衆議院

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第27号 平成30年5月18日(金曜日)

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平成三十年五月十八日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十一号

  平成三十年五月十八日

    午後一時開議

 第一 土地改良法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 統計法及び独立行政法人統計センター法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 平成二十八年度一般会計熊本地震復旧等予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第百九十五回国会、内閣提出)

 第四 平成二十八年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第百九十五回国会、内閣提出)

 第五 平成二十八年度特別会計予算総則第二十条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(承諾を求めるの件)(第百九十五回国会、内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 土地改良法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 統計法及び独立行政法人統計センター法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 平成二十八年度一般会計熊本地震復旧等予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第百九十五回国会、内閣提出)

 日程第四 平成二十八年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第百九十五回国会、内閣提出)

 日程第五 平成二十八年度特別会計予算総則第二十条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(承諾を求めるの件)(第百九十五回国会、内閣提出)

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 土地改良法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、土地改良法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長伊東良孝君。

    ―――――――――――――

 土地改良法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔伊東良孝君登壇〕

伊東良孝君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、最近における農業、農村をめぐる状況の変化に鑑み、土地改良区の業務運営の適正化を図るため、土地改良区の准組合員及び施設管理准組合員の資格について定めるとともに、土地改良区の総代会の設置及び土地改良区連合の設立に係る要件の緩和等の措置を講ずるものであります。

 本案は、去る五月九日本委員会に付託され、翌十日齋藤農林水産大臣から提案理由の説明を聴取し、十五日質疑を行いました。質疑終局後、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 統計法及び独立行政法人統計センター法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第二、統計法及び独立行政法人統計センター法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長古屋範子君。

    ―――――――――――――

 統計法及び独立行政法人統計センター法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔古屋範子君登壇〕

古屋範子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、公的統計の効率的な作成及び調査票情報の活用を図るため、事業所母集団データベースに記録されている情報を利用できる調査の範囲等の拡大、調査票情報の提供対象の拡大、統計委員会の機能強化、独立行政法人統計センターの業務の追加等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る五月九日本委員会に付託され、翌十日野田総務大臣から提案理由の説明を聴取し、昨十七日、質疑を行い、これを終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対して附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 平成二十八年度一般会計熊本地震復旧等予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第百九十五回国会、内閣提出)

 日程第四 平成二十八年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第百九十五回国会、内閣提出)

 日程第五 平成二十八年度特別会計予算総則第二十条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(承諾を求めるの件)(第百九十五回国会、内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第三、平成二十八年度一般会計熊本地震復旧等予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)、日程第四、平成二十八年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)、日程第五、平成二十八年度特別会計予算総則第二十条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(承諾を求めるの件)、右三件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。決算行政監視委員長荒井聰君。

    ―――――――――――――

    〔報告書は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔荒井聰君登壇〕

荒井聰君 ただいま議題となりました平成二十八年度一般会計熊本地震復旧等予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書外二件につきまして、決算行政監視委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 これらの各件は、財政法の規定等に基づき、国会の事後承諾を求めるため提出されたものであります。

 まず、平成二十八年度一般会計熊本地震復旧等予備費について、その使用事項は、中小企業等グループ施設等復旧整備事業等に必要な経費、自衛隊の部隊が実施する災害派遣活動等に必要な経費、災害廃棄物処理事業に必要な経費等計四十八件で、その使用総額は二千四百七十六億円余であります。

 次に、平成二十八年度一般会計予備費について、その使用事項は、訟務費の不足を補うために必要な経費、熊本地震による被災地域の緊急支援に必要な経費、賠償償還及払戻金の不足を補うために必要な経費等計十件で、その使用総額は三百十九億円余であります。

 次に、平成二十八年度特別会計予算総則第二十条第一項の規定による経費増額は、交付税及び譲与税配付金特別会計における地方譲与税譲与金に必要な経費の増額の二件で、その経費増額の総額は百七十四億円余であります。

 委員会におきましては、これら各件につき去る五月十五日麻生財務大臣から説明を聴取した後、昨日、質疑を行い、質疑終了後、討論、採決の結果、平成二十八年度一般会計熊本地震復旧等予備費、平成二十八年度特別会計予算総則第二十条第一項の規定による経費増額の二件は全会一致をもって、平成二十八年度一般会計予備費は賛成多数をもって、承諾を与えるべきものと議決いたしました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより採決に入ります。

