衆議院

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第2号 令和2年1月22日(水曜日)

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令和二年一月二十二日(水曜日)

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 議事日程 第二号

  令和二年一月二十二日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(大島理森君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。枝野幸男君。

    〔枝野幸男君登壇〕

枝野幸男君 私は、会派を代表し、私たちが目指す社会について、もう一つの選択肢を示しながら、安倍総理に質問いたします。(拍手)

 もっとも、大変残念ではありますが、それに先立ち、安倍政権の利権私物化、隠蔽体質そのものについてたださなければなりません。

 桜を見る会の前夜祭は、会費が五千円。入り口で会費を集めたそうですから、会費負担者と出席者とが一致しているはずです。提供された飲食等の出席者一人当たりの額は、都心の一流ホテルであることから、これを大幅に上回ると見るのが常識です。

 この差額を後援会などで補填をしていれば、その分が買収となり、公職選挙法違反であります。会場ホテルが相場を大幅に下回る額で飲食等を提供していたならば、差額分が、政党等を除いて禁じられている企業、団体からの寄附に該当し、政治資金規正法違反となります。国会議員としての正当性すら問われる違法行為の疑いが極めて濃厚であります。

 ホテルには、発注者から求めがあれば明細書再発行に応じる義務があり、やましいことがないなら、明細書を入手し開示することで、簡単に疑いを晴らすことができます。開示すれば都合が悪い中身だから出せないのだと言われても仕方がありませんが、総理はなぜこれをしないのか、明確にお答えください。

 総理は、前夜祭の主催者が安倍晋三後援会であることを国会答弁し、会見で、安倍事務所の職員が会費を受け取り、ホテルにまとめて支払ったことを認めています。これは政治資金規正法の収支にほかなりません。

 収支報告書には、前夜祭に関する記載が一切ありません。政治資金規正法違反は明白であります。説明を求めます。

 安倍晋三後援会が、不特定多数に呼びかけ、桜を見る会の参加希望を募っていた文書が明らかになっています。結果として、バス十七台、約八百人の地元の支持者が桜を見る会に招待され、無料で飲食の提供を受けました。

 桜を見る会は、後援会の不特定多数に呼びかけて参加者を募ることのできる性格のものなのですか。桜を見る会の一般的な招待基準とともに御説明ください。

 また、このようなことは、公職選挙法違反の買収と実質的に何が違うのですか。また、交通費、宿泊費など参加に関する諸経費は、参加者が全額自己負担していることで間違いありませんか。明確にお答えください。

 これらの疑惑に対し、総理は、多くの国民が納得できる説明をするどころか、説明そのものから逃げ回ってきました。あなたが疑惑まみれのまま、そのまま地位にとどまり続ければ、日本社会のモラル崩壊が続くばかりです。潔く総理の職をみずから辞すことを強く求めます。

 問題はこれにとどまりません。桜を見る会に反社会勢力と見られる参加者がいたと指摘されています。

 政府は、個人情報という理由で招待者名簿の公開を拒否し、反社会勢力は定義できないと、取締り現場を困惑させる支離滅裂な説明をしています。

 桜を見る会の招待者は、一定の功績などがあった方であるはずですから、公開に問題はないはずです。当然に公開対象となっている叙勲を受けた方や園遊会招待者との違いを含め、公開しない理由を具体的に御説明ください。また、反社会勢力は定義できないという答弁を本当に維持するのかもお尋ねします。

 詐欺まがいの消費者被害を招いたジャパンライフの山口元会長が、桜を見る会に招待されていました。同社は、桜を見る会に招かれたことを、みずからが信用できる企業であると宣伝するために利用していました。

 山口元会長は、招待者区分六十番。過去の政府資料によれば、区分六十番は総理大臣枠です。総理の枠で招待されたのではないですか。それが、結果的にジャパンライフによる被害拡大につながったのではないですか。被害者の皆さんが納得できるような説明を求めます。

 昨年分の招待者名簿は、野党から資料要求がなされた一時間後に細断されました。これをたまたまなどという都合のいい偶然など、多くの方が信じていません。総理の認識を伺います。

 電子記録について、担当者の記憶に基づいて、確実に消去したと説明しています。他方で、廃棄記録、いわゆるログの存在は認めていますが、調査、開示するよう求めると、担当者の説明を信じるから調査も開示もしないとの答えです。

 なぜ、記憶よりも確かな記録を調査し、開示しないのですか。意味不明です。記録を調査したら都合が悪いからとしか思えません。ログの調査と開示を強く求めます。

 さらには、正式な公文書の形でなくても、関係官署に名簿が残っている可能性が濃厚です。昨日も、桜を見る会に関し、新たな資料が出てきました。再調査と開示を指示するよう求めます。

 それぞれ明確にお答えください。

 二〇一七年までの招待者名簿は、公文書管理法で義務づけられた管理簿への記載がなく、保存期間満了後に義務づけられた総理大臣との協議や廃棄簿への記載もありません。

 菅官房長官は、会見で、民主党政権時、二〇一一年と一二年の不記載を漫然と続けた旨説明しましたが、二〇一一年と一二年は、桜を見る会が開催されず、招待者が確定しなかったため、決定事項を記した招待者名簿もつくられようがありません。意思決定の途中段階で作成された文書と最終的な決定事項を記した招待者名簿とでは、公文書管理法上の文書の性格が決定的に異なり、保存期間を含め、扱いも全く異なります。前政権への印象操作にほかならず、説明になっていません。

 踏襲すべき前例となる二〇一〇年には、管理簿への記載などがなされています。前例に反して違法な扱いに変更することを、担当者限りでできるとは思えません。官房長官などから指示や示唆があったのではないですか。だからこそ、担当者に軽い処分しかできなかったのではないですか。明確な答弁を求めます。

 いわゆる黒塗りでなく、白塗りされた文書が提出されました。

 黒塗りについても、その対象が広過ぎるという問題はありますが、どこに非公開部分が存在するのかを知ることができます。しかし、白塗りでは、文字があったことすらわからなくなり、意味が違います。一貫して黒塗りで対応してきたのに、白塗り文書がつくられたことは、意図的としか言いようがありません。刑法の公文書変造罪にも該当しかねない重大な違反行為であります。

 さらなる事実関係の解明と官房長官を含む担当者への重い処分が必要だと考えますが、総理の見解を伺います。

 あきもと司元IR担当副大臣が逮捕されました。IR整備法が議論されて成立したまさにそのときに、安倍総理が任命した担当副大臣でした。逮捕容疑は、当時の職務権限に関連するものです。所属国会議員の属人的な問題ではありません。安倍政権の職務行使そのものの問題であり、その責任は極めて重いことを総理は認識しているのですか。端的にお答えください。

 カジノは、持統天皇以来の伝統に反して、規律ある日本社会を壊す賭博行為そのものであります。あらゆる世論調査で六割以上が反対しており、カジノは要らないというのが大方の国民の声であります。私たちは、これまでの議論でも、金権、利権まみれの状況を生むと懸念してきましたが、今回の件ではっきりしました。

 政府は、異論や不祥事などなかったかのように準備を進めていますが、到底容認できません。安倍内閣の成長戦略は、汚れたカジノに頼らざるを得ないものなのでしょうか。

 野党は共同して、二十日にカジノ推進法及び整備法の廃止法案を提出しました。今国会は、いわばカジノ国会であります。速やかに審議して成立させるべきです。総理の答弁を求めます。

 改造後、短期間で、二人の重要閣僚が辞任に追い込まれました。

 総理は、辞任に際して、責任を痛感しているとおっしゃいましたが、さらに、前法務大臣が検察による強制捜査の対象になるという前代未聞の事態にまで至り、どのように責任をとるのか、具体的にお答えください。

 二人の閣僚は、長期にわたって雲隠れし、説明責任を果たそうとしませんでした。最近になってようやく記者対応の場こそつくりましたが、いずれも具体的な説明はありませんでした。みずからが任命した元閣僚が説明責任を果たすことには、総理御自身にも責任があります。二人が説明責任を果たしたと受けとめているのか、認識を伺います。

 超高齢化と人口減少が進む中、一年間に生まれる子供の数は九十万人を切りました。消費税率が引き上げられたにもかかわらず、医療費の窓口負担を引き上げようとする動きなどが伝えられ、老後の不安は高まるばかりです。

 七年が経過しても、いわゆるトリクルダウンは起こらず、多くの皆さんは豊かさを実感できていません。格差が固定化し、あすへの希望を見出せない国民がふえています。日本経済の過半を占める個人消費は回復の兆しすら見せず、アベノミクスの限界は明確です。総理の施政方針演説は、見たくない現実に目を背けた無責任なものと断じざるを得ません。

 しかし、私は悲観していません。

 日本は、戦後復興から高度成長へと人口も経済も急激に拡大してきた昭和の後半から、平成期を挟んで、人口減少社会、成熟経済へと大きく変化しました。その中で、社会状況に合わなくなったにもかかわらず、昭和の成功体験にとらわれ、無理やり引っ張り続けてきた多くのことが限界に達し、矛盾を露呈してきたのが現状です。

 限界が見えてきたからこそ、何をどう変えていくのかが明らかになり、新しい道を切り開いていくことができます。今、政治を変え、新しい道を切り開くことができれば、私たちの国には、まだまだ潜在的な力があります。

 私は、潜在力を引き出す新しい道を切り開くため、安倍政権にかわるもう一つの政権の選択肢を示してまいります。(発言する者あり)

議長(大島理森君) 御静粛に。

枝野幸男君(続) まず第一に、支え合う安心をつくります。

 本来、超高齢社会とは、人類が夢見てきた長寿社会にほかなりません。そのこと自体は望ましいことのはずです。ところが、老後の不安が大きくなる一方だから、高齢化社会を後ろ向きに受けとめざるを得ない方が多くなっています。

 人口減少は続いていますが、潜在的なものも含めれば、子供を産み育てたいと望む方々は多く、その希望をかなえることが可能な社会をつくれば、一定程度歯どめをかけることができます。

 老後も、子育てや教育も、かつては個人や家庭に委ねられていました。しかし、今の日本では、いずれも自分の力だけではどうにもなりません。自己責任に帰すのでは不安が広がるばかり。今こそ、自己責任論から脱却し、社会全体で、支え合う安心の仕組みを構築しようではありませんか。私は、これこそが政治の最大の役割であると明確に位置づけ、その役割を担う新しい政権をつくってまいります。

 第二に、豊かさの分かち合いを進め、それによって経済を活性化します。

 バブル崩壊後のGDP、国内総生産の成長率は、二〇一八年までの平均で一%未満。昭和の終わり、バブル前の十年と比較すると、実質で四分の一、名目では十分の一にも届きません。施政方針演説で幾ら虚勢を張っても、この基本構造は、アベノミクスの七年間も何ら変わっていません。

 その原因は、ひとえに国内でお金が回らないことです。海外との関係で日本が貧しくなったわけではありません。

 同じ期間の輸出の成長率は、実質で四・一%、名目でも二・九%。昭和の終わりの十年と比較して六割程度の成長はしています。国際収支も、一時的なマイナスはありますが、黒字基調が続いており、海外との関係では、日本はこの間も豊かさを拡大し続けています。

 経済が低迷している主たる要因は、輸出ではないのです。低下しているとはいえ、今なお日本は一定の国際競争力を持っています。国全体が貧しくなったのではなく、一人一人に行き渡らないため、多くの国民が豊かさを実感できず、消費を冷え込ませ、経済を低迷させているのです。

 国際競争力を維持拡大させるための努力は、今後も更に強化する必要があります。しかし、それと同等以上に、偏って存在している豊かさを分かち合うことで、多くの国民がその実感を持てるようにします。それが、可処分所得を実質的に拡大させ、国内消費を伸ばし、GDPの持続的成長につながる最大の経済対策となります。

 また、若年人口が減り続ける中で国際競争力を維持強化していくためにも、全ての若者が個々の持ち味を発揮できるような学ぶ機会を保障します。貧困などによって学ぶ機会が奪われている若者を、豊かさの分かち合いによってなくしていきます。

 昭和の高度成長期は、成長するから分配できる時代でした。しかし、バブル崩壊後の平成期は、大企業が成長して大きな利益を上げても、賃金や下請などに分配される部分や国内投資に回る部分が限定され、内部留保が積み重なるばかりです。適正な分配がなされないために可処分所得が伸びず、経済の過半を占める内需が成長しないことで、全体としての経済成長の足を引っ張っています。この現実から目を背けても、経済の安定的な発展はありません。

 分配なくして成長なし。

 私は、社会状況の変化を踏まえて経済政策の根本を転換し、豊かさの分かち合いを進めることで、一人一人が豊かさを実感できる社会と、内需を中心に着実に成長する経済を実現いたします。

 第三に、責任ある充実した政府を取り戻します。

 支え合う安心も、適正、公正に豊かさを分かち合うことも、民間だけでは、市場原理では実現できないことです。

 昭和の終わりころから、多くの先進国で、競争を加速することが正義であり、政府は小さいほどよいという方向に大きく傾きました。日本では、民間でできることは民間で、小さな政府などという言葉が絶対的な正義であるかのように語られました。しかし、現状は、民間でできないことまで民間へ、背負うべき役割まで放棄した、小さ過ぎて無責任な政府になってしまっています。

 民営化の先で生じたかんぽ生命の問題。大学入学共通テストの民間丸投げ。公営に限定されてきたギャンブルを民間開放しようとしたカジノ。さらには、非正規化と定員抑制を進め過ぎたあげく、長時間労働が常態化して正規でも希望者が激減し、非正規が集まらなくなっている教職員の世界。常勤職員が不足して大規模災害対応がパンクしている地方自治体。介護サービスの不足や待機児童の問題も、民間だけでは対応できない、広い意味での政府の仕事であります。

 今こそ、小さな政府幻想から脱却し、必要なことには責任ある充実した政府を、そして、民間でできないことはしっかりと官が責任を持つ真っ当な政治を取り戻します。もちろん、立憲主義を回復させ、適正な公文書管理と情報公開を進めることが大前提です。

 私は、最大野党の党首の責任として、支え合う安心と豊かさの分かち合いを実現する、責任ある充実した政府をもう一つの選択肢として高く掲げます。そして、立憲民主党はもとより、会派をともにする皆さん、連携協力する他の野党の皆さん、そして、今の社会と政治に不安と不信を抱く多くの有権者の皆さんと、違いを認め合いながら幅広く力を合わせ、政権交代を実現する決意であります。

