衆議院

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第20号 平成30年4月19日(木曜日)

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平成三十年四月十九日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十七号

  平成三十年四月十九日

    午後一時開議

 第一 森林経営管理法案(内閣提出)

 第二 独立行政法人農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約の締結について承認を求めるの件

 第四 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とデンマーク王国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 第五 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアイスランドとの間の条約の締結について承認を求めるの件

 第六 商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第七 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 永年在職の議員鈴木俊一君に対し、院議をもって功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任するの件(議長発議)

 日程第一 森林経営管理法案(内閣提出)

 日程第二 独立行政法人農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約の締結について承認を求めるの件

 日程第四 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とデンマーク王国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 日程第五 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアイスランドとの間の条約の締結について承認を求めるの件

 日程第六 商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第七 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 海外社会資本事業への我が国事業者の参入の促進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 永年在職議員の表彰の件

議長(大島理森君) お諮りいたします。

 本院議員として在職二十五年に達せられました鈴木俊一君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。

 表彰文は議長に一任されたいと存じます。これに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。

 表彰文を朗読いたします。

 議員鈴木俊一君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

 この贈呈方は議長において取り計らいます。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) この際、鈴木俊一君から発言を求められております。これを許します。鈴木俊一君。

    〔鈴木俊一君登壇〕

鈴木俊一君 このたび、院議をもって永年在職表彰の栄誉を賜りました。まことに感謝の念にたえません。

 これもひとえに、長きにわたり御支援をいただいた地元岩手県の皆様、先輩、同僚議員各位、事務所スタッフの皆さん、そして妻を始め家族の支えがあったればこそであり、今日まで御指導いただきました全ての皆様に対し、衷心より厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 私は、漁師の家に生まれた父、鈴木善幸の背中を追うように政治の門をたたきました。

 大学卒業後、全国漁業協同組合連合会にお世話になり、父の勇退に伴う平成二年の衆議院選挙で、旧岩手第一選挙区の皆様の御支援のもと、初当選することができました。

 以来、九回の当選を重ね、院においては厚生労働委員長、外務委員長、東日本大震災復興特別委員長を、政府においては環境大臣、外務副大臣、厚生政務次官などを経験させていただき、昨年八月、東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当大臣を拝命いたしました。

 私が初当選したときの最大の政治課題は政治改革でありました。大変激しい党内論争、党内対立の末に政界再編が起こり、やがて小選挙区制度へと移行しました。この後も、バブル経済の崩壊、東西冷戦の終結、リーマン・ショック、そして、平成二十一年の総選挙では、私自身も落選し、政権交代が起こるなど、実に多くの出来事がありました。

 さまざまなことが起こる中で、私にとって最大の痛恨事は、平成二十三年三月十一日に発生した東日本大震災です。

 当日、私は所用で東京におり、二日後、飛行機と車を乗り継いで岩手に帰りました。盛岡まではどうにかたどり着いたものの、ガソリンが調達できない上、沿岸部につながる国道百六号線も緊急車両だけしか通行が許されません。ようやくふるさと山田町に入れたのは、発災から一週間を経過した後になってしまいました。

 津波に襲われたふるさとを目の当たりにし、絶句しました。流された家屋の残骸、老人福祉施設の屋上に乗り上げた車、まだ焦げ臭いにおいがする焼けただれた町。我が家も倒壊しました。避難所へ知人を捜しに参りましたが、なかなか見つかりません。

 穏やかな日常が破壊された惨状を前にして、大自然の猛威の中で人間の力がいかに小さなものかを嫌というほど思い知らされました。

 思えば、父の政治の原点は津波でした。昭和八年、山田町を始め三陸を襲った大津波で親も家も失った子供たちが茫然と立ち尽くしている姿を見た父は、何とかしなくてはいかぬと決意し、貧しい漁村を救うために政治を志すことになりました。そのときの様子をよく聞かされたことを思い出します。

 岩手を始めとする三陸は、津波との戦いの歴史です。有史以来、明治にも昭和にも大津波が襲いましたが、そのたびに先人たちは復興をやり遂げてきました。それなのに、私は、政治家として郷土のために最も働かなくてはならない平成の大事な場面で、国会に議席を持つことができていませんでした。このときほど、自分が政治の現場から離れていることへのもどかしさ、情けなさを感じたことはありません。

 しかし、一方で、震災を挟んだ三年三カ月の空白こそ、私にとって貴重な時間ともなりました。

 落選して初めて見えたものがたくさんありました。そして何よりも、早く国会に戻って郷土の役に立たなければならないという強い使命感や、政治に対する情熱がかつてなく高まりました。

 大震災から七年が過ぎました。私は、新たな決意を持って一刻も早く復興を完遂させ、その先に新しい東北、新しい岩手をつくるため、さらには二年後に開催される東京オリンピック・パラリンピックを真に復興五輪の名にふさわしい大会として成功させるため、最善の努力をしてまいります。

 結びに、今後とも、日本国のため、地元岩手のため、全力で働くことをお誓いし、重ねて表彰の栄誉を賜りましたことに感謝申し上げ、謝辞とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

