衆議院

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第32号 平成30年5月31日(木曜日)

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平成三十年五月三十一日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十六号

  平成三十年五月三十一日

    午後一時開議

 第一 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

 第二 鉄道軌道整備法の一部を改正する法律案(国土交通委員長提出)

 第三 スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律案(文部科学委員長提出)

 第四 平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法及び平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法の一部を改正する法律案(文部科学委員長提出)

 第五 スポーツ基本法の一部を改正する法律案(文部科学委員長提出)

 第六 国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案(文部科学委員長提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 裁判官訴追委員及び同予備員辞職の件

 裁判官訴追委員及び同予備員の選挙

 国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙

 日程第一 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

 日程第二 鉄道軌道整備法の一部を改正する法律案(国土交通委員長提出)

 日程第三 スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律案(文部科学委員長提出)

 日程第四 平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法及び平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法の一部を改正する法律案(文部科学委員長提出)

 日程第五 スポーツ基本法の一部を改正する法律案(文部科学委員長提出)

 日程第六 国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案(文部科学委員長提出)


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 裁判官訴追委員及び同予備員辞職の件

議長(大島理森君) お諮りいたします。

 裁判官訴追委員福田昭夫君から訴追委員を、裁判官訴追委員の予備員もとむら賢太郎君から予備員を、辞職いたしたいとの申出があります。右申出をそれぞれ許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 裁判官訴追委員及び同予備員の選挙

 国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙

議長(大島理森君) つきましては、裁判官訴追委員及び同予備員の選挙を行うのでありますが、この際、あわせて、国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙を行います。

田野瀬太道君 裁判官訴追委員及び同予備員並びに国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙は、いずれもその手続を省略して、議長において指名され、裁判官訴追委員の予備員の職務を行う順序については、議長において定められることを望みます。

議長(大島理森君) 田野瀬太道君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、裁判官訴追委員に玄葉光一郎君を指名いたします。

 また、裁判官訴追委員の予備員に斉木武志君を指名いたします。

 なお、予備員の職務を行う順序は第五順位といたします。

 次に、国土開発幹線自動車道建設会議委員に泉健太君を指名いたします。

     ――――◇―――――

 日程第一 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長高鳥修一君。

    ―――――――――――――

 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔高鳥修一君登壇〕

高鳥修一君 ただいま議題となりました働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を推進するため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、働き方改革の基本的な考え方を法律上明らかにすること、

 第二に、時間外労働の上限規制を罰則つきで行うこと、

 第三に、高度の専門的な知識等を要する業務につき、かつ、一定額以上の年収を有する労働者を対象として、労働時間等に関する規定を適用除外とする一方、一定の健康確保措置を義務づける高度プロフェッショナル制度を創設すること、

 第四に、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇及び差別的取扱い等を禁止すること

等であります。

 本案は、去る四月二十七日の本会議において趣旨説明が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、同日加藤厚生労働大臣から提案理由の説明を聴取し、五月二日から質疑に入り、二十二日には参考人から意見を聴取いたしました。

 翌二十三日には、自由民主党、公明党及び日本維新の会の三会派より、本案に対し、高度プロフェッショナル制度について、対象労働者の同意の撤回に関する手続を労使委員会の決議事項とすること等を内容とする修正案が提出され、趣旨説明を聴取した後、本案及び修正案を議題とし、安倍内閣総理大臣に対する質疑を行いました。

 二十五日、質疑を終局し、採決を行った結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 討論の通告があります。順次これを許します。長谷川嘉一君。

    〔長谷川嘉一君登壇〕

長谷川嘉一君 立憲民主党の長谷川嘉一です。

 私は、立憲民主党・市民クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案につきまして、反対の立場から討論を行います。(拍手)

 冒頭、一言申し上げます。昨日の党首討論についてであります。

 あのやりとりに、安倍総理の説明と称する言葉が国民の皆さんに全く信用されない理由が凝縮をされておりました。総理は、直接関係ないことをとうとうと述べ続けられました。いつものやり口であります。聞かれたことに正直に答えようとしない。答弁をはぐらかす。薄ら笑いまで浮かべて、とにかく逃げる。やじに敏感に反応して、時間を稼ぐ。薄ら笑いまで浮かべて、とにかく逃げる。これでは、党首討論の意味が全くありません。

 また、安倍総理は昨日、森友問題の本質は、なぜあの値段で国有地が引き渡されたかだと明言しました。なぜあの不当な値引きが行われなければならなかったのか。昭恵夫人のあの問合せこそが、総理自身がいみじくもおっしゃったように、この森友問題の本質なのです。ぜひ、昭恵夫人に国会に堂々と出てきていただき、真相を語っていただくしかないことを改めて強く申し上げます。

 また、安倍総理は、加計学園に、総理大臣としての名前だけでなく、いいねとの発言まで捏造したと言われているのに等しいのに、何の抗議もされないそうです。では、翻って、森友学園のときはどうだったでしょう。籠池理事長が安倍総理の名前を勝手に使ったことを怒っていたのは、ほかならぬ安倍総理御自身ではないですか。加計理事長と会っていたのに、うそをついているから何も言えないのではないですか。

