第18号 令和2年4月14日(火曜日)
令和二年四月十四日(火曜日)―――――――――――――
議事日程 第十一号
令和二年四月十四日
午後一時開議
第一 投資の促進及び保護に関する日本国とアラブ首長国連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件
第二 投資の促進及び保護に関する日本国とヨルダン・ハシェミット王国との間の協定の締結について承認を求めるの件
第三 包括的な経済上の連携に関する日本国及び東南アジア諸国連合構成国の間の協定を改正する第一議定書の締結について承認を求めるの件
第四 投資の促進及び保護に関する日本国とモロッコ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件
第五 投資の相互促進及び相互保護に関する日本国政府とコートジボワール共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件
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○本日の会議に付した案件
人事官任命につき同意を求めるの件
国家公務員倫理審査会委員任命につき同意を求めるの件
公正取引委員会委員長任命につき同意を求めるの件
国家公安委員会委員任命につき同意を求めるの件
情報公開・個人情報保護審査会委員任命につき同意を求めるの件
公害等調整委員会委員任命につき同意を求めるの件
中央更生保護審査会委員長任命につき同意を求めるの件
日本銀行政策委員会審議委員任命につき同意を求めるの件
労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件
土地鑑定委員会委員任命につき同意を求めるの件
運輸安全委員会委員任命につき同意を求めるの件
原子力規制委員会委員任命につき同意を求めるの件
日程第一 投資の促進及び保護に関する日本国とアラブ首長国連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件
日程第二 投資の促進及び保護に関する日本国とヨルダン・ハシェミット王国との間の協定の締結について承認を求めるの件
日程第三 包括的な経済上の連携に関する日本国及び東南アジア諸国連合構成国の間の協定を改正する第一議定書の締結について承認を求めるの件
日程第四 投資の促進及び保護に関する日本国とモロッコ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件
日程第五 投資の相互促進及び相互保護に関する日本国政府とコートジボワール共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件
年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び年金積立金管理運用独立行政法人法等の一部を改正する法律案(岡本充功君外五名提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時二分開議
○議長(大島理森君) これより会議を開きます。
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人事官任命につき同意を求めるの件
国家公務員倫理審査会委員任命につき同意を求めるの件
公正取引委員会委員長任命につき同意を求めるの件
国家公安委員会委員任命につき同意を求めるの件
情報公開・個人情報保護審査会委員任命につき同意を求めるの件
公害等調整委員会委員任命につき同意を求めるの件
中央更生保護審査会委員長任命につき同意を求めるの件
日本銀行政策委員会審議委員任命につき同意を求めるの件
労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件
土地鑑定委員会委員任命につき同意を求めるの件
運輸安全委員会委員任命につき同意を求めるの件
原子力規制委員会委員任命につき同意を求めるの件
○議長(大島理森君) お諮りいたします。
内閣から、
人事官
国家公務員倫理審査会委員
公正取引委員会委員長
国家公安委員会委員
情報公開・個人情報保護審査会委員
公害等調整委員会委員
中央更生保護審査会委員長
日本銀行政策委員会審議委員
労働保険審査会委員
土地鑑定委員会委員
運輸安全委員会委員
及び
原子力規制委員会委員に
次の諸君を任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申出があります。
内閣からの申出中、
まず、
人事官に古屋浩明君を、
公正取引委員会委員長に古谷一之君を、
公害等調整委員会委員に都築政則君及び上家和子君を、
運輸安全委員会委員に佐藤雄二君を
任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(大島理森君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。
次に、
国家公務員倫理審査会委員に相原佳世君を、
国家公安委員会委員に横畠裕介君を、
日本銀行政策委員会審議委員に中村豊明君を、
原子力規制委員会委員に伴信彦君及び山中伸介君を
任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(大島理森君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。
次に、
情報公開・個人情報保護審査会委員に小林昭彦君、塩入みほも君及び常岡孝好君を、
公害等調整委員会委員に野中智子君を、
中央更生保護審査会委員長に倉吉敬君を、
労働保険審査会委員に金岡京子君を、
土地鑑定委員会委員に森田修君、清常智之君、加藤瑞貴君、亀島祝子君、川添義弘君、國崎稚加子君及び若崎周君を、
運輸安全委員会委員に田村兼吉君、津田宏果君、及び安田満喜子君を
任命することについて、申出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。
――――◇―――――
日程第一 投資の促進及び保護に関する日本国とアラブ首長国連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件
日程第二 投資の促進及び保護に関する日本国とヨルダン・ハシェミット王国との間の協定の締結について承認を求めるの件
日程第三 包括的な経済上の連携に関する日本国及び東南アジア諸国連合構成国の間の協定を改正する第一議定書の締結について承認を求めるの件
日程第四 投資の促進及び保護に関する日本国とモロッコ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件
日程第五 投資の相互促進及び相互保護に関する日本国政府とコートジボワール共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件
○議長(大島理森君) 日程第一、投資の促進及び保護に関する日本国とアラブ首長国連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第二、投資の促進及び保護に関する日本国とヨルダン・ハシェミット王国との間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第三、包括的な経済上の連携に関する日本国及び東南アジア諸国連合構成国の間の協定を改正する第一議定書の締結について承認を求めるの件、日程第四、投資の促進及び保護に関する日本国とモロッコ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第五、投資の相互促進及び相互保護に関する日本国政府とコートジボワール共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、右五件を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。外務委員長松本剛明君。
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投資の促進及び保護に関する日本国とアラブ首長国連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書
投資の促進及び保護に関する日本国とヨルダン・ハシェミット王国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書
包括的な経済上の連携に関する日本国及び東南アジア諸国連合構成国の間の協定を改正する第一議定書の締結について承認を求めるの件及び同報告書
投資の促進及び保護に関する日本国とモロッコ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書
投資の相互促進及び相互保護に関する日本国政府とコートジボワール共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔松本剛明君登壇〕
○松本剛明君 ただいま議題となりました五件につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
日・UAE投資協定は、平成三十年四月三十日にアブダビにおいて、日・ヨルダン投資協定は、同年十一月二十七日に東京において、日・モロッコ投資協定は、令和二年一月八日にラバトにおいて、日・コートジボワール投資協定は、同年一月十三日にアビジャンにおいて、それぞれ署名されたものであり、我が国と相手国との間で、投資の拡大により経済関係を一層強化するため、投資財産に対する内国民待遇及び最恵国待遇の供与等投資に関する法的枠組みについて定めるものであります。
日・ASEAN包括的経済連携協定第一改正議定書は、平成三十一年二月から四月にかけて署名されたものであり、現行の協定にサービスの貿易、自然人の移動及び投資に関する実質的な規定を追加するための改正等について定めるものであります。
以上五件は、去る二日外務委員会に付託され、翌三日茂木外務大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。次いで、十日に質疑を行い、討論の後、順次採決を行いました結果、五件はいずれも賛成多数をもって承認すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(大島理森君) 五件を一括して採決いたします。
五件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(大島理森君) 起立多数。よって、五件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。