 以下、こうした政権ビジョンに基づき、幾つかの重要項目に絞って質問します。

 暮らしの豊かさを示す実質賃金指数や実質可処分所得は、二〇〇五年ころから二〇〇九年ころにかけて急激に低下しました。そして、安倍政権が悪夢とおっしゃる時期はむしろ回復傾向にあったものの、二〇一三年に再び大きく下落して、回復の兆しを示していません。安倍政権は、一部に好転させた数字はあるものの、一人一人の真の豊かさについては、これを膨らますどころか、むしろ低下させているのです。

 アベノミクス七年。その転換なくして、暮らしの豊かさを取り戻すことはできません。

 私たちは、一貫して訴えてきたとおり、まずは第一歩として、政治が直接関与できる低賃金労働者について、合理的な賃金引上げと正規雇用化を図ります。

 保育士や介護職員の皆さんなど、第一に、公的な資金配分の多寡によって支払い得る賃金に制約がある分野であって、第二に、低賃金であるために人員の確保に困難を来し、第三に、需要が大きいにもかかわらず供給が不足している公的サービス分野について、大幅な賃金引上げを図るべく、資源配分を大胆に転換します。

 また、定員削減という美名のもとで、必要な人員まで削られ、あるいは非常勤化が極端に進んでいる地方公務員や公立学校教職員、ハローワーク職員や消費生活相談員などの常勤雇用化や定数の適正化によって、特に地方に対する再分配を強化します。

 総理は、七年かけても実現できなかった実質賃金や実質可処分所得をふやすことを、どのような手段で、いつごろまでに実現しようとしているのか、具体的にお答えください。

 昨年十月、私たちの強い反対を押し切って、消費税が一〇%へ引き上げられました。消費を冷え込ませ、国民生活をより厳しいところへ追い込んでいます。今必要なのは、広く薄く負担をお願いすることではなく、適正、公平に豊かさを分かち合う仕組みであります。

 日本の所得税は累進課税であると言われています。しかし、株式譲渡所得のほか多くの金融所得は分離課税の対象となり、所得税は一五%、住民税は五%です。そして、高所得者ほど所得に占める株式譲渡所得などの割合が高いことから、ある段階から、所得税の実質的な負担率は所得がふえるにつれて低下しています。

 国税庁の標本調査から試算すると、一億円までは所得がふえるほど所得税の負担率は高くなりますが、これを超えると順次低くなり、所得百億円超では所得二千万円程度と同じぐらいの負担率まで下がります。日本は真の累進課税ではありません。この認識で事実関係は間違いないか、そして、こうした状況でよいと思っているのか、総理にお尋ねします。

 私は、株式譲渡所得などの金融所得課税を累進化しつつ強化した上で、将来的に総合課税化を目指します。総理の見解を伺います。

 政府は、高齢者医療や介護に関し、いわゆる窓口負担の引上げや保険給付の対象を小さくすることなどを進めています。

 しかし、医療費や介護費用については、いざというときに、幾ら、そして何年間必要になるか予測がつきません。ごく一部の超高額所得高齢者を除けば、それなりに所得や資産のある高齢者であっても大きな不安を抱いています。低中所得者であればなおさらです。

 窓口負担を引き上げることや給付対象を絞り込めば、いや応なくこうした不安が高まります。進めるべきは公的給付の縮小ではなく、税や社会保険料という将来の見通しが比較的つきやすい負担について、高所得高齢者を含め支払い能力に応じてお願いすることです。また、高所得高齢者について、税を原資とする部分の支給制限、いわゆるクローバックの仕組みを検討すべきであります。

 税については不十分ながらも累進性がとられている一方で、社会保険料については、原則として定率な上に、比較的低い金額で上限が頭打ちになり、所得がふえるほど負担率は下がります。社会保険という制度の本質を維持しつつも、定率、そして逆進的な保険料負担について、応能負担の方向で抜本的に見直すべきであります。

 以上について、総理の見解を求めます。

 昨年十月、待機児童問題を放置したまま、保育所等の無償化がスタートし、私たちが危惧した弊害が各所であらわれています。

 一つは、低所得世帯の実質負担増です。

 もともと保育料が免除されていた方などに無償化の恩恵はほぼありません。それなのに、無償化による財政負担が大きくなった自治体等で、それまで免除していた給食費等の徴収を始めたため、負担増になっている低所得世帯が出ています。

 基本となる保育料が免除された結果、保育料を払って延長保育を利用してもトータルの負担が減るため、その利用が急増しているケースも見られます。それ自体は歓迎すべきですが、保育士の待遇改善が進んでいないため、延長保育に対応した保育士を確保できず、個々の保育士の負担が更に大きくなっています。このままでは、重労働に耐え切れず離職する保育士がふえ、保育士不足がますます加速します。

 これらの事例について、どのような実態把握をしているのか、総理にお尋ねします。

 今からでも遅くはありません。少なくとも無償化に要した予算規模に匹敵する以上の予算を振り向け、保育士の処遇改善と人員確保を進めること、そして、低所得世帯が実質的な負担増にならない措置をきちんと担保することを強く求めます。総理の見解を求めます。

 少子化対策が叫ばれる中、希望しながら子供を持つことができない方がいます。

 経済的理由で、希望しながら子供を産み育てることや家庭を持つことを諦めている方や、そうした希望について考える余裕さえない方などを、豊かさの分かち合いを進めることで私たちは減らしていきます。これこそが重要な少子化対策であります。総理の見解を伺います。

 いわゆる不妊、不育治療、生殖補助医療を受けている皆さんは、肉体的、社会的、そして極めて大きな精神的負担に苦しんでいます。生殖補助医療について、せめて経済的負担だけでも軽減するよう、保険適用をするか、国の責任で保険適用された場合と同程度の補助を行うかするべきです。認識をお示しください。

 今や、世界の電力の四分の一は自然エネルギーでつくられ、原子力発電の二倍に当たります。自然エネルギーのコストは大幅に下落し、原発ゼロはまさにリアリズムです。地域分散型の再生可能エネルギーや住宅断熱化などは地方の活性化にもつながります。原発事故を経験した日本だからこそ、原発ゼロを明確に掲げ、再生可能エネルギーや蓄電、断熱などの技術革新や普及拡大にシフトするべきですが、いかがでしょうか。

 自衛隊の中東派遣について伺います。

 何よりも、基本的な前提として、何を調査し、何を研究するのでしょうか。また、なぜ堂々と特措法の提案などをしなかったのでしょうか。明確な答弁を求めます。

 総理は、昨年の施政方針演説でも、戦後日本外交の総決算を宣言していました。では、「領土問題を解決して、平和条約を締結する。」と言明した日ロ関係について、この一年で一体何が進展したのですか。過去一年間の総決算の具体的な内容についてお答えください。

 辺野古新基地建設について、防衛省の地盤改良工事に関する技術検討会で、本体工事が九年三カ月に延びた上、総工費も九千三百億円に膨れ上がることが明らかになりました。軟弱地盤の改良が成功したとしても、米軍への引渡しは二〇三〇年代以降になると言われています。この事実関係に間違いがないか、お尋ねします。

 県民の反対は無視し、膨大な税金を投入して工事を強行しても、普天間基地の危険を除去することができるのは十年以上も先です。もはや唯一の選択肢という前提は崩れています。今こそ立ちどまって考え直すべきです。総理の見解を伺います。

 本来、災害対応など緊急の対応が迫られている場合に限って編成される補正予算で、戦闘機やミサイルなど高額兵器を購入するのは趣旨を逸脱しています。本予算に計上すべきF35Aなど正面装備の購入費を補正予算案に組み込んでいる理由を、財政法などを踏まえて御説明ください。

 令和二年度本予算案には、設置場所も決まっていないイージス・アショアに百二十九億円が計上されています。イージス・アショアの設置がコスト面、運用面でイージス艦の配備よりすぐれていると言えるのか、具体的根拠を示して御説明ください。

 国民の皆さん、特に、将来への展望を見失っている若い皆さん、そして、困難と闘っている皆さん。この国には、今なお、経済的な豊かさを始め、有形無形、多くの蓄積があります。これを生かして、豊かさを分かち合い、支え合う安心の仕組みを構築すれば、一人一人の暮らしに豊かで明るい未来が開かれます。それをつくることができるのは政治だけです。政治を動かすことができるのは主権者である皆さんです。多くの高校生が、大学入学共通テストの問題で、動けば変わる、そのことを実感されたと思います。

 高度成長やバブル景気の恩恵を受け、その再来を期待している皆さん。社会構造が大きく変化したこれからの日本に、同じことは起きません。しかし、この間に積み上げてきたものを生かせば、安心して年を重ねることのできる長寿社会を実現することが可能です。そのために、責任ある充実した政府をつくろうではありませんか。

 私は、二〇〇九年からの非自民政権で、官房長官や経済産業大臣として、千年に一度と言われた東日本大震災の対応に当たりました。至らない点、御期待に応えられなかった点があったことを率直におわび申し上げながら、しかし、その経験と教訓があるからこそ、そしてその経験と教訓を生かすからこそ、皆さんとともに、明治維新にも匹敵するこの大きな転換点の向こうに明るい未来を切り開くことができます。

 立ちどまったり、後ろを振り向いたりするのではなく、ぜひ、私と一緒に、未来に向けて、右でも左でもなく、前へ一緒に足を踏み出しましょう。私には、あなたの力が必要です。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 枝野幸男議員にお答えをいたします。

 桜を見る会の前日に開催された夕食会についてお尋ねがありました。

 夕食会の価格設定については、出席者の大多数が当該ホテルの宿泊者であるという事実等を踏まえ、会場費も含め、八百人規模、一人当たり五千円とすることでホテル側が設定したものであり、ホテル側において当該価格設定どおりのサービスが提供されたものと承知しております。

 明細書について私の事務所に確認を行ったところ、ホテル側としては、営業の秘密にかかわることから、公開を前提として資料提供には応じかねるとのことであったと報告を受けています。

 夕食会の費用については、ホテル側との合意に基づき、会場入り口の受付において……(発言する者あり)

議長(大島理森君) 御静粛に願います。

内閣総理大臣(安倍晋三君)(続) ホテル側職員の立会いのもと、私の事務所の職員が一人五千円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受け付け終了後に集金した全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で参加者からホテル側への支払いがなされたものと承知しています。

 このように、同夕食会に関しては、主催者である安倍晋三後援会としての収支は一切ないことから、政治資金収支報告書への記載は必要ないものと認識しています。

 桜を見る会への推薦者についてお尋ねがありました。

 桜を見る会については、昭和二十七年以来、内閣総理大臣が、各省庁からの意見等を踏まえ、各界において功績、功労のあった方々などを幅広く招待し、日ごろの御労苦を慰労するとともに、親しく懇談する内閣の公的行事として開催しているものです。

 私の事務所においては、内閣官房からの依頼に基づき、後援会の関係者を含め、地域で活躍されているなど桜を見る会への参加にふさわしいと思われる方を始め幅広く参加希望者を募り、推薦を行ってきたところであります。

 既に記録が残っていないことからその詳細は明らかではありませんが、桜を見る会については、長年の慣行の中で行われてきたことであり、招待者の基準が曖昧であった結果として招待者の数が膨れ上がってしまった実態があると認識しております。

 他方、いずれにしても、招待者は、提出された推薦者につき、最終的に内閣官房及び内閣府において取りまとめを行っているところであり、公職選挙法に抵触するのではないかとの御指摘は当たりません。

 なお、桜を見る会の前日に開催された夕食会を含め、旅費、宿泊費等の全ての費用は参加者の自己負担で支払われております。

 桜を見る会の招待者の公開及び反社会的勢力の定義についてお尋ねがありました。

 桜を見る会の招待者については、その氏名等を公開する前提で招待しておらず、公開することについて招待者から事前の了解も得ておりません。このため、招待者については、招待されたかどうかも含めて、従来からお答えを控えさせていただいております。

 他方で、御指摘の叙勲受章者については、事前に、受章の意思の確認を行うとともに、氏名等の公開について受章者本人から了解を得ております。また、園遊会については、案内状に、個人情報を報道機関に提供する旨記載をするとともに、差し支えがある場合は事前に連絡するよう依頼しているところです。

 なお、反社会的勢力については、その形態が多様であり、また、その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであることから、あらかじめ限定的かつ統一的に定義することは困難であると考えます。

 桜を見る会の招待者についてお尋ねがありました。

 御指摘の番号については、招待状の発送を効率的に行うために便宜的に付しているものであり、会の終了をもって使用目的を終え、また、招待者名簿についても廃棄していることから、その意味については定かではないとの報告を受けております。

 その上で、桜を見る会の個々の招待者やその推薦元については、個人に関する情報であるため、招待されたかどうかも含めて、従来から回答を差し控えさせていただいているところであります。

 一方、一般論として申し上げれば、桜を見る会が企業や個人の違法、不当な活動に利用されることは決して容認できません。

 昨年の招待者名簿の廃棄についてお尋ねがありました。

 招待者名簿については、桜を見る会の終了をもって使用目的を終えるほか、個人情報を含んだ膨大な量の文書を適切に管理するなどの必要が生じることから、保存期間一年未満文書として、終了後遅滞なく廃棄したものです。

 名簿の廃棄を行う際、議員からの資料要求があったとの情報については名簿を保存していた部署に伝わっておらず、あらかじめ決めていたスケジュールに従って廃棄したものであり、議員の資料要求と廃棄は全く無関係であると承知しております。

 昨年の招待者名簿の調査等についてお尋ねがありました。

 招待者名簿については、文書及び電子ファイルの双方について必要な調査を行った結果、既に廃棄されていることを確認したものと承知しており、改めて調査を指示することは考えておりません。

 なお、御指摘のログについては、悪意ある第三者等による不正侵入や不正操作等を検知するための重要な材料となるものであり、その内容を明らかにすれば不正侵入等を助長するおそれがあり、政府としても開示することはセキュリティー上の問題があると考えています。

 桜を見る会の過去の招待者名簿についてお尋ねがありました。(発言する者あり)

議長(大島理森君) 御静粛に願います。

内閣総理大臣(安倍晋三君)(続) 桜を見る会の招待者名簿のうち、平成二十三年から二十九年までについては、行政文書ファイル管理簿に登録すべきところ、内閣府において、登録を行わず、また、廃棄協議の手続を経ることなく廃棄が行われていたものと承知しております。

 御質問の、民主党政権当時、平成二十三年及び二十四年については、桜を見る会自体は中止されたものの、招待者名簿はその時点の完成版が存在したとのことであり、当時の文書についても、組織的に用いるために作成された行政文書として管理簿に登記すべきでしたが、登録せずに廃棄がなされました。