 日程第一 森林経営管理法案(内閣提出)

 日程第二 独立行政法人農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、森林経営管理法案、日程第二、独立行政法人農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長伊東良孝君。

    ―――――――――――――

 森林経営管理法案及び同報告書

 独立行政法人農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔伊東良孝君登壇〕

伊東良孝君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、森林経営管理法案は、林業経営の効率化及び森林の管理の適正化の一体的な促進を図るため、地域森林計画の対象とする森林について、市町村が、経営管理権集積計画を定め、森林所有者から経営管理権を取得した上で、みずから経営管理を行い、又は経営管理実施権を民間事業者に設定する等の措置を講ずるものであります。

 次に、独立行政法人農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案は、林業者の経営の改善発達に資するため、独立行政法人農林漁業信用基金の業務として林業経営者に対する経営の改善発達に係る助言その他の支援業務を追加するとともに、同基金が行う債務の保証の対象者を拡大する等の措置を講ずるものであります。

 森林経営管理法案は、去る三月二十九日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 また、独立行政法人農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案は、四月四日本委員会に付託されました。

 委員会におきましては、四月五日齋藤農林水産大臣から両法律案の提案理由の説明を聴取し、十一日から質疑に入り、十二日に参考人から意見を聴取するなど慎重に審査を行い、十七日質疑を終局いたしました。質疑終局後、両法律案について一括して討論を行い、順次採決いたしましたところ、両法律案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、森林経営管理法案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約の締結について承認を求めるの件

 日程第四 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とデンマーク王国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 日程第五 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアイスランドとの間の条約の締結について承認を求めるの件

議長(大島理森君) 日程第三、税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約の締結について承認を求めるの件、日程第四、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とデンマーク王国との間の条約の締結について承認を求めるの件、日程第五、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアイスランドとの間の条約の締結について承認を求めるの件、右三件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長中山泰秀君。

    ―――――――――――――

 税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とデンマーク王国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアイスランドとの間の条約の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔中山泰秀君登壇〕

中山泰秀君 ただいま議題となりました三件につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 BEPS防止措置実施条約は、OECD及びG20によってその設置が承認された特別部会において平成二十八年十一月に採択されたものであり、国際的な租税回避行為に対処するための租税条約関連措置を迅速に、協調して、及び一致して実施するための法的な枠組みについて定めるものであります。

 日・デンマーク租税条約は、平成二十九年十月十一日に東京において、日・アイスランド租税条約は、平成三十年一月十五日にレイキャビクにおいて、それぞれ署名されたものであり、我が国と相手国との間で、二重課税の除去並びに脱税及び租税回避行為の防止を目的として、課税権の調整を行うとともに、両国における配当、利子等に対する源泉地国課税の限度税率等を定めるものであります。

 以上三件は、去る四月十二日に外務委員会に付託され、翌十三日河野太郎外務大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。昨十八日に質疑を行い、質疑終局後、討論を行い、まず、BEPS防止措置実施条約について採決を行った結果、本件は全会一致をもって承認すべきものと議決し、次に、日・デンマーク租税条約及び日・アイスランド租税条約について順次採決を行った結果、両件はいずれも賛成多数をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより採決に入ります。

 まず、日程第三につき採決いたします。

 本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

 次に、日程第四及び第五の両件を一括して採決いたします。

 両件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、両件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第六 商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第六、商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。法務委員長平口洋君。

    ―――――――――――――

 商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔平口洋君登壇〕

平口洋君 ただいま議題となりました法律案につきまして、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、商法制定以来の社会経済情勢の変化に鑑み、航空運送及び複合運送に関する規定の新設、危険物についての荷送人の通知義務に関する規定の新設、船舶の衝突、海難救助、船舶先取特権等に関する規定の整備等を行うとともに、商法の表記を現代用語化しようとするものであります。

 本案は、去る四月十二日本委員会に付託され、翌十三日上川法務大臣から提案理由の説明を聴取し、昨十八日、質疑を行い、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第七 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第七、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長西村明宏君。

    ―――――――――――――

 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔西村明宏君登壇〕

西村明宏君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の一層の促進を図るための措置を講じようとするものであります。

 その主な内容は、

 第一に、基本理念として、本法に基づく措置が社会的障壁の除去及び共生社会の実現に資するよう行われるべき旨の規定を設けること、

 第二に、公共交通事業者等によるハード対策及びソフト対策の一体的な取組を推進するための計画制度を創設すること、

 第三に、バリアフリーのまちづくりに向けた地域における取組を強化するため、市町村が移動等円滑化促進方針を定める仕組みを創設すること

などであります。

 本案は、去る四月五日本委員会に付託され、十一日石井国土交通大臣から提案理由の説明を聴取した後、十三日に質疑に入り、同日参考人から意見を聴取し、十八日に質疑を終了いたしました。

 質疑終了後、本案に対し、立憲民主党・市民クラブから修正案が提出され、趣旨説明を聴取した後、採決の結果、修正案は否決され、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 海外社会資本事業への我が国事業者の参入の促進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、海外社会資本事業への我が国事業者の参入の促進に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。国土交通大臣石井啓一君。