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年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び年金積立金管理運用独立行政法人法等の一部を改正する法律案(岡本充功君外五名提出)の趣旨説明
○議長(大島理森君) この際、内閣提出、年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案及び岡本充功君外五名提出、年金積立金管理運用独立行政法人法等の一部を改正する法律案について、順次趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣加藤勝信君。
〔国務大臣加藤勝信君登壇〕
○国務大臣(加藤勝信君) ただいま議題となりました年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
今後の社会経済の変化を展望すると、人手不足が進行するとともに、健康寿命が延伸し、中長期的には現役世代の人口の急速な減少が見込まれる中で、特に高齢者や女性の就業が進み、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたり多様な形で働くようになることが見込まれます。こうした社会経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図る必要があります。
今般、こうした社会経済の変化に対応し、年金制度の機能を強化するため、この法律案を提出いたしました。
以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。
第一に、被用者保険の適用範囲を拡大するため、短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件について、段階的に引き下げます。また、五人以上の個人事業所に係る適用業種に、弁護士、税理士等の資格を有する者が行う法律又は会計に係る業務を行う事業を追加します。
第二に、高齢期の就労継続を早期に年金額に反映するため、在職中の老齢厚生年金受給者の年金額を毎年定時に改定することとします。また、特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、その支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準を引き上げ、支給停止とならない範囲を拡大します。
第三に、現在六十歳から七十歳までとされている年金の受給開始時期の選択肢を、六十歳から七十五歳までに拡大します。
第四に、確定拠出年金の加入可能年齢を引き上げるとともに、受給開始時期の選択肢を拡大します。また、確定拠出年金における中小企業向け制度の対象範囲の拡大、企業型確定拠出年金加入者の個人型確定拠出年金加入の要件緩和など、制度面及び手続面の改善を行います。
最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、令和四年四月一日としています。
以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)
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○議長(大島理森君) 提出者岡本充功君。
〔岡本充功君登壇〕
○岡本充功君 ただいま議題となりました年金積立金管理運用独立行政法人法等の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
我が国においては、少子高齢化の急速な進展、ライフスタイルの多様化など、社会経済状況は大きく変化してきております。社会保障制度についても、こうした状況の変化に対応し、国民が安心でき、信頼できる持続可能な制度へと見直していくことが必要です。
しかしながら、高齢期の生活を支える年金については、昨年八月の財政検証では、将来の所得代替率は約二割低下、特に基礎年金だけで見れば約三割低下する結果となっており、多くの国民が将来年金で生活していくことができるのか不安に思っております。
その年金給付の貴重な財源の一つである年金積立金の運用を見てみれば、基本ポートフォリオの株式割合を五〇%に引き上げて以来、損益の幅が非常に大きくなっており、今回の新型コロナウイルスの感染拡大に伴う株価の下落などにより、本年一―三月期で十七兆円前後の損失が生じると見込まれています。しかも、こうしたリスクが高い運用を行いながら、GPIFは会計検査院が開示を求めているリスク情報を定期的に公表しておりません。国民の財産である年金積立金をこのように運用することには、まさに国民の不安、不信を招くだけであり、より安全な運用への転換が求められます。
また、社会保障の支え手である現役世代の負担が増加していく中、特に子育て世代については年金の負担軽減を図る必要があります。被用者保険においては、育児休業期間までの保険料免除が認められていますが、国民年金、国民健康保険では、国民年金保険料の産前産後期間の免除があるのみで、その拡充が必要となります。
さらに、低所得の年金受給者への対応の充実も必要です。現行の年金生活者支援給付金は、保険料納付済み期間に応じて支給額が決まるため、低年金者であるほど支給額が低くなり、低所得者対策としては不十分なものとなっています。
こうした問題を改善し、高齢期等において国民が安心して暮らすことができる社会を実現するため、本法律案を提出した次第であります。
次に、本法律案の概要を御説明いたします。
第一に、GPIF等が管理、運用する年金積立金の資産の額に占める株式の割合をおおむね二〇%以内とすることを法定化するとともに、年金積立金の運用に係る損失の危険に関する情報の公表を義務づけることとしております。
なお、株式の割合については、公布の日から十年を経過する日までの間において、市場その他民間活動に与える影響等を考慮した経過措置を設けております。
第二に、国民年金の第一号被保険者が一歳に満たない子を養育する期間の保険料を免除するとともに、その免除期間については基礎年金給付を保障することとしております。また、国は、国民健康保険の保険者が被保険者の産前産後期間及び被保険者が一歳に満たない子を養育する期間の保険料を免除した場合には、必要な財政上の援助を行うものとすることとしております。
第三に、年金生活者支援給付金については、給付基準額を月額六千円に引き上げるとともに、老齢年金生活者支援給付金は、保険料免除期間がない場合には、保険料納付済み期間にかかわらず、月額六千円を支給することとしております。
なお、この法律は、一部の規定を除き、令和三年四月一日から施行することとしております。
以上が、本法律案の提案理由及び内容の概要であります。
何とぞ御賛同いただきますようよろしくお願い申し上げます。(拍手)
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年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び年金積立金管理運用独立行政法人法等の一部を改正する法律案(岡本充功君外五名提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。柚木道義君。
〔柚木道義君登壇〕
○柚木道義君 私は、共同会派、立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムを代表して、ただいま議題となりました政府提出の年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案及び野党提出の年金積立金管理運用独立行政法人法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)
まず、新型コロナウイルス対策を質問させていただきます。
緊急事態宣言からちょうど一週間。これからの一週間が、封じ込められるかどうかの文字どおりの正念場です。
もちろん、コロナ対策に与党も野党もありません。しかし、安倍政権の緊急事態宣言、緊急経済対策は、遅過ぎ、少な過ぎではありませんか。世論調査では、緊急経済対策に期待できないが七二%、三十万円の現金給付は一律給付にすべきと増額をすべきで合わせて七〇%、休業補償は国が行うべきが八二%です。
安倍総理も小池都知事も東京オリンピックに注力する一方で、政府・与党は二月下旬に野党が提案したコロナ対策予算を追加すべきとの組み替え動議に反対した結果、コロナ対策が後手に回り、今の深刻な感染拡大、コロナ不況に至っているのではないでしょうか。これでは、もはや人災です。
総理、対応がおくれた点は率直に国民におわびを述べるべきではないですか。また、マスクの全戸配送に四百六十六億円も国民の税金を使うより、医療、休業補償、現金給付に回すべきではありませんか。総理、お答えください。
私たち野党、そして海外からも批判をされてきたのが、検査件数の少なさです。人口当たりの検査件数が欧米先進国の数十分の一以下では、感染者数の正確な把握は不可能で、他国との比較もできず、海外メディアからは隠蔽とまで非難をされました。さらに、オリンピックの延期が決まるまで検査能力の二割程度しか検査してこなかったことが意図的隠蔽の印象を強めました。
厚生労働省は、検査件数が少ない理由を、検査の必要性の基準は医師の判断と説明。しかし、これは事実ではありません。帰国者・接触者相談センターの全相談者のうち、帰国者・接触者外来への紹介はわずか五%。つまり、九五%の方が、医師の判断ではなく、相談センターによる、国のつくった厳し過ぎる基準で、検査を受けられないのです。
また、メディアでは、医療崩壊を招かないためにもPCR検査を抑制してきたとの論調がありましたが、厚労省は、帰国者・接触者外来で受診能力を超えた事例は一つもなく、入院ベッドも三月の末時点では不足していないとの認識を示していました。
オリンピックの延期決定後から検査数が格段に増加していることからも、それまでの少なさの原因は、習近平中国国家主席の訪日やオリンピックを予定どおり行うための意図的抑制ではなかったのかと言わざるを得ません。結果、早期に拡大を防止できず、緊急事態宣言の発令と至りました。
改正基本的対処方針の蔓延防止策二十四項目の中にはPCR検査の文言は一つも見当たりませんが、感染経路不明者が五割を超える現状で、クラスター対策偏重路線は既に破綻しています。
