行われている直接支払い制度の復活です。特に、日本と同じような国土面積の国を抱えるEUでは、農業所得に占める直接支払い額は約八割を維持しています。これは、農業のみならず、食料生産は国民全体で支えるという共通認識、農業の多面的機能への理解のなせるすべではないでしょうか。

 民主党政権が農業者戸別所得補償制度を導入する以前の二〇〇六年、日本の農家所得に占める直接支払い額の割合は二八%だったものが、戸別所得補償導入後の二〇一〇年には四五%にはね上がりました。その後、自公政権となり、直接支払交付金となって姿を変え、縮減、廃止となり、確実に直接支払い額の割合は減少しています。

 稲作農家でいえば、ここ三年は米価が上昇しているのが幸いしていますが、いざ農作物の価格が急落したときの補償制度を確固たるものにしておくことこそが、日本の農業の競争力を高め、担い手へと継承していけるものと考えます。

 もちろん、耕作の土台である農地の整備は重要であり、土地改良事業の必要性を十分に認識しながら、農地中間管理機構への集積という数合わせに偏った予算配分を見直す必要があると考えます。

 第四に、安倍政治により著しく低下した国民の政治への信頼を取り戻すための経費を計上いたします。

 具体的には、冒頭申し上げたとおり、平成二十五年度労働時間等総合実態調査の再実施を含む裁量労働制についての全般的な再調査の経費を計上いたします。

 また、森友、加計問題を踏まえた公文書管理の適正化についても費用を計上いたします。

 このたびの森友、加計学園問題の本質は、安倍総理に近い人だけ得をするという不合理さにあります。国有財産の私物化という批判も多方面から聞こえてきます。そして、その不合理解明を阻む最大の要因が、行政上の重要書類、すなわち公文書の管理がずさんであった点です。

 公文書は役所のものではありません。国民の知的財産なのです。その視点に立ち返り、公文書管理の適正化を図っていく所存です。

 そして、政府提案の生活保護基準見直しの再考のための費用を計上いたします。

 この基準見直しで、推計六七%の世帯が生活保護費減額となります。特に、単身世帯で見ると七八%が減額という驚くべき数字となっています。

 五十歳未婚割合は年々増加の一途をたどり、二〇三五年には、男性で約三割、女性で約二割が五十歳まで未婚であると推計されています。すなわち、単身世帯が増加の一途をたどることとなるのが我が国の近未来の姿なのです。その状況下で、特段単身世帯の生活保護費を減額させることは、最後のセーフティーネットが寸断され、経済のみならず社会の不安定化を招きかねないかと懸念をいたします。そこで、基準見直しを再考し、安心できるセーフティーネットを提供できるよう、基準を再設計いたします。

 第五に、水漏れ予算を、〇・四兆円程度減額いたします。平成二十九年度補正予算額と平成三十年度当初予算額の合計が平成三十年度概算要求額を超える事業が数多く存在しています。安倍政権発足以来、巨額な補正予算と当初予算を一体的に運用する姿が目立ちます。補正予算は、あくまでも当初予算で賄い切れない特段の歳出を賄うことを目的に組まれるのではありませんか。その目的を逸脱し、当初予算漏れしたものをカバーするだけでなく、その分さえも上回る予算を計上するとは、およそ健全な内容とは言えないと考えます。

 それも、年末の選挙後に大型補正が組まれることに政治的な意味合いを指摘する予算委員会審議もございました。現下の厳しい財政状況の中で、このように不要不急と思われる事業に過度な予算配分を行うことは不適当であり、災害復旧復興関係予算を除き減額をいたします。

 以上、人への投資と地域活性化を経済政策の柱に置き、一・九兆円規模で平成三十年度予算を組み替えようというのが、無所属の会、立憲民主党・市民クラブ、希望の党・無所属クラブ、日本共産党、自由党、社会民主党・市民連合の編成替え案の概要であります。

 与党の皆さんの中にも、アベノミクスに疑問を持っておられる方がいらっしゃることでしょう。まだまだアベノミクスの恩恵が実感できないという有権者の声も多く聞かれるのではないでしょうか。真に国民の暮らしに資する予算編成という観点から、編成替えを提案させていただきました。どうか多くの議員の皆様に本動議に賛成していただくことをお願い申し上げて、提案理由弁明とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより、予算三案に対する討論と、動議に対する討論とを一括して行います。順次これを許します。菅原一秀君。

    〔菅原一秀君登壇〕

菅原一秀君 自由民主党の菅原一秀です。

 私は、自由民主党を代表し、ただいま議題となりました平成三十年度一般会計予算外二案に対しまして、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 その前に、このたびの歴史的な豪雪により亡くなられた方々の御冥福をお祈りいたすとともに、被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。

 さて、平昌オリンピックでは、小平選手やカーリング女子の感動的なメダル獲得で、日本じゅうが歓喜し、我が国のキーワードである女性活躍が異国の地においても世界に示されたと感じました。

 また、二大会連続の金メダルをとった羽生選手、そして、日本一になることが世界一難しいと語った二十の宇野選手の言葉は、日本のアスリートの飛躍的な進化をかいま見た思いであります。

 本予算についても、人への投資を拡充し、このオリパラにとどまらず、各般にわたって、未来に夢を感じられる予算とすることが必要であります。

 安倍政権においては、アベノミクスの新三本の矢の政策により、名目GDPは五十六兆円ふえ、五百四十九兆円と過去最高になっております。就業者数も政権交代以降二百五十一万人ふえ、有効求人倍率は五年前の〇・八三から一・五九へとほぼ倍増し、賃金も、今世紀に入って最高水準の賃上げが四年連続で続いております。

 こうした成果を更に高める目的の本予算、以下、賛成する主な理由を申し述べます。

 まず、社会保障制度を全世代型社会保障へと転換することとし、具体的には、子育て安心プランの二年前倒しの実現に向け、前年度比十一万人分増の保育所等の運営費を計上するとともに、保育士のさらなる処遇改善を盛り込んでおります。

 また、幼稚園等について、年収二百七十万から三百六十万の世帯の負担軽減を行うとともに、幼児教育の無償化を確実に進めていく予算でもあります。

 このほか、地域包括ケアシステムの深化や、あるいは生活する上でさまざまな困難を抱える方々、例えば、介護を要する独居高齢者や、あるいは生活困窮世帯の子供や、障害、難病のある方々への目配りがされていることも多としたいと考えます。

 一方で、北朝鮮の核開発問題など、現下の厳しい安全保障環境への対応が喫緊の課題であることは言うまでもありません。日本の領土と国民の命を確実に守るため、弾道ミサイル攻撃への対応やサイバー空間における対応など、実効性のある防衛予算が盛り込まれております。

 国内においては、目下の課題であります地域経済、中小企業、サービス業等の生産性向上等に向け、IT活用の拡大や人材育成などを行うとともに、中小企業の事業承継税制を大幅に改正し、黒字のまま廃業している構造を断ち、次の経営者らを支援してまいります。また、地域の中核企業が行う設備投資を強力に後押しすることともなっております。

 さらに、福島の復興を更に加速させるとともに、公共事業は、国民の命と暮らしを守る防災・減災、老朽化対策や、全国の地域経済の基盤となる物流、交通ネットワークといった日本の成長力を高める事業などの分野に重点化、効率化しております。

 また、地方創生の実現に向け、最先端の科学技術や、観光、農業といった分野で、日本国内だけでなく、世界じゅうから学生が集まるような、きらりと光る地方大学づくりを後押しするための新たな交付金を創設することとしております。

 財政面においても、公債発行額は第二次安倍内閣発足以来、六年連続で減額となり、一般会計プライマリーバランスも、前年度比で〇・五兆円改善するなど、着実に財政健全化の歩みを進めている点も評価いたしたいと思います。

 さて、政府においては、働き方改革を実行するため、同一労働同一賃金や非正規雇用労働者の処遇改善を柱とする法案の準備を進めております。

 そんな中、予算委員会においては、裁量労働制に関する議論に多くの時間が費やされ、このデータの比較や精査が十分ではなかったという指摘もありました。

 政策は、客観的な根拠に基づいて行われなければなりません。政府においては、国民に対する説明責任をより一層適切に果たすよう、ここで改めて強く要請いたします。

 一方、JILPTの調査によれば、企画業務型裁量労働制について、現に対象となっている方の八割弱が満足と答えております。

 重要なのは、雇い主に裁量労働制を悪用させないということであり、不当な長時間労働を阻止して、多様な働き方やその機会を提供する、そして、そのための、どう実現していくのかという議論であります。

 まずは、この平成三十年度予算を、これを待つ全国の皆様に可及的速やかに届け、その上で、法案については、今後の国会提出を受け、所管委員会で建設的な議論を深めていくことが重要であると考えます。

 いずれにしましても、長時間労働の是正を課題とする国会において、このように夜まで長時間会議が行われていること自体、国民から見たらパラドックスに映っており、与野党間で国会改革の議論をしっかり進めていく必要がある、このことを申し添えたいと思います。

 以上、本予算案に賛成する理由を申し述べました。議員各位の御賛同を賜りますことを強くお願い申し上げます。

 なお、野党六会派提出の編成替え動議につきましては、見解を異にするため反対することを申し述べまして、私の賛成討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 落合貴之君。

    〔落合貴之君登壇〕

落合貴之君 立憲民主党の落合貴之でございます。

 立憲民主党・市民クラブを代表し、政府提案の平成三十年度予算案に反対、そして、立憲民主党・市民クラブ、希望の党・無所属クラブ、無所属の会、日本共産党、自由党、社会民主党・市民連合が共同で提出した組み替え動議に賛成の立場から討論をさせていただきます。(拍手)

 今国会は、安倍総理御自身が働き方改革と名を打ってスタートしました。その目玉である働き方改革関連法案についても、今回の予算委員会で議論が行われました。そして、三年前から提示していたデータが間違っていた。裁量労働制で働く人たちの方が一般的な労働者よりも労働時間が短いというデータもあるようなことを説明してきた。しかし、野党が指摘をするたびに、間違えの箇所がどんどんどんどんふえていく。

 厚生労働省の予算は三十一兆円にも及ぶんです。それをつかさどる厚労省のありさまがこのようなありさまで、しっかりと説明もせず、間違いだらけのデータを撤回せず、こんなむちゃくちゃな状況で予算の強行採決。そして、何より、きょうの予算委員会質疑で総理御自身が、実態を把握しなければ政府全体として前に進めない、そう答弁したにもかかわらず、働き方改革関連予算も入っているこの予算案の強行採決。こんなことはなりません。強く抗議をいたします。

 我々立憲民主党は、安倍政権によって壊されつつあるこの国の立憲主義、民主主義を守るため、今の日本の政治の流れを変えようと、昨年秋に結党されました。

 一方、昭和三十年に結党された自由民主党の立党宣言は、こう始まります。「政治は国民のもの、即ちその使命と任務は、内に民生を安定せしめ、公共の福祉を増進し、外に自主独立の権威を回復し、平和の諸条件を調整確立するにある。」果たして、今の政治が、この理想とともに歩んでいるんでしょうか。

 アベノミクスが未曽有の好景気をもたらしていると総理はおっしゃっています。しかし、肝心な国民一人一人の経済状況を見れば、決して好調ではありません。

 第二次安倍政権の始まった二〇一二年と比べると、実質賃金は下がっています。貯蓄ゼロ世帯はふえ、三割を超えました。エンゲル係数も上がっています。消費支出も四年連続で下がっています。これでなぜ、未曽有の好景気と言えるんでしょうか。

 総理にとっては、国民一人一人の経済状況は関係ないんでしょうか。自民党の立党宣言にある、民生を安定せしめ、公共の福祉を増進する、この重要な視点はどうなってしまったんでしょうか。

 今、国民一人一人の生活を立て直し、行き過ぎた格差を是正しないといけないのにもかかわらず、例えば生活保護の一人親家庭を対象にした母子加算も引き下げる。これでは、格差は固定化されてしまいます。

 一人一人に寄り添った予算こそ、今、必要なのではないでしょうか。小中学校の給食費無償化、高校無償化、保育士や介護士等の給与引上げ、こういった措置をとるべきでございます。