    〔国務大臣石井啓一君登壇〕

国務大臣(石井啓一君) 海外社会資本事業への我が国事業者の参入の促進に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 我が国経済の持続的な成長を図るためには、我が国民間事業者の海外展開を促進し、新興国を中心とした世界の旺盛なインフラ需要を取り込むことが必要不可欠であります。

 一方で、鉄道、空港、港湾、都市・住宅、下水道等の分野におけるインフラの開発や整備については、相手国政府の影響力が強いこと、我が国においてインフラ整備等に関する専門的な技術やノウハウは独立行政法人をはじめとした公的機関が保有していること等により、民間事業者のみでは十分に対応できない場合があります。

 案件形成から完工後の運営、維持管理まで官民一体となってインフラシステム輸出を強力に推進する体制構築を進めるためには、独立行政法人等に、国内業務を通じて蓄積してきた技術やノウハウを活用し、我が国民間事業者が参入しやすい環境づくりを行わせるとともに、これらの独立行政法人等と民間事業者、その他の関係者の連携協力を図ることが必要であります。

 このような趣旨から、この度この法律案を提案することとした次第であります。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、国土交通大臣が、海外のインフラ事業への我が国事業者の参入の促進の意義や、参入の促進の方法に関する基本的な事項、独立行政法人等に行わせる海外業務の内容等を定める基本方針を策定することとしております。

 第二に、国内業務を通じて技術やノウハウを蓄積している独立行政法人等について、海外のインフラ事業に関する調査、設計、運営などの業務を行わせることとしております。

 第三に、国土交通大臣による情報提供、指導、助言や関係者間の連携について定めることとしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 海外社会資本事業への我が国事業者の参入の促進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。早稲田夕季君。

    〔早稲田夕季君登壇〕

早稲田夕季君 立憲民主党の早稲田夕季です。

 私は、立憲民主党・市民クラブを代表して、ただいま議題となりました海外社会資本事業への我が国事業者の参入の促進に関する法律案について質問をいたします。(拍手)

 冒頭、どうしても申し上げなければならないことがございます。

 国会は今、まさに前代未聞の異常事態を迎えています。改ざん、捏造、隠蔽、圧力、セクハラ、シビリアンコントロールの崩壊など、挙げれば切りがありません。安倍政権を存続させるべきか否か、根底から問われています。どれ一つをとっても我が国を揺るがしかねない重大な問題が次々と発生し続ける、真の異常事態です。

 そこに先日、事もあろうに財務事務次官のセクハラ問題まで浮上しました。財務省の対応は、被害者の立場を全く無視し、何の責任感も感じられない、許しがたいものであると言わざるを得ません。事務次官の辞任は至極当然ですが、この間の財務省の対応は全くもって看過できません。

 そして今、国税庁長官は空席、事務次官も空席。こんなときに財務大臣は海外だそうです。財務省はもはや機能不全に陥っており、麻生財務大臣の責任は極めて重大です。財務大臣は速やかに辞任すべきであることを申し上げます。

 安倍政権に蔓延するおごり、緩みは、もはや限度を超えています。我々立法府に身を置く者は、行政府に対して、与野党関係なく、より一層厳しい立場で臨まなければなりません。数え切れないほどの問題の全容解明をきちんと行えというのが国民大多数の声です。これに応えず、全容解明に取り組まない政府・与党の姿勢は断じて容認できないことを強く申し上げ、質問に入ります。

 さて、本法律案は、国内の民間事業者が国土交通分野の大型インフラ事業を海外展開させるに当たり、独立行政法人等に、国外においてこれを支援するコンサルティング業務等を追加するものと理解をしております。

 本法案の趣旨によれば、新幹線の建設主体として知見を持つ鉄道建設・運輸施設整備支援機構や、ダムなどの水資源の開発を行う水資源機構、都市開発に実績のある都市再生機構等の独立行政法人、あるいは高速道路、空港にかかわる特殊法人等が、特例業務として、海外における調査、設計、入札支援を行うことが可能となります。

 私どもは、インフラ事業の海外輸出を推進すること自体に反対はいたしません。しかしながら、その国における生活の基盤の形をつくるというインフラ事業の特性を考えるならば、相手国にとって持続可能な発展につながるものとなり、そのことをもって日本ブランドを高めるものでなければならないと考えます。

 しかし、この視点から見れば、国内では、近年、不安材料となる事案が複数発生しております。

 例えば、この間、国土交通委員会において、国内の新幹線の重大インシデント問題を何度か取り上げてまいりました。残念なことに、新幹線車両の台車の一部を、製造企業が製造基準を無視して不正加工していたことが判明しています。もし、輸出したインフラの安心、安全が、万が一でも落ち度があれば、これまで築き上げてきた日本のインフラ事業に対する国際的信用は大きく揺らぎかねません。

 そこで、国土交通大臣に伺います。

 我が国の高度な技術力と施工能力を特徴とするインフラ事業を世界へ展開するに当たって、相手国の発展に寄与する技術の提供並びに法整備の支援そして人材育成への協力など、事業を推進する上での我が国の基本姿勢についてどのようにお考えでしょうか。また、日本ブランドの基礎であるインフラの安全、安心についても、政府の認識を伺います。