 まず、日程第三及び第五の両件を一括して採決いたします。

 両件は委員長報告のとおり承諾を与えるに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、両件とも委員長報告のとおり承諾を与えることに決まりました。

 次に、日程第四につき採決いたします。

 本件は委員長報告のとおり承諾を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承諾を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

田野瀬太道君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(大島理森君) 田野瀬太道君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件

議長(大島理森君) 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長中山泰秀君。

    ―――――――――――――

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔中山泰秀君登壇〕

中山泰秀君 ただいま議題となりました環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本協定は、本年三月八日にチリのサンティアゴにおいて、米国以外の環太平洋パートナーシップ協定、いわゆるTPP協定の署名国十一カ国の間で署名されたものであり、TPP協定の内容を実現するための法的枠組みについて定めるものであります。

 その主な内容は、

 TPP協定の規定が本協定に組み込まれることを合意すること、

 本協定に組み込まれたTPP協定の規定のうち特定の規定の適用を停止すること、

 本協定は、署名国のうち少なくとも六カ国が、国内法上の手続完了を寄託者に通報した日の後六十日で効力を生ずること

等であります。

 本件は、去る四月十七日に本会議において趣旨の説明及び質疑が行われ、同日外務委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、五月十一日に河野太郎外務大臣から提案理由の説明を聴取し、同日、十六日及び本日、質疑を行いました。本日、質疑を終局し、討論の後、採決いたしましたところ、本件は賛成多数をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 討論の通告があります。順次これを許します。阿久津幸彦君。

    〔阿久津幸彦君登壇〕

阿久津幸彦君 立憲民主党・市民クラブの阿久津幸彦でございます。

 会派を代表して、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件に対し、反対の立場から討論いたします。(拍手)

 まず冒頭、政府・与党の傲慢きわまる政治姿勢、強引きわまる国会運営に触れざるを得ません。

 本協定に関しても、わずか三日間、たった六時間の質疑で、与党は委員会採決を急ぎましたが、外務大臣は来週不在です。野党の反対を押し切って緊急上程し、慌てて参議院に送ろうとするなど、何の説得力もない、与党の誠意に欠ける国会運営と言わざるを得ません。

 ここ数日の出来事だけ見ても、十八日に出すと約束した改ざん前の文書を出さない。そうなれば、大島理森衆議院議長との約束までもほごにすることになります。

 さらに、国会で証言すると言っている愛媛県知事を呼ぼうとしない。何かやましいことでもあるんですか。

 また、森友問題でも、廃棄したと繰り返し答弁されていた交渉記録が実はあると報道されているにもかかわらず、その存在をいまだに認めようとしない。

 さらに、一点の曇りもないと豪語したはずの加計問題でも、担当の内閣府幹部に車が提供された。しかも、公用車。またしても虚偽の報告です。

 さらには、セクハラ問題で謝ろうともせず、火に油を注ぎ続ける責任回避の財務大臣もいます。もううんざりです。

 TPP本体に関して言えば、内閣委員会でまだ議論が始まったばかりのTPP協定整備法案を、本日これから、事もあろうに強行採決するという話まで聞こえてきます。幾ら何でもひど過ぎるじゃないですか。

 与党がそんなことを考えているのであれば、まさに言語道断、国会軽視も甚だしい。国民は、こうした与党のおごりを決して許すことはありません。

 こうした最近の与党の横暴ぶりに改めて御忠告を申し上げ、本論に入らせていただきます。

 さて、委員会の審議内容を見ますと、この協定に必要な審議が十分に尽くされていないことを改めて強く指摘させていただきます。

 各党の質疑でも、乳製品や牛肉セーフガードのTPP枠の問題、経済効果分析における労働力補填の問題、医薬品に関する知的財産の問題、ISDS条項への我が国の姿勢等々、まだまだ議論を深めるべき点が指摘され、このほかにも、政府にただすべき点が数多く残されています。

 このような状況で、たった三日間の質疑での採決、ましてや、この本会議への異常とも言える緊急上程は、到底認められるものではありません。その上で、本件に反対する理由を申し述べます。

