衆議院

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第29号 平成30年5月24日(木曜日)

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平成三十年五月二十四日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十三号

  平成三十年五月二十四日

    午後一時開議

 第一 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部を改正する法律案(総務委員長提出)

 第二 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案(内閣提出)

 第四 エネルギーの使用の合理化等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第五 消費者契約法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 厚生労働委員長高鳥修一君解任決議案(辻元清美君外六名提出)

 日程第一 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部を改正する法律案(総務委員長提出)

 日程第二 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案(内閣提出)

 日程第四 エネルギーの使用の合理化等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第五 消費者契約法の一部を改正する法律案(内閣提出)


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

田野瀬太道君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 辻元清美君外六名提出、厚生労働委員長高鳥修一君解任決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(大島理森君) 田野瀬太道君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、日程第一に先立ち追加されました。

    ―――――――――――――

 厚生労働委員長高鳥修一君解任決議案(辻元清美君外六名提出)

議長(大島理森君) 厚生労働委員長高鳥修一君解任決議案を議題といたします。

 提出者の趣旨弁明を許します。柚木道義君。

    ―――――――――――――

 厚生労働委員長高鳥修一君解任決議案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔柚木道義君登壇〕

柚木道義君 私は、国民民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました厚生労働委員長高鳥修一君解任決議案について、提案の趣旨を説明いたします。(拍手)

 主文、

  本院は、厚生労働委員長高鳥修一君を解任する。

以上であります。

 以下、その理由を申し述べます。

 私は、個人的には高鳥委員長のことを、大変に私淑、敬愛申し上げております。しかしながら、職責の果たし方には、以下るる申し述べます問題が数多く、また強く問題があるために、以下、一個一個指摘をさせていただきます。

 昨日の日大アメリカンフットボールチームの監督やコーチの会見に、多くの批判が上がっています。コーチは、相手チームのクオーターバック、つまりチームの司令塔、最初のプレーで潰せとの指示を認めました。しかし、昨日の会見では、ルールを守ってやるのが基本と、現場の選手に責任を押しつけるような発言に多くの批判が出ています。

 仮に、監督やコーチが、ルールを守ってやるのが基本と事が起こった後に釈明をしても、実際には、現場の選手は、監督やコーチからの指示や言葉をそんたくして、忠実に任務を実行し、結果として相手選手にけがをさせるタックルを行い、その後もそうしたプレーを続けたため、結局退場となってしまいました。

 これは、一連のモリカケ問題、そしてこの厚生労働委員会では、裁量労働データの捏造、野村不動産過労自殺の隠蔽、さらに過労死家族会と加藤厚生労働大臣との面会発言資料の、高プロの削除部分だけを削除するなどの改ざんなどと同根の問題ではないでしょうか。つまり、安倍総理はうみを全て出し切ると言われましたが、そもそも、うみのもとは安倍総理御自身ではないでしょうか。

 昨日新たに公表した、財務省における学校法人森友学園への八億円もの国有地値引き売却をめぐる問題で、新たに一千ページにも及ぶ学園側との交渉記録を調査、提出、公表。その中には、安倍昭恵夫人知人の相談を受け照会とあり、まさに文書改ざんの目的が昭恵夫人隠し、つまりは安倍総理隠しであることがより鮮明となりました。

 しかも、昭恵夫人隠し、安倍総理隠し、さらには籠池夫妻隠しまでも行われているとの疑念がありますが、その籠池夫妻隠しに対しては、昨日大阪地裁が仮釈放を決定するも、なお大阪地検が籠池夫妻隠しと疑念を持たれかねない、まさに大阪地裁の仮釈放に準抗告をするという事態が起こっています。

 また、愛媛県の文書公表による安倍総理と加計学園の理事長との二〇一五年二月二十五日面会で安倍総理がそういう新しい獣医大学の考えはいいねとコメントしたとの報道も、安倍総理は面会を否定されましたが、その根拠は、総理官邸への入館記録が、廃棄しているために単に面会を確認できないだけで、何ら会っていないことの証明にはなっておりません。むしろ、愛媛県知事の言われる、愛媛県は何も改ざんする必要はない、公表した文書はありのままとの言葉と、安倍総理の言葉と、国民の皆様はどちらがうそでどちらが本当かはおのずと判断をされると思います。

 さらに、厚生労働委員会の問題であります。

 裁量労働データの捏造、野村不動産過労自殺の隠蔽、さらに、過労死家族会、きょうも傍聴席においでです、過労死家族会と加藤厚生労働大臣との面会発言資料の一番の思いの肝である、一番の思いの肝である、過労死や過労自殺をふやしかねない、過労死を合法化……(発言する者あり)委員長、とんでもない心ないやじが飛ぶので。

議長(大島理森君) 続けてください。

柚木道義君(続) 冒涜ですよ。あなたたちは、ではどこまで過労死家族会の声を聞かれたんですか。

 過労死家族会の皆さんのその思いを、文書まで改ざんをして厚生労働委員会に提出をしました。これらは全て、安倍総理がこの国会を働き方改革国会と銘打ったため、何としても働き方法案を通すことを、厚生労働省の現場はもとより、加藤大臣、さらには、今般、高鳥厚生労働委員長までもが安倍総理をそんたくして、今般新たに、不適切データが全体の二割、二千五百件にも及ぶ大量の労働時間調査データの削減問題も、原因の究明、説明の責任も果たさないままに強行採決を企図した疑念が強まり、これだけでも重大な解任の理由となり得ます。

 加えて、委員長解任決議案提出への理由の一つは、まさに昨日の厚生労働委員会での強行採決を企図した目的の疑念にあります。

 あたかも、安倍政権与党において、モリカケ問題の新たな疑惑、イラク自衛隊日報隠蔽問題の調査の公表、そして働き方法案の強行採決と、仮に一日のうちにこの疑惑の一括セット公表と強行採決が行われれば、一つ一つの国民への悪印象を薄めて、一日でまとめて終わらせて、その後、安倍総理は外遊に旅立たれ、国民の皆様が忘れるのを期待する。

 実際に、昨晩の報道は、日大監督、コーチの会見に隠れ、一つ一つの報道は小さな扱いとなり、まんまと印象操作は成功したかのように見えますが、そのような国民を欺くようなやり方を主導したとの疑念、このまさに疑念を持たざるを得ない厚生労働委員長の責任は極めて重大で、まさに委員長解任に値するものと言わざるを得ません。

 第一に、今国会、衆議院厚生労働委員会での高鳥委員長の委員会運営の問題について、以下、申し上げます。

 高鳥委員長のもとで、委員長職権での委員会立てなどは、何と十二回にも上ります。さらに、野党が出席をできない状況で、政府・与党で審議を強行する空回しも、合計十七時間二十三分にも及んでいます。

 委員会運営の問題については、厚生労働委員会から政府に対する資料要求にしても、積み残しが残り、昨日段階で、まず、裁量労働制データ作成の経緯。次に、労働時間の精査結果の統計的な検証結果。三点目、労災認定に当たり、労働時間の把握が困難だった事例の類型。四点目、夜間勤務の健康への影響についての資料。五点目、大臣との面会における過労死家族会の主な概要、これは隠蔽、改ざんされたものが出てきています。そして、五月二十三日、昨日の理事会提出資料を労政審へ差し戻す。さらには、労働時間等実態調査の精査結果の異常値を改めて精査。以上、七つもの事項が積み残しになっています。

 さらに、私たち野党が要求している次の項目についても、高鳥委員長は、残念ながら、いまだに対応されていません。

 一つ、昨年十月に、東京労働局が野村不動産の労災認定を行い、方針を固めたことに関連する黒塗りの資料について、一部でもマスキングを外せないか。二、厚労省が五月二十一日に提出した労働時間調査の精査結果について、異常値があるのではないか。三、労働時間調査について、委員会で指摘した十件に加えて、更に不適切なデータがあるのではないか。

 このように、厚生労働委員会での資料要求や野党要求がたなざらしになっていること、これはまさに高鳥委員長の重大な責任でございます。

 更に指摘すべきなのは、厚生労働委員会での仕切りです。

 今国会で加藤厚生労働大臣は、わざとすれ違い答弁を繰り返して、答弁するふりをしながら、肝心なことには答えないという姿勢を繰り返しました。高鳥委員長は、これを本来ならば、ただして、改めさせて、答えさせるべきところを、見過ごして、すれ違い答弁を放置したまま審議を続けることが多数ありました。

 高鳥委員長は、このように加藤大臣が繰り返すすれ違い答弁を放置し、質問をはぐらかす加藤大臣の答弁を結果的に容認、黙認しています。委員長として、質問者の質問に対して誠実に答えない大臣答弁があった場合には、これをやめさせて、質問に対して正面から答弁させるように指導していくのは当然のことであります。

 また、高鳥委員長の委員会設営の問題点の第二は、さまざまなデータへの対応が不十分な点です。

 まず、働き方改革法案の審議は四月から始まりましたが、ことしの二月、働き方改革法案の議論のもとになった裁量労働データについて疑わしい点が多数明らかになったため、このデータを調べた監督官の調査手法について調べると厚労省は約束をしておりました。しかし、法案審議に入ってもその回答がまだ出されておりませんし、不十分なままの回答でございまして、高鳥委員長は、法案審議入りの条件として、厚労省に調査手法についての確認を行うように働きかけて当然のところですが、残念ながら、委員長にはその努力が見えません。

 また、働き方改革法案の審議では、裁量労働制の労働者の方がそれ以外の通常の労働者の労働時間よりも短いというおかしな結果が示されるなど、この調査に多くの問題があることが明らかになり、これも原因として、法案から裁量労働制を拡大させる条項が削除されました。

 さらに、厚労省もこのデータについてみずから再調査をして、先ほど申し上げた約二割ものデータを削除する。統計の信頼性、妥当性にも大きな疑義が生ずる前代未聞のことが起こりました。

 法案審議は、正しいデータ、正しいエビデンスに基づいて議論しなければなりません。法案のもとになるデータが誤っているなら、前提がひっくり返るのですから、法案審議は労政審から当然やり直さなければなりません。