 また、我々は、今回の予算委員会で、外交、防衛の問題も取り上げてきました。

 沖縄でたびたび米軍機の事故が起こる、そのたびに政府はどのような対応をとってきたんでしょうか。米軍基地にまつわるさまざまな問題もしかり。この国に主権はあるんでしょうか。

 核の問題もしかりです。オバマ大統領が広島を訪れ核なき世界を提唱すればそれに賛同し、トランプ大統領がその方針を百八十度変え、核は使いやすくするんだと宣言したら、それも無条件に賛同する。この国の主体性はどこに行ったんでしょうか。自民党の立党宣言にあった、自主独立の権威を回復し、平和の諸条件を調整確立する、この理想は捨ててしまったんでしょうか。

 米国からの防衛装備品の調達、FMSのあり方は、会計検査院からも指摘をされています。どこかの国のためではなく、この国のために防衛予算は使うんだ、その姿勢を我々政治家は忘れてはならないのではないでしょうか。

 世界の現状を鑑み、この国の形は変えなければなりません。

 東京一極集中、中央集権型から、地域主権、多機能分散型に変えていかなければなりません。地方への一括交付金を復活させるとともに、徐々に財源を地方に移し、また、我が国の農業が持続可能な形で発展していけるよう施策を打っていかなければなりません。

 そして、経済の根幹である電力、エネルギーも、一極集中型から多機能分散型へと変えていかなければなりません。中途半端に続け、税金や電気代を通じて国民に多額の負担をさせている原発は、きっぱりやめるべきです。政府は、再エネにお金がかかることを強調していますが、原発には幾らのお金をつぎ込んできたんでしょうか。原発をとめ、いつまでたっても実現しない核燃料サイクルもきっぱり撤回するべきです。

 政治や行政への国民からの信頼も取り戻さなくてはなりません。

 昨年の予算委員会から質問が続いている森友問題。各紙世論調査を見ても、一年たっても、国民の多くは総理の説明に納得していません。

 それはなぜか。説明するべき人が国会に説明しに来ていないからです。肝心なキーパーソンが国民に説明しに来ていないからです。

 理財局長であった佐川氏は、国会で虚偽とも捉えることができるような答弁を繰り返し、要求した書類も出さず、つじつまが合わなくなってきたところで理財局長から離れ、国会に出てくることはなくなりました。そして、よりによって、国民に正確な申告を求め、正確な書類の提出を求める国税庁長官となりました。この人事を適材適所と胸を張る総理の姿勢。これは税金を払う国民をばかにしているとしか思えません。

 これだけ大きなニュースになっているにもかかわらず、国民の税金がどのように使われているのか、国家の資産、国民の資産がかかわる大きな問題に説明を果たさない、そして国民に対しては税を厳しく徴収する。これでは政治に対する国民の信頼は取り戻せません。

 総理はしっかりと責任を果たすべきです。佐川さん、そして常にこの問題に名前が取り沙汰されてきた安倍昭恵総理夫人の国会招致をとめるべきではありません。

 また、加計問題やスーパーコンピューターの補助金の不正受給の問題は、いずれも総理と関係の深い方が疑惑の中におります。

 長期政権が続く中で、総理のお友達が優遇され、国家の政策がゆがめられていないか。総理は、率先して、この国のリーダーとして疑惑を晴らし、また、安倍政権では絶対に不正を許さない、不正は厳しく罰するときっぱり言うべきではないですか。

 総理は、憲法九条に三項を追加することを提案されています。憲法九条は戦後憲法の代表的な条文です。この九条を乱暴にぶち壊すことは、戦後憲法をぶち壊すことにほかなりません。

 我が国は、遠くない過去に、三百万人以上の国民が命を落とす事態を引き起こしてしまいました。国土は焦土と化してしまいました。その焼け跡の中から国民は立ち上がり、自分たちの生活をよくしていこうと力を合わせて働いてきました。

 権力が暴走してしまった経験をもとに、立憲主義をより強める戦後憲法も制定されました。昭和三十年前後は、戦後憲法を変えるかどうかをかけた総選挙も行われてきました。その中で、国民が、自分たちの手で、選挙で、戦後憲法を大切にする選択をし、新しい日本を一歩一歩前に進めてきました。

 薄氷を踏みながら一つ一つ積み上げてきた、政治、経済、外交、この国のよさを、一人の総理の手で、そして、この戦後体制に恨みを持ちながら総理大臣までたどり着いた安倍総理の手で、この国のよさをぶち壊してはなりません。

 我々は、日本のよさを取り戻す、立憲主義と民主主義を取り戻す、この国の主権を取り戻す、国民の生活に根差した経済政策を取り戻す、真っ当な政治を取り戻す、このために安倍政権と戦い続けます。

 以上、私の反対討論とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 中野洋昌君。

    〔中野洋昌君登壇〕

中野洋昌君 公明党の中野洋昌です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました平成三十年度予算三案について、野党六会派提出の動議に反対、原案に賛成の立場から討論をいたします。(拍手)

 第二次安倍政権が発足して五年、自民党、公明党の安定した政権基盤のもと、日本経済は安定した成長を続け、成長と分配の好循環は着実に前に進んでおります。

 他方、人口減少と、世界に類を見ない速度での少子高齢化は、待ったなしの課題であり、活力ある日本の未来を切り開いていくためには、教育負担の軽減、全世代型の社会保障の実現、働き方改革などの施策を進めていくことが必要不可欠であります。

 現在開かれている通常国会は、昨年の衆院選で国民の皆様に約束をした公約を実現する重要な国会であります。

 本予算案には、こうした改革を進めていくため、公明党が強く訴えてきた施策が数多く盛り込まれており、一日も早い成立と執行が必要であります。

 以下、平成三十年度予算案について、賛成する主な理由を申し上げます。

 第一に、私ども公明党が強く訴えてきた、教育負担の軽減を前進させる予算であるという点です。

 公明党が二〇〇六年より提言を続けてきた幼児教育の無償化に向けた支援が充実するほか、保育の受皿確保、保育士の処遇改善など、二〇二〇年度の無償化の実施に先立って待機児童対策を進める内容となっております。また、公明党が長年訴えてきた、大学生等への給付型奨学金の本格実施が始まるなど、経済的な理由で学ぶことを諦めない社会の実現に向けた政策が前進することとなります。

 一人親家庭、生活保護世帯や生活困窮世帯への支援が充実し、貧困の連鎖を防ぐ取組が大きく前に進むことや、医療的ケア児への支援が充実をすることも高く評価をいたします。

 第二に、働き方改革、生産性革命の実現に資する予算である点です。

 同一労働同一賃金の実現や非正規雇用労働者の処遇改善への支援、勤務間インターバル導入、長時間労働の是正を行う事業者への支援などの働き方改革を前に進めるほか、教員の働き方改革も推進する予算となっております。また、地域の中核企業と中小企業との連携など、中小企業の生産性を高める政策が盛り込まれております。

 第三に、安心して暮らせる地域の実現、地方創生を進める予算である点です。

 診療報酬と介護報酬の同時改定において、診療報酬と介護報酬の本体部分を増額させたほか、介護福祉士の処遇改善、認知症対策、がん対策の総合的な推進など、地域包括ケアシステムの構築を支える予算となっています。また、観光予算の拡充、公明党が一貫して実現を主導してきた農家の収入保険制度の開始なども盛り込まれております。

 このほか、頻発する豪雨災害への対応などの防災・減災対策や、東日本大震災からの復興、福島の再生に必要な予算が盛り込まれている点も評価いたします。

 最後に、本予算は、経済・財政再生計画の目安を達成し、新規国債発行額、プライマリーバランス赤字も引き続き縮減させており、財政健全化を進めるものである点も申し添えておきます。

 以上、賛成する主な理由を申し上げました。

 なお、野党六会派提出の動議につきましては、見解を異にするものであり、反対いたします。

 公明党は、どこまでも地域に根差した現場第一主義で、若者も高齢者も、障害や難病を持った方も、あらゆる人が持てる能力と可能性を発揮し、活躍できる社会を実現するため、これからも全力で取り組んでいくことをお約束し、私の賛成討論とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 津村啓介君。

    〔津村啓介君登壇〕

津村啓介君 希望の党、岡山県の津村啓介です。

 私は、希望の党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました政府提出の平成三十年度予算三案について、反対の立場から討論を行います。(拍手)

 まず冒頭、本日昼の予算委員会におきまして予算案の採決が強行されたことに抗議いたしますとともに、先ほどの自民党、菅原一秀議員の、事実の経過と大きく異なる誤った討論に強く抗議いたします。

 審議不十分な予算審議を打ち切り、働き方改革に逆行する深夜の本会議開催を予算委員会理事会で提案したのは菅原一秀与党筆頭理事であり、その提案に乗って、河村予算委員長は、この予算案審議の最大の論点である裁量労働制のデータに関し、野党から求められた資料がまだ提出されていないにもかかわらず、また、当然必要な再調査を決めることなく、本日の予算委員会の開催と予算案採決を職権で決定いたしました。言語道断であります。

 私たちは、昨年の臨時国会召集がおくれ、かつ、冒頭解散によって予算委員会が長期にわたって開催されなかったことから、野党足並みをそろえ、七十時間の審議時間の確保を求め続けてまいりました。あすもう一日、日中、常識的な時間に委員会審議を行えば、このような深夜国会を行うことなく、円満な採決ができた可能性がございます。

 改めて、自民党の事実誤認に基づいた誤った討論に強く抗議をいたします。

 このたびの予算審議では、平成三十年度予算案の問題点が広範に指摘されたほか、安倍政権の主要政策、基本姿勢についても数々の問題点が浮き彫りになりました。

 第一に、裁量労働制をめぐる厚生労働省の不適切データの問題です。

 一月二十九日の予算委員会において、安倍総理は、裁量労働制のもとで働く労働者の方が一般労働者よりも働く時間は短いというデータもあるという趣旨の答弁をされましたが、言及された労働時間に関するデータが数々の問題点を抱えたものであったことが明らかとなり、総理は、二月十四日になって、引き続き精査が必要なデータをもとに行った答弁について、撤回、謝罪をされました。

 しかし、問題はそれだけではありません。この調査は、統計として、そのほかにも多くの致命的な欠陥を持つものであります。

 一つ、そもそも位置づけが純粋な調査ではなく、臨検監督の一環であり、客観性を欠くこと。

 二つ、対象事業所に事前の予告なく訪問し、わずか一時間半で数十項目のデータを集めるという実務的に無理なマニュアルのもとで行われており、実際に誤記、誤入力、確認不足による数多くの異常値が連日発見され続けていること。

 三つ、最長の残業時間を平均の残業時間と混同して扱ったほか、統計上の最頻値を平均値のように扱うなど、不適切な扱いが随所に見られること。

 四つ、毎年調査をした時期もあれば、関連文書の保存期間を超える八年間も調査が行われず、統計の定義を示す基本的な文書が省内で約二週間行方不明になるなど、実務上、極めて不安定な運用がなされていること等々であります。

 また、データそのものの問題点に加え、問題が発覚した際に厚労省が組織ぐるみで隠蔽を図ったことも発覚しています。

 二月二日には、労働基準局長が、一般労働者の残業時間について、最長の残業時間として調査したものを平均の残業時間として扱っていたという不適切な扱いを把握していたにもかかわらず、大臣には五日後の二月七日、総理には十二日後の二月十四日まで情報が上がりませんでした。衆議院予算委員会の理事会に報告がなされ、データの不適切な扱いが公にされたのは、更に五日おくれた二月十九日であります。その結果、予算委員会での審議は十七日間も、厚労省がデータを隠蔽した状態で行われたことになります。貴重な時間と審議の機会が失われました。

 裁量労働制拡大を求めてきた経団連の榊原定征会長や与党内からも再調査を求める声が出ているとの報道もあります。

 根拠となるデータの信頼性が地に落ちた今、データそのものを撤回し、改めて再調査を実施して、労働政策審議会での議論からやり直すべきであります。

 日本は先進国のはずです。データの誤りが明白で、多くの国民の皆さんからも信頼を失った法案を内閣の目玉政策の一つに掲げながら予算を強行採決する日本でいいのでしょうか。提出予定の法案の中から、裁量労働制、そして高度プロフェッショナル人材の部分については削除し、撤回することを強く求めてまいります。