 まず申し上げたいのは、安倍総理は二年前、TPPは米国抜きでは意味がない、再交渉が不可能であるのと同様、根本的なバランスが崩れてしまうと述べていました。意味がないはずの米国抜きのTPP、それを実現させるのが本協定です。これは、かつての総理の発言に矛盾するものではありませんか。

 また、再交渉が不可能であるということについても、政府の答弁は、ガラス細工の中で変えるのは極めて難しいと、変化しています。委員会質疑でもこれらの点についてただされましたが、納得のいく説明はありませんでした。

 この変幻自在の口のうまさこそが、TPPへの国民の不信を増幅させているのではないでしょうか。

 こうしたTPPに関する政府のたび重なる方針転換、さらには情報開示への消極的姿勢、国民へのアカウンタビリティーの欠如もあり、TPPを推進する国民的コンセンサスは得られていません。

 国民の間にTPPに根強い懸念と反対の声があるにもかかわらず、政府は、国会審議の時間数、説明会の回数や公表資料のページ数を挙げ、丁寧な説明を行ってきたなどと主張しています。しかし、産業や生活への影響についての懸念は少しも解消されていません。

 経済効果分析においても、国内対策が行われない場合の農産物の生産に与える影響は示されていません。その国内対策も、農業については、次世代につながる政策としては不十分です。若手の農業従事者の方々の創意工夫と斬新な発想を生かしていく、農業の未来への投資としての国内対策が必要なのではないでしょうか。

 また、二年前の審議で政府から示されたノリ弁と称される黒塗りの資料。この間の審議で、政府から新たな情報は何ら示されませんでした。幾ら時間や回数を重ねても、国民の知りたい情報が十分に示されなければ、国民の皆さんが理解し得ないのは、当たり前のことじゃないですか。

 本協定では、十二カ国のTPP協定から二十二項目が凍結されていますが、その半分が知的財産関係です。我が国が誇るべきアニメ産業を始めとし、知的財産立国であるはずの我が国にとって、中国の存在なども念頭に置けば、こうした項目は我が国の国益として極めて重要であるはずです。しかし、本協定では、知的財産関係の十一項目が凍結されてしまいました。

 その一方で、米国が抜けた本協定で、国益に反し見直しが行われなかったものもあります。乳製品の七万トンのTPP枠や、牛肉のセーフガードの発動数量のTPP枠です。これについて政府は、米国のTPP復帰がなくなった場合には、本協定の見直し規定に基づいて協議を行うとしています。

 しかし、一旦この枠で利益を得た国々が枠の縮小に合意するとは考えがたく、米国から二国間交渉で新たな要求を突きつけられる可能性もあります。また、見直しを行う時期についても、政府は曖昧にしたままです。

 こうした状況で、どうして生産者を始め関係者の方々に、聖域を守りました、TPP交渉参加前の衆参農林水産委員会決議を守りましたと説明することができるのでしょうか。国民の生命財産を守る、国益を命がけで守るということが、我々政治家に与えられた使命ではないのでしょうか。

 以上が、本件に反対する主な理由です。

 改めて、本件の審議が極めて不十分であり、TPPに対する国民の十分な理解を得るには到底至っていないということを強く申し上げ、反対討論といたします。(拍手)

議長(大島理森君) 関健一郎君。

    〔関健一郎君登壇〕

関健一郎君 国民民主党・無所属クラブの関健一郎です。

 市町村別の農業産出額全国一位の愛知県田原市と全国九位の愛知県豊橋市から参りました。

 会派を代表して、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結、いわゆるTPP11について、反対の立場で討論をさせていただきます。(拍手)

 冒頭、申し上げます。

 我が国は、古くから、海外の先進的な文化、技術を積極的に取り入れ、独自のものへと昇華させ、世界に誇るべき発展を遂げてきました。第二次世界大戦後に目を向ければ、海外から原料を輸入し、付加価値をつけて製品を輸出し、そこから利益を上げる加工貿易で高度な経済成長を遂げたことからも、海外との自由な貿易が我が国の発展に大きく寄与していることは紛れもない事実です。

 四方を海に囲まれ、海洋国家としての繁栄を目指すべき我が国にとって、また、世界的に保護主義的な風潮が広まる中、自由貿易の拡大は、国際社会の一員として共有すべき価値観と言えます。