 疑惑は底なし沼、うみは更にたまる一方。関係者を国会に招致して、白黒つけることを強く求めます。再度このことを強くお訴えし、討論に入ります。

 まずは、内閣提出の働き方改革関連法案における、二十五日の厚生労働委員会での強行採決に断固抗議いたします。

 人の生命、生活と命を守る、人の生活の根幹にかかわる重要法案を強行採決によって成立させようとする暴挙、しかも、この法案は今もなお多くの問題や矛盾、危惧を残したまま、それでも強行採決に踏み切った政府・与党の暴挙は許しがたいものであります。

 本法案に反対する第一の理由は、働き方改革関連法案に対象業務の拡大を盛り込む予定であった裁量労働制をめぐる数々の失態及びそのような失態により招いた行政への不信です。

 厚生労働省は三年も前から、不適切なデータ比較をもとに、裁量労働制で働く者の労働時間の方が一般労働者よりも短いという虚偽の説明を繰り返し、安倍総理大臣の答弁の撤回と謝罪に追い込まれました。そして、本法案の強行採決の当日の朝までもデータの集計ミスが報告されるという、捏造とも言えるずさんな処理が行われてきました。さらには、昨日、厚生労働委員会でも、十三件ものデータの誤りが指摘されております。法案の正当性を強弁し成立させようとする政府・与党の姿勢は、怒りを超えてあきれるばかりであります。

 反対の第二の理由は、高度プロフェッショナル制度の創設そのものです。

 高度プロフェッショナル制度に対しては、長時間労働を助長し、過労死がふえるのではないか、なし崩し的に対象業務の拡大や年収要件の引下げが行われるのではないか、万が一高度プロフェッショナル制度で過労死されても、労災認定は現実的にはほぼ無理ではないかといったさまざまな懸念、危惧が指摘されましたが、何一つ払拭されないまま強行採決となりました。

 人の生活の根幹にかかわるような重要法案をはぐらかし答弁で塗り固め、働く人の命と健康を害する危険性のある制度を野方図にする、そんなことは許されません。

 反対する第三の理由。そもそも我が国は、健康増進法に基づき定められている健康日本21において、平成三十二年までに週労働時間六十時間以上の雇用者の割合を五%まで減少させるという目標値を設定しております。健康づくりにおいては長時間労働雇用者の減少を目指すとしながら、労働法規では時間外労働の上限が適用除外される業種をふやすという大きな矛盾を露呈しています。

 加藤大臣は、過労死家族の皆様方とお会いになってどのようにお感じになりましたか。私は、過労死は誰にでも起こり得ることであり、その悲劇は残された御家族にとって余りにもむごいと感じました。

 御家族の皆さんの願いは、高度プロフェッショナル制度の削除です。大切な御家族を亡くしたからこそ、高度プロフェッショナル制度が長時間労働につながり、過労死がふえるということを見抜いておられるのです。

 安倍総理に採決の前に会わせてください。そして、高度プロフェッショナル制度を削除し、労働者保護のための法案としてください。私たち立憲民主党も対案を提出しましたが、十分に質疑してはいただいておりません。

 現行法上も繰り返し起きている過労死問題を始め、多くの、そして大きな問題や矛盾、危惧が解決、解消されないばかりか、逆にそれらの問題や矛盾、危惧を更に増大させることとなる高度プロフェッショナル制度の新設を含む法案は……

議長(大島理森君) 長谷川君、約束の時間を過ぎております。

長谷川嘉一君(続) 働く人の命等をないがしろにする法案であり、私は断固反対をし、反対討論といたします。(拍手)

議長(大島理森君) 後藤茂之君。

    〔後藤茂之君登壇〕

後藤茂之君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案について、賛成の討論を行います。(拍手)

 我が国の労働時間制度は、戦後の労働基準法制定以来、一日及び一週の法定労働時間を定める一方、労使の協定によれば青天井に認められる時間外労働と、これに対する割増し賃金の支払いを骨格としてきました。また、雇用形態の面では正社員が中心で、パートタイムや有期雇用、派遣の形で働く方は、その働きぶりや成果に比べて処遇が低く、活躍の機会も限られてきた面が否めません。

 今日では、少子高齢化が急速に進むとともに、仕事と育児や介護を両立させたいといった希望を持つ方がますますふえるなど、働く人のニーズも多様化しています。また、成果を時間ではかるのではなく、仕事の成果自体で評価してもらいたいという希望を持つ専門職の方もいます。いつまでも長時間労働に依存する職場では、働く人や社会のニーズに応えられず、労働の生産性を高めることもできません。

 こうした直面する課題について、働く人の目線に立って、関係する制度や慣行を見直し、働く人それぞれが抱えるさまざまな事情や希望に応じた形で働くことのできる社会をつくり上げていく、これが働き方改革の狙いとするところであります。

 時間外労働の上限規制は、これまで労使で合意して協定を結べば青天井で働くことができた時間外労働について、労使協定でも超えることのできない法的な上限を罰則つきで設けるものであり、労働基準法制定以来の大改革です。

 また、高度プロフェッショナル制度は、成果で評価されることを希望する高度専門職の方が、明確な職務範囲について、高い年収を確保した上で、みずから仕事の進め方を決めて自律的に働くことができる選択肢を用意するもので、一般労働者を対象とする制度には見られない健康確保のための特別な措置を講ずることを前提としています。