 世界的なインフラ需要の伸びを受け、政府は、海外インフラ事業の受注実績に関し、二〇一〇年に約十兆円であった受注額が、二〇一五年には約二十兆円になったと述べておられます。さらに、今後のアジア圏を中心としたインフラ需要のさらなる拡大を前提に、二〇二〇年にはこれを三十兆円に伸ばすという目標を掲げていらっしゃると承知をしております。

 そこで、官房長官に伺います。

 受注額を十兆円から二十兆円に伸ばすに当たり、政府としては総額でどれくらいの投資を行ったのか。また、今後更に三十兆円規模の受注額を達成するためには、更にどれほどの投資額を必要と見込んでいるのか。そして、その結果としてどれくらいの経済効果をもたらすとお考えか、数値をお示ししてお答えください。

 このたびの会計検査院の指摘によれば、二〇一六年の時点で、十四ある官民ファンドのうち、八ファンドの投資額が国の出資金の五〇%にも満たず、六事業においては赤字を計上していることが明らかとなりました。国土交通分野にかかわる海外交通・都市開発事業支援機構も、わずか四三・五%の投資割合と、この官民協働のスキームが有効に機能していないと言えます。

 この状況の背後には、投資実績などの不透明性の問題や、外部からの厳しいチェック機能の欠如が指摘されるところですが、本法案にかかわる投資資金として、こうした現状にある当該官民ファンドを活用することに関して、国土交通大臣の認識をお尋ねいたします。

 加えて、官民ファンドの原資は国民の血税から成る財政投融資資金であり、赤字ともなれば貴重な国民の財産の損失となるリスクがあることについて、政府から国民への明快な説明を求めます。

 海外においてインフラ事業が現実に実施されるまでには、相手国において当該事業に関するマスタープラン等の計画が先に策定され、同計画に基づいて実施計画や施設整備計画が準備された後、本格的にインフラの整備、運営が行われると聞いております。

 したがって、我が国政府も、インフラ輸出成功のためには、相手国における計画策定段階から早期の参入が課題となります。この点を十分に留意すべきと考えますが、国土交通大臣のお考えをお聞かせください。

 今回対象となっている独立行政法人等は、この法案をもって初めて国外での本格的な活動を行うことになります。

 ついては、国土交通大臣に伺います。

 対象となる独立行政法人等には、海外業務を円滑に実施するだけのノウハウの蓄積、海外インフラ事業分野での、活躍できる技術者等の育成、人員、予算の体制は十分に整っているのでしょうか。また、国内の本来業務に支障が出てくるのではないかといった懸念についてもお答えください。

 本法律案のもとでは、政府が海外インフラ事業に官民協働で積極的に取り組むとされておりますが、こうした事業を確実に遂行するに当たっては、民間企業側の体力やリスク管理能力の問題も無視できません。

 ことし四月、マニラ首都圏を走る軽量高架鉄道、LRTの一号線延伸計画で導入する新型車百二十両の調達入札において、日本の企業がどこも応札しないという事態が起こりました。これは、国際協力機構、JICAの円借款案件で、資材調達や工事事業は日本企業に限るとされていた案件です。

 日本企業の受注が約束されていたにもかかわらず、応札する企業がなかった。その理由は、車両製造を担う企業が手持ちの案件でいっぱいであった、あるいは、設計者不足のため、急な案件に対応できなかったためと聞いています。

 また、現在行われている海外のインフラ事業では、代金支払いをめぐる問題や、追加工事の必要による予算超過など、発注元である相手国とのトラブルが数多く報告されており、企業側のリスク管理と契約力の向上が必要とされております。

 こうしたトラブルの原因には、政治要因が関係する事例も多いとされ、受注ありきで発注側の要求を受け入れがちな、リスク管理の視点を欠いた、政府のトップセールスのあり方自体の問題も指摘されるところではないでしょうか。

 そこで、国土交通大臣並びに外務大臣にお尋ねいたします。

 政府は、トップセールスと銘打って海外インフラ事業の受注に前のめりになるばかりではなく、各省庁間や独立行政法人間の連携を高めることに加え、民間企業のリスク管理体制や、経済的、技術的な実情も捉えた取組を行うべきと考えますが、この点について、政府としてのお考えをお聞かせください。

 最後に、国民の大きな関心事である原発に関連した問題について伺います。

 私ども立憲民主党は、三月九日、趣旨に賛同する各党、各議員の皆さんとともに、衆議院に原発ゼロ基本法案を提出いたしました。そこにおいて、私たちは、新しい経済社会を創造するとともに、そのために創出される新技術を通じて原子力発電所のない世界の実現に貢献することを目指しています。

 国土交通省は、新法の成立後、数カ月以内をめどに基本方針を策定し、都市開発や下水道整備、道路整備など、複数の都市計画型インフラ整備を一体的に受注できるよう、独立行政法人間の相互協力も視野に入れていると想定されます。