 言うまでもありませんが、委員会で正しいデータに基づいた議論を進めるようにするのが、議会の議論を交通整理する委員長の役割ではないでしょうか。

 第三に、野村不動産で裁量労働制の対象となっていた従業員の過労自死と東京労働局による特別指導に関する加藤厚生労働大臣のミスリードも放置したままです。

 野村不動産で裁量労働制が違法に適用されていたことが明らかになり、昨年十二月、東京労働局が前例なき特別指導に入りました。加藤厚労大臣は、野村不動産について、しっかり監督指導を行っているところでありますと、あたかも成功事例かのように答弁をされました。ところが、特別指導を公表した十二月二十六日その日に、野村不動産の過労死認定もされていました。

 つまりは、長年、東京労働局は野村不動産の裁量労働の違法を放置して、過労死が見つかって初めて特別指導したのです。加藤大臣は、過労死が起きてから初めて裁量労働の違法を取り締まったのに、それを隠して、しっかり監督指導を行っていると答弁していたのです。

 高鳥委員長は、野村不動産の裁量労働制の違法適用、過労死、特別指導についての加藤大臣のミスリードを放置したまま、東京労働局と厚生労働省の問題追及にむしろブレーキをかけたと言っても過言ではありません。委員長として不適格だと言わざるを得ません。

 第四に、高度プロフェッショナル制度についてのエビデンスなき厚生労働省の議論を黙認していることも大問題です。

 私自身も、また、多数の野党委員の皆さん、場合によっては与党の方からも質問がありました。多くの野党の議員が、法案から高度プロフェッショナル制度を削除するように求めました。

 ちなみに、この高度プロフェッショナル制度は、高度な専門性を持つ専門家などに、時間で縛らず自由に働けるという大義のもと、労働時間の規制を外し、休日や深夜の時間外労働の残業代をゼロにして、定額働かせ放題ができる制度です。

 しかし、例えば、四週間で最初の四日間さえ休ませれば、あとの二十四日間は休日も時間制限もないわけですから、二十四時間ずっと働かせるという究極の定額働かせ放題という、とんでもない制度であることが法案審議の中でも明らかになりました。裁量労働制以上に労働時間規制から外れ、働かせる側にとって都合のいいことずくめですが、この対象になった労働者からは過労死が続出しかねません。

 高鳥委員長は、労働者の命にかかわる高度プロフェッショナル制度の導入についても、厚生労働省の非常に不十分なエビデンス、情報開示をもってよしとしています。最重要の論点であるにもかかわらず、高鳥委員長の政府、厚生労働省寄りの偏った姿勢は、まさに委員長としては不適格だと言わざるを得ません。

 安倍総理は、本日から二十七日日曜日まで、ロシアなど海外出張に行かれるとお聞きをしておりますが、昨日、厚生労働委員会では、安倍総理出席の質疑後の質疑について、高鳥委員長は、委員長職権で開会を強行、決めるなど、野党側に対して強行採決を想起させるような運営を行ったことは、重大な瑕疵と言わなければなりません。私自身も、用意していた質問項目を一つ一つ丁寧に質疑、確認していくことも困難な状況に陥り、他の委員の皆さんも同様な状況に陥りました。

 その中でも、全国過労死を考える家族の会、きょうもおいででございます。その家族の会の皆さんは、一昨日の参考人質疑の中で、代表の寺西笑子さん始め五人の方が、自分たちが愛する家族を過労死で失い、地獄の苦しみを味わうのは私たちだけでたくさんです、過労死防止のために、私たちは残りの人生の全てをかけて活動しておりますという趣旨の面会要請を安倍総理にお出しをしていました。

 一週間もたなざらし、放置をしたあげくに、安倍総理からの御答弁は、所管の厚生労働大臣が受けるとあっけない一言で、あくまでも、過労死家族の会の、ぜひとも私たちの声を直接お聞きいただきたく、面会を切にお願い申し上げますという、本当に悲鳴にも似た叫び、面会要請を拒絶されました。

 家族会の皆様は、この間、毎回の委員会質疑を傍聴され、一昨日、昨日と、官邸前に、そうでなくともすぐれない体調を押して、座込みを、演説を行い、その間の安倍総理、先週の金曜日の夜には、この面会要請を直接報告を受けておられます。その後の首相動静を見れば、私が見た限りでは、安倍総理がお会いできるタイミング、チャンスは何度かあったと思います。

 おまけに、昨日は、加計学園理事長とこれまで十九回の面会、三年前にも、十五分面会して、そういう新しい獣医大学の考えはいいねとコメントした、愛媛県文書で明らかになった問題も大きな論点となったわけですが、加計理事長とは十九回、あるいは短時間でも面会はできても、過労死家族会の皆様とは面会拒絶とは、余りにも冷たい姿勢ではないでしょうか。

 安倍総理出席の質疑の傍聴に直接足を運べば、総理出席質疑の後に、ほんのわずかでも、ほんの少しでも面会できるかもしれないとの一縷の望みにかけて、昨日も総理の答弁を固唾をのんで聞いておられた過労死家族会の皆様の落胆の様子が質疑席から見てもわかるほど、本当に気の毒な御様子でございました。

 これについても、本来、高鳥委員長は、この議論を仲裁して、安倍総理と過労死家族会の皆様との面会を仲介し、理事会室を提供するなど、面会の仲介を果たすぐらいのことが望まれる場面でありました。実際に、委員から、委員長からのお許しがあれば、理事会室をお借りして短時間でも面会していただきたいと、切なる要請が質疑でもあったわけであります。

 委員長としては、両者が合意すれば理事会室での面会をあっせんすることが求められる場面でもあったわけですが、残念ながら、高鳥委員長はこうした調整力を発揮されることもなく、安倍総理は過労死家族会の皆様と面会することもなく、外遊へ向かってしまわれることになりました。

 安倍政権与党は、高度プロフェッショナル制度の事後撤回を可能とするという法案修正を出してまいりましたが、残念ながら、これには何ら実効性を伴いません。対象範囲も、このままでは、ともすれば法案の強行採決の後に、法律が施行された後になって省令で決めることになります。

 現実的には、自分の裁量で仕事の量、仕事の内容を選べる人などは、極めて限られた方しかおられません。会社に同意を求められたら断れない、断ったら不利益変更され、場合によっては職まで失ってしまう。私たちは、そうした状況に追い込まれ、おまけに心身ともに健康を害し、命まで失ってしまわれた方々、その御家族のお話を、これまで多くの方々からお聞きしてまいりました。

 安倍総理は、あるいは政権与党の皆さんは、そうした方々の悲痛な叫び声に、声なき声に、これまでどれだけ向き合ってこられたのでしょうか。

 一昨日、厚生労働委員会の参考人意見陳述において、愛する家族を失い、そのことで、生涯、なぜとめられなかったのか、命を失うぐらいだったらなぜ仕事をやめることが、やめさせることができなかったのかと自身を責め続けながら、同じ苦しみ、悲しみを二度と味わってもらいたくないと、全国過労死家族会の寺西代表を始め、出席された五人の方々はこうも述べておられます。

 裁量労働制あるいは高度プロフェッショナル制度、これは実際に家族を失った私たちでなければわからない。高度プロフェッショナル制度を事後で断れるとか、全く違う。アリの一穴になるのは過去の経緯からも明らか。過労死なのに自己責任、勝手に働いて勝手に死んだ、労働時間管理もなくなる、だから過労死しても過労死認定すらされなくなる。したがって、制度上の過労死はなくなって、実際の過労死はどんどんふえてしまう。おまけに泣き寝入りをして路頭に迷う家族がふえる。家族の中には幼い子供たちも出ます、つまり遺児もふえてしまいます。たとえ労災が認められても、死んだ人は決して、二度と帰ってこない。

 安倍総理は、本会議で、生活困窮者支援法審議の際に、この場で、御自身はお金に困ったことはないと率直に述べられました。それならば、せめて、家族が突然過労死をしてしまって、路頭に迷う、お金に困ってしまう人が出るかもしれないこの法律を強行する、そんなことをやめていただきたい。困ってしまわれている方、困ってしまわれる方への共感力や想像力をお示しいただきたい。

 そして、政権与党の皆さん、このような、本当に過労死で、過労自殺で、突然、突如に家族を失ってしまった方々が大反対をしている過労死合法化法案の強行採決をしないでいただきたいと遺族会の方はおっしゃっています。

 実は、四年前の昨日は……(発言する者あり)実は、四年前の昨日、高鳥厚生労働委員長への解任決議案を提出した昨日は、過労死家族会の寺西代表を始め、家族会の皆様は喜びの涙に暮れた日でありました。それは、過労死防止法が与野党全会派賛成で、まさに昨日、安倍総理が出席をされた衆議院厚生労働委員会で可決した日でありました。よもや四年後の同じ日に、それと真逆の法案の強行に反対するために同じ場に来ようとは夢にも思わなかったと御遺族の皆さんはおっしゃっています。

 安倍総理からは遺族会の皆さんの心の底からの面会要請を拒絶され、過労死家族会の皆さんが委員会室の外に出ると、雨が降っておりました。それでも家族会の皆様は、一昨日に続いて昨日も、涙雨の中、安倍総理への面会を求めて、体調を崩されておられる方もおられる中で、総理官邸前で……(発言する者あり)過労死の御遺族の方におっしゃったらどうですか、杉田さん。遺族会の方に言われたらどうですか。

議長(大島理森君) 柚木君、やじに応えず、自分の発言をしなさい。

柚木道義君(続) 過労死家族会の皆様は、一昨日に続いて昨日も、涙雨の中、安倍総理への面会を最後の最後まで、海外へ行かれる前に少しの時間でもと求め続けて、体調を崩される方々もおられる中で、官邸前で、どうか、せめて過労死や過労自殺をふやすこの法案から高プロ部分の削除を求めて、面会を求めて、そして、十一年前に安倍総理がホワイトカラーエグゼンプション、今の高プロ制度を断念されたことと同様に、どうか面会をいただければ、その部分だけでも削除いただけるのではないかと、そう思って、思い定めて、座込みを続けられたのです。

 こうした状況を……(発言する者あり)大臣面会は過去に行っていて、厚生労働大臣は、しかも、一番心の底から訴えた高プロ制度の削除のところを、文書を改ざんされて我々委員に報告されているんですよ。だから厚労大臣ではだめで、安倍総理に直接面会を求めているんですよ。

 同じく過労自殺で、わずか二十四歳、とうとい命を奪われた高橋まつりさんのお母様が……(発言する者あり)高橋まつりさんのお母さんが、過労死家族会の寺西笑子代表らが参考人質疑で本当に心の底からの思いを述べられた直後に、ツイッターにこのように連続投稿されています。