 同一労働同一賃金は、パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者について、正規雇用労働者との間の不合理な待遇差や差別的取扱い等を禁止すること等を通じ、雇用形態にかかわらない公正な待遇を確保するものです。

 これらの改正は、政府、与党のそれぞれにおいて議論を深め、労使トップと学識者、そして政府の政労使が合意して策定した働き方改革実行計画において成案を得たものです。

 厚生労働委員会での審議を通じ、高度プロフェッショナル制度の適用を撤回できることを明確にする等の修正案が、自民党、公明党、日本維新の会、希望の党から共同提案の上で可決され、働く人の目線から進める働き方改革の趣旨に一層かなった内容となったところであります。

 しかしながら、一部の野党は、特に高度プロフェッショナル制度をめぐり、過労死促進法案、働き方ではなく働かせ方改革などと、働く人に誤解を与えるレッテル張りをしています。

 この制度は、単なる労働時間規制の適用除外の制度ではありません。対象となる業務の範囲や対象者の年収要件を限定した上で、一律の労働時間規制にかえて、年間百四日の休日確保など働き方に合った健康確保のための措置を設けており、実施されていない場合には、高度プロフェッショナル制度の適用が認められません。

 また、医師による罰則つきの面接指導を義務づけており、的確な健康管理や、医師の意見を踏まえた職務内容の見直し等につなげていく仕組みにしています。

 そもそも時間で成果をはかることのできない高度プロフェッショナル制度の対象業務に当てはまらない者にまで、なし崩し的に適用拡大されることもありません。

 また、一部の野党は、厚生労働省が実施した平成二十五年度労働時間等総合実態調査におけるデータ不備の問題を捉え、高度プロフェッショナル制度創設の立法事実が欠けているかのような指摘をしています。

 もちろん、このデータ不備の問題については、厚生労働省の大変な不手際であり、与党としても強く猛省と再発防止を求めるものです。しかしながら、当該調査結果は、労働政策審議会で高度プロフェッショナル制度について議論した際も提示されておらず、いまだ導入されていない本制度についてこの調査結果に基づく議論がされたわけでもなく、このデータ不備をもって高度プロフェッショナル制度の立法事実なしとの指摘は当たりません。

 本法案において、罰則つきの時間外労働の限度を労使トップの合意により設けることになったことは、戦後の労働基準法制定以来、七十年ぶりの大改革であります。

 先日の衆議院の厚生労働委員会で、連合の神津会長からも、高度プロフェッショナル制度の創設については留保しつつも、罰則つきの時間外労働の上限規制や同一労働同一賃金の法整備については、最低限のセーフティーネットを張るものであり、これらのセーフティーネットの内容については、一刻も早いスタートを強く求めると表明されています。この法案は、一刻も早く成立させる必要があります。

 このほかにも、本法案には、月六十時間を超える時間外労働に係る五割以上の割増し賃金の支払い義務について、中小事業主に対する猶予措置を廃止して、中小企業で働く方への保護を強化することが盛り込まれており、働く人の生活と未来のために、できる限り速やかに実現させる必要があります。

 自由民主党は、本法律案を早期に成立させ、働く人の健康をしっかりと確保した上で、一人一人の事情に応じた多様な働き方のできる社会、今後とも雇用をしっかり確保できる社会の実現に向けて、総合的に働き方改革を推進していく、その決意を申し上げて、私の賛成討論といたします。(拍手)

議長(大島理森君) 白石洋一君。

    〔白石洋一君登壇〕

白石洋一君 国民民主党の白石洋一です。

 私は、国民民主党・無所属クラブを代表して、政府提出の働き方改革関連法案に反対の立場で討論します。(拍手)

 冒頭、厚労委員会において強行採決されましたことに強く抗議します。

 この法案は、一つは労働時間規制、二つ目に同一労働同一賃金、そして三つ目は高度プロフェッショナル制度、いわゆる高プロの三つの要素があります。

 政府の、一、労働時間規制と、二、同一労働同一賃金の方向性には賛同します。更によくするため、我々国民民主党や立憲民主党の対案では、さまざまな提案を満載しているところです。

 しかし、高プロは、労働者保護の面から非常に問題であり、その削除を委員会審議で求めてきましたが、残念ながら強行採決され、削除されず、今、本会議上程となりました。

 高プロの重大な危険性に鑑み、高プロ削除の必要性を中心に、委員会での議論をもとにお話しします。

 高プロの正式名称は、特定高度専門業務・成果型労働制ですが、法案のどこを見ても、成果によって報酬を決めることは条件となっていません。すなわち、年一千七十五万円ちょうどの定額さえ払えば、労働者を働かせ放題にすることができるのです。

 年収一千七十五万円で働かせ放題にしたら、その人はどうなるでしょうか。高プロ成立を強いる与党の方々は、恵まれた社会生活を経た方が多いからか、どうも他人事です。

 国民の痛みを自分事としてわかるために、皆さんの給料が一千七十五万円になったと想像してみてください。一千七十五万円で働かせ放題の人たちのことが痛いほどわかるようになるのではないでしょうか。