 そこで、国土交通大臣並びに経済産業大臣にお尋ねいたします。

 本法律案に関して、安倍政権インフラ輸出の柱の一つである原発輸出は、対象範囲には含まれないと伺っております。しかし、よもや、その原発輸出と抱き合わせで、あるいは原発受注の条件として、インフラ事業がトップセールスされることはありませんか。もしないならないと、政府の明快な答弁を伺います。

 この間の改ざん、捏造、隠蔽、セクハラ等々、安倍政権における数多くの疑惑、不祥事により、国民の政治に対する信頼は大きく失われる事態となっています。

 その中で、本法律案は、政治主導で成長戦略の目玉である海外インフラ輸出の促進をするためとの法案でありますけれども、政治主導の名のもとで、国民にとって真の国益を損ないかねない、首相案件を優先するような、いわばそんたく輸出が行われる仕組みとならないように強く要望いたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣石井啓一君登壇〕

国務大臣(石井啓一君) 早稲田議員にお答えをいたします。

 インフラ事業の海外展開を推進する上での日本の基本姿勢についてお尋ねがありました。

 日本は質の高いインフラシステムの海外展開を進めておりますが、相手国政府がみずから適切にインフラの維持管理、運用を行えるよう、専門家派遣や研修による人材育成、相手国ローカル企業との協業、日本の経験、知見を活用した制度構築の支援等のソフトインフラも提供することによりまして、相手国の持続可能な発展につなげることが重要と考えております。

 また、日本がこれまで積み上げてまいりました安全確保や防災面での高い技術、ノウハウに加えまして、事故、災害等の経験も踏まえて、インフラの海外展開を進めてまいります。

 株式会社海外交通・都市開発事業支援機構を出資主体として活用することの意義及び同機構が有するリスクについてお尋ねがありました。

 同機構は、海外の交通・都市開発分野に我が国事業者が参入する際、出資等の資金面の支援を行うことを目的に平成二十六年に設立された法人であり、これまでに十一案件に対して五百二億円の支援を行うなど、着実に実績を上げてきております。

 今回の法案は、民間事業者の海外インフラシステムへの参入を技術面から支援するものであり、機構が行う資金面での支援をあわせて活用することにより、効果的に民間事業者の参入の促進が図られるものと考えております。

 また、機構の出資等の支援の適切性を確保するため、機構法に基づきまして、国土交通大臣の認可と外部専門家を含む機構の事業委員会の支援決定を求めるとともに、その後も、国土交通大臣が同法に基づき機構の監督を行うこととしております。

 さらに、国土交通大臣は、機構の業務の実績につきまして毎年度評価を行い、その結果を一般に公表しているところであります。

 インフラシステムの海外展開における計画作成段階からの参入の必要性についてお尋ねがありました。

 日本企業のインフラシステム海外展開への参入を促進するためには、プロジェクトが形成された段階で参入を図るのではなく、計画作成段階から、相手国政府等に対して、日本の質の高いインフラのコンセプトや相手国のニーズに基づいた具体的なプランを提示していくことが重要であると認識をしております。

 インフラ開発整備は、相手国政府の影響力が強く、民間事業者では相手国政府との連携や調整が困難であり、また、インフラ整備等に関する専門的な技術やノウハウは独立行政法人等の公的機関が有していることから、プロジェクトの計画作成段階からの参入については、こうした公的機関が対応することが効果的であります。このため、本法案によりまして、インフラシステムの海外展開が強力に推進されるものと考えております。

 本法案で措置する法人の体制整備及び国内本来業務への支障の有無についてお尋ねがありました。

 今回、本法案で海外業務を追加する独立行政法人等は、国内業務を通じて蓄積されてきたインフラ整備等に関する技術やノウハウを有しており、海外においてもその能力を十分に発揮できるものと考えております。

 さらに、本法案によりまして、海外業務が独立行政法人等の本来業務として明確に位置づけられることから、海外業務に必要な人材の採用や育成を計画的に実施したり、法人内部の体制の構築や予算の配分を積極的に行うことが可能となります。

 また、今回追加する海外業務は、本来業務と親和性が高いものを、各法人としての性格を変えない合理的な範囲で行わせるものであることから、海外業務によって国内業務がおろそかになることはないものと考えております。

 関係主体間の連携、民間企業の実情を踏まえた取組の必要性についてお尋ねがありました。

 今回の法案では、国土交通大臣が定める基本方針の中で、関係機関や民間事業者の連携協力に関する事項を定めることとしており、独立行政法人等は、基本方針に従って業務を行うこととしております。また、関係者が相互に連携を図りながら協力しなければならない旨の規定も設けております。これらによりまして、関係府省間や独立行政法人間を含めて、関係者間の連携が図られ、我が国事業者の参入促進につながるものと考えております。

 また、インフラ海外展開に当たりましては、民間企業の意向や対応能力を踏まえる必要があることから、官民協議会等を通じて官民連携を密にし、民間企業の実情を踏まえた相手国政府への働きかけを行ってまいります。

 本法案と原発輸出との関係についてお尋ねがございました。

 本法案は、国土交通省所管の独立行政法人等に海外業務を行わせることにより、日本企業のインフラシステム海外展開への参入を促進しようとするものであります。したがいまして、本法案は、原発輸出を対象としたものではございません。(拍手)