 次に、森友問題への政府の対応です。

 財務省は、学園側との交渉経過が含まれる内部文書を、ことし一月に五件、今月になって二十件公表しました。会計検査院が昨年十一月に国会提出した報告書には、これら文書の内容は反映されていません。財務省が一年間隠し続けていたからであります。

 昨年の通常国会で、学園との交渉記録等を全て廃棄したと繰り返し答弁した財務省の佐川宣寿前理財局長、現国税庁長官の答弁は、全くの誤りだったわけです。佐川国税庁長官及び森友学園の問題に深くかかわった安倍昭恵総理夫人の国会招致を重ねて求めます。

 我が党の大西健介議員が指摘したジャパンライフ社をめぐる疑惑、スパコン補助金の不正受給事案、茂木大臣の政党支部の手帳配付問題など、次から次と疑惑が発覚する状況は、安倍政権の緊張感の欠如そのものであります。猛省を求めます。

 平成三十年度予算案の問題点を指摘します。

 我が党の玉木雄一郎代表は、代表質問で、財政健全化目標なき予算編成を厳しく指弾しました。その前日、内閣府の中長期の経済財政に関する試算が示されましたが、成長実現ケースと呼ばれるベストシナリオでさえ、国、地方の基礎的財政収支の黒字化が実現するのは二〇二七年度となっております。つまり、アベノミクスが絶好調だと政権が胸を張っている現状でさえ、財政健全化はどんどんどんどん先送りをされているのです。

 当初予算と補正予算のあり方についても、我が党の後藤祐一、稲富修二両議員が問題提起をしました。当初予算の見ばえを整えるための補正予算編成が常態化し、財政法第二十九条が要請する、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出と言えない事業も補正予算に含まれているという指摘であります。

 そして、にもかかわらず、平成三十年度予算案は、一般会計総額が九十七兆七千百二十八億円と、六年連続で過去最大を更新しています。日本銀行やGPIFの公的資金によるETFの買い支えも含め、目先の一時的な景気回復を演出するために、安倍政権はとてつもなく大きなリスクを将来世代に先送りしているのです。

 そうした姿勢は、教育費や社会保障関係費の扱いにもあらわれています。幼児教育の無償化をうたいながら、来年度予算案ではわずか三百三十億円の予算しか計上されず、多くは翌年以降に先送りとなっています。また、医療費についても、診療報酬がわずかに引き上げられた一方で、国民皆保険制度を維持しつつ、いかにして適切に国民負担を求めていくかなど、既に始まっている超高齢社会を見据えた医療費抑制への道筋は示されず、ここも問題先送りです。

 私たち希望の党は、平均年齢四十九歳の未来先取り政党として、予算委員会で多くの近未来の課題、新しいタイプの社会問題を提示しました。

 井出庸生議員からは、広い世代でニーズが高まっている選択的夫婦別姓について具体的な提案がありました。

 小熊慎司議員からは、住民票を実家に残したままの下宿大学生の選挙人登録の扱いが自治体によって異なることから、法的に国政への参政権を失っている若者が全国に多数いる実態について問題提起がありました。

 私からは、旧宮家の皇籍復帰が非現実的である根拠をるる示した上で、伝統ある日本の皇室の血統、皇統が近い将来途絶するリスク、また、皇族の方々が極端に減少するリスクを回避するために、女性宮家創設の議論を国会として一日も早くスタートすべきとの提言をいたしました。

 目玉政策の看板を毎年かけかえ、小刻みな解散で政権への目先の求心力を維持し、長期安定政権の地位を得ながらも、短期志向の政権運営に終始する安倍政権は、将来世代に大きなツケを回す、未来に対して無責任な政権と言わざるを得ません。

 私たち国会議員は、与野党を超えて、我が国が直面する将来のリスクに正面から向き合うべきです。問題先送り、短期志向の安倍政権のエッセンスを象徴する平成三十年度予算案への反対を改めて表明し、私の討論を終わります。(拍手)

議長(大島理森君) 福田昭夫君。

    〔福田昭夫君登壇〕

福田昭夫君 民進党の福田昭夫です。

 私は、民進党と無所属の衆議院議員十四名から成る会派、無所属の会を代表し、ただいま議題となりました政府提出の平成三十年度予算案三案について反対、野党六会派提出の組み替え動議案に賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 本年は年明けから大雪が続いており、多大なる被害が生じております。犠牲となられた方々に謹んで御冥福をお祈り申し上げるとともに、被災者の皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 さて、このたびの予算審議では、平成三十年度予算の欠陥が明らかになるだけではなく、さまざまな問題、疑惑が浮上しました。

 まずは、佐川国税庁長官の虚偽答弁問題です。

 森友学園に国有地が格安で売却されていた問題をめぐり、当時理財局長だった佐川氏は、交渉記録を破棄したなどと答弁していましたが、これが完全に虚偽答弁だったことが明らかになりました。

 前代未聞の事態にもかかわらず、安倍総理及び自民党は、野党による佐川長官の証人喚問要求、罷免要求を拒否し続けています。

 納税者には一円の間違いも認めない書類を求めておきながら、平然と公文書を破棄したとうそをつく人物が国税庁のトップに君臨していては、多くの納税者の怒りを買うのは当たり前であります。

 税務行政の混乱を招く事態を、安倍政権はなぜか放置しています。不正の可能性を示す記録を意図的に隠蔽し、安倍総理をかばい続けたからこそ、佐川氏は国税庁長官に出世し、今も安倍政権により手厚く守られているのでしょう。

 次に、裁量労働制に係るデータ捏造疑惑です。

 安倍政権は、裁量労働制、いわゆる残業代ゼロ制度の導入を推し進めてきました。その根拠としてきた、裁量労働制で働く人は一般労働者より残業時間が短いというデータが、異なるデータを比較してつくられたものだということが明らかになりました。

 これまでの政府の説明を根底から覆す異常事態にもかかわらず、安倍総理は厚生労働省に責任を転嫁し、全く責任を感じていないかのような答弁を繰り返しています。

 こうした安倍政権の無責任体質は、平成三十年度予算にも色濃く反映されています。一般会計総額は九十七・七兆円となり、六年連続で過去最高を更新しました。

 安倍総理は、いつまでも財政出動を続けるわけにはいかないと国会で何度も答弁してきましたが、結局、財政出動に頼っているのが現状であります。ただ、大規模財政出動にもかかわらず、実質賃金は大幅に低下し、消費は振るわず、経済は低迷を続けています。

 その大きな原因の一つは、予算の中身が間違っていることにあります。

 安倍総理は、人への投資を重視するかのようなことは言い出しましたが、口先だけであり、公共事業費を六年連続で増加させるなど、箱物偏重の予算構造を変えようとはしていません。

 安倍政権はこれまで、三本の矢、地方創生、新三本の矢、一億総活躍社会などと、次々と看板をかけかえてきましたけれども、何ら実績を残せていないことから見ても、今回も口だけなのは明らかであります。

 また、米国からの防衛装備品の調達、いわゆるFMSにおいて、米国側の言い値で支払いを続けていたことなど、会計検査院よりさまざまな指摘を受けているのに、対応が進んでおりません。

 平成二十九年度補正予算額と平成三十年度当初予算額の合計が、何と平成三十年度概算要求額を超える事業が数多く存在するなど、不要不急と思われる事業に過度な予算配分を行っていることも判明しています。

 一方、野党提出の組み替え動議案は、人への投資と地域活性化を経済政策の柱に置き、国民一人一人の能力を最大限伸ばし、それを発揮できる環境を整えること、それぞれの地域の知恵を最大限発揮できるようにする仕組みづくりをしていくことなどにより、持続的な成長につながる中身となっております。

 また、安倍政治によりずたずたにされた、国民の政治への信頼を取り戻すべく、裁量労働についての全般的な再調査、森友、加計問題を踏まえた公文書管理の適正化を実行するための経費も盛り込まれております。

 最後に、このように国民に対して無責任で不誠実きわまりない安倍政権に終止符を打つため、心ある人たちと手をとり合い、信頼ある政治を取り戻していくことを国民の皆様方にお訴えをし、私の反対討論とさせていただきます。(拍手)

議長(大島理森君) 藤野保史君。

    〔藤野保史君登壇〕

藤野保史君 私は、日本共産党を代表して、立憲民主党、希望の党、無所属の会、日本共産党、自由党、社会民主党の六野党共同提出の二〇一八年度予算組み替え動議に賛成、政府提出の二〇一八年度一般会計予算外二案に反対の討論を行います。(拍手)

 まず、働き方改革について、国民の命がかかった大問題であるにもかかわらず、捏造データが次々と明らかになり、安倍総理が裁量労働は一般労働より労働時間が短いという答弁を撤回したことは重大です。裁量労働制に反対する世論は急速に高まっています。法案の前提は根本から崩れており、提出そのものを断念すべきです。

 また、森友疑惑では、一年前には存在しないと答弁した国有地売却の値引き交渉を示す文書が公開され、我が党が示した音声データによっても疑惑は一層深まりました。にもかかわらず、佐川国税庁長官、安倍昭恵氏らの証人喚問を与党が拒み続け、真相解明に背を向けていることは、言語道断であります。

 審議は全く尽くされておりません。野党が求めた裁量労働制の再調査、働き方改革法案の断念、証人喚問、徹底した審議などの要求をことごとく拒否し、最低七十時間の野党質問時間に達しないまま採決を強行したことに強く抗議をいたします。

 予算案に反対する理由の第一は、本予算案が、格差と貧困を広げてきたアベノミクスに固執し、暮らしと経済を痛めつけるものになっている点です。

 アベノミクスの五年間で、大企業や富裕層の利益が大きくふえる一方で、実質賃金は年額十六万円も低下し、家計消費は二十二万円も落ち込んでいます。今必要なのは、この格差と貧困を是正することです。

 ところが、本予算案は、生活保護費の最大五%、平均一・八%の削減を始めとした社会保障関係費の自然増分千三百億円を削減しています。安倍政権下の六年間で、社会保障関係費の自然増削減は一・六兆円に上り、各分野で給付減と負担増を招いています。文教予算は四年連続削減、中小企業、農業予算も連続削減であり、暮らしと経済に冷たい予算となっています。

 中堅所得層に増税を押しつけるなど、増税路線は明確です。国民に対する給付を減らしながら負担を押しつけることなど断じて許せません。

 他方、法人税や研究開発減税などの大企業優遇税制、富裕層の金融所得への優遇税制などは温存しており、格差の是正にはほど遠い姿勢です。来年十月に消費税一〇%増税を強行すれば、更に格差と貧困は広がります。富裕層のための政治から、九九%の国民の暮らしを応援する経済政策への抜本的転換を強く求めます。

 反対理由の第二は、安保法制のもとで、際限のない軍拡路線に踏み込んでいる点です。

 軍事費は過去最大の五兆一千九百十一億円となりました。第二次安倍政権発足以来、増額を続けており、四年連続で過去最高を更新しています。

 イージス・アショアの関連経費を初めて盛り込み、オスプレイやF35Aステルス戦闘機も増強しています。これら有償軍事援助、いわゆるFMSによる米国からの兵器調達は四千百二億円、次年度以降の後年度負担総額は、年間予算に匹敵する五兆七百六十八億円に上ります。アメリカの兵器を買えというトランプ米大統領の要求に応えるものであり、安倍政権の日米同盟第一、米国追随の姿勢は到底容認できません。

 とりわけ、長距離巡航ミサイルの導入を決定し、護衛艦「いずも」の空母化まで狙っていることは、政府自身が憲法上認められないとしてきた敵基地攻撃能力の保有に踏み出すものにほかなりません。戦争する国づくりをやめ、安保法制を廃止することを強く求めます。

 相次ぐ米軍機事故では、米軍の意向を最優先し、子供たちと住民の命、なりわいをないがしろにする日米安保、地位協定の屈辱的な実態が明らかになりました。日米地位協定の抜本改正と沖縄県民の民意を踏みにじる辺野古新基地建設の中止、普天間基地の即時閉鎖、撤去を強く求めるものです。

 また、審議の中で、アメリカの新核戦略、NPRを高く評価する安倍政権の姿勢が、新たな核持込みの危険を現実のものとしていることが浮き彫りになりました。さらに、安倍総理が憲法九条改憲に関する答弁を繰り返ししたことも絶対に容認できません。