 聞いて。お願い。全国過労死を考える家族の会の寺西笑子代表世話人は、長時間労働に陥り過労死の発生を促進する危険性が非常に高い、過労死をしても自己責任になる仕組みになっていると心の底から訴えました。

 お願い。皆さん力になって。大切な家族は戻ってこないのに、今生きている人たちを守ろうとしています。どうして言葉が伝わらないの。何人死ねばわかるの。まだ犠牲者が足りないの。

 どうして日本では過労が原因で死ななきゃならないんですか。あんなにたくさんの残業をさせられたから、まつりは死んだの。佐戸未和さん、寺西さん、中原さん、西垣さん、桐木さん、工藤さん、書き切れないほどのたくさんの人が死んだの。

 誰か一人でも生き返らせることができますか。死んだら生き返らせることはできないよ。時間は取り戻すことはできないんですよ。二度と会えないよ。二度と抱き締めることはできないよ。二度と笑い合えないよ。おいしいものをつくっても食べさせてあげられないよ。悲鳴のような言葉ばかりがあふれる。

 これが、昨年の二月二十一日、安倍総理が実際に会われて、高橋まつりさんのお母様である幸美さん、二度と、過労死、過労自殺、二度と悲劇を繰り返さない、そう約束したまつりさんのお母さんがこのような高プロ制度に大反対の声を上げておられるんです。

 その高橋まつりさんのお母さん、もちろんまつりさんに対しても、安倍総理は結局うそをついたことになりませんか。そして、一昨日、衆議院厚生労働委員会で過労死家族会の寺西笑子さんら五人が参考人意見陳述をされましたけれども、全国過労死家族会の皆様の思いも踏みにじったことになりませんか、安倍総理は。

 もとより、我々野党は、働く皆様の立場に立った、労働時間上限規制やインターバル規制の強化、過労死、過労自殺の原因ともなる、高橋まつりさんもそうでした、おまえの残業代は会社にとって無駄だ、もっと女子力を磨け、こういったハラスメント対策、今問題になっているハラスメントですよ、こういうハラスメント対策などについても対案を提出して、働く皆様やその御家族とともに、ビジョン、ソリューションを提示しております。必要なのは、労働者の主権強化のもとでのさまざまな改革です。

 昨日の安倍総理との質疑を通じて明らかになったのは、残念ながら安倍総理は、そうした働く皆さん、あるいは家族を過労死や過労自殺で失った皆さん、そういった皆様の声を聞くこともなく、また、本当に切なる面会要請も、ほかの、自分のお友達とはお会いになられても、本当に命をかけて過労死をなくそうとされている方々とは面会すらされない、そのような本当に冷たい政権の態度が明らかになっています。

 これでは一体誰のための働き方改革なのか。経済界から言われたから、生産性を上げるためなら過労死や過労自殺が出ても仕方がない、これでは、働き方改革ではなく、働かせ方改革ではないですか。国民をミスリードする、働き方改革国会などと耳ざわりのいいことは金輪際言わないでいただきたい。まさに働かせ方改革国会が今強行されようとしています。

 そして、こうした安倍政権の姿勢をとめるどころか、逆に、容認、後押しする厚生労働委員長の姿勢は断じて認めることはできません。

 まさに、それゆえに、万感の抗議を込めて、厚生労働委員長解任を求めるものであります。

 しかし、最後に、まだ採決までは時間が残されています。働き方法案の採決までにはまだ時間が残されています。

 安倍政権与党の皆様が、十一年前、あの安倍政権下、第一次安倍政権下で、今の過労死家族会の寺西笑子さんたちの先輩たちが、必死の思いで、愛する家族を突然に過労死、過労自殺で失う悲しみを二度と繰り返さないでと、当時のホワイトカラーエグゼンプション、今で言う高度プロフェッショナル制度の導入を最終的に安倍総理は断念されました。

 どうか、安倍政権与党の皆様、まだぎりぎり間に合うのです。今般の厚生労働委員長の委員会の設営、運営を改め、そして、労働時間上限規制やインターバル規制の強化、ハラスメント対策部分の強化などの内容の法案は成立をさせ、高度プロフェッショナル制度部分を削除して法案を成立させる、そのための委員会運営を文字どおり公正中立に行っていただける委員長を改めて選任をする、そのことを切にお願いを申し上げ、立憲民主党、国民民主党、そして無所属の会、日本共産党、自由党、社民党を代表しての高鳥厚生労働委員長解任決議案の趣旨説明といたします。

 終わります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 討論の通告があります。順次これを許します。橋本岳君。

    〔橋本岳君登壇〕

橋本岳君 自由民主党の橋本岳でございます。

 私は、自由民主党及び公明党を代表し、ただいま議題となりました厚生労働委員長高鳥修一君解任決議案に断固反対する立場から討論を行います。(拍手)

 この通常国会は働き方改革国会であります。安倍政権は、二年前に一億総活躍プランにおいて働き方改革の実行を力強く宣言をし、労使双方のトップを含めた働き方改革実現会議における議論などを積み重ねてきました。

 この国会では、いよいよその中核となる関連法案を審議し結論を得ることが各界から強く期待をされております。また、そのほかにも国民生活にかかわる多数の法案が提出されており、それらについても速やかに審議を進めることは、国民の負託を受けた我々立法府の重大な使命であります。

 一方、残念ながら、裁量労働制に関する不適切なデータの比較や、そのもととなった調査のずさんなデータ処理、東京労働局長の記者会見における不適切な発言、さらには日本年金機構における不適切な業務委託やそれに起因する正しい額の年金支給の遅延など、厚生労働省に関連することだけでもさまざまな問題が政府において発生し、ないしは発覚をした国会でありました。与党である私たち自由民主党としても、まことに遺憾なことであります。

 さて、厚生労働委員長高鳥修一君は、人格は高潔にして冷静沈着、障害者福祉の向上に情熱を傾け、空手、合気道、居合など武道をたしなみ、日本文化を愛する快男子であります。

 委員長としては、この難しい国会において、就任冒頭の発言のとおり、公正かつ円満な委員会運営に全力を尽くしてこられました。

 諸課題については、野党の要求のとおりに、昨日の総理入り質疑を始め、集中審議や補充質疑、参考人質疑や視察も行いました。資料要求についても、他委員会では類を見ない、長時間に及ぶ理事会や理事懇談会を開いて与野党の協議の機会を設け、政府に提出させるよう求めました。さらに、質疑中に疑義が生じた際、与党理事が質疑続行を求めていても、毎回速記をとめ、理事同士の協議を丁寧に促すなど、むしろ与党側から不満が出かねないほど野党の皆さんにも配慮をし、円満な委員会運営に懸命に努めておられました。

 その上で、なお与野党の合意点を見出すことができない場合や、あるいは、維新の会以外の野党の皆さんがゴールデンウイークを挟んで長期間欠席をされたため合意のしようもない場合に、やむを得ず委員長の判断で委員会の運営を進めたこともありました。しかし、これは厚生労働委員長としての職責を真摯に果たしただけのことなのであります。

 自分たちが欠席をした結果について、その責任を委員長に転嫁するかのごときこの決議案は、決して国民の理解を得られるものではありません。

 この決議案を提出された野党の皆様に申し上げたい。

 今国会において、野党共同の議員立法として、生活保護法等の一部を改正する法律案が提出をされました。去る四月二十日の委員会において、我が党の国光あやの議員がこの法案に対して通告どおりに質疑しようとしたところ、委員会開始時点では答弁席におられた、提出者の一人である立憲民主党のある議員が途中で退席し、質問ができないという事態がありました。

 既に維新の党を除く野党の方々は全員欠席されていた中で、答弁のために一人で出席されたこの議員の勇気と責任感について、私は率直に評価をいたします。しかし、誰かが指示をして、党利党略のために退席させたと受けとめざるを得ません。

 法案を提出し賛同を呼びかけておきながら、提出者が答弁を放棄していなくなるなど、前代未聞であります。断固抗議をし、猛省を促します。

 野党の皆さん、皆さんは、国会の権威を一体どれだけ軽く考えておいでなのでしょうか。皆さんは安倍内閣を厳しく批判されますが、この内閣には委員会の途中に答弁を放棄して……(発言する者あり)

議長(大島理森君) 御静粛に。

橋本岳君(続) いなくなる閣僚など一人もいません。むしろ、出席どころか答弁まで放棄する今の無責任な野党には、高鳥委員長の解任決議案を提出する資格など全くないと断じざるを得ないのであります。

 どうやら指摘が図星のようで、たくさんやじをいただいておりますが、以上の理由から、的外れで身勝手で不当としか言いようのない、高鳥修一厚生労働委員長の解任決議案には断固反対であると再度申し上げ、心ある議員各位には、こぞって青票を投じていただくよう訴え、私の反対討論といたします。(拍手)

議長(大島理森君) 吉田統彦君。

    〔吉田統彦君登壇〕

吉田統彦君 私、吉田統彦は、ただいま議題となりました厚生労働委員長高鳥修一君の解任決議案に対して、立憲民主党・市民クラブを代表して、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 冒頭、まず申し上げます。

 昨日、財務省と防衛省から、疑惑のてんこ盛りのごとき大量の文書が出されました。行政府が立法府を欺き続けた証拠そのものです。

 これを一日でまとめて出してしまうというのも全くもって不誠実きわまりない姿勢と思いますが、問題は、一体誰が落とし前をつけるのかという話であります。

 昭恵夫人付職員がわざわざ照会に及んだ責任は誰がとるのか。財務省の改ざん、隠蔽……(発言する者あり)

議長(大島理森君) 御静粛に。

吉田統彦君(続) セクハラの、あのていたらくの責任は誰がとるのか。防衛省の日報問題の責任は誰がとるのか。もはや自明の話ではないですか。

 さらには、うみを出し切ると言いながら、うみの親たる安倍総理は何か誠実に説明をしたのでしょうか。そうした政府の姿勢をただただ容認する与党の姿勢は一体何なんですか。

 さらには、愛媛県が出した文書への政府の対応も許しがたいものがあります。愛媛県は、参議院からの要求に誠実に応え、全ての文書を迅速に御提出なされました。翻って、政府の対応は何事でしょうか。記憶にないと言っても、記録はあるんです。愛媛県が財務省のように隠蔽、改ざんを行う理由など全くありません。これ以上うそにうそを重ねるようなことはやめていただきたい。冒頭、厳しく指摘をいたします。

