衆議院

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第39号 平成30年6月19日(火曜日)

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平成三十年六月十九日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第三十一号

  平成三十年六月十九日

    午後一時開議

 第一 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、参議院送付)

 第二 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 法務局における遺言書の保管等に関する法律案(内閣提出)

 第四 特定複合観光施設区域整備法案(内閣提出)

 第五 健康増進法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第六 公職選挙法の一部を改正する法律案(参議院提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、参議院送付)

 日程第二 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 法務局における遺言書の保管等に関する法律案(内閣提出)

 日程第四 特定複合観光施設区域整備法案(内閣提出)

 日程第五 健康増進法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第六 公職選挙法の一部を改正する法律案(参議院提出)


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、参議院送付)

議長(大島理森君) 日程第一、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。地方創生に関する特別委員長渡辺博道君。

    ―――――――――――――

 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔渡辺博道君登壇〕

渡辺博道君 ただいま議題となりました法律案につきまして、地方創生に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、地域の自主性及び自立性を高めるための改革を総合的に推進するため、地方公共団体等の提案等を踏まえ、所要の措置を講じようとするものであります。

 その主な内容は、

 第一に、住民に身近な行政を地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにするため、国から地方公共団体又は都道府県から中核市への事務、権限の移譲を行うこととし、関係三法律の改正を行うこと、

 第二に、地方がみずからの発想でそれぞれの地域に合った行政を行うことができるようにするため、地方公共団体に対する義務づけ、枠づけの見直し等を行うこととし、関係十四法律の改正を行うこと

であります。

 本案は、参議院先議に係るもので、去る六月七日本委員会に付託され、翌八日梶山国務大臣から提案理由の説明を聴取し、十五日、質疑を行い、これを終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 法務局における遺言書の保管等に関する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第二、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案、日程第三、法務局における遺言書の保管等に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。法務委員長平口洋君。

    ―――――――――――――

 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案及び同報告書

 法務局における遺言書の保管等に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔平口洋君登壇〕

平口洋君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案は、高齢化の進展等の社会経済情勢の変化に鑑み、相続が開始した場合における配偶者の居住の権利及び遺産分割前における預貯金債権の行使に関する規定の新設、自筆証書遺言の方式の緩和、遺留分の減殺請求権の金銭債権化、特別の寄与の制度の新設等を行おうとするものであります。

 次に、法務局における遺言書の保管等に関する法律案は、高齢化の進展等の社会経済情勢の変化に鑑み、相続をめぐる紛争を防止するため、法務局において自筆証書遺言に係る遺言書の保管及び情報の管理を行う制度を創設するとともに、当該遺言書の検認に係る民法の規定の適用を除外する等の措置を講じようとするものであります。

 両案は、去る六月五日本委員会に付託され、翌六日上川法務大臣から提案理由の説明を聴取し、八日質疑に入り、十三日参考人から意見を聴取しました。十五日、質疑を終局し、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案については、討論を行い、採決の結果、賛成多数をもって、また、法務局における遺言書の保管等に関する法律案については、採決の結果、全会一致をもって、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、両案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 両案中、日程第二につき討論の通告があります。これを許します。山尾志桜里君。

    〔山尾志桜里君登壇〕

山尾志桜里君 立憲民主党の山尾志桜里です。

 まずは冒頭、昨日からの近畿地方における地震で命を落とされた方々と御遺族に対し心からのお悔やみを、そして被害に遭われ厳しい状況に置かれている皆様に心からのお見舞いを申し上げます。

 本日は、立憲民主党・市民クラブを代表し、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案につき、反対の立場から討論いたします。(拍手)

 反対の理由は、本質的な一点です。

 今回創設される特別寄与制度の対象から事実婚や同性パートナーが排除されていること、そして、その判断が象徴する現政権の冷たさ、人権意識の致命的な鈍感さを容認できないからであります。

 高齢化が進む中、一人一人が自分らしく人間関係を築き、互いに支え合いながら人生の終盤を彩っていくあり方はさまざまです。しかし、今の相続制度では、そうした多様な支え合いの形を保障できず、不公平が生じています。

 ですから、法律上の相続人以外の方が献身的に介護や看病などの貢献をしたとき、それを評価し、相続人への金銭請求を認めて実質的な公平を図る制度をつくろう、この提案に、私たちは賛成です。

 しかし、その趣旨は、いわゆる長男の嫁のみならず、むしろ、長年連れ添い、実質的には相続人と同じ法的利益を受け取るべき立場にありながら、法律上の相続人になることのできない事実婚や同性パートナーにこそ当てはまるのではありませんか。にもかかわらず、対象からあえて排除するのは、制度趣旨をねじ曲げる不公正ではありませんか。

 委員会質疑でその点を繰り返しただしましたが、政府の弁解は、ただひたすらに、事実婚や同性パートナーを含むと遺産分割が長期化、複雑化するの一点張りでした。

 しかし、そもそもこの新制度は、形式的な不都合を実質的に解消するものでありますから、一定の長期化、複雑化は織り込まれております。だからこそ、期間制限、すなわち、この制度が利用できるのは、相続開始や相続人を知ったときから六カ月、実際に相続が始まったときから一年と、権利行使が限定されているのです。

 長期化、複雑化対策には、この期間制限を全ての対象者に公平に運用することが王道であり、対象者を分断し、社会的マイノリティーを排除することで対応するのは、人権国家として致命的な過ちです。

 そもそも、事実婚の当事者の中には、政府が選択的夫婦別姓から逃げ続けているがために、法律婚を望みつつ事実婚を選択しているカップルが大勢います。同性パートナーは、政府が同性婚を認めないがために、法律婚を望んでもできない状態に置かれています。

 選択的夫婦別姓やLGBT差別解消法、同性パートナーシップ制度あるいは同性婚は、多様で差別のない社会を選択する近代国家の標準装備であります。しかし、私たち野党の中の多くの政党がこうした法案を提案しても、政府・与党は審議や協力を拒否しています。

 法律婚を望むカップルすら法律婚できない環境をあえて放置しながら、他方で、提出してくる閣法では、法律婚でないという理由で排除するのは、無責任な差別と言われても仕方がないのではありませんか。

 法制審のパブリックコメントでも、限定すべしとする立場は九、限定すべきでないとする立場は二十六、約三倍でした。法制審そのものにおいても、終盤まで、親族に限定しない立場を基本として検討を進めると明記されておりました。

 法務委員会では、野党推薦の参考人はもちろん、与党推薦の参考人すら、一学者としての見解においては親族に限定しないことが望ましいという立場に立たれていたことが明らかになりました。

 にもかかわらず、政府はなぜ無理筋、真逆の結論を出したのでしょう。大変不可解です。

 実は、この法案のきっかけは、二〇一三年の最高裁において、婚外子差別による民法相続格差を違憲とする判決にありました。

 報道によれば、そのころの自民党部会において、次のような声が上がったとされております。自民党として、最高裁の判断はおかしいというメッセージを発するべきではないか、国権の最高機関が、司法判断が出たからといって、はいはいと従うわけにはいかない。これほどまでに三権分立の本質を無視する発言が複数与党内からあったとすれば、改めて驚きを禁じ得ません。

 実際、法制審の第一回においても、法務省の事務方が、今回の相続法制見直しの理由について、さきの最高裁判決を受け、法律婚の尊重を図るための措置を別途検討すべきとの指摘がなされたと言及しています。この指摘をしたのは誰なのでしょうか。むしろ、この最高裁判決を受けた世論の中には、多様な家族のあり方を保障するための制度改正を加速すべしとの指摘が多数あったにもかかわらず、なぜそちらは無視されたのでしょうか。