 この両年の措置を前例として漫然と引き継ぎ、平成二十五年以降の招待者名簿についても、行政文書として管理簿に登録しなかったものと考えております。

 本件については、公文書管理法違反であり、当時の文書管理者である担当課長を厳正に処分したところです。

 なお、公文書管理法に違反する状態は平成二十三年から始まったところですが、安倍内閣においては、このことについて官房長官等から指示や示唆を行ったことはありません。

 桜を見る会に関して国会に提出した文書についてお尋ねがありました。

 御指摘の文書については、内閣総務官室官邸事務所からの依頼を受けて内閣府人事課から推薦することとなった者について、同課において、官邸事務所から提供された名簿をそのまま推薦者名簿として利用し、保存しておりましたが、国会に提出するに当たり、最終的な推薦者と異なる表記があれば誤解を招くとの懸念から、文書の趣旨を正しく伝えるべく、その記載を消去したものと承知しております。

 国会に提出する資料についてこのような対応を行ったことは極めて不適切であり、担当課長を厳正に処分するとともに、官房長官が内閣府に対し、このような行為を二度と起こさないよう徹底したところと承知しております。

 IRについてお尋ねがありました。

 副大臣も務めた現職の国会議員が逮捕され、起訴されたことはまことに遺憾です。

 かつて副大臣に任命した者として事態を重く受けとめておりますが、個別の事案の捜査に影響する可能性があることから、詳細なコメントは差し控えます。

 また、法律案の取扱いについては国会においてお決めになるべき事柄と承知しておりますが、IRは、カジノだけでなく、国際会議場、展示場や大規模な宿泊施設を併設し、家族で楽しめるエンターテインメント施設として、観光先進国の実現を後押しするものと考えています。

 同時に、IRの推進に当たっては国民的な理解が大変重要であり、今月発足した高い独立性を有するカジノ管理委員会や国会での御議論も十分に踏まえて、丁寧に進めてまいりたいと考えています。

 辞任した閣僚に関し、検察による捜査及び説明責任についてお尋ねがありました。

 捜査に関する事柄については、お答えは差し控えます。

 その上で、私が任命した大臣が辞任したことは、国民の皆様に大変申しわけなく、任命した者として責任を痛感しております。行政を前に進めることに全力を尽くすことで、国民の皆様への責任を果たす考えであります。

 政治活動については、内閣、与党、野党にかかわらず、一人一人の政治家がみずから襟を正すべきであり、今後とも、指摘に対しては可能な限り説明を尽くしていかれるものと考えております。(発言する者あり)

議長(大島理森君) 答弁が聞こえませんので、御静粛にお願いいたします。

内閣総理大臣(安倍晋三君)(続) 実質賃金についてお尋ねがありました。

 賃金については、長きにわたり景気が低迷する中で、今世紀に入って名目、実質ともマイナス傾向が続いていました。

 こうした中で、第二次安倍政権の発足以降、雇用情勢は改善に転じたものの、実質賃金については、アベノミクスによる雇用拡大で女性や高齢者などが新たに雇用された場合は、平均賃金の伸びも抑制され、さらに、デフレではない状況をつくり出す中で、物価が上昇すれば、一層抑えられるという状況にあります。

 逆に、民主党政権下では、二〇〇九年以降デフレが進行しており、殊さらにその時期の実質値の改善を持ち出すのは、デフレを自慢するようなものであります。そろそろそのことに気づかれた方がよろしいのではないでしょうか。

 他方、七年間にわたるアベノミクスの取組の結果、連合の調査によれば、六年連続で今世紀に入って最も高い水準の賃上げが実現しており、雇用の大幅な増加と相まって、国民みんなの稼ぎである総雇用者所得は名目でも実質でも増加が続くなど、雇用・所得環境は着実に改善をしております。

 こうした流れを継続し、デフレ脱却と経済再生を確かなものとするため、AIやビッグデータなどを活用できる人材の育成、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の実現といった働き方改革、中小企業の生産性向上に向けた支援などに取り組むこととしており、こうした施策を通じて、成長と分配の好循環を更に強化し、より幅広く賃上げの波が行き渡るよう、引き続き全力を尽くしてまいります。

 なお、保育士や介護職員については、保育士等について、月額最大八万一千円の処遇改善を行うとともに、介護職員についても、自公政権で月額五万一千円の改善を行うなど、思い切った取組を実施してきたところであります。

 また、地方公共団体の非常勤職員の処遇改善についても、期末手当の支給を可能とするなど、制度、運用の改善を図ることとしており、必要となる経費について、来年度において所要の地方財政措置を行うこととしております。

 金融所得課税のあり方についてお尋ねがありました。

 所得課税については、累進課税を基本とした上で、ともすれば損益の発生時期の操作が比較的容易とされる金融所得について、単一税率の分離課税とすることで、恣意的な損益操作による課税の不公平を抑制する仕組みとなっています。

 所得税については、平成二十五年度改正で最高税率を引き上げ、累進構造の強化を図るとともに、金融所得課税について、平成二十六年から税率を一〇%から二〇%に倍増しております。この改革によって、所得が高くなるに従って所得税の負担率がより大きく引き上がる傾向が見られ、所得再分配機能の回復に一定の効果があったと考えています。

 今後の税制のあり方については、これまでの改正の効果を見きわめるとともに、経済社会の情勢の変化等も踏まえつつ、検討する必要があると考えています。

 社会保障の給付と負担のあり方についてお尋ねがありました。

 二〇二二年にはいわゆる団塊の世代が七十五歳以上の高齢者となる中で、現役世代の負担上昇に歯どめをかけることは待ったなしの課題です。

 このため、年齢ではなく能力に応じた負担へと見直しを進め、全ての世代が安心できる全世代型社会保障制度を目指し、改革を実行してまいります。

 御指摘の医療費や介護費については、高額療養費制度により、例えば、低所得者の場合の月額上限一万五千円など、所得に応じて自己負担の月額上限等が定められており、幾ら必要になるかわからないとの御指摘は当たりません。また、両者を合算した上限制度も既に整備されているところです。

 高所得者の年金額を調整する、いわゆるクローバック制度については、高齢者の就労と密接に関連する課題と考えます。全世代型社会保障検討会議の中間報告においては、高齢期の就労と年金をめぐる調整について、年金制度だけでなく、税制や保険料負担での対応とあわせて今後検討すべき課題とされており、引き続き検討を進めてまいります。

 また、我が国の社会保険料は、国民の共同連帯という社会保険の考え方を踏まえ、定率負担を基本としていますが、低所得者には保険料の軽減を行うなど、きめ細かな対応を行うことにより、所得の低い方にも配慮した仕組みになっているところです。

 幼児教育、保育の無償化についてお尋ねがありました。

 幼児教育、保育の無償化に伴い、これまで保育料等の一部に含まれる形で徴収されていた副食費について、別途、利用者の方から徴収することとなりましたが、低所得者の方にはこれを免除することとしております。

 また、保育料を独自に減免していた地方自治体において、今回の幼児教育、保育の無償化により負担増となる方が出る可能性があったことから、制度が開始される前から自治体に対する働きかけを行い、結果として、一部の自治体を除き、負担増が生じないよう対応をいただいており、引き続き同様の働きかけを行っていくこととしております。

 議員御指摘の幼児教育、保育の無償化に伴う延長保育の実績については、開始から三カ月強の現時点ではまだ把握しておりませんが、保育士の確保や処遇改善を進めることは重要であると認識しており、これまでも、政権交代以降、安定的な財源を確保しながら、保育士等については月額最大八万一千円の処遇改善を実施してきました。

 引き続き、こうした処遇改善にあわせて、保育士確保に向けた資格の取得促進、就業継続のための環境づくり、離職者の再就職の促進といった観点から、総合的な支援をしっかりと進めるとともに、保育士という職業や働く場としての保育所の魅力の向上とその発信に取り組んでまいります。

 子供を産み育てることへの支援についてお尋ねがありました。

 子供を産み育てたいという希望に対し、子育てや教育に係る費用負担が大きな制約であったことを踏まえ、昨年、幼児教育、保育の無償化という、小学校、中学校の九年間の普通教育無償化以来の七十年ぶりの大改革を行いました。

 さらに、この四月からは、真に必要な子供たちへの高等教育の無償化など、これまでとは次元の異なる政策の実行により、子育てや教育に係る費用を大幅に軽減し、日本を子供たちを産み育てやすい国へ大きく転換していきます。

 また、不妊治療については、他の疾病と同様、治療と疾病の関係が明らかで、治療の有効性、安全性が確立されているものについては保険の対象としています。一方、体外受精や顕微授精については、保険適用外とされており、治療費が高額に上るとの指摘があることを承知しています。

 こうした経済的負担の軽減を図るため、体外受精や顕微授精について、近年では、初回治療の助成額を十五万円から三十万円に引き上げ、助成対象を男性の不妊治療にも拡大するなどの拡大を行ってきており、今後とも、一人でも多くの方の出産の希望をかなえてまいります。

 エネルギー政策についてお尋ねがありました。

 東日本大震災以降、多くの原発が停止する中で、震災前と比べて電気料金が家庭用で約二三%アップし、国民の皆さんに経済的に大きな御負担をいただいている現実があります。資源に乏しい我が国にとって、さらに、気候変動問題への対応やエネルギーの海外依存度を考えれば、原発ゼロは責任あるエネルギー政策とは言えません。

 もとより、原発の再稼働については、東京電力福島第一原発事故のような悲惨な事態を防ぐことができなかったことへの深い反省の上に、高い独立性を有する原子力規制委員会が科学的、技術的に審査し、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら進めていくというのが政府の立場であります。

 同時に、徹底した省エネ、再エネの最大限の導入に取り組み、原発依存度を可能な限り低減する、これが政府の一貫した方針です。

 最大の課題は、国民負担の抑制です。固定価格買取り制度の導入によって、国民の皆様に既に年間二兆円を超える追加的な負担をお願いしています。このため、競争を通じて買取り価格を引き下げる入札制度の導入など、固定価格買取り制度の見直しを行い、国民負担の抑制と再生可能エネルギーの導入拡大の両立を図ってきたところです。

 今後とも、再生可能エネルギーの主力電源化に向けて、あらゆる政策を総動員してまいります。

 自衛隊の中東派遣についてお尋ねがありました。

 エネルギー資源の多くを中東に依存する我が国として、地域における緊張の高まりを深く憂慮しています。中東地域における日本関係船舶の安全の確保のため、我が国独自の取組として、さらなる外交努力、航行安全対策の徹底とあわせて、自衛隊による情報収集態勢の強化を実施します。

 具体的には、自衛隊の護衛艦及び航空機を派遣し、現地海域において、航行の安全に直接影響を及ぼす情報その他の航行の安全確保に必要な情報を収集し、海上警備行動発令時の円滑な実施に必要な事項等を検討します。これは、防衛省設置法の調査研究の規定に基づき行うものです。

 また、不測の事態の発生など状況が変化する場合の対応として、自衛隊によるさらなる措置が必要と認められる場合には、自衛隊法第八十二条の規定に基づき、海上警備行動を発令して対応することとなります。

 このように、今般の活動は現行の法令に基づいて実施可能であることから、特別措置法の制定を含む新たな立法措置は必要ありません。

 日ロ関係についてお尋ねがありました。

 北方四島においては、過去一年の間に、長門合意に基づき、かつてない日ロの協力が実現しています。

 具体的には、共同経済活動について、昨年初めて、北方四島への観光パイロットツアーを始めとするパイロットプロジェクトを実施しました。航空機による元島民の方々のお墓参りについても、昨年は、泊、留別、ポンヤリといった、これまで何年も訪問できなかった場所に訪れることができました。

 領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針のもと、引き続き粘り強く交渉を進めてまいります。

 普天間飛行場の辺野古移設についてお尋ねがありました。

 昨年十二月、沖縄防衛局が、これまでの検討結果として、計画変更後、工事に着手してから工事完了までに九年三カ月、提供手続完了までに約十二年を要し、また、経費の概略として約九千三百億円が必要であることをお示ししたと承知しています。

 その上で、住宅や学校で囲まれ、世界で最も危険と言われる普天間飛行場が固定化され、危険なまま置き去りにされることは、絶対に避けなければなりません。これは、地元の皆様との共通認識でもあると思います。

 日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険性の除去を考え合わせたとき、辺野古移設が唯一の解決策であり、この方針に基づいて着実に工事を進めていくことこそが、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去することにつながるものと考えています。

 これからも、地元の皆様と対話を積み重ね、御理解を得る努力を続けてまいります。

 令和元年度補正予算案についてお尋ねがありました。

 令和元年度補正予算案における防衛費の計上については、財政法第二十九条を始めとする我が国の予算制度に従い、当初予算成立後も刻々と変化する安全保障環境や自然災害への対応等のため、緊要性のある経費を計上しているものです。

 当初予算で計上すべきものを補正予算で計上しているものではなく、財政法を始めとする我が国の予算制度上、適正なものと考えています。

 イージス・アショアとイージス艦のコスト面、運用面での比較についてお尋ねがありました。

 イージス・アショア二基の取得及び三十年にわたる維持運用などに要する経費は、施設整備費等を除き、現時点で約四千億円を超えるものと見積もっています。

 他方で、海上自衛隊の最新のイージス艦二隻の取得及び三十年にわたる維持運用などに要する経費は、約七千億円と見積もっています。

 また、イージス・アショアは、弾道ミサイルの脅威から我が国全域を二十四時間三百六十五日、長期にわたり切れ目なく防護することが可能ですが、整備や補給のために定期的に港に戻るすき間の期間が生じるイージス艦のみで切れ目のない防護体制を構築することは困難です。

 このように、我が国全域の弾道ミサイル防衛という観点で、イージス・アショアはコストと運用の両面においてイージス艦よりすぐれている装備品であると考えています。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 二階俊博君。

    〔二階俊博君登壇〕

二階俊博君 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、安倍晋三内閣総理大臣に質問をいたします。(拍手)

 まず、一昨年、昨年と立て続けに発生しました風水害によりお亡くなりになられた多くの方々に、心からお悔やみを申し上げます。また、被災された皆様に深甚なるお見舞いを申し上げたいと思います。

 東日本大震災で被災され、いまだに御不便なお住まいを続けておられる約七千名の皆様にも、我々は決して皆様の御不自由な生活のことを忘れてはいないということをここで改めて申し上げ、対策にこれから取り組んでいきたいと思っております。

 私たちは、復旧復興の手を決して緩めないことを改めてお誓い申し上げ、質問に入ります。

 我々は一人の命も自然災害では失わないという強い決意を持って、国土強靱化国民運動を始めました。二〇一一年の十月のことであります。

 事前の防災、減災のための予算はゼロからのスタートでありましたが、九年目を迎えた今、皆様の御協力で、令和二年度予算案では四兆円を超える規模にまで持ってくることができました。