    〔国務大臣菅義偉君登壇〕

国務大臣(菅義偉君) 海外インフラの投資額と経済効果についてお尋ねがありました。

 御指摘の、二〇一五年に約二十兆円というインフラ受注実績は、円借款、公的金融による支援やトップセールス等を通じて民間企業の海外展開を後押しした成果であると認識をいたしております。

 この成果のために行われた投資額を定量的に示すことは困難でありますが、例えば、我が国の円借款の二〇一五年度の供与額は約二兆円であります。この供与額の一部が、これまでのインフラ投資の受注結果につながっているものと考えております。

 また、二〇一三年以降一六年末までに、総理によるトップセールスを百三十一件、閣僚等を含めますと四百八十三件行ったところであります。

 また、今後の目標達成のために要する投資額及び最終的にもたらされる経済効果は、個別案件によって大きく異なるために定量的な予測は困難でありますが、本邦企業の海外事業の拡大を後押しすることで、ビジネス上の利益の増大や雇用の拡大につなげていくことが可能であります。

 いずれにせよ、引き続き、政府一丸となった取組により、我が国の強みである技術、ノウハウも最大限に生かし、世界のインフラ需要を積極的に取り込むことで、我が国の経済成長につなげていきたいと思います。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) 海外インフラ受注における関係者間での連携及び民間企業の実情を踏まえた取組の必要性についてのお尋ねがありました。

 企業の海外展開を支援し、最先端のインフラシステム輸出を後押しすることは、成長戦略の重要な柱であります。

 外務省としても、七十二カ国の九十三の在外公館に百九十二名のインフラプロジェクト専門官を設置し、インフラ需要に関する情報収集や分析、JICA、ジェトロ、JBICといった関係機関や関係省との連携強化、現地商工会や日本企業との連絡体制の強化などに取り組んでいます。

 省庁をまたいだ連携については、政府一丸となった取組として、内閣官房長官を議長とする経協インフラ戦略会議を平成二十五年に立ち上げ、国土交通省や経済産業省といったインフラ輸出関係省庁と緊密に連携してきています。

 引き続き、民間企業側の体制や経済的、技術的な実情も踏まえつつ、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣世耕弘成君登壇〕

国務大臣(世耕弘成君) 早稲田議員にお答え申し上げます。

 原発輸出も含めたインフラ輸出についてお尋ねがありました。

 原発輸出に限らず、インフラ輸出については、相手国のニーズをきめ細かく拾い上げながら、まずは関係当事者間で条件を詰めていくものと認識をしており、御質問の点について、あらかじめ、ないと申し上げることはできません。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 吉良州司君。

    〔吉良州司君登壇〕

吉良州司君 希望の党、吉良州司です。

 ただいま議題となりました本法律案について、希望の党・無所属クラブを代表して質問します。(拍手)

 インフラ海外展開は、もともと民主党政権の目玉政策であり、成長戦略の重要な柱であるという観点は、一〇〇%共有します。当該法案もその延長線上にあり、より実効あらしめるため、マクロ的、ミクロ的観点から、また、私自身、議員になる前に勤めていた商社のニューヨーク店において、インフラストラクチャー・プロジェクト・デパートメントの部長、ゼネラルマネジャーとしてインフラ案件に深くかかわった経験から、当該法案とインフラ海外展開全体について、質問と、そして提案をいたします。

 二〇一七年六月九日に閣議決定された、いわゆる骨太の方針二〇一七において、次のような記述があります。「「インフラシステム輸出戦略」を推進し、アジア地域を含む世界全体の成長のためのインフラ整備を図る。」と。この大局的視点を共有します。

 なぜなら、世界経済と日本経済の関係は、世界がよければ日本もよくなり、世界が低迷すれば日本も低迷する、極めて強い連動関係があるからです。このことはデータが証明しています。世界経済の実質GDP成長率と日本経済のそれとをグラフにしますと、ほぼ同じ形をしている、つまり極めて強く連動しているのです。

 日本経済をよくするためには、世界経済の成長に日本自身が貢献すること、そして、世界全体が成長するためのインフラ整備に貢献することが重要です。その意味でも、インフラ海外展開は、成長戦略の最も重要な柱だと思います。

 広くインフラ海外展開と言われる分野の中で、電力など一部の分野では、輸出に加えて、事業投資も積極的に行われています。しかし、当該法案が対象とする鉄道、水資源、都市開発、下水道、空港、道路、港湾などの分野では、現時点では、我が国民間企業が事業投資に積極的ではありません。

 当該法案がインフラ海外展開に一定程度資することには異論を挟みません。しかし、内容的には、鉄道・運輸機構の出資機能を除けば、調査、設計、情報提供、助言など、インフラ海外展開の入り口をのぞいているだけで、ドアをノックすらもしていない、極めて消極的な中身となっています。これでは、二〇二〇年に三十兆円の受注を目指すという高い目標を掲げているインフラ海外展開を実現する具体策としては、甚だ不十分だと断じざるを得ません。