 加えて危惧されることとして、高プロによる長時間労働の働き方を避けて、労働時間規制がある年収一千万円ぐらいまでで働く方を好む人が多く出てくる、年収一千七十五万円の壁が新たにできてしまうでしょう。

 休日労働の割増し賃金の支払い義務がない、深夜労働の割増し賃金の支払い義務がない、労働時間の規制が全くない、実労働時間の管理が全くされない。だから過労死リスクが高いのです。ここが一番の問題です。

 それに加えて、亡くなった後の経済的な悲惨さです。

 労災では、時間外と休日の労働時間が月百時間超え、複数月八十時間超えであることが過労死の主な認定基準です。しかし、高プロでは使用者の実労働時間管理の義務がないので、この認定基準を立証しがたいのです。

 さらに、過労死は、悲しみに暮れる遺族がこの実労働時間を立証しなければなりません。ですから、泣き寝入りが多発することになります。

 労災ではなく、裁判で使用者の管理責任を問おうとしても、高プロは、自分の意思でそのような働き方をした、自己責任だとされて、使用者の責任が問われにくくなっています。

 すなわち、過労死はふえるのに、労災の過労死認定はされず、遺族は経済的にも追い詰められる、この二つが掛け算のように、悲惨さが働く者とその家族に襲いかかる制度、これが高プロです。

 こんな制度をなぜ政府は導入しようとするのでしょうか。

 一言で言えば、労働者が自律的に働けば生産性がより上がるという根拠も薄弱であり、また、使用者には過大な目標設定を押しつけて悪用する人はいないだろうという性善説的な、全く楽観的な見通しに基づいています。

 労働時間規制の見直しの議論は二〇一三年に労政審で開始されましたが、そこで議論の出発点だと政府が示した平成二十五年度労働時間等総合実態調査が、事もあろうに、全くずさんなものであることが発覚しました。それにより、政府は全体の二割のデータを削除しました。中でも裁量労働制のデータは、全部使えないということでばっさり削除してしまい、裁量労働制の数字での実態が見えなくなりました。

 裁量労働制は、更にスーパーなものにした高プロは、うたい文句では美辞麗句が躍っていても、数字の裏づけ、エビデンスがありません。これでは、暗闇の中で声だけを頼りに野球をするようなものではないですか。

 この制度の可決後、対象者を広げる意図も見てとれます。実際、二〇一五年四月に当時の厚労大臣である塩崎氏は、高プロについて、小さく産んで大きく育てると公に発言されました。これは、高プロの、アリの一穴のように、導入してからの対象拡大を前提としていることを打ち明けたと解されています。

 与党と一部野党が合意した修正案の内容は、残念ながら不十分と言わざるを得ません。なすべき修正は高プロ削除です。たとえ衆院は通過しても、参院での審議があることを考え、以下、委員会での議論等を踏まえ、高プロによる過労死を減らす案を紹介します。

 一つは、勤務間インターバル制度の義務化です。過労死の原因は集中的な長時間労働であるので、終業時間と翌日の始業時間との間に一定時間の休息をとらせるのです。これで、過労で頭がもうろうとした状況を少しでも解消し、過労死を防ぎます。

 もう一つは、法定される年収要件を上げること。すなわち、基準平均給与額の三倍を相当程度上回るの三倍のところを四倍なりにして、対象者を少なくするものです。これにより労働基準監督署の目が行き届くようにすることで、高プロの過労死を抑止します。

 三つ目が、事が起こってからとなりますが、不幸にも高プロにより過労死したと労災申請があった場合に、調査分析と制度の見直しを政府の義務とすることです。今でさえ、死亡しても労災認定されるのは申請の四割程度です。実労働時間が把握されない分、労災申請された高プロ事案を全て分析し、高プロを見直すのです。

 以上、三つ挙げましたが、とにかく、高度に過労死しやすい使用者目線の高プロには、高度に労働者保護に注意を要します。

 安倍総理は昨年二月、過労自殺した元電通社員高橋まつりさんのお母様である幸美さんと官邸で面会されました。お母様が、長時間労働の是正に関し、ぜひ実効性のあるものにしてほしいと訴え、総理は、何としてでもやりますよと応じました。

 その幸美さんやほかの遺族の方々は、今、自分の愛する家族はもう帰ってこないけど、この地獄のような苦しみをほかの人にはさせたくないと、高プロ導入に強く反対しておられます。安倍総理、御遺族の思いにしっかりと応えてください。

 終わりに、たとえ専門性があって、収入が人並み以上でも、人である以上、長時間労働が続けば生身の体は壊れます。労働時間規制を全くなくし、使用者から実労働時間管理義務を免除してしまう高プロだけは削除しなければならないこと、この後も審議を十分尽くすことを強く訴え、討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 伊佐進一君。

    〔伊佐進一君登壇〕

伊佐進一君 公明党の伊佐進一です。

 公明党を代表し、働き方改革法案について、賛成の立場から討論をいたします。(拍手)

 本法案は、戦後の労働基準法制定以来、七十年来の大改革となる法案です。

 労使では長らく決められなかった点について、自公政権において政労使の枠組みをつくり、政治が調整を促すことで合意につながった法案でもあります。あくまで、労政審を含め、労使の合意をベースに作成されたものであるということを、まず申し上げます。そして、そこに至る政治の触媒の役割については、参考人質疑においても高く評価されたところです。