 反対理由の第三は、新規大型開発事業を優先し、原発再稼働や破綻した核燃料サイクルを推進するものとなっている点です。

 高速道路に一・五兆円もの財投資金を十四年ぶりに投入するなど、三大都市圏環状道路、国際コンテナ戦略港湾などの新規大型開発事業を優先し、安全面と環境面で問題が指摘されているリニア中央新幹線の建設を推し進めるやり方は、到底認められません。

 原発の再稼働、核燃料サイクル、原発輸出、これらの推進をやめ、原発即時ゼロの政治決断を下すべきであります。

 日本共産党は、国民の暮らしを守り、日本経済のゆがみを正してその発展を促し、戦争の危険から国民の安全を守るためには、本予算の抜本的な組み替えが必要だと考えます。

 野党共同提案の予算組み替え動議は、部分的ではありますが、巨額の軍事費、米国からのFMSなどにメスを入れ、格差と貧困の是正や国民生活に振り向けるものです。六野党が一致して安倍政権の経済政策の転換を求めた点に意義があり、我が党も共同提案したものであることを表明し、討論を終わります。(拍手)

議長(大島理森君) 井上英孝君。

    〔井上英孝君登壇〕

井上英孝君 日本維新の会の井上英孝です。

 私は、我が党を代表して、平成三十年度予算案外二案に反対の立場から討論をいたします。(拍手)

 まず初めに、働き方改革に係るデータ不備問題は、国民からの信頼を失う行為であり、政府の真摯かつ誠実な対応が求められています。

 我が党は、党利党略ではなく国民にとって必要な政治の実現に向けた政策提案型政党としての立場から、今回の問題について、政府が国民に対してしっかりと説明責任を果たすことを要求いたします。

 政府予算の歳出は四年連続で九十六兆円を超え、補正予算と合わせて百兆円規模の予算が組まれてきました。公債残高はふえ続け、八百六十五兆円にも上ることが予測されるなど、財政状況は深刻であり、財政を公債頼りにすることの弊害について、政府はもっと深刻に受けとめるべきです。

 我が党は、国民に負担を求める前に、政治家みずからが身を切る改革の姿勢を示すことが必要であるということを説き、身を切る改革から始まる一連の行政改革によって改革に必要な財源を確保することを最優先の政治課題と考えてまいりました。

 年間の出生数が百万人を割り込み、人口減少の傾向が加速しているにもかかわらず、社会の仕組みは人口増加基調にあった時代から何ら変わっていないというのが現状であります。

 グレートリセットの必要性を訴えてきた立場からいえば、二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化目標の達成が困難であることは明らかであるにもかかわらず、公務員人件費をふやし続けている上に、国民に対してさらなる負担を強いる新税の導入を推し進める政府の態度には、到底容認できません。

 消費税率を八%に引き上げたことによって、国民負担率は四〇%の大台を超えました。政府は、更に消費税率を一〇%まで引き上げることを前提として本年度予算案を組んでいます。どこまで国民の負担を上げようというのでしょうか。

 身を切る改革も大胆な規制緩和もなしに、歳出の規模は膨張の一途をたどり、それを将来世代へのツケ回しと国民の負担増、つまり増税で手当てしようという姿勢がはっきりとしております。

 消費増税は景気にも悪影響を与えます。前回の八%への消費税率引上げは、成長しかけていた日本経済に水を差し、消費を大きく減速させたというのが国民の実感であります。財政再建のためにまず増税、国民の負担をふやすという財政運営を切りかえ、歳出削減を最優先にかじを切るべきです。

 二月に入ってからの円高傾向は企業業績に大きな影響を与え、法人税収の下振れが起こる可能性もあります。平成二十八年度補正予算のように、同様の事由で赤字国債が発行されたような事態を危惧しています。

 また、膨張し続ける社会保障費についても、診療報酬、介護報酬の同時改定というタイミングにもかかわらず、社会保障費の増額を五千億円以内に抑制するという従来の目安を維持したにとどまり、歳出削減に向けた真摯な姿勢を見てとることができません。

 医療だけでなく、年金制度については持続可能性が危ぶまれる上、国民年金の支給額と、生活保護制度におけるモラルハザードが加速しかねません。受給者の五〇%以上を高齢者が占めている状況を深刻に捉えるべきです。

 衆議院での予算審議は本日をもって終結しますが、我が党は、引き続き、身を切る改革と公務員人件費の削減に向けて全力で邁進していく、このことを国民の皆様にお約束いたします。

 なお、野党六会派提出の動議につきましては、見解を異にするため反対することを申し上げて、私の反対討論を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより採決に入ります。

 まず、原口一博君外六名提出、平成三十年度一般会計予算外二案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。

 原口一博君外六名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立少数。よって、原口一博君外六名提出の動議は否決されました。

 次に、平成三十年度一般会計予算外二案を一括して採決いたします。

 この採決は記名投票をもって行います。

 三案の委員長の報告はいずれも可決であります。三案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参されることを望みます。――議場閉鎖。

 氏名点呼を命じます。

    〔参事氏名を点呼〕

    〔各員投票〕

議長(大島理森君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開票。――議場開鎖。

 投票を計算させます。

    〔参事投票を計算〕

議長(大島理森君) 投票の結果を事務総長から報告させます。

    〔事務総長報告〕

 投票総数 四百五十五

  可とする者(白票)        三百七

  否とする者(青票)       百四十八

議長(大島理森君) 右の結果、平成三十年度一般会計予算外二案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)

     ――――◇―――――

田野瀬太道君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、地方税法等の一部を改正する法律案、地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(大島理森君) 田野瀬太道君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 地方税法等の一部を改正する法律案、地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長古屋範子君。

    ―――――――――――――

 地方税法等の一部を改正する法律案及び同報告書

 地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号(二)に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔古屋範子君登壇〕

古屋範子君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 初めに、地方税法等の一部を改正する法律案は、個人住民税の基礎控除等の見直しを行うとともに、平成三十年度の評価がえに伴う土地に係る固定資産税及び都市計画税の負担調整措置等の継続、地方のたばこ税の税率引上げ等の見直し、地方団体共通の電子納税システムの導入等税務手続の電子化を行うほか、税負担軽減措置の整理合理化等所要の措置を講じようとするものであります。

 次に、地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案は、地方財政の収支が引き続き著しく不均衡な状況にあること等に鑑み、平成三十年度分の地方交付税の総額の特例措置を講ずるとともに、地方交付税の単位費用等の改正及び東日本大震災の復旧復興のための財源となる震災復興特別交付税の確保等の措置を講じようとするものであります。

 両案は、去る二月十五日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、本委員会に付託されました。

 委員会におきましては、二十日両案について野田総務大臣から提案理由の説明を聴取した後、二十二日から質疑に入り、本日これを終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、両案は賛成多数をもっていずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、委員会において、持続可能な地方税財政基盤の確立及び東日本大震災等への対応に関する件について決議を行いました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 両案につき討論の通告があります。順次これを許します。長尾秀樹君。

    〔長尾秀樹君登壇〕

長尾秀樹君 立憲民主党の長尾秀樹でございます。

 私は、立憲民主党・市民クラブを代表し、地方税法等の一部を改正する法律案には反対、地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案には賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 その前に、まず申し上げます。

 先ほど、自民党の菅原一秀君の討論で、このような深夜に及ぶ国会になったのは野党のせいであるかのような、看過しがたい発言がありました。

 この際、明確に申し上げておきます。本日の予算委員会での強行採決、緊急上程は、自民党御自身の提案によるものであり、深夜に及ぶ本会議を設定した張本人は自民党であります。予算委員会筆頭理事に言われる筋合いは全くありません。まさに天に唾をする発言であり、強く反省を求めます。

 それでは、まず、地方税法等の一部改正案について、反対の主な理由を申し上げます。

 立憲民主党は、所得税、消費税、資産課税など税制全体を抜本的に見直し、税による再分配機能を強化することを基本政策として掲げております。

 平成三十年二月に公表された家計調査報告によれば、総世帯の消費支出の指数は二〇一五年第三・四半期からずっと一〇〇を下回っていることからも、個人消費が伸び悩んでいることがうかがえます。加えて、所得格差の拡大が懸念される我が国の現状に鑑みれば、税制を通じた所得再分配機能の強化を議論すべきところ、今回の税制改正が小手先の議論に終始したことは、政府・与党の責任放棄と言わざるを得ません。

 まず、今回の改正案において、給与所得者の給与所得控除の上限額を一千万円から八百五十万円に引き下げるとしております。なぜ八百五十万円としたのか、国民が納得できるような説明はいまだされておりません。

 これについては、平成三十年二月十三日の本会議等において、麻生財務大臣は、家計への影響や地方財政への影響などを総合的に勘案したと答弁しましたが、所得再分配の抜本的な改革にはなっていないことに加え、給与収入八百五十万円は都市部では中間層に位置する層であり、家計分析に基づく精緻な議論を経ての決定とは言いがたいと言えます。

 次に、基礎控除について、合計所得金額が二千四百万円超から逓減、二千五百万円超で消失する改正案となっています。格差是正という観点からは、基礎控除の逓減、消失する基準額を引き下げるべきです。

 また、今回の改正案においては、格差を縮小するためにも重要な課題である金融所得課税の見直しは全くの手つかずで、相変わらずの富裕層優遇のアベノミクスの姿勢と断じざるを得ません。

 次に、地方税と国税のあり方についてであります。

 我が党は、地方自治体の歳入は、一般財源かつ自主財源である地方税で賄うことが原則であると考えます。

 我が党の武内則男議員が本会議で代表質問したように、実際に仕事をしている割合を見ると、地方が六割だが、税収は四割しかありません。地方が担う事務と責任に見合ったように、国税と地方税の税源配分の見直しが必要であり、検討すべきであることを再度改めて主張をいたします。

 あわせて、森林環境税について申し述べます。

 森林環境税は平成三十六年度からの課税である一方、森林環境譲与税は平成三十一年度から譲与が行われることとされております。総務省の森林吸収源対策税制に関する検討会の報告書によれば、この新たな税制の必要性について、森林は、地球温暖化防止や災害防止など多面的な機能を有し、国民一人一人に恩恵があるとしており、この趣旨には賛成です。

 検討会の報告書においては、市町村における事業実施体制の確保が森林環境税創設に当たっての課題として明記されております。しかし、この税の趣旨に沿って事業を展開できる市町村の人的体制についてはどのように検証されたのでしょうか。地方自治体の人手不足が問題となっている中、国民から税金を取るだけ取って、肝心の市町村における事業実施体制が確保できないということがあってはなりません。

 また、森林環境税につきましては、既に三十七府県と一政令市が、課税自主権を活用し、同様の超過課税を導入しており、二重課税であるとの指摘もあります。

 総務大臣は、地方自治体の独自課税と森林環境税の使途が重複する可能性も認めた上で、平成三十六年度までの間に、関係府県等において必要に応じて超過課税の取扱いを検討していただけるものだと考えていますと答弁しておりますが、地方自治体が独自に行ってきた取組が損なわれることがないよう強く要望いたします。

 次に、地方消費税の清算基準の見直しについてであります。

 地方消費税の清算基準については、統計カバー外の代替指標である人口基準を五〇%に変更することとしており、その根拠は、地方消費税の税収をより適切に最終消費地に帰属させるためとのことでした。

 人口基準を五〇%に引き上げて、果たしてこれでより適切に地方消費税収を最終消費地に帰属させることができるでしょうか。

 この人口基準が五〇%になることによって、かえって地方において、地元の商店街や流通業に影響を与える可能性は否めません。消費の実態に合わせるという意味で、統計カバー率をもっと引き上げるべきであります。

 続きまして、地方交付税法及び特別会計法一部改正案については、成果なしのアベノミクスで、地方公共団体はいまだ厳しい財政状況にあえいでおり、平成三十年度の地方公共団体の安定的な財政運営に向けて一刻の猶予も許されないことも勘案して、賛成をいたします。

 しかし、トップランナー方式が今後も新たな業務に導入されるおそれを残していることに対しては懸念があります。特に、窓口業務の委託に関し、総務省は、今後、地方独立行政法人の活用や標準委託仕様書の作成、全国展開などの取組を強化するとしており、その状況を踏まえて、トップランナー方式の平成三十一年度の導入を視野に検討していく旨を答弁しております。