 そこで、なぜこれまで、民間企業による事業投資、事業参画が進んでこなかったのか、その理由について、また、今後積極化していくための具体的方策について、石井国交大臣に伺います。

 恐らく、その答えの一つは、各機構の人材の問題、海外における経験、ノウハウの問題だと思います。この点につき、例えば水資源プロジェクトの今後の本格的な海外展開を考えるとき、水資源機構の海外部門に我が国の商社、メーカー、地方自治体で経験を積んだ人材を招き入れることや、フランス・ヴェオリア社やスエズ社など、水メジャーと言われる会社のトップクラスの人材を引き抜いて最前線で活躍してもらうなどの対策が必要だと考えますが、石井国交大臣の所見を伺います。

 次に、インフラ海外展開全体の課題についてです。

 電力など事業投資型案件を後押しする際の課題は、出資、融資などのリスクマネーをどう捻出するか、また、民間企業が投融資しやすくなるように、民間ではとれないリスクを官がどうカバーするかなどの具体策です。その意味において、一昨年、JBIC法が改正され、リスクマネーを供給拡充する特別業務が追加されたこと、外国通貨の借り入れ、そして現地通貨建て融資が可能になったことを高く評価しています。

 今、ベトナムなど途上国政府の悩みは、経済発展のために構想するインフラ案件は山のようにあるけれども、政府の対外債務が積み上がってしまい、外貨準備の問題等から、一定限度以上の政府返済保証や外貨兌換保証、それらが出せないことです。この課題を官民共同で克服していかなければなりません。

 そこで、リスクマネー調達についての具体的提案です。

 米国の証券市場、SECにおいて、ルール百四十四Aという特別な制度があります。SECの社債発行に伴う情報開示義務は非常にハードルが高いのですが、途上国におけるプロジェクトの資金調達にも開放するため、社債の買い手を、一定の資産を持ったクオリファイド・インスティテューショナル・バイヤーと呼ばれるプロの機関投資家に限る形で、情報開示基準のハードルを下げている制度です。

 途上国におけるプロジェクト資金調達の機会を提供すると同時に、少々リスクはあっても高い利回りを欲する投資家にもその機会を与える仕組みです。プロジェクト遂行会社、SPCが社債を発行し、プロの適格機関投資家にそれを買ってもらうことで、一日にして多額のプロジェクト資金を手にできる手法です。

 私自身、ニューヨーク勤務時代に、メキシコの三・三億ドルの電力案件につき、スイスのABBという総合電機メーカーと一緒に事業会社を設立し、このルールを使って社債を発行し、出資額一億ドル以外の必要資金二・三億ドルを一日で調達した経験があります。もちろん、格付会社であるムーディーズやS&Pニューヨーク本社に出向き、プレゼンを行い、投資適格の格付を取得した上でのことでありました。

 JBIC法改正後、JBICは、この社債引受けができるようになりました。もちろん、一番いいのは、米国を始めとする世界じゅうの投資家が、リスクをとって、社債を買ってくれることです。しかし、日本の国益として、どうしてもこのマーケットに食い込み、このプロジェクトを実現したいと思うときに、JBICがこのルール百四十四A上の適格機関投資家として社債を引き受けることにより、呼び水効果も含めた資金調達ができるようになります。

 また、日本企業が投資する電力案件など、現地通貨での収入しかないプロジェクトにおいて、JBICが実質的に外貨供給保証をすることにより、プロジェクトの実現可能性を高める提案をしたいと思います。

 具体的には、プロジェクトの収入として得られる現地通貨を担保として、JBICが相手国政府への外貨供与を保証するのです。このJBICの保証を裏づけとして、相手国政府がプロジェクトに対して外貨兌換保証を出せるようになれば、社債発行時に投資適格の格付を得られる可能性が大きくなります。JBICが実質的に外貨供与保証をすることにより、社債購入者に事業リスクをとってもらい、結果的に、日本企業がインフラ輸出や事業参画の機会をふやすことができるようになります。

 もちろん、JBICが外貨供給保証をすることには、為替リスクが生じる可能性があります。しかし、エクスポージャーと呼ばれるリスクにさらされる金額は、外貨供給保証額全額ではなく、為替リスク部分だけとなりますので、そこを相手国政府に保証させるなどの対策も考えられると思います。

 社債での資金調達は、通常の融資とは異なり、必ずしも定期的に元本返済をする必要がありません。定期的には金利だけを支払い、元本は十年後などの償還時に一括返済するという設計も可能です。私がニューヨークで手がけたメキシコ案件も、元本は償還時一括返済という設計でありました。現時点での財務体質は弱いが、中長期的な成長が期待される国において、そして、成長に伴って収益の向上が見込まれるプロジェクトには、最適の資金調達手段です。

 また、社債でありますから、流通市場、セカンダリーマーケットがあります。プロジェクトが順調に回り出せば、社債を売却して現金化し、新たなプロジェクトへの投融資に回すことも可能です。

 そこで、JBICがSECのルール百四十四Aに基づいて社債を引き受けることについて、また、現地通貨での収入しかない途上国のプロジェクトにおいて、JBICが実質的に外貨保証を供与することについて、財務大臣の所見を伺います。