 つまるところ、この法案は、婚外子差別是正判決と法律への巻き返し策としてスタートし、その色合いを今もなお残しているのではありませんか。だから、あらゆる議論の場で、法律上の親族に限るべきでないという意見が優勢を占めても、最終最後、何の合理的説明もないまま親族要件が復活したのではありませんか。

 また、法制審の委員においては、親族要件をつけるべきだという立場に明確に立った委員はたった一人であり、この委員は、メディアにおいて安倍総理の側近であると自認し、総理を人懐っこい兄貴分のような存在と語っていることを付言いたします。

 私たち立憲民主党は、この法案の賛否について最後まで判断を留保しておりました。

 しかし、最終的に、法案の一部であれ、多様で差別のない社会という譲れない価値に本質的に反する法案には、反対の姿勢を明確にし、その理由を議事録にとどめることで、今の安倍政権には発信できないリベラルな価値の発信者となることを選択いたします。

 少なくとも、この社会の普遍的な価値である個人の尊厳を尊重するならば、個人の価値観の多様化がパートナーシップの形の多様化につながることを自然に受けとめ、その多様なパートナーシップを包摂する社会へと進むべきです。

 これに対して、今回の法案は、国家の側が考える個人やパートナーシップの形に当てはまらない人々を排除し、人格の本質的な対等性を傷つけるもので、容認できません。

 法務委員会で、LGBT当事者である鈴木賢明治大学法学部教授が参考人としてお話しされた言葉を紹介します。

 同性カップルを婚姻から排除することは、国が法律によって同性愛者を差別することに加担することにほかなりません。せめて相続法による特別寄与制度から排除しないという姿勢を示すことで、同性愛者に対する法による差別をやめる方向へと転換すべきことを強く求めたいと存じます。法律の小さな文言ですけれども、それが日本を変える力になります。

 私たちは、親族というこの法案の小さな文言が、差別に加担し、固定化する見えない力となることに反対いたします。

 自民党、公明党の中にも、多様性を認める社会を標榜する方がおられます。本当にその価値を信じているなら、たまには国会議員の本分である採決で示していただきたいと思います。

 そして、無所属の議員も含めて、野党の議員の皆さんに心からお願いをいたします。

 国会議員が採決で示すことのできる価値観は、たとえ今は法律が通ってしまうとしても、これからの社会を変える力になります。

 人は、誰しもが、どこかを切り取れば少数者です。小さい文言による大きな差別を見逃さずに、毅然と行動していただきたいと思います。

 私たち立憲民主党は、立憲の言葉を民主の上に置き、多数決でも侵すことのできない少数者の権利と価値を全力で守ることをお約束し、反対の討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。自席にお戻りください。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより採決に入ります。

 まず、日程第二につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

 次に、日程第三につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 特定複合観光施設区域整備法案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第四、特定複合観光施設区域整備法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長山際大志郎君。

    ―――――――――――――

 特定複合観光施設区域整備法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔山際大志郎君登壇〕

山際大志郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律に基づく措置として、都道府県等による区域整備計画の作成及び国土交通大臣による当該区域整備計画の認定の制度、カジノ事業の免許その他のカジノ事業者の業務に関する規制措置等について定めるものであります。

 本案は、去る五月二十二日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、二十五日に石井国務大臣から提案理由の説明を聴取した後、同日質疑に入りました。三十一日には参考人から意見を聴取し、翌六月一日には安倍内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行うなど慎重に審査を重ね、十五日質疑を終局いたしました。次いで、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 討論の通告があります。順次これを許します。福田昭夫君。

    〔福田昭夫君登壇〕

福田昭夫君 立憲民主党の福田昭夫です。

 私は、立憲民主党・市民クラブを代表して、特定複合観光施設区域整備法案、いわゆるIR法案について、反対の立場で討論を行います。(拍手)

 その前に、昨日の大阪北部地震におきましてお亡くなりになられた方々に対し哀悼の意を表します。また、被災された方々に対しお見舞いを申し上げますとともに、政府におきましては、全力を挙げて救助活動、災害復興対策に取り組んでいただきたいとお願いを申し上げます。

 それでは、反対の主な理由を十一点申し上げます。

 第一点、立法事実がない。

 政府は、カジノを含むIR施設をつくり、国際競争力の高い、魅力ある滞在型観光を実現すると言いますが、カジノがなくても、外国人観光客は既に昨年二千八百万人を超え、ことしはそれを上回る勢いでふえています。しかも、カジノを目的に来日する外国人はごくわずかです。

 平成二十九年、日本政策投資銀行と日本交通公社が、六千二百七十四人のアジア、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアの訪日観光客の意向調査を実施しました。IRができたら行ってみたいと六割が回答。しかしながら、肝心なカジノ施設へ行きたいはたった七%。しかも、政府が強調する日本版統合型リゾートには行きたくないが一一%もいました。多くの人の行きたい先は、商業施設、ホテル、アミューズメント施設、温浴施設等で、カジノではありません。

 第二点、立法目的が不明瞭。

 観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資することを目的とするとしていますけれども、何の試算もせずに、どうして経済効果があると言えるのか。政府は、具体的な場所や施設の規模が決まっていないので試算できないと無責任な答弁を繰り返すばかりでありました。

 第三点、違法性の阻却が不十分。

 我が国では、今回初めて賭博が民間事業者に許可されるにもかかわらず、法務省で有識者を集めた議論が一度も行われませんでした。

 政府は、目的の公益性、運営主体の性格、収益の扱い、射幸性の程度、運営主体の廉潔性、運営主体の公的管理監督、運営主体の財政的健全性、副次的弊害の防止について、全体として刑法の賭博に関する法制との整合性は図られていると繰り返し答弁してきました。

 しかしながら、刑法が保護する法益がカジノ合法化で守られているという立証、新しい公益性が法益の侵害より大きいの実証は全くなされておりません。その実例として、外国のあるカジノ業者の収益構造を見ると、もうけのほとんどを株主に還元しています。

 第四点、政省令等に委任し過ぎ。

 政令五十八、国土交通省令四十四、カジノ管理委員会規則二百二十九、合計三百三十一項目以上が委任されており、不明な点が多過ぎて議論が深まりません。我が国では初めて違法な賭博を民間事業者に許可するのですから、三百三十一項目以上の委任事項の案を全て国会に提出して、丁寧な議論が必要なのではないでしょうか。

 第五点、カジノを含むIR事業者の破綻処理が不明確。

 都道府県等とIR事業者が実施協定を締結するとき、IR事業者が破綻した場合に、地権者に更地にして返還する旨の条文を入れられるかどうかはIR事業者との交渉次第。都道府県等とIR事業者との力関係は、圧倒的な力を持つ外国のカジノ資本にかなわないのではないでしょうか。ここはやはり、法律で明確に規定する必要があるでしょう。

 第六点、カジノゲーミング区域の面積上限値規制なし。

 当初、ゲーミング区域の面積の上限を、一万五千平米又はIR施設の延べ床面積又は区域の面積のいずれか大きい面積の三%のいずれか小さい数値としたのに、いつの間にか、上限値一万五千平米と、区域の面積が削除されました。これで、カジノ事業者は日本にシンガポールより大きい世界最大規模のカジノを三カ所もつくれることになりました。

 第七点、カジノへの入場に際して、本人の入場回数の確認手段としてマイナンバーカード及びその公的認証を義務づけました。

 本人確認なら、運転免許証でも健康保険証でも可能。わざわざマイナンバーカードで本人確認をする必要はありません。マイナンバーカードで入場回数を確認することもできません。マイナンバーカードなら、本人が了承すれば、全金融機関とつながって貸付枠が設定しやすくなるからではないですか。