 しかし、平成二十九年四月一日時点における窓口業務の民間委託導入率は全市区町村で一七・三%にすぎないこと、また、地方交付税制度を使った窓口業務の委託化への政策誘導はすべきでないこと、以上の二点から、平成三十一年度における窓口業務へのトップランナー方式の導入は行うべきでないと改めて申し上げておきます。

 最後に、この間、財務省は、地方全体として地方自治体の基金の残高が増加していることを理由に、地方財政に余裕があるとして、地方交付税の抑制につなげようとしました。

 しかし、基金の残高は、あくまで、将来の歳入不足に対応するため、経費削減など自治体の努力で捻出した財源で積み上げてきたものであり、基金残高と交付税の削減をリンクさせる議論はもってのほかです。

 結果的には、一般財源総額は昨年度より上回る水準を確保し、地方が自由に使える財源がふえましたが、今後、このようなリンク議論が二度と行われることがないよう強く求めておきます。

 私たち立憲民主党は、多様な主体による自治をとうとび、互いに連携し合う活力ある社会を実現し、地域の責任と創意工夫による自立を可能とする真の地方自治を目指しています。このことを国民の皆様にお約束申し上げ、討論とさせていただきます。

 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 森夏枝君。

    〔森夏枝君登壇〕

森夏枝君 日本維新の会の森夏枝です。

 私は、我が党を代表して、ただいま議題となりました両法律案に賛成の立場から討論いたします。(拍手)

 我が党は、当初より、地方分権を旗印にしてまいりました。今回の地方交付税については、地方の実情に沿った、行政サービスの提供に必要な一般財源総額十六兆円を確保しつつ、臨時財政対策債を対前年度〇・一兆円減まで抑制したことについて、一定の評価ができるものです。

 臨財債は、五十兆円を超える金額が積み上がっており、導入以前の交付税特別会計借入金も三十二兆円積まれたままの中、国の説明では、後に元利償還金の金額について交付税措置がなされるということですが、地方からは、巨額の負債を国から押しつけられるのではないかと不安の声が上がっています。

 臨財債について、国が責任を持つという姿勢と償還のロードマップについて、明確な回答が必要不可欠です。

 なお、行財政改革を実施した上での備えである財政調整基金等の増加を理由として地方交付税の削減措置がとられなかったことは評価できますし、中小企業の設備投資促進に向けた固定資産税の軽減について、地方の裁量を拡大した上で継続することは、重要かつ適切な措置と考えます。

 また、共通電子納税システムの導入や大企業への法人住民税等電子申告の義務づけによる地方税の徴収における効率化は、民間企業や地方自治体の生産性向上につながるものであり、このような取組に我が党は賛同いたします。

 最後に、我が党は、憲法改正項目の一つとして、統治機構改革を掲げています。

 財源とともに権限を地方へ移譲していくことで、地方の、地方による、地方のための真の地方活性化と地方分権を目指して、引き続き議論を前に進めていく決意を申し述べ、今回指摘した点における政府の真摯な対応を求めて、本法案に対する賛成討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 奥野総一郎君。

    〔奥野総一郎君登壇〕

奥野総一郎君 希望の党、奥野総一郎でございます。

 私は、希望の党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました地方税法等の一部を改正する法律案に反対、地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案について賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 冒頭、職権で本日の総務委員会が立てられたことに強く抗議をいたします。

 議題となっております法案の審議に際しては、野党の質問時間が昨年よりも一割以上減らされるなど、与党の強引な運営が目立ちました。数におごることなく、審議を尽くした上での採決を改めて求めたいと思います。

 さて、偽装データに基づく働き方改革法案は、今国会に提出すべきではありません。安倍総理は実態把握と言われましたが、そのための再調査を行い、客観的データに基づき議論をやり直すべきです。都合のよいデータばかりを挙げ、あらゆる問題が全てうまくいっていると強弁し続けている安倍総理。そうした総理の姿勢がそんたくを生み、データ偽装につながったのです。現実を直視するよう、改めて総理の姿勢を正していただきたいと申し上げます。

 ごまかしても、いずれ結果は出ます。アベノミクスの看板政策である成長戦略、地方創生は、行き詰まりがはっきりとしてきました。

 成長戦略について、目標達成ができなかった、あるいは現時点で達成が難しいものが四割を占めていると内閣府も認めています。

 例えば、サービス産業の労働生産性については、伸び率を二〇二〇年までに二%にするとしていますが、現状はたったの〇・二%です。この例だけを見ても、生産性を向上させ、成長率を引き上げる、財政再建も行うという成長戦略は完全に失敗をしています。

 そして、成長戦略の地方版でもある地方創生、最近、この言葉を耳にすることはほとんどなくなりました。

 うまくいかなくなると、すぐに新しいキャッチコピーをつくって掲げるのが安倍流であります。

 まち・ひと・しごと創生総合戦略では、二〇二〇年時点で、東京圏から地方への転出、転入を均衡させ、東京一極集中の流れをとめると宣言しています。

 ところが、先日の総務省の発表では、東京圏への転入超過は、前年よりも更にふえておよそ十二万人、二十二年連続で超過となっている一方、名古屋圏と大阪圏はいずれも五年連続転出超過となり、東京一極集中がより鮮明なものとなってしまいました。

 地方創生は完全に行き詰まり、地方政策においても、これから述べるような場当たり的な増税や交付金のばらまきなど、つじつま合わせに苦心をしています。現実を直視し、改革を進めるべきです。

 地方税法等の一部を改正する法律案について、反対理由を申し上げます。

 本改正案では、国税に合わせ、給与所得控除等所得控除制度の見直しを行いますが、これにより、年収八百五十万円を超える方は、国と地方合わせて二千八百億円の増税となります。当初は、年収八百万円を超える方が増税との報道がありました。結局、取りやすいサラリーマンから取ろうとしただけではありませんか。

 また、この増税分のお金はどのように使われるのでしょうか。所得の再分配に本当につながるんでしょうか。何のためにどれだけの増税をするのか、昨年の総選挙できちんとした説明が有権者にあったでしょうか。全くなかったじゃないですか。

 来年には消費税の引上げが予定されていますけれども、早くも再々々延期されるのではないかとの声も出始めています。たばこ税もそうですけれども、取りやすいところから取れるだけ取る、それではなくて、使い道、規模など、税収の必要性を国民にはっきり説明し、抜本的な税制改革を行うべきです。

 我々は、格差を縮小し、消費をふやして経済成長を実現するため、所得控除から税額控除へ、さらには給付つき税額控除へを訴えてきました。今回の措置は、こうした理念もない、財政再建に見せかけるためだけのつじつま合わせにすぎません。

 重ねて申し上げます。本法案は、到底賛成することはできません。

 次に、地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案について、賛成の理由を申し上げます。

 平成三十年度の地方財政計画は、まち・ひと・しごと創生事業費などにより一般財源総額を確保しつつ、臨時財政対策債を抑制するなど、厳しい財政環境の中、一応の評価ができるものです。しかし、多くの問題も抱えています。

 一つは、地方財政の持続可能性です。

 税収がふえている今年度においても、平成二十八年度国税決算による精算額の繰延べや公庫債権金利変動準備金の活用などにより何とか交付税額を確保しています。また、約百九十五兆円の長期債務残高を抱えたままです。今後は、高齢化に伴う社会保障費のさらなる負担が見込まれています。

 来年予定されている消費税引上げ二%のうち〇・六%、およそ一・七兆円が、地方消費税として、地方の社会保障費の負担増に充てられることとなっています。ところが、昨年の総選挙直前、急ごしらえで決められた幼児教育、保育の無償化により、これまでの国と地方の負担割合を参考とすれば、およそ四千億円の負担が新たに地方に求められると言われています。首長に伺っても、相談がなかった。地方の同意もなく、国主導で新たな負担が求められようとしています。

 財務省は、地方のプライマリーバランスは黒字だからもっと負担すべきだ、基金を取り崩せという主張をしますけれども、国の財政運営の失敗を地方に押しつけるものです。全く理解できません。地方財政を持続可能なものとするため、政府に対し、法定税率の引上げなど地方財政の抜本的な改革を求めます。

 もう一つの問題は、地方の自治に介入する中央集権的な国の姿勢です。

 冒頭申し上げたように、地域経済の回復は遅く、地方からの人口流出はとまりません。地方創生が失敗したのは、法律に基づく総合戦略等を国が定め、それに従えば地方にお金を交付してやるぞ、こういう中央集権的な手法の結果であります。

 今回の予算審議でも、安倍総理は、きらりと光る地方大学づくりを新たな交付金により応援すると、懲りずに述べています。いいかげんに交付金で誘導するという発想はやめて、地方がみずから出す知恵に任せるべきです。分権改革を進めるべきじゃないでしょうか。

 まだあります。業務の民間委託を進めるトップランナー制度。国から言われるまでもなく、これまで地方は、投資的経費や給与経費を削って、急激にふえる社会保障費を賄ってきました。これ以上の効率化を国が強要することは、官製ワーキングプアのさらなる増加、サービスの低下につながります。働き方改革というのであれば、非常勤職員が同一賃金同一労働となるよう、十分な財源を地方に保障すべきではないでしょうか。

 我が党は、地方分権、財政自主権を明記する憲法改正案を検討しています。また、一括交付金制度の復活も提案をしています。地方分権を進め、地方のことは地方に任せる、財源も、可能な限り、ひもつきではなく一般財源を確保する、それが希望の党の基本的な考え方です。希望の党は、地方財政の健全化を進めつつ、地方の発展を実現してまいります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 金子恵美君。

    〔金子恵美君登壇〕

金子恵美君 無所属の会の金子恵美です。

 ただいま議題となりました地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。(拍手)

 まず、今回の給与所得控除の引下げ、頭打ちなどの見直しについては、働き方改革に名をかりた理念なき増税策にすぎないということを強く申し上げます。

 これまで、政府税制調査会では、幾度となく公平、中立、簡素という税制の大原則が強調されてきましたが、このたびの見直しは、所得税制をいたずらに複雑にするものであり、この大原則とは正反対の内容になっています。

 また、年収八百五十万円超のサラリーマン、約二百三十万人もの方を増税する一方で、フリーランスの方々など自営業者の税負担を多少軽減するとしています。しかし、サラリーマンの方々は軽い税負担であるといったデータを見たことがありません。

 逆に、サラリーマンと自営業者などとの所得捕捉率の相違、いわゆるクロヨン問題の存在がこれまで幾度となく指摘されてきたところです。そもそも、所得捕捉率が違うのであれば、今回の改正案は議論が成り立たないはずです。

 地方交付税については、地方交付税法には、「地方行政の計画的な運営を保障することによつて、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化することを目的とする。」と明記されており、総務省ホームページには、国が地方にかわって徴収する地方税、固有財源という性格を持っているとの解説が載っております。

 しかし、安倍政権は、地方自治体にとって自由度が高く創意工夫を生かしやすい一括交付金を廃止し、ひもつき補助金を復活させ、その裏負担を見ることに地方交付税を利用しており、自治体の固有財源であるはずの地方交付税を支配の道具に使っています。これでは、地域の知恵を最大限に引き出し、地域活性化をなし遂げることなどできません。

 固定資産税の特例措置についても同じようなことが言えます。地方の自主財源である固定資産税について、なぜ生産性革命を理由に減免するのでしょうか。

 かつてバブル崩壊直後の一時期に、自民党政権が、景気対策の名のもと、公共事業を乱発し、負担を押しつけられた地方自治体が青息吐息となった光景をほうふつとさせる措置であると言わざるを得ません。

 最後に、地域の皆様の声を無視し、地域の活力を奪う安倍政権に、広く野党勢力を結集して対抗していくことを国民の皆様にお約束し、私の討論を終わります。(拍手)

議長(大島理森君) 本村伸子君。

    〔本村伸子君登壇〕

本村伸子君 私は、日本共産党を代表して、地方交付税法等の改定案に対し、反対の討論を行います。(拍手)

 地方自治体の最も重要な役割は、住民の福祉の増進です。ところが、安倍政権は、社会保障費を連続抑制し、地域の医療、介護、子育て、生活保護など、住民の暮らしを支える制度を次々と破壊し、地方に行革を押しつけてきました。このもとで、雇用の不安定、低賃金化、貧困と格差、地域間の格差がますます深刻となっています。