今までの路線を改め、宣言期間内に、総理が確約をしている一日のPCR検査能力二万件を、大切なのは医師が必要とする検査をふやすことですから、その実検査数二万件を目標として、達成するように指示をいただきたい。また、どのような考えに基づいてその目標を達成するお考えかもお答えください。
緊急事態宣言の発令時期を、国民の八割が遅いと答えています。総理、宣言による経済への影響を危惧する気持ちはとてもよくわかりますが、国民の命がより大切であるとの認識を強く訴えたいと思います。
総理は、会見で、接触機会を最低七割、極力八割減少させれば二週間でピークアウトできると言われました。しかし、二週間様子を見ての対応で本当にいいのでしょうか。悠長過ぎませんか。
人と人の接触機会の減少割合は、ちょうど一週間、本日、この四月十四日時点で何割減少したんでしょうか。もしその数値が示せないのであれば、なぜ検証できない数字を示されたのか、総理の答弁を求めます。
専門家が、感染の拡大、縮小状況を判断する参考指標として、一人の感染者が平均何人に感染させるかを示す実効再生産数、新規感染者数、感染者に占める感染経路不明者数を挙げています。
そこで、緊急事態宣言を出す直前の国及び指定された七都府県の実効再生産数をお示しください。
また、二週間後のピークアウトを目指すからには、その時点での目安は縮小状況と判断される一・〇以下と考えるのか、国民に説明してください。
あわせて、宣言解除のための新規感染者の増加率と経路不明感染者率の目安をお示しください。
もし緊急事態宣言の期間を何度も延長するようなら、総理が宣言者としての政治責任を果たしているとは言えません。総理、改めて、この一カ月の発令期間内に新型コロナを終息させると国民に約束をしてください。答弁を求めます。
休業補償と緊急事態宣言はセットです。それでこそ、事業者も労働者も安心して休業できます。国民が総理に望んでいるのは、星野源さんとのツイッターで優雅に紅茶を飲んでいる姿より、自粛と補償をセットで実現するために全力投球している姿ではないでしょうか。
実際に、自粛要請を受けたお店や働く皆さんから、毎日悲鳴が寄せられています。ここは、欧米並みの賃金補償が不可欠です。欧米では、八割程度の国民にも行き届き、八割程度の賃金補償がなされています。そこで、補正予算の事業持続化給付金と現金給付が合計六兆円であるのを、欧米並みに大幅に積み増すべきです。答弁を求めます。
政府は、野党や世論の批判を受け、対象拡大を検討するそうですが、そもそも、八割もの国民が排除される一世帯三十万円の現金給付でなく、野党案の、一人当たり十万円以上、全員一律給付で後から課税をする方法であれば、国民全員に迅速かつ公平な支給ができます。総理、ぜひ、全国一律で個人単位での十万円以上の給付の採用を強く求めます。税金は、あなたのものではなく、国民のものです。今、国民を救うために使わずに、いつ使うのか。総理、ぜひお答えください。
事業者支援も、現状では遅過ぎ、少な過ぎで、家賃にもなるかどうかだというのが現場の声です。二兆円の事業持続化給付金を大幅に積み増すことを総理に強く求めます。御答弁ください。
東京都は感染拡大防止協力金を支給しますが、不十分です。自治体と国の補償をセットで実現するべきで、そのためには、現在一兆円の全国の自治体が柔軟に使える臨時交付金としての拡充を求めます。総理、御答弁ください。東京都と国も、対立ではなく協力をして、休業補償を拡大し、感染防止の加速をぜひよろしくお願いいたします。
子育て世帯への対応も不十分です。
家計調査によると、家族一人当たりの食費と光熱水道代だけでも月三万円程度かかります。シングルマザー家庭では、一日二食にするような家庭もあり、状況は切迫しています。児童手当一万円増額について、さらなる臨時的引上げを行うとともに、毎月支給とすること、対象年齢を十八歳まで引き上げることを強く求めます。総理、お答えください。
安倍総理、憲法を改正し、緊急事態条項を制定すれば、危機管理がうまくいくわけでは決してありません。今やるべきことは、目前のコロナ危機をどう乗り越えるかです。精神論やお願いではなく、補償なくして自粛なしです。一刻も早く、いかなる職業であっても排除されることなく、職を失ったり住みかをなくしたり、弱い立場の方々、より多くの皆様を救済できる対策を強く求めて、年金法案の質問に入ります。
年金は、まさに国民の老後生活を支える重要な柱であります。
昨年八月公表の財政検証結果を見ると、将来、年金は決して安心できません。経済前提六ケースのうち、三ケースで、将来、二、三十年後の所得代替率が五割を下回り、五〇%確保できる三ケースでも、所得代替率は約二割低下、国民年金、基礎年金は約三割も低下する見通しです。基礎年金、国民年金の給付水準の大幅な低下は、最大の課題です。
総理は、物価上昇率で割り引けば基礎年金額はおおむね横ばいと説明しますが、年金の給付水準は、賃金上昇率で割り戻した額、つまり所得代替率で見るべきです。給付水準が三割も低下する基礎年金、国民年金で、貯金も十分でない方々が増大する中で、果たして生活が成り立つのでしょうか。総理、お答えください。
今回の政府案は、小手先の改革です。本来、全ての労働者に被用者保険を適用するのが目指すべき姿であり、この認識は与野党共通のはずです。しかし、政府案では、企業規模要件の撤廃すら実現していません。保険料負担が増大する中小企業への配慮は当然必要ですが、その配慮は、適用しないことではなく、中小企業にも適用拡大した上で、経営していけるよう十分に支援することです。
今回、企業規模要件を撤廃する道筋がつかなかった理由、撤廃時期、さらなる適用拡大の見通しについて、総理に伺います。
GPIFの資産構成について、株式割合を五〇%にふやしてから、運用収益の振れ幅が大きくなり過ぎています。そのため、今回の新型コロナウイルス感染拡大に伴う株価の下落により、一―三月期は十七兆円前後という過去最大の積立金の損失見通しであります。
先日の資産構成割合の見直しでは、外国債券の割合を二五%に引き上げましたが、現在のように世界的に金融市場が動揺する中では外債のリスクも高くなります。政府は累積収益は改善していると説明しますが、マイナス幅が大きく出るということに対して国民は大きな不安を持っています。
積立金の運用は、被保険者の利益のために、安全かつ効率的に行うという法律の規定を考えれば、株式運用比率を倍増させたことで、コロナショックの影響を大きく受け、過去最大の十七兆円もの損失を出すなど、年金運用のリスクを高めたのではないでしょうか。総理、お答えください。
また、GPIFは、会計検査院から開示が求められたバリュー・アット・リスクやストレステストの結果といったリスクは開示しないままです。リスク情報がわからないままでは、安全かつ効率的な運用が行われているのか、十分確認できません。速やかに会計検査院が開示を求めているリスク情報を開示すべきです。総理の見解を求めます。
野党案では、GPIFの株式の構成割合の法定化、運用リスク情報の公表義務化を行うとしていますが、その趣旨、具体的な株式の割合について、提出者に伺います。
政府は、繰下げ受給により、年金額がふえ、より豊かな老後生活が可能になるとアピールしていますが、現行の七十歳までの繰下げの利用者は一%程度にとどまります。七十五歳まで繰下げ可能にしても、その間の生活資金が確保できなくては利用もできません。生活の資金に余裕のある人だけが恩恵を受け、年金の増額が必要な低所得者は繰下げ受給を利用したくてもできないのではないでしょうか。総理、お答えください。
年金生活者支援金は、保険料納付済み期間に応じて支給額が決まり、納付済み期間が短く年金額が低い人ほど支給額が低くなります。低所得者対策としては、納付済み期間にかかわらず、一律に給付すべきと考えますが、総理の御所見を伺います。
今回の野党提出法案では、年金生活者支援給付金を拡充し、一律に月六千円支給するとしております。提出者に、改めてその意義、必要性を伺います。
また、野党案では、子供が一歳になるまでの間の国民年金と国民健康保険の保険料の免除も盛り込まれており、大いに評価をいたしますが、その趣旨、意義について、提出者に伺います。
これまでの年金制度改革は、まさに新型コロナ対策と同様に後手後手に回ってきた、繰り返しでありますが、今まさにコロナ対策も年金対策も現実を見据えた具体的かつ早急な対策が必要であり、共同会派としても全力で取り組んでいくことを申し上げて、私の質問といたします。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 柚木道義議員にお答えいたします。
新型コロナウイルス感染症対策についてお尋ねがありました。
新型コロナウイルス感染症対策については、何よりも国民の命と健康を守ることを最優先に、二月十三日に第一弾、三月十日に第二弾の緊急対応策を講じ、必要な対応を直ちに実行してきました。こうした対策の効果や国民の皆様の御協力により、経済社会活動を可能な限り維持しながら、今のところ、諸外国のような爆発的な感染拡大、いわゆるオーバーシュートは発生していない状況にあります。
こうしたこれまでの感染拡大の状況を客観的事実として評価する限りにおいて、諸外国と比しても我が国の対応が遅かったとの御指摘は当たらないものと考えております。
他方で、東京や大阪など都市部を中心に感染者が急増している等の状況を踏まえ、緊急事態宣言を行うとともに、今回の緊急経済対策では、医療提供体制の整備や事業者に対する資金繰り支援、家計や中小・小規模事業者に対する現金給付など、前例にとらわれることなく、思い切った措置を講じています。
また、布製マスクは、使い捨てではなく、再利用可能であることから、急激に拡大しているマスク需要に対応する上で非常に有効であり、また、サージカルマスク等を医療現場に優先して供給するためにも、家庭向け布マスクの配布を行うことは理にかなった方策と考えています。米国CDC等においても、布マスクの有用性が評価されているところであります。
PCR検査についてお尋ねがありました。
PCR検査については、四月十二日時点で、全国で一日当たり約一万二千件以上の検査能力を確保しています。
検査能力の分だけ実検査せよとの御指摘については、検査能力と実際に検査が必要な検査数は別のものと考えており、医師が必要と判断した方が確実に検査を受けられるようにすることが重要と考えております。
PCR検査の実施件数については、都市部を中心として感染者数の急増が見られる中で増加してきているとの認識ですが、全相談件数に占める検査実施の報告件数が低い都道府県もあることから、その背景や事情について現在フォローアップを行っているところです。
政府としては、引き続き、医師が必要と判断した患者が確実に検査を受けられるよう取り組むとともに、さらなる感染拡大に備え、緊急経済対策において、PCR検査体制の一日二万件への増加や、保健所の体制整備によるクラスター対策を抜本的に強化してまいります。