 さて、高鳥修一厚生労働委員長、民主主義とはどのようなものかおわかりですか。真っ当な議会、委員会運営とはどのようなものかおわかりですか。重要法案に対する不十分な議論で重要な論点を骨抜きにされ、落胆している国民に対する贖罪の念はありますか。

 今国会における厚生労働委員会の運営では、憲政史上まれに見る暴挙の数々が見受けられます。国権の最高機関である国会の権威を失墜せしめる高鳥委員長の行為は断じて容認できません。

 平成三十年四月二十五日、この日のことを覚えていますか。職権による理事会、委員会の開催を強行し、さらに、野党に同意を得ることなく、生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案の採決を強行した日です。十分な討論の時間もなく採決されたことによる、生活に困窮する方々、そして国民の嘆きがあなたには聞こえますか。もし聞こえているのなら、真っ当な政治家でありましょう。もし聞こえていないのなら、政府に操られたそんたく人間でしかありません。

 次に、政府・与党が強行採決した本法案に関して申し上げます。

 平成二十五年に生活保護法の改正と生活困窮者自立支援法の制定が行われ、生活困窮者の社会参加及び就労を通じて生活の向上を図る第二のセーフティーネットである生活困窮者自立支援制度と最低限度の生活を保障する最後のとりでとしての生活保護制度との連携による新たな生活困窮者に対する支援体系が構築されました。

 しかし、一方で、近年の単身世帯の増加や高齢化の進展、地域社会との関連性の希薄化等の中で、孤立化した高齢の生活保護受給者が増加傾向にあるなど、前回の制度見直し以降においても、生活困窮者に対するさらなる多様な必要性が指摘される中で、本法案は、生活困窮者の自立、社会参加及び就労を促す極めて重要な法案です。

 安倍総理は、平成二十九年一月二十日の第百九十三回国会における施政方針演説において、どんなに貧しい家庭で育っても、夢をかなえることができる、そのためには、誰もが希望すれば、高校にも、専修学校にも、大学にも進学できる環境を整えなければなりませんと述べています。

 今、全世帯で七三・二%の子供が大学に進学しています。しかしながら、生活保護家庭に限定するなら三三%、そして、児童養護施設や家庭養護の子供に限定すれば二三・二%にすぎません。

 生活保護受給世帯の子供が大学等に進学する場合は、その子供分は生活保護費の給付の対象外とする、いわゆる世帯分離の取扱いが行われています。安倍総理の施政方針演説で述べられた思いが事実であるなら、給付型奨学金の活用や学費の減免などの既存施策の拡大とともに、世帯分離という措置での大学進学ではなく、世帯内就学という形での事実上の生活保護世帯の子供の大学進学を認めるような運用に変えるべきであります。

 また、医療扶助のうち、医師等が医学的知見から問題のないと判断するものについて、後発医薬品の使用を原則とすることは、患者の医薬品を選択する権利や、そもそもの医師の処方権を奪うという側面があり、また、生活保護受給者に対してのみ後発医薬品を原則とするというのは差別であるととらわれかねないと考えます。

 このように、政府・与党が強行採決した本法案は、生煮えの議論のもとで、生活困窮家庭の子供たちの夢を奪い、差別社会を惹起しかねない問題を含む法案であります。それにもかかわらず、高鳥委員長は、職権を濫用し、五度にわたる空回し運営を行い、十分な議論のなされないまま、その後の強行採決という暴挙を招いた張本人です。

 また、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案はどうでしょうか。

 今国会の目玉法案であったにもかかわらず、政府・与党は、野党六党が欠席する中で、四月二十六日の予算委員会での集中審議を一方的に断行、四月二十七日衆議院本会議と、五月二日厚生労働委員会で働き方改革法案の審議入りを強行しました。

 今の政府・与党は、議会制民主主義における常識を持ち合わせない議員の集まりでしょうか。

 ずさんなデータをうのみ、いや、利用して、裁量労働制は労働時間短縮に資するとこじつけ、審議の誘導と世論喚起を行い、無理と我を通そうとした姿勢がまたもや透けて見えます。

 安倍総理は、本年一月二十九日の衆議院予算委員会において、労働時間について、裁量労働制の方が短いというデータもあると答弁しました。この安倍総理の答弁は、厚生労働省の労働時間等総合実態調査のデータがよりどころになっていました。

 ところが、この調査方法及び結果が不適切であったことが野党の追及で判明し、二月二十八日、安倍総理は、働き方関連法案から裁量労働制の対象を拡大するという部分の削除をやむなく決断しましたが、二月二十二日の衆議院予算委員会において、裁量労働制をめぐる厚生労働省の調査データの不適切使用問題をめぐり、厚生労働省の調査により、新たに百十七件の異常なデータが発覚しています。

 また、厚生労働省のさらなる精査結果によると、調査した一万一千五百七十五事業場のうち、二千四百九十二事業場のデータに異常値が見つかり、現時点での議論の根拠として、残っている約八千のデータにも疑義があるとは、余りにもずさん過ぎます。

 そのような議論の基盤がもろくも崩れた中で、安倍総理は、もう一つの大きな論点であり、スーパー裁量労働制とも言われる高度プロフェッショナル制度、すなわち残業代ゼロ制度に関する議論を無理に強行、成立させようとしています。一部の専門職が対象であるとはいえ、その職種や基準、そして同意や解除の詳細等の重要な部分が不明確な中で、労働時間規制を外し、残業代もなくし、働かせ放題にすることは、過労死につながる可能性があるのではないですか。

 そもそも働き方改革は、二つの事件がきっかけでした。一つは、電通で起きた、過労などに起因する女性社員の自殺です。そしてもう一つは、NHKの報道記者が過労死した事件でした。(発言する者あり)

議長(大島理森君) 御静粛に。

吉田統彦君(続) ですから、長時間労働をいかに是正することが最も重要ではないですか。長時間労働をなくすことを本当に実現するのであれば、企業が個々に課す仕事の量を減らすべきなのです。

 また、今回の法案は、同一価値労働同一賃金の問題にも触れられています。

 平成二十九年の日本の全労働者のうち、非正規社員の割合は三七・三%となっています。なぜ、これだけ非正規社員が多いのか。

議長(大島理森君) 吉田君、時間が来ております。

吉田統彦君(続) 日本の正社員は、基本的には年功序列の終身雇用制となっている。非正規社員だと、給与が安く、容易にリストラが可能であるから、企業にとって都合のよい雇用形態になっています。だから、同一価値労働同一賃金の議論は極めて重要ではないですか。

 安倍政権の最重要政策である働き方改革は、よりどころとなっているデータの信用性が失われている。各種世論調査でも、国民は今国会の拙速な成立を望んでいません。

 にもかかわらず、高鳥委員長は、委員会を職権により開催し、空回し等をして、政府の指示どおりの議事進行を行っています。

 厚生労働委員長としての職務、責務を果たしているとは到底言えず、もはや高鳥委員長のもとで適正な委員会運営を期待することはできません。

 以上の理由から、高鳥委員長解任決議に賛成し……

議長(大島理森君) 吉田君、時間が来ております。

吉田統彦君(続) 国民の声を真摯に聞き、公正かつ円満な委員会運営を行う委員長を新たに選任することを求め、私の討論を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 山井和則君。

    〔山井和則君登壇〕

山井和則君 私は、国民民主党・無所属クラブを代表して、高鳥修一厚生労働委員長に対する解任決議案に賛成の立場から討論をいたします。(拍手)

 高鳥委員長は、生活困窮者自立支援法改正案を野党欠席のまま採決したばかりか、働き方改革法案の審議まで強行いたしました。高鳥委員長が、今国会での職権での委員会立てなどは、十二回に上ります。

 働き方法案の目玉である高度プロフェッショナル制度など、重大な問題点を含む働き方法案の審議を強引に進め、強行採決しようとした高鳥委員長は、不適格です。立法府の一員であり、国会の役員の一人である常任委員長でありながら、過労死をふやす危険きわまりない法案を行政府の下請として強行採決させるような高鳥委員長は、解任すべきです。

 以下、その理由を申し上げます。

 私は、この数年間、過労死防止対策推進法の制定にかかわって以来、過労死ゼロの実現をライフワークとし、数十人の過労死の御遺族のお話をお聞きし、数々の過労死の裁判も傍聴してきました。高度プロフェッショナルに対しては、過労死の御遺族から、過労死がふえるとの悲痛な批判が続出しています。

 高度プロフェッショナルは、専門職、高度な方々、労働者を労働時間の規制から外し、無制限に働かせることを可能とし、定額働かせ放題、スーパー裁量労働制と言われています。現在の法案では、対象は年収の高い労働者に限られますが、一旦導入されれば、いずれ中所得者にも対象が広がります。

 過労死の御遺族や過労死問題を担当する弁護士の方々からは、高度プロフェッショナルは、過労死がふえるのみならず、たとえ過労死しても過労死認定はほとんど受けられないと悲鳴が上がっています。高度プロフェッショナルでは、過労死認定、つまり労災認定のもととなる労働時間についての把握義務が事業主になくなるからです。

 また、驚くべきことに、二十四時間連続勤務を上司が指示することも、過労死のリスクが極めて高い月二百時間の残業をさせることも、高度プロフェッショナルでは合法であります。まさに、定額働かせ放題、過労死促進法です。

 ここで、皆さんにどうしてもお聞きいただきたい二つの文章があります。過労死でお父さんを亡くした二人の遺児についての文章です。読み上げさせていただきます。

 まず最初に、過労死でお父さんを亡くした小学生が書いた「ぼくの夢」という詩です。

  大きくなったら ぼくは 博士になりたい

  そしてドラえもんに出てくるような

  タイムマシンを 作る

  ぼくは タイムマシンに乗って

  お父さんの死んでしまう 前の日に行く

  そして 仕事に 行ったらあかんて 言うんや

  大きくなっても ぼくは 忘れはしないよ

  得意な顔して作ってくれた

  パパ焼きそばの 味を

  ぼくは タイムマシンに乗って

  お母さんと一緒に 助けに行こう

  そして 仕事で 死んだらあかんて 言うんや

  仕事のための命じゃなくて

  命のための仕事だと ぼくは伝えたい

  だから 仕事で 死んだらあかんて 言うんや

 次は、過労死でお父さんを亡くした三歳の女の子についての毎日新聞の記事を、少し長くなりますが、読み上げさせていただきます。

  毎年六月になると思い出すことがある。過労死で夫を亡くした女性の話を聞きに東海地方を訪れた時の話だ。もう、十年以上前のことだが、蒸し暑さと共によみがえる。

  家を訪ねると、三歳ぐらいの女の子が、白いレースのワンピースに赤いエナメルの靴でおすましして、玄関にちょこんと座っていた。誰かを待つかのように、背筋を伸ばし、ほんのり笑っていた。