 とりわけ、安倍政権が地方交付税制度を根本からゆがめていることは重大です。

 地方交付税は、地方の固有財源であり、自治体の財政需要を正しく反映することによって、財源保障機能と財源調整機能という役割を果たすことができます。

 しかし、安倍政権は、地方交付税の算定にトップランナー方式を導入し、アウトソーシングで人件費等を削った経費水準をもとに、基準財政需要額を引き下げています。来年度もこれを継続すれば、累計で一千四百億円もの基準財政需要額の削減となります。

 さらに、まち・ひと・しごと創生事業費の人口減少等特別対策事業費で、人口の増減率等を指標に、成果が上がっている自治体に交付税の配分をふやしていくやり方を更に進めようとしています。地理的条件不利地や財政力の弱い町村など、財源削減の影響は深刻です。こうしたやり方は、地方交付税の役割に逆行するものです。

 今こそ、地方交付税の法定率を抜本的に引き上げることを求めます。

 地方税法の改定については、地域経済の牽引という名目で固定資産税の減免を導入していますが、一部の企業に支援を特化するやり方ではなく、三百八十万の中小企業全体の底上げこそ、地域経済の活性化に必要です。

 また、個人所得課税の見直しは、勤労世帯、中間層への増税であり、反対です。

 以上を申し述べ、討論とさせていただきます。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより採決に入ります。

 まず、地方税法等の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

 次に、地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

田野瀬太道君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(大島理森君) 田野瀬太道君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長小里泰弘君。

    ―――――――――――――

 所得税法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号(二)に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔小里泰弘君登壇〕

小里泰弘君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、働き方の多様化等への対応、デフレ脱却と経済再生の実現などの観点から、国税に関し、所要の改正を行うものであります。

 本案は、去る二月十三日当委員会に付託され、十六日麻生財務大臣から提案理由の説明を聴取した後、二十一日から質疑に入り、二十三日質疑を行い、本日、安倍内閣総理大臣に対する質疑を行い、質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 討論の通告があります。順次これを許します。高木錬太郎君。

    〔高木錬太郎君登壇〕

高木錬太郎君 立憲民主党、高木錬太郎でございます。

 私は、立憲民主党・市民クラブを代表いたしまして、ただいま議題になりました所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、反対の立場から討論を行います。(拍手)

 去る二月十六日、全国で所得税の確定申告が始まりました。来月十五日までの間に約二千百五十万人の納税者の皆さんが申告書を提出されます。

 日ごろから準備をされ、御苦労を重ねてきてこの確定申告に臨まれている納税者の皆さんに対し、内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現を図らなければいけない国税庁のトップ、更に言えば税務署職員など全国五万六千人の組織を率いる組織のトップである佐川宣寿国税庁長官は、相も変わらず、歴代長官が行ってきた記者会見を開かず、ホテル住まいを続け、逃げ隠れされている始末。それが、納税の義務を果たそうとしている納税者に対する誠意ある姿勢ですか。それが、組織のトップとしての振る舞いですか。あるまじき姿勢と言わざるを得ません。

 そして、ここへ来て、佐川長官の財務省理財局長時代の国会での答弁が虚偽答弁だと断じられてもおかしくないような事実が次々と明らかになっています。指摘されていることに関し何らやましいところがないのならば、正々堂々国会に出てきて、広く国民に対し、理財局長時代の主観的認識を説明なさったらいいではありませんか。

 また、麻生財務大臣御自身も、この間の予算委員会における答弁の中で、確定申告の現場において例年にない特段の支障が生じることが十分にあり得ると認められておられます。

 であるとするならば、その例年にない特段の支障が生じないよう、麻生大臣御自身が善処されるべきであります。つまり、この場合の善処とは、世論調査によっては八割以上という数字も出ている、佐川長官は国会で説明すべきという国民の声に応えて、大臣が有能だと評価される佐川長官に対し、国会に出てくるように指示を出すことではないでしょうか。

 聞くところによりますと、理財局長から国税庁長官に就任するのは四代続けての既定路線。国税庁長官の任期は事実上一年で、何事もなくその一年をやり過ごせば、翌年夏には退官し、秋には新しい就職先へということであります。もしこれが本当だとすると、国民感情からすれば、何ともやりきれない思いになるのではないでしょうか。

 今通常国会はまだまだ続きます。私たちは、今後も引き続き、佐川長官に国会に出てくるよう強く求めていきたいと思います。

 それでは、所得税法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 個人消費が伸び悩み、格差の拡大が懸念される我が国の現状にあって、税による所得の再分配機能を更に強化しなければいけない中、今回の税制改正は、その本質的な議論を避けている、小手先のびほう策にすぎないと指摘せざるを得ません。

 今回の控除見直しで増税となる給与所得者の年収基準は八百五十万円となっており、約二百三十万人の方々が対象となります。この年収八百五十万円の皆さんは、都市部ではいわゆる中間層に位置する層であり、個人消費を支える中核の購買層に当たる皆さんでもあります。

 それにもかかわらず、家計分析に基づく精緻な議論を経て決定した基準とは言いがたく、取りやすいところから取るという、こそくなやり方であるという印象が強く残ります。

 また、今回の所得税法改正の中には、負担増が生じないよう措置を講ずるとあり、その対象が子育て世帯、介護世帯という説明が財務金融委員会でもありましたが、この介護世帯というのは、国民の誰もが思い浮かべるような、高齢者の皆さんを介護しているという意味での介護世帯ということではなく、特別障害者控除の対象となっている限られた世帯のことであって、決して高齢者の方々を介護されている多くの世帯に負担増が生じないというわけではありません。

 このように、国民の皆さんの間に誤解が生じるような非常に不誠実な説明があり、この点についても厳しく指摘したいと思います。

 次に、金融所得課税についても指摘しなければなりません。

 格差を縮小するためにも非常に重要な課題であるこの金融所得課税の見直し。今回の税制改正では全くの手つかずで、富裕層優遇のアベノミクスの姿勢は相変わらずと言わざるを得ません。

 年収一億円以上の高所得者数は、二〇一一年の一万二千七百五十人から、二〇一五年には一万九千二百三十四人になり、さらには、二〇一六年には二万人を超えました。そして、年収一億円以上の高所得者ほど、所得に占める株式等の譲渡所得、つまり金融所得の割合が高いと言われています。この金融所得は分離課税の対象になっているため、高所得者層にとっては税の負担率が低く、税の負担の公平性が全く保たれていません。

 税による所得の再分配機能という意味では真っ先に着手すべき税制であるにもかかわらず、二〇一四年、軽減税率を廃止して本則税率に戻すという改正以降、総合的に検討すると言うばかりで、実際には一向に見直しが進んでいません。

 つまり、重ねて申し上げますが、これはアベノミクスが富裕層優遇政策である証左にほかなりません。

 次に、所得拡大促進税制の見直しについて申し上げます。

 平成二十五年度税制改正において、この所得拡大促進税制が創設され、翌平成二十六年度以降、毎年のように、制度の拡充、延長、企業にさらなる賃上げの動機づけを与える機能の強化など、数次にわたって制度の見直しが行われてきました。

 そして、今回の平成三十年度税制改正においても、継続雇用者給与等支給額が対前年度三%以上の増加及び国内設備投資額が減価償却費の総額の九〇%以上の要件を満たす場合等に、給与等支給増加額について税額控除するという改組が行われました。

 政府が民間企業に対し賃上げを直接的に要求するというのは、あるべき姿であるとは思えませんが、しかし、税制を通じて、企業に対し、さらなる賃上げを促すということ自体は理解できます。ですが、そもそも、なぜ毎年のように見直さなければいけない制度なのでしょうか。定量的な検証はどうなっているのでしょうか。適用件数や適用金額は出てきてはいますが、具体的にどれだけ賃上げにつながったのか、賃上げが進んだのか、政策効果はどうなっているのでしょうか。

 財務金融委員会の質疑の中でも、政府は、税制の効果だけを取り出して、経営者の賃上げ判断への影響をはかることは難しい面があると認められましたが、政策効果が検証できない制度自体をいつまで続けるのでしょうか。

 賃上げ、つまりは国民の皆さんのお財布を温めるという政策を行うならば、もっとほかにいい方法があるのではないでしょうか。つまりは、この租税特別措置という制度自体、一度立ちどまって、本当にこの制度のままで効果的なのか、このやり方でいいのか、根本的に考え直した方がいい。そういう時期に来ているのだと考えております。

 最後に、私たち立憲民主党は、強い者をより強く、豊かな者をより豊かにすることによって、そうでない人たちに滴り落ちるというトリクルダウンの経済政策ではなく、社会的需要の高い分野であるにもかかわらず、低賃金で、身を粉にして働いていらっしゃる皆さんの処遇を改善するという、まさに下から支えて押し上げる経済政策を推し進めることで、経済の好循環を図っていくべきと考えております。

 そして、税制においては、多様性を認め合い、困ったときに寄り添い、お互いさまに支え合う社会をつくるという我が党の理念を踏まえた、我が党らしい税制の基本方針を取りまとめ、国民の皆さんにお示しすることをお約束申し上げ、本法案に対する反対の討論とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 杉本和巳君。

    〔杉本和巳君登壇〕

杉本和巳君 日本維新の会の杉本和巳です。

 私は、我が党を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案について、賛成の立場から討論いたします。(拍手)

 まず、所得税についてです。

 さきの税制改正における議論では、配偶者控除、配偶者特別控除の見直しが行われ、今回は多様な働き方に対応した税制改正が行われようとしています。また、個人所得税改正に焦点が当てられ、給与所得控除、公的年金控除、基礎控除等の一体的な見直しが行われることになります。給与所得控除、年金控除制度が見直され、基礎控除をふやすことは、フリーランスの勤労者や起業家に対する所得控除を公平に近づけるために一定の効果があると評価します。

 ただし、今回の税制改正において、八百五十万円以上の給与所得者が増税対象となることについては疑問が残ります。高所得者狙い撃ちの今回の改正は、我が国の経済、産業、テクノロジーを支える層の労働意欲や消費の減退という点で懸念されます。

 また、給与所得者と個人事業主等との所得把握の不均衡は改善されていません。所得を把握しやすい給与所得者中心の増税になる点は残念であります。依然として、現役世代よりも年金受給者に対して手厚い制度である点、年金等控除に対する抜本的な見直しでないという点について、引き続き政府に対して見直しを要求してまいりたいと考えています。

 政府は、給与支出を前年比で三%以上ふやした企業に対して、租税特別措置の拡大を行おうとしています。業績好調な企業においては、内部留保が積み上がる一方で、賃上げが抑制されていることが問題となっている中、賃上げに向けての税制改正が行われることについては、経済の好循環につながる点から評価いたします。

 ただし、租税特別措置という仕組みでは、対象となる企業全体での減税総額がつかみ切れていないことは問題でありますので、租税特別措置を拡大する点については疑問が残ってしまいます。

 次に、事業承継税制についてです。

 中小企業経営者の高齢化が進み、二〇二〇年までに三十万以上の経営者が七十歳になるなど、後継者不足が深刻な課題になっています。

 経済産業省の推計によれば、後継者問題等の廃業が急増することで、二〇二五年までの十年間で約六百五十万人の雇用、約二十二兆円のGDPが失われる可能性が示唆されています。今回、こうした状況を踏まえ、事業承継に係る優遇措置の対象が拡充された点については、我が党が税制に関する当面の考え方としてまとめた提案内容も反映されており、その内容について評価しております。

 ひっきょう、今回の税制改革によって民間の活力が最大限発揮できるよう、指摘した事項について、政府における真摯な対応を今後求めつつ、我が党は、以上のような観点を総合して、本法案に賛成いたします。(拍手)

議長(大島理森君) 近藤和也君。

    〔近藤和也君登壇〕

近藤和也君 私は、石川県能登半島の近藤和也です。

 希望の党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、反対の立場から討論をいたします。(拍手)

 私は、そこで眠っていらっしゃる与党の国会議員にも申し上げたい。こんな国会運営でいいんでしょうか。今の経済金融政策で本当にいいんでしょうか。今回の税制改正は、これで本当にいいのでしょうか。こんな政治のあり方でいいのでしょうか。