御指摘の、人と人との接触機会の減少割合は、必ずしもこれを直接的に示す数字ではありませんが、評価の一つの目安となるものとして、例えば、携帯電話の位置情報を活用した人口変動データを活用しています。このデータは、四月十二日時点で、昨年に比べ、渋谷で約七割、横浜や梅田で約八割減少するなど、一定程度減少している状況が見られます。接触機会の具体的な削減状況については、こうしたデータも参考にしつつ、感染拡大の状況についても日々分析した上で、専門家の意見も踏まえて判断していくこととしています。
また、実効再生産数については、感染日から発症日までに要する期間を考慮すると、二週間程度経過した後初めて算出可能となるため、御指摘の時点における実効再生産数をお示しすることは困難です。なお、専門家によると、早期収束のためには、その値を一より十分小さい状況を目指すことが必要と指摘されています。
御指摘の緊急事態宣言の解除については、専門家の評価をいただきながら総合的に判断していくこととなりますが、収束に向けて、国民の皆様のこれまで以上の御協力をお願いしつつ、感染拡大の防止等に政府としても全力を尽くしてまいります。
緊急経済対策についてお尋ねがありました。
世帯向けの現金給付については、リーマン・ショック時に全国民を対象に一人当たり一万二千円の給付を行った際、全戸に対する給付案内等の準備に三カ月もの時間を要したこと、高所得世帯を中心に多くが貯蓄に回ったことなどの経験を踏まえ、今回は、全世帯に一律の給付を行うのではなく、甚大な影響を受けて収入が減少し、生活に困難を来している御家庭に集中することで、スピーディーに、思い切った額である三十万円の給付を行うこととしたところであり、大変な状況にある方々に迅速かつ効果的な支援を行うものであります。
事業者への現金給付については、過去に例のない措置でありますが、今般の感染症により休業を余儀なくされた事業者のみならず、売上げが大きく減少した中堅企業、中小・小規模事業者を業種にかかわりなく幅広く対象とするものです。また、中堅・中小企業には二百万円、フリーランスを含む個人事業者には百万円を上限に給付を行うものであり、他の欧米諸国との比較において、対象範囲の広さでも、金額でも、遜色のない支援を行う施策であると認識しております。
自治体への交付金についても、今回の対策では、全額国費負担の事業が多い中にあって、リーマン・ショック時と同じ規模の金額を確保することにより、今般の感染症に係る自治体における対策に万全を期したところであります。
その上で、今般の緊急経済対策では、六兆円規模の現金給付のみならず、雇用調整助成金の拡充を通じた従業員の皆さんの雇用と収入の確保、事業者負担の軽減、税や社会保険料の猶予による手元資金の確保、実質無利子無担保、最大五年間元本返済不要の融資制度によって資金繰りに万全を期すなど、あらゆる手段を駆使して、困難に直面している事業者や御家庭の皆さんを支えることとしています。全体で事業規模百八兆円、GDPの二割に当たる対策規模は、世界的にも最大級であると考えております。
このための補正予算を来週にも国会に提出する予定であり、野党の皆様の御理解と御協力を得て早期の成立を図ることにより、対策を速やかに実行に移してまいります。
引き続き、内外における事態の収束までの期間と広がり、経済や国民生活の影響を注意深く見きわめながら、国民の命と暮らしを守るため、必要に応じて、時期を逸することなく、臨機応変かつ果断に対応してまいります。
子育て世帯への支援についてお尋ねがありました。
政府としては、今般の新型コロナウイルス感染症の経済への甚大な影響により困難に直面されている御家庭に対して、迅速かつ徹底的な下支えをする所存であります。
このため、甚大な影響を受けて収入が減少し、生活に困難を来している御家庭を中心に、集中的に三十万円の思い切った給付を行うとともに、お子さんのいる御家庭に対しては、これに加えて、可能な限り迅速にお支払いする観点から、児童手当の対象者に、そのお支払いにあわせて子供一人当たり一万円を一時金としてお支払いすることとしております。
さらに、光熱水費等について支払いの猶予を求めるとともに、八十万円まで利用が可能な返済免除特約つきの緊急小口資金の活用等も可能としております。
政府としては、引き続き、御指摘のシングルマザーを始め大変な状況にある方々の実態をよく踏まえ、こうした方々に直接手が届く効果的な支援策を実施してまいります。
年金の給付水準についてお尋ねがありました。
将来の年金水準を見通す上では、現役期の賃金との比較である所得代替率と、年金受給者の購買力をあらわす、物価上昇分を割り戻した実質価格の双方を見ることが大切と考えています。
この点、昨年公表した財政検証の結果によれば、将来世代の給付確保のために行うマクロ経済スライドによる調整が終了した後の所得代替率については、当初、前回検証よりも悪化するのではないかとの臆測もあったところでありますが、こうした一部の臆測に反し、代表的なケースでは、前回検証時の五〇・六%に対し、五〇・八%と改善したところであります。
また、基礎年金額は、物価上昇分を割り戻した実質価格で見るとおおむね横ばいとなっており、年金受給者の購買力や実質的な生活水準が三割低下するわけではありません。
さらに、昨年、財政検証結果において、被用者保険の適用拡大は、厚生年金のみならず基礎年金の水準を確保する上でもプラスの効果を持つことが確認されたところであり、今般の法案では、このような内容も盛り込んでいるところです。
なお、低所得や無年金、低年金の高齢者の方には、年金受給資格期間の二十五年から十年への短縮、年金生活者支援給付金の支給、年金給付から天引きされる医療、介護の保険料軽減を実施してきており、今後とも、社会保障制度全体で総合的な対応を検討してまいります。
厚生年金の適用拡大についてお尋ねがありました。
被用者である方には、被用者保険である厚生年金を適用することが原則であり、その意味で、企業規模要件も最終的に撤廃すべきものであると考えています。
他方、厚生年金の適用拡大は、特に中小企業への影響も大きいことから、全世代型社会保障検討会議等の場で関係者の意見を丁寧にお伺いした上で、今回は、五十人超の中小企業まで段階的に適用範囲を拡大していくこととしたものです。
まずは、中小企業への生産性向上支援、社会保険手続の負担軽減も図りながら、五十人超の中小企業までの適用拡大を着実に進め、その上で、次期財政検証の結果も踏まえて適用範囲の検討を加えることとし、その旨、法案の附則にも規定したところです。
年金積立金の運用、リスク等情報の開示についてお尋ねがありました。
年金積立金の運用は、長期的な観点から行うこととされており、株式市場を含む市場の一時的な変動に過度にとらわれるべきではありません。
また、年金積立金の運用は、安全かつ効率的に行うことが重要です。このため、経済動向や運用環境などを踏まえて、株式や内外の債券を含めた分散投資により、ポートフォリオ全体としてのリスクを抑えつつ、年金財政上必要な利回りを確保していくことが必要であると考えております。
御指摘の年金積立金運用のリスク情報については、GPIFにおいて、会計検査院の指摘も踏まえて、御指摘のバリュー・アット・リスクについては平成三十年度の業務概況書において、また、ストレステストについては本年三月の基本ポートフォリオ変更に伴うプレスリリースにおいて、既に開示されているところです。
受給開始時期の選択肢の拡大についてお尋ねがありました。
全世代型社会保障の実現のため、人生百年時代の到来を見据えながら、年金制度においても、働き方の変化を中心に据えて改革を進めることが必要であると考えています。
このため、政府としては、高齢者が意欲を持って働ける環境整備を進めるとともに、そのための手段として、受給開始時期の選択肢を七十五歳まで広げ、受給額についても、年金財政中立の考え方のもと、八四%までの割増しを受けることを可能としております。
こうした改革により、支え手をふやし、年金制度全体の安定性を高めることで、低所得の方々を含めた将来の年金水準の確保にもつなげていくことが可能となります。
なお、低所得や無年金、低年金の高齢者の方には、年金受給資格期間の二十五年から十年への短縮、年金生活者支援給付金の支給、年金給付から天引きされる医療、介護の保険料軽減を実施してきており、今後とも、社会保障制度全体で総合的な対応を検討してまいります。
年金生活者支援給付金についてお尋ねがありました。
年金生活者支援給付金は、平成二十四年の社会保障と税の一体改革における三党合意において、定額給付は保険料納付のインセンティブを損なうため社会保険方式になじまないとの観点から、月額五千円を基準としつつ、保険料納付済み期間に比例した給付として、当時の民主党政権が法案化した経緯があり、こうした経緯は重いものと考えます。
また、どのような給付を行う場合も、それを支える安定財源がなければ持続可能な制度とならないものと考えます。(拍手)
〔尾辻かな子君登壇〕
○尾辻かな子君 柚木道義議員の質問にお答え申し上げます。
年金積立金管理運用独立行政法人、GPIFが管理及び運用する年金積立金の株式の割合の法定化並びに年金積立金の運用に係る損失の危険に関する情報の公表の義務化についてお尋ねがありました。
年金積立金は、国民の貴重な財産であるとともに、将来の年金給付の財源として重要なものです。このため、年金積立金の資産の運用に当たっては、この価値を毀損することのないよう、安全かつ確実を基本とした運用が求められています。
安倍政権に入り、年金積立金の資産の額に占める国内外の株式の構成割合が五〇%に引き上げられて以来、リスクの高い株式の割合が高まった結果、損益の幅が非常に大きくなっています。これでは、今回の新型コロナウイルスの感染拡大のような危機的な事態が一たび生じれば、株価の下落によって国民の財産が大きく目減りすることになります。
このような年金積立金の運用を続けていくことは国民の不安や不信を招くだけであり、国民の年金制度に対する信頼は損なわれてしまいます。
そこで、年金積立金の資産の額に占める株式の構成割合について、年金積立金管理運用独立行政法人設立時の株式の構成割合を参考にし、おおむね二〇%を超えない範囲で定めるものとし、これを法律上に明記することとしています。
なお、株式の構成割合の変更については、市場その他民間活動に与える影響等を勘案して、公布の日から十年の経過措置を設けています。
また、資産運用が適切に行われていくかを判断するためには、会計検査院が指摘しているように、収益が減少するリスクについて、ストレステストの結果の公表等による中長期のリスクの継続的な情報開示が必要不可欠です。
このため、年金積立金の運用に係る損失の危険に関する情報を年金積立金管理運用独立行政法人の業務概要書の記載事項に追加することにより、定期的なリスク情報の公表を義務化することとしております。
年金生活者支援給付金の拡充についてお尋ねがありました。
現行の老齢年金生活者支援給付金は保険料納付済み期間に応じて支給額が決まるものであり、納付済み期間が少ない場合は、支給額は月額五千円から減額されることになってしまいます。