 しかし、今回のTPP11には、大きな問題があります。第一に、国民生活に大変大きな影響を与える重要な協定にもかかわらず、十分な審議がなされていないこと、第二に、米国が離脱し、前提条件が大きく変化したにもかかわらず、前の条件が変更されていないことで、大きく国益を損じる懸念があること、このことなどから、反対をせざるを得ません。

 まず、十分な審議が行われていないことについて申し上げます。

 TPP11は、言うまでもなく、国家の命運を左右する非常に重要な協定です。国民の皆様の毎日の暮らしや食卓にも大きな影響を与えるものであり、懸念や不安の声が上がっています。

 こうした懸念や不安を払拭するため、十分な審議を尽くさなければいけないことは言うまでもありません。ましてや、当初参加が想定されていた米国が離脱するという大きな前提の変化を受けて、食の安全、著作権の保護、医療制度、保険制度など、具体的な条件について、更に詳細な審議を深める必要があるはずです。

 しかし、条約と関連法案は不可分のものにもかかわらず、本会議や委員会での議論はばらばらに行われ、関連委員会との連合審査の機会をほとんど与えられないまま、わずか六時間の審議だけで質疑終局、採決が行われ、さらに、本来必要のない、委員長職権による緊急上程までが行われました。

 海洋国家日本が自由な貿易を加速させていくことの重要性は冒頭申し上げましたが、これだけの議論では、TPP11がいかに日本の国益にかなうのか不明であり、多くの懸念が払拭されていないことから、反対せざるを得ません。

 第二に、米国が離脱する前の条件が変更されていないことで、大きく国益を損じる懸念があることについて申し上げます。

 米国のトランプ大統領がTPPからの離脱を表明し、参加する国は当初の十二カ国から十一カ国に変更されたにもかかわらず、関税に関する合意内容は変更されていません。

 農林水産業について申し上げれば、米国が抜けたにもかかわらず、合意内容を見直すことなく、オーストラリアやニュージーランドなど他の農産物の輸出国を利するような合意では、国内の生産者から到底理解は得られません。

 具体例を挙げれば、加盟国全体に対する乳製品の低関税輸入枠の七万トンがそのまま残っていますが、これは米国が入ることを前提に取りまとめた数字です。米国が抜けた場合には、この輸入枠の削減に向けた見直しを行うということで合意を目指すべきでした。

 仮に米国が入らない状態でTPP11が施行され、輸入枠の七万トンが既成事実化した場合、この枠を下げてくださいという交渉に、利益を得たオーストラリア、ニュージーランドなど農業輸出国が応じるわけがありません。

 また、畜産の経営の安定に関連して、牛肉、豚肉の販売価格が生産価格を下回った場合に差額を補填するマルキン対策について意見を述べさせていただきます。

 TPP11の発効に合わせて、牛肉と豚肉の補填割合を八〇%から九〇%に引き上げることが関連の法律案に組み込まれています。TPP11で影響を受ける畜産農家の支援措置として当然のことと言えます。

 しかし、現状を見ると、牛マルキンについては、今年度予算措置として補填割合の引上げが既に行われています。その一方で、豚マルキンに関しては八〇%のままです。整備法の中では、協定の発効日が施行の日になることから、現状では、いつ豚マルキンが九〇%になるのかわかりません。

 そこで、整備法から牛、豚のマルキンを切り離して、来年度から確実に牛、豚の補填の割合を九〇%にし、畜産農家の経営安定を促進するための法律案を、野党五党一会派できのう衆議院に提出いたしました。与野党を超えて、深刻な影響が懸念される畜産農家に思いをはせ、真摯な議論をお願い申し上げます。

 そもそも、米、麦、牛・豚、乳製品、砂糖の重要五品目を含め、国内の農業に深刻な影響が予測される譲歩をしておきながら、多くの品目で関税撤廃や削減、関税割当ての導入拡大など、相当な譲歩が行われ、守るべきものを守るとした政府の方針が貫かれているとは言えません。平成二十五年の衆参の農林水産委員会決議に違反していることは明白です。