 その最たるものが長時間労働の是正です。日本で初めて、罰則つきの時間外労働の上限を設けました。単月百時間未満、複数月平均八十時間未満という上限は、労使が交渉の末にぎりぎりで合意したものであり、他党対案にある実現可能性のない理想の数字ではなく、責任ある実行可能なスタートラインと言えます。

 しかも、これはあくまで上限であって、この百時間、八十時間ぎりぎりの時間外労働をよしとするものではなく、ここからさらなる努力で長時間労働を減らしていくという政府の姿勢が明確に示されていることは非常に重要です。

 本法案においては、さらには、中小企業への割増し賃金の適用や、産業医・産業保健機能の強化、有給休暇取得に向けた指定制度、同一労働同一賃金によってパートや有期雇用の皆さんの処遇を改善するなど、数々の画期的な施策が盛り込まれています。

 また、我が党がこれまで強く主張してきた点も多数盛り込まれております。本会議の趣旨説明、質疑において、総理からは、罰則つきの時間外労働の上限規制や同一労働同一賃金と並んで、勤務間インターバル制度についても、我が党の提言をしっかりと明記したと発言がありました。

 この勤務間インターバル制度については、現在、導入している事業所が一・四%という現場の状況にも配慮しつつ、努力義務として初めて法文化したことは大きな一歩だと評価します。

 あわせて、日本の雇用の七割を担う中小・小規模事業者において、本法案の実効性を確保する配慮も重要です。空前の人手不足と言われる中、また取引条件の改善が十分になされていない事業所もある中で、働き方改革のしわ寄せが中小・小規模事業者に来るようなことがあってはなりません。

 本法案においては、準備期間として、中小企業への施行期日を一年間おくらせ、また、行政官庁は助言指導において配慮することとしています。さらには、日本維新の会の提案により、地方公共団体、労働者団体、中小企業による協議会の設置が盛り込まれたことは、公明党が進めてきた地方版政労使会議とも意を同じくするものであり、評価できます。

 本法案は、新たな社会のニーズに応えるものとなっております。これまで我が国において労働力の中心と考えられてきた男性現役世代が減少し、現在は、多様な人材が多様な形で活躍する社会が求められています。そして、それを可能とするためには、残業削減と柔軟な働き方をともに実現することが必要不可欠です。多様な人材の能力を最大限に生かす施策として本法案に盛り込まれているのが、同一労働同一賃金であり、また高度プロフェッショナル制度です。

 本法案においては、高度プロフェッショナル制度の恣意的な濫用を避けるため、年収要件や業種の限定のほか、本人の同意、また労使同数の労使委員会で五分の四以上、すなわち労働者側の過半数の賛成が必要条件となっています。更にその上で、年間百四日間の休日確保に加え、その他の選択的措置が義務づけられるなど、平成二十七年法案から健康確保措置が充実されています。

 今後、対象がむやみに拡大されるのではないかとの指摘がありました。しかし、そもそも年収要件は法律事項であるため、国会で審議、可決しなければ変えられないこと、また業種については労政審の審議が必要であること、何よりも、本人同意に加えて、同意を撤回する手続についても法律上盛り込まれたことにより、幾重にも慎重な運用がなされることとなっております。

 また、労災認定については、高プロにおいて把握される健康管理時間が一般労働者で把握される実労働時間とほぼ同義であり、労災認定手続は一般労働者と比べて変わるものではないことは、質疑を通じて確認されております。

 いずれにしても、高プロ制度に限らず、あらゆる法制度は、悪用を防ぎ、適切に運用されることが重要であり、我が党としては、現場で働く人たちを守るため、政府執行機関に対して引き続き厳格な運用を求めてまいります。

 今回の労働実態調査については、異常値が二割にも上るような手法で調査を行ったこと、しかも、裁量労働制との時間比較で使ったことで、審議に混乱を来しました。これは残念なことであり、政府には猛省を求めます。

 結果、裁量労働制に関する事項は削除されました。その際、我が党として、早急に適切な手法によって実態調査を行い、単なる裁量労働制の対象業務の拡大だけではなく、健康確保措置についても充実させるよう、政府に緊急申入れを行いました。その申入れの中で、本法案において先んじて明記されたものもあります。例えば、裁量労働制のようなみなし労働時間制においても労働時間を把握する義務を法律上規定したことであり、これにより、裁量労働制の恣意的な運用を防ぐことにつながります。

 このデータ問題は、多くの野党の皆さんが指摘されるような、議論の結論を変え、本法案の内容に影響を与えるものではありません。本データが労政審において使われたのは、長時間労働の是正と中小企業における時間外労働割増賃金の適用についての議論でした。

 厚労省がデータの誤りを精査し直した結果、例えば、一月の法定時間外労働が四十五時間を超える事業場は精査前後でともに一割程度存在し、今回のデータ問題によって、長時間労働の是正や中小企業の割増賃金の必要性がなくなるとは到底思えません。データを労政審に差し戻して議論すべしとの御意見は、単に長時間労働是正の取組をおくらせるものであり、全くの的外れだとはっきりと申し上げたい。