  二時間近く女性の話を聞いた。昼夜問わず携帯で指示を受け、月百時間を超える残業。体がきついと退職を決意した直後、営業車の中で休んでいて突然死した。まだ三十代になったばかり。結婚七年目で授かった愛娘を残して世を去らねばならなかった無念に胸が締め付けられた。

  帰り際、少女は、まだ玄関に座っていた。気丈に振る舞っていた女性が大粒の涙をこぼした。「休みの日は、かわいい格好して、良い子にしてれば、お父さんが迎えにきて遊びに連れてってくれると待っているんです」。体全体で父を求めるいじらしさに涙が止まらなかった。長時間労働は家族みんなから大事な時間を奪う。少女の小さな背中はそう告発していた。

 この詩や記事にあるような過労死の遺児を減らすことこそが政治の責任ではないでしょうか。

 責任感が強く、真面目な人ほど過労死をしています。我が国では、二日に一人、過労死が発生し、過労死の遺児が数多く生まれています。

 与党の皆さんに申し上げます。

 万一、強行採決により高度プロフェッショナルが導入されることになれば、必ず過労死は起こります。高度プロフェッショナルより労働時間規制が厳しい裁量労働でさえ、既に多くの過労死が続出しているからです。

 ああ、しまった、高度プロフェッショナルを導入しなければよかったと反省しても、失われた命は戻りません。その御遺族や残されたお子さんに対して、与党の皆さんはどのように説明をされますか。どのようにおわびをされますか。

 きょうも、過労死の御遺族の方々が祈るような思いでこの本会議場の傍聴に来られています。あすの強行採決をやめてほしい、高度プロフェッショナルを法案から削除してほしい、過労死の地獄の苦しみをこれ以上誰にも味わわせたくないと御遺族は必死に訴え、昨日、一昨日と、安倍総理との面談を求め、雨にぬれながら、官邸前で座込みもされました。

 安倍総理は、御遺族の方々に採決の前に必ず面談し、高度プロフェッショナルの削除を決断すべきです。

 四年前、与党の皆さんも含め、全会一致で過労死防止対策法を成立させました。国民の命を守りたいという願いは与野党同じです。与党の皆さん、どうか、高度プロフェッショナルを削除する修正に応じていただけませんか。人の命を奪う法案の強行採決はやめていただけませんか。与野党合意できる部分を審議し、与野党合意で採決しようではありませんか。働き方改革には与党も野党もありません。国民の命を守るために、ともに頑張ろうではありませんか。心より心よりお願いを申し上げます。

 このような人の命を奪う法案を強行採決しようとした高鳥委員長は解任すべきです。

 政治は国民の命を守るために存在します。国会議員には国民の命を守る責任があります。もし、国民の命を奪う法案の強行採決が行われるなら、私は体を張って阻止するということを強く訴え、私の賛成討論とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となりました厚生労働委員長解任決議案に賛成の討論を行います。(拍手)

 高鳥委員長は、日ごろ、野党の意見もよく聞き、円満な委員会運営に尽力されていたことは、私も理解しているところです。

 しかし、この間の委員会運営は、働き方改革法案を今国会で成立させるためだけに職権を濫用し、暴走してきたと指摘せざるを得ません。まさに首相案件だからです。開催された厚労委員会中、半分に当たる十回も委員長職権で開催し、うち十七時間二十三分は空回しでした。事もあろうに、重要広範議案である生活困窮者支援法案を、与党のみによる参考人質疑、採決まで行ったのです。

 今は国会全体の異常事態だということ、それは与野党なく共有すべきではないでしょうか。森友、加計疑惑、日報、どれ一つとっても、あったものをなかったとしらを切り、国権の最高機関で平気でうそをつくという、国の土台そのものが崩れているという問題であります。

 そして何より、厚労省こそが、年金記録の再委託問題、裁量労働制データ捏造問題、野村不動産の過労死隠しなど、一連の異常事態の原因者であることを忘れてはなりません。

 まず、裁量労働制のデータ捏造問題は解決していません。企画業務型裁量労働制の拡大部分は法案から削除され、もととなった平成二十五年度労働時間等総合実態調査は二割のデータを削除しました。しかし、もとデータをもとに加工した資料は、労政審だけでも十一回活用されています。例えば、労使協定で年間の残業を一千時間超としている事業場のうち、実際に一千時間超の残業があったのは、旧データでは三・九%だったものが、精査により四八・五%へと激増しました。上限規制や適用除外業務など、法案の骨格をなす根拠資料を影響ないとしてよいはずがありません。

 裁量労働制の実態調査を新たに行うとしていますが、いつごろ労政審に諮るのか、時期すらも示せませんでした。高度プロフェッショナル制度の対象となり得る労働者を検討する上でも実態調査は必須であり、その結論を待つべきです。

 さらに、なぜデータ捏造は行われたのか、厚労省は外部有識者を含む監察チームを発足させましたが、その中間報告さえ出せない状況です。法案は撤回し、労政審に差し戻すべきです。

 このように、野党が指摘した課題が山積しており、これらが解決しないままの見切り発車的採決は絶対にしてはなりません。

 働き方改革法案について、総理は、過労死をなくします、同一労働同一賃金を実現しますと何度も強調されました。特別条項つき三六協定を結びさえすれば実質青天井になっていた残業時間に罰則つきの上限規制を設けるという、七十年ぶりの大改正のはずでした。

 しかし、出されたものは、厚労省自身が過労死ラインと認めてきた、単月百時間、連続する複数月平均八十時間を上限とするもので、国が過労死にお墨つきを与えるようなものではありませんか。

 そして、労働時間法制から完全に除外する高度プロフェッショナル制度は、年百四日の休日さえ与えれば、連続四十八日間勤務、しかもそれを一日二十四時間ぶっ通しで働いても違法とはならない、まさに過労死促進法と呼ぶべきものです。

 同一労働同一賃金は、いわゆる均等待遇の対象となるパート労働者はわずか一・五%にすぎず、現状と何も変わりません。それどころか、格差を固定するだけではありませんか。とうとうその名前さえ、法案からも消えてしまったのです。

 大切な家族を失い、その苦しみから立ち上がって、二度と誰にも同じ苦しみを味わわせたくないと訴えてきた過労死家族の会の皆さん、その皆さんが、過労死防止と逆行する高度プロフェッショナル制度、働き方改革法案に反対と、明確に表明しています。

 そうした家族の声、全国の働く人々の声にも耳をかさず、一方的な運営を続け、採決に踏み切ろうとする高鳥委員長には、もはやその職責を果たす資格がありません。

 以上、厚労委員長解任決議案の賛成討論とします。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 この採決は記名投票をもって行います。

 本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参されることを望みます。――議場閉鎖。

 氏名点呼を命じます。

    〔参事氏名を点呼〕

    〔各員投票〕

議長(大島理森君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開票。――議場開鎖。

 投票を計算させます。

    〔参事投票を計算〕

議長(大島理森君) 投票の結果を事務総長から報告させます。

    〔事務総長報告〕

 投票総数 四百四十一

  可とする者(白票)       百三十三

  否とする者(青票)        三百八

議長(大島理森君) 右の結果、厚生労働委員長高鳥修一君解任決議案は否決されました。(拍手)