 第八点、カジノ事業者による無利子貸付制度。

 賭博場の中に貸付けなどの特定金融業務を認めるのも我が国では初めてです。しかも、貸金業法の適用を受けないので、総量規制もありません。マイナンバーカードで本人の金融資産を確認して、その枠内で貸付枠を設定できるではありませんか。カジノに日本人向け貸付制度は必要ないでしょう。

 第九点、ギャンブル依存症対策が不十分。

 日本人等の入場回数を、連続する七日間で三回、連続する二十八日間で十回は多過ぎます。我が国は諸外国と比べてギャンブル依存症が多いので、最も厳しい回数制限、連続する七日間で一回、連続する二十八日間で七回を採用すべきです。

 第十点、これが一番大きな問題。外資規制がない。

 IR事業者は国内の事業者に限るとしておりますけれども、外資規制がなければ、カジノ運営のノウハウを持っている国内事業者がいないので、実質的に外資に賭博場を開放することになります。違法性を十分に阻却せずに開放するとしたら、国富、国民の富を売るようなものではありませんか。

 政府は、WTOのルールで外資規制はできないと言っていますが、悪法をつくってまで外資に貢ぐ必要があるのでしょうか。

 第十一点、余りにも拙速な審議。

 本文二百五十一条、附則十六条の大部な法律です。二十時間にも満たない審議で採決できるのでしょうか。なぜそんなに急ぐ必要があるのか。誰の都合なのか、外国カジノ資本の都合なのか。マカオの免許が二〇二〇年に切れるためなのか。

 委員会で強行採決をして、会期延長してまで成立させるだけの価値のある法律ではありません。疑問だらけです。

 終わりに一言申し上げます。

 我が国は、自然、歴史、文化、気候、食という観光振興に必要な四つの条件を兼ね備えた、世界でも数少ない国の一つです。カジノつきIRで国際観光客急増のシンガポールを見習えと言いますが、カジノがない日本の方が、外国人観光客とその消費額の増加が数倍大きいことも周知の事実です。

 うそつきは泥棒の始まりと言いますが、うそは国を滅ぼし、国民を不幸にします。カジノ実施法案は国を滅ぼし、国民を不幸に陥れます。決して成長戦略にはなりません。

 安倍総理も与党の皆さんも、この辺で思いとどまってはいかがでしょう。思いとどまることをお勧めして、私の反対討論といたします。合掌。(拍手)

議長(大島理森君) 木原誠二君。

    〔木原誠二君登壇〕

木原誠二君 自由民主党の木原誠二です。

 冒頭、昨日発生した大阪北部を震源とする地震で被災された皆様に心からのお見舞いを申し上げますとともに、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げます。政府には引き続き万全の対応を求めたいと思います。

 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました特定複合観光施設区域整備法案につきまして、賛成の立場から討論をさせていただきます。(拍手)

 まず、一言申し上げます。

 内閣委員長解任決議案及び国土交通大臣不信任決議案、ともに否決との本院の明確かつ圧倒的な意思が表明された後にもかかわらず、先週金曜日の内閣委員会の採決時、一部野党議員が、内閣委員長のみならず速記者にまで激しく詰め寄るなど、大変な混乱を引き起こしました。極めて残念であり、猛省を促すものであります。

 さて、二千八百万人、安倍政権によるビザ緩和やCIQ整備などの積極的な施策により、わずか数年で訪日外国人旅行者の数は驚くほど増加しました。

 しかし、本格的な観光立国、観光先進国の実現に向けては、さらなる高みを目指さなければなりません。その際課題となるのが、MICEビジネスの強化や滞在型観光の促進であります。日本型IRは、こうした課題に対応しつつ、観光立国を実現するためのツールの一つとなるものです。

 このため、本法案では、国際会議場施設、展示施設、宿泊施設、送客機能施設等を中核施設として定義し、こうした施設の整備があって初めて、すなわち、IRの一部としてのみカジノの設置が認められることとしております。

 IRというとカジノばかりに焦点が当たりがちですが、日本型のIRは、国際的ビジネス会議を世界じゅうから招致し、水族館やプール等が集まり、高いクオリティーのショーやスポーツ等が繰り広げられ、家族連れで日本を訪問してもらえる、まさに総合的なリゾート施設として、新たな成長とビジネスの起爆剤となり、観光、地域振興、雇用創出効果を発揮することが期待されております。

 一部の野党の方々からは、MICE機能等は個別に整備すればいいではないか等の御議論がありますが、規模の経済性や連結の経済性を理解しない、全く現実を見ない議論と言わざるを得ません。

 それでは、以下、本法案に賛成する主な理由を、IR整備の側面と弊害防止措置の両面から順次申し上げます。

 まず第一に、本法案では、IR区域の整備について、区域整備計画の内容、認定手続、評価の仕組み等を規定し、真に国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を推進する仕組みとなっていることが挙げられます。

 第二に、立地予定地域の住民の合意形成を重視していることです。本法案では、都道府県等の議会の議決や住民公聴会を義務づけ、住民の理解を得て、地域の実情や独自性を反映した区域整備計画とすることとしております。

 第三に、来訪客をIRに囲い込むのではなく、IRを拠点に全国津々浦々に観光客を送り出す送客機能を有する施設を整備することとしております。

 第四に、カジノ事業者に対し、その粗利の三〇%の納付金を納付させることとし、国と地方の新たな財源として幅広い公益目的に使われることとなることです。

 他方、カジノを含むIRの設置については、さまざまな弊害を心配する声があることも事実であります。このため、本法案では、重層的、多段階での世界最高水準のカジノ規制を設けています。具体的には、事業者の廉潔性の確保として、カジノ事業者のみならず、その主要株主や従業者、取引先、IR区域の土地所有者等について、それぞれ免許制等の参入規制を課すとともに、カジノ管理委員会が徹底した調査を行い、関係者の社会的信用等を厳格に審査することとしています。これが賛成の第五の理由であります。

 第六に、依存防止対策として、日本人等に対し、他国には例のない長期、短期の一律の入場回数制限や高額の入場料を課すとともに、本人、家族の申出による利用制限措置等の措置を講じることを事業者に義務づけていることであります。また、本法案では、先ほど触れた納付金も依存症対策に幅広く使用することができることとされています。

 シンガポールでは、カジノの設置を契機にギャンブル依存症を劇的に減少させることに成功しております。我が国も、本法案を契機として、既存の公営ギャンブル場や遊技場等に起因する依存症を含めて、対応策を強化することが期待をされます。

 第七に、マネーロンダリング対策として、犯罪収益移転防止法の規制に加え、一定額以上の現金取引は全て報告すること等を義務づけるとともに、他人へのチップの譲渡や持ち出しを禁止しております。さらに、カジノ施設への暴力団員の入場、滞在を厳格に規制し、違反に対して罰則を適用することとしています。

 以上、本法案は、国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現するとの重要な政策目的を達成するものであると同時に、世界最高水準のカジノ規制等によって、さまざまな懸念に万全の対策を講じるものとなっており、早期の成立を期待するものであります。

 議員各位の御賛同を強くお願い申し上げ、私の賛成討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 源馬謙太郎君。

    〔源馬謙太郎君登壇〕

源馬謙太郎君 国民民主党の源馬謙太郎です。(拍手)

 まず初めに、昨日大阪で起きた地震によって、九歳の小さな命を含め、とうとい命を落とされた方々の御冥福を心からお祈りし、また、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。一日も早い復興のために、国を挙げて、一丸となっての対応をお願いいたします。