 平成三十年十二月には、三カ年で講ずべき緊急対策として、事業費七兆円、国費三・五兆円もの予算を確保することができました。昨年策定された新たな経済対策に基づく令和元年度補正予算案まで加えますと、実に、事業費十兆円、国費五兆円もの規模になります。

 それでもまだ公共資本の整備は追いついてはおりません。自然災害の猛威から身を守るためには、このスピードを加速させ、今できることは全てやり尽くすという覚悟で、予算、組織、定員、体制をつくることが必要であります。これには多くの国民の皆さんの切なる願いが集まっているのであります。

 令和二年度までは臨時特別の措置がとられていますが、令和三年度以降も手を緩めることなく、しっかりとした予算措置を行うよう、政府には強く要望しておきたいと思います。安倍総理の答弁を求めます。

 地球規模の気候変動に伴い、近ごろは降雨量が増加し、海面水位が上昇し、水災害が頻発化、激甚化している現状であります。一昨年、昨年の水害を見ましても、その影響は明らかであります。

 防災・減災、国土強靱化のためには、必要な事業を明記した中長期的な見通しをつくることがまず必要であります。また、ハード対策だけではなくて、ソフト対策も必要であります。国によるリスクマネジメントと、国と国民とのリスクコミュニケーションの徹底が必要であります。

 このように、国土強靱化の地平線を見据えた政策の充実が焦眉の急であるという考えでありますが、安倍総理御自身のお考えをお示しいただきたいと思います。

 日本は災害頻発国であります。いついかなる災害がどこで起こるかわかりません。そのためにも、自分だけは大丈夫、安心という過信をすることなく、日ごろから万全の備えをしておくことが肝要であります。安心は安全の敵だと言われますが、この基本を徹底することも大事なことであります。

 私たちは、これからも気を緩めることなく、国土強靱化を強力に推進してまいります。

 国土強靱化は世界にも広がりを見せています。

 二〇一五年十二月の国連総会で、実に百九十二カ国の賛成で十一月五日を世界津波の日に制定することができました。そして、翌年からは、世界各国の高校生とともに津波の脅威とその対策を学ぶ、世界津波の日高校生サミットが始まり、ことしで五回目を迎えました。過去の開催では、開催地にちなみ、沖縄ではユイマールの心を、北海道ではアイヌ語のイランカラプテの心を大会のキーコンセプトに据えました。我々は全ての人の心と大自然に寄り添いながら、力を合わせて生き抜いていかなければならないという決意を表現したものであります。

 何よりも命が大事、そして、寄り添い、助け合い、互いにきずなを深め合う心が大事だという気持ちからであります。決して上からの目線の思いやりではなく、思い合わせの哲学こそ国土強靱化哲学の真髄であり、この哲学を世界に広げていきたいと考えているところであります。

 国土強靱化への思いについて、武田国土強靱化担当大臣にお伺いしたいと思います。

 昨年の天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典において、天皇陛下にささげる楽曲のテーマが「Ray Of Water」だったのはまことに象徴的でありました。国土強靱化でも世界の水問題に取り組んでいます。

 二〇一七年七月二十日、国連本部において、当時の皇太子殿下のビデオでの御講演をいただいた後で、私は水の未来についてスピーチを行いました。

 水は、生命の基本であり、SDGsの基本的なゴールになっています。世界の水問題は日本がリードして解決を図るべきだと思います。

 天皇陛下になられても水に関する御研究は続けられると伺っています。日本人として水の未来戦略を確立することこそ、令和の新時代における我々の責務であると考えます。

 安倍総理の、世界の水問題への対応方針をお伺いしたいと思います。

 昨年十月の消費税八%から一〇%までの引上げに際し、日本の行財政にとって、また全世代型社会保障の安定性にとって、確固たる基盤が築けたという意味で大変意義深いものでありました。政策の実現をもたらしたのは、言うまでもなく政治の安定であります。

 今後とも、政府・与党一体となって、この安定がいささかも揺るぐことのないよう、お互いに粉骨砕身の努力が必要であります。

 一方、消費税アップの弊害、さらには東京オリンピック・パラリンピック後の景気後退を懸念する声もないとは言えません。

 この点について、私はかねてより、十兆円を上回る大規模な財政出動が必要であると申し上げてまいりました。昨年末、財政措置十三・二兆円、事業規模二十六兆円の総合的な経済対策として取りまとめることができました。

 この対策は、海外経済の下方リスクも含めて、先手先手をとるという考えに立ち、その実現のために諸施策を本年度の補正予算、さらに、来年度の当初予算に盛り込み、今後の経済運営に万全を期するものであります。

 足元の日本経済の評価と先般の総合経済対策の狙いについて、安倍総理の御見解をお伺いします。

 本年一月十九日に、日米安保条約署名から六十年を迎えました。この節目の年に安倍総理が内閣総理大臣の地位におられることに、歴史の偶然と必然を感じるものであります。

 旧安保条約は、日本がアメリカに対して基地を提供する一方、アメリカには日本を守る義務がない、いわゆる片務的なものでありましたが、当時の岸信介総理は、日米を独立、対等の主権国家の関係にするべく、政治家としての信念に基づいて、アメリカに日本の防衛義務を課す双務的な条約に改定しようと御努力をされたのであります。しかし、この岸総理の信念は、必ずしも当時の多くの国民には理解されたとは言いがたいところであります。

 しかし、このときの日米安保条約の改定が平和国家としての我が国の発展と繁栄に結実したことは、当時の岸総理の信念がいかに正しかったかを見事に裏づけております。

 このことは、たとえその時々の国民にすぐには理解されづらいような政策であっても、真に日本国に必要な政策と信ずるものについては、その一歩先を見据え、信念を持って困難を乗り越え実現していくことこそ、真の政治家の責務であるということを見事に示していると思います。

 現代は、ポピュリズムの時代だと言われております。しかし、このような時代であるからこそ、六十年前の岸総理の政治家としての行動は、現在の我々にとっての羅針盤となり得るものではないでしょうか。

 このような、政治家のありようあるいは政治家の果たすべき役割について、安倍総理の御所見を伺っておきたいと思います。

 日本国憲法の国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という基本原理は、国民の中に今や定着し、揺るぎないものとなっております。その憲法の改正原案を策定し、議論をし、国民に発議する権限と責任を有するものは、国権の最高機関である国会の構成員である我々国会議員だけであります。憲法審査会においてさまざまな意見を出し合いながら、大いに議論をし、慎重に幅広い合意形成を目指していくことが何よりも大切だと考えます。

 憲法改正のスケジュールは、期限ありきではありません。あくまでも、憲法審査会において幅広い政党各派が参加して真摯な議論を積み重ねていく中で、おのずと定まってくるものと考えます。ゆめゆめ拙速に走るようなことがあってはなりません。

 このような憲法論議のあり方について、安倍総理の御所見をお伺いしておきたいと思います。

 韓国との外交姿勢については、問題は我々の世代で解決し、次の世代にこのツケを残さないということにしなければなりません。今後とも、その気持ちで外交努力を重ねていくべきだと思います。

 報復の連鎖は、人類の未来に何の利益ももたらしません。中東情勢安定のために、イランと長年友好関係を築き上げてきた我が国がなすべき役割は、大変重いものがあると考えます。

 今こそ日本外交の正念場と思いを定めて、和の政治を旨として、緊張緩和のため、リーダーシップを発揮していただきたいと思います。

 私は、二〇一七年に、中国共産党中央党校において、ともにつくるという共創という言葉を日中外交史上初めて使い、演説を行いました。世界の平和と安定は日中がともにつくり上げていかなければならないという責任感、使命感、決意を述べたものであり、日中の関係改善に長く取り組んできた一人の政治家としての信念を述べたものであります。

 もはや、日中新時代を迎え、日本と中国は二カ国だけのことを考えてよい時代はとうの昔に過ぎ去り、日中は、ともに世界の平和と安定に責任を持ち、世界の国々をリードしていかなければならないと心の底から私は信じております。

 ことしは、習近平国家主席をお迎えする年であります。歴史的に意義の大きい訪日として位置づけ、何としても成功させなければなりません。

 安倍総理の日中新時代へのお気持ちをお伺いしたいと思います。

 首里城の焼失は、沖縄の皆さんのみならず、多くの国民が心を痛めております。私も、昨年、年の暮れ、十二月三十日に現地に赴き、関係者の皆さんを励ますと同時に、現場を調査してまいりました。

 沖縄の人々の気持ちにお互いに寄り添いながら、決して沖縄の人々の負担になることのないよう、一日も早く国として再建を図るべきだと考えております。

 そして、新しい時代の新しい世界遺産として認定をされる、そんな夢を描いているのであります。

 衛藤沖縄担当大臣のお気持ちをお聞かせください。

 気候変動を緩和するために、脱炭素社会に向けた取組を加速することはもちろん重要でありますが、気候変動への適応は、今まさに我が国が対処しなければならない喫緊の命題となってきております。

 これまでの延長ではない、抜本的かつ総合的な気候変動適応策を、国を挙げて調査、検討、実行していくことが重要であると考えます。安倍総理の御見解をお伺いいたします。

 ことしは、東京オリンピック・パラリンピックの年であります。ともに生きる、ともに輝く、このことをテーマにパラリンピックが開催されることは、日本人として誇りに思います。

 そして、レガシーとして、心のバリアフリーを日本社会に、そして世界の人々の間に深く浸透させることができれば、日本人としてこんなにうれしいことはありません。

 日本人の人間への深い優しさ、まなざしを世界じゅうに広めるためにも、心のバリアフリーの展開に対する努力をどのように今後なさるおつもりであるか、安倍総理にお伺いをいたします。

 私は、二年前の代表質問で、国に命を吹き込む政治が今こそ必要だと訴えました。政治は聞く力が大事であり、気づきと気づきのコミュニケーションこそ、政治家の力量が問われていると思います。

 特別支援学校では、今日、教室の不足が生じ、教師やサポート体制もおくれているという現状であります。早急に手当てをしなければなりません。

 在宅介護をしている人々の生の声にも、なかなか行政では行き着かないところがあります。我々も週末ごとに気をつけてコミュニケーションを図りますが、もちろん、それは十分とは言えません。介護離職ゼロというなら、在宅で介護している夫や妻や子供や孫の声にもじっと耳を澄ませる必要があると考えます。

 就職氷河期に社会人になった人々、引きこもったままの中高年の人々、原因不明の痛みを抱えた方々、悩みを誰にも訴えられずに孤独のまま諦めてしまっておるような人々、困難に直面されている方々はたくさん私たちの周囲にはおられるのであります。

 その一人一人の心の隅々にまで、穏やかな光が行き渡るようなメッセージを、聞く力で届けることこそ、国に命を吹き込む政治であり、政治の大きな役割そのものであります。こうした気持ちを強くしておるところであります。

 私たちは、一隅を照らす政治は片時も忘れてはなりません。安倍総理の現在のお考えをお伺いしておきたいと存じます。

 介護保険制度も二十年を超え、第二バージョンの飛躍が求められています。すなわち、地域の聞く力が必要だということであります。

 ケアは、プロだけに任せておけるというふうな問題ではありません。地域ぐるみで介護が必要な皆さんの支援やケアを行う仕組みが必要であり、多機能で互いに支え合う、あったかふれあいセンターのような地域福祉拠点の全国展開が必要だと思います。この際、安倍総理のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

 ホームランバッターは得意なコースのすぐ隣に弱点があるといいます。成功体験に酔うところから失敗は始まると言われます。そういう観点で、全ての行政分野で、この際、総点検をしてみてはいかがでしょうか。

 それこそが、誰一人見捨てない、誰一人忘れない、誰一人ひとりぼっちで寂しい思いをさせないという保守政治の精神の発現であると考えます。

 政治、行政は国民一人一人の人生への支援を行っているのだ、一人たりとも無駄な人間はいない、無駄な中山間地帯などどこにも存在しない、この確信のもとに今後の日本の地方創生はあるべきだと考えますが、この際、安倍総理のお考えをお示し願いたいと思うのであります。

 農林水産物・食品の輸出額は年々伸びて、二〇一八年は九千六十八億円となりました。

 本年四月一日から、農林水産省を司令塔として、輸出事業者へのきめの細かい支援を行うことができるようになりました。

 農林漁業者の皆さんの所得向上に資するように日本の農業を輸出産業として育て上げていくことは大変重要なことであると考えますが、今後の輸出拡大について、安倍総理の御決意をお伺いしておきたいと思います。

 土地改良の着実な推進も極めて重要であります。

 土地改良は、農業の競争力が飛躍的にアップします。全国各地で日々頑張っておられる農業者の皆さんのため、土地改良の予算をしっかりと確保し、事業を着実に推進していかなければなりません。土地改良事業の推進に向けた安倍総理の御決意をお聞かせいただきたいと思います。

 最後に、政治を行うに際し大切なことは、謙虚であり、丁寧であることが大事であります。学ぶべきところは謙虚に学び、正すべきところはしっかりと正していく。こうした姿勢を改めて心に刻み、一致団結、総力を結集して、お互いに、私たちが、ワンチームの力で新しい時代を前に進めていく。このことを改めてお訴え申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 二階俊博幹事長にお答えをいたします。

 国土強靱化の予算措置についてお尋ねがありました。

 まず初めに、二階議員におかれては、これまで、災害が起こるたびに現地に赴き、災害対応の陣頭指揮をとられるとともに、国土強靱化基本法の成立に尽力されるなど、一貫して防災・減災、国土強靱化の取組を主導されてこられたことに対しまして、改めて敬意を表します。

 政府としても、与党と一丸となって、集中豪雨、地震、激しい暴風、異常な猛暑など、異次元の災害が相次いでいる現状を踏まえ、三カ年緊急対策を策定するなど、国土強靱化の取組を抜本的に強化し、災害に屈しない国土づくりを進めてまいりました。

 それに加え、昨年の台風第十五号、第十九号などの被害を踏まえ、河道掘削や堤防強化などの水害対策を中心に、更に国土強靱化の取組をパワーアップさせ、令和元年度補正予算案では、一兆円を超える予算を確保しています。

 これらの予算を活用するとともに、防災、減災をソフト面から進めるための法案を今国会に提出するなど、ハード、ソフトを組み合わせた対策を総動員できる体制を整えます。

 その上で、令和三年度以降も、必要な予算を確保し、オール・ジャパンで防災・減災、国土強靱化を進め、災害に強いふるさとをつくり上げてまいります。

 国土強靱化の政策の充実についてお尋ねがありました。

 近年の災害の激甚化を考慮すると、国家のリスクマネジメントである国土強靱化を中長期的観点から進めるべきという御指摘はまさにそのとおりであります。

 このため、一昨年末に、近年の災害から得られた教訓や社会経済情勢の変化等を踏まえ、国土強靱化基本計画を見直し、中長期的な目標や施策分野ごとのハード、ソフトにわたる推進方針を明らかにしたところであります。

 今後とも、必要に応じて国土強靱化基本計画を充実させながら、国民と行政のリスクコミュニケーションを深めつつ、国家百年の大計として、国土強靱化の取組を更に加速化、深化させることにより、災害に強いふるさとをつくり上げてまいります。

 世界の水問題への対応方針についてお尋ねがありました。

 水は生命の源であり、絶えず地球上を循環し、人類を含めた多様な生態系に大きな恩恵を与え、産業や文化の発展に重要な役割を果たしてきました。

 他方、世界では、いまだに多くの人々が、安全な飲料水にアクセスできず、また、洪水などによる被害に苦しんでいる状況にあります。

 こうした中で、我が国が水災害への対応などにおいてこれまで培ってきた経験と教訓を国際社会と共有することにより、世界の水問題の解決に貢献してまいります。

 また、こうした取組について、本年十月に熊本市で開催される第四回アジア・太平洋水サミットなどの場を通じて、積極的に国際社会に情報を発信するとともに、本年改定を予定している水循環基本計画にもしっかりと盛り込み、水問題の解決に我が国がリーダーシップを発揮してまいります。

 足元の日本経済と経済対策の狙いについてお尋ねがありました。

 我が国経済は、七年間にわたるアベノミクスの取組の結果、力強い成長を続けてきました。現状においても、海外経済の減速等を背景に外需が弱いものの、雇用・所得環境の改善等により、内需を中心に緩やかに回復しています。ただし、先行きについては、米中貿易摩擦、英国のEUからの離脱、そして中東地域の緊迫といった海外発の下方リスクに万全を期す必要があります。

 こうした認識のもと、事業規模二十六兆円に及ぶ総合経済対策を策定しました。安心と成長の未来を切り開く力強い政策パッケージを取りまとめることができたと考えています。

 自然災害からの一日も早い復旧復興に加え、海外発の下方リスクにあらかじめ万全の備えを行うとともに、東京オリンピック・パラリンピック後も見据え、切れ目なく政策を実行していくことで、デフレ脱却と経済再生への道筋を確かなものとしてまいります。

 政治家のありよう、政治の果たすべき役割についてお尋ねがありました。

 御指摘のあった六十年前も、日米安保条約の改定に対しては、戦争に巻き込まれるといった激しい批判がありました。しかし、我が党の先人たちは、政治家としての強い誇りと責任感のもとに、敢然と行動いたしました。日米安保条約がその後の平和国家日本の大きな礎となったことは、歴史が証明しています。政治家の決断には、当然、常に批判が伴います。それでもなお、国家国民のために必要とあらば毅然として行動する、それが私たち政治の責任ではないでしょうか。

 急速に進む少子高齢化、激動する国際情勢、いかなる困難な課題でも、連立与党の強固な基盤の上に、先人たちと同様、五十年先、六十年先の日本をしっかりと見据えながら、真正面から立ち向かってまいります。今を生きる政治家として、私たちの子や孫、その先の世代への責任をしっかりと果たしていく決意であります。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 憲法審査会の運営を始め、憲法改正議論のあり方については、まさに国会でお決めいただくことであり、内閣総理大臣としてお答えすることは差し控えさせていただきます。

 その上で、お尋ねでありますのであえて申し上げれば、憲法改正は、国会が発議し、最終的には主権者である国民の皆様が国民投票で決めるものです。それゆえ、憲法審査会において憲法改正についての議論を重ね、国民の皆様の理解を深めていくことが私たち国会議員の責任ではないかと考えております。

 憲法改正のスケジュールについては、御指摘のとおり、期限ありきの事柄ではないものと考えておりますが、さきの参議院選挙や最近の世論調査を通じて示された憲法改正に対する国民的意識の高まりをしっかりと受けとめていただき、憲法審査会の場において、与野党の枠を超えた活発な議論が展開されることを期待しております。

 日中新時代についてお尋ねがありました。

 日中関係の発展を支える重要な柱の一つは政党間の交流であり、これまで二階議員が日中関係の発展に大きな貢献を行われてきたことに改めて敬意を表します。

 御指摘のとおり、日本と中国は、地域や世界の平和と繁栄に、ともに大きな責任を有しています。日中両国がこうした責任を果たしていくことが、現在、アジアの状況において、そして国際社会からも、強く求められています。習近平国家主席の国賓訪問を、その責任をしっかり果たすとの意思を内外に明確に示していく機会としたいと考えています。

 気候変動適応策についてお尋ねがありました。

 近年、地球規模での気候変動があらゆる分野に広く影響を及ぼす中で、その対応は待ったなしの課題です。政府としては、一昨年、生態系、自然災害、農林水産業を始め各種の産業や、都市のあり方など、多岐にわたる分野について、きめ細かく、気候変動の影響に対する適応計画を策定し、実施しているところです。今後とも、最新の知見について絶えず調査を行い、各種施策の進展状況を勘案しながら、適応策のあり方を不断に検討し、必要な対策を講じてまいります。

 これとあわせて、長期戦略に掲げた脱炭素社会を早期に達成するため、人工光合成を始めとした革新的イノベーションによるビヨンドゼロを目指し、世界における気候変動問題への対応をリードしていく考えであります。

 心のバリアフリーについてお尋ねがありました。

 本年のオリンピック・パラリンピック東京大会は、共生社会の実現に向けた絶好の機会であり、安倍政権としては、障害の有無にかかわらず、誰もが生き生きとした人生を享受することができる共生社会の実現に取り組んでまいります。

 このため、ユニバーサルデザイン二〇二〇行動計画等を踏まえ、全ての子供たちに対する心のバリアフリー教育の実施、全国共通の交通、観光接遇マニュアルの策定、普及、各地で開催されるパラリンピック関連行事を通じた障害者等に対する理解促進などを推進してまいります。

 今後とも、東京大会のレガシーとして、共生社会の実現を目指し、障害のある皆さんが世界で最も生き生きと生活できる国日本をつくり上げてまいります。

 一隅を照らす政治についてお尋ねがありました。

 安倍政権が目指す、女性も男性も、若者もお年寄りも、障害や難病のある方も、さらには一度失敗した方も、誰もが活躍できる一億総活躍社会の実現に向けた取組は、まさに二階議員のおっしゃる一隅を照らす政治そのものであります。

 御指摘いただいた課題については、特別支援学校の施設整備への支援や、教員、専門家による支援体制の充実、介護保険制度に基づく適切なサービス提供や、それを通じた家族の負担軽減、きめ細かな伴走型の就職相談体制や、リカレント教育の確立による就職氷河期世代への支援等を進めてまいります。

 安倍政権としては、誰もが多様性を認め合い、その個性を生かすことができる社会、思う存分その能力を発揮できる社会をつくり上げるため、引き続き全力で取り組んでまいります。

 介護保険制度についてお尋ねがありました。

 高齢化が進む中、元気で社会参加意欲の高い高齢者がふえる一方で、閉じこもりがちな高齢者や孤立感を感じる高齢者もおられるなど、多様化する高齢者の地域での生活を支えていくためには、介護事業者によるサービスに加え、住民が主体となった多様な取組を広げていくことも重要です。

 二階議員が御紹介された事例のように、地域住民が主体となって、高齢者の通いの場の提供や、見守りなどの日常生活への支援を行うことは、こうした多様なニーズを受けとめていく上で大変有用と考えており、政府として支援を進めてまいりたいと考えます。

 地方創生の基本的考え方についてお尋ねがありました。

 私の地元には、息をのむほど美しい棚田が一面に広がっております。長きにわたり、水を涵養し、自然環境を守り、そして、ふるさとが誇る文化、伝統を守ってきました。生産性や経済の効率性といった面だけでは割り切ることができない価値がそこにはあります。まさにプライスレスと言ってもいいでしょう。

  鈴と、小鳥と、それから私、

  みんなちがって、みんないい。

 美しい自然、特色ある産品、豊かな伝統文化、それぞれの地方が持つよさを思う存分生かす発想が、安倍内閣の地方創生です。そして、それを一番よく知っておられるのはそれぞれの地方にお住まいの皆様です。引き続き、全国津々浦々、それぞれの地方で頑張る皆さんお一人お一人の未来への情熱を、与党の皆さんと力を合わせて、全力で応援していく決意であります。

 農林水産物の輸出拡大についてお尋ねがありました。

 農林水産物・食品の輸出拡大に向けて、安倍内閣では、輸出拠点の整備、海外での需要拡大、規制の緩和、撤廃に向けた働きかけ等を強力に進めてきました。

 その結果、輸出額は六年連続で過去最高を更新し、昨年、EUへの牛肉や米の輸出は約三割ふえました。

 先月には、中国への牛肉輸出について、解禁令が発出されました。今月発効した日米貿易協定も生かし、おいしくて安全な日本の農林水産物の世界への挑戦を力強く後押ししていきます。農地の大規模化、牛の増産や水産業の生産性向上など、三千億円を超える予算で、生産基盤の強化や販路開拓など海外への売り込みを支援します。

 今後、さらに、農林水産大臣を司令塔に、各国の輸入規制の緩和などにオール・ジャパンで取り組む体制をつくり上げ、農林水産物・食品の輸出拡大に政府一丸となって取り組んでまいります。

 土地改良事業の推進についてお尋ねがありました。

 土地改良事業は、農地や農業用水といった農業にとって必要不可欠な生産基盤を確保していく上で、大変重要な事業であると認識しています。

 このため、安倍内閣においては、農業の成長産業化に向け、農地の大区画化、汎用化を進め、経営規模の拡大や高収益作物への転換を促進するとともに、農業水利施設の防災・減災対策等の国土強靱化を推進してまいりました。

 来年度においても、本年度補正と合わせて六千五百億円を上回る農業農村整備事業予算を計上しており、今後とも必要な予算をしっかりと確保しながら土地改良事業を着実に推進してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣武田良太君登壇〕

国務大臣(武田良太君) 二階議員より、国土強靱化への思いについて御質問をいただきました。

 二階議員におかれては、一人の命も自然災害では失わないという強い決意のもと、これまで国土強靱化の取組を先導されてきたことに、改めて敬意を表します。

 二階議員の御尽力により、二〇一五年十二月の国連総会において十一月五日の世界津波の日が制定され、また、翌二〇一六年からは、我が国で、国土強靱化を担う将来のリーダーの育成を図ることを目的とした世界津波の日高校生サミットが毎年開催されるようになりました。

 これまでに、若き津波防災大使として高校生サミットに参加した世界各国の高校生は千人を超えており、それらの高校生がともに学ぶことで、心と心のきずなをより一層深め合うとともに、学んだ成果をそれぞれの国で伝え広めていくことにより、国土強靱化の取組は確実に世界に広がっております。

 私自身、これまでも、二階幹事長のもと、防災・減災、国土強靱化に取り組み、高校生サミットにも参画してきたほか、二〇一六年の世界津波の日に際しては、チリやハワイにおいて日本とのリレー津波防災訓練に参加する機会を得、被災時の各機関の連携を確認するとともに、世界津波の日の意義と避難訓練の重要性を世界に発信するなど、国土強靱化の取組を世界に広げる努力をしてまいりました。

 また、国土強靱化担当大臣に就任して以降、台風第十五号や第十九号等の被災地を回り、被災者の方々のお話を直接伺い、また自治体の首長からの切実な要望をいただく中、近年の自然災害の激甚化を踏まえ、国民の生命や財産を守る国土強靱化の取組を進めることは喫緊の課題であると痛感をいたしております。

 今後とも、何よりも命が大事という思いで、国家百年の大計として、災害に屈しない、強さとしなやかさを備えた国土をつくり上げてまいる決意であります。(拍手)

    〔国務大臣衛藤晟一君登壇〕

国務大臣(衛藤晟一君) 二階先生から、首里城の復元についてお尋ねをいただきました。

 首里城は、沖縄の歴史、文化、伝統が凝集した極めて重要なシンボルです。

 私自身、火災発生直後に現地を視察するとともに、前回の復元にかかわられた方々のお話をお伺いし、沖縄の皆様が抱いた喪失感に改めて思いをいたしました。

 政府では、発災後、速やかに関係閣僚会議を立ち上げ、首里城復元に向けた基本的な方針を決定いたしました。現在、この方針に従い、工程表の策定等の取組を進めています。

 国営公園である首里城の一日も早い復元に向けて、沖縄の皆様のお気持ちや御意見を踏まえつつ、国として責任を持って取り組んでまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 玉木雄一郎君。

    〔玉木雄一郎君登壇〕

玉木雄一郎君 私は、会派を代表し、政府四演説に対して、安倍総理に質問いたします。(拍手)

 まず聞かなければならないのは、昨年末、IRに絡んで自民党の現職国会議員が逮捕されたことであります。言語道断であります。まず、このことについて、総理は国民の皆さんにおわびをし、疑惑にまみれたIR事業の推進を凍結すると宣言すべきではないですか。答弁を求めます。

 また、整備地域の選定基準を盛り込んだIR基本方針を今月にも決定するとのことですが、やめるべきです。あわせて伺います。

 八十六万四千人。昨年生まれた日本人の数です。明治三十二年に統計をとり始めて以来、初めて九十万人を割り込みました。私の生まれた一九六九年の出生数が百八十九万人ですから、約五十年間で百万人減ったわけです。二〇一七年、安倍総理は少子化を国難と位置づけて衆議院を解散しましたが、施政方針演説を聞いても、国難突破の本気度が全く感じられません。結局、選挙のときのキャッチフレーズにすぎなかったのですか。

 どうして子供が生まれないのか、産みにくいのか。もはや、従来の延長線上の政策を幾ら重ねても効果が上がらないことは明白です。私は、男性中心社会や大人目線、会社中心や経済優先といった旧来の価値観や社会のあり方そのもの、もっと言えば、文明のあり方自体を大きく転換していかなければ、今の流れを変えることはできないのではないかと思います。きょうは、具体的な提案も含めて質問するので、どうか総理、ごまかさずに正面からお答えください。

 まず、安倍政権は、二〇一五年、希望出生率一・八を掲げましたが、二〇一五年に一・四五だった合計特殊出生率は下がり続け、二〇一八年は一・四二にとどまっています。希望出生率一・八はいつまでにどのように実現するのですか。総理の認識を伺います。

 実は、夫婦一組当たりに生まれてくる子の出生数は大きく減っていません。少子化対策には、むしろ婚姻数や婚姻率をふやすことが極めて重要だと考えます。結婚したい若者が結婚できる環境を整えることが重要だと考えますが、総理の認識を伺います。

 安倍政権は、二〇一七年度までに待機児童を解消するという目標を既に三年先送りしています。しかし、待機児童は昨年四月時点で一万六千七百七十二人に上っています。待機児童ゼロの期限二〇二〇年度末が迫っていますが、本当に解消できるんでしょうか。実現時期が再び延期される可能性はないんでしょうか。総理の認識を伺います。

 また、幼児教育無償化によって、かえって待機児童がふえていると言われています。政府として実態をどのように把握しているのか、お答えください。

 先日、二十代の若い男性から相談を受けました。交際している女性から、姓を変えないといけないから結婚できないと言われたそうです。夫婦同姓も結婚の障害になっています。今、やじで、だったら結婚しなくていい、そういう話がありました。でも、結婚数や結婚率を上げていくことが国難突破の少子化対策になるんじゃないでしょうか。もはや、法律で夫婦同姓を義務づけている国は日本だけです。速やかに選択的夫婦別姓を実現すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 児童虐待によって亡くなった子供は、平成十五年から平成二十八年度までで六百八十五例、七百二十七人に上り、そのうち、ゼロ歳児の割合が四七・五%、中でも、生後すぐ、産声を塞がれて命を奪われた赤ちゃんが一八・六%と、実は虐待死の中で一番多いんです。

 先月、「こうのとりのゆりかご」を運営している熊本市の慈恵病院は、予期せぬ妊娠をして匿名での出産を望む母親について、病院にだけ身分を明かすことを条件に出産を受け入れると発表しました。子供が後に自分の出自を知る権利を病院が独自に保障する、事実上の内密出産です。

 ドイツやフランスには、匿名での出産や出生登録を可能とする法制度があります。政治家の家族観や宗教観もさまざまでしょう。しかし、母体の安全と子供の命を守ることが今何より重要ではないでしょうか。日本でもこの内密出産を認める法整備を進めることについて、総理の見解を伺います。

 一人親世帯の子供の貧困が深刻化しています。その要因の一つに養育費の不払いがあります。平成二十八年度の厚生労働省の報告書によれば、養育費の取決めを行っているのは、母子世帯で四三%、父子世帯は二一%にすぎません。さらに、取決めを行っていても、実際に受け取っているのは、母子世帯の二四%、父子世帯の三%にすぎません。

 そこで、私たちは、離婚時に未成年の子供がいる場合には、公正証書の作成補助など、養育費の支払いの取決めを締結することを支援していくべきだと考えます。こうした考えについて、安倍総理の見解を伺います。

 あわせて、兵庫県明石市などで導入が検討されている、行政機関が一時立てかえを行い、支払い勧告や給与の差押えなどを行う対応を、むしろ国全体で行うべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 性犯罪は、被害者の人格や尊厳を著しく侵害し、長年にわたって心身に苦痛を与え続ける悪質、重大な犯罪です。昨年、被害者の意に反する行為であるにもかかわらず無罪となる判決が相次ぎました。今の刑法では、被害者の抵抗を抑え込む暴行、脅迫がなければ犯罪が成立しません。しかし、実際には、被害者が抵抗したくてもできないケースがあるんです。勇気を持って訴えて、同意のない行為だったと認定されても無罪になる。これは法の不備です。

 刑法の性犯罪規定の見直しを行うべきだと考えますが、安倍総理の見解を伺います。

 我が国では、男女の格差が縮まりません。ジェンダーギャップ指数二〇一九年度版によると、調査対象百五十三カ国のうち、日本は過去最低の百二十一位となりました。その主な原因は、企業の役員、管理職、また国会議員や閣僚における女性比率が低いことにあります。

 二〇二〇年までに各分野における指導的地位に占める女性の割合を少なくとも三〇%とする二〇二〇・三〇目標も達成できていません。二〇一六年の通常国会で、総理は、「三〇%目標を達成できる道筋を、この五年間でつけてまいります。」と答弁しました。あれから四年がたちましたが、いまだに二〇%にも達していない現状を総理はどう考えますか。

 経済、財政の悪化のしわ寄せは、特に若い世代に及びます。世代会計という試算があります。その試算によれば、六十代以上の世代は、社会保障など政府から受け取るネットの一生にわたる受益が約四千万円あるのに対し、逆に、今の二十代はマイナス一千二百万円、将来世代はマイナス八千万円以上になると試算されています。よって、世代間の格差は、六十代と将来世代を比べれば、最大一億二千万円以上にも達することになります。まさにこれは財政的幼児虐待とも言える現状です。

 こうした実態を改め、若者がもっと希望を持って生きられる社会にすることが政治家の責任ではないでしょうか。

 昨年、ポーランド政府は、二十六歳未満の若者の所得税を免除することを決めました。これをそのまま我が国に導入することにはさまざまな意見があると思いますが、徹底的に若者を大切にしようとする姿勢を私は高く評価しています。例えば、日本でも二十代の若者には所得税を免除するといった若者免税について、安倍総理の所見を伺います。

 若者の負担を抑えるためにも、高齢者医療の窓口負担の見直しを行うことは、私は理解できます。一方で、高齢者にとっては生活に直結する問題です。

 そこで、総理に伺います。

 七十五歳以上の高齢者に対する医療費の窓口負担を一割から二割に引き上げる場合、その対象となる人の所得は一体どの程度になりますか。今、全国の多くの高齢者がテレビを見ながら非常に高い関心を持って聞いておられるはずです。総理、ぜひ具体的にお示しください。

 ICT化とともに、子供の生活環境や学習環境にも大きな変化が生じています。私の地元の香川県では、子供がゲーム依存症になるのを防ぐため、子供のゲーム使用時間を制限する条例を制定する動きがあります。私は、eスポーツを国を挙げて進めている時代、過度な規制を行うべきではないと考えますが、こうした動きをどう考えるのか、総理大臣の所見を伺います。

 昨年は、台風十五号や十九号などにより、甚大な被害が全国で発生いたしました。被災された全ての皆様に心からお見舞いを申し上げます。そして、今も懸命に復旧復興に向けて歩みを進めている皆様に、私たちとしても最大限の支援をしてまいります。あわせて、東日本大震災からの復興を着実に進めるため、復興庁の設置期限延長にも取り組んでまいります。

 激甚化する自然災害の原因が地球温暖化と言われていますが、EUの欧州議会は、昨年十一月、気候非常事態を宣言する決議を可決しました。彼らは、もはや、気候変動ではなく、生存に対する差し迫った脅威と捉えています。

 我が国の二〇三〇年時点での自然エネルギーのシェア目標は、二二%から二四%です。しかし、これは、欧州諸国では既に達成してしまっている数字です。日本がもたもたしているうちに、世界ははるか先を行っています。

 世界で脱化石燃料と自然エネルギーへのシフトが急速に進む一方で、日本の石炭政策が国際的な批判の的になっています。日本も、政府と国会が、気候非常事態との認識を持って、IPCC、気候変動に関する政府間パネルが掲げる気温上昇を一・五度以下に抑えるという目標に向け、法的、財政的措置をとるべきです。世界におくれをとっている脱化石燃料の政策が、ひいては気候非常事態につながるという認識が総理にはありますか。伺います。

 日本発の自然エネルギーのイノベーションについて伺います。

 農地に支柱を立てて、ソーラーパネルを設置し、農業と同時並行で太陽光発電、売電を行うソーラーシェアリングが世界的な注目を集めています。

 千葉県匝瑳市では、ソーラーシェアリングにより、市内の全世帯の一割に相当する電力が供給される計画です。売電収入で地元の若手農業法人を支援することで、移住者、新規就農者もふえています。五年前に比べ、耕作放棄地の五割が既に解消しています。

 世界におくれた自然エネルギーを伸ばし、農業の再生に資するソーラーシェアリングの有用性について、安倍総理の認識を伺います。

 日本が世界に比べて決定的におくれているのが、住宅における断熱、エネルギー性能です。ドイツのパッシブハウス基準と比べれば、日本の住宅は暖房のエネルギー消費量で六倍も違うと試算されています。それだけ化石燃料を無駄に燃やしているわけです。

 二十年以上前の断熱基準である改正省エネ基準を二〇二〇年に義務化する動きがありましたが、結局、見送られました。日本は、住宅における世界の断熱後進国です。安倍総理にこの認識があるか、まず伺います。

 特に、窓の断熱性能の低さが大きな問題です。日本の住宅で圧倒的に多いアルミサッシの窓は、樹脂サッシ、木製サッシと比べて断熱性能が実は一千倍以上も低いと言われています。欧州では木製サッシのシェアが三割以上の国もあるにもかかわらず、日本では木製サッシのシェアはわずか一%、しかも国内産の比率は〇・二%しかありません。

 日本の森林資源を活用して、アルミサッシから木製サッシへの転換を政策的に後押ししていくべきです。昨年、森林環境税及び譲与税が創設されましたが、いわゆる川下の都市部における木材需要をふやす観点からも、森林環境税、譲与税の使途に木製サッシの推進を充てることについて、安倍総理の見解を伺います。

 次に、農政について伺います。

 日本の農業の生産基盤が弱体化しています。農地面積は、昨年、四百四十万ヘクタールを割り込みました。この二十年で一割以上減っています。担い手不足、後継者不足も本当に深刻です。昨年の農業就業人口は百六十八万人。二十年前より五割以上も減っています。政府は、食料自給率を二〇二五年度にカロリーベースで四五%に引き上げる目標を掲げていますが、二〇一八年度は過去最低の三七%に落ち込みました。

 現行の食料・農業・農村基本計画は、産業政策と地域政策を車の両輪として進めてきました。しかし、攻めの農業を掲げる安倍政権のもと、実際の農政は、大規模経営や企業型経営を推進する産業政策に過度に偏っています。このことが、家族農業や地域政策を置き去りにし、生産基盤の弱体化に拍車をかけているのではないでしょうか。総理に伺います。

 また、生産基盤の弱体化とともに、国土の保全、水源の涵養、生物多様性の保全、地球温暖化防止機能といった農地の多面的機能、森林の公益的機能が著しく低下していると危惧しています。総理の認識を伺います。

 しかも、看板政策であるはずの農産品の輸出も、その伸びは鈍ってきており、安倍内閣が掲げる二〇一九年に農産品輸出額一兆円目標の達成は絶望的です。総理の見解を伺います。

 農地や農村を守るためには、私たちが法案として提案している農業者戸別所得補償制度のように、安心して営農継続できる直接支払制度を導入すべきです。その上で、食の安全を確保する農業生産工程管理、いわゆるGAPに取り組む農家や自然環境の保全に貢献する農家には、GAP加算などの加算措置を講じればいいんです。

 農地の多面的機能や森林の公益的機能を最大限発揮させる仕組みを組み込み、家族型農業や地域コミュニティーを育む地域政策に軸足を移していくことが重要です。今度の食料・農業・農村基本計画の見直しはそういった視点に立って行うべきだと考えますが、安倍総理の所見を伺います。

 昨年十二月、政府は、六次産業化支援のための官民ファンド、A―FIVEを早期に廃止すると発表しました。

 A―FIVEは、二〇一八年度末時点で累積赤字が既に九十二億円まで拡大。それなのに、二〇一九年度の投資額を前年の約十倍の百十億円以上にして、その後も毎年度九十億円の投資を二〇二六年度まで続け、V字回復して回収するというむちゃくちゃな計画を立てていました。

 しかし、結局は廃止。安倍内閣は、官民ファンドを成長戦略の目玉と位置づけてきましたが、これは余りにもずさんではありませんか。誰が責任をとるのですか。総理に伺います。

 また、A―FIVEのほかにも、多額の累積赤字を抱えた官民ファンドがあります。そうしたファンドは全廃すべきと考えますが、安倍総理の見解を伺います。

 次に、経済政策について伺います。

 第十五回出生動向基本調査によると、結婚する際の障害として結婚資金を挙げた人が男女とも四割台で最も多くなっています。

 しかし、先ほど枝野代表の質問にもありましたけれども、実質賃金指数は、平成八年、一九九六年をピークに下がり続けています。消費が低迷したり、結婚や出産をちゅうちょするのも無理はありません。

 二十年以上、実質賃金指数が下がり続けてきた根本原因は一体何であり、何が最も有効な解決策だとお考えですか。民主党政権の批判ではなく、安倍総理の本質的な回答をお伺いしたいと思います。

 二〇一八年度も、帰属家賃を除く家計最終消費支出はマイナス〇・一%と低迷しました。経済成長率も、名目が〇・一%、実質が〇・三%、ほぼゼロ成長です。結局、アベノミクスでは、富裕層や大企業は確かに豊かになりましたが、働く人や中小企業にその恩恵が行き渡る、いわゆるトリクルダウンは起きませんでした。

 そこで、私たちは、減税と給付の組合せで、まず家計の可処分所得をふやし、消費を軸とした好循環をつくることで経済を回復させる、家計第一の経済政策へ大きくかじを切るべきだと提案しています。

 そのための財源確保策の一つとして、例えば子供国債を発行するなど、現在の公債発行対象経費を見直して、子育てや教育、科学技術の振興といった、将来の税収増や人口増につながる、いわば人づくりに関する支出については国債発行で財源を調達してはどうかと考えますが、安倍総理の考えを伺います。

 景気動向指数が昨年十一月に九五・一と、二〇一三年二月以降、低水準を記録しました。景気が低迷する中、昨年十月、消費税率引上げを強行したために、日本経済は更に苦境に立っています。

 その対策として、政府はキャッシュレスポイント還元制度を導入しましたが、昨年の予算審議の段階で既に、わかりにくい、不公平との指摘が数多く出ていました。事実、ポイント還元の対象となる決済の約六割をクレジットカードが占めていて、そして、カードは所得の多い人ほど利用しています。

 明らかに高所得者優遇の政策になっていますが、政府はこのポイント還元の利用状況を把握していますか。特に、所得階層別の一人当たりの還元額、総計は幾らか把握していますか。それを把握することなく、補正予算に予算を計上したり、当初予算に追加の予算を計上することはできないはずです。総理の答弁を求めます。

 昨年十一月中旬から十二月初旬にポイント還元事業補助金事務局が行ったアンケートで、ポイント還元があるから、消費税引上げ前に耐久消費財やサービスのまとめ買いをやめたという人は、たったの一割でした。消費税引上げ対策としての効果が薄かったことは明らかであり、事業の見直しを行うべきです。総理の見解を伺います。

 私たちは、家計を支援し消費拡大を図るため、所得税の減税と給付を組み合わせた給付つき税額控除を提案しています。我々の提案の方が、公平かつシンプル、しかも政策効果も明確で高いと思いますが、総理の見解を伺います。

 次に、外交について伺います。

 日米貿易協定は、結局、自動車・自動車部品の関税が撤廃されないまま、本年一月一日に発効しました。昨年九月の日米共同声明では、第二ラウンドの交渉を約束させられました。アメリカは、今後、自国の自動車・自動車部品の関税撤廃を先送りしながら、日本に対しては、さらなる農産品の市場開放や、サービス、金融、投資、保険、医薬品、医療品等の貿易上の障壁を主張し、自由化を求めてくることが予想されます。

 総理に伺います。

 日本は、自動車及び自動車部品の関税撤廃の具体的な合意なしに第二ラウンドの協議は行わない、総理の口からその旨明言してください。

 中国についても伺います。

 安倍総理が中国に自制を求めても、中国は、一方的な主張に基づき、平然と公船による接続水域あるいは領海への侵入を続けています。二〇一九年には、その数が過去最多となる延べ一千隻にも達しました。中国は、香港の自治権に関する問題やウイグルにおける人権問題など、非常に憂慮される事態を生み出しています。南シナ海においても、力による覇権主義を推し進めています。

 本年四月に中国の習近平国家主席が来日する予定と伺っています。しかし、安倍総理が国賓待遇で接遇することによって、中国に対して、そして世界に対して、日本の主権に対する挑戦を含め、中国の覇権主義、国際法や民主主義の基本的価値やルールに反する行動を容認するといった誤ったメッセージを送ることになりませんか。総理の所見を伺います。

 安倍政権は、ロシアに遠慮して、外交青書から、北方領土は日本に帰属するという文言を削除しました。そこまでしたのに、プーチン大統領からは、日ソ共同宣言にある二島引渡しの意思さえ全く感じられません。このままでは、二島プラスアルファどころか、ゼロ島マイナスアルファになってしまうのではないですか。

 安倍総理は、領土交渉を前進させるどころか、歴代の自民党内閣が過去積み重ねてきた交渉の成果さえ後退させてしまったのではないでしょうか。総理の所見を伺います。

 また、一昨年の首脳会談で加速させると合意した平和条約交渉についても、明らかにトーンダウンしています。一度、現在の交渉をリセットして交渉戦略を見直すべきではないでしょうか。総理の見解を伺います。

 総理も言及されましたが、昨年秋には観光事業のパイロットツアーも敢行されましたが、長門合意で約束した、双方の立場を害さない特別な制度ができないまま共同経済活動だけを進めれば、結果として、ロシア側の実効支配を認めることになりませんか。肝心の特別な制度の設計は進んでいるんでしょうか。これは主権にかかわる重要な問題です。総理に明確な答弁を求めます。

 次に、憲法について質問します。

 安倍総理は、ことしの年頭の記者会見で憲法改正について、私の手でなし遂げていく、改正原案の策定を加速させたいと強調しました。しかし、昨年十月の予算委員会でも私伺いましたが、憲法九条改正を含む自民党の改憲四項目の条文イメージ案、特に九条改憲案には問題があり過ぎます。憲法審査会の審議を妨げているのは野党ではなくて、論理的整合性のとれていない九条改憲案にあるのではないですか。自民党の中にもさまざまな意見があるのではないでしょうか。憲法審査会での円満な議論のために……(発言する者あり)

副議長(赤松広隆君) 静粛に願います。

玉木雄一郎君(続) 一旦、この条文イメージ案を取り下げてはいかがでしょうか。急がば回れです。総理の見解を伺います。

 次に、国民投票法について伺います。(発言する者あり)静かに聞いてください。議長、静かにさせてください。

副議長(赤松広隆君) 静粛に願います。

玉木雄一郎君(続) 国民投票法について、国民民主党は、資金力の多寡によって国民投票運動に不公正が生じないようにするための独自の改正案を既に国会に提出しています。

 そこで、安倍総理に具体的にお伺いします。

 政党等のテレビスポットCM、そしてネット広告を規制すべきではありませんか。

 また、憲法改正に、とりわけ安全保障に関する条文に外国勢力の影響を排除するため、国民投票運動について外国人からの寄附の受領を禁止すべきと考えますが、総理の見解をあわせて伺います。

 昨年十二月二十七日に、政府は自衛隊の中東派遣を閣議決定しました。今回の中東への自衛隊派遣は、法的根拠が脆弱で、武力衝突に発展する可能性のある地域に向けたなし崩し的な派遣だと言わざるを得ません。何よりも心配するのは、日本が幾ら独自の派遣であると言っても、中東諸国から、アメリカを中心とする有志連合の一部と受けとめられる可能性があることです。私は、かつて外務省で勤務をし、中東やアフリカを担当していました。そのときに、日本がこれまで築いてきた中立的で友好的な中東各国との信頼関係は何物にもかえがたい外交資産であると実感をしました。これまで日本の先人たちが築き上げてきた中東における信頼を失う可能性もあります。

 総理に伺います。

 今回派遣された自衛隊が、ホルムズ海峡において、海上警備行動発令中、国又は国に準ずる組織に対して武器を使用しなければならない状況に陥る可能性はありませんか。その場合、憲法九条が禁じる武力の行使に該当するおそれはないのか、明確な答弁を求めます。

 十分な法的根拠を付与せず、危険な地域に派遣することは、自衛隊員の身をいたずらに危険にさらすことになりかねません。派遣するにしても、閣議決定ではなく、特別措置法を制定して派遣すべきだと考えます。

 一月十九日、日米安保条約締結から六十年を迎えました。日米同盟は日本の安全保障の基軸です。しかし、新たな世界秩序ができ上がりつつあるときに、これまでのアメリカ追随一辺倒の外交姿勢では、日本の国益を最大化できるとは思えません。トランプ大統領がパリ協定から離脱しても意見できない。唯一の被爆国でありながら、イラン核合意の破棄や中距離核戦力、INF全廃条約の破棄もとめられず、アメリカの反発を恐れて核兵器禁止条約にも署名しない。それで本当に日本の国益を追求できるのでしょうか。もっと主体的、戦略的外交を展開すべきだと考えます。

 例えば、中東情勢がかつてないほどに不安定化する中、世界唯一の被爆国である我が国だからこそ、イランの核のみならず、イスラエルの核も含めた中東全体の非核化こそ我が国が訴えるべきと考えますが、安倍総理の見解を伺います。

 足尾鉱毒事件で有名な田中正造は、今から百年以上も前に、真の文明は、山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべしと喝破しました。翻って現代の日本社会を見ると、山は荒れ、川は汚れ、村は廃れ、そして世界じゅうで人の命が奪われています。生活環境と自然環境が整ってこそ、安心して子供を産み育てられる持続可能な社会となります。そして、何より平和が必要です。今こそ、真の文明を政治が先頭に立って築いていかなければなりません。

 近代産業文明や過度なグローバル経済で壊れた日本列島と日本社会を回復させるための鍵は、子供、若者、女性、そして環境を重視する政策だと考えます。私たちは、こうした新しい価値観に基づく新しい社会像と政策を堂々と掲げ、他の野党会派の皆さんとも連携協力をして、自民党にかわる政権の選択肢となる覚悟です。東京オリンピック・パラリンピックの後の政治は私たちが担うんだ、その決意を申し上げ、私の代表質問といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 玉木議員にお答えをいたします。

 IRについてお尋ねがありました。

 副大臣も務めた現職の国会議員が逮捕、起訴されたことはまことに遺憾です。

 かつて副大臣に任命した者として事態を重く受けとめておりますが、個別の事案の捜査に影響する可能性があることから、詳細なコメントは差し控えます。

 IRは、カジノだけでなく、国際会議場、展示場や大規模な宿泊施設を併設し、家族で楽しめるエンターテインメント施設として、観光先進国の実現を後押しするものと考えています。

 同時に、IRの推進に当たっては国民的な理解が大変重要であり、議員御指摘の基本方針についても、現在、国土交通省において、関係省庁との協議を加え、今月発足した高い独立性を有するカジノ管理委員会や国会での御議論も踏まえつつ、丁寧に策定作業を進めているところです。

 希望出生率一・八の実現についてお尋ねがありました。

 少子化の問題は、結婚や出産、子育ての希望の実現を阻むさまざまな要因が絡み合って生じており、その一つ一つを粘り強く取り除いていくことで、できる限り早期に希望出生率一・八の実現に取り組んでまいります。

 このうち、若い世代の結婚をめぐる状況を見ると、男女ともに多くの人がいずれ結婚することを希望していながら、適当な相手にめぐり会わない、資金が足りないなどの理由でその希望がかなえられていない状況にあります。

 こうした希望がかなうような環境を整備するため、若い世代の経済的基盤の安定を図ることはもとより、出会いの場の提供、結婚資金や住居に関する支援など、地方公共団体が行う取組への後押しなどに引き続きしっかりと取り組んでいきます。

 また、待機児童の解消は待ったなしの課題であり、子育て安心プランに基づいて最優先で取り組んでいます。その保育の受皿整備三十二万人分については、女性の就業率が他の先進国並みの八割まで上昇することを想定したものであり、無償化等の要因によって保育ニーズの増大があったとしても、十分対応可能なものと考えています。

 引き続き、二〇二〇年度末までの待機児童解消に向けて全力で取り組んでまいります。

 選択的夫婦別氏制度についてお尋ねがありました。

 夫婦の別氏の問題については、我が国の家族のあり方に深くかかわる事柄であり、国民の間にさまざまな意見があることから、引き続き、国民各層の意見を幅広く聞くとともに、国会における議論の動向を注視しながら、慎重に対応を検討してまいります。

 いわゆる内密出産についてお尋ねがありました。

 内密出産制度は、例えばドイツにおいて、予期せぬ妊娠をした妊婦が、妊娠相談所での相談後もなお実名を伏せて出産することを希望する場合に、医療機関において実名を伏せて出産できることとし、養子縁組につなぐ制度であると承知しています。

 こうした諸外国の制度について、厚生労働省において調査研究を実施しているところですが、一般論として、子供の出自を知る権利をどう考えるか、出産後に実親が養育しない子供が増加するのではないかなどの課題もあると考えています。

 政府としては、予期せぬ妊娠に際して、妊婦の孤立化を防止し、母体と子供の安全を確保していくため、教育や相談体制の整備なども含め、総合的に検討を進めてまいります。

 養育費の確保対策についてお尋ねがありました。

 離婚した一人親家庭の生活の安定と子供の健やかな成長のため、養育費の確保は重要です。

 このため、これまで国や自治体などにおいて、養育費の取決めを促すための情報提供や養育費に関する相談支援の実施等を行っているところです。

 また、昨年五月に成立した改正民事執行法により、養育費の支払いについて、これまでよりも容易に強制執行の申立てを行うことができるようになりました。

 今後は、さらに、養育費の確保に向けて、諸外国における法制度を研究するとともに、地方自治体における先駆的な取組を把握することを通じて、必要な検討に努めてまいります。

 性犯罪の要件の見直しについてお尋ねがありました。

 性犯罪は、被害者の人格や尊厳を著しく侵害する悪質、重大な犯罪であると認識しています。

 平成二十九年に成立した刑法の一部を改正する法律の附則においては、施行後三年を目途として施策のあり方について検討を加えることが求められており、御指摘の点を含めて、性犯罪の実態を把握した上で適切に対処してまいりたいと考えています。

 女性活躍の現状認識についてお尋ねがありました。

 安倍内閣では、女性活躍の旗を高く掲げ、女性活躍推進法の制定などに取り組んできた結果、女性の就業者は二百八十万人以上ふえました。保育の受皿整備を進めるなどにより、M字カーブも確実に解消に向かっています。出産や育児に関係なく女性が働き続けられる環境を整えることは、確実に、将来、指導的地位につく女性の増加に資するものであると考えています。

 また、有価証券報告書に女性役員数の記載を義務づけたほか、取締役のうち少なくとも一人は女性が含まれるようコーポレートガバナンス改革にも取り組んできたところです。その結果、この七年間で、上場企業の女性役員は三倍以上にふえました。政権交代前と比べて、増加のペースは四倍となっています。

 現時点で、社会のあらゆる分野において、二〇二〇年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも三〇%程度となるよう期待するとした水準には到達していませんが、こうした具体的な政策を進めたことによって、三〇%目標の実現に向けた道筋はしっかりとつけることができたと考えております。今後とも、早期の実現に向けて、政府一丸となって、女性活躍政策に全力で取り組んでまいります。

 二十代の若者の所得税を減免する案についてお尋ねがありました。

 個人所得課税は、さまざまな経済活動を通じて得られた所得に税を負担する能力を見出し、その大きさに応じて累進的に税負担を求めるものです。

 二十代である者に対してだけ、同じ所得を得ている他の年代の者よりも低い所得税を課すこと又は全く課さないようにすることについては、こうした税の公平性の観点に加え、それが将来の負担増を懸念する若年層の不安を実際に払拭できるかどうかといった点も踏まえ、慎重な検討が必要であると考えています。

 七十五歳以上の高齢者の医療費窓口負担の見直しについてお尋ねがありました。

 二〇二二年にはいわゆる団塊の世代が七十五歳以上の高齢者となる中で、現役世代の負担上昇に歯どめをかけることは待ったなしの課題です。

 そのため、全世代型社会保障検討会議の中間報告において、七十五歳以上の高齢者であっても一定所得以上の方については、新たに窓口負担割合を二割とし、高齢者の疾病、生活状況等の実態を踏まえて、具体的な所得基準等について検討を行うこととしています。

 今後、その方向性に基づきまして、具体的な検討を進め、夏までに成案を取りまとめたいと考えています。

 ゲーム依存症について御質問がありました。

 昨年十一月に公表されたゲーム依存症に関する実態調査においては、過度なゲーム使用が日常生活や社会生活に重大な支障を及ぼし得ることが改めて浮き彫りになったところです。

 御指摘の香川県においては、条例制定に向けた議論が行われているものと承知していますが、政府においては、実態調査を踏まえつつ、正しい知識の普及や相談支援体制の整備に取り組むとともに、関係省庁やゲームの供給を行っている企業を含む関係団体との協議の場を設け、ゲーム依存症への対策を推進してまいります。

 脱化石燃料への政策についてお尋ねがありました。

 我が国は、五年連続で温室効果ガスの排出量を削減しています。これは、G20の中で日本と英国のみであります。合計で一一%を超える削減は、G7の中で英国に次ぐ大きさであり、パリ協定に基づく削減目標の実現に向けて、日本は世界の中で積極的に取り組んでいます。

 地球規模での気候変動問題への対応は、喫緊の課題であると認識しています。長期戦略に掲げた脱炭素社会を早期に達成するため、人工光合成を始めとした革新的イノベーションによるビヨンドゼロにも挑戦し、世界における気候変動問題への対応をリードしていく考えであります。

 営農型太陽光発電、いわゆるソーラーシェアリングについてお尋ねがありました。

 営農型太陽光発電は、農業生産と再生可能エネルギーの導入を両立することにより、荒廃農地の解消のみならず、農村地域の所得の向上や地域社会の持続的な発展に資する有用な取組であると考えています。

 このため、政府においては、固定価格買取り制度による支援に加えて、パネルの設置に必要な農地法上の許可期間を延長するなどの促進策を講じているところです。その結果、導入事例は毎年増加を続けており、二〇一三年度以降、累計で約二千件となっています。今後とも、こうした取組を全国各地に展開すべく、しっかりと後押ししてまいります。

 日本の住宅に係る断熱性能についてお尋ねがありました。

 各国の住宅の省エネ基準は、それぞれの気候風土や生活様式等を踏まえたものとなっており、単純な比較は困難ですが、ドイツなどのように気候が比較的冷涼な地域を中心に、住宅、建築物の省エネ基準への適合の義務づけなどの積極的な取組がなされていることは承知しております。

 我が国においては、住宅の省エネ基準の適合率がいまだに六割にとどまっており、全ての住宅を対象とする一律の規制強化ではなく、まずは、高い省エネ性能を有する住宅への誘導措置の拡充など、実効性の高い総合的な対策を講じてきているところです。

 なお、森林環境譲与税の使途については、地方公共団体が地域の実情に応じて幅広く弾力的に事業を実施することができ、既に木製サッシを含めた木材の利用の促進に活用することも可能となっています。

 農政についてお尋ねがありました。

 安倍内閣では、農業を魅力ある成長産業にしていくための産業政策と、農業、農村の多面的機能の発揮を進める地域政策を車の両輪として総合的に実行してまいりました。

 こうした政策を進めていくには、しっかりとした生産基盤が欠かせません。昨年十二月に決定した農業生産基盤強化プログラムに基づき、中山間地域の中小・家族経営も含め、幅広く生産基盤の強化を進め、国際競争や災害にも負けない強い農業、農村を構築してまいります。

 農地や森林は、食料や木材の安定供給のほか、国土の保全や景観の維持等の多面的機能を有しています。日本型直接支払制度による地域の共同活動の促進や間伐等の森林整備により、こうした多面的機能の維持、発揮を図ってまいります。

 農林水産物の輸出額は六年連続で過去最高を更新し、昨年、EUへの牛肉や米の輸出は約三割ふえました。先月には、中国への牛肉輸出について、解禁令が発出されました。今月発効した日米貿易協定とあわせ、日本の農林水産物が世界に羽ばたくチャンスはますます広がっています。

 一方、昨年十一月までの輸出実績は、最大の輸出先である香港の政情不安や我が国の水産物の不漁等により、伸び率が前年に比べ低くなっていると承知をしています。今後、農林水産大臣を司令塔として、各国の輸入規制の緩和などにオール・ジャパンで取り組む体制をつくり上げ、農林水産物・食品の輸出拡大に政府一体となって取り組んでまいります。

 本年三月に予定している食料・農業・農村基本計画の見直しに当たっては、産業政策と地域政策を車の両輪とする現行計画の考え方を基本としつつ、農業、農村が直面している諸課題に的確に対応した施策を検討してまいります。

 A―FIVEを始めとする官民ファンドの廃止についてお尋ねがありました。

 官民ファンドについては、現在、その運営について毎年度検証作業を実施し、特に累積損失の大きなものについては、昨年四月に累積損失解消のための新たな計画を策定させたところです。

 そのうち、A―FIVEについては、最近の出資状況、過去の投資の実績等を踏まえ、監督官庁である農林水産省において、令和三年度以降は新たな出資の決定を行わず、可能な限り速やかに解散するとの判断をしたものと承知しています。

 政府としては、事業の実施状況を絶えず検証しつつ、損失が生じる事態が発生した場合には、それを極力最小化していくことも重要な責任と考えています。

 また、他の官民ファンドについては、今後とも計画の進捗状況を厳しく検証し、仮に改善が見られない場合には、事業や組織の抜本的な見直しも含めた事業運営の徹底した見直しを行う方針です。

 実質賃金指数についてお尋ねがありました。

 賃金については、長きにわたり景気が低迷する中で、今世紀に入って名目、実質ともマイナス傾向が続いていました。

 こうした中で、第二次安倍政権の発足以降、雇用情勢は改善に転じたものの、実質賃金については、アベノミクスによる雇用拡大で女性や高齢者などが新たに雇用された場合は、平均賃金の伸びも抑制され、さらに、デフレではない状況をつくり出す中で、物価が上昇すれば、一層抑えられるという状況にあります。

 他方、七年にわたるアベノミクスの取組の結果、連合の調査によれば、六年連続で今世紀に入って最も高い水準の賃上げが実現しており、雇用の大幅な増加と相まって、国民みんなの稼ぎである総雇用者所得は名目でも実質でも増加が続くなど、雇用・所得環境は着実に改善をしております。

 こうした流れを継続し、デフレ脱却と経済再生を確かなものとするため、AIやビッグデータなどを活用できる人材の育成、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の実現といった働き方改革、中小企業の生産性向上に向けた支援などに取り組むこととしており、こうした施策を通じて、成長と分配の好循環を更に強化し、より幅広く賃上げの波が行き渡るよう、引き続き全力を尽くしてまいります。

 国債発行による財源調達についてお尋ねがありました。

 現在、政府は、財政健全化目標としてプライマリーバランスの黒字化を掲げており、この意味においては、赤字国債と建設国債を区別することなく、その全体の縮減に努めているところです。

 他方、競争力向上や人づくりなど、我が国経済の持続的な成長のために必要となる施策については、財源を確保しながら大胆に投資していくべきことは言うまでもありません。

 政府としては、引き続き、プライマリーバランス黒字化目標を堅持しつつ、経済最優先で取り組むことで、成長と財政健全化の両立を図ってまいります。

 ポイント還元事業及び給付つき税額控除についてお尋ねがありました。

 ポイント還元事業について、利用者の所得階層別の調査は行っておりませんが、ポイント還元の対象となった全ての決済のうち、その六割が決済額千円未満であります。全体の平均でも一件当たり二千円余りとなっており、主として日常的な買物に使用されていると考えられることから、高所得者優遇との御指摘は当たらないものと考えます。

 ポイント還元事業の効果については、事務局が実施した御指摘のアンケート調査によれば、消費税引上げ前から駆け込み、まとめ買いの意思を持っていた旨を回答している消費者に絞れば、その半数が、ポイント還元があったから結果としてまとめ買いをしなかった旨を回答したものと承知しています。

 また、参加店舗に対するアンケート調査では、約四割の中小事業者が、ポイント還元は売上げに効果があったと回答しており、消費税引上げ対策として一定の効果が出ていると考えています。本年六月末まで本事業を継続することで、消費税率が一〇%となった中でも、景気に万全を期してまいります。

 給付つき税額控除は、軽減税率制度とともに、消費税率引上げに伴う低所得者への配慮の観点から検討課題の一つとされていましたが、消費税の逆進性の緩和を図りつつ、消費者が日々の生活の中で痛税感の緩和を実感できることが特に重要であるとの判断により、軽減税率制度を導入いたしました。

 昨年九月の日米共同声明にある今後の交渉についてお尋ねがありました。

 今後の交渉については、どの分野を交渉するのか、その対象をまず協議することとしており、現時点において、その交渉開始のタイミングも含めて、予断を持って申し上げることは差し控えます。

 他方で、自動車・自動車部品については、既に、日米貿易協定において、単なる交渉の継続ではなく、さらなる交渉による関税撤廃を明記しています。今後、関税撤廃がなされることを前提に、具体的な撤廃期間等について交渉を行うこととなります。

 いずれにせよ、我が国として、国益に反するような合意を行う考えはありません。

 日中関係についてお尋ねがありました。

 日本と中国は、地域や世界の平和と繁栄に、ともに大きな責任を有しています。日中両国がこうした責任を果たしていくことが、現在のアジアの状況において、そして国際社会からも、強く求められています。習近平国家主席の国賓訪問を、その責任をしっかり果たすとの意思を内外に明確に示していく機会としたいと考えています。

 同時に、中国との間には、御指摘のものも含め、さまざまな懸案が存在しています。こうした懸案については、これまでも私から首脳会談等の際に、中国側に累次にわたり提起してきています。引き続き、主張すべきはしっかりと主張し、中国側の前向きな対応を強く求めてまいります。

 日ロ平和条約交渉についてお尋ねがありました。

 北方四島においては、過去一年の間に、長門合意に基づき、かつてない日ロの協力が実現しています。

 具体的には、共同経済活動について、昨年初めて、北方四島への観光パイロットツアーを始めとするパイロットプロジェクトを実施しました。航空機による元島民の方々のお墓参りについても、昨年は、泊、留別、ポンヤリといった、これまで何年も訪問できなかった場所に訪れることができました。

 このように、一つ一つ成果は生まれており、領土交渉を後退させたとの指摘は全く当たりません。

 北方領土は、我が国が主権を有する島々です。政府としてこの立場に変わりはなく、平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題であるというのが日本側の一貫した立場です。

 一九五六年の共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させ、領土問題を解決して平和条約を締結するという方針に、全く揺らぎはありません。(発言する者あり)これからお答えいたします。

 北方四島における共同経済活動は双方の法的立場を害さないことが大前提であり、この点は二〇一六年十二月のプレス向け声明においても確認されています。これを踏まえ、さまざまなレベルで、プロジェクトを実施するための法的課題について、十分な時間を割いて議論を進めてきています。

 いずれにせよ、プーチン大統領とは、領土問題を次の世代に先送りすることなく、みずからの手で必ずや終止符を打つとの強い意思を共有しており、私と大統領との手でこれをなし遂げる決意であります。

 中東地域での自衛隊の武器使用を含む活動についてお尋ねがありました。

 御指摘のホルムズ海峡において、今般の自衛隊による情報収集活動を行うことは考えておりません。また、昨年十二月の閣議決定で示した情報収集活動の海域以外での海上警備行動の発令については、慎重に判断していくこととしています。

 また、我が国は、中東地域の関係国との間で良好な二国間関係を維持しており、地域情勢等に係る認識を最新の状態に保ちつつ、現在の中東地域の緊張緩和と情勢の安定化及び我が国と地域の関係国との良好な二国間関係の維持強化に向けた外交努力をあらゆるレベルで最大限払うこととしています。

 私自身、我が国の取組については、昨年十二月に、イランのローハニ大統領に対して直接説明し、その意図につき理解を得たほか、今月十一日から十五日までサウジアラビア、UAE、オマーンを訪問し説明を行い、支持を得ているところです。

 こうした点等を踏まえれば、特定の国家等が、日本関係船舶であることを認識し、これらの船舶に対して武器等を使用した不法な侵害行為を行うことは、基本的にないと考えています。

 今般の活動も含め、自衛隊による活動は、憲法を含む我が国の国内法令等に従って行われるものであり、自衛隊の武器使用が憲法第九条が禁ずる武力の行使に該当するおそれはありません。

 その上で、自衛隊員の使命は国民のリスクを下げることであり、このため、自衛隊員の任務は常にリスクを伴うものですが、今般の活動においても、きめ細やかな準備や安全確保対策により、対応に万全を尽くしてまいります。

 なお、今般の活動は現行の法令に基づいて実施可能であることから、特別措置法の制定を含む新たな立法措置は必要ありません。

 主体的、戦略的外交及び中東全体の非核化についてお尋ねがありました。

 我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取組をリードしていく使命を有しています。これは私の揺るぎない信念であり、我が国の確固たる方針です。

 かかる観点から、我が国は、中東に非核地帯を創設する旨の一九九五年のNPT運用検討会議で採択された決議を、今日に至るまで一貫して支持しています。

 こうした立場に基づき、我が国は、イスラエルに対し、イスラエルが非核兵器国としてNPTに参加することを求めてきています。また、イランに対しても、核合意を遵守し、そのコミットメントに即座に戻るとともに、IAEAと完全に協力するよう、引き続き求めていきます。

 我が国としては、今後とも、中東全体の非核化に向け、主体的、戦略的に取り組んでまいります。

 自民党が提示した憲法改正のたたき台についてお尋ねがありました。

 自民党が提示したたたき台の取扱いについて、私が内閣総理大臣としてこの場でお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、お尋ねですのであえて申し上げれば、憲法改正は、国会が発議し、最終的には主権者である国民の皆様が国民投票で決めるものです。それゆえ、憲法審査会において、各党がそれぞれの案を持ち寄り、与野党の枠を超えた活発な議論を通じて国民の皆様の理解を深めていくことが重要であると考えております。

 九条を始め、自民党の案はあくまでもたたき台であり、これに問題があるということであれば、御党の案や考え方を憲法審査会の場で御提示をいただきたいと思います。

 もとより、憲法改正についての合意形成の過程において、特定の党の主張がそのまま通ることがないことは当然のことと考えております。

 国民投票法の見直しについてお尋ねがありました。

 国民投票法は、平成十九年に議員立法で制定されたものでありますが、その際、各党各会派でさまざまな議論がなされた結果として、国民投票運動については、基本的に自由とし、投票の公正さを確保するための必要最小限の規制のみを設けることとするなど、現在の制度となったものと承知しています。

 いずれにせよ、御指摘の広告放送や寄附に関する規制を含め、国民投票運動のあり方などについては、国民投票制度の根幹にかかわる事柄であり、憲法審査会等において御議論をいただくべき事柄であると考えます。(拍手)

     ――――◇―――――

福田達夫君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十三日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

副議長(赤松広隆君) 福田達夫君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(赤松広隆君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十八分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  安倍 晋三君

       財務大臣    麻生 太郎君

       総務大臣    高市 早苗君

       法務大臣    森 まさこ君

       外務大臣    茂木 敏充君

       文部科学大臣  萩生田光一君

       厚生労働大臣  加藤 勝信君

       農林水産大臣  江藤  拓君

       経済産業大臣  梶山 弘志君

       国土交通大臣  赤羽 一嘉君

       環境大臣    小泉進次郎君

       防衛大臣    河野 太郎君

       国務大臣    衛藤 晟一君

       国務大臣    北村 誠吾君

       国務大臣    菅  義偉君

       国務大臣    田中 和徳君

       国務大臣    竹本 直一君

       国務大臣    武田 良太君

       国務大臣    橋本 聖子君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 西村 明宏君

       内閣府副大臣  宮下 一郎君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 近藤 正春君


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