 本法案に盛り込まれた内容の多くは、与野党を超えて広く賛同されるものです。事実、例えば時間外労働の上限規制について、連合の神津会長からも、一刻も早くスタートさせていただきたいと、参考人質疑において強く発言されました。

 ほぼ毎日、御家族にとって大切な命が過労死によって日本のどこかで奪われているというこの現状において、働き方改革は待ったなしです。残業を減らしていこう、過労死をなくそう、この思いは、この議場にいる誰もが共有しているはずです。

 今必要なことは、こうした原点に立ち返り、前向きな議論を積み重ねていくことであって、生産的な法案修正協議を行った日本維新の会、希望の党の皆さんには、この場をおかりして感謝を申し上げます。

 改めて、柔軟な働き方を可能とし、また長時間労働の是正に大きく切り込む本法案に対し、議員各位が良心に沿って御判断いただくことを希望し、賛成の討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 大串博志君。

    〔大串博志君登壇〕

大串博志君 無所属の会の大串博志です。

 私は、会派を代表して、いわゆる働き方改革法案に対して、反対の立場から意見を述べさせていただきます。(拍手)

 まず、本法案が何を目指すものなのか、大いに疑問です。

 罰則つきで、長時間労働規制のいわゆる青天井をなくしていく取組自体は是とします。

 一方で、高度プロフェッショナル制度、実質的に長時間労働規制がなくなるに等しいこの制度の新設は断固として認められません。年収千七十五万以上に限る、職種も限定するとされていますが、労働者派遣制度を思い出してください。一旦制度を導入した後、緩和に次ぐ緩和の歴史だったではないですか。

 しかも、今回の場合、大企業経営者団体の代表が、制度検討の早い段階から、年収要件を緩和して対象職種を広げると述べていたではないですか。まさに、衣の下のよろいとはこのことです。

 加えて、データの問題です。

 全体の二割は現実的にあり得ない異常値でした。だとすると、残りの八割も、異常値ではなくとも怪しいに決まっているじゃないですか。法案の基礎が既に崩壊しています。

 議場内の皆さん、もう一度よく考えていただきたい。長時間労働規制、平たく言うと、残業、土日休日出勤ということです。勤めの経験のある方なら容易に理解されると思います。どれだけ残業させられるか、どれだけ土日休日出勤をしなければならないのか、どれだけ休みがとれるかということは、自分の生活を決定的に決めてしまう、いや、時には自分の命さえ決めてしまう、極めて深刻なことではないでしょうか。

 片や長時間労働規制だといいながら、もう一方で残業、土日休日働かせ放題の、しかもその範囲がどんどん広がりかねない制度を入れる。まさに働かせ放題法案としか言いようがありません。

 そもそも、安倍総理、安倍内閣に、このような法案を提案する資格があるのでしょうか。

 昨年七月二十四日、私は衆議院予算委員会で、安倍総理に対して、加計学園の獣医学部新設構想をいつ知ったのかと問いました。それに対して安倍総理は、二〇一七年一月二十日に特区が認められたときに初めて知ったと答弁しました。あの一月二十日答弁です。私は、驚きの余りのけぞりそうになったのを忘れません。

 各種世論調査を見ても、今、世の中で、安倍総理のことを正直な人と思っている人はどれだけいるのでしょうか。与党の皆さんも、加計学園のこと、本当は安倍総理はあのとき会っていて、知っていたんじゃないかと内心思っていたんじゃないですか。うそを一つつくと、二つ、三つとうそを重ねなければならなくなる、まさにそんな状況になっているようにしか見えません。加計学園や部下にはそんたくをさせて、責任だけは押しつける。

 麻生副総理・財務大臣に至っては、あれだけ広範に決裁文書の改ざんが自分の組織で行われていながらも、悪質ではないと開き直る始末。本件がたとえ不起訴となったとしても、真実を隠蔽しようとしたという事実に変わりはありません。

 国民の常識感とかけ離れ過ぎています。国民からの信頼が失墜し切っている安倍総理、安倍内閣のもとで、私たちの働き方が、そして命が決められるなんて、絶対に許されるものではありません。

 顔を洗って出直してくるべし。この法案にはそう言うしかありません。

 強硬な委員会運営を経て本法案を採決し、可決する。とんでもないことです。断固反対することを訴えて、私の討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 浦野靖人君。

    〔浦野靖人君登壇〕

浦野靖人君 日本維新の会の浦野靖人です。

 私は、我が党を代表して、働き方改革関連法案に賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 日本維新の会は、成果給への転換法案や解雇ルール明確化法案などを議員立法として提出してきました。政府が進めようとしている働き方改革は、高度プロフェッショナル制度という新しい働き方を提案する内容となっており、日本維新の会としても、成果給への転換への道筋をつける重要なポイントであると考えていました。

 かねてより、日本のホワイトカラーの生産性の低さが指摘されてきました。高度プロフェッショナル制度という、成果を純粋に評価する仕組みが一部の職場に導入されれば、制度適用外の職場においても、働いた時間の長さよりも働いて上げた成果の方が評価されるという考え方が広まり、社会全体の生産性や働き方の考え方が変わります。