 ただいま議題となりましたいわゆるIR整備法案につきまして、会派を代表して、反対の立場から討論を行います。

 私が今回このIR法案に反対する理由はただ一つ。IR施設の中に必置施設としてつくられ、またIR全体の収益を左右する肝心かなめのカジノ施設について、不安が払拭し切れていないことに尽きます。

 カジノはギャンブルです。このギャンブルにお金を使ってもらうことがIR施設成功の前提です。しかも、表向きは、海外からの誘客や、日本の魅力の世界への発信などと、海外からの観光客に焦点を絞っているような言葉が並びながら、実際には多くは日本人客だろうと想定していることが明らかになっています。IR施設全体の収益を上げるには、その中核であるカジノでお金を使ってもらわなくてはならず、しかも、その対象の多くは日本人ということです。

 ゲーミングの一つとしてカジノを楽しむことにお金を使うことまでも、全てを否定するつもりはありません。パチンコや公営ギャンブルである競馬など、それそのものを楽しむ人もいるからです。

 問題なのは、そこにのめり込んでしまう要素をいかに排除するかということです。

 カジノをめぐる不安は幾つかありますが、私は、その中でも特に、このギャンブルにのめり込んでしまう要素を排除するという観点から、特定金融業務についての不安を取り上げたいと思います。

 ギャンブルにはまってお金をどんどん使ってしまう人が陥る典型例は、負けが込んだら取り返そうとして更にお金を使ってしまうという連鎖です。貸金業法でいわゆる総量規制を導入したのは、ギャンブルに限らず、こうした連鎖に陥り、お金を際限なく借りてしまうという多重債務の問題に対処するためと理解しています。つまり、そうしたことが起きないように法律でキャップをしているのだと思います。

 にもかかわらず、カジノ事業者がギャンブル客にお金を貸すことができるというこの法案には、はっきり申し上げて驚きしかありません。手持ちのお金がなくなった客にその場でお金を貸すことは、常識的に考えて、ギャンブル依存や多重債務に直結するように思えます。

 これまでも、外国人と一定の預託金を預けられる富裕層のみが対象だから問題ないのだという政府からの説明がありましたが、果たして本当にそうでしょうか。

 ギャンブルで負けが込んだ人が陥るのは、あと少しやったら取り返せるんじゃないかという気持ちです。これは、その人が裕福かそうでないかは関係ありません。逆に言えば、一般の人にとっての限界金額よりも富裕層の限界金額は高いわけですから、はまり込んでしまったときの被害額は大きくなります。

 しかも、そのカジノ事業者は、どこの国の企業が担うのでしょうか。今有力と言われているのは海外の事業者だと聞いています。つまり、海外の事業者がやってきて、カジノに来る日本人の富裕層に対して、顧客ごとに自分たちで決めた限度額まで金を貸し、二カ月以内に返せなかったら、一四・六%の遅延損害金をつけて、債権を第三者に委ねて取り立てるという恐るべき貸金業務が行われることになるのです。しかも、この遅延損害金については、つい二カ月ほど前に急につけ加えられました。

 政府は、委員会で、なぜこの貸金業務が盛り込まれることになったのかという質問に対し、利用者やカジノ事業者に個別具体的に聞き取りはしていないが、海外のカジノ事業者はどこでもやっていることなので、当然事業者のニーズがあると考えて盛り込んだという答弁がありました。事業者が多分必要だからということで盛り込んだということです。

 日本人のために、日本の魅力を発信し、日本にたくさんの観光客に来てもらい、日本全体の経済成長につなげていくためのIR施設であったはずが、これではよその国のカジノ事業者のために日本人がお金を使う仕組みになっていませんか。

 私は、保守の先輩の皆様にこそ訴えさせていただきたいと思います。

 IR施設の経済的基盤はカジノ事業であり、そのカジノ事業の対象は日本人です。その日本人に対して、海外からカジノ事業者がやってきて、その事業者が、この人には幾ら、この人には幾らと好き勝手に決めてお金を貸す。しかも、その事業者がカジノ管理委員会のメンバーに入る可能性もある。日本の国益の観点から、本当にこれで大丈夫なんでしょうか。日本人の生命と財産を守ることは、保守政治家の大切な価値観の一つではないでしょうか。

 細かな点を加えれば、カジノ施設内にはATMの設置はできないことになっています。しかし、IR施設内にはATMを設置することができ、また、クレジットカードで現金を引き出すことができるATMが設置されることもあり得ると、政府参考人の発言がありました。

 そうなったら、そもそも、いわゆるマスと言われる普通の日本人客は対象でないから大丈夫という理屈が覆されませんか。預託金を預けられる富裕層はカジノ施設でお金を借り、一般人は同じIR施設内のホテルかどこかでクレジットカードを使ってお金を借りる。ほとんど同じではありませんか。

 多くの国民が反対し、不安を持っているカジノ、それを含むIRを、今すぐにどうしても決めなくてはいけない理由は見当たりません。

 せめて、カジノ事業者が貸し出す金額を事業者みずから自由に決めるのではなく、法律で上限を定められないか、貸金業務を行うカジノ事業者への外資の参入を規制できないか、カジノにおいてマックスベットを定めたり、みずから上限金額を設定する仕組みにできないかなどしても、IR施設にとって困ることはないのではないかと思います。

 日本人の富裕層が海外のカジノ事業者から金を借り、そのお金が海外に流れていくのは、日本の政治家として、私は見たくありません。

 議員の皆様にはもう一度立ちどまってこの法案に反対していただくことをお願いし、討論といたしますが、最後に一言申し上げます。

 この法案に限らず、まだまだ議論し修正する余地があるのに、いつの時代も与党が採決を急ぐのは、国会に会期があるからのように、新人の私には思えます。会期に限りがなければ、少なくともこのIR整備法案のようなそう緊急性が高くない案件は、もっと時間をかけて議論をすることができるのではないかと思います。

 どの政権の時代にも当てはまりますが、これまで繰り返されてきた与党による強行採決と野党による抵抗戦術は、全てこの限られた会期の中での時間の奪い合いではないかと思います。

 与野党を超えて国会改革を実現し、通年国会が実現すれば、この不毛な時間の奪い合いは与野党ともにできなくなるはずです。そして、問題がまだ残っていると思われる法案については、今よりもじっくりと議論することができるのではないでしょうか。

 この国会改革も、与党の皆さんが反対すればできません。ぜひ、国会改革を行い、議論すべきことは徹底的に議論できる国会にしていただくことを心からお願いし、私の討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 浜地雅一君。

    〔浜地雅一君登壇〕

浜地雅一君 公明党の浜地雅一です。

 冒頭、昨日、大阪北部を中心に発生した地震により犠牲となられた方々、また被害に遭われた方々に、心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 公明党では、いち早く北側一雄副代表を中心に対策本部を設置し、被害状況の把握に当たっております。政府におかれても、迅速かつ十分な支援をお願い申し上げます。

 私は、公明党を代表し、特定複合観光施設区域整備法案に対し、賛成の立場から討論をいたします。(拍手)

 第二次自公連立政権発足後、訪日外国人数は飛躍的な伸びを示しております。これは、我が国が誇る文化、芸術、伝統、温泉やアニメなどの観光資源が世界の注目を集めたことにありますが、同時に、世界の国際観光市場の拡大がその背景にあります。

 国際観光客数は、二〇一〇年の約九億人から、二〇一六年は約十二億人に増加、二〇三〇年には十八億人と予想され、世界各国が国際観光を重要な成長分野としてしのぎを削る時代に入りました。