このため、保険料納付済み期間が少ない高齢者は、低年金の上、年金生活者支援給付金の支給額も低くなるため、低所得の高齢者の所得保障の観点からは不十分なものとなっています。
他方、民主党政権時の二〇一二年に審議された社会保障と税の一体改革関連法案の当初の政府原案では、年金制度の最低保障機能の強化を図る観点から、低所得の老齢基礎年金受給者に対し、一律に月額六千円の加算措置を行うこととしておりました。
これを踏まえ、本法案では、低所得の年金受給者への対応の充実を図るため、年金生活者支援給付金の給付基準額を六千円に引き上げるとともに、老齢年金生活者支援給付金は、保険料免除期間がない場合には、保険料納付済み期間にかかわらず、一律に月額六千円を支給することとしています。
国民年金及び国民健康保険の保険料の免除についてお尋ねがありました。
現行法では、厚生年金及び被用者健康保険については、産前産後休業期間及び育児休業期間の保険料の免除が認められています。これに対して、国民年金については、昨年四月一日に産前産後期間の保険料の免除がスタートしましたが、一歳に満たない子を養育するための育児期間については、保険料の免除がありません。さらに、国民健康保険については、産前産後期間及び育児期間ともに保険料免除の規定がありません。
しかしながら、産前産後期間や育児期間については、従前と同じ形で働き続けることが誰にとっても難しいと考えられる期間であり、加入している制度の違いによって年金保険料等の免除についてこのような差が生じることは不合理であり、社会保障の支え手である現役世代の負担が増加していく中、特に子育て世代については負担の軽減を図る必要があります。
そこで、本法案では、国民年金について、被保険者が一歳に満たない子を養育するための期間について、保険料を納付することを要しないものとし、その期間について基礎年金給付を保障することとしております。
また、国民健康保険については、国民健康保険法第七十七条の規定により、市町村及び組合が被保険者の産前産後期間及び一歳に満たない子を養育するための期間における保険料の免除を行った場合には、国は必要な財政上の援助を行うこととしております。(拍手)
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○議長(大島理森君) 伊佐進一君。
〔伊佐進一君登壇〕
○伊佐進一君 公明党の伊佐進一です。
自由民主党、公明党を代表して質問いたします。(拍手)
まず、この新型コロナウイルスによって亡くなられた方々にお悔やみを申し上げるとともに、感染された方々の御回復をお祈り申し上げます。そして、感染症に最前線で向き合っていただいている医療従事者の皆様始め、生活維持に必要な業種で事業継続に踏ん張ってくださっている皆様に、心より御礼申し上げます。
まず冒頭、緊急経済対策について伺います。
今回の経済対策の目的の一つは、まずはあすの生活も成り立たない人に真っ先に手を差し伸べることであって、生活支援や事業継続のための給付金などを計上しているところです。とにかく迅速性を最優先するべきであり、そのためにも一刻も早く補正予算を成立させる必要があります。
その上で、七日に発令された緊急事態宣言では、八割の人の接触を減らすことを目指しており、社会や経済に及ぼすさらなる影響をしっかり把握していく必要があります。そして、こうした影響を見きわめつつ、今後、次の一手についても検討していく必要があると考えますが、総理の見解を求めます。
コロナウイルスの影響により、GPIFが行う年金運用において、この一月から三月の四半期では、損失幅が最大となるとの報道があります。コロナの影響で年金が目減りし、将来世代の給付が毀損されていくのではとの不安の声もあります。
しかし、従来から政府が示しているとおり、年金運用は長期でなされるものであり、市場による変動に対して一喜一憂する必要はありません。年金の市場運用が開始された二〇〇一年度から昨年末まで、その収益額は七十五兆円を超える黒字となっています。
とりわけ、利子や配当収入であるインカムゲインについては、リーマン・ショックなどで世界経済が落ち込んだ時期も変わらずに着実に利益を重ね、現在、昨年末で三十六・五兆円となっています。
コロナウイルスの影響はあるものの、長期的な年金の運用については問題がない旨、総理から国民の皆様に御説明ください。
被用者保険については、本法案によって、二〇二二年十月には百人超の中小企業に、二〇二四年十月には五十人超の企業まで適用が拡大されます。適用拡大は目指すべき方向ではありますが、中小零細企業の置かれた現状を考えれば、本法案で全ての事業所まで拡大することは影響が大きく、雇用そのものを失いかねません。
中小企業の皆様に対しては、昨年十月の最低賃金の引上げ、この四月から適用されている働き方改革、そして来年四月からの同一労働同一賃金などでも御協力をいただいているところです。今回の保険適用の拡大含めて、中小企業の皆さんの協力がなければ改革を前に進めることはできません。
政府として、中小企業の御負担を十分に考慮し、生産性向上を含めたさまざまな支援を充実させていく必要があると考えますが、いかがでしょうか。
今回の法案によって、これまで基礎年金にしか加入できなかった一人親や単身者、自営業者の配偶者などの方々が被用者保険に加入することになれば、月々の保険料も安くなり、また、将来もらえる年金も手厚くなります。
一方で、サラリーマン家庭の主婦や既に年金を受けている高齢者の皆さんの中には、メリットが少ないと感じる方々もいらっしゃいます。しかし、実際は、こうした三号被保険者や六十歳以上の方々であっても、被用者保険の適用によって新たに得られる措置がさまざまあります。政府は、適用拡大によって得られるメリットの周知に力を入れていただきたいと思います。こうした具体的なメリットについて伺います。
また、被用者保険の適用拡大は、年金財政全体にとってもメリットがあります。今回の適用拡大によって、将来世代が得られる年金をふやすことができますが、どれくらいの効果があると試算されているのか伺います。
一定基準以上の給料があれば年金が減額される在職老齢年金制度の見直しについて伺います。
人生百年時代においては、就労を希望する高齢者の皆さんが働きやすい環境をつくることが求められています。
今回の改正案においては、六十から六十四歳について、基準額を引き上げ、就労意欲を阻害しないような改正がなされます。
一方、六十五歳以上の方々については、同制度の就業抑制効果が大きく見込まれないため、基準額を引き上げることは単なる高所得者優遇になるのではないか、この点は、年金制度だけではなく、税制や保険料負担などとあわせて全体の中で引き続き検討すべき課題ではないか、党内の議論ではこうした指摘がなされました。
こうした指摘も踏まえ、本法案では、高齢者の皆様が働くことで毎年年金が増額されるような定時改定を導入し、就労のインセンティブを与える制度が盛り込まれました。本制度の趣旨について伺います。
確定拠出年金の改善について伺います。
企業の退職給付制度については、従業員の少ない企業ほど、その実施率が低くなっています。三百人未満の中小企業においては、退職年金を有する事業者は減り続けており、また、退職一時金すらない企業は増加傾向にあります。
こうした状況の中で、中小企業で働く方々の老後の資金確保を後押しできるよう、制度改正が必要です。本法案によってどのような措置がなされるのか伺います。
若い人たちの資金形成を応援するためには、企業による確定拠出年金に加えて、個人型DC、iDeCoへの加入も後押ししていく必要があります。
iDeCoへの加入者数が百五十万人を超えた中、企業型DCに加入している者があわせてiDeCoに加入できる企業はわずか四%にすぎません。若い世代が企業型DCとiDeCoの両方を活用できるよう、要件緩和が求められています。本法案における措置について伺います。
一人親が障害年金を受け取っている場合、一人親家庭であっても児童扶養手当は受け取れません。
公明党は、十年前からこの問題を取り上げてきました。
例えば、障害年金二級の方に子供が一人いる場合、支給されるのは障害年金の月約八万四千円のみで、児童扶養手当月約四万三千円はもらえません。実際は、障害年金のみでは生活が苦しく、また、自治体によっては児童扶養手当受給者を対象とした水道料金の減免などの制度があり、こうした支援が受けられないケースもありました。
一人親でなく御夫婦で、そのどちらかが障害をお持ちの家庭では、家計を支えるのは一方の親のみとみなされて、障害年金に加えて児童扶養手当も支給されています。ところが、より困難な状態にある一人親には併給が認められていません。
矛盾した状況を改めるべきだという我が党の指摘に対して、政府はこれまで、所得保障という同じ性格を持った給付の二重給付となるという立場を崩してきませんでした。今回の法案によって、ようやく一人親家庭に併給を認めることとなりましたが、政府の従来の見解を改めた理由、また、どのように支給されるかについて説明を求めます。
以上、コロナ感染への不安、外出自粛などで大変な中にある国民の皆様に少しでも安心していただけるような答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 伊佐進一議員にお答えをいたします。
緊急経済対策についてお尋ねがありました。
今般の緊急経済対策においては、困難に直面している御家庭や中小・小規模事業者の方々にこの難局を何としても乗り切っていただくため、考え得る政策手段を総動員して事業と生活を守り抜いていく考えであり、その実行のための補正予算を来週提出する予定です。
御指摘の給付金については、五月中にも給付を開始することで、事業の継続と生活の維持を強力に支援していきたいと考えています。それまでの間は、八十万円まで利用が可能な返済免除特約つきの緊急小口資金の活用等をお願いすることとなりますが、迅速な支援を実現するためにも、一日も早い補正予算の成立に議員各位の御協力をお願いいたします。
また、今回の緊急事態宣言に当たっては、感染拡大の終息に向け、人と人との接触を最低七割、極力八割削減することを目標に、国民の皆様に外出自粛などの御協力をいただいているところです。
いずれにせよ、今回の経済対策を迅速かつ着実に推進することでこの難局を乗り切るとともに、引き続き、内外における事態の収束までの期間と広がり、経済や国民生活への影響を注意深く見きわめ、必要に応じて、時期を逸することなく、臨機応変かつ果断に対応してまいります。
年金積立金の運用についてお尋ねがありました。
年金積立金の運用は、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うこととされており、株式市場を含む市場の一時的な変動に過度にとらわれるべきではありません。