 高度プロフェッショナル制度をみずからの意思で選択し、その働き方に合わない場合は、みずからの意思でもとの働き方に戻れることも必要です。しかし、政府案では、もとの働き方に戻れる仕組みが明確ではありませんでした。そこで、我が党は、修正を強く要求し、最終的には、労働者の同意の撤回に関する手続を労使委員会の決議事項とする内容を盛り込むことができました。

 また、中小企業対策においては、さまざまな職種があり、就業形態が多様であることを考慮して、中小企業にとって雇用対策法の実施に無理が生じない仕組みが必要であると考え、政府に強く要求しました。そして、地方公共団体、中小企業者により構成される団体その他の事業主団体、労働者団体などの関係者によって構成される協議会を設置し、連携体制を整備するために必要な施策を講ずるように努める旨の修正を入れることができました。

 長時間残業を引き起こす原因となるのが、取引先企業からの短納期の発注及び急な発注内容の変更であるという現状があります。政府案では考慮されていなかった、著しく短い期限の設定や発注内容の頻繁な変更を行わないように、事業主に対する取引上の配慮を強く要求し、法案には、努力義務ながら盛り込むことができました。

 その他、今後の検討事項として、本則に、労働者と使用者の協議の促進などを通じて、仕事と生活の調和、労働条件の改善、雇用形態又は就業形態の異なる労働者の間の均衡のとれた待遇の確保その他の労働者の職業生活の充実を図ることが明記されました。いずれも、我が党が要求した改正内容です。

 さて、前半国会において発覚した働き方改革に係るデータ不備問題は、政治、行政に対する国民からの信頼を失いかねない重大な問題です。

 データ単体を見れば、統計学的には信頼性が担保されているものですが、本来比較すべきではないデータを比較した点や、調査時点から既に五年も経過していることから、我が党は、改めて調査を行い、実態を正確に把握した上で、対策を更に講ずる必要があることを改めて政府に申し上げます。

 日本維新の会は、政府が提案してきた働き方改革について、当初から真摯に向き合い、何が必要で何が不足しているかということを検討し、希望の党とともに法案の修正を政府に要求して実現をさせ、新しい労働法制として導入することができました。これが真っ当な政治であると私たちは考えます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、働き方改革一括法案について、断固反対の立場から討論を行います。(拍手)

 まず、八本の法案を一くくりにし、与党による強引な委員会運営と強行採決がされたことに、満身の怒りを込めて抗議します。

 二十五日の委員会も、過労死家族の会の皆さんが遺影を抱きながら傍聴していました。四年前、史上初めて過労死という言葉を入れた過労死防止法を全会一致で採択し、うれし涙を流した同じ委員会室です。それがまさかの、怒りと悔しさに涙を浮かべていました。仕事によって最愛の家族を奪われた皆さんが絶対にやめてほしいと言っている、その一点だけでも、本法案は認められません。

 裁量労働制のデータ捏造が発覚したことにより、該当するデータは撤回され、企画業務型裁量労働制の拡大は法案から削除されました。驚くことに、昨日の委員会でもまた、補正したはずの数字に基づく資料が転記ミスで修正されていなかったなどの報告がありました。

 一方、労政審での審議の土台になった資料にも影響があります。特別条項つき三六協定を結んだ事業場のうち、実際の残業時間が一千時間超だった事業場が三・九%から四八・五%にも激増したのです。それでも労政審に報告する必要はないと居直る厚労省は、命にかかわるデータを何と思っているのでしょうか。

 反対する最大の理由は、残業代ゼロ制度を導入し、過労死ラインを合法化することです。

 高度プロフェッショナル制度は、初めて、労働時間規制を適用しない労働者をつくり出します。年百四日さえ休ませれば、四十八日間かつ二十四時間連続勤務でも違法にはなりません。業務量には裁量がなく、長時間労働に追い込まれることは明らかです。

 加藤大臣は、自律的に仕事をし、イノベーションや高付加価値が生み出され、ひいては経済の発展につながると繰り返しました。しかし、時間と賃金を切り離したからといって成果と賃金もリンクしないことは、大臣も認めました。労働者のニーズは十二名のヒアリング以外に示すことができず、むしろ深夜手当を出したくない使用者側のニーズを代弁するに終始したのです。

 残業時間の上限規制は、私たちも求めてきました。しかし、単月百時間未満、複数月平均八十時間という過労死ラインまでの残業は絶対に認められません。しかも、最も過労死の多い分野で上限規制を除外、猶予などあり得ません。さらに、月をまたいで業務が集中すれば、三十日間で百五十時間の残業もあり得ることも明らかになりました。これでは、過労死はなくならないばかりか、ふえるではありませんか。

 次に、同一労働同一賃金は、法案に文言すらありません。人材活用の仕組みを理由に、正社員との違いを合理的とする基本的内容は変わらないため、均等待遇の対象となるパートタイム労働者は一・五%にとどまり、有期労働者や派遣労働者についても極めて限定されます。これでは、非正規労働者の待遇改善どころか、格差固定化と言うべきです。

 雇用対策法が変質させられます。同法は、憲法二十七条の勤労権を保障し、完全雇用の達成を目指すものですが、生産性の向上が目的の中心に据えられ、多様な就業形態の名目で労働者保護法制が適用されない、非雇用型の働き方をふやすものであり、極めて重大です。