 観光客数に加え、重要な視点が滞在日数と消費額の増加です。

 例えば、昨年の沖縄の観光客数はハワイを抜きましたが、平均滞在日数は、ハワイの八・九五日に比べ、沖縄は三・七八日、一人当たりの消費額は、ハワイの十九万六千円に比べ、沖縄は七万五千円と、我が国は安近短の観光市場として見られております。

 滞在日数の増加に最も寄与し経済波及効果が高いのが国際会議や大規模展示会の開催ですが、この点に目を向けると、アジア大洋州での国際会議の我が国のシェアは、一九九一年の五二%から二〇一五年は二六%に低下、我が国最大の展示場である東京ビッグサイトの面積は九万平方メートルにすぎず、隣の中国には、上海の四十万平方メートルを超える展示場を始め、東京ビッグサイトをしのぐ展示場が十五カ所もあるのが現状です。

 加えて、MICE施設は単体では収益性が低く、我が国のMICE施設は民間で運用されているものはありません。これまでの規模を大きく上回るMICE施設を整備し、これにレジャー、ショッピング施設、ホテルなどを統合した施設を民間の資金で建設、運用するためには、一定の収益性が見込めるカジノを併設させた特定観光複合施設を整備することが必要です。

 この点、カジノなしのIRをつくればよいとの意見がありますが、シンガポールのIRでは運営費用の七割から八割をカジノ収益で賄っており、大規模なIR施設を民間が安定的に運営するにはカジノ施設の併設が必要です。

 IR整備による経済効果について、具体的な申請がない今の段階において政府が正確な数字を示すことができないのは当然ですが、理事会において提出された大和総研の試算では、シンガポールと同等のIR施設を我が国に三カ所設置した場合、IR建設による経済効果が合計で五兆五百億円、IR運営による経済効果が年間一兆九千八百億円であり、その経済効果とともに、IR事業者からの税収、納付金によって、国、設置自治体の財政健全化に資する効果があります。

 他方、ギャンブル依存症を始めとする弊害防止策を講じなければならないことは言うまでもありません。公明党では二十回の党内議論を重ね、与党協議においても、世界最高水準の規制にふさわしい内容の策定をリードしてきました。

 具体的には、全国にカジノが乱立するのではないかとの懸念の声に応え、IR区域認定数を三カ所までに限定、入場回数制限については、七日間で三回、かつ二十八日間で十回という、世界に類のない短期、長期を組み合わせた制限を設けました。本人確認手段もマイナンバーカードによる公的認証のみに限定、また、安易な入場を抑制するため、一人当たりGDPに換算するとシンガポールを実質的に上回る一回六千円の入場料を徴収することや、地元自治体との関係では、申請自治体の議会の議決に加え、立地市町村の同意を要件とし、更に条例で定めれば立地市町村の議会の議決も必要となり、地元住民の声を反映させる仕組みを明確化するなど、国民の懸念に応える規制の策定がなされております。

 なお、委員会では、韓国の江原ランドや米国のアトランティックシティーを引き合いに、依存症の増加やカジノ事業の斜陽化の懸念が議論されました。しかし、江原ランドは、内国人にカジノを解禁した唯一の施設として、交通アクセスや周辺観光施設とのネットワークが図れない場所に立地し、本法案が目指す国際競争力の高い統合型IRとは別物であり、比較の対象とすべきではありません。また、米国では一部で過当競争になっておりますが、東アジアにおけるカジノ売上げは、マカオで前年比一九%増加、シンガポールでは一四%増加するなど、東アジアのカジノ事業は引き続き拡大傾向にあります。

 また、カジノ事業者の顧客への貸付けについての指摘もありました。貸付けは、一定の預託金を預けた顧客のみにしか行うことができず、かつ信用情報をもとに一人一人の限度額を定めるなど極めて厳格な条件のもとに行うもので、あまねく一般の顧客に貸付けを行うものではありません。

 ただ、私は、IR新設によりカジノ由来の依存症者が全く出ないと申し上げるつもりはありません。しかし、我が国の現状に目を向けると、一万店を超えるパチンコ等の遊技施設に加え、競馬、競輪、オートレースなどの公営ギャンブル場が数多く存在し、直近の調査ではギャンブル依存症者が約三・六%存在することが明らかとなりましたが、これまで本格的な対策はなされてきませんでした。

 我が国が参考とするシンガポールは、カジノ事業者からの納付金を活用し、本格的な依存症対策に乗り出し、依存症者の割合をIR開業前の四・一%から〇・九%に減少をさせております。

 我が国においても、本法案前に衆議院を通過したギャンブル等依存症対策基本法に示された施策を包括的かつ徹底的に進めることが重要ですが、委員会審議では、カジノ事業者からの納付金をギャンブル依存症対策費に充てることができると石井担当大臣が明確に答弁をしました。

 これまで、アルコール依存症を含めてわずか六億円程度にすぎなかった依存症対策費を大幅に拡充し、パチンコを始めとする既存のギャンブル依存症に苦しむ方々も含め、広報活動、相談業務、医療体制の充実、青少年教育、本人、家族の申告による入場制限などの有効な施策を推進し、結果、我が国のギャンブル依存症者の割合を減少させることが期待されます。

 最後に、IR成功の鍵は、我が国固有の歴史、文化、自然、食などの魅力を生かし、これまでにないスケールとクオリティーの高い日本型IR施設を整備できるかにあります。政府においては、区域認定において、我が国が観光先進国に成長するためのツールにふさわしい計画となっているかという点を厳格に審査していただき、安易な認定がなされないようにすること、並びに、ギャンブル依存症対策には十分な予算確保と包括的かつ徹底的な施策の実施を強く要望申し上げ、私の賛成討論とします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) もとむら賢太郎君。

    〔もとむら賢太郎君登壇〕

もとむら賢太郎君 無所属の会のもとむら賢太郎です。

 私は、会派を代表し、いわゆるIR整備法案に対し、反対の立場から討論いたします。(拍手)

 冒頭、大阪府北部を震源とする地震でお亡くなりになられた方々とその御家族、御関係者の皆様に心からお悔やみを申し上げます。また、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 さて、五月二十二日、この衆議院本会議場でIR整備法案の審議が始まり、私も質問に立ちました。本法案は、条文二百五十一条、附則十六条という大部です。それが二十時間未満の審議で採決を強行されようとは夢にも思いませんでした。

 これまでの審議で明らかになったのは、余りにずさんな制度設計だけです。三百三十一もの項目が政省令やカジノ管理委員会規則に委ねられ、具体的な説明ができず、言葉ばかりが躍るような法案は、本来ならば撤回すべきです。大手マスコミのほとんどが慎重な論調、国民の多くも反対しているのに、なぜ法案成立を急ぐのか、理解に苦しみます。

 以下、本法案に反対する理由を申し述べます。

 第一に、日本の国柄、国としての品格、そして我が国悠久の歴史に照らして、私たちと安倍政権には根本的な違いがあるからです。

 カジノは刑法上の賭博罪であるにもかかわらず、民間賭博の解禁を成長戦略の柱などと主張する安倍政権の感覚と、国民感覚との間には乖離があり、国民の常識と大きく異なっています。

 週末、ある集会で、カジノよりも我が国の文化へ投資し、大切にすべきだと訴えたところ、大きな拍手をいただきました。これが国民の声なのです。

 カジノの収益は賭博客の負け分です。誰かの散財に期待し、不運、不幸のもとに成り立つ観光振興、まちづくりは余りにも不健全です。

 第二に、審議時間が全く不十分であり、法案の中身が明らかになっていないからです。

 成長戦略の大きな柱だとしながら、政府は経済効果を試算すらしていません。日本人入場者が大半であるという自治体や民間の試算に対しては、その前提に疑問を呈す答弁がありました。ならば、政府が試算を示すべきです。