平成十三年度の自主運用開始以降、令和元年度第三・四半期までの年金積立金の累積収益は約七十五・二兆円となり、年金財政上必要な収益を十分に確保しています。
したがって、市場動向等による一時的な評価損が生じたとしても、年金財政上の問題は生じず、年金給付額に影響することも全くありません。
生産性向上を含めた中小企業支援策についてお尋ねがありました。
全国三百五十八万者の中小・小規模事業者の皆さんは、オンリーワンの技術やサービスで、地域経済を支え、雇用の七割を担う日本経済の屋台骨です。まずは、現下の新型コロナウイルス感染症による困難な状況をしっかりと乗り越えていただいた上で、働き方改革を始めとした諸改革に協力していただけるよう、生産性向上などを全力で後押ししてまいります。
新型コロナウイルス感染症による困難に対しては、まず、実質無利子無担保、最大五年元本返済据置きの融資制度により、資金繰り支援に万全を期してまいります。雇用調整助成金の助成率を過去最大まで引き上げ、雇用の維持と従業員の皆さんの収入確保に努めます。さらに、大幅に売上げが減少した事業者の皆さんには、業種などにかかわらず、最大で、中堅・中小法人には二百万円、個人事業主には百万円の持続化給付金により、事業継承をしっかりと下支えしてまいります。
その上で、三千億円を上回る、ものづくり補助金、IT導入補助金、持続化補助金によって生産性向上を支援いたします。現下の感染症による影響も踏まえ、支給要件を緩和するとともに、今回の経済対策において予算を増額し、補助率や補助上限の引上げを行うことで積極的な活用を促します。
さらに、経営環境が極端に悪化したことに伴い、下請取引のしわ寄せが懸念されることから、大企業に対する下請振興基準の遵守徹底や下請Gメンなどによる監視、取締りの強化など、しわ寄せの徹底排除に向けて毅然と対応してまいります。
地域の経済社会の核である中小・小規模事業者の皆さんが、現在の難局を乗り越えて事業を継続し、諸改革を始め、その先の道筋をしっかりとつけられるよう、政府の総力を挙げて取り組んでまいります。
被用者保険の適用拡大により得られるメリットについてお尋ねがありました。
今回の法案に盛り込んでいる被用者保険の適用拡大は、御指摘のサラリーマン家庭の主婦の方や既に年金を受けておられる方々にとっても、基礎年金に加えて、二階の報酬比例部分の年金が手厚くなる上に、健康保険においても、傷病手当金等の被用者にふさわしい保障を受けられるようになるといったメリットがあります。
さらに、働き方の面においても、被用者保険適用後は、扶養の範囲を気にすることなく、給付増というメリットを感じながら、希望に応じた働き方を選択できるという大きなメリットがあります。
また、年金制度全体にとっても、被用者保険の適用拡大は、基礎年金の給付水準も向上させる効果を持つことから、将来の年金受給者全体にもメリットがある改革であり、全世代型社会保障の理念に基づき、支え手をふやし、全ての方にとって、その生活の安定につながるものです。こうした点についても、さまざまな機会を捉えてしっかりと国民に伝えてまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣加藤勝信君登壇〕
○国務大臣(加藤勝信君) 伊佐進一議員からは、五問の質問をいただきました。
被用者保険の適用拡大による将来世代の年金への効果についてお尋ねがありました。
今回の法案における被用者保険の適用拡大による所得代替率への影響について、二〇一九年財政検証とオプション試算の結果から機械的に計算をしますと、〇・三%改善する見通しとなっております。
在職定時改定の趣旨についてお尋ねがありました。
在職定時改定は、六十五歳以降に年金を受給しながら働く在職受給権者に対し、保険料を払った状況に応じて、一年に一回、年金額を上乗せする仕組みであり、この導入には、高齢期の就労を早期に年金額に反映させ、年金を受給しながら働く高齢者の経済基盤の充実を図る意義があります。
今般の年金制度改正は、より長く多様な形となる就労の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤を充実させることを基本的な考え方としており、在職定時改定もこの考え方に沿って行うものであります。
確定拠出年金の見直しについてお尋ねがありました。
企業年金、個人年金は、老後生活の基本を支える公的年金の上乗せとして、老後生活の多様なニーズに対応する役割があります。
企業年金の実施率は、厚生年金基金の減少の影響などにより低下傾向にあり、特に、従業員規模が小さくなるほど低下をしています。
このため、平成二十八年の改正では、企業年金を実施していない従業員百人以下の事業主が、従業員の老後の所得確保に向けた支援を行うことができるよう、iDeCoに加入する従業員の掛金に追加的に拠出する中小事業主掛金納付制度、いわゆるiDeCoプラスを創設したところであります。
今回の改正では、企業年金の実施率は三百人以下でも低下傾向が見られることから、iDeCoプラスを実施可能な従業員規模について、現行の百人以下から三百人以下に拡大をし、中小企業で働く方々の老後のための資産形成を支援することとしています。
企業型DCに加入する方のiDeCoへの加入についてお尋ねがありました。
現行制度において、企業型DCに加入する方のうち、個人型DC、いわゆるiDeCoにも加入できるのは、労使合意に基づく規約の定めがあって、事業主掛金の上限を引き下げた企業の従業員に限られており、ほとんど活用されていない現状にあります。
今回の見直しは、企業型と個人型の掛金の合算管理の仕組みを構築することにより、規定の定め等を不要とし、これまで加入できなかった多くの従業員の方が加入できるようにするものであります。
これにより、事業主掛金が低く、拠出限度額に余りがある例えば若い従業員の方が、個人型に加入して老後のための資産形成が可能となるものであります。
児童扶養手当と障害年金の併給調整の見直しについてお尋ねがありました。
児童扶養手当と公的年金の併給調整のあり方については、平成二十六年の児童扶養手当法改正法の附則の検討規定に基づき、社会保障審議会の専門委員会において検討を進めてきた結果、障害年金を受給する一人親家庭は、就労ができなくとも、障害年金額が児童扶養手当額を上回ると児童扶養手当が受給できないなど厳しい状況に置かれていることを踏まえ、更に調整方法の見直しを図ることの必要性が示されたところであります。
こうした専門委員会での議論や、一人親の障害年金受給者が置かれている厳しい状況を踏まえ、併給調整の方法について見直しを行うことといたしました。
具体的には、児童扶養手当の額と、児童がいることに着目して支給されている障害年金の子の加算部分の額との差額を児童扶養手当として受給することができるようにすることとしております。(拍手)
―――――――――――――
○議長(大島理森君) 宮本徹君。
〔宮本徹君登壇〕
○宮本徹君 日本共産党の宮本徹です。
日本共産党を代表して質問いたします。(拍手)
総理、なぜ、今、このタイミングで年金法案の審議なのですか。新型コロナの爆発的感染を阻止できるかの重大局面です。新型コロナ対策を担う厚労省職員は疲弊しています。年金法案の審議は先送りして、全ての知恵と力を新型コロナウイルス対策に振り向けるべきではありませんか。
緊急事態宣言から一週間。医療は崩壊寸前です。政府の責任で、N95マスクやガウンなど個人防護具を全力で医療現場に供給し続けること、医療関係者に特別な手当をどんと出し、潜在医師、潜在看護師に復職を大胆に呼びかけること、病床確保、軽症者の宿泊施設確保の財政支援の抜本的な引上げ、発熱外来とPCRセンターの設置と支援、保健所体制、検査体制の抜本的強化、病院の経費増と減収の全額補償、これらのための予算の大幅な拡充を強く求めるものであります。
政府の感染拡大防止策の最大の欠陥は、損失への補償を拒否しながら、曖昧な休業要請になっているため、効果が上がらないことです。補償なしの自粛要請では、三密が生まれるお店も安心して休業できません。感染拡大防止に補償は不可欠なのではありませんか。東京都は休業等への協力に対し協力金の制度を設けましたが、家賃で消えてしまうと声が上がっています。東京のような協力金は出せないという自治体もあります。政府の事業者への給付金は、対象が限定され、金額も全く足りません。五〇%以上の売上げ減少という要件の緩和、給付上限の抜本的な引上げ、家賃など固定費が賄える継続的支援を行うべきであります。
そして、政府の給付は余りにも遅過ぎます。
政府の一世帯三十万円の給付金は、対象が極めて限られ、不公平です。世帯主の収入で見るため、世帯の収入減が同じでも、給付の対象になる世帯とならない世帯が出ます。また、この四月から働く予定だった方も、それまでの収入がなければ、どれだけ生活が窮していても給付されません。抜本的に見直すべきであります。
今、八割接触を減らそうと、多くの国民が自粛要請、休業に協力しています。多くの方の収入が落ち込んでいます。少なくとも、生活、営業が持ちこたえられる水準の補償を行うべきであります。個人には、まず、一人十万円の給付を行うべきです。休業や自粛要請が続くのであれば、個人事業主を含め、働く人には継続して賃金、収入の八割を補償する制度をつくるべきではありませんか。
大量解雇も生まれています。
コロナに乗じたリストラ、派遣切りを許してはなりません。雇用を守るためのさらなる策が必要です。雇用調整助成金の助成率を十分の十に引き上げるべきであります。
アルバイトがなくなり、生活に窮した学生が、東京から地方へ帰省せざるを得なくなっています。感染拡大防止のために、総理は何をしますか。生活費、家賃など、経済的支援をすべきではありませんか。
次に、年金法案について伺います。
本法案は、国民の多くが抱える老後の不安に応えるものに全くなっていません。
現在のマクロ経済スライドの仕組みのもとでは、年金実質削減が数十年にわたって続き、基礎年金は実質三割の削減です。これでどうやって暮らすのか。年金が少ない人ほど年金の削減率が大きいのは大問題ではありませんか。基礎年金へのマクロ経済スライド適用はやめるべきであります。
本法案は、年金削減の仕組みを放置した一方で、国民に自助努力を求めるものとなっています。これまで七十歳までだった年金受給開始時期の選択肢を七十五歳開始にまで広げます。年金を減らすので、年金が足りない人は、七十五歳、体の限界まで働けと求めるに等しいものではありませんか。体力には個人差があります。六十五歳になれば働かなくとも暮らせる年金制度こそ目指すべきではありませんか。
また、本法案は、公的年金に上乗せする確定拠出年金に加入できる年齢を延ばします。新型コロナショックでiDeCoは元本割れしたという悲鳴の声が上がっています。公的年金の削減を進めながら、他方で元本割れリスクのある確定拠出年金を推奨することは、無責任ではないでしょうか。