    ―――――――――――――

辻元清美君外六名提出厚生労働委員長高鳥修一君解任決議案を可とする議員の氏名

阿久津 幸彦君   阿部  知子君   青柳 陽一郎君   荒井   聰君

池田  真紀君   石川  香織君   生方  幸夫君   枝野  幸男君

尾辻 かな子君   大河原 雅子君   逢坂  誠二君   岡島  一正君

岡本 あき子君   落合  貴之君   海江田 万里君   神谷   裕君

亀井 亜紀子君   川内  博史君   菅   直人君   近藤  昭一君

佐々木 隆博君   櫻井   周君   篠原   豪君   末松  義規君

高井  崇志君   高木 錬太郎君   武内  則男君   辻元  清美君

手塚  仁雄君   中谷  一馬君   長尾  秀樹君   長妻   昭君

西村 智奈美君   長谷川 嘉一君   初鹿  明博君   日吉  雄太君

福田  昭夫君   堀越  啓仁君   本多  平直君   松田   功君

松平  浩一君   道下  大樹君   宮川   伸君   村上  史好君

森山  浩行君   矢上  雅義君   山内  康一君   山尾 志桜里君

山川 百合子君   山崎   誠君   山花  郁夫君   山本 和嘉子君

横光  克彦君   吉田  統彦君   早稲田 夕季君   青山  大人君

浅野   哲君   伊藤  俊輔君   泉   健太君   稲富  修二君

今井  雅人君   小熊  慎司君   大西  健介君   岡本  充功君

奥野 総一郎君   城井   崇君   岸本  周平君   源馬 謙太郎君

小宮山 泰子君   後藤  祐一君   近藤  和也君   斉木  武志君

階    猛君   篠原   孝君   下条  みつ君   白石  洋一君

関  健一郎君   玉木 雄一郎君   津村  啓介君   西岡  秀子君

原口  一博君   平野  博文君   古川  元久君   古本 伸一郎君

前原  誠司君   牧   義夫君   緑川  貴士君   森田  俊和君

山岡  達丸君   山井  和則君   柚木  道義君   渡辺   周君

安住   淳君   江田  憲司君   大串  博志君   岡田  克也君

金子  恵美君   田嶋   要君   中川  正春君   中村 喜四郎君

野田  佳彦君   広田   一君   もとむら賢太郎君   赤嶺  政賢君

笠井   亮君   穀田  恵二君   志位  和夫君   塩川  鉄也君

田村  貴昭君   高橋 千鶴子君   畑野  君枝君   藤野  保史君

宮本  岳志君   宮本   徹君   本村  伸子君   玉城 デニー君

照屋  寛徳君   吉川   元君   青山  雅幸君   赤松  広隆君

井出  庸生君   小川  淳也君   柿沢  未途君   佐藤  公治君

重徳  和彦君   樽床  伸二君   寺田   学君   中島  克仁君

長島  昭久君   細野  豪志君   松原   仁君   笠   浩史君

鷲尾 英一郎君

否とする議員の氏名

あかま 二郎君   あきもと 司君   逢沢  一郎君   赤澤  亮正君

秋葉  賢也君   秋本  真利君   麻生  太郎君   穴見  陽一君

甘利   明君   安藤  高夫君   安藤   裕君   井野  俊郎君

井上  信治君   井上  貴博君   井林  辰憲君   伊東  良孝君

伊藤 信太郎君   伊藤  忠彦君   伊藤  達也君   伊吹  文明君

池田  道孝君   池田  佳隆君   石川  昭政君   石崎   徹君

石田  真敏君   石破   茂君   石原  伸晃君   石原  宏高君

泉田  裕彦君   稲田  朋美君   今村  雅弘君   岩田  和親君

岩屋   毅君   うえの賢一郎君   上杉 謙太郎君   上野  宏史君

江崎  鐵磨君   江渡  聡徳君   江藤   拓君   衛藤 征士郎君

遠藤  利明君   小倉  將信君   小此木 八郎君   小里  泰弘君

小田原  潔君   小野寺 五典君   小渕  優子君   尾身  朝子君

越智  隆雄君   大岡  敏孝君   大隈  和英君   大塚  高司君

大塚   拓君   大西  英男君   大西  宏幸君   大野 敬太郎君

大見   正君   岡下  昌平君   奥野  信亮君   鬼木   誠君

加藤  鮎子君   加藤  勝信君   加藤  寛治君   梶山  弘志君

勝俣  孝明君   門   博文君   門山  宏哲君   金子  俊平君

金子 万寿夫君   金子  恭之君   金田  勝年君   上川  陽子君

神谷   昇君   神山  佐市君   亀岡  偉民君   鴨下  一郎君

川崎  二郎君   河村  建夫君   神田  憲次君   神田   裕君

菅家  一郎君   木原  誠二君   木原   稔君   木村  次郎君

木村  哲也君   木村  弥生君   城内   実君   黄川田 仁志君

岸   信夫君   岸田  文雄君   北川  知克君   北村  誠吾君

工藤  彰三君   国光 あやの君   熊田  裕通君   小泉 進次郎君

小泉  龍司君   小島  敏文君   小寺  裕雄君   小林  茂樹君

小林  鷹之君   小林  史明君   古賀   篤君   後藤  茂之君

後藤田 正純君   高村  正大君   左藤   章君   佐々木  紀君

佐藤  明男君   佐藤   勉君   佐藤 ゆかり君   坂井   学君

坂本  哲志君   櫻田  義孝君   笹川  博義君   塩崎  恭久君

塩谷   立君   繁本   護君   柴山  昌彦君   下村  博文君

白須賀 貴樹君   新谷  正義君   新藤  義孝君   菅   義偉君

菅原  一秀君   杉田  水脈君   鈴木  俊一君   鈴木  淳司君

鈴木  貴子君   鈴木  憲和君   鈴木  隼人君   関   芳弘君

園田  博之君   田所  嘉徳君   田中  和徳君   田中  英之君

田中  良生君   田野瀬 太道君   田畑   毅君   田畑  裕明君

田村  憲久君   平   将明君   高市  早苗君   高木   啓君

高木   毅君   高鳥  修一君   高橋 ひなこ君   竹下   亘君

竹本  直一君   武井  俊輔君   武田  良太君   武部   新君

武村  展英君   橘  慶一郎君   棚橋  泰文君   谷   公一君

谷川  とむ君   谷川  弥一君   津島   淳君   辻   清人君

土屋  品子君   寺田   稔君   とかしきなおみ君   冨樫  博之君

渡海 紀三朗君   土井   亨君   冨岡   勉君   中曽根 康隆君

中谷   元君   中谷  真一君   中根  一幸君   中村  裕之君

中山  展宏君   中山  泰秀君   永岡  桂子君   長尾   敬君

長坂  康正君   二階  俊博君   丹羽  秀樹君   西田  昭二君

西村  明宏君   西村  康稔君   額賀 福志郎君   根本   匠君

根本  幸典君   野田  聖子君   野田   毅君   野中   厚君

葉梨  康弘君   萩生田 光一君   橋本   岳君   馳    浩君

鳩山  二郎君   浜田  靖一君   林   幹雄君   原田  憲治君

原田  義昭君   百武  公親君   平井  卓也君   平口   洋君

平沢  勝栄君   福井   照君   福田  達夫君   福山   守君

藤井 比早之君   藤丸   敏君   藤原   崇君   船田   元君

船橋  利実君   古川   康君   古川  禎久君   古田  圭一君

古屋  圭司君   穂坂   泰君   星野  剛士君   細田  博之君

堀内  詔子君   本田  太郎君   牧島 かれん君   牧原  秀樹君

松島 みどり君   松野  博一君   松本   純君   松本  剛明君

松本  文明君   松本  洋平君   三浦   靖君   三谷  英弘君

三ッ林 裕巳君   三ッ矢 憲生君   三原  朝彦君   御法川 信英君

宮内  秀樹君   宮川  典子君   宮腰  光寛君   宮澤  博行君

宮路  拓馬君   宮下  一郎君   武藤  容治君   務台  俊介君

宗清  皇一君   村井  英樹君   村上 誠一郎君   望月  義夫君

茂木  敏充君   盛山  正仁君   森   英介君   森山   裕君

八木  哲也君   簗   和生君   山際 大志郎君   山口  俊一君

山口   壯君   山下  貴司君   山田  賢司君   山田  美樹君

山本  公一君   山本  幸三君   山本   拓君   山本ともひろ君

山本  有二君   吉川  貴盛君   吉野  正芳君   義家  弘介君

和田  義明君   若宮  健嗣君   渡辺  孝一君   渡辺  博道君

赤羽  一嘉君   井上  義久君   伊佐  進一君   伊藤   渉君

石井  啓一君   石田  祝稔君   稲津   久君   浮島  智子君

江田  康幸君   大口  善徳君   太田  昭宏君   太田  昌孝君

岡本  三成君   北側  一雄君   國重   徹君   佐藤  茂樹君

佐藤  英道君   高木 美智代君   高木  陽介君   竹内   譲君

遠山  清彦君   富田  茂之君   中野  洋昌君   浜地  雅一君

濱村   進君   古屋  範子君   桝屋  敬悟君   鰐淵  洋子君

足立  康史君   井上  英孝君   浦野  靖人君   遠藤   敬君

串田  誠一君   下地  幹郎君   杉本  和巳君   馬場  伸幸君

丸山  穂高君   森   夏枝君   井上  一徳君   中山  成彬君

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 日程第一は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 日程第一 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部を改正する法律案(総務委員長提出)

議長(大島理森君) 日程第一、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。総務委員長古屋範子君。

    ―――――――――――――

 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔古屋範子君登壇〕

古屋範子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 本案は、国民生活に必要不可欠である郵政事業のユニバーサルサービスの提供を安定的に確保するため、郵便局ネットワークの維持の支援のための交付金の交付及び拠出金の徴収に関する制度を創設しようとするものであります。

 本案は、去る二十二日、総務委員会におきまして、全会一致をもって委員会提出の法律案とすることに決したものであります。

 なお、委員会におきまして、郵政事業のユニバーサルサービス確保等に関する件について決議が行われたことを申し添えます。

 何とぞ速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第二、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長山際大志郎君。

    ―――――――――――――

 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔山際大志郎君登壇〕

山際大志郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴い、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の規定の整備を行うものであります。

 本案は、去る五月八日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、十一日に茂木国務大臣から提案理由の説明を聴取した後、十六日から質疑に入りました。十七日には参考人から意見を聴取するとともに、同日安倍内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行い、さらに、十八日には農林水産委員会との連合審査会を開会するなど慎重に審査を重ね、二十三日質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 討論の通告があります。順次これを許します。石川香織君。

    〔石川香織君登壇〕

石川香織君 立憲民主党の石川香織です。

 私は、立憲民主党・市民クラブを代表いたしまして、ただいま議題になりました環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論をさせていただきます。(拍手)

 私は北海道の十勝に住んでおります。北海道は言わずと知れた農業地帯であり、十勝は日本の食料供給基地であります。

 TPPについては、苦い思い出があります。

 六年前、二〇一二年に行われた総選挙では、当時の北海道も含め、農村地帯を含む選挙区から立候補されていた自民党の議員の方々が、TPP断固反対と言って運動されていたのをよく覚えております。しかし、選挙が終われば、たった三カ月で態度を翻し、総理はTPP交渉参加に突き進んでいきました。

 私のTPPに対する政府・与党への不信感は、国会議員になる前ですが、そこから始まっています。オール北海道でTPPに反対していたのに、うそをつかれた悔しさ、悲しさを、地元北海道で何度耳にしたでしょうか。

 冒頭、TPPはそんな裏切りから始まっていることを触れざるを得ません。

 TPP協定は、関税撤廃が基本であり、さまざまな分野で影響が及ぶものであります。政府は、TPP協定をアジア太平洋地域で自由で公正な共通ルールとしてつくり上げていくと言ってきました。しかし、その交渉は一体どのようなものであったか、これまで国民に丁寧に誠実に示してきたでしょうか。

 一昨年の国会審議では、TPP12の交渉経過などについて、黒塗りの資料が提示されました。秘密保持契約の問題があったにせよ、情報公開とはとても言えるものではありませんでした。

 TPP12の合意後、三百回以上説明会を実施してきたということを本年四月に政府は答弁をされておりますが、審議は深まったでしょうか、国民の理解は深まったでしょうか。

 政府が説明するように、TPP12とCPTPPが全く別物の協定であれば、この間の国際情勢の変化などについて説明した上で、方針について議論をしていく必要が当然あります。

 しかし、CPTPPについては、本国会での審議はわずか三日間、十数時間で終了してしまいました。私はむしろ、国民の皆さんがこの協定の中身について理解を深め、不安や疑問が出ることを、慌ててふたをしてやり過ごそうとする、そんな態度に見えてなりません。

 国民が知りたいのは、TPPが与える影響です。例えば、どれくらいの価格下落が見込まれ、生産量の変化、所得はどうなるのか、そういったことが一番の関心事だと思います。政府の行った試算はどういったものかというと、国内対策により生産量は維持されるという前提のもと試算されるものであり、それは正しく試算されたものとは到底思えません。