 官邸や執行部は怖い存在なのかもしれない。しかし、私は、このような政治が続くことによる日本の未来の方がもっと怖い。もっと与党の方には心を広く持っていただきたい。(発言する者あり)

議長(大島理森君) 御静粛に願います。

近藤和也君(続) そして、ぜひとも、この議論を通じて、皆様が勇気ある行動をとっていただくことを願いまして、討論を始めさせていただきます。

 証人喚問から逃げ続ける佐川国税庁長官、森友学園問題、もううんざりです。いつまでこのことを国会で取り上げなければいけないのでしょうか。取り上げる野党が悪いのですか。違うじゃないですか。逃げ回る佐川氏、逃げ回る与党にこそ、その責任があるのではないですか。

 国民は納税から逃げることはできません。しかし、国民の皆さんから税金を徴収する国税庁トップの佐川氏は、逃げ続けています。ごまかす、うそをつく、開き直る、そして逃げる。佐川長官の姿そのものが、今の安倍政権の象徴ではないですか。

 税は国家なり。信なくば立たず。与党の皆さん、まずは、佐川氏の証人喚問を素直に認めること、そこから、誠実な税の議論をしようではないですか。

 今国会は働き方改革国会と総理が述べていました。しかしながら、議論のもとになるデータは全く信頼性がないものだと判明しました。精査すると言ったものの、再調査は認めず、法案提出の方針はそのままという傲慢さ。働く方をなめていませんか。人の命を何と考えているんですか。

 総理は、一度政権を投げ出して、その後、政治的には生き返りましたが、人間は、一度死んだら生き返らないんです。今の働き方改革には、働く人への優しさや働くことへの尊敬の念が全く感じられない。このままいけば、ブラック企業ならぬブラック政府、ブラック国会。働き方改革を語る前に、その思考、行動から改革してください。

 まずは、この国会での法案の提出断念。一から出直すしかありません。

 異次元の金融緩和からはや五年。もう結果が出ているのではないですか。とうとうマイナス金利まで行き着いてしまい、金融機関も悲鳴を上げています。実質賃金もマイナス、実質消費もマイナス、貯蓄ゼロ家庭は三割も増大。政府・与党の皆さんがいつも言われる、アベノミクスの温かい風を地方にも吹かす、いつまで言い続けるんですか。地方の実態をよく見てください。多くの方々の苦しい息遣いを感じてください。アベノミクスの厳しい風が地方に吹き荒れているんです。

 日銀は、国債も株式も目いっぱい買い込み、いつ財務の健全性が疑われてもおかしくない状況。六回も目標を先送りしながら、デフレ脱却を豪語する。

 総理、自己陶酔から覚めて、そろそろごまかしはやめませんか。新しい日銀総裁を選び直し、総理も経済金融政策を改める。私は、一日も早いアベノミクスからの脱却こそが必要だと考えます。

 そして、財政健全化目標も先送りです。

 総理は、財政健全化に充当される予定の財源を、選挙前に、教育無償化等に充てると突然表明しました。選挙目当てで消費増税分の使途変更をしたと言わざるを得ません。このことをもって目標未達の原因としていますが、そもそもが、今回の使途変更がなくとも、無理な経済成長率を前提としているなど、目標達成は不可能だったことは明々白々です。教育、子育てをだしにして責任逃れをする。選挙のたびにこうした無責任なことをやっていては、財政健全化など永遠にできるはずがありません。

 今回の改正案では、給与収入八百五十万円超のサラリーマンの給与所得控除額の上限引下げによる増税が行われます。これらの改正で税負担が重くなる世帯は、個人消費を支える中核の購買層です。消費への影響も懸念されます。

 仮に格差是正や所得再分配のために増税をするのであれば、あわせて、金融課税、資産課税等、真に担税力のある富裕層への課税もセットで示すべきではないでしょうか。そうした担税力ある富裕層への課税は示さずに、給与所得控除を引き下げることでサラリーマンを狙い撃ちにするような改正は、税負担の公平性の観点からも疑問があります。

 さらには、今回の質疑を通じて、今後は、給与収入八百五十万円よりも更にその上限を引き下げる可能性や、不妊治療を受けられる方にも影響が出てしまうことも判明いたしました。個人事業主の捕捉率の問題や雇用的自営業者の実情も放置したままです。

 個人所得課税改革の全体像を示さず、働き方の選択をゆがめるような継ぎはぎの改正では、納税者の理解は到底得られません。

 軽減税率を導入するために、総合合算制度を諦め、びほう策として、さきの衆議院議員選挙では公約に入っていないさまざまな増税、税制改悪の悪循環、所得税増税もたばこ税増税も取りやすいところから取る。理念なきでこぼこ税制と言わざるを得ません。

 安倍内閣は、経済再生も財政健全化も頓挫しているにもかかわらず、そうした現実から目を背け、自画自賛を続けています。しかし、その間にも、少子化は進み、地方では企業も減り、人もどんどん少なくなってきています。もはや国も地方もごまかしのきかない状況です。

 しかし、今の政府はどうでしょうか。所得税法改正ではサラリーマンの方々をごまかし、GDP統計もごまかし、財政健全化もごまかし、金融政策の負担もごまかす。森友学園、加計学園では身内の関与をごまかし、働き方改革では極めてずさんなデータを使ってごまかす。安倍内閣はごまかしばかりです。今国会は、働き方改革国会ではなく、ごまかし国会。皆さん、このごまかしをこそ改革しようではありませんか。

 正直に現実に向き合い、逃げずに、おのれの失敗をもごまかさず、真っすぐに問題に立ち向かっていく。私たち心ある野党こそが、声なき声を受けとめる、その存在であらねばなりません。本当は声を上げたくても上げられない人たちは、与党議員の皆さんの中にもいらっしゃるのではないですか。一緒に立ち上がろうではありませんか。

 所得控除から税額控除へ、税額控除から給付つき税額控除へ。所得税などのあり方を根本的に見直し、所得再分配機能を強化しつつ、時代の変化に合わせ、ライフスタイルに中立的な税制を実現する。私たちこそが、理念ある、心ある税制を目指していくことをお約束申し上げ、私の反対討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 広田一君。

    〔広田一君登壇〕

広田一君 高知県足摺半島出身の広田一でございます。

 私は、無所属の会を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論をいたします。(拍手)

 その前に、予算委員会の審議、採決のやり方に一言申し上げます。

 あのような怒号の中での強行採決は、民主主義をないがしろにするものであります。これまでの与野党の真剣な、真摯な議論を台なしにするものであります。

 特に、今国会の目玉である働き方改革は、国民の健康と命、そして働きがいに直結する大事な政策であります。その中で、裁量労働制の拡大に関する重要なデータが捏造であることが判明をいたしました。この問題が決着しない中で、予算の採決などやるべきではありません。

 今の安倍政治は、数さえあれば何をやっても構わない、強引、傲慢な政治であります。こんな政治は何としても変えていかなければなりません。

 このたびの税制改正案は、パッチワークのような増税案がメジロ押しです。佐川国税庁長官の虚偽答弁問題で納税者の怒りがかつてないほど高まっている中で、このような税制改正に理解が得られるはずはありません。

 その上で、所得税改革について申し上げます。

 所得再配分機能を回復して格差を是正することは、時代の要請であります。問題はその手法です。今回の見直しは、所得税制をいたずらに複雑化し、公平、中立、簡素という租税の大原則からかけ離れた姿になっております。

 所得税改革のあるべき姿は、所得再配分機能の回復、強化、ライフスタイルに中立で公正な税制の構築などの観点から、まずは、所得控除方式を転換して税額控除方式に切りかえていくことであります。

 さらに、行き着く先は、所得よりも控除額が多い人には給付がされる給付つき税額控除の創設であります。それこそが、税制改革でやるべき格差是正策であります。

 今回の税制改正は、全体的に個人増税ラッシュであります。よく言われる、取りやすいところから取るというものであります。

 今回、給与所得控除の見直しをします。増税ラインを給与収入八百五十万円超に引いております。二百三十万人、我が高知県の人口の約三倍もの方が増税となります。個人消費を支える、頑張っている層への増税となって、景気への悪影響が懸念をされます。

 私たちは、野田政権以来、分厚い中間層の復活を目指しています。その方向に逆行する増税だと言わざるを得ません。加えて、格差是正の観点に立てば、今やるべきことは、むしろ、二〇%にとどまっている金融所得課税を、例えば五%引き上げていくことです。優先順位が間違っております。やっていることがあべこべであります。

 私は、分厚い中間層の復活、暮らしの底上げ、個人消費のボトムアップというなら、逆に、中間層への所得税減税こそが必要だと考えます。

 次に、たばこ税の増税についてであります。

 私はたばこを吸いません。大学時代にやめました。受動喫煙防止対策の強化が喫緊の課題であることも承知をしております。

 その上で、地域を回っておりますと、今のような寒い日に、玄関先で空き缶を片手に背中を丸めながらたばこを吸っているお父さんたちによく出会います。住宅ローンを一生懸命払いながら、家の中ではたばこが吸えず、肩身の狭い思いをしております。そんなどこにでもいる普通の方々にすれば、降って湧いてきた安易な増税というふうに言わざるを得ません。

 また、段階的とはいえ、加熱式たばこの増税は、企業の開発意欲を阻害することにもつながりかねないことを指摘しておきます。

議長(大島理森君) 広田君、時間になりました。

広田一君(続) 以上のように、今回の税制改正は、中小企業の事業承継税制のように評価すべき点もありますが、全体的に、法人を優遇し個人は負担をふやすという、バランスが極めて悪い税制改革です。

 最後に、政治を変えるとは、税金のあり方、使い方を変えることです。

 私たちは、納税者、生活者、そして働く者の立場に立った税制改革を実現することを申し上げまして、私の討論といたします。

 どうも失礼しました。ありがとうございます。(拍手)

議長(大島理森君) 宮本徹君。

    〔宮本徹君登壇〕

宮本徹君 日本共産党の宮本徹です。

 私は、日本共産党を代表して、所得税法等一部改正案に断固反対の討論を行います。(拍手)

 昨年に続き、国税法案の審議では、税への信頼を大きく揺るがせている森友学園への国有地払下げ問題が大きな議論となりました。

 今国会で新しく全体が公表された二〇一六年三月のものとされる音声データでは、学園側弁護士が近畿財務局に対して、希望としては一億五千万円より低い金額で買いたい、はっきり述べております。先方から幾らで買いたいといった希望があったことはないという佐川国税庁長官の当時の答弁は、全くの虚偽答弁だったということじゃありませんか。

 新しく公開された法律相談の文書を見ると、森友学園側は、くい掘削過程で出た家庭ごみは国の指示で埋め戻されたごみだと主張しております。地下深くの新しい埋設物なるものは国のつくり上げたでっち上げであることは、いよいよ明白であります。

 森友学園側の言い値に合わせて、存在するはずのない地下九メートルまでのごみをあったことにし、国有地価格を値下げして売却したことは、もはや明らかであります。いいかげん、破綻した答弁を繰り返し、真相究明に背を向けるのはやめるべきであります。

 税への国民の信頼を取り戻すためには、森友学園疑惑の徹底究明が必要不可欠であります。安倍昭恵氏と佐川国税庁長官の証人喚問を強く求めるものであります。

 次に、本法案に反対する理由を述べます。

 第一に、本法案が、大企業優遇税制を一層拡大するからです。

 安倍政権が拡大した研究開発減税に加え、本法案の賃上げ促進税制、投資連携減税を最大限活用すれば、法人課税の実質負担率は一一%にまで下がることが、委員会の審議で明らかになりました。既に、トヨタの実質税負担率は一七%です。

 庶民には消費税増税を重ねながら、さらなる大企業減税を拡大することは、税の公平性に著しく反すると言わなければなりません。

 経済産業省の委託調査で、所得拡大推進税制を利用した一部上場、二部上場企業の大半が、この税制とかかわりなく賃上げを行っていることが明らかとなっております。そして、同調査では、減税されたキャッシュの利用先のトップは、内部留保となっております。