 また、総合的なTPP等関連政策大綱に基づく国内対策が農林漁業者の不安を払拭するのに十分とは思えません。経営規模の拡大や施設の整備を行おうとする担い手農業者への支援が中心で、家族経営や小規模農業者への対策は不十分と言わざるを得ません。

 総理を始め閣僚の皆様方は、しばしばTPP11の合意内容を、各国が調整してつくり上げた繊細なガラス細工に例えておられます。十一カ国の複雑な利害関係の重なりの中でつくり上げた繊細なガラス細工は、一部を取り出して変更することができるものではないと認識をしています。交渉の当事者の多くの皆様の大変な御苦労の積み重ねを象徴した言葉が、この繊細なガラス細工という例えなのだと推察いたします。

 今回緊急上程されたTPP11は、米国が抜け、まさにバランスが崩れた繊細なガラス細工です。経済規模や経済効果が激減し、何がメリットか、極めて曖昧になっています。

 総理は、おととし十一月、TPPは米国抜きでは意味がない、再交渉は不可能であると同様、根本的な利益のバランスが崩れてしまいますと発言されています。非常に重要な御指摘と存じます。

 そのバランスが今、崩れています。

 まだまだ議論すべき論点が多く残っている中、この段階で結論を急ぐ政府・与党の提案には反対せざるを得ません。TPPに対する国民や農林漁業者の不安や懸念は全く払拭されていないことを指摘させていただきます。

 最後に、米国がTPPの再交渉に入る際、既に取りまとめられた条件の変更を求めてくる可能性がありますが、政府におかれましては、そのような交渉には一切応じないことを強く要請し、私の反対討論を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 田村貴昭君。

    〔田村貴昭君登壇〕

田村貴昭君 私は、日本共産党を代表して、包括的・先進的TPP協定、TPP11に断固反対の立場から討論を行います。(拍手)

 私は、何よりもまず、今国会における審議のあり方に厳しく抗議をするものです。

 外務委員会における審議時間はわずか六時間にも満たず、食の安全、国民の命と暮らしを脅かす危険、投資家の利益を優先させるISDS条項、国内の農林水産業や雇用に対する影響など、本協定が抱える重大な問題について、いまだ審議は尽くされていません。内閣委員会で審議中の関連法案と一体に徹底審議すべきであり、採決するなど論外であります。

 もともとTPPは、二年前の国会で、圧倒的国民の厳しい批判にさらされ、国会審議のさなかにアメリカが離脱したにもかかわらず、与党が採決を強行したものです。その後、日本政府は、米国に対して盛んにTPPへの復帰を働きかけてきました。TPPを丸ごと組み込むとしているTPP11は、国会決議に真っ向から反するものであり、断じて認めることはできません。

 たび重なる国会決議は、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の重要五項目を関税撤廃の交渉から除外することを明確にしてきました。にもかかわらず、TPPでは、重要五項目のうち三割の品目で関税を撤廃、牛肉・豚肉では七割の品目で関税が撤廃されます。国会決議違反のこうした内容に対して、TPP11では凍結要求することさえ一切行われていないのであります。

 そもそもTPPは、国境を越えてもうけを追求する多国籍企業の活動を後押しするものです。関税を撤廃し、食品の安全基準を低めるなどの規制緩和を行おうとするその本質はそのまま維持されているのであります。米国がTPPに復帰しなくても、米国や日本の多国籍企業によるもうけ最優先の身勝手な活動を更に後押しするものにほかなりません。

 だからこそ、四月の日米首脳会談で、日米の新たな経済協議の枠組みをつくるとしたことで合意したことは、極めて重大なのであります。

 TPP交渉で譲歩をした線をスタートとして、日米FTA交渉で際限のない譲歩を迫られ、米国第一を掲げるトランプ政権の身勝手な対日要求の受皿とされる危険は明らかであります。米側は、USTRの外国貿易障壁報告書をもとに強力な取引を進め、牛肉や米、乳製品を含む農産物など、TPP以上の要求を突きつけてくることは明白であり、断じて容認できません。

 今求められるのは、各国の食料主権、経済主権を尊重した平等互恵の経済関係を発展させる道に進むことだということを強く主張し、反対討論を終わります。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時四十分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       財務大臣    麻生 太郎君

       総務大臣    野田 聖子君

       外務大臣    河野 太郎君

       農林水産大臣  齋藤  健君


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