 例えば、政府試算では、価格が一〇%下落して、生産コストが一〇%以上下がると仮定しており、GDPを増加させています。これは、価格の下落以上にコストが下がるという仮定だと読み取れますが、何をもとに導き出された数字なのかわかりません。

 こういった価格の下落以上の生産性上昇などを見ても、政府の試算は恣意的だと感じざるを得ません。最もマイナスの影響を受ける農業者の皆さんにTPPに対する大きな不安があることを考えたとき、生活への影響について、その予測を明示し、その上で必要な対策を講じるべきです。対策があるから影響はないという主張は、余りにも無責任ではないでしょうか。

 日本の農業を支えてきたのは家族経営という形であります。しかし、昨今、効率化や競争力強化を追求する余り、農家は大規模化していく流れができています。しかし、それは同時に、農家戸数が減っていくことを示しています。

 私は、先日、家族で経営されている酪農家のおうちに研修に行かせていただきました。家族三人で、六十五頭の子牛の世話のほか、八十頭の牛乳を搾っています。搾乳は、思った以上に過酷な作業で、搾乳機で本格的に乳搾りをする前の前搾りと言われる作業だけで腕が痛くなるほどでした。

 毎日、酪農家の方が休みなく朝晩搾乳をしてくださっているおかげで、日本の安心、安全な牛乳を飲むことができるのです。そのありがたみを改めて感じました。こういった日本の農業を支えている家族経営というものをなくしてはならないのです。

 CPTPP協定では、バターなどの乳製品の見直しも行わないまま、協定に合意をしました。ニュージーランドやオーストラリアは、一層、日本市場に輸出しやすくなります。

 TPPが国内の酪農や乳業に与える影響について考えられることは、安価な輸入乳製品を使用した加工乳、乳飲料などが国内で製造され、生乳一〇〇%使用の牛乳、成分調整牛乳の市場の一部が、これらの製品に取ってかわる可能性です。

 チーズについても、国産ナチュラルチーズのほとんどが輸入品に置きかわり、北海道の大規模チーズ工場が操業を停止するなど、国内乳生産の相当部分が失われる可能性があります。

 乳製品だけではありません。農産物、畜産など、日本が世界に誇れる農業を守り抜き、子供や孫たちに残してほしいと、私は、国会議員として、また一人の親として、強く心に感じました。

 貿易自由化の全てを否定するわけではありません。ただ、TPPは、日本の農業を衰退させ、農村という地域社会を崩壊させかねません。それと同時に、食料自給率の低下など、食料安全保障の面でもリスクが大き過ぎるのです。

 以上、一番負の影響を受けるとされる農業の分野のみならず、国民に誠意のある説明もしないまま、国会を軽視した本改正法案に断固反対することを申し上げます。

 最後に、安倍政権の許しがたい政治姿勢に触れないわけにはいきません。

 きのう、財務省から三千ページに及ぶ改ざん前の決裁文書がようやく出されました。あれだけ、ないと言い張ってきた森友学園との交渉記録も、この期に及んで出てきました。

 そこには、総理夫人付の職員から優遇を受けられないかと照会があったとして、財務省に問い合わせるなど、全くもって看過しがたい内容が既に出てきております。

 財務省は、一年以上にわたって虚偽の答弁を繰り返し続け、資料も全く出そうとしなかったのです。さらに、国会で要求された資料を次々に廃棄するという暴挙まで明らかになりました。これほど国会が軽視されたことはありません。

 さらには、加計問題でも看過しがたい事態が起こっております。総理大臣や柳瀬元秘書官がうそをついているのでしょうか。それとも、加計学園がうそをついているのでしょうか。はたまた愛媛県なのでしょうか。誰がどう見ても、愛媛県がうそをつく理由はありません。誰がこの問題でうそをついているのか、明らかにする責任は政府・与党にあります。

 この問題に決着をつけるため、柳瀬元秘書官、加計理事長の証人喚問、中村愛媛県知事の参考人招致は必須です。堂々と真相解明に向けて動き出すときではありませんか。

 与党の皆さんに議会人としての猛省を促し、私の討論を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 伊藤俊輔君。

    〔伊藤俊輔君登壇〕

伊藤俊輔君 国民民主党の伊藤俊輔です。

 私は、国民民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、反対の立場から討論をいたします。(拍手)

 私たち国民民主党は、生活者、納税者、消費者、働く者の立場に立ち、現在と未来の課題を着実に解決をし、国際社会の平和と繁栄に貢献しつつ、国民全世代の生活を向上させることを基本理念として、このたび結党いたしました。

 国民生活の向上、豊かな国づくりのためのやり方にはさまざまなことが考えられますが、そのやり方の一つとして、より選択肢の多い社会をつくることの大切さ、重要さを私は強調したいと思っています。

 グローバリズムが進捗をする今日の世界において、公正なルールのもとでの自由貿易を推進し、高いレベルでの経済連携を推進していくことは、国民生活の向上と豊かな国づくりのための多くの選択肢を国民に提供する、その足がかりになることは間違いないと私は確信をしています。

 世界全体における富と幸福の増進のためには、特定の誰かだけが恩恵を受けるような排他的な経済システムは除外をする必要があります。国や地域を超え、世界の誰もが経済成長の恩恵にあずかれるようにしなければなりません。まさに包摂的な成長、その観点から、自由貿易を堅持し、国益を守りながら、国際間の経済連携をますます推進をして、保護主義の蔓延を食いとめる必要があります。

 私たち国民民主党は、そのような観点から、高いレベルでの経済連携を積極的に推進をし、地域の新しいルールをリードする立場に日本が立つべきだと考えております。

 しかしながら、また同時に、そのようなルールに定めるに当たっては、そこに暮らす人々の現実的な側面も考慮する必要があります。

 行き過ぎた自由貿易が、とりわけ農業や消費者など、人々の生活と安全に直結をする分野において、急激な変動をもたらすようなことがあってはなりません。それは、新たなルールを創造するというよりも、単にそのルールを破壊するだけの行為になってしまいます。

 そのような観点から、個別の経済連携協定の是非を判断するに当たっては、そこに暮らす人々にとって、新たにどのようなメリットが得られ、また守られるべきものがしっかり守られているか、その中身を十分に見きわめることも重要であります。

 その観点から、今回のTPP11協定と関連整備法改正案を見た場合、疑問が多く、その内容には反対せざるを得ないと考えます。

 以下、反対の理由を申し上げます。

 反対の第一の理由は、今回のTPP11協定が、おととしの国会において安倍内閣により強引に承認させられたTPP協定の内容をほとんどそのままそっくり引き継いでいるということです。

 おととしに署名されたオリジナルのTPP協定については、工業製品分野など、我が国として攻めるべき分野で十分なメリットが得られておらず、また、農産物重要五品目の聖域が確保されていないなど、守られなければならない分野において相当な譲歩を余儀なくされているものでありました。

 これに関して、今回のTPP11協定では、二十二項目の凍結項目が設けられたものの、その他の大部分については協定の内容がそのまま維持されており、特に、市場アクセス、関税に係る部分については全く変更がなされておりません。

 反対の第二の理由は、これまでのTPP協定より以上に、今回のTPP11協定については、我が国の国内農業への深刻な打撃が避けられないことでもあります。

 今回のTPP11協定では、前述のとおり、市場アクセス、関税に係る部分についてはオリジナルのTPP協定をそのまま引き継いでおります。そのため、品目別に定められた輸入枠やセーフガード基準についても、米国参加を前提に設定をされた基準がそのまま維持されております。

 すなわち、例えば米国以外からの農林水産物の輸入が急増した場合であっても、米国の参加を念頭に設定された輸入枠の範囲内であれば、その輸入が可能になり、またセーフガード基準も発動されにくいことになります。

 これは、カナダやニュージーランドなどを始めとする農産物の輸出国にとっては有利でありますが、我が国のような農産物の輸入国にとっては著しく不利であります。このような不都合な事実を放置したまま、TPP11協定の承認を求める政府・与党の姿勢は、無責任と言うほかありません。

 反対の第三の理由は、オリジナルのTPP協定に引き続き、今回のTPP11協定についても、交渉過程に係る情報公開が全くなされていない点であります。

 オリジナルのTPP協定の審議の際にも、国民や国会で上げられた不安の声に対して、政府は丁寧な説明を行わず、日付と表題以外は全て黒塗りの交渉経過メモを示しました。秘密保持の義務があるから情報は出せない、それを定めた書簡も秘密だから見せられないと政府は説明をいたします。

 もちろん、外交上のやりとりについて秘密にしなければならないことがあることは一定理解をします。しかし、秘密にしなければならないとする書簡自体を秘密にするのは、過度な秘密主義ではないでしょうか。今回のTPP11協定における凍結項目の決定過程などについても、政府はその内容を全く明らかにしておりません。

 今、森友問題では、都合の悪い情報は徹底的に隠すのみならず、みずからの都合に合わせて改ざんまでしていることが明らかにされました。今、安倍内閣の秘密主義体質、それを象徴するものでもあります。国民の知る権利を徹底的にないがしろにする政府の今の姿勢は、決して看過できるものではありません。

 安倍総理は、オリジナルのTPP協定について米国抜きでは意味がないと言っておきながら、米国抜きのTPP11協定について、今まさに承認を迫ろうとしております。この矛盾した姿勢は、国民には到底説明がつかないのではないでしょうか。

 更に言えば、今後、米国との二国間における交渉を想定した場合、我が国にとって大変厳しい選択を強いられる事態にもなりかねません。

 そもそも与党自民党は、二〇一二年十二月の第四十六回衆議院総選挙において、聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対をすると公約に掲げてきました。また、全国では、うそをつかない、TPP断固反対、ぶれないと示されたポスターも張り出されました。すなわち、自民党は、TPP反対を旗印に政権に復帰したのであります。

 このようなポスターを見た全国の有権者が、おととしのTPP12協定の国会承認に引き続き、今回のTPP11協定の承認を急ぐ政権の姿は、どのように映るのでありましょうか。

 真に国益となる判断を求めて、私の反対の討論とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 金子恵美君。

    〔金子恵美君登壇〕

金子恵美君 無所属の会の金子恵美です。

 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案に対し、反対の立場から討論を行います。(拍手)