 血税の無駄遣いになっているではありませんか。体力のある大企業に減税する財源があるのなら、赤字法人も含め、中小企業の支援にこそ回すべきであります。

 安倍政権のもとで、法人税率の引下げ、租特の拡大、これは深刻な法人税の空洞化を引き起こしております。大企業は史上最高の利益の更新を続けていますが、国と地方の法人税収は、リーマン・ショック前より五兆円ものマイナスとなっております。本法案は、一層、法人税収の空洞化につながる危険があります。

 反対理由の第二は、超富裕層への優遇税制を放置したまま、給与所得控除の縮小で中間層へ増税を行うものだからであります。

 財務省の作成した法案説明資料では、増税となる年収八百五十万円以上は高所得者層だと記されております。しかし、かつて政府は、年収七百万、八百万円は中堅所得者層だとし、勤労世代のやる気と活力を十分発揮してもらうために極めて重要であると、減税を行ってきました。年収八百五十万円は、一体いつから高所得者層になったのか。これまでの説明と全くつじつまが合わない。御都合主義ではありませんか。

 税負担の垂直的公平にやるべきは、株の譲渡益や配当で巨額の収入を得ている超富裕層への課税強化です。証券優遇税制を廃止し、税率を一〇%から二〇%に戻した際、株価の変化は見られなかった、政府は答弁いたしました。金融所得課税の税率引上げにちゅうちょする理由は何一つありません。早急に取り組むことを強く求め、反対討論とします。

 どうもありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 先ほどの平成三十年度一般会計予算外二案の採決の結果、可とする者(白票)中、大隈和英君の票が二票ありました。

 調査の結果、一票は他の議員が投票したものと判明しましたので、各会派間の協議に基づき、これを無効といたします。

 改めて、投票結果を事務総長に報告させます。

    〔事務総長報告〕

 投票総数 四百五十五

  可とする者(白票)        三百六

  否とする者(青票)       百四十八

  ほかに無効              一

    ―――――――――――――

平成三十年度一般会計予算外二案を委員長報告のとおり決するを可とする議員の氏名

あかま 二郎君   あきもと 司君   あべ  俊子君   安倍  晋三君

逢沢  一郎君   赤澤  亮正君   秋葉  賢也君   秋本  真利君

麻生  太郎君   穴見  陽一君   甘利   明君   安藤  高夫君

安藤   裕君   井野  俊郎君   井上  信治君   井上  貴博君

井林  辰憲君   伊東  良孝君   伊藤 信太郎君   伊藤  忠彦君

伊藤  達也君   伊吹  文明君   池田  道孝君   池田  佳隆君

石川  昭政君   石崎   徹君   石田  真敏君   石破   茂君

石原  伸晃君   石原  宏高君   泉田  裕彦君   稲田  朋美君

今枝 宗一郎君   今村  雅弘君   岩田  和親君   岩屋   毅君

うえの賢一郎君   上杉 謙太郎君   上野  宏史君   江渡  聡徳君

江藤   拓君   衛藤 征士郎君   遠藤  利明君   小倉  將信君

小此木 八郎君   小里  泰弘君   小田原  潔君   小野寺 五典君

小渕  優子君   尾身  朝子君   越智  隆雄君   大岡  敏孝君

大串  正樹君   大隈  和英君   大塚  高司君   大塚   拓君

大西  英男君   大西  宏幸君   大野 敬太郎君   大見   正君

岡下  昌平君   奥野  信亮君   鬼木   誠君   加藤  鮎子君

加藤  勝信君   加藤  寛治君   梶山  弘志君   勝俣  孝明君

門   博文君   門山  宏哲君   金子  俊平君   金子 万寿夫君

金子  恭之君   金田  勝年君   上川  陽子君   神谷   昇君

神山  佐市君   亀岡  偉民君   鴨下  一郎君   川崎  二郎君

河井  克行君   河村  建夫君   神田  憲次君   神田   裕君

菅家  一郎君   木原  誠二君   木原   稔君   木村  次郎君

木村  哲也君   城内   実君   黄川田 仁志君   岸   信夫君

岸田  文雄君   北川  知克君   北村  誠吾君   工藤  彰三君

国光 あやの君   熊田  裕通君   小泉 進次郎君   小泉  龍司君

小島  敏文君   小寺  裕雄君   小林  茂樹君   小林  鷹之君

小林  史明君   古賀   篤君   後藤  茂之君   後藤田 正純君

河野  太郎君   高村  正大君   國場 幸之助君   左藤   章君

佐々木  紀君   佐藤  明男君   佐藤   勉君   佐藤 ゆかり君

齋藤   健君   斎藤  洋明君   坂井   学君   坂本  哲志君

櫻田  義孝君   笹川  博義君   塩谷   立君   繁本   護君

柴山  昌彦君   下村  博文君   白須賀 貴樹君   新谷  正義君

新藤  義孝君   菅   義偉君   菅原  一秀君   杉田  水脈君

鈴木  馨祐君   鈴木  俊一君   鈴木  淳司君   鈴木  貴子君

鈴木  憲和君   鈴木  隼人君   関   芳弘君   薗浦 健太郎君

田所  嘉徳君   田中  和徳君   田中  英之君   田中  良生君

田野瀬 太道君   田畑   毅君   田畑  裕明君   田村  憲久君

平   将明君   高市  早苗君   高木   啓君   高木   毅君

高鳥  修一君   高橋 ひなこ君   竹下   亘君   竹本  直一君

武井  俊輔君   武田  良太君   武部   新君   武村  展英君

橘  慶一郎君   棚橋  泰文君   谷   公一君   谷川  とむ君

谷川  弥一君   津島   淳君   辻   清人君   土屋  品子君

寺田   稔君  とかしきなおみ君   冨樫  博之君   渡海 紀三朗君

土井   亨君   冨岡   勉君   中曽根 康隆君   中谷   元君

中谷  真一君   中根  一幸君   中村  裕之君   中山  展宏君

中山  泰秀君   永岡  桂子君   長尾   敬君   長坂  康正君

二階  俊博君   丹羽  秀樹君   西田  昭二君   西村  明宏君

西村  康稔君   西銘 恒三郎君   額賀 福志郎君   根本   匠君

根本  幸典君   野田  聖子君   野田   毅君   野中   厚君

葉梨  康弘君   萩生田 光一君   橋本   岳君   馳    浩君

鳩山  二郎君   浜田  靖一君   林   幹雄君   原田  憲治君

原田  義昭君   百武  公親君   平井  卓也君   平口   洋君

平沢  勝栄君   福井   照君   福田  達夫君   福山   守君

藤井 比早之君   藤丸   敏君   藤原   崇君   船田   元君

船橋  利実君   古川   康君   古川  禎久君   古田  圭一君

古屋  圭司君   穂坂   泰君   星野  剛士君   細田  健一君

細田  博之君   堀内  詔子君   本田  太郎君   牧島 かれん君

牧原  秀樹君   松島 みどり君   松野  博一君   松本   純君

松本  剛明君   松本  文明君   松本  洋平君   三浦   靖君

三谷  英弘君   三ッ林 裕巳君   三ッ矢 憲生君   三原  朝彦君

御法川 信英君   宮内  秀樹君   宮川  典子君   宮腰  光寛君

宮澤  博行君   宮路  拓馬君   宮下  一郎君   武藤  容治君

務台  俊介君   宗清  皇一君   村井  英樹君   村上 誠一郎君

望月  義夫君   茂木  敏充君   盛山  正仁君   森   英介君

森山   裕君   八木  哲也君   簗   和生君   山際 大志郎君

山口  俊一君   山口  泰明君   山口   壯君   山下  貴司君

山田  賢司君   山田  美樹君   山本  幸三君   山本   拓君

山本ともひろ君   山本  有二君   吉川  貴盛君   吉野  正芳君

義家  弘介君   和田  義明君   若宮  健嗣君   渡辺  孝一君

渡辺  博道君   赤羽  一嘉君   井上  義久君   伊佐  進一君

伊藤   渉君   石井  啓一君   石田  祝稔君   稲津   久君

浮島  智子君   江田  康幸君   大口  善徳君   太田  昭宏君

太田  昌孝君   岡本  三成君   北側  一雄君   國重   徹君

佐藤  茂樹君   佐藤  英道君   斉藤  鉄夫君   高木 美智代君

高木  陽介君   竹内   譲君   遠山  清彦君   富田  茂之君

中野  洋昌君   浜地  雅一君   濱村   進君   古屋  範子君

桝屋  敬悟君   鰐淵  洋子君

否とする議員の氏名

阿久津 幸彦君   阿部  知子君   青柳 陽一郎君   荒井   聰君

池田  真紀君   石川  香織君   生方  幸夫君   枝野  幸男君

尾辻 かな子君   大河原 雅子君   逢坂  誠二君   岡島  一正君

岡本 あき子君   落合  貴之君   海江田 万里君   神谷   裕君

亀井 亜紀子君   川内  博史君   菅   直人君   近藤  昭一君

佐々木 隆博君   櫻井   周君   篠原   豪君   末松  義規君

高井  崇志君   高木 錬太郎君   武内  則男君   辻元  清美君

手塚  仁雄君   中谷  一馬君   長尾  秀樹君   長妻   昭君

西村 智奈美君   長谷川 嘉一君   初鹿  明博君   日吉  雄太君

堀越  啓仁君   本多  平直君   松田   功君   松平  浩一君

道下  大樹君   宮川   伸君   村上  史好君   矢上  雅義君

山内  康一君   山尾 志桜里君   山川 百合子君   山崎   誠君

山花  郁夫君   山本 和嘉子君   横光  克彦君   吉田  統彦君

早稲田 夕季君   青山  大人君   浅野   哲君   井出  庸生君

井上  一徳君   伊藤  俊輔君   泉   健太君   稲富  修二君

今井  雅人君   小川  淳也君   小熊  慎司君   大串  博志君

大島   敦君   大西  健介君   岡本  充功君   奥野 総一郎君

吉良  州司君   城井   崇君   岸本  周平君   源馬 謙太郎君

小宮山 泰子君   後藤  祐一君   近藤  和也君   佐藤  公治君

斉木  武志君   階    猛君   下条  みつ君   白石  洋一君

関  健一郎君   玉木 雄一郎君   樽床  伸二君   津村  啓介君

寺田   学君   中山  成彬君   長島  昭久君   西岡  秀子君

古川  元久君   古本 伸一郎君   細野  豪志君   前原  誠司君

牧   義夫君   松原   仁君   緑川  貴士君  もとむら賢太郎君

森田  俊和君   山岡  達丸君   山井  和則君   柚木  道義君

笠   浩史君   渡辺   周君   安住   淳君   江田  憲司君

岡田  克也君   金子  恵美君   菊田 真紀子君   黒岩  宇洋君

中川  正春君   中村 喜四郎君   野田  佳彦君   原口  一博君

平野  博文君   広田   一君   福田  昭夫君   赤嶺  政賢君

笠井   亮君   穀田  恵二君   志位  和夫君   塩川  鉄也君

田村  貴昭君   高橋 千鶴子君   畑野  君枝君   藤野  保史君

宮本  岳志君   宮本   徹君   本村  伸子君   足立  康史君

井上  英孝君   浦野  靖人君   遠藤   敬君   串田  誠一君

下地  幹郎君   杉本  和巳君   谷畑   孝君   馬場  伸幸君

丸山  穂高君   森   夏枝君   小沢  一郎君   玉城 デニー君

照屋  寛徳君   吉川   元君   青山  雅幸君   赤松  広隆君

玄葉 光一郎君   重徳  和彦君   中島  克仁君   鷲尾 英一郎君

無効                  一

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後十一時十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  安倍 晋三君

       財務大臣    麻生 太郎君

       総務大臣    野田 聖子君

       法務大臣    上川 陽子君

       外務大臣    河野 太郎君

       文部科学大臣  林  芳正君

       厚生労働大臣  加藤 勝信君

       農林水産大臣  齋藤  健君

       経済産業大臣  世耕 弘成君

       国土交通大臣  石井 啓一君

       環境大臣    中川 雅治君

       防衛大臣    小野寺五典君

       国務大臣    小此木八郎君

       国務大臣    梶山 弘志君

       国務大臣    菅  義偉君

       国務大臣    鈴木 俊一君

       国務大臣    福井  照君

       国務大臣    松山 政司君

       国務大臣    茂木 敏充君

       国務大臣    吉野 正芳君


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