 これまでの審議を通じて、日本型IRをイメージできた人はいるのでしょうか。特に、第二条で特定複合観光施設等について定義していますが、その規模や機能が政令に委ねられているため、何をもって国際競争力があるのか、日本を代表する施設なのかさっぱりわからず、議論は全く深まっていません。これでは、整備法案でなく、丸投げ法案であります。

 日本型IRのイメージを具体的に共有させていただくための全国キャラバンを実施していく、安倍総理の言葉です。法案成立前に具体的なイメージを共有しなければ、何のための委員会審議なのでしょうか。とりあえず法案を通して、ルールは後で決める。これでは、加計ありきで基準を決めた国家戦略特区と同じ経路をたどるのではありませんか。

 ほかにも、第二条七項で、カジノ事業の健全な運営に対する国民の信頼を確保するとありますが、何をもって、どのような基準で民間賭博について国民の信頼を確保したと判断できるのか、説得力ある説明はありません。

 また、我が国において社会通念上相当と認められる民間賭博の具体的な種類と方法も明確ではありません。そもそも、民間賭博について社会通念など存在するのでしょうか。

 大きな論点となっている特定資金貸付業務についても、二十四時間営業のカジノ業者がカジノ利用者にお金を貸し付けることは、借り手の射幸性を助長すると同時に、運営主体の廉潔性の観点からも不適切と言わざるを得ません。

 国会は、憲法に定められた唯一の立法機関です。国民生活にかかわるルールである法律を決める国会に丁寧で具体的な説明ができずに、国民の理解を得られるわけがありません。国会軽視、国民軽視の安倍内閣の姿勢のあらわれだと強く非難し、私の討論とさせていただきます。(拍手)

議長(大島理森君) 浦野靖人君。

    〔浦野靖人君登壇〕

浦野靖人君 日本維新の会の浦野靖人です。(拍手)

 初めに、大阪北部を震源とする地震でお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。依然余震の続く中、政府として万全の体制を整え、対策を講じていただきますようお願いを申し上げて、討論に入ります。

 私は、我が党を代表して、本日の議題となりました特定複合観光施設区域整備法案について、賛成の立場から討論いたします。

 特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案は、一昨年の十二月に可決、成立し、それに基づいて統合型リゾート施設の設置に向けて議論を進めてまいりました。統合型リゾート施設に関しては、これまで深く議論が進み、議論が尽くされてきました。

 東京一極集中を打破し、地方の活性化、地方創生を推進するためには、統合型リゾートを活用することによって観光地としての魅力を高め、外国人観光客数をふやし、観光産業を更に成長させるだけでなく、日本の国際的地位を高める効果も期待できることから、地方に魅力ある観光施設をつくることは重要な手段の一つであります。

 この法案が対象とする統合型リゾートはほとんどの先進国に存在しているにもかかわらず、日本では、こうした施設を含めナイトライフが充実していないために、夜間の観光やアミューズメントを好む欧米系の観光客の需要を取り逃がしているとも言われてきました。

 カジノに限らず、日本には、数千人を一堂に集めて国際的な会議等を開催する施設もなく、中国、シンガポール等におくれをとっています。先般行われた米朝首脳会談はシンガポールのリゾート地のホテルで行われ、世界じゅうの注目を集めました。こうした例だけでなく、多くの国々が集まる重要な国際会議を開催できる場所が少ないことは、日本の国際的な地位を低下させることにもなりかねません。

 統合型リゾートで重要な国際会議を開催することができること、開催地に選ばれることこそが、日本は安全な国であるという、世界に向けた強いアピールにつながり、国際的な与信を高めるのではないでしょうか。

 少子高齢化と人口減少が続く中で、我が国が文化的、社会的に成熟した先進国として魅力を高め、世界じゅうからの外国人を魅了するような国づくりを進めることは、成長戦略の重要なかなめであります。統合型リゾートは、その起爆剤として期待されております。カジノから得られた収益を活用し、施設内に併設された魅力ある観光施設を安価で利用できるようにする、そのような視点を持つべきではないでしょうか。

 一方で、IR実施法案に係る世論調査では、国民の間で理解が進んでいない結果が出ており、カジノという言葉への反発や抵抗感もある中、統合型リゾート施設を核とした地方創生計画を国民の理解を得ながら進めるためにも、正しく内容を理解していただくことが必要であり、また、社会的な問題にもなっているギャンブル依存症対策との両輪で進めることによって、健全性を担保することが必要と考えています。

 日本維新の会は、海外の人々をも魅了してやまない日本の持つ魅力を世界に示すためにも、国民の皆様の声に耳を傾けながら、統合型リゾートを核とした健全な地方創生を進めるべきであることを訴えて、私からの賛成討論といたします。(拍手)

議長(大島理森君) 塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、カジノ法案に対する反対討論を行います。(拍手)

 討論に先立ち、昨日の大阪北部地震で亡くなられた方の御冥福を心からお祈りいたします。また、被害に遭われた方々へのお悔やみとお見舞いを申し上げるものです。政府として、被災者救援と支援、災害復旧に全力を挙げることを求めるものです。

 第一に、カジノ法案に対して、国民の六割、七割という圧倒的多数が反対をしています。にもかかわらず、先週六月十五日の内閣委員会で、野党の審議継続を求める動議を一顧だにせず、自民、公明両党と維新の会で強行採決をしたことは、断じて認められません。

 カジノ法案は、刑法で禁じられた賭博を合法化するものです。カジノは、民間事業者が私的利益のために開設するものであり、公設、公営で公益を目的として認められた公営競技とは全く違います。

 ギャンブル依存症や多重債務者が増加し、生活破綻や治安悪化も懸念されます。既に、公営競技やパチンコなど既存ギャンブルによる依存症の疑いのある人は三百二十万人と、世界で最も深刻です。依存症者を新たにふやすカジノを国民が認めないのは当然であります。公明党の石井カジノ担当大臣も、カジノの弊害を心配する声が多いと認めたのであります。

 しかも、法案は、二百五十一条の条文で、政省令事項は三百三十一項目に上っています。野党側が、国民の疑問に答えるため、地方公聴会の実施など徹底審議を要求したのに対して、与党側は、委員会定例日にも質疑を行わず、審議拒否を繰り返したあげく、わずか十八時間の審議で採決を強行したのであります。法案内容を国民に知らせずに押し切ろうという政府・与党の姿勢は、議会制民主主義のじゅうりんと言わなければなりません。

 第二に、政府は、世界最高水準のカジノ規制だ、依存症対策だと言ってきました。ところが、当初想定していたカジノ面積の上限規制をも外し、世界最大規模のカジノ施設をつくろうとしています。極めて重大です。

 カジノ企業やカジノ誘致を目指す自治体の試算を見ても、カジノのターゲットが日本国民であることは明らかです。IRの収益の八割はカジノのもうけです。そもそも、人のお金を巻き上げるだけの賭博に経済効果などありません。

 第三は、公営ギャンブルやパチンコでは認められていない客への金の貸付けをカジノ企業には認めることです。賭博の胴元が客にどんどん金を貸すことができます。貸金業法では貸付限度額は年収の三分の一と決まっているのに、カジノの貸付けには適用されません。過剰貸付けへの歯どめもなく、依存症や多重債務者の拡大につながることは必至であります。

 第四に、カジノを規制するために新たに設置されるカジノ管理委員会の問題です。

 独立した規制機関だといいながら、そのカジノ管理委員会の経費を負担するのは、規制されるはずのカジノ企業です。石井カジノ担当大臣は、カジノ管理委員会の事務局にはカジノの実態を知る人を採用することもあると、カジノ事業者がカジノ管理委員会に入ることを認めました。金も人もカジノ企業に依存するカジノ管理委員会は、カジノ推進機関になりかねません。