今、政治がやるべきは、国民に自助努力を求めることではなく、頼れる年金制度、これをつくることであります。
財政状況の悪い国民年金勘定に合わせて基礎年金のマクロ経済スライドの期間を長期化させる仕組みに合理性はありません。国民年金と厚生年金の財政統合を行えば、試算では年金の削減率はマイナス八%程度にまで抑制できます。財政統合について真剣に検討すべきではありませんか。
将来世代の年金の給付水準を守るために、新たな財源確保が欠かせません。標準報酬の上限を健康保険と同じ水準に引き上げ、アメリカのベンドポイントのように、高額所得者の年金給付の伸びを抑制する仕組みを導入すれば、一兆円の財源が確保できます。高所得者と大企業に負担を求め、将来世代の年金の給付水準をしっかり守るべきであります。
さらに、最低保障年金制度を創設すべきであります。
安倍政権は、株価つり上げ政策をとる中、二〇一四年、GPIFが運用する年金積立金のポートフォリオを変更し、それまで四分の一だった株式比率を倍増させました。しかし、今、新型コロナウイルスの影響で、世界で株価が下落しております。今後の成り行きによっては、ポートフォリオ変更後の運用益はマイナスになりかねません。年金の積立金は安定運用すべきではありませんか。
以上、総理と野党法案提出者に伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 宮本徹議員にお答えいたします。
本法案の国会審議についてお尋ねがありました。
国会での法案審議のスケジュール等については国会でお決めになることですので、政府としてコメントすることは差し控えたいと思います。
その上で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止し、国民の命と健康を守り、国民生活や経済への影響を最小限に食いとめることは、国家としての最重要課題であり、引き続き、政府として万全を期していく所存です。
また、急速に少子高齢化が進み、人生百年時代を迎えようとする中で、全世代型社会保障への改革も待ったなしの状況にあると考えており、政府としては、年金制度改革にもしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
医療提供体制の確保のための予算についてお尋ねがありました。
感染拡大防止と同時に、国内で感染者数が大幅にふえた場合に備え、重症者対策を中心として医療提供体制を強化することは喫緊の課題です。
このため、今回の緊急経済対策では、第一の柱として、感染拡大の防止、医療提供体制の整備等に最優先に取り組むこととしており、医療用マスク、ガウン等の必要な医療機関への優先配布、重症者に対応できる医師、看護師等の確保、病床及び軽症者等の療養場所の確保、帰国者・接触者外来の拡充、保健所の体制やPCR検査体制の強化も含め、人、物両面からの抜本的強化を図ることとしています。
これらに伴う経費については、国として補助を行うことはもちろんのこと、新たに緊急包括支援交付金を創設し、各都道府県が必要とする対応を柔軟かつ機動的に実行できるよう、強力な財政支援を行うこととしたところです。
さらに、新型コロナウイルス感染症に対応する医療機関に対しては、診療報酬の増額を行うこととしています。
引き続き、医療の現場を守りつつ、感染拡大防止及び重症化予防に向けて、自治体と連携しながら、全力で取り組んでまいります。
自粛要請による経済への影響についてお尋ねがありました。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の防止のため、接触機会の低減を図ることが必要です。そのため、政府としては、緊急事態宣言のもと、外出自粛の要請等を強力に行い、人と人との接触の機会を徹底的に低減するための取組を進めています。
その上で、自粛要請によって生ずる個別の損失に対する補償については、直接要請の対象となっていない取引先や他の業種においても売上げや発注の減によって甚大な影響が生じていることも勘案すると、そうした個別の損失に限定して直接補償を行うことは現実的でないと考えています。
しかしながら、多くの中小・小規模事業者の皆さんが事業継続に大きな支障を生じておられること、また、その中で歯を食いしばって頑張っておられる方々に何としても事業を継続していただくため、極めて厳しい状況にある中堅・中小企業に二百万円、個人事業者に百万円を上限に、過去に例のない現金給付を行うこととしました。
本給付金は、今般の感染症により休業を余儀なくされた事業者のみならず、売上げが大きく減少した事業者を業種にかかわりなく幅広く対象としており、他の欧米諸国との比較において、対象範囲の広さでも、金額でも、遜色のない支援を行うことができるものと認識しております。
これに加えて、四十五兆円に及ぶこれまでにない規模の強力な資金繰り支援、本邦初となる総額二十六兆円の税、社会保険料の大胆な猶予制度、テナントの賃料等の支払い猶予の要請など、事業の継続を強力に後押しし、雇用を守り抜いてまいります。
また、雇用調整助成金については、解雇等を行わず雇用を維持する企業に対して、正規雇用、非正規雇用にかかわらず、休業手当の助成率を最大で中小企業は九〇%、大企業でも七五%に引き上げるなどのさらなる特例措置を講じており、従業員の皆さんの雇用と収入の確保と事業者負担の軽減を図ってまいります。
また、世帯向けの現金給付については、国民全員に一律で行うのではなく、甚大な影響を受けて収入が減少し、生活に困難を来している方々の生活維持のため、生活の単位である世帯に着目し、集中的に三十万円の思い切った給付を行うことで、大変な状況にある方々に直接手が届く効果的な支援策を実施していくこととしています。
現在、できるだけ多くの自治体で五月中にも給付を開始できるよう準備を進めているところであり、御指摘のような個別の事情を踏まえた、できるだけきめ細かな対応がどこまで可能か、迅速な給付の実現の必要性と給付の実務を担う市町村への影響も勘案しつつ、具体的な制度設計を進めてまいります。
雇用調整助成金の助成率引上げや生活に窮する学生への支援についてお尋ねがありました。
雇用調整助成金については、今般の感染症の影響を踏まえ、解雇等を行わず雇用を維持する企業に対して、正規雇用、非正規雇用にかかわらず、休業手当の助成率を最大で中小企業は九〇%、大企業でも七五%に引き上げるなどのさらなる特例措置を講じており、この助成金を活用して事業主を積極的に支援していくこととしています。
今後とも、経済、雇用情勢の現状をしっかり見きわめながら、状況に応じて必要な対応を講じてまいります。
生活に窮した学生への経済的支援については、高等教育無償化の新制度等の運用において、感染拡大などの影響を受けて家計が急変した場合には、それを加味した所得見込みで支援の判定を行うこととしています。また、入学金や授業料の納付が困難な学生にはそれらの納付猶予や減免等を行うよう、大学等に対し要請しているところです。さらに、今般創設した返済免除特約つきの緊急小口資金の特例等も御活用いただくことが可能となります。
こうした支援により、地域の雇用と学生の生活などをしっかりと守り抜いてまいります。
基礎年金へのマクロ経済スライドについてお尋ねがありました。
昨年公表した財政検証の結果によれば、将来世代の給付確保のために行うマクロ経済スライドによる調整が終了した後の所得代替率は、当初、前回検証よりも悪化するのではないかとの臆測も見られたところですが、そうした一部の臆測に反し、代表的なケースで、前回検証時の五〇・六%に対し、五〇・八%と改善したところです。また、基礎年金額は、物価上昇分を割り戻した実質価格で見ておおむね横ばいとなっており、実質三割減との御指摘は当たりません。
年金のマクロ経済スライドについては、将来世代の給付水準の確保のために必要な仕組みであることから、政府として、廃止することは考えておりません。
受給開始時期の選択肢の拡大及び公的年金の給付水準についてお尋ねがありました。
全世代型社会保障の実現のため、人生百年時代の到来を見据えながら、年金制度においても、働き方の変化を中心に据えて改革を進めることが必要であると考えています。
このため、政府としては、高齢者が意欲を持って働ける環境整備を進めるとともに、そのための手段として、受給開始時期の選択肢を七十五歳まで広げ、受給額についても、年金財政中立の考え方のもと、八四%までの割増しを受けることを可能としております。
こうした改革により、支え手をふやし、年金制度全体の安定性を高めることで、低所得の方を含めた将来の年金水準の確保にもつなげていくことが可能となると考えております。
なお、低所得の、無年金、低年金の高齢者の方には、年金受給資格期間の二十五年から十年への短縮、年金生活者支援給付金の支給、年金給付から天引きされる医療、介護の保険料軽減を実施してきており、今後とも、社会保障制度全体で総合的な対応を検討してまいります。
個人型確定拠出年金、いわゆるiDeCoの見直しについてお尋ねがありました。
公的年金に上乗せするiDeCoは、加入が任意であり、運用商品も元本確保型を含むさまざまな運用商品の中からみずから選択いただくものですが、短期的な損益を狙うよりも、むしろ、長期的な観点に立って適切な選択が行われるよう、金融機関等が加入者の立場に立って支援を行う仕組みとしているところです。
なお、今回の法案は、今後も拡大することが見込まれる高齢期の就労とあわせて、老後の生活設計の選択肢の一つとして活用できるよう、今回の公的年金制度の改正に合わせて、iDeCoの加入可能年齢の引上げを行うものです。
国民年金と厚生年金の財政統合についてお尋ねがありました。
基礎年金制度は、全ての国民の老後の生活の安定等を図るため、全国民に共通する給付を支給する制度として導入されたものであり、費用も公的年金制度の被保険者全体で公平に負担するという考え方を基本として、国民年金、厚生年金の各制度が、その被保険者数に応じて頭割りで拠出金を拠出する仕組みです。
こうした導入の経緯を踏まえれば、現在の仕組みを変更し、国民年金と厚生年金の間の財政統合を行うことは、各方面にさまざまな御意見があると考えています。
他方で、基礎年金は、所得の多寡にかかわらず一定の年金額を保障する所得再分配機能を有する給付であり、この機能を将来にわたって維持していくことが重要です。
昨年の財政検証結果では、被用者保険の適用拡大は、厚生年金のみならず、基礎年金の水準を確保する上でもプラスの効果を持つことが確認されており、今般の制度改正においても、その内容を盛り込んでいるところです。
公的年金制度における給付と負担のあり方についてお尋ねがありました。
御指摘の米国における年金制度は、我が国の基礎年金のような仕組みを有していない制度の中で、平均賃金が高い者などの年金の給付率を引き下げる仕組みを設けているものと承知しています。