 冒頭、安倍政権の国会軽視、国民軽視の姿勢に強く抗議いたします。

 昨日、廃棄したとされていた森友学園と財務省との交渉記録が国会に提出されました。決裁文書の改ざんや記録の廃棄は、政治や行政に対する信用を大きく失墜させるものであります。これまで、改ざん文書をもとに審議が続けられてきたこと、財務省の国会答弁が事実ではなかったことに対し、怒りが込み上げてきます。

 加計問題、働き方改革関連法案への対応、イラク日報問題等々、これだけ民主主義をないがしろにし、組織的隠蔽体質をつくる政権は、かつてなかったのではないでしょうか。数の力で押し通す政治に対し、強い危機感を感じずにはいられないことを指摘し、討論に入ります。

 初めに、内閣委員会における審議について、十分な質疑が尽くされないまま採決されたことに強く抗議いたします。

 二年前にTPP協定及び整備法案を審議した際は、特別委員会を設置し、関係大臣の出席のもと、七十時間以上かけて審議し、総理質疑を六回、参考人質疑を五回、地方公聴会も行いました。

 しかし、今回は、本会議や委員会において、密接不可分なはずの条約と関連法案の議論がばらばらに行われ、内閣委員会では、総理質疑が一回、一時間程度、農林水産委員会との連合審査、参考人質疑は一回行ったにすぎません。

 最も重要なメンバー国である米国が離脱し、経済効果もTPP12の六割にとどまるなど、TPP12と11は似て非なるものであります。その意義、内容について、改めて十分な議論が必要であることは明らかです。

 二年前も、審議不十分で、野党抗議の中、強行採決が行われましたが、今回の審議内容は、二年前のときよりも更に不十分であると言わざるを得ません。余りにも拙速で乱暴な委員会運営ではないでしょうか。

 法案の内容についても問題があります。

 TPP11では、TPP12から二十二項目が凍結されました。しかし、整備法では、凍結された内容についても実施することとしています。TPPの締結に伴う整備法と銘打っていますが、これでは整備法ではありません。TPPとは別の政策的観点から法改正が必要であるならば、今回の法案とは切り分けて、個別法の改正案を出し直すべきです。

 本法案に関しての一番の問題は、日本の将来像が明らかにされていない点であります。

 米国のトランプ大統領はTPPよりも二国間交渉を望んでいるのは明らかですが、米国に対して、二国間交渉を行うのか、TPPへの復帰を働きかけるのか、何度質問しても、明確な答弁が得られません。米国抜きのTPPでは意味がないと、ほかならぬ安倍総理が明言したTPPを、なぜ推進しようとしているのでしょうか。

 また、TPPが発効されれば日本の農林水産業に大きな犠牲を強いることになりますが、審議の中で、その犠牲になる部分の将来像が見えてきません。

 政府は、農林水産物の生産額への影響について、総合的なTPP等関連政策大綱に基づく対策を考慮して算出した生産額しか明らかにしていません。本来は、最初に対策がない場合の影響を明らかにした上で、必要な対策を一つ一つ積み上げていくべきではないでしょうか。

 さらに、平成二十七年度以降、TPP関連の予算を計上していますが、補正予算が中心となっており、一時的な対策にとどまっております。そうした小手先の対策では、農林水産業に携わる方々は常に不安で、将来設計も立てることができません。恒久的な農林水産業政策を再構築し、日本の農林水産業を下支えし、守っていかなければならないと考えます。政府は、その展望をはっきりと具体的に示すべきです。

 最後に、国民生活、国益に大きくかかわるTPP11及び整備法をわずかな時間でしか審議せず、また、国民抜きで決めようとする安倍政権の退陣を強く求め、真の民主主義を取り戻すために戦ってまいりますことを誓い、私の反対討論といたします。(拍手)

議長(大島理森君) 塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、TPP11関連法案に断固反対の立場から討論を行います。(拍手)

 何よりまず、本法案の質疑を短時間で打ち切り、採決を強行したことに厳しく抗議をするものであります。

 本法案の審議に対し、野党は、関係委員会との連合審査、テーマ別審議、中央、地方公聴会、参考人質疑、さらなる総理質疑などを求めてきました。

 このまま審議を打ち切れば、アメリカが抜けたTPP11が、日米の新協議と相まって、日本経済と国民生活にどのような打撃を与えるのか、国民に問題点を明らかにできず、国会の責務を果たしたとは到底言えません。

 TPPは、二年前の国会でも、国民の厳しい批判にさらされ、審議中にアメリカが離脱したにもかかわらず、政府・与党が採決を強行したものです。

 今回のTPP11は、この間のわずかな審議でも、重大な問題点が明らかになっています。

 TPP11は、TPPを丸ごと組み込んだものであり、TPPと同様、米、牛肉・豚肉、乳製品など重要五項目を関税撤廃交渉から除外することを求めた国会決議に真っ向から反するものであります。経済主権や食料主権を侵害するもので、断じて認めることはできません。

 そもそもTPPは、国境を越えてもうけを追求する多国籍企業の活動を後押しするものです。

 関税の原則撤廃や投資の自由化、規制緩和を行おうとするその本質は、そのままTPP11でも維持されています。多国籍企業が投資先国を提訴するISD条項、食の安全や金融サービス等などの危険性も基本的に変わっていません。情報開示や説明は全く不十分であり、到底認めることはできません。

 また、政府はTPP11による農業生産の減少はないとする試算を発表しましたが、この政府試算は、影響がないように対策するから影響がないと言っているにすぎません。対策を検討するための試算になり得ないことは明白であります。

 さらに、四月の日米首脳会談で、日米経済対話に加えて新たな経済協議の枠組み、FFR創設に合意したことは重大です。

 安倍総理は、我が党の笠井議員の質問に対し、TPPで既に譲歩しているもの以上は譲歩できないと答弁しましたが、TPP交渉で日本が国際公約したとみなされる関税、非関税措置撤廃を出発点に、日米新協議でさらなる譲歩を迫られることは明らかであります。

 既に、日米経済対話で、USTRが公表している外国貿易障壁報告書の要求項目に対し、具体的な措置がとられました。さらに、USTRは、BSE問題は解消したとして、牛肉市場の完全な開放を求めています。アメリカの要求を受け入れ、食の安全基準を損なうことなど、断じて認められません。

 日米の新協議は、アメリカの身勝手な貿易障壁撤廃を受け入れる場となり、さらには日米FTAへとつながるものとなります。日本経済と国民生活に大打撃を与えることは必至であります。

 安倍総理は、TPP11は成長戦略の柱だと言います。しかし、その路線が導く先は何か。

 TPPは、日米の多国籍企業が、アジア太平洋地域で自分たちがもうけられるルールを広げたいということが本質です。この路線は、一握りの大企業を肥え太らせ、各国で国民の貧困と格差を拡大させるものでしかありません。

 日本が進むべき道は、TPP、TPP11、日米新協議ではありません。各国の経済主権や食料主権を尊重し、平等互恵の貿易ルールづくりによって経済関係を発展させる道に進むことであります。このことを強調し、反対討論を終わります。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第三、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長西村明宏君。

    ―――――――――――――

 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔西村明宏君登壇〕

西村明宏君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、社会経済情勢の変化に伴い増加している所有者不明土地の利用の円滑化等の措置を講じようとするものであります。

 その主な内容は、

 第一に、所有者不明土地の利用の円滑化を図るため、反対する所有者がおらず、建築物がなく現に利用されていない所有者不明土地について、公共事業における収用手続の合理化、円滑化を行うとともに、公園や広場等の地域住民のための公共的事業に一定期間の使用権を設定する制度を創設すること、

 第二に、土地所有者の効果的な探索を図るため、都道府県知事等は、その保有する土地所有者等関連情報を内部で利用できること、また、登記官は、長期間にわたり相続登記等がされていない一定の土地について、登記名義人となり得る者について探索した上で、その結果等を登記に付記することができること、

 第三に、所有者不明土地の適切な管理を図るため、地方公共団体の長等が家庭裁判所に対し、財産管理人の選任等の請求をすることができること

などであります。

 本案は、去る五月十五日本委員会に付託され、翌十六日石井国土交通大臣から提案理由の説明を聴取し、十八日質疑に入り、二十二日参考人からの意見聴取を行い、二十三日質疑を終了いたしました。質疑終了後、討論を行い、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 エネルギーの使用の合理化等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第四、エネルギーの使用の合理化等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長稲津久君。

    ―――――――――――――

 エネルギーの使用の合理化等に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔稲津久君登壇〕

稲津久君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、エネルギーをめぐる経済的、社会的環境の変化に鑑み、事業者によるさらなる省エネを促進するため、複数の事業者が一体的に又は連携して行う省エネ取組に関する認定制度を創設するとともに、省エネに取り組むべき貨物の荷主の範囲の拡大等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る五月十五日本委員会に付託され、翌十六日世耕経済産業大臣から提案理由の説明を聴取した後、十八日に質疑に入り、二十二日参考人から意見を聴取し、昨日質疑を終局いたしました。質疑終局後、採決を行った結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第五 消費者契約法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第五、消費者契約法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。消費者問題に関する特別委員長櫻田義孝君。

    ―――――――――――――

 消費者契約法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔櫻田義孝君登壇〕

櫻田義孝君 ただいま議題となりました法律案につきまして、消費者問題に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、事業者の行為により消費者が困惑した場合について、契約を取り消すことができる不当な勧誘行為の類型として、社会生活上の経験が乏しい消費者の不安をあおったり、勧誘を行う者に対する恋愛感情などに乗じて、事業者が一定の内容を告げることを追加する等の措置を講ずるものであります。

 本案は、去る五月十一日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、同日福井国務大臣から提案理由の説明を聴取し、十五日に質疑に入り、同日参考人から意見を聴取し、昨二十三日に質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、本案に対して、自由民主党、立憲民主党・市民クラブ、国民民主党・無所属クラブ、公明党、無所属の会、日本共産党及び日本維新の会の共同提案により、契約を取り消すことができる不当な勧誘行為の類型として、加齢等により判断力の低下した消費者の不安をあおり、事業者が一定の内容を告げること等を追加する修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 引き続き、採決を行いました結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも全会一致をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣        野田 聖子君

       国土交通大臣      石井 啓一君

       国務大臣        福井  照君

       経済産業大臣臨時代理

       国務大臣        茂木 敏充君


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