 最後に、このカジノ法案の背景にあるのは、アメリカのカジノ企業の要求です。

 昨年二月、安倍総理がトランプ大統領との初めての首脳会談を行った日の朝食会には、カジノ企業のトップ三人が出席をしていました。そのうちの一人は、トランプ大統領の最大の支援者であります。安倍総理はその場で、日本におけるカジノ推進の取組を紹介しました。その後、カジノに貸付けは不可欠だ、カジノ面積をもっと広げろと要求してきたのは、米国カジノ企業でした。本法案は、まさに米国カジノ企業によるカジノ企業のためのカジノ事業法案であります。

 このようなカジノ法案は廃案にするしかありません。

 以上、反対討論を終わります。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第五 健康増進法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第五、健康増進法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長高鳥修一君。

    ―――――――――――――

 健康増進法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔高鳥修一君登壇〕

高鳥修一君 ただいま議題となりました健康増進法の一部を改正する法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、望まない受動喫煙の防止を図るため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、国及び地方公共団体は、望まない受動喫煙が生じないよう、受動喫煙を防止するための措置を総合的かつ効果的に推進するよう努めなければならないこととすること、

 第二に、多数の者が利用する施設等を第一種施設、第二種施設等に区分し、何人も、区分に応じて限定された喫煙可能な場所以外の場所で喫煙をしてはならないこととすること、

 第三に、一定の要件を満たす既存の飲食店に限って、別に法律で定める日までの間、屋内禁煙に対する特例措置を設けること

等であります。

 本案は、去る六月八日の本会議において趣旨説明が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、同日加藤厚生労働大臣から提案理由の説明を聴取し、十三日から質疑に入り、十五日には参考人から意見を聴取し、同日質疑を終局いたしました。次いで、討論、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 討論の通告があります。順次これを許します。池田真紀君。

    〔池田真紀君登壇〕

池田真紀君 立憲民主党の池田真紀です。

 冒頭、昨日大阪府北部で起きました地震により亡くなられた方々の御冥福と、そして被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 我が党といたしましても、関係府県連と連携し、二次災害の防止等に緊張感を持って取り組んでまいります。

 それでは、本日議題となりました健康増進法の一部を改正する法律案に、立憲民主党・市民クラブを代表して、反対の立場から討論をいたします。(拍手)

 討論に先立ち、一言申し上げます。

 東京目黒区で起きました児童虐待事件を受け、我が党を始め野党が集中審議を求めたにもかかわらず、それを無視し、参議院先議の医療法・医師法が既に衆議院に送付されている中で、この健康増進法を無理やり押し込んできました。

 また、六月十五日には参考人質疑を行いましたが、五名の参考人からさまざまな御指摘をいただいた点についてもその後の質疑で十分に審議していく必要があるにもかかわらず、たったの二時間で審議を打ち切り、採決に踏み切る判断をしたことに、大変遺憾であり、強く抗議をいたします。

 それでは、政府案に対する理由を申し上げます。

 今回の法改正は、受動喫煙により年間一万五千人もの命が失われているという現実から、国民、とりわけがんの患者さんや子供、妊婦さんなどを受動喫煙から守るため、そして、二〇二〇年に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックに備え、WHOとIOCの合意に基づくたばこフリーのオリンピックを実現するため、受動喫煙防止対策を強化しようというものであります。

 しかし、改正案の中身は、昨年の塩崎前厚労大臣の時代の案からは大きく後退し、一九九八年以来、オリンピック開催都市としては初めて、飲食店での喫煙を認めるという国際的にも恥ずかしい内容となっています。

 受動喫煙被害が最も多いとされている飲食店の約五五%が例外となる経過措置が設けられ、その期限も明らかにされていません。これでは、受動喫煙防止対策としては余りにも不十分であると指摘せざるを得ません。

 受動喫煙防止ということであれば、屋内全面禁煙こそその対策であって、それが国際標準なのだということをまず認識するべきであると思います。

 また、今回の政府案では、受動喫煙の前に「望まない」という言葉がつきました。その理由について、加藤厚労大臣は、対象者をより明確化するためと答弁しましたが、果たしてそうなのでしょうか。

 我が党の西村智奈美筆頭理事の質疑において、社長さんと社員の関係で、喫煙できる店でいいよねと言われたら、望まないけど嫌とは言えないのではないかという問いに、加藤大臣は、そこは内心の問題で、嫌々ついていった、そこをどう考えるかというハラスメントの話にすりかえました。

 嫌々ついていかざるを得なかった受動喫煙に対して受動喫煙防止対策はとらなくてよいのか、その問いには、加藤大臣は、嫌々ついていくということが問題なんだと言いました。お得意の御飯論法です。

 「望まない」という言葉をつけたことにより、かえって法の抜け穴をつくり、受動喫煙の被害が表面化することなく、拡大していくことが懸念されます。これでは、ざる法と言わざるを得ません。

 国民の健康を守る厚生労働省としては、望むと望まざるとにかかわらず、国民の健康を第一に、受動喫煙そのものをなくすということに全力を尽くすべきではないでしょうか。

 もう一つ、昨年の塩崎前厚労大臣の時代の案では、官公庁は屋内全面禁煙でありました。今回の法案では、官公庁は行政機関と書きかえられ、立法府であるこの国会は喫煙スペースを設けることが可能とされています。

 この点について、驚くべきことが起きました。何と、厚生労働委員会ががん患者当事者の参考人を国会にお招きした六月十五日、その控室に灰皿が二つもあったのです。

 がん患者である天野参考人は、大変驚きました、これでよいのかと思いましたと言い、産業医でもある黒澤参考人は、私がここの産業医なら、即時喫煙所を撤去するよう責任者に意見を申し上げるとお答えになりました。

 国民に禁煙をお願いする立場の国会議員こそ、範を垂れるべきです。これでは国民に示しがつきません。

 今からでも遅くありません。立法機関も行政機関と同じ扱いにするよう改稿を求めます。

 また、従業員の受動喫煙を防止する対策においては、努力義務どまりとなっています。

 私は、居宅における訪問介護を行っていました。まさに肺がんで亡くなるみとりも多く経験をさせていただきました。ケアにかかわる人たちは、チームみんな、必死に最善のケアを目指します。御本人にとっての最善です。援助に当たり、喫煙の可否は大変悩みます。さりげなく見守ったり見逃したり、最後には、持っているのがやっとで、吸えなくなる、そういう状況も目にいたしました。

 居宅訪問業で受動喫煙に対する法規制はありません。捨て身の覚悟で支援を全うするのでありますから、知らないうちに受動喫煙にさらされることになります。

 また、ニコチン依存症のお宅へ精神保健福祉士として訪問することも多々ありました。家から煙が漏れるほどのチェーンスモーカーの場合には、顔がうっすら見えるくらいの煙の部屋で、茶色だか金色だかのようなとろっとしたべたつきのある壁や畳の部屋にも訪問します。

 受動喫煙は嫌でも、プロですから、奉仕の精神で我慢せざるを得ません。次の訪問の方に影響がないか心配でした。

 法案提出の理由には、受動喫煙をなくすということに待ったなしの状況と書かれてありますが、それならば、あらゆる職場において規制をしなければならないのではないでしょうか。