 最後に、労働法制を打破すべき岩盤規制だとして、産業競争力会議や規制改革会議などが決めた方針を、厚労省の頭越しに労政審に押しつける極めて異常な手法をとってきた安倍政権に、働き方改革などと語る資格はありません。

 労働基準法は、第一条にあるように、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすものでなければなりません。戦後の帝国議会で、民間の自由契約だけに任せていては労働者の健康を守れないとして、国家が最低限の基準を示すべきとされたのです。本法案は歴史を七十年後戻りさせる大改悪であると指摘をし、反対討論といたします。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 日程第二は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 日程第二 鉄道軌道整備法の一部を改正する法律案(国土交通委員長提出)

議長(大島理森君) 日程第二、鉄道軌道整備法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。国土交通委員長西村明宏君。

    ―――――――――――――

 鉄道軌道整備法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔西村明宏君登壇〕

西村明宏君 ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。

 本案は、激甚災害その他これに準ずる特に大規模な災害に係る鉄道の災害復旧事業に対し、国の補助制度を拡充しようとするもので、その主な内容は、

 第一に、鉄道の災害復旧事業について、赤字事業者に限定せずに、激甚災害等に係るものであること、復旧費用が、被害を受けた鉄道路線の年間収入以上であること、被害を受けた鉄道路線が、過去三年間赤字であること等を要件として、当該災害復旧事業に要する費用の一部を補助できること、

 第二に、補助を受けた場合でも、配当を行う際の国土交通大臣の許可は不要とすること

などであります。

 本案は、去る五月三十日の国土交通委員会において、全会一致をもって委員会提出法律案として提出することに決したものであります。

 何とぞ速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 日程第三ないし第六は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 日程第三 スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律案(文部科学委員長提出)

 日程第四 平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法及び平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法の一部を改正する法律案(文部科学委員長提出)

 日程第五 スポーツ基本法の一部を改正する法律案(文部科学委員長提出)

 日程第六 国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案(文部科学委員長提出)

議長(大島理森君) 日程第三、スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律案、日程第四、平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法及び平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法の一部を改正する法律案、日程第五、スポーツ基本法の一部を改正する法律案、日程第六、国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案、右四案を一括して議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。文部科学委員長冨岡勉君。

    ―――――――――――――

 スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律案

 平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法及び平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法の一部を改正する法律案

 スポーツ基本法の一部を改正する法律案

 国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔冨岡勉君登壇〕

冨岡勉君 ただいま議題となりました四法案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。

 まず、スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律案は、平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会等の開催を控え、スポーツにおけるドーピングの検査体制の整備を進めることが急務となっていることから、ドーピング防止活動に関する施策を総合的に推進するため、基本理念を定め、責務等を明らかにするとともに、基本方針の策定その他の必要な事項等を定めるものであります。

 本案は、昨三十日、文部科学委員会において、賛成多数をもって委員会提出の法律案とすることに決したものであります。

 次に、平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法及び平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法の一部を改正する法律案は、大会の円滑な準備及び運営のさらなる充実のため、電波法の特例を追加し、大会の組織委員会については、無線局の免許・登録申請等の手数料及び無線局の電波利用料に係る電波法の規定を適用除外とするとともに、国民の祝日に関する法律の特例を追加し、平成三十二年に限り、海の日を七月二十三日に、体育の日を七月二十四日に、山の日を八月十日にするものであります。

 本案は、昨三十日、文部科学委員会において、内閣の意見を聴取した後、賛成多数をもって委員会提出の法律案とすることに決したものであります。

 次に、スポーツ基本法の一部を改正する法律案は、平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の開催を好機と捉え、スポーツを通じて世界各国と協調していくため、世界的に広く用いられているスポーツの語を基本的に用いることが望ましいことから、国民体育大会の名称を国民スポーツ大会に改めるとともに、公益財団法人日本体育協会及び財団法人日本障害者スポーツ協会の表記を、現在の両団体の正式名称に合わせて改めるものであります。

 本案は、昨三十日、文部科学委員会において、全会一致をもって委員会提出の法律案とすることに決したものであります。

 最後に、国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案は、スポーツを通じて世界各国と協調していく観点から、学校教育としてのイメージの強い体育の語を用いる体育の日の名称を、スポーツの日に改めるなどとするものであります。

 本案は、昨三十日、文部科学委員会において、全会一致をもって委員会提出の法律案とすることに決したものであります。

 なお、本委員会におきまして、スポーツ基本法の一部を改正する法律案に関連し、スポーツへの障害者の参加の更なる促進のため「障害」の「害」の表記について検討を求むるの件について決議が行われましたことを申し添えます。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより採決に入ります。

 まず、日程第三及び第四の両案を一括して採決いたします。

 両案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、両案とも可決いたしました。

 次に、日程第五及び第六の両案を一括して採決いたします。

 両案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも可決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       文部科学大臣  林  芳正君

       厚生労働大臣  加藤 勝信君

       国土交通大臣  石井 啓一君

       国務大臣    菅  義偉君

       国務大臣    鈴木 俊一君


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