 最後に、本質疑の中でも申し上げましたとおり、インフラ海外展開は、我が国成長戦略の重要な柱です。そして、日本企業はこれまでも、国際競争が激しさを増す中で必死に取り組んできました。政府もそれを後押ししていることを高く評価します。

 なぜなら、化石燃料を始め、資源を持たない我が国が、今後も現在の生活水準を維持向上させていくためには、海外の人が買いたいと思う物やサービスを誰かが供給して外貨を稼ぎ、その外貨で、必要な資源、物資、食料を買わなければならない経済的宿命があるからです。

 この宿命を考えるとき、インフラ海外展開を始め、輸出関連企業を後押しすることは、我が国が将来にわたり生き抜いていくためにどうしても必要なことです。

 しかし、その後押しは、過度な円高是正については一定の評価をするものの、効果の割には弊害が大きい超金融緩和政策を継続することではありません。

 個人的見解ながら、TPPなど質の高い面的、広域的経済連携の推進など、企業が世界じゅうで自由に活動できる環境を整えること、そして、激しい国際競争の中でイコールフッティングの環境を整えることこそが、輸出関連企業への真に有効な支援だと思います。

 GDPに占める個人消費の割合が六〇%、七〇%を超える先進国においては、生活者の暮らしがよくなり、個人消費がふえない限り、強い経済にはなりません。企業の内部留保の積み上がりや現在の株価水準など、一見好調に見える経済の姿は、実は、輸入物資の値上がり等による一般生活者の可処分所得の減少分が企業へと移転した所得移転の結果であります。

 とっくに途上国を卒業して先進国となっている我が国の、そして成熟社会になっている我が国の政治は、生活者、将来世代を最優先する政治でなければなりません。生活者、将来世代を最優先する政治の実現のため、再度、政権交代をなし遂げたいという強い思いを表明して、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣石井啓一君登壇〕

国務大臣(石井啓一君) 吉良議員にお答えをいたします。

 我が国企業のインフラ市場への参入が十分には進んでこなかった理由及び今後それを積極化していくための方策についてお尋ねがございました。

 まず、これまで民間企業の海外のインフラ市場への参入が十分には進んでこなかった理由といたしましては、インフラ開発が、現地政府の影響が強く、民間企業のみでの対応には限界があること、日本の民間企業には、大規模都市開発のマスタープランづくりや新幹線、道路、下水道の整備、空港、大規模港湾等の運営等のノウハウが不足していることなどが挙げられます。

 こうした課題を踏まえまして、本法案では、各独立行政法人等に、海外で業務を行えるように業務追加をすることとしております。

 これによりまして、民間企業がインフラの海外展開に参入しやすい環境づくりを行うとともに、国土交通大臣が基本方針を作成することで、独立行政法人等と民間事業者、その他の関係者の連携協力を確保し、インフラシステムの海外展開を官民一体となって推進してまいりたいと考えております。

 本法案で措置する法人の人材確保についてお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、海外業務を行う上で、必要な人材を確保することは極めて重要であります。

 現在、独立行政法人等は、海外業務が本来業務として位置づけられていないことから、海外業務を行う上で必要となる人員の確保も困難となっております。

 本法案により、海外業務につきましても、独立行政法人等の本来業務として明確に位置づけられることから、海外業務に必要な人材の採用や育成を計画的に実施することや、法人内部の体制の構築などが可能となります。

 本法案の措置を受けまして、今後、各独立行政法人等において、海外業務に必要な人材の採用や育成、体制の整備を行うこととなりますが、その際には、御指摘のような海外経験のある人材の採用を含めて、積極的な対応を行うことが期待をされるところであります。(拍手)

    〔国務大臣野田聖子君登壇〕

国務大臣(野田聖子君) 吉良議員にお答えいたします。

 JBICの機能拡大についてお尋ねがありました。

 日本企業によるインフラ事業向け投資などに対し、従来の間接金融に加え、社債を始めとする直接金融を活用するニーズが高まっているものと承知しています。

 また、海外のインフラ事業においては、御指摘のような事業収入が現地通貨建てであるインフラ事業に対し、大きな資金ニーズがあるものと承知しています。

 こうしたニーズに適切に対応するため、二〇一六年のJBIC法改正により、JBICが海外のインフラ事業に係る社債を取得すること、現地通貨を銀行から長期借入れすることなどが可能となりました。

 社債の取得を含め、JBICの新たな機能が積極的に活用されることを期待するとともに、JBICが日本企業によるインフラの海外展開を支援するに当たり、どのような支援が可能か、企業のニーズを踏まえながら、引き続き検討してまいります。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       財務大臣臨時代理

       国務大臣     野田 聖子君

       法務大臣     上川 陽子君

       外務大臣     河野 太郎君

       農林水産大臣   齋藤  健君

       経済産業大臣   世耕 弘成君

       国土交通大臣   石井 啓一君

       国務大臣     菅  義偉君

 出席副大臣

       国土交通副大臣  牧野たかお君


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