 政府の方針として、受動喫煙全体を防止するんだという考え方に立たなければいけなかったのではないかと思います。

 以上、政府案につきましては、受動喫煙防止対策としては全く不十分であるとの反対理由を述べました。

 次に、六月十五日の参考人質疑の一部を紹介したいと思います。

 患者当事者である長谷川参考人は、八年前に肺がんを発症しました。進行ステージはレベル4、生存率は五%と言われたそうです。長谷川さんは喫煙歴がありません。

 長谷川さんの発言です。

 親から受動喫煙を受けていた、自分の病気がそこに原因があるのではないかということで、たまに、どう思っているか聞かれることがある。それは、親ですので、私を産み育ててくれた人ですので、非常にその感情は複雑です。言葉にはあらわせません。また、あらわすつもりもありません。そして、私がこうして言えるのは、父が亡くなっているからです。亡くなっているので言えるという、そんな状況です。そんなふうに、受動喫煙を身内から受けて、もし、それが原因でがんを発症し、自分の命にかかわる、そんな状況が起こっているのであれば、それは本当に言葉にあらわせない苦しみがあるということはお伝えしたいという御発言でした。

 今回の案では、家族の受動喫煙の規制は難しいと配慮規定になっていますが、社会全体が完全禁煙に向かっていくことで、結果として喫煙率も下げていく、受動喫煙を望まない人の対策だけではだめで、喫煙者の健康も守っていく、双方向で取り組むべきと考えます。

 最後に、昨日、子供がテレビ台の引き出しに閉じ込められて亡くなるという痛ましい事件の報道がありました。待ったなしは、命を守る本気の法律をつくることではないでしょうか。

 先ほどの長谷川さんの当事者としての言葉は、受動喫煙の部分を虐待という言葉に置きかえると、虐待を受けた子供たちの心の叫びに通ずるものがあると、私は、胸が詰まる思いで受けとめました。この国から虐待という言葉をなくす、虐待ゼロ社会に向けて、今まさに真剣に取り組んでいかねばなりません。

 受動喫煙の被害者のような声なき声こそ、耳も心も傾け、真摯にその課題解決に向けて全力を挙げていくこと、命を守る法案は政争の具にせず、与野党ともに全力で実現すること、そのことを強く申し上げ、本日議題の健康増進法についての反対の討論を終えます。

 御清聴ありがとうございました。

 そして、最後にもう一言。維新の皆さん、本法案につきましては、同じ方向の結論をいただきましたことに心から感謝をいたします。とりわけ、ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、健康増進法改正案の反対討論を行います。(拍手)

 まず、国民の健康に影響する本法案を、会期末が近い中、拙速に委員会採決を行ったことに抗議をするものです。

 日本は、たばこ規制枠組み条約を批准していながら、屋内完全禁煙を義務づける法律を持たず、WHOから世界最低レベルとされています。毎年一万五千人とも言われる受動喫煙による死亡者をなくすこと、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックをたばこフリーで開催することが国際的にも求められています。

 本法案は、今まで努力義務とされていた受動喫煙の防止を、罰則つきの規制を設けた点では一歩前進であるものの、みずから掲げた目標である喫煙室なしの屋内完全禁煙からはほど遠く、国際的責務を果たしたとは言えません。

 反対の理由の第一は、学校や病院等を対象とする第一種施設においても敷地内喫煙を可能とするからです。

 特定屋外喫煙場所は、煙を外に出す構造上、児童や患者の受動喫煙は避けられず、近隣住民にも影響を与えることは明白であり、設置するべきではありません。

 第二に、第二種施設に喫煙専用室を設けても、受動喫煙をなくすことはできないからです。

 既存特定飲食提供施設として全体の半分以上が例外とされ、それは無期限に等しいものです。喫煙専用室などに立入りを禁止するのは二十歳未満だけであり、従業員の受動喫煙防止策がありません。

 加熱式たばこは、WHOでも紙巻きたばこと同様の規制を求めています。ところが、加熱式たばこ専用喫煙室は、飲食や読書、パチンコさえ可能となります。長く滞在することにもなり、これでは喫煙率をむしろ上げることになりかねず、看過できません。

 加藤大臣は、繰り返し、望まない受動喫煙との言葉を使いました。受動喫煙を望む人など、いるわけがありません。本気で受動喫煙防止を言うなら、一日も早く完全禁煙に踏み出すべきです。また、国会も率先して敷地内完全禁煙にするべきです。

 喫煙は、深刻な健康破壊になるだけでなく、身近な家族や誰かを苦しめます。喫煙権は幸福追求権だと主張する人がいますが、他人を不幸にしての幸福追求権など絶対にあり得ません。

 以上、反対討論を終わります。(拍手)

議長(大島理森君) 浦野靖人君。

    〔浦野靖人君登壇〕

浦野靖人君 日本維新の会の浦野靖人です。

 ただいま議題となりました健康増進法改正法案について、反対の立場から討論いたします。(拍手)

 日本維新の会は、昨年の五月に続き、本年二月二十八日、加藤厚労大臣に対して、受動喫煙防止に関する提言を行いました。

 他の先進国と比較すると、受動喫煙対策が不十分な我が国でも、国際社会の動きと調和した受動喫煙対策を講ずることによって、より一層の健康増進施策を推進することが必要と考えます。

 本法案では、飲食店に対しては原則屋内禁煙としているものの、経過措置等によって事実上骨抜きとなってしまっている点は、政府の受動喫煙対策への本気度が感じられません。

 我が党は、店舗面積三十平米以下の飲食店については、未成年者の入店を禁止した上で喫煙可能とする提言を行いましたが、政府の提案内容では、全飲食店のおよそ五五%に当たる中小企業や個人が運営する店舗面積百平米以下の店舗では、表示をすれば喫煙可能としています。

 未成年者を始めとした多くの国民を受動喫煙から守るという姿勢や、国としての責務がまるで感じられず、世界と比べて大きくおくれをとる受動喫煙対策しか行われないことは、国民の一人として残念でなりません。多くの地方議会において条例での規制強化を進めていることも踏まえ、いま一度、地域の声に耳を傾けていただきたいと考えます。

 喫煙を望まない人が、自分が吸わないたばこの煙によって被害を受け、がんのリスクが高まるような状況を看過することは、がん対策基本法の趣旨にも反するのではないでしょうか。

 肺がんは、部位別のがん死亡者数が最も多く、喫煙との関連が大きいだけでなく、子供を含む非喫煙者も受動喫煙により発症リスクが高まることもわかっています。がんによる死亡率を下げるという目標を掲げているのであれば、そのリスク要因となっている環境整備として、分煙や喫煙所の設置などの措置を直ちに進めるのが国としての責務です。

 受動喫煙の被害を防止し、不十分な政策案に対して、世界的に遜色のない受動喫煙防止対策を実施するべきであるということを要求するとともに、私たちは、国民の健康を守り、クリーンな社会を目指すことをお約束して、本法案への反対討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第六 公職選挙法の一部を改正する法律案(参議院提出)

議長(大島理森君) 日程第六、公職選挙法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員長平沢勝栄君。

    ―――――――――――――

 公職選挙法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔平沢勝栄君登壇〕

平沢勝栄君 ただいま議題となりました法律案につきまして、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、参議院選挙区選出議員の選挙における政見放送について、できる限り多くの国民に候補者の政見がより効果的に伝わるようにするため、一定の要件を満たす推薦団体又は確認団体のそれぞれ推薦候補者又は所属候補者はみずから政見を録音し又は録画する、いわゆる持込みビデオ方式ができることとするものであります。

 本案は、参議院提出に係るもので、去る六月十五日本委員会に付託され、昨十八日、参議院議員足立信也君から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、討論、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十四分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣    野田 聖子君

       法務大臣    上川 陽子君

       厚生労働大臣  加藤 勝信君

       国務大臣    石井 啓一君

       国務大臣    梶山 弘志君


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