他方、我が国の厚生年金制度においては、定額給付を基本とし、公費負担のある基礎年金と報酬比例を原則とする年金を組み合わせることで、報酬の増加に伴い年金の給付率が逓減する仕組みをとっています。
御提案の高額所得者と大企業だけに特別に負担を求めるという考え方は、こうした報酬比例を前提として既に拠出を求めている厚生年金の考え方に照らせば、慎重な検討が必要と考えています。
また、最低保障年金については、多額の税財源が必要になり、保険料を払っている方々と払っていない方々との間の公平性をどう担保していくのかといった課題があり、導入は難しいと考えています。
政府としては、今般の年金制度改正に盛り込んでいる被用者保険の適用拡大により基礎年金水準を確保していくなど、今後とも公的年金制度を、老後生活の基本を支える役割を果たしていけるように改革を進めてまいります。
年金積立金の運用についてお尋ねがありました。
年金積立金の運用は長期的な観点から行うこととされており、株式市場を含む市場の一時的な変動に過度にとらわれるべきではありません。
令和元年度第三・四半期までの年金積立金の運用の累積収益は、平成十三年度の自主運用開始以降では約七十五・二兆円、また、議員御指摘の平成二十六年十月の基本ポートフォリオ変更以降も約三十四兆円に上っており、年金財政上必要な収益を十分に確保しております。
また、年金積立金の運用は安全かつ効率的に行うことが重要です。このため、経済動向や運用環境などを踏まえて、リスクを抑えつつ、年金財政上必要な利回りを確保していくことが必要であると考えております。(拍手)
〔高橋千鶴子君登壇〕
○高橋千鶴子君 宮本徹議員から、年金積立金管理運用独立行政法人、GPIFが管理、運用する年金積立金の資産の安定的な運用の必要性についてお尋ねがありました。
ことし一月から三月期の資金運用実績は、新型コロナウイルスの影響による世界的な株安によって、損失額が十七兆五千億円程度に達する見通しと言われています。四半期別の損失額としては、一八年の十から十二月期の十四・八兆円を大きく上回り、過去最高を更新することになるようです。
年金積立金は、被保険者から徴収された保険料の一部であり、かつ将来の年金給付の貴重な財源となるものであることに特に留意し、専ら被保険者の利益のために行うというのがGPIFの基本姿勢であります。
ところが、安倍政権になって以降、御指摘のように、国内外の株式の構成割合を五割に引き上げ、リスクの高い株式の割合が高まったことで、損益の幅が非常に大きくなっています。また、GPIFは、この四月に五年半ぶりに基本ポートフォリオを変更し、国内債券を一〇%減らし、外国債券を一五から二五%にふやしました。これにより、更に海外リスクが高まるとの指摘もあります。
GPIFは、約百六十兆円を運用する世界最大規模の機関投資家です。市場に与える影響も大きく、今のような運用を続けていくことは、国民の不安や不信を招き、年金制度に対する信頼は損なわれてしまいます。
そこで、本法案では、年金積立金の資産の額に占める株式の構成割合について、GPIF設立時の株式の構成割合を参考に、おおむね二〇%を超えない範囲で定めるものとし、これを法律上に明記することとしています。
なお、株式の構成割合の変更については、市場その他民間活動に与える影響等を勘案して、公布の日から十年の経過措置を設けています。
以上です。(拍手)
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○議長(大島理森君) 藤田文武君。
〔藤田文武君登壇〕
○藤田文武君 日本維新の会・無所属の会の藤田文武です。
ただいま議題となりました年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案について、会派を代表して質問いたします。(拍手)
冒頭、今般の新型コロナウイルス感染症により、お亡くなりになられた方々のみたまの平安をお祈りするとともに、療養中の皆様の一刻も早い御回復をお祈り申し上げます。
さて、新型コロナウイルスは、世界じゅうで感染拡大がとまりません。日本でも爆発的感染拡大の危機が迫る中、四月七日には安倍総理から緊急事態宣言が発令され、経済活動は瀕死の状態に陥っています。感染拡大防止と経済活動という裏表の関係を考えたとき、我々は長期間にわたって非常に厳しい局面を戦わなければなりません。
今、国民の皆さんの多くは、感染症への恐怖と戦いながら、外出自粛、収入の激減、企業においては倒産の危機など、非常に厳しい現実に直面しています。今こそ、我々国会議員は、この国難を乗り越えるために範を示し、先頭に立って戦うときです。
思い起こせば、東日本大震災の後、国会議員の歳費を二割削減し、復興への志を新たにいたしました。しかし、二年の時限措置が期限切れとなった二〇一四年には、我が党の反対もむなしく、歳費削減は終了し、もとどおりとなりました。国民の皆様へお願いした復興特別税は今現在も続いているにもかかわらずであります。
それ以降、我が党所属の議員は、自主的に歳費の二割相当を毎月寄附し、今現在もそれを続けております。寄附総額は約一億六千万円に上りました。
先月提出した我が党の緊急提言でも議員歳費のカットを提案し、再三再四、あらゆる場で各党へ訴えてまいりましたが、これまで、どの党からも前向きな動きはありませんでした。
しかし、直近の世論において、国会議員も身を切るべきとの声が大きくなるや否や、各党が議員歳費のカットを検討すると、今になってやっと言い出したわけです。恥ずかしいと思いませんか。しかも、仄聞するところによると、歳費の二割カットをたった一年の限定で行うと国対委員長間で合意したそうです。一年たてば、また前回のようにもとに戻すつもりでしょうか。
いま一度、我々国会議員一人一人が政治家としての原点に立ち返り、この国難を乗り越える覚悟を示すべく、議員歳費の大幅な削減を来月分から無期限で行うことを全会派に向けて提案したいと思います。ぜひとも、党派を超えて、身を切る姿勢を示そうではありませんか。
今回のコロナショックは、我々が先送りにしてきた多くの本質的課題を日本社会に突きつけています。
新興感染症に適切に対応できない法整備、曖昧な私権の制限と補償のあり方、緊急事態でも通常運転を続け、日程闘争に明け暮れてしまった非常識な国会運営など、挙げれば切りがないほど我が国の政治システムの不備をあらわにいたしました。
都市一極集中のもろさは、都市と地方の関係性を根本から問い直さなければならない課題を突きつけました。人、物、金がボーダーレスに国境を越えて行き交いするグローバル経済の弱点は、感染拡大と経済危機の両面において致命的な影響を与えてしまいました。
そして、社会保障においては、マイナンバー一つ有効活用できずに、国民の資産と所得を正確に把握するすべを持たず、補償や生活支援を適切かつ公平、そして何より迅速に実施することができないという現実を突きつけました。
今、最優先でやるべきことは、感染拡大を抑え込み、終息のために全力を尽くすことであります。しかし、それと同時に、我々、国民に選ばれた政治家の使命は、アフターコロナ、ポストパンデミックの新しい社会像を描き、そのビジョンを提示することであると思います。
今回のパンデミックは、産業構造や都市機能、社会保障や政治システムのあり方といった、日本の根本的な社会構造についても転換を迫ることになります。コロナ終息後の日本をV字回復させる経済対策は、その新しい社会像を実現するための政策思想が必要であり、国家百年の計に立った大きな視点と思い切った発想を持ち、社会システム自体の大改革と一体に取り組むべきであると考えます。
そこで、本日お伺いすることは、次の一点であります。
人口減少、少子高齢化を始めとする社会構造の変化を前提に、再分配制度の持続可能性を問うならば、現在の年金制度は抜本的な改革が必要であることは明白であります。
我が党は、これまで、年金の積立方式への移行や歳入庁の創設、マイナンバーのフル活用など、多くの改革案を提案してきましたが、更に一歩進んで、ベーシックインカムや給付つき税額控除、税体系全体を俯瞰した制度改革を含む、税と社会保障、労働市場の三位一体改革の取りまとめを進めております。
ポストパンデミックの社会を見据えるならば、本改正案のようなびほう策ではなく、年金制度を始め社会保障の仕組み全体を設計し直すべきです。全世代型社会保障検討会議で示されたような、現状維持、微修正型の制度変更では新しい社会像は描けないと考えますが、総理の御見解をお聞きいたします。
我が党は、目下の感染症対策に全力を挙げるとともに、ポストパンデミックの新しい社会像を提示し、日本が抱える本質的な問題の解決につなげることをお誓いして、私からの質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 藤田文武議員にお答えをいたします。
年金制度を始め社会保障の仕組み全体の見直しについてお尋ねがありました。
全世代型社会保障は、人生百年時代の到来を見据えながら、働き方の変化を中心に据えて、年金、医療、介護、社会保障全般にわたる改革を進めるものです。
年金制度については、政権交代以降、生産年齢人口が減少する中で、意欲ある高齢者の就業により、厚生年金の支え手は五百万人増加しました。この結果、昨年の年金財政検証では、少子高齢化のもとで悪化するとの一部の臆測に反し、代表的なケースでは、将来の年金給付に係る所得代替率は改善しました。さらに、今年度の年金額は二年連続で増加しました。このように、人生百年時代においても、年金制度は十分にその基本的役割を果たしています。
今般の法案は、こうした人生百年時代の働き方の変化に年金制度がより柔軟に対応できるものとするため、パートの皆さんへの厚生年金の適用を、中小企業への生産性向上支援を行いながら、従業員五十人を超える企業まで段階的に拡大し、自分で選択可能となっている年金受給開始時期の選択肢を七十五歳まで広げ、受給額についても八四%までの割増しを受けることを可能とし、在職老齢年金について、働くインセンティブを失うことのないよう見直しを行うものであります。
こうした改革を通じ、支え手をふやしながら、令和の時代にふさわしい年金制度を構築してまいります。(拍手)
○議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。
――――◇―――――
○議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時四十八分散会
――――◇―――――
出席国務大臣
内閣総理大臣 安倍 晋三君
総務大臣 高市 早苗君
法務大臣 森 まさこ君
外務大臣 茂木 敏充君
厚生労働大臣 加藤 勝信君
国土交通大臣 赤羽 一嘉君
環境大臣 小泉進次郎君
国務大臣 衛藤 晟一君
国務大臣 菅 義偉君
国務大臣 武田 良太君
出席内閣官房副長官及び副大臣
内閣官房副長官 西村 明宏君
厚生労働副大臣